説明

車両用ミラー装置

【課題】モータを小型化できる車両用ミラー装置を提供する。
【解決手段】クラッチ50及びストッパ60は、互いに独立した第1捩りコイルスプリング56及び第2捩りコイルスプリング62によって、それぞれ別々に弾性力を付与される。このためストッパ及びクラッチが解除された状態における第1捩りコイルスプリング56及び第2捩りコイルスプリング62の各弾性変形量を共に小さく設定でき、クラッチ50とギヤ42との係合部分に作用する第1捩りコイルスプリング56の弾性力とストッパ60とケース28との係合部分に作用する第2弾性部材の弾性力とを共に減少させることができる。これによりクラッチ50とギヤ42との間及びストッパ60とケース28との間に作用する摺動抵抗とを共に減少させることができるので、通常状態への復帰のためのモータ36の駆動トルクを小さく設定でき、これによりモータ36の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用ドアミラー装置では、駆動機構(格納機構)を備えており(例えば、特許文献1参照)、駆動機構はスタンドを有している。スタンドは車体側に固定されると共に、スタンドには支持軸が車両上下方向に沿って一体に立設されている。
【0003】
また、駆動機構はケースを備えている。ケースは底壁に形成されたボス部にスタンドの支持軸が挿通されることで、支持軸に回転可能に支持されている。このケースにはステー等を介して車両後方視認用のミラーが連結されており、ケースは基本的にミラーと一体に回動する。
【0004】
ケースの内部には、ギヤプレートが配置されている。ギヤプレートは、スタンドの支持軸に回転可能に支持されると共に、ケースのボス部の上端面に当接することで支持軸に対して下側へ移動不能とされており、ケースに取り付けられたモータから支持軸周りの回転力が付与されるようになっている。
【0005】
ギヤプレートの上側には、クラッチが配置されている。このクラッチは、支持軸に対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持されており、ギヤプレートに対して噛合い係合するようになっている。また、このクラッチは、ギヤプレートと反対側に配置された捩りコイルスプリングによって常にギヤプレート側へ付勢されており、通常はクラッチとギヤプレートとの噛合い係合状態が維持されるようになっている。
【0006】
このため、ギヤプレートは、通常は支持軸に対して回転不能とされており、モータからギヤプレートに回転力が付与されると、この回転力の反力によってケースが支持軸周りに回動され、これにより、ミラーが格納または展開される。
【0007】
また、ケースの底壁とスタンドとの間には、リング状のストッパプレートがスタンドに対して回転不能に取り付けられている。ケースは、クラッチ及びギヤプレートを介して作用する捩りコイルスプリングの付勢力により、ストッパプレート側へ圧接されており、ストッパプレートは、ケースの回動を所定の範囲内(格納位置と展開位置との間)に規制するようになっている。
【0008】
上記構成のドアミラー装置では、ミラーが展開位置に位置する状態で、ミラー(ケース)に車両前方側へ向いた所定値以上の外力が作用すると、ケースがクラッチ及びギヤプレートと共に捩りコイルスプリングの付勢力に抗してストッパプレート及び支持軸に対して上昇することで、ストッパプレートによるケースの回動規制が解除されるようになっている(ストッパが解除状態となる)。これにより、ミラーの車両前方側への回動が可能となり、上記外力によってミラーが破損することが防止される。
【0009】
また、上述の如くミラーが車両前方側へ回動される際には、クラッチが捩りコイルスプリングの付勢力に抗して支持軸及びギヤプレートに対して上昇することで、クラッチとギヤプレートとの噛合い係合状態が解除されるようになっている(クラッチが解除状態となる)。これにより、ギヤプレートの支持軸に対する相対回転が可能となり、上記外力によってギヤプレートからモータの本体部側へ向けての構成が破損することが防止される。
【0010】
一方、上述の如くミラーが車両前方側に回動した状態でモータが格納方向に駆動されると、ギヤプレートがクラッチとの噛合い係合位置まで相対回転し、クラッチが捩りコイルスプリングの付勢力によりギヤプレートに対して下降することで、ギヤプレートとクラッチとが再び噛合い係合状態となる。これにより、ギヤプレートの支持軸に対する相対回転が規制され、ケースはギヤプレートに付与される回転力の反力で格納方向に回動される。そして、ケースが所定の展開位置に達すると、ケースが捩りコイルスプリングの付勢力によりストッパプレートに対して下降することで、ケースがストッパプレートにより再び回動規制される(ドアミラー装置が通常の状態に復帰する)。
【0011】
ところで、上記構成のドアミラー装置では、ミラーが展開位置を超えて車両前方側へ回動した状態(ストッパ及びクラッチが解除された状態)では、ケースのストッパプレートに対する上昇分とクラッチのギヤプレートに対する上昇分だけ捩りコイルスプリングが圧縮方向に弾性変形し、捩りコイルスプリングの弾性力が増加するが、当該増加した弾性力は、クラッチとギヤプレートとの間、ギヤプレートとケースのボス部との間、及びケースとストッパプレートとの間に作用する。
【0012】
このため、上記各構成部材間の摺動抵抗が増加するので(ケースを通常の回動範囲内まで回動させるための必要トルクが大きくなるので)、上述の如くモータの駆動力によりドアミラー装置を通常の状態に復帰させるためには、上記増加した摺動抵抗に対抗しうる高トルクのモータが必要になり、駆動機構の小型化、低騒音化の妨げになっている。
【特許文献1】特開2002−274267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事実を考慮し、モータを小型化できる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明の車両用ミラー装置は、車体側に固定された支持軸に回動自在に支持されると共に車両後方視認用のミラーに直接的又は間接的に連結されたケースと、前記ケースに固定されたモータと、前記支持軸に対して軸線方向一側へ移動不能でかつ回転可能に支持されると共に前記モータに接続され、前記モータから前記支持軸周りの回転力を付与されるギヤと、前記ギヤに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置すると共に前記支持軸に対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持され、前記ギヤに噛合い係合可能とされたクラッチと、前記クラッチに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記噛合い係合状態からの前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記クラッチの軸線方向移動に対して抗力を付与する第1弾性部材と、前記ギヤに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記クラッチに対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持され、前記ケースが所定の展開位置又は所定の格納位置に到達した際に前記ケースに係合することで前記ケースの回動を規制すると共に、前記回動規制に対抗する外力が前記ケースに作用した際には前記ケースとの前記係合部分から分力を受けて前記支持軸の軸線方向他側へ軸線方向移動し前記回動規制を解除するストッパと、前記ストッパに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記ストッパの軸線方向移動に対して抗力を付与する第2弾性部材と、ことを特徴としている。
【0015】
請求項1記載の車両用ミラー装置では、ケースに固定されたモータが駆動されると、支持軸に回転可能に支持されたギヤに支持軸周りの回転力が付与される。このギヤは、支持軸に対して回転不能に支持されたクラッチと噛合い係合可能とされており、通常は捩りコイルスプリングの付勢力によりクラッチとの噛合い係合状態を維持されている。このため、ギヤは、通常は支持軸に対して回転不能とされており、上述の如くギヤに回転力が付与されると、当該回転力の反力でケースが支持軸周りに回動される。このため、ケースに連結されたミラーが回動されて格納又は展開される。
【0016】
ミラー(ケース)が所定の展開位置又は所定の格納位置に到達すると、クラッチすなわち支持軸に対して回転不能に支持されたストッパにケースが係合することで、ミラー(ケース)の回動が規制される。そして、例えば、当該回動規制によりモータに流れる過電流が検出されることで、モータが停止される。
【0017】
一方、例えば、ミラー(ケース)が展開位置に位置する状態で、ストッパによるケースの回動規制に対抗する所定値以上の外力がミラー(ケース)に作用すると、ストッパが第2弾性部材の抗力(弾性力)に対抗して支持軸の軸線方向他側へ軸線方向移動する。これにより、ストッパによるケースの回動規制が解除され(ストッパが解除され)、ミラー(ケース)が展開位置を超えて回動することが可能となる。またこのとき、クラッチが第1弾性部材の抗力(弾性力)に対抗して支持軸の軸線方向他側へ軸線方向移動する。これにより、クラッチとギヤの噛合い係合状態が解除され(クラッチが解除され)、ギヤは上記外力によりケースと一体で回動される。
【0018】
さらに、上述の如くケースが展開位置を超えて回動した状態で、モータが格納方向に駆動されると、ギヤがクラッチに対して相対回転する。そして、ギヤがクラッチとの噛合い係合位置に達すると、クラッチが第1弾性部材の弾性力により支持軸の軸線方向一側へ軸線方向移動してギヤとの噛合い係合状態に復帰される。これにより、ギヤの支持軸に対する相対回転が規制され、ケースはギヤに付与される回転力の反力で格納方向に回動される。そして、ケースが展開位置に達すると、ストッパが第2弾性部材の弾性力により支持軸の軸線方向一側へ軸線方向移動し、これにより、ケースはストッパにより再び回動範囲を規制される(本車両用ミラー装置が通常の状態に復帰する)。
【0019】
ここで、この車両用ミラー装置では、クラッチ及びストッパは、互いに独立した第1弾性部材及び第2弾性部材によって、それぞれ別々に弾性力を付与される構成である。このため、ストッパ及びクラッチが解除された状態における各弾性部材の弾性変形量を小さく設定することができ、クラッチとギヤとの係合部分に作用する第1弾性部材の弾性力と、ストッパとケースとの係合部分に作用する第2弾性部材の弾性力とを共に減少させることができる。これにより、クラッチとギヤとの間に作用する摺動抵抗と、ストッパとケースとの間に作用する摺動抵抗とを共に減少させることができるので、上記通常状態への復帰のためのモータの駆動トルクを小さく設定することが可能であり、これにより、モータの小型化を図ることができる。
【0020】
請求項2に係る発明の車両用ミラー装置は、請求項1記載の車両用ミラー装置において、前記ケース及び前記ストッパの何れか一方は、前記支持軸の径方向に突出する係合凸部を有すると共に、前記ケース及び前記ストッパの何れか他方は、前記係合凸部を内側に収容する係合凹部を有し、前記ケースは、前記展開位置又は前記格納位置に到達した際に前記係合凸部が前記係合凹部の内壁に当接することで回動を前記規制されると共に、前記係合凸部及び前記係合凹部の少なくとも一方には、前記当接部分に前記支持軸の周方向に対して傾斜する傾斜面が形成され、前記傾斜面は、前記ケースに作用する前記外力によって前記ストッパに前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記分力を生じせしめる、ことを特徴としている。
【0021】
請求項2記載の車両用ミラー装置では、ケースが展開位置又は格納位置に到達した際には、ケース及びストッパの何れか一方に形成された係合凸部が、何れか他方に形成された係合凹部の内壁に当接することで、ケースの回動が規制される。また、このようにケースの回動が規制された状態で、当該回動規制に対抗する外力がケースに作用した際には、係合凸部及び係合凹部の少なくとも一方の前記当接部分に形成された傾斜面により、ストッパに支持軸軸線方向他側へ向けた分力が発生し、ストッパが支持軸軸線方向他側へ軸線方向移動する。これにより、ストッパによるケースの回動規制が解除される。このように、係合凸部と係合凹部により、ケースの回動規制とストッパの軸線方向移動とを両立できるので構成が簡単である。
【0022】
請求項3に係る発明の車両用ミラー装置は、請求項2記載の車両用ミラー装置において、前記支持軸は、前記ギヤに当接して前記ギヤの前記支持軸軸線方向一側への移動を規制する当接部を有する、ことを特徴としている。
【0023】
請求項3記載の車両用ミラー装置では、ギヤは、支持軸に形成された当接部に当接することで、支持軸軸線方向一側への移動を規制されている。すなわち、通常の使用状態では、クラッチを介してギヤに作用する第1弾性部材の弾性力と、ストッパを介してギヤに作用する第2弾性部材の弾性力とが共に支持軸に作用する構成であるため、前記各弾性力がケースに作用せず、これにより、ケースの回動に必要なトルクを低く設定できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く、本発明の車両用ミラー装置では、モータを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図6には、本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置としてのドアミラー装置10の概略的な構成が正面図にて示されている。
【0026】
なお、以下の説明で使用する「上」及び「下」の方向性は、本ドアミラー装置10が車両に取り付けられた状態での方向性を示すものである。
【0027】
ドアミラー装置10は、ミラー装置本体12を備えている。ミラー装置本体12は、バイザ14を備えており、バイザ14の内側には車両後方視認用のミラー16が支持されている。
【0028】
また、ドアミラー装置10は、図示しない車両のドアパネルに締結固定されたステー18を備えており、ステー18とミラー装置本体12との間には駆動機構20が設けられている。
【0029】
図1に示す如く、駆動機構20は、スタンド22を備えており、スタンド22は車両のドアに固定されたドアミラーステー(図示省略)に固定される固定部24と、固定部24の上側に一体的に立設された円筒状の支持軸26とを備えている。
【0030】
また、駆動機構20は、ケース28を備えている。ケース28は、本体部30を備えており、本体部30の上壁及び底壁に形成された貫通孔に支持軸26が挿通されることで、ケース28は支持軸26に回動自在に支持されている。本体部30の側方には、連結部32が一体的に延出されている。この連結部32には、フレーム及び鏡面調整機構(共に図示省略)を介してミラー14が連結されており、ケース28はミラー14と基本的に一体に回動する。
【0031】
本体部30と連結部32との間には、モータ固定部34が形成されており、モータ36が固定されている。モータ36の出力軸はケース28の本体部30内に挿入されており、該出力軸にはウォーム38が取り付けられている。ウォーム38の下部はケース28の底壁に回転自在に支持されている。
【0032】
一方、前述した支持軸26の基端側は、段付状に形成されており、当接部40が形成されている。この当接部40の上側にはギヤ42が配置されている。ギヤ42は、支持軸26に対して回転可能に支持されており、当接部40に当接することで下側(支持軸26の軸線方向一側)へ移動不能とされている。
【0033】
ギヤ42とウォーム38との間には、ウォームシャフト44が配置されている。図2に示す如く、ウォームシャフト44は、軸線方向両端部がケース28に回転自在に軸支されており、ギヤ42に噛合されたウォームギヤ部46とウォーム38(図2では図示省略)に噛合されたヘリカルギヤ部48とを有している。このため、モータ36の出力軸が回転すると、ウォーム38及びウォームシャフト44が回転し、ギヤ42に支持軸26周りの回転力が付与される。
【0034】
また一方、ギヤ42の上側(ギヤ42に対して支持軸26の軸線方向他側)には、リング状に形成されたクラッチ50が支持軸26に対して同軸的に配置されている。クラッチ50は、支持軸26に対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持されており、ギヤ42側の端面に形成された凸部52がギヤ42に形成された凹部54に嵌入することで、ギヤ42に対して噛合い係合するようになっている。
【0035】
クラッチ50の上側(クラッチ50に対して支持軸26の軸線方向他側)には第1弾性部材としての第1捩りコイルスプリング56が支持軸26に対して同軸的に配置されている。第1捩りコイルスプリング56は、支持軸26の先端部に固定されたプッシュナット58によって上側への移動を規制されており、クラッチ50をギヤ42との噛合い係合状態に保持している。
【0036】
このため、ギヤ42は、通常はクラッチ50によって支持軸26に対する相対回転を規制されている。但し、クラッチ50の凸部52及びギヤ42の凹部54には、クラッチ50及びギヤ42の周方向に対して傾斜する傾斜面が形成されており、ギヤ42とクラッチ50との間に回転力が作用すると、クラッチ50には、上側(支持軸26の軸線方向他側)へ向いた分力が生じるようになっている。したがって、ギヤ42とクラッチ50との間に作用する回転力が所定値以上になると、クラッチ50が第1捩りコイルスプリング56の弾性力に抗してギヤ42に対して上昇し、クラッチ50の凸部52がギヤ42の凹部54から抜け出すようになっている。これにより、クラッチ50とギヤ42との噛合い係合状態が解除される構成である。
【0037】
一方、ギヤ42の上側(ギヤ42に対して支持軸26の軸線方向他側)でかつクラッチ50の径方向外側には、リング状に形成されたストッパ60が配置されている。ストッパ60の内側にはクラッチ50が嵌合しており、ストッパ60はクラッチ50を介して支持軸26に同軸的に支持されている。また、ストッパ60の内周部にはクラッチ50の外周部に形成された突起が嵌合する溝(共に図示省略)が形成されており、ストッパ60はクラッチ50に対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持されている。
【0038】
ストッパ60の上側(ストッパ60に対して支持軸26の軸線方向他側)には、第2弾性部材としての第2捩りコイルスプリング62が配置されている。第2捩りコイルスプリング62は、プッシュナット58によって上側への移動を規制されており、ストッパ60をギヤ42に圧接させている。
【0039】
図2にも示す如く、ストッパ60の外周部には、ストッパ60の径方向外側及び下側(ギヤ42側)へ開口する一対の係合凹部64が形成されている。これら一対の係合凹部64は、ストッパ60の周方向に沿って互いに180度反対側(支持軸26の軸線に対して点対称な位置)に形成されており、それぞれストッパ60の周方向に沿って湾曲して形成されている。
【0040】
一対の係合凹部64の内側には、ケース28の側壁に突設された一対の係合凸部66がそれぞれ収容配置されている。一対の係合凸部66は、支持軸26の軸線に対して点対称な位置に形成されており、ケース28(ミラー装置本体12)が支持軸26周りに回動して所定の展開位置(ミラー16の反射面が略車両後方を向く位置、通常の使用状態での位置)及び所定の格納位置(ミラー16の反射面が車両左右方向内側を向く位置)に到達した際には、一対の係合凸部66がストッパ60の一対の係合凹部64の内壁(湾曲方向端部)に当接することで、ケース28(ミラー装置本体12)の回動が規制されるようになっている(ケース28の回動範囲がストッパ60によって展開位置と格納位置との間に制限される構成である)。
【0041】
但し、一対の係合凹部64の湾曲方向端部には、ストッパ60の周方向に対して傾斜する傾斜面が形成されており、ミラー装置本体12(ケース28)が展開位置又は格納位置に位置する状態で、上記回動規制に対抗する外力がミラー装置本体12(ケース28)に作用した際(例えば、展開位置に位置するミラー装置本体12に車両前方側へ向いた外力が作用した際など)には、ストッパ60には上側(支持軸26の軸線方向他側)へ向けた分力が生じるようになっている。したがって、上記外力の大きさが所定値以上の場合には、ストッパ60が第2捩りコイルスプリング62の弾性力に抗して上側に移動し、一対の係合凸部66が一対の係合凹部64から抜け出すようになっている。これにより、ミラー装置本体12(ケース28)が展開位置又は格納位置を越えて回動することが可能となる構成である。
【0042】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0043】
上記構成のドアミラー装置10では、ケース28に固定されたモータ36が駆動されると、ウォーム38及びウォームシャフト44が回転し、ギヤ42に支持軸26周りの回転力が付与される。このギヤ42は、第1捩りコイルスプリング56の弾性力(付勢力)によって、支持軸26に対して回転不能に支持されたクラッチ50との噛合い係合状態を維持されており、通常は支持軸26に対して回転不能とされている。このため、上述の如くギヤ42に回転力が付与されると、当該回転力の反力でケース28が支持軸26周りに回動される。これにより、ミラー装置本体12がケース28と一体で回動されて格納又は展開される。
【0044】
ミラー装置本体12(ケース28)が所定の展開位置に到達した際には、図3に示す如く、ストッパ60の係合凹部64の湾曲方向端部にケース28の係合凸部66が係合することで、ミラー装置本体12(ケース28)の回動が規制される。そして、例えば、当該回動規制によりモータ36に流れる過電流が検出されることで、モータ36が停止される。
【0045】
一方、例えば、ミラー装置本体12(ケース28)が展開位置に位置する状態(図3図示状態)で、ミラー装置本体12に車両前方側へ向いた所定値以上の外力が作用すると(ストッパ60によるケース28の回動規制に対抗する所定値以上の外力がミラー装置本体12に作用すると)、ストッパ60の係合凹部64の湾曲方向端部に形成された傾斜面がケース28の一対の係合凸部66から上向き(支持軸26の軸線方向他側へ向いた)の分力を受けることで、図4(A)及び図4(B)に示す如く、ストッパ60が第2捩りコイルスプリング62の弾性力に対抗して上側へ軸線方向移動する。これにより、ストッパ60によるケース28の回動規制が解除され(ストッパが解除され)、ミラー装置本体12(ケース28)が展開位置を超えて回動することが可能となる。
【0046】
またこのとき、ギヤ42は、ウォームシャフト44を介してケース28と一体で回動しようとし、ギヤ42とクラッチ50との間には、所定値以上の回転力が作用する。このため、凸部52及び凹部54の傾斜面により生じる分力により、図4(A)及び図4(B)に示す如く、クラッチ50が第1捩りコイルスプリング56の弾性力に対抗して上側(支持軸26の軸線方向他側)へ軸線方向移動する。これにより、凸部52が凹部54から抜け出し、クラッチ50とギヤ42の噛合い係合状態が解除される(クラッチが解除される)。これにより、ギヤ42のクラッチ50に対する相対回転が可能となり、ギヤ42は上記外力によりミラー装置本体12(ケース28)と一体で回動される。
【0047】
さらに、上述の如くケース28が展開位置を超えて車両前方側へ回動した状態で、モータ36が格納方向に駆動されると、ウォーム38及びウォームシャフト44を介してギヤ42が回転する(ギヤ42がクラッチ50に対して相対回転する)。そして、ギヤ42の凹部54がクラッチ50の凸部52に対応すると(ギヤ42がクラッチ50との噛合い係合位置に達すると)、図5に示す如く、クラッチ50が第1捩りコイルスプリング56の弾性力によって下側(支持軸26の軸線方向一側)へ軸線方向移動してギヤ42との噛合い係合状態に復帰される。これにより、ギヤ42の支持軸26に対する相対回転が規制され、ミラー装置本体12(ケース28)はギヤ42に付与される回転力の反力で格納方向に回動される。そして、ミラー装置本体12(ケース28)が展開位置に達すると、ストッパ60が第2捩りコイルスプリング62の弾性力によって下側(支持軸26の軸線方向一側)へ軸線方向移動し、これにより、ミラー装置本体12(ケース28)はストッパ60により再び回動範囲を規制される(図1及び図2に示される通常の状態に復帰する)。
【0048】
ここで、本実施の形態に係るドアミラー装置10では、クラッチ50及びストッパ60は、互いに独立した第1捩りコイルスプリング56及び第2捩りコイルスプリング62によって、それぞれ別々に弾性力を付与される構成である。このため、ストッパ及びクラッチが解除された状態における第1捩りコイルスプリング56及び第2捩りコイルスプリング62の各弾性変形量を共に小さく設定することができ、クラッチ50とギヤ42との係合部分に作用する第1捩りコイルスプリング56の弾性力と、ストッパ60とケース28との係合部分に作用する第2弾性部材の弾性力とを共に減少させることができる。これにより、クラッチ50とギヤ42との間に作用する摺動抵抗と、ストッパ60とケース28との間に作用する摺動抵抗とを共に減少させることができるので、上記通常状態への復帰のためのモータ36の駆動トルクを小さく設定することが可能であり、これにより、モータ36の小型化を図ることができる。
【0049】
しかも、本実施の形態に係るドアミラー装置10では、上述の如く、ケース28に形成された一対の係合凸部66とストッパ60に形成された一対の係合凹部64により、ケース28の回動規制とストッパ60の軸線方向移動とを両立できるので構成が簡単である。
【0050】
さらに、本実施の形態に係るドアミラー装置10では、ギヤ42は、支持軸26に形成された当接部40に当接することで、支持軸26の軸線方向一側への移動を規制されている。すなわち、クラッチ50を介してギヤ42に作用する第1捩りコイルスプリング56の弾性力と、ストッパ60を介してギヤ42に作用する第2捩りコイルスプリング62の弾性力とが共に支持軸26に作用する構成であるため、上記各弾性力がケース28に作用せず、これにより、ケース28の回動に必要なトルクを低く設定できる。
【0051】
以上説明した如く、本発明の実施の形態に係るドアミラー装置10では、モータ36を小型化できる。
【0052】
なお、上記実施の形態に係るドアミラー装置10では、ケース28に係合凸部66が形成され、ストッパ60に係合凹部64が形成された構成としたが、これに限らず、ケース28に係合凹部が形成され、ストッパに係合凹部が形成された構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の駆動機構の構成を示す正面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の駆動機構の部分的な構成を示す平面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の駆動機構においてケースの係合凸部がストッパの係合凹部の内壁に当接した状態を示す平面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の駆動機構においてストッパ及びクラッチが解除された状態を示し、(A)は平面断面図であり、(B)は正面断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の駆動機構においてストッパ60が解除された状態を示す正面断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用ミラー装置の概略的な構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
16 ミラー
26 支持軸
28 ケース
36 モータ
40 当接部
42 ギヤ
50 クラッチ
56 第1捩りコイルスプリング(第1弾性部材)
60 ストッパ
62 第2捩りコイルスプリング(第2弾性部材)
64 係合凹部
66 係合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定された支持軸に回動自在に支持されると共に車両後方視認用のミラーに直接的又は間接的に連結されたケースと、
前記ケースに固定されたモータと、
前記支持軸に対して軸線方向一側へ移動不能でかつ回転可能に支持されると共に前記モータに接続され、前記モータから前記支持軸周りの回転力を付与されるギヤと、
前記ギヤに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置すると共に前記支持軸に対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持され、前記ギヤに噛合い係合可能とされたクラッチと、
前記クラッチに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記噛合い係合状態からの前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記クラッチの軸線方向移動に対して抗力を付与する第1弾性部材と、
前記ギヤに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記クラッチに対して回転不能でかつ軸線方向に沿って移動可能に支持され、前記ケースが所定の展開位置又は所定の格納位置に到達した際に前記ケースに係合することで前記ケースの回動を規制すると共に、前記回動規制に対抗する外力が前記ケースに作用した際には前記ケースとの前記係合部分から分力を受けて前記支持軸の軸線方向他側へ軸線方向移動し前記回動規制を解除するストッパと、
前記ストッパに対して前記支持軸の軸線方向他側に位置し、前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記ストッパの軸線方向移動に対して抗力を付与する第2弾性部材と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記ケース及び前記ストッパの何れか一方は、前記支持軸の径方向に突出する係合凸部を有すると共に、前記ケース及び前記ストッパの何れか他方は、前記係合凸部を内側に収容する係合凹部を有し、
前記ケースは、前記展開位置又は前記格納位置に到達した際に前記係合凸部が前記係合凹部の内壁に当接することで回動を前記規制されると共に、
前記係合凸部及び前記係合凹部の少なくとも一方には、前記当接部分に前記支持軸の周方向に対して傾斜する傾斜面が形成され、
前記傾斜面は、前記ケースに作用する前記外力によって前記ストッパに前記支持軸軸線方向他側へ向けた前記分力を生じせしめる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記支持軸は、前記ギヤに当接して前記ギヤの前記支持軸軸線方向一側への移動を規制する当接部を有する、ことを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−306321(P2006−306321A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133326(P2005−133326)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】