説明

車両用ブレーキ装置

【課題】液圧ブースタの制御ピストンおよびブレーキ操作部材間に、ストロークシミュレータが設けられる車両用ブレーキ装置において、ストローク初期のフィーリング向上を図る。
【解決手段】ストロークシミュレータ14Aは、筒状の弾性体主部127aと、その弾性体主部127aの軸方向両端部の少なくとも一方に設けられる異形形状部127b,127cとを一体に有して制御ピストン46に収容される弾性体127が、ブレーキ操作部材に連なって制御ピストン46に軸方向スライド可能に収容されるシミュレータピストン122と、制御ピストン46との間に介設されて成り、ブレーキ操作初期での異形形状部127b,127cの撓み量が弾性体主部127aの撓み量よりも大きくなるように、異形形状部127b,127cが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタシリンダが備えるマスタピストンの背面を臨ませる倍力液圧室の液圧に基づく反力ならびにブレーキ操作部材からのブレーキ操作入力が釣り合うように作動する円筒状の制御ピストンを有するとともに該制御ピストンが軸方向に作動するのに応じて液圧発生源の液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめる液圧ブースタと、前記ブレーキ操作部材との間に、ストロークシミュレータが設けられる車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧ブースタの制御ピストンおよびブレーキ操作部材間に、弾性体およびスプリングが直列に接続されて成る弾発手段が介設されるストロークシミュレータが設けられるものが、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−282012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示されるもののストロークシミュレータでは、ブレーキ操作初期の特性をスプリングの弾発力によって作り出し、次いで弾性体を圧縮することでストローク特性を得るようにしているのであるが、スプリング領域から弾性体領域への移行期の特性に差があり過ぎて違和感を感じることがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ストローク初期のフィーリング向上を図った車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、マスタシリンダが備えるマスタピストンの背面を臨ませる倍力液圧室の液圧に基づく反力ならびにブレーキ操作部材からのブレーキ操作入力が釣り合うように作動する円筒状の制御ピストンを有するとともに該制御ピストンが軸方向に作動するのに応じて液圧発生源の液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめる液圧ブースタと、前記ブレーキ操作部材との間に、ストロークシミュレータが設けられる車両用ブレーキ装置において、前記ストロークシミュレータは、筒状の弾性体主部と、その弾性体主部の軸方向両端部の少なくとも一方に設けられる異形形状部とを一体に有して前記制御ピストンに収容される弾性体が、前記ブレーキ操作部材に連なって前記制御ピストンに軸方向スライド可能に収容されるシミュレータピストンと、前記制御ピストンとの間に介設されて成り、ブレーキ操作初期での前記異形形状部の撓み量が前記弾性体主部の撓み量よりも大きくなるように、前記異形形状部が形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記異形形状部が、平坦面から突部が突出するように形成されて成ることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、複数個の前記突部が前記平坦面から突出されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第2または第3の特徴の構成に加えて、前記突部の周囲で前記平坦面には、凹部が形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記弾性体が、前記ブレーキ操作部材の非操作状態で軸方向に圧縮されて前記シミュレータピストンおよび前記制御ピストン間に介設されることを第5の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、第1〜第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記弾性体がゴムから成ることを第6の特徴とする。
【0012】
なお実施の形態のブレーキペダル11が本発明のブレーキ操作部材に対応し、実施の形態の後部マスタピストン23が本発明のマスタピストンに対応する。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第6の特徴によれば、弾性体が、筒状の弾性体主部と、その弾性体主部の軸方向両端部の少なくとも一方に設けられる異形形状部とを有するものであり、ブレーキ操作部材によるブレーキ操作初期の異形形状部の撓み量が弾性体主部の撓み量よりも大きいので、ブレーキ操作荷重が小さい初期荷重領域では、異形形状部の形状変化量の方が弾性体主部の変化量よりも大きくなることで、ブレーキ操作初期の比較的小さなブレーキ操作荷重で無効ストロークおよび有効ストロークの特性変化が得られ、弾性体に直列に接続される従来のスプリングを不要として部品点数の低減およびコスト低減を図りつつ、ブレーキ操作フィーリングの向上を図ることができる。また弾性体主部の形状変化によってシミュレータ特性を自在に変化することができ、特に、異形形状部の撓み量変化が無効ストロークの調整に有効である。
【0014】
また特に第2の特徴によれば、突部の形状を変化させることで初期特性の変更が容易となる。
【0015】
また特に第3の特徴によれば、突部の個数を変更することで、初期特性の変更がより容易となる。
【0016】
また特に第4の特徴によれば、突部の変形による歪みを、凹部内に肉を逃がすことで緩和することができ、操作フィーリングの更なる向上を図ることができる。
【0017】
さらに特に第5の特徴によれば、非ブレーキ操作状態で弾性体に軸方向の荷重が作用しているので、弾性体にへたりが生じても、異形形状部で吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図である。
【図2】液圧ブースタおよびストロークシミュレータの一部を示す縦断面図である。
【図3】液圧ブースタにおける増圧弁付近の拡大縦断面図である。
【図4】ストロークシミュレータの拡大縦断面図である。
【図5】弾性体の縦断面図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】ストロークシミュレータでの操作荷重およびストロークの関係を示す特性図である。
【図8】実施例2のストロークシミュレータの図4に対応した断面図である。
【図9】実施例3のストロークシミュレータの図4に対応した断面図である。
【図10】実施例4のストロークシミュレータの図4に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図7を参照しながら本発明の実施例1について説明すると、先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型のマスタシリンダMと、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13と、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13間に介装されるストロークシミュレータ14Aとを備える。
【0021】
前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13に共通なケーシング15は、前端を閉じた有底円筒状のシリンダ体16と、内向き鍔部17aを後端に有して円筒状に形成されるとともにシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ17と、シリンダ体16の後端およびボディ17間に挟持されるリング体18、セパレータ19およびスリーブ20とで構成される。シリンダ体16の後端はボディ17の前部に液密に嵌合されており、リング体18はボディ17に液密に嵌合されてシリンダ体16の後端に当接され、スリーブ20はボディ17の内周中間部に設けられた環状の段部21で後退限が規制されるようにしてボディ17の前部に嵌合され、セパレータ19が前記リング体18および前記スリーブ20間に挟持される。
【0022】
マスタシリンダMは、倍力液圧室22に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン23がシリンダ体16に摺動可能に嵌合されるとともに、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン23の前方に配置される前部マスタピストン24がシリンダ体16に摺動可能に嵌合されて成り、後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部出力液圧室25が形成され、シリンダ体16の前端閉塞部および前部マスタピストン24間に前部出力液圧室26が形成される。
【0023】
シリンダ体16には、後部出力液圧室25に通じる後部出力ポート27と、前部出力液圧室26に通じる前部出力ポート28とが設けられる。さらに後部出力液圧室25内で後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部マスタピストン23を後方側に付勢する後部戻しばね29が縮設され、前部出力液圧室26内でシリンダ体16の前部閉塞端および前部マスタピストン24間には前部マスタピストン24を後方側に向けて付勢する前部戻しばね30が縮設される。
【0024】
マスタシリンダMにはリザーバ31が付設されており、このリザーバ31には、第1、第2および第3液溜め室31a,31b,31cが相互に区画されて形成される。而して第2液溜め室31bに通じる円筒状の後部接続筒部32ならびに第1液溜め室31aに通じる円筒状の前部接続筒部33が軸線に沿う方向に間隔をあけた位置で上方に突出するようにしてシリンダ体16に一体に設けられる。
【0025】
後部マスタピストン23の外周およびシリンダ体16の内面間には、後部接続筒部32内に通じる後部補給液室36が環状に形成されており、リザーバ31の第2液溜め室31bから補給されるブレーキ液が後部補給液室36に供給されることになる。また前部マスタピストン24の外周およびシリンダ体16の内面間には、前部接続筒部33内に通じる前部補給液室37が環状に形成されており、リザーバ31の第1液溜め室31aから補給されるブレーキ液が前部補給液室37に供給されることになる。
【0026】
後部マスタピストン23には、該後部マスタピストン23が後退限位置に戻ったときに後部出力液圧室25および後部補給液室36間を連通させる従来周知のセンターバルブ38が装着され、前部マスタピストン24には、該前部マスタピストン24が後退限位置に戻ったときに前部出力液圧室26および前部補給液室37間を連通させる従来周知のセンターバルブ39が装着される。
【0027】
すなわちマスタシリンダMは、後部マスタピストン23および前部マスタピストン24に、それらのマスタピストン23,24の後退時には後部および前部出力液圧室25,26にリザーバ31からのブレーキ液を補給するように開弁作動するセンターバルブ38,39が装着されたセンターバルブ型に構成されている。また後部および前部マスタピストン23,24間には、それらのマスタピストン23,24間の最大間隔を規制する最大間隔規制手段40が設けられる。
【0028】
マスタシリンダMの後部出力ポート27は、液圧モジュレータ41を介して右前輪用車輪ブレーキB1および左後輪用車輪ブレーキB2に接続されており、また前部出力ポート28は、液圧モジュレータ41を介して左前輪用車輪ブレーキB3および右後輪用車輪ブレーキB4に接続される。而して液圧モジュレータ41は、後部および前部出力ポート27,28から出力されるブレーキ液圧を自在に制御してブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御を実行し得るとともに、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御等の自動ブレーキ制御を実行し得る従来周知のものである。
【0029】
図2において、液圧ブースタ13は、前端を倍力液圧室22に臨ませてケーシング15に収容される円筒状のバックアップピストン44と、増圧弁42および減圧弁43で構成されてバックアップピストン44に内蔵される調圧弁手段45と、前記倍力液圧室22の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段45を調圧作動せしめる制御ピストン46と、前記倍力液圧室22の液圧に基づく反力を制御ピストン46に付与するようにして前記調圧弁手段45および制御ピストン46間に介装される第1反力ピストン47と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン47からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね77による反力を前記制御ピストン46に付与するようにして前記バックアップピストン44および第1反力ピストン47間に介装される第2反力ピストン48とを備える。
【0030】
ケーシング15の一部を構成してシリンダ体16の後部に同軸に結合されるボディ17には、前記シリンダ体16の後端、リング体18、セパレータ19およびスリーブ20を前端側から嵌合せしめる大径孔49と、該大径孔49の後端との間に環状の段部21を形成して大径孔49の後端に同軸に連なるとともに大径孔49よりも小径に形成される中径孔50とが設けられ、中径孔50の後端を規定するようにしてボディ17が後端に備える内向き鍔部17aは、前記中径孔50よりも小径である小径孔51を形成する。
【0031】
前記リング体18および前記スリーブ20は、リング体18およびスリーブ20の内径よりも内径を大径としたセパレータ19を相互間に挟むようにしつつ前記シリンダ体16の後端および前記段部21間に挟まれるようにして大径孔49に液密に嵌合され、前記リング体18および前記スリーブ20に前記バックアップピストン44が摺動可能に嵌合される。
【0032】
ボディ17には、マスタシリンダMのシリンダ体16およびリング体18間に対応する位置で大径孔49の内面に開口して倍力液圧室22に通じる接続ポート54と、リング体18およびスリーブ20間に対応する位置で大径孔49の内面に開口する入力ポート55と、スリーブ20の軸方向中間部で大径孔49の内面に開口するとともに前記接続ポート54に接続される出力ポート56と、中径孔50の前部内面に開口する解放ポート57とが、前方から順に間隔をあけて設けられ、解放ポート57はリザーバ31の第3液溜め室31cに接続される。
【0033】
前記入力ポート55には液圧発生源12が接続される。この液圧発生源12は、リザーバ31の第3液溜め室31cからブレーキ液をくみ上げるポンプ58と、該ポンプ58の吐出側に接続されるアキュムレータ59とを備え、前記ポンプ58の作動は、液圧センサ60で検出されるアキュムレータ59の液圧に応じて制御され、液圧発生源12はブレーキペダル11の操作とは無関係に高圧の一定液圧を出力することができ、液圧発生源12から出力される液圧は入力ポート55に供給される。また液圧発生源12の吐出側およびリザーバ31の第3液溜め室31c間にリリーフ弁61が設けられる。而して前記入力ポート55および前記接続ポート54間を結ぶ液圧路および前記リリーフ弁61は、ケーシング15におけるボディ17に設けられ、液圧センサ60も前記ボディ17に配設される。
【0034】
バックアップピストン44の前部は、リング体18に液密にかつ摺動可能に嵌合され、バックアップピストン44の中間部はスリーブ20に液密にかつ摺動可能に嵌合される。またリング体18およびスリーブ20間に挟まれるセパレータ19が配置される部分でケーシング15のリング体18およびスリーブ20と、バックアップピストン44の外周との間には、前記倍力液圧室22との間が液密にシールされた入力側環状室63が入力ポート55に通じるようにして形成され、入力側環状室63内に配置される前記セパレータ19には、入力側環状室63を分断することがないようにして複数の透孔64…が設けられる。また前記スリーブ20の内周および前記バックアップピストン44間には、前記入力側環状室63との間が液密にシールされた出力側環状室65が出力ポート56に通じるようにして形成される。
【0035】
ボディ17における内向き鍔部17aには、リング状のストッパ66が当接されており、バックアップピストン44の後端部外周に装着された止め輪67に前方側から当接、係合するリテーナ68と、スリーブ20との間に、バックアップピストン44の後半部を囲繞するコイル状のばね69が縮設され、このばね69のばね力によりバックアップピストン44は後方に向けてばね付勢される。而してボディ17の内向き鍔部17aに当接したストッパ66に前記止め輪67を当接させた位置がバックアップピストン44の後退限であり、後退限にあるバックアップピストン44の前端は、倍力液圧室22に臨むとともに、非作動状態にある後部マスタピストン23の背面の外周縁部に全周にわたって当接し、その状態で後部マスタピストン23も後退限となる。
【0036】
ボディ17内でスリーブ20および内向き鍔部17a間には、前記ばね69を収容するようにしてバックアップピストン44を囲む解放室70が、出力側環状室65との間を液密にシールするようにして形成される。
【0037】
バックアップピストン44の軸方向中間部内面には、半径方向内方に張り出す内向き鍔部44aが一体に設けられており、内向き鍔部44aよりも前方でバックアップピストン44には段付き円筒状の第2反力ピストン48が摺動可能に嵌合され、第2反力ピストン48には第1反力ピストン47が同軸にかつ相対摺動可能に嵌合される。
【0038】
図3において、バックアップピストン44の前端部には、倍力液圧室22に前面を臨ませる端壁部材71が液密に嵌合されており、この端壁部材71の外周縁部に前方から当接、係合する止め輪72がバックアップピストン44の前端部内周に装着される。さらに第2反力ピストン48の前端には、周方向に複数の開口部74…を有して有底円筒状に形成されるフィルタ枠73の後部が圧入されており、フィルタ枠73の内面にメッシュ部材75が設けられることでフィルタ76が構成され、このフィルタ76および前記端壁部材71間に縮設される反力ばね77のばね力で、第2反力ピストン48はバックアップピストン44の内向き鍔部44aに前方から当接する側に付勢される。
【0039】
第2反力ピストン48およびフィルタ76と、前記端壁部材71との間でバックアップピストン44内には入力室78が形成されており、この入力室78は入力側環状室63に連通する。すなわち入力室78には液圧発生源12からの高圧のブレーキ液が導入される。
【0040】
第2反力ピストン48の中間部内面には前方に臨む環状の段部48aが設けられており、第2反力ピストン48の前部には、第2反力ピストン48に液密に嵌合される段付き円筒状の弁座部材79が前記段部48aに当接するようにして嵌合され、第2反力ピストン48の前端に圧入される前記フィルタ枠73の後端および前記段部48a間に弁座部材79が挟持される。これにより弁座部材79は、第2反力ピストン48の前部に液密に嵌合、固定されることになり、第2反力ピストン48を介してバックアップピストン44に支持される。
【0041】
一方、第1反力ピストン47は、図2で示すように、第2反力ピストン48の後部に液密にかつ摺動可能に嵌合されており、第2反力ピストン48内には、前記弁座部材79の背面を臨ませるとともに第1反力ピストン47の前端を臨ませる調圧室80が形成され、該調圧室80は、出力側環状室65すなわち出力ポート56に連通する。
【0042】
図4を併せて参照して、制御ピストン46は、前端に端壁46aを有して有底円筒状に形成されるものであり、ボディ17の後端の内向き鍔部17aが形成する小径孔51に液密にかつ摺動可能に嵌合されつつバックアップピストン44の後部に同軸に挿入される。しかも制御ピストン46の外面には、前記内向き鍔部17aの内周縁部に前方側から当接、係合することにより制御ピストン46の後退限を規制する規制突部46bが全周にわたって一体に突設される。
【0043】
内向き鍔部44aの後方でバックアップピストン44および制御ピストン46間には解放室82が形成されており、この解放室82は、ストッパ66に設けられた連通孔83を介して解放室70に連通する。すなわち解放室82は、連通孔83、解放室70および解放ポート57を介してリザーバ31における第3液溜め室31cに連通する。
【0044】
第1反力ピストン47の後端は、前記制御ピストン46の前端の端壁46aに常時当接される。また調圧室80には、第1反力ピストン47の後端を制御ピストン46の端壁46aに接触させるようにばね付勢するばね力を発揮するばね84が、図2および図3で示すように収容され、このばね84のばね力はごく弱く設定される。
【0045】
また第2反力ピストン48には、第1反力ピストン47の後部を同軸に囲繞するとともに内向き鍔部44aの内周に挿通される延長筒部48bが同軸にかつ一体に設けられており、第2反力ピストン48が、バックアップピストン44の内向き鍔部44aに当接して後退限位置にある状態で、第2反力ピストン48における延長筒部48bの後端は、第1反力ピストン47の後端よりも前方に配置される。
【0046】
したがってバックアップピストン44に対する制御ピストン46の前進作動時に、第1反力ピストン47は制御ピストン46とともに前進し、第2反力ピストン48の後端は、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなって制御ピストン46の前進移動量が所定値以上となったときに制御ピストン46の前端の端壁46aに当接することになる。
【0047】
再び図3に注目して、増圧弁42は、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力の増大に応じて順次開弁するようにして制御ピストン46の軸方向に並ぶ第1および第2弁手段87,88から成るものであり、第2弁手段88のシール径が第1弁手段87のシール径よりも大きく設定され、第2弁手段88は、開弁した第1弁手段87からの流量が最大になる前に開弁を開始すべく構成される。
【0048】
第1弁手段87は、前端に第1の弁座89が設けられる円筒状の摺動部材90と、液圧発生源12に通じる入力室78に連通する弁室91を内部に形成するリテーナ92と、弁室91内に臨む前記第1の弁座89に着座することを可能としつつ前記リテーナ92に摺動可能に嵌合される弁体93と、該弁体93を第1の弁座89に着座させるように付勢しつつリテーナ92および弁体93間に設けられる第1の弁ばね94と、弁体93に当接することを可能として制御ピストン46に連動、連結されるとともに前記摺動部材90に軸方向相対移動可能に挿入される押圧ロッド95とで構成される。
【0049】
また第2弁手段88は、第1弁手段87と共通の構成要素である前記摺動部材90に設けられる弁部96と、前記摺動部材90を摺動可能に嵌合せしめるとともに第2の弁座97が前端に設けられる段付き円筒状の弁座部材79と、第1弁手段87と共通の構成要素である前記リテーナ92と、弁部96を第2の弁座97に着座させるように付勢しつつリテーナ92および前記摺動部材90間に設けられる第2の弁ばね98と、第1弁手段87と共通の構成要素である押圧ロッド95とで構成される。
【0050】
前記リテーナ92は、弁座部材79の前端部外周に圧入によって取付けられる。このリテーナ92内には、摺動部材90の前端の第1の弁座89ならびに弁座部材79の前端の第2の弁座97を臨ませる弁室91が形成され、液圧発生源12に通じる入力室78に前記弁室91が連通する。
【0051】
第1弁手段87の弁体93は、リテーナ92の前部に摺動可能に嵌合されるスライド部材99の後部に、第1の弁座89に着座可能な球体100が固着されて成るものである。すなわち弁体93はリテーナ92に摺動可能に嵌合されることになり、第1の弁ばね94はリテーナ92の前端部およびスライド部材99間に縮設される。
【0052】
摺動部材90には、前端を第1の弁座89の中央部に開口させた第1の弁孔103と、第1の弁孔103よりも大径にして第1の弁孔103に前端を通じさせるとともに後端を開放した摺動孔104とが同軸に設けられる。一方、弁座部材79には、前端を第2の弁座97の中央部に開口させる第2の弁孔105と、第2の弁孔105と同一径を有して第2の弁孔105に前端を通じさせるとともに後端を開放した摺動孔106とが同軸に設けられ、摺動部材90は、第2の弁孔105を移動可能として同軸に貫通するとともに摺動孔106に摺動可能に嵌合される。
【0053】
押圧ロッド95は、その前端部を第1の弁孔103内に配置して摺動部材90の摺動孔104に摺動可能に嵌合されるものであり、弁座部材79内で前記押圧ロッド95には、摺動部材90の後端に当接して摺動部材90を前方に押圧移動させることを可能とした押圧鍔部95aが一体に設けられ、弁座部材79には、前記押圧鍔部95に後方から当接することで押圧ロッド95の後退限を規制する規制鍔部79aが摺動孔106の後部内面から半径方向内方に張り出すようにして一体に設けられる。
【0054】
前記押圧鍔部95aよりも前方で押圧ロッド95には、摺動孔104の内面に摺接する摺動部95bが設けられており、この摺動部95bよりも前方側で押圧ロッド95は、摺動部材90の内面との間に環状室107を形成するようにして小径に形成される。
【0055】
而して押圧ロッド95の前端で弁体93を押圧して該弁体93を第1の弁座89から離座せしめたときには弁室91が前記環状室107に連通することになる。しかも規制段部79aに押圧鍔部95aが当接している状態で、押圧ロッド95の前端および弁体93間の距離は、摺動部材90の後端および押圧鍔部95a間の距離よりも小さいものであり、押圧ロッド95の前進時に、弁体93が第1の弁座89から離座した後に押圧ロッド95がさらに前進することで押圧鍔部95aにより摺動部材90が前方に押圧されることになる。
【0056】
第2弁手段88の弁部96は、第1の弁座89よりも後方で摺動部材90に設けられるものであり、弁体93が第1の弁座89に着座したときのシール径よりも大きなシール径を有して第2の弁座97に着座可能である。而して第1弁手段87が開弁した後に、押圧ロッド95がさらに前進して摺動部材90が前方に押圧されることにより弁部96が第2の弁座97から離座し、第2弁手段88が開弁することになる。
【0057】
弁座部材79における摺動孔106の内面には、後端を弁座部材79の後端に開放する複数状の流通溝108…が設けられており、摺動部材90には、前記環状室107を各流通溝108…に連通させる複数の連通孔109…が設けられる。
【0058】
前記押圧ロッド95の後部は、調圧室80に突入されており、調圧室80内で押圧ロッド95は、第1および第2弁手段87,88側から調圧室80へのブレーキ液の流通を整流する円盤状の整流部材110の中央部に摺動可能に嵌合される。而して整流部材110は、弁座部材79の調圧室80に臨む面に当接することで前記摺動孔106の調圧室80への開口端を閉じ得るものである。
【0059】
前記整流部材110よりも後方で押圧ロッド95にはばね受け部材111が圧入、固定されており、整流部材110およびばね受け部材111間にはばね112が縮設される。一方、第1反力ピストン47の前端も、図2で示すように、前記押圧ロッド95と同軸にして調圧室80に突入されており、この第1反力ピストン47の前部および整流部材110間にばね84が縮設される。而して整流部材110は、ばね84,112によるばね力で弁座部材79側に向けて付勢されることになるが、ばね84,112のばね力は、整流部材110が弁座部材79の調圧室80に臨む面に当接した状態で第1弁手段87の開弁によって液圧発生源12からの液圧が整流部材110に作用するのに応じて、整流部材110が弁座部材79から離間し得る程度に設定される。
【0060】
減圧弁43は、前記押圧ロッド95の後端部と、第1反力ピストン47の前端部とで構成されるものであり、第1反力ピストン47には、前記押圧ロッド95の後端部が第1反力ピストン47の前端部に当接したときに閉じるようにして第1反力ピストン47の前端に開口する弁孔113と、弁孔113よりも大径に形成されて前端を弁孔113に通じさせるとともに第1反力ピストン47の後端まで延びる解放路114とが同軸に設けられており、第1反力ピストン47の後端には制御ピストン46の前端の端壁46aが常時当接するので解放路114の後端は実質的には閉じられる。
【0061】
図4で示すように、第1反力ピストン47の中間部には、前記解放路114に内端を通じさせる複数の連通孔115…が設けられており、減圧弁43が、前記押圧ロッド95の後端部を第1反力ピストン47の前端部から離反させて弁孔113を開いた開弁時に、解放路114からの作動液は、前記連通孔115…、一次貯留室116およびオリフィス117を介して解放室82に流通する。
【0062】
前記一次貯留室116は、第1および第2反力ピストン47,48間に形成されるものであり、後方側に臨んで第1反力ピストン47の外周に設けられる環状の段部47bと、該段部47bに対向すべく前方側に臨んで第2反力ピストン48の内周に設けられる環状の段部48cとの間で、第1反力ピストン47を囲繞する環状に形成される。しかも連通孔115…は、少なくとも減圧弁43が閉弁状態から開弁し始めるときには一次貯留室116に対応する位置となるようにして、第1反力ピストン47に設けられる。
【0063】
また前記オリフィス117は、第1反力ピストン47の後部外周と、第2反力ピストン48の延長筒部48bの内周との間に形成されるものであり、第1反力ピストン47の後部外周および延長筒部48bの内周間に径差部だけの環状間隙を設定することにより前記オリフィス117が形成される。
【0064】
このような液圧ブースタ13では、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力がストロークシミュレータ14Aを介して制御ピストン46に入力され、制御ピストン46から第1反力ピストン47に前方に向けての押圧力が作用する。而してバックアップピストン44に対する制御ピストン46の前進方向の移動量が所定値未満の状態では、制御ピストン46には第1反力ピストン47だけが当接しており、第1反力ピストン47の前進に応じて減圧弁43が閉弁して調圧室80および解放室82間が遮断され、制御ピストン46、第1反力ピストン47および押圧ロッド95がさらに前進する。この押圧ロッド95の前進に応じて増圧弁42では、先ず第1弁手段87が開弁し、次いで第2弁手段88が開弁する。
【0065】
また減圧弁43の閉弁状態では第1反力ピストン47の前端に調圧室80の液圧が作用しており、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力と、調圧室80の液圧に基づく液圧力とが釣り合うように第1反力ピストン47および制御ピストン46が後退することで減圧弁43が開弁するとともに増圧弁42が閉弁し、そのような増圧弁42および減圧弁43の開閉を繰り返すことで、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11からのブレーキ操作入力に応じた倍力液圧に調圧されて調圧室80に作用することになる。またバックアップピストン44に対する制御ピストン46の前進方向の移動量が所定値以上になると、制御ピストン46には第1反力ピストン47だけでなく第2反力ピストン48も当接することになり、入力室78の液圧によって第2反力ピストン48を後方に向けて押圧する液圧力ならびに反力ばね77のばね力も反力として加わるので、制御ピストン46に作用する反力は大きくなる。
【0066】
図4に注目して、ストロークシミュレータ14Aは、制御ピストン46の前端の端壁46aとの間にストローク液室121を形成して制御ピストン46に液密にかつ軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン122と、該シミュレータピストン122および前記制御ピストン46の端壁46a間に介装されるようにしてストローク液室121に収容される弾性体127とを備える。
【0067】
シミュレータピストン122は、制御ピストン46の後端部に装着される止め輪124によって後退限位置が規制されるようにして、制御ピストン46の後部に摺動可能に嵌合され、ブレーキペダル11に連なる入力部材としての入力ロッド125の前端部がシミュレータピストン122に首振り可能に連接される。すなわちシミュレータピストン122には、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド125を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じてシミュレータピストン122は前進作動する。しかもシミュレータピストン122の外周には、制御ピストン46の内周に摺接する環状のシール部材126が装着される。
【0068】
前記弾性体127は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成されるものであり、制御ピストン46と同軸にして弾性体127を貫通するガイド軸130の前端部に一体に設けられる円板部130aが、制御ピストン46の前端の端壁46aに当接され、ガイド軸130の後端部は、シミュレータピストン122に摺動可能に嵌合される。すなわちシミュレータピストン122の中央部には、ガイド軸130の後端部を摺動可能に嵌合せしめる摺動孔131と、該摺動孔131よりも大径に形成されて摺動孔131の後部に前端を連ならせるとともに後端を閉じた有底孔132とが同軸に設けられており、ガイド軸130の後端部はシミュレータピストン122がガイド軸130に対して前方に相対移動するのに応じて有底孔132に突入される。なお前記円板部130aに代えて、該円板部130aに対応した形状の円板部材がガイド軸130の前端に当接されるようにしてもよい。
【0069】
制御ピストン46の前端の端壁46aには、その端壁46aの前面を臨ませた解放室82をストローク液室121に連通させる複数の開口部133…が、制御ピストン46の中心からの距離を同一として穿設されており、制御ピストン46内のストローク液室121は、前記開口部133…の開放時には解放室82に通じることになる。
【0070】
前記各開口部133…は、制御ピストン46が所定の前進ストローク以上前進したときに、バックアップピストン44に固定されるシールストッパ135で閉じられるものであり、このシールストッパ135は、外周をバックアップピストン44の内周に圧入することで内向き鍔部44aに当接するようにしてバックアップピストン44に固定されるリテーナ136と、リテーナ136に保持される弾性シール部材137とから成る。
【0071】
リテーナ136は、剛性を有する材料たとえば金属によってリング状に形成されるものであり、第2反力ピストン48の前記延長筒部48bとの間に環状の微小間隙を形成するようにしてバックアップピストン44に圧入される。
【0072】
弾性シール部材137は、前記制御ピストン46の半径方向に沿って前記開口部133…の内側および外側で端壁46aの前面に接触することで各開口部133…を塞ぐように形成されてリテーナ136に焼き付け接着される。
【0073】
またリテーナ136の背面には、制御ピストン46の端壁46aが弾性シール部材137に接触した状態で、リテーナ136の内方側を解放室82のうち制御ピストン46の外側部分に通じさせる連通溝138が設けられる。
【0074】
すなわち制御ピストン46の端壁46aが弾性シール部材137に接触した状態では、第2反力ピストン48の延長筒部48bも前記端壁46aに接触しており、リテーナ136および延長筒部48b間は、前記微小間隙および連通溝138を介して、解放室82のうち制御ピストン46の外側部分に通じることになり、制御ピストン46の端壁46aが弾性シール部材137に接触した状態において、弾性シール部材137よりも内方でリテーナ136の後部が臨む空間が制御ピストン46の後退に応じて負圧になることはなく、大気圧に維持される。
【0075】
前記制御ピストン46は、その内周面の一部を前方に向かうにつれて小径となるテーパ状として有底円筒状に形成されるものであり、この実施例1では、シミュレータピストン122よりも前方側でその内周面の一部を前方に向かうにつれて小径となるテーパ面140として、制御ピストン46の前半寄りの部分が内周面をテーパ面140としたテーパ筒部46cとして形成される。
【0076】
図5を併せて参照して、前記弾性体127は、シミュレータピストン122の前進作動に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて弾性変形するとともに前記軸方向圧縮力の増大に応じて制御ピストン46による拘束で変形が阻止されるようにして筒状に形成されるものであり、荷重が非作用状態にある自然な状態では、筒状の弾性体主部127aと、その弾性体主部127aの軸方向両端部の少なくとも一方(この実施例1では両方)に設けられる異形形状部127b,127cとを一体に有するように弾性体127が形成される。しかも前記異形形状部127b,127cは、ブレーキ操作初期での異形形状部127b,127cの撓み量が前記弾性体主部127aの撓み量よりも大きくなるように形成される。
【0077】
図6を併せて参照して、前記ガイド軸130の前端部の円板部130aに当接するようにして弾性体主部127aの前端部に設けられる異形形状部127bは、等間隔をあけた複数個たとえば8個の突部148…が環状の平坦面147から突出するように形成されており、各突部148…は、前記円板部130a側に向かって小径となる円錐台状に形成される。また前記各突部148…の周囲で、前記平坦面147には、溝状の凹部149…が形成される。
【0078】
前記シミュレータピストン122に当接するようにして弾性体主部127aの後端部に設けられる異形形状部127cは、等間隔をあけた複数個たとえば4個の突部151…が環状の平坦面150から突出するように形成されており、各突部151…は、前記円板部130a側に向かって小径となる円錐台状に形成される。また各突部151…の周囲で、前記平坦面150には、溝状の凹部152…が形成される。
【0079】
而して前記弾性体127は、ブレーキペダル11の非操作状態すなわち非ブレーキ操作状態で、前記制御ピストン46の前端の端壁46aに当接したガイド軸130の円板部130aと、前記シミュレータピストン122との間に、軸方向圧縮力が作用した状態で介設される。
【0080】
ところで、シミュレータピストン122において、シール部材126が装着される部分よりも前部には、有底孔132に内端を開口した複数の通路142…がシミュレータピストン122の半径方向に沿うようにして設けられる。これによりガイド軸130およびシミュレータピストン122の前後方向相対移動によって、有底孔132内が加圧状態となったり、減圧状態となったりすることはない。
【0081】
このような構成により、制御ピストン46の前進時に開口部133…がシールストッパ135で閉じられてストローク液室121が液圧ロック状態となるまでは、ストローク液室121は、開口部133…を介して解放室82に連通している。
【0082】
次にこの実施例1の作用について説明すると、液圧ブースタ13と、ブレーキペダル11との間には、ブレーキペダル11の操作ストローク感を得るためのストロークシミュレータ14Aが設けられており、このストロークシミュレータ14Aは、液圧ブースタ13の一部を構成する円筒状の制御ピストン46に軸方向スライド可能に収容されるとともにブレーキペダル11に連結されるシミュレータピストン122と、該シミュレータピストン122の前進作動に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて撓むことで制御ピストン46の内周に弾発的に接触すべく筒状に形成されるとともにシミュレータピストン122および制御ピストン46間に制御ピストン46に収容されるゴムから成る筒状の弾性体127と、シミュレータピストン122の制御ピストン46内での軸方向をガイドするとともに弾性体127の半径方向内方側への撓みを規制するようにして弾性体127に挿入されるガイド軸130とを備えるものであるが、弾性体127が、筒状の弾性体主部127aと、その弾性体主部127aの軸方向両端部の少なくとも一方(この実施例1では両方)に設けられる異形形状部127b,127cとを一体に有するように形成され、異形形状部127b,127cは、ブレーキ操作初期での異形形状部127b,127cの撓み量が前記弾性体主部127aの撓み量よりも大きくなるように形成される。
【0083】
したがってブレーキペダル11によるブレーキ操作初期のブレーキ操作荷重が小さい初期荷重領域では、異形形状部127b,127cの形状変化量の方が弾性体主部127aの変化量よりも大きくなることで、ブレーキ操作初期の比較的小さなブレーキ操作荷重で無効ストロークおよび有効ストロークの特性変化を得ることが可能であり、弾性体およびスプリングが直列に接続されたストロークシミュレータでは、図7の破線で示すように、スプリング領域から弾性体領域への移行期の特性に差があり過ぎて違和感を感じることがあるのに対して、図7の実線で示すように、無効ストロークおよび有効ストロークで滑らかな特性変化が得られるようにして初期ブレーキ操作フィーリングの向上を図ることができる。しかも前記スプリングが不要であるので、部品点数の低減およびコスト低減を図ることができ、異形形状部127b,127cの形状変化によってストロークシミュレータ14Aによるシミュレータ特性を自在に変化させることができ、特に異形形状部127b,127cの撓み量変化が無効ストロークの調整に有効である。
【0084】
また制御ピストン46の内周面の一部が、前方に向かうにつれて小径となるテーパ状に形成されるので、弾性体127の前部の変形を早期に規制して操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0085】
また前記異形形状部127b,127cは、平坦面147,150から突部148…,151…が突出するように形成されて成るものであるので、突部148…,151…の形状を変化させることで初期特性の変更が容易となる。しかも複数個の突部148…,151…が前記平坦面147,150から突出されるので、突部148…,151…の個数を変更することで、初期特性の変更がより容易となる。
【0086】
また各突部148…,151…の周囲で平坦面147,150に溝状の凹部149…,152…を形成することにより、突部148…,151…の変形による歪みを、凹部149…,152…内に肉を逃がすことで緩和することができ、操作フィーリングの更なる向上を図ることができる。
【0087】
さらに前記弾性体127が、ブレーキペダル11の非操作状態で軸方向に圧縮されて前記シミュレータピストン122および前記制御ピストン46間に介設されるものであるので、弾性体127にへたりが生じても、異形形状部127b,127cで吸収することができる。
【実施例2】
【0088】
本発明の実施例2について、図8を参照しながら説明するが、上記実施例1に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0089】
ストロークシミュレータ14Bは、前端を端壁155aで閉じた有底の円筒状に形成される制御ピストン155に軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン156と、前記制御ピストン155の前端の端壁155aに当接する円板部130aとの間に、制御ピストン155に収容される弾性体127が介設されて成る。
【0090】
しかも制御ピストン155の前端の端壁155aには、実施例1の制御ピストン46の端壁46aに設けられていた開口部133…は設けられておらず、制御ピストン155内にブレーキ液が流入することはない。したがって実施例1では、バックアップピストン44側にシールストッパ135が設けられていたが、実施例2ではバックアップピストン44側のシールストッパ135は不要である。
【0091】
制御ピストン155の外面には、前記内向き鍔部17aの内周縁部に前方側から当接、係合することにより制御ピストン155の後退限を規制する規制突部155bが全周にわたって一体に突設される。また前記シミュレータピストン156よりも前方側で、前記制御ピストン155の内周面の一部は前方に向かうにつれて小径となるテーパ面140として形成され、制御ピストン155の前半寄りの部分が内周面をテーパ面140とするようにしたテーパ筒部155cとして形成される。またシミュレータピストン156は、制御ピストン155の後端部に装着される止め輪124によって後退限位置が規制されるようにして、制御ピストン155の後部に摺動可能に嵌合され、入力ロッド125の前端部がシミュレータピストン156に首振り可能に連接される。
【0092】
筒状の弾性体主部127aと、その両端の異形形状部127b,127cとを一体に有してゴムによって形成される弾性体127を貫通するガイド軸130の前端には、前記制御ピストン155の前端の端壁155aに当接する円板部130aが一体に設けられ、このガイド軸130の後部はシミュレータピストン156に摺動可能に嵌合される。
【0093】
この実施例2のストロークシミュレータ14Bによっても実施例1と同様の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0094】
本発明の実施例3について、図9を参照しながら説明するが、上記実施例1,2に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0095】
ストロークシミュレータ14Cは、制御ピストン155に軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン156と、前記制御ピストン155の前端の端壁155aとの間に、制御ピストン155に収容される弾性体127が介設されて成る。
【0096】
筒状の弾性体主部127aと、その両端の異形形状部127b,127cとを一体に有してゴムによって形成される弾性体127は、前記制御ピストン155の端壁155aに同軸かつ一体に設けられるガイド軸157を貫通せしめるようにして、制御ピストン155の端壁155aおよび前記シミュレータピストン156間に介設されつつ、前記制御ピストン155内に収容される。またガイド軸157の後端部は、シミュレータピストン156に摺動可能に嵌合される。
【0097】
この実施例3のストロークシミュレータ14Cによっても実施例1,2と同様の効果を奏することができ、実施例2のものと比べて部品構成を簡素化することができ、部品点数の低減が可能となる。
【実施例4】
【0098】
本発明の実施例4について図10を参照しながら説明するが、上記実施例1〜3に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0099】
ストロークシミュレータ14Dは、前端を端壁158aで閉じた有底円筒状の制御ピストン158に軸方向摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン159と、前記制御ピストン158の前端の端壁158aとの間に、制御ピストン158に収容される弾性体127が介設されて成る。
【0100】
制御ピストン158の外面には、前記内向き鍔部17aの内周縁部に前方側から当接、係合することにより制御ピストン158の後退限を規制する規制突部158bが全周にわたって一体に突設される。また前記シミュレータピストン159よりも前方側で、前記制御ピストン158の内周面の一部は前方に向かうにつれて小径となるテーパ面140として形成され、制御ピストン1585の前半寄りの部分が内周面をテーパ面140とするようにしたテーパ筒部158cとして形成される。また筒状の弾性体主部127aと、その両端の異形形状部127b,127cとを一体に有してゴムによって形成される弾性体127を貫通するガイド軸160は、シミュレータピストン159の前端に同時にかつ一体に設けられ、このガイド軸160の前部は、制御ピストン158の端壁158aに設けられて前端を閉じたガイド孔161に摺動可能に嵌合される。
【0101】
この実施例4のストロークシミュレータ14Dによっても実施例1〜3と同様の効果を奏することができ、実施例2のものと比べて部品構成を簡素化することができ、部品点数を低減するとともに加工性の向上を図ることができる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0103】
11・・・ブレーキ操作部材であるブレーキペダル
12・・・液圧発生源
13・・・液圧ブースタ
14A,14B,14C,14D・・・ストロークシミュレータ
22・・・倍力液圧室
23・・・マスタピストンである後部マスタピストン
46,155,158・・・制御ピストン
122,156,159・・・シミュレータピストン
127・・・弾性体
127a・・・弾性体主部
127b,127c・・・異形形状部
147,150・・・平坦面
148,151・・・突部
149,152・・・凹部
M・・・マスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタシリンダ(M)が備えるマスタピストン(23)の背面を臨ませる倍力液圧室(22)の液圧に基づく反力ならびにブレーキ操作部材(11)からのブレーキ操作入力が釣り合うように作動する円筒状の制御ピストン(46,155,158)を有するとともに該制御ピストン(46,155,158)が軸方向に作動するのに応じて液圧発生源(12)の液圧を調圧して前記倍力液圧室(22)に作用せしめる液圧ブースタ(13)と、前記ブレーキ操作部材(11)との間に、ストロークシミュレータ(14A,14B,14C,14D)が設けられる車両用ブレーキ装置において、前記ストロークシミュレータ(14A〜14D)は、筒状の弾性体主部(127a)と、その弾性体主部(127a)の軸方向両端部の少なくとも一方に設けられる異形形状部(127b,127c)とを一体に有して前記制御ピストン(46,155,158)に収容される弾性体(127)が、前記ブレーキ操作部材(11)に連なって前記制御ピストン(46,155,158)に軸方向スライド可能に収容されるシミュレータピストン(122,156,159)と、前記制御ピストン(46,155,158)との間に介設されて成り、ブレーキ操作初期での前記異形形状部(127b,127c)の撓み量が前記弾性体主部(127a)の撓み量よりも大きくなるように、前記異形形状部(127b,127c)が形成されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記異形形状部(127b,127c)が、平坦面(147,150)から突部(148,151)が突出するように形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
複数個の前記突部(148,151)が前記平坦面(147,150)から突出されることを特徴とする請求項2記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記突部(148,151)の周囲で前記平坦面(147,150)には、凹部(149,152)が形成されることを特徴とする請求項2または3記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記弾性体(127)が、前記ブレーキ操作部材(11)の非操作状態で軸方向に圧縮されて前記シミュレータピストン(122,156,159)および前記制御ピストン(46,155,158)間に介設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記弾性体(127)がゴムから成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−264839(P2010−264839A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116846(P2009−116846)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】