説明

車両用ラッチ装置

【課題】大型化を抑えつつ、内部への水の浸入を抑えることが可能な車両用ラッチ装置を提供すること。
【解決手段】電動アクチュエータ110の保持部材50Bに設けた支持軸101,102を中心として回動し、電動アクチュエータの駆動力が入力されるカムピン133cと、支持軸を中心とする回動によってラッチとラチェットとの噛合を解除する出力部131aとを有する解除部材120,130と、支持軸101,102を中心として回動すると共に、電動アクチュエータと解除部材との間を接続し、電動アクチュエータの駆動力を入力部へ入力するギア部材140とを備えた車両用ラッチ装置。カムピンをギア部材の回転面と重ねて配置し、保持部材に取り付けられ、少なくとも支持軸、入力部、電動アクチュエータ及びギア部材を覆うカバー部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータユニットを備える車両用ラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ラッチ装置は、車両のドアに配置されており、操作ケーブルを介して連結されたドアハンドルを操作することによってラッチとストライカとの係合を解除してドアを開ける他に、モータ等の電動アクチュエータを動作させてラッチとストライカとの係合を解除し、ドアを開くことのできるロック装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3985935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された従来のロック装置は、車両のドアに配置されているため、ドアハンドルとドアとの隙間から車両の洗浄に伴う洗浄水や雨水が浸入し、操作ケーブルを伝わって内部に入り込む虞があるため、ロック装置は、水が浸入しないようにする必要がある。この場合、電動アクチュエータを含む部分をケースで覆うことが考えられるが、単にケースで覆うと大型化して配置できなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、大型化を抑えつつ、内部への水の浸入を抑えることが可能な車両用ラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両用ラッチ装置は、電動アクチュエータの保持部材に設けた支持軸を中心として回動し、前記電動アクチュエータの駆動力が入力される入力部と、前記支持軸を中心とする回動によってラッチとラチェットとの噛合を解除する出力部とを有する解除手段と、前記支持軸を中心として回動すると共に、前記電動アクチュエータと前記解除手段との間を接続し、前記電動アクチュエータの駆動力を前記入力部へ入力するギア部材と、を備えた車両用ラッチ装置であって、前記入力部を前記ギア部材の回転面と重ねて配置し、前記保持部材に取り付けられ、前記少なくとも前記支持軸、前記入力部、前記電動アクチュエータ及び前記ギア部材を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の車両用ラッチ装置は、上記の発明において、前記ギア部材は、前記電動アクチュエータに設けたウォーム歯車と噛合するギア部と、前記入力部が摺動可能に係合するカム溝とを有するロックレバーであり、前記解除手段は、前記支持軸に支持され、操作ハンドルとの間を連結する操作ケーブルの一端が係合されるケーブル係合部と、前記操作ケーブルを介して伝達される前記操作ハンドルの操作力を前記入力部へ出力する操作出力部とを有するケーブルレバーと、前記入力部を設けたスライダを長手方向に沿って移動可能に設けた入力アームと前記出力部を端部に設けた出力アームとを有し、前記支持軸を中心として回動するオープンレバーと、を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の車両用ラッチ装置は、上記の発明において、前記支持軸は、第1の支持軸と第2の支持軸とを有し、前記ケーブルレバーと前記オープンレバーは、前記第1の支持軸を中心として回動し、前記ロックレバーは、前記第2の支持軸を中心として回動することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の車両用ラッチ装置は、上記の発明において、前記ギア部材は、前記電動アクチュエータに設けたウォーム歯車と噛合するギア部と、前記入力部が摺動可能に係合するカム壁とを有するカムギアであり、前記解除手段は、前記入力部が設けられた入力アームと、端部に前記出力部が設けられた出力アームとを有し、前記入力部への入力を前記出力部へと伝達するオープンレバーを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車両用ラッチ装置は、上記の発明において、前記支持軸は、第1の支持軸と第2の支持軸とを有し、前記オープンレバーは、前記第1の支持軸を中心として回動し、前記カムギアは、前記第2の支持軸を中心として回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、解除手段の入力部をギア部材の回転面と重ねて配置すると共に、保持部材に取り付けられ、解除手段の少なくとも支持軸と入力部、電動アクチュエータ及びギア部材を覆うカバー部材を設けたので、車両用ラッチ装置の大型化を抑えつつ、装置内部への水の浸入を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る車両用ラッチ装置の要部を示す側面一部破断図である。
【図2】図2は、図1に示した車両用ラッチ装置の背面図である。
【図3】図3は、図1に示した車両用ラッチ装置の正面図である。
【図4】図4は、図1に示した車両用ラッチ装置を適用する四輪自動車の斜視図である。
【図5】図5は、車両本体に設けたストライカと図1に示した車両用ラッチ装置のラッチとラチェットとの噛合状態を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、図1に示した車両用ラッチ装置に適用するカバープレート、本体ボディ及びバックプレートを示す斜視図である。
【図7】図7は、ラッチの平面図である。
【図8】図8は、ラチェットの平面図である。
【図9】図9は、図5に示すカバープレートに本体ボディを取り付けた状態において、ラッチがフルラッチ位置ある場合の平面図である。
【図10】図10は、図9のC1−C1線に沿った断面図である。
【図11】図11は、図1に示した車両用ラッチ装置に適用する本体ボディを表面側から見た平面図である。
【図12】図12は、図1に示した車両用ラッチ装置がロック状態にある場合のアクチュエータユニットの動作をユニットカバーを外して示す正面図である。
【図13】図13は、図1に示した車両用ラッチ装置がアンロック状態にある場合のアクチュエータユニットの動作をユニットカバーを外して示す正面図である。
【図14】図14は、図1に示した車両用ラッチ装置のアクチュエータユニットに適用するケーブルレバーの正面図である。
【図15】図15は、図1に示した車両用ラッチ装置のアクチュエータユニットに適用するオープンレバーの正面図である。
【図16】図16は、図1に示した車両用ラッチ装置のアクチュエータユニットに適用するロックレバーの正面図である。
【図17】図17は、図1に示した車両用ラッチ装置がロック状態にある場合のアクチュエータユニットからユニットカバーを外した内部を、ユニットカバーに収容された電動モータ、ケーブルレバー及びオープンレバーと共に示す斜視図である。
【図18】図18は、図9のラチェットをラッチから離反する方向へ回転させた状態を示す平面図である。
【図19】図19は、図18のC2−C2線に沿った断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態2に係る車両用ラッチ装置の正面図である。
【図21】図21は、図20に示した車両用ラッチ装置の背面図である。
【図22】図22に示した車両用ラッチ装置がフルラッチ位置にある場合のアクチュエータユニットからユニットカバーを外した正面図である。
【図23】図23は、図20に示した車両用ラッチ装置がフルラッチ位置にある場合のアクチュエータユニットからユニットカバーを外した内部を、ユニットカバーに収容された電動モータ、カムギア及びケーブルレバーと共に示す斜視図である。
【図24】図24は、図20に示した車両用ラッチ装置のアクチュエータユニットに適用するケーブルレバーの正面図である。
【図25】図25は、カムギアを示す斜視図である。
【図26】図26は、ユニットカバーにリターンスプリングを配置した状態を示す斜視図である。
【図27】図27は、図22に示した車両用ラッチ装置の電動モータを駆動してカムギアを回転させ、オープンレバーの出力部によってラチェットの第1解除操作部を押圧したラッチとラチェットとの噛合解除状態を示す正面図である。
【図28】図28は、実施の形態2の変形例として、オープンレバーの他の構成を示す正面図である。
【図29】図29は、図28のオープンレバーを使用した車両用ラッチ装置において、操作ハンドルを操作してオープンレバーのケーブル係合部を矢印方向へ引っ張ることによってラチェットの第1解除操作部を押圧したラッチとラチェットとの噛合解除状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用ラッチ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1に係る車両用ラッチ装置を示したものである。ここで例示する車両用ラッチ装置LA1は、図4に示すように、四輪自動車の車両本体Bに設けたストライカSに係合することにより、車両本体Bに対してテールゲートと称されるバックドアDを閉じた状態に維持するものである。このドアラッチ装置LA1は、電動アクチュエータの駆動によってロック状態及びアンロック状態へ切り換えられる電気施解錠式のドアラッチ装置である。バックドアDは、車両本体Bの後端上縁部に支持してあり、左右方向に沿った軸心回りに回転させることにより、車両本体Bの後端部開口を開閉する。
【0015】
ここで、図5は、車両本体Bに設けたストライカSと図1に示した車両用ラッチ装置LA1のラッチ20とラチェット30との噛合状態を模式的に示す平面図である。図6は、図1に示した車両用ラッチ装置に適用するカバープレート10、本体ボディ40及びバックプレート50を示す斜視図である。本実施の形態の車両用ラッチ装置LA1は、図1〜図3、図5及び図6に示すように、カバープレート10、本体ボディ40及びバックプレート50を備えている。
【0016】
カバープレート10は、車両用ラッチ装置LA1のベースとなるもので、比較的板厚の大きな金属板によって成形されている。カバープレート10は、図1〜図3、図5及び図6に示すように、矩形状の凹部を成すプレート基部10aにストライカ進入溝11が設けられ、ストライカ進入溝11を挟む両側にラッチ軸12及びラチェット軸13が設けられている。ストライカ進入溝11は、プレート基部10aの前端中央部から奥部に向けて形成された切欠であり、ストライカSが挿通できる幅に形成されている。ラッチ軸12及びラチェット軸13は、プレート基部10aの内表面に突出させて互いに平行に配置されている。ラッチ軸12にはラッチ20が回転可能に支持され、ラチェット軸13にはラチェット30が回転可能に支持されている。
【0017】
図7は、ラッチ20の平面図である。ラッチ20は、図5及び図7に示すように、ラッチ軸12を挿通する挿通孔20aが略中央に形成された板状の部材であり、外周面に開口する噛合溝21と、噛合溝21の右側に位置するフック部22と、噛合溝21の左側に位置するストライカ当接部23と、ストライカ当接部23の左側に位置する外周爪部24とを有している。ラッチ20は、挿通孔20aを挟む反対側の上面に挿通孔20aを中心として周方向に延びる凸条20bが形成されている。ラッチ20は、噛合溝21がストライカ進入溝11と交差するようにラッチ軸12の軸心回りに回転する。ラッチ20は、本体ボディ40と凸条20bとの間に配置したラッチばね25(図9参照)によってラッチ軸12を中心として図5の反時計回り方向へ付勢されている。
【0018】
図8は、ラチェット30の平面図である。ラチェット30は、図5及び図8に示すように、ラチェット軸13を挿通する挿通孔30aが形成された部材であり、挿通孔30aの外周に半径方向外方へ延出するラッチ噛合部31、第1解除操作部32及び第2解除操作部34を有している。ラチェット30は、ラチェット軸13の軸心回りに回転し、本体ボディ40と第1解除操作部32との間に配置したラチェットばね35(図9参照)によってラチェット軸13を中心として図5の時計回り方向へ付勢されている。ラッチ噛合部31は、ラチェット軸13から半径方向外方に延出し、ストライカ当接部23もしくは外周爪部24に噛合することにより、図5に示すように、ラッチ20の反時計回り方向の回転を規制する。
【0019】
ここで、図5の(a)に示すように、噛合溝21の開口がプレート基部10aに形成したストライカ進入溝11の開口に合致し、噛合溝21よりも右方側に位置するフック部22がストライカ進入溝11から退避した状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと係合していない。以下、ラッチ20がストライカSと係合していない図5の(a)に示す位置にある場合をラッチ20の「アンラッチ位置」という。ラッチ20がアンラッチ位置の場合、バックドアDは、バックドアDに設けた操作ハンドル(図示せず)等を操作しなくとも、開閉することができる。
【0020】
次いで、バックドアDを閉じると、車両用ラッチ装置LA1が車両本体Bに設けたストライカSに係合するように接近する。これにより、ラッチ20は、ストライカSと係合するのに従ってラッチ軸12を中心として時計回り方向(以下、「係合方向」という)に回転し、図5の(b)に示すように、フック部22が漸次ストライカ進入溝11の前端側から奥部側に移動しながらこれを横切る状態となる。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと後述するフルラッチ位置手前にて係合しているが、ラチェット30のラッチ噛合部31が外周爪部24に噛合しているので、反時計回り方向(以下、「開放方向」という)への回転が規制される。以下、ラッチ20が図5の(b)に示す位置にある場合をラッチ20の「ハーフラッチ位置」という。ラッチ20がハーフラッチ位置の場合、バックドアDは、操作ハンドル等を操作してラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。
【0021】
そして、ラッチ20がハーフラッチ位置から更に時計回り方向へ回転すると、フック部22がストライカ進入溝11の奥部を横切ることによりストライカ進入溝11の開口が閉塞される。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと完全に係合すると共に、ラッチ噛合部31がストライカ当接部23に当接しているので、開放方向への回転が規制される。以下、ラッチ20が図5の(c)に示す位置にある場合を車両用ラッチ装置LA1の「フルラッチ位置」という。ラッチ20がフルラッチ位置の場合、バックドアDは、操作ハンドル等を操作してラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。
【0022】
図9は、図5に示すカバープレート10に本体ボディ40を取り付けた状態において、ラッチ20がフルラッチ位置ある場合の平面図である。図10は、図9のC1−C1線に沿った断面図である。第1解除操作部32及び第2解除操作部34は、図5においてそれぞれラチェット30を反時計回り方向であるラッチ20から離反する方向へ回転させてラッチ20への噛合を解除し、ラッチ20をアンラッチ位置へ戻す際の操作部として機能する。
【0023】
第1解除操作部32は、図8、図9及び図10に示すように、ラッチ噛合部31に隣接した位置の挿通孔30aの外周から半径方向外方に延出している。第2解除操作部34は、挿通孔30aの外周に半径方向外方へ延出するアーム33の端部をラチェット軸13に沿って直角に屈曲させて形成されている。
【0024】
第2解除操作部34は、端部を開口45に向けて冶具挿通部46内に配置されている。第2解除操作部34は、図10に示すように、上半側を下半側に対して右斜め上方へ傾斜させることによって、冶具Rの挿通を案内する案内面34aが形成され、後述する冶具挿通部46の内壁とこの内壁に対向する第2解除操作部34の表面との間の間隔が開口45に近い程大きく、奥部側が冶具Rの厚さよりも小さくなるように設定されている。このため、冶具Rは、厚さTを冶具挿通部46の内壁とこの内壁に対向する第2解除操作部34の表面との間の奥部側の間隔Dよりも大きく設定する。また、冶具Rは、厚さTが第2解除操作部34を押圧してラチェット軸13の回りに回転させた際に、ラッチ噛合部31とストライカ当接部23或いは外周爪部24との噛合を完全に解除させる厚さに設定する。
【0025】
図11は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1に適用する本体ボディ40を表面側から見た平面図である。本体ボディ40は、比較的硬質の合成樹脂材によって厚肉のブロック状に成形したもので、図6、図9及び図11に示すように、ラッチ20及びラチェット30を配置したカバープレート10の前端部内表面を覆っている。本体ボディ40は、ラッチ軸12及びラチェット軸13に対応する位置にそれぞれ軸挿通孔41,42が形成され、ストライカ進入溝11に対応する位置に緩衝溝43が形成されている。軸挿通孔41,42は、ラッチ軸12及びラチェット軸13に嵌合する内径を有した貫通孔であり、軸方向に沿った長さがラッチ軸12及びラチェット軸13よりも短く設定されている。緩衝溝43は、本体ボディ40の前端中央部から基端に向けて設けた切欠であり、ストライカ進入溝11よりもわずかに狭い幅を有するように形成されている。緩衝溝43は、開口端部がストライカSを挿通させることができる大きさを有している一方、奥部に向けて漸次幅が狭くなるように形成されている。緩衝溝43は、緩衝溝43の最奥部にクッション用の弾性部材44が装着されている。
【0026】
本体ボディ40は、図6、図9及び図11に示すように、ストライカSの進入側となる前部に開口45が形成され、開口45の内部に第2解除操作部34を配置する冶具挿通部46が形成されている。本体ボディ40は、軸挿通孔41と隣接する位置に軸挿通孔41を中心として半径方向に形成された長孔47が形成されている。開口45は、非常時に車両の鍵や車載の工具等、適宜の冶具Rを挿通することで、ラチェット30の第2解除操作部34を外部から操作し、ラッチ20との噛合を解除することによりラッチ20とストライカSとの係合をワンアクションで解除する。開口45は、図10に示すように、案内面34aを形成した第2解除操作部34の面と対向する冶具挿通部46の内壁の上半側を下半側に対して左斜め上方へ傾斜させることによって、冶具Rの挿通を案内する案内面45aが形成されている。これにより、本体ボディ40は、冶具Rの挿通方向入り口側の間隔が奥部側の間隔よりも広くなるよう形成されている。開口45は、図9に示すように、挿通する冶具Rと第2解除操作部34との位置ずれを規制する規制壁45bが案内面45aを形成した壁と隣り合う位置に形成されている。長孔47は、凸条20bが係合することにより、ラッチ軸12を中心とするラッチ20の回転を許容している。
【0027】
バックプレート50は、図6に示すように、本体ボディ40の奥部側表面を覆うラッチカバー部50Aと、ラッチカバー部50Aの奥部から本体ボディ40に対して離隔する方向に屈曲させたユニット保持部50Bとを有する板状の部材である。
【0028】
ラッチカバー部50Aは、本体ボディ40の軸挿通孔41,42に対応する位置にそれぞれ軸取付孔51,52が形成されると共に、カバープレート10のストライカ進入溝11に対応する位置に切欠溝53が形成されている。ラッチカバー部50Aは、軸取付孔51,52にラッチ軸12の先端部及びラチェット軸13の先端部をそれぞれかしめることによってカバープレート10に取り付けられている。ラッチカバー部50Aは、ラチェット30の第1解除操作部32に対応する位置にレバー挿入用開口54が設けられている。レバー挿入用開口54は、第1解除操作部32を外部から操作する開口であり、ラチェットカバー部50Aの左右方向に沿って矩形状に形成され、後述するオープンレバー130の回転によって出力アーム131の端部が左右方向に移動する。
【0029】
ユニット保持部50Bは、図1及び図2に示すように、アクチュエータユニット100を保持する部分である。ユニット保持部50Bは、図6に示すように、ラッチカバー部50A側の面にオープンレバー軸101とロックレバー軸102をそれぞれ支持する支持孔55,56が形成されている。
【0030】
アクチュエータユニット100は、車両用ラッチ装置LA1を後述するロック状態とアンロック状態とに切り換える電動アクチュエータであり、図2に示すように、ケーブルレバー120、オープンレバー130、ロックレバー140及び電動モータ110を備えている。
【0031】
図12は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1がロック状態にある場合のアクチュエータユニット100の動作をユニットカバー150を外して示す正面図である。図13は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1がアンロック状態にある場合のアクチュエータユニット100の動作をユニットカバー150を外して示す正面図である。ケーブルレバー120及びオープンレバー130は、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する本発明の解除手段であり、図12及び図13に示すように、ユニット保持部50Bのレバー挿入用開口54(図6参照)に近接した側縁部に設けたオープンレバー軸101に回転自在に支持されている。
【0032】
図14は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1のアクチュエータユニット100に適用するケーブルレバー120の正面図である。ケーブルレバー120は、ユニット保持部50Bとオープンレバー130との間に配置され、図14に示すように、操作出力部121、ケーブル係合部122及びオープンレバー軸101を挿通する軸孔123を有している。操作出力部121は、軸孔123を中心として半径方向外方に向けて設けられている。ケーブル係合部122は、軸孔123を中心として操作出力部121と対向する位置に半径方向外方に向けて設けられ、端部がユニット保持部50Bの一側縁から外部に突出している。ケーブル係合部122の端部には、図3に示すように、バックドアDに設けた操作ハンドルとの間を連結する操作ケーブルCの一端が係合されている。
【0033】
図15は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1のアクチュエータユニット100に適用するオープンレバー130の正面図である。オープンレバー130は、ケーブルレバー120とオープンレバー軸101の軸方向に重なる位置に配置され、図15に示すように、出力アーム131、入力アーム132及びオープンレバー軸101を挿通する軸孔134を有している。
【0034】
出力アーム131は、軸孔134を中心として半径方向外方に向けて設けられ、端部にレバー挿入用開口54からラッチカバー部50Aの内部へ挿通される出力部131aが設けられている。出力部131aは、図5に二点鎖線で示すように第1解除操作部32の右側に位置しており、オープンレバー130がオープンレバー軸101の軸心回りに図12及び図13において時計回り方向へ回転すると、ラチェット30の第1解除操作部32を図中左方へ押圧し、ラッチ20を図5の(a)に示すアンラッチ位置へ切り換える。
【0035】
入力アーム132は、図15に示すように、軸孔134を中心として出力アーム131から略90°ずれた位置に半径方向外方に向けて設けられている。入力アーム132には、端部側に長手方向に沿ってスリット132aが形成されると共に、スライダ133が設けられている。スライダ133は、入力アーム132の長手方向に沿って移動可能に配設したスライド基部133aと、スライド基部133aにおいてユニット保持部50Bに対向する面に突設され、スリット132aから突出する係合ピン133bと、スライド基部133aにおいてユニット保持部50Bから離隔した面に突設したカムピン133cとを有している。カムピン133cは、電動モータ110の駆動力が入力される入力部である。スライダ133は、入力アーム132の軸孔134側に配置すると、オープンレバー軸101の軸心回りに図12及び図13において反時計回り方向へ回転した場合に、係合ピン133bがケーブルレバー120の操作出力部121に係合する一方、入力アーム132の先端側に移動すると、ケーブルレバー120の操作出力部121に対して非係合となる。尚、オープンレバー130とユニット保持部50Bとの間には、図12及び図13に示すように、オープンレバー130を常時反時計回りに回転させるオープンレバーばね135が介在させてある。
【0036】
図16は、図1に示した車両用ラッチ装置LA1のアクチュエータユニット100に適用するロックレバー140の正面図である。ロックレバー140は、電動モータ110と解除手段であるオープンレバー130との間を接続し、電動モータ110の駆動力をオープンレバー130の入力部であるカムピン133cへ入力するギア部材である。
【0037】
ロックレバー140は、図12、図13及び図16に示すように、オープンレバー軸101よりもユニット保持部50Bの中心側、かつラッチカバー部50Aから屈曲させた屈曲部から離隔した位置に設けたロックレバー軸102に回転自在に支持されている。ロックレバー140は、カムレバー部141、セクタギア部142及びロックレバー軸102を挿通する軸孔145を有しており、カムレバー部141をオープンレバー130の入力アーム132に重ねてロックレバー軸102に支持されている。カムレバー部141は、軸孔145を中心として半径方向外方に向けて設けられ、長孔からなるカム溝143が形成されている。カム溝143は、アクチュエータユニット100としてユニット保持部50Bに取り付けた際に、オープンレバー軸101を中心とする円弧に沿って湾曲するように形成されており、スライダ133のカムピン133cが摺動可能に係合される。セクタギア部142は、軸孔145を中心としてカムレバー部141と対向する位置に扇形状に形成され、円弧状の外周面にギア144が形成されている。
【0038】
従って、電動モータ110の駆動力が入力される入力部であるオープンレバー130のカムピン133cは、図12,図13及び図17に示すように、ケーブルレバー120の操作出力部121と共に、ギア部材であるロックレバー140のロックレバー軸102を中心とする回転面と重ねて配置される。このとき、回転によって後述するロック位置及びアンロック位置に移動したロックレバー140は、後述するユニットカバー150に収容したオーバーセンタばね147(図2,図12,図13,図17参照)によって移動位置に保持される。
【0039】
電動モータ110は、図2、図12及び図13に示すように、ユニット保持部50Bのオープンレバー軸101から最も離隔した位置に配置されており、出力軸111にウォームギア112が設けられている。ウォームギア112は、ロックレバー140のセクタギア部142に形成したギア144と噛合し、電動モータ110の駆動によってロックレバー140をロックレバー軸102の軸心回りに回転させる。
【0040】
上述したアクチュエータユニット100は、図1乃至図3に示すように、ユニットカバー150が設けられている。ユニットカバー150は、合成樹脂材によって形成されており、ケーブルレバー120のケーブル係合部122を除くアクチュエータユニット100の全体を覆う大きさを有しており、ネジ等の締結手段によってユニット保持部50Bに取り付けられる。このとき、ユニットカバー150は、図17に示すように、動作凹部151にケーブルレバー120、オープンレバー130及びロックレバー140が収容されると共に、駆動凹部152に電動モータ110が収容され、駆動凹部153にウォームギア112が収容される。
【0041】
上記のように構成される車両用ラッチ装置LA1は、閉じたバックドアDをロックするときは、バックドアDが閉じた状態で電動モータ110を駆動し、ロックレバー軸102を中心としてロックレバー140を反時計回り方向に回転させる。すると、図12の(a)に示す位置にロックレバー140が配置され、カム溝143に係合したカムピン133cを介してオープンレバー130のスライダ133が入力アーム132の先端側に移動し、ロック状態となる。
【0042】
このロック状態の車両用ラッチ装置LA1は、バックドアDに設けた前記操作ハンドルを開操作し、操作ケーブルCを介して図12の(b)に示すようにケーブル係合部122を図中において矢印で示す方向へ引っ張ると、ケーブルレバー120が時計回り方向に回転する。しかし、オープンレバー130は、スライダ133が入力アーム132の先端側に位置する。このため、ケーブルレバー120の操作出力部121は、スライダ133の係合ピン133bと係合しない。
【0043】
従って、ロック状態の車両用ラッチ装置LA1は、前記操作ハンドルを開操作しても、オープンレバー130は回転せず、オープンレバー130の出力アーム131がラチェット30の第1解除操作部32を押圧することはない。このため、ラチェット30のラッチ20への係合は解除されず、車両用ラッチ装置LA1は、ロック状態においては、前記操作ハンドルを開操作してもバックドアDを開くことができない。
【0044】
これに対して、車両用ラッチ装置LA1は、バックドアDが閉じた状態で電動モータ110を駆動してアンロック状態にする。すると、車両用ラッチ装置LA1は、ロックレバー140がロックレバー軸102を中心として図12に示す位置から時計回り方向に回転し、図13の(a)に示す位置に配置され、カム溝143に係合したカムピン133cを介してオープンレバー130のスライダ133が入力アーム132の軸孔134側に移動する。
【0045】
このアンロック状態の車両用ラッチ装置LA1は、バックドアDに設けた前記操作ハンドルを開操作し、操作ケーブルCを介して図13の(b)に示すようにケーブル係合部122を図中において矢印で示す方向へ引っ張ると、ケーブルレバー120が時計回り方向に回転する。このアンロック状態の場合、オープンレバー130は、スライダ133が入力アーム132の軸孔134側に位置する。このため、ケーブルレバー120の操作出力部121は、スライダ133の係合ピン133bと係合する。
【0046】
従って、アンロック状態の車両用ラッチ装置LA1は、前記操作ハンドルを開操作すると、図13の(b)に示すように、スライダ133を介してオープンレバー130が時計回り方向に回転して出力アーム131がラチェット30の第1解除操作部32を押圧し、ラチェット30を図5中において反時計回り方向に回転させる。このため、ラチェット30のラッチ20への噛合が解除され、ラッチ20が、図5の(a)のアンラッチ位置へ回転し、ストライカSとの係合が解除される。この結果、車両用ラッチ装置LA1は、アンロック状態においては、前記操作ハンドルを開操作することによってバックドアDを開くことができる。
【0047】
しかし、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってアクチュエータユニット100に電源供給ができない非常時には、車両用ラッチ装置LA1は、ロック状態からアンロック状態への切り換えができず、閉じた状態のバックドアDを開けることができない。このため、このような非常時には、車両用ラッチ装置LA1がアンロック状態かロック状態かに拘わらず、乗員が以下のような手動操作によってラチェット30のラッチ20への噛合を解除し、ラッチ20を図5の(a)に示すアンラッチ位置に切り換える。
【0048】
図18は、図9のラチェットをラッチから離反する方向へ回転させた状態を示す平面図である。図19は、図18のC2−C2線に沿った断面図である。先ず、図10に示すように、冶具Rを本体ボディ40の上方から開口45に挿通する。これにより、冶具Rは、開口45の案内面45aと第2解除操作部34の案内面34aとに案内されて開口45と第2解除操作部34との間へ挿通されてゆく。この挿通に伴い、冶具Rが第2解除操作部34をラチェットばね35のばね力に抗して図中右方へ押圧し、ラチェット軸13を中心としてラチェット30をラッチ20から離反する方向へ回転させてゆく。
【0049】
そして、図19に示すように、冶具Rの先端がカバープレート10のプレート基部10aに突き当たり、冶具Rの挿通が完了する。すると、図18に示すように、ラチェット30のラッチ噛合部31とラッチ20のストライカ当接部23との噛合が解除され、ラチェット30によるラッチ20の開放方向への回転の規制が解除される。これにより、ラッチ20は、ラッチばね25のばね力によって反時計方向に回転され、図5に示すように、フルラッチ位置からアンラッチ位置に戻る。
【0050】
このため、車両用ラッチ装置LA1は、ラッチ20とストライカSとの係合が解除されるので、乗員は、バックドアDを押すだけでバックドアDを開くことができる。ここで、冶具Rは、車両用ラッチ装置LA1がハーフラッチ位置にある場合にも、上記と同じ操作によってラチェット30のラッチ20への噛合を解除し、ラッチ20とストライカSとの係合を解除することができる。
【0051】
以上のように、車両用ラッチ装置LA1は、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってアクチュエータユニット100に電源供給ができない非常時に、冶具Rを開口45に挿通するというワンアクションの操作によってラチェット30のラッチ20への噛合を解除することができ、バックドアDを容易に開くことができる。
【0052】
このとき、車両用ラッチ装置LA1は、図12,図13及び図17に示すように、入力アーム132のカムピン133cをロックレバー140の回転面と並行させて重ねて配置すると共に、ユニット保持部50Bに取り付けられ、少なくともケーブルレバー120及びオープンレバー130のオープンレバー軸101とカムピン133c、電動モータ110及びロックレバー140を覆うユニットカバー150を設けたので、車両用ラッチ装置LA1の大型化を抑えつつ、装置内部へ水の浸入を抑えることができる。また、図2に示したように、ケーブルレバー120とオープンレバー130とをオープンレバー軸101で支持したので、操作ケーブルCを伝わって雨水がケーブル係合部122から車両用ラッチ装置LA1の内部へ浸入しようとしても、雨水はオープンレバー130の出力アーム131からカバープレート10内へ導かれ、外部へと排出される。
【0053】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る車両用ラッチ装置を図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の車両用ラッチ装置は、電動アクチュエータの駆動によってロック状態及びアンロック状態へ切り換えられる電気施解錠式であったのに対し、実施の形態2の車両用ラッチ装置は、電動アクチュエータの駆動によってラッチとラチェットとの噛合を解除する電気解除式である。ここで、実施の形態2の車両用ラッチ装置LA2は、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1で使用していたケーブルレバー120とオープンレバー130とを一体化したオープンレバー160を使用すると共に、ロックレバー140に代えてカムギア170を使用していることを除き実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1と同一の構成部材を使用している。このため、以下の説明において、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1と同一の構成部材には同一の符号を付して説明する。
【0054】
図20は、本発明の実施の形態2に係る車両用ラッチ装置の正面図である。図21は、図20に示した車両用ラッチ装置の背面図である。図22は、図20に示した車両用ラッチ装置がフルラッチ位置にある場合のアクチュエータユニットからユニットカバーを外した正面図である。図23は、図20に示した車両用ラッチ装置がフルラッチ位置にある場合のアクチュエータユニットからユニットカバーを外した内部を、ユニットカバーに収容された電動モータ、カムギア及びケーブルレバーと共に示す斜視図である。図24は、図20に示した車両用ラッチ装置のアクチュエータユニットに適用するケーブルレバーの正面図である。
【0055】
車両用ラッチ装置LA2は、図20〜図22に示すように、カバープレート10、本体ボディ40及びバックプレート50を備えている。
【0056】
バックプレート50に保持されるアクチュエータユニット100は、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する駆動手段であり、図20〜図23に示すように、電動モータ110、オープンレバー160、カムギア170及びリターンスプリング180を備えている。これら電動モータ110、オープンレバー160、カムギア170及びリターンスプリング180は、オープンレバー160の一部を除いてユニット保持部50Bの正面側に被着されるユニットカバー150内に収容される。ここで、図20〜図23は、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する前のオープンレバー160及びカムギア170の初期位置を示している。
【0057】
ユニットカバー150は、合成樹脂材によって形成されており、オープンレバー160の出力部164aを除くアクチュエータユニット100の全体を覆う大きさを有しており、ネジ等の締結手段によってユニット保持部50Bに取り付けられる。
【0058】
オープンレバー160は、図21〜図23に示すように、ユニット保持部50Bのレバー挿入用開口54(図6,図20参照)に近接した位置に設けたオープンレバー軸101に回転自在に支持されている。オープンレバー160は、ユニット保持部50Bとカムギア170との間に配置され、図24に示すように、軸孔165の一方に入力アーム162が配置され、軸孔165を基準として入力アーム162に直交する方向に出力アーム164が配置されている。入力アーム162は、端部に入力部162aが設けられている。入力部162aは、図23に示すように、ロックレバー軸102を中心とするカムギア170の回転面と重ねて配置される。出力アーム164は、端部に出力部164aが設けられている。
【0059】
ここで、出力部164aの端部は、車両用ラッチ装置LA2を正面側から見た場合には、図20に点線で示すように、第1解除操作部32の右側に位置し、背面側から見た場合には、図21に点線で示すように、第1解除操作部32の左側に位置している。このため、図22において、オープンレバー160がオープンレバー軸101の軸心回りに時計回り方向へ回転すると、ラチェット30の第1解除操作部32を図中左方へ押圧し、ラッチ20を図5の(a)に示すアンラッチ位置へ切り換える。尚、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1のオープンレバーばね135に対応する位置には、オープンレバー160とユニット保持部50Bとの間にオープンレバー160を常時反時計回りに回転させる図示しないオープンレバーばねが介在されている。
【0060】
図25は、カムギア170を示す斜視図である。カムギア170は、図25(a),(b)に示すように、円板状の部材の外周壁171にウォームギア112と噛合する歯車からなるギア部171aが形成されており、中央には軸孔172aが形成されたボス172が両面に突出させて設けられている。カムギア170の一方の面には、カム壁173が形成されている。カム壁173は、カムギア170の回転に伴って軸孔172aの中心からの距離が漸増するようにボス172の外周部から渦巻き状に形成されている。カム壁173は、図23においてカムギア170が時計回り方向へ回転した場合に、入力部162aに当接して入力部162aを押圧し、オープンレバー160をオープンレバー軸101の軸心回りに反時計回り方向へ回転させる。一方、カムギア170の他方の面には、ボス172を同心円状に囲む壁174が形成されている。壁174には、切れ目によって引掛け部174aが形成されている。カムギア170は、図22に示すように、ユニット保持部50Bに設けたロックレバー軸102にカム壁173を形成した面をユニット保持部50Bの表面に向けて支持される。
【0061】
ここで、図26は、ユニットカバー150にリターンスプリング180を配置した状態を示す斜視図である。リターンスプリング180は、電動モータ110の駆動によってロックレバー軸102の軸心回りに回転させたカムギア170を回転前の位置へ戻すコイルばねである。リターンスプリング180は、一端180aをカムギア170の引掛け部174aに掛け止めし(図25(b)参照)、図26に示すように、他端180bをユニットカバー150に形成した引掛け部150aに掛け止めしてユニットカバー150の動作凹部151に収容される。
【0062】
上記のように構成される車両用ラッチ装置LA2は、閉じたバックドアDのラッチ20とラチェット30との噛合を解除するときは、バックドアDが閉じた状態で電動モータ110を駆動し、図23において、ロックレバー軸102を中心としてカムギア170を時計回り方向に回転させる。
【0063】
すると、カムギア170の回転に伴ってカム壁173が入力部162aに当接して入力部162aを押圧し、オープンレバー160がオープンレバー軸101の軸心回りに時計回り方向へ回転する。これにより、図27に示すように、オープンレバー160の出力部164aがラチェット30の第1解除操作部32を図中左方へ押圧し、ラッチ20とラチェット30との噛合が解除される。
【0064】
この結果、ラッチ20が図5の(a)に示すアンラッチ位置へ切り換わる。このため、バックドアDを容易に開くことができる。
【0065】
なお、カムギア170の回転に伴い、リターンスプリング180には、カムギア170を逆回転方向へ付勢する付勢力が蓄えられてゆく。このため、ラッチ20とラチェット30との噛合が解除され、電動モータ110の駆動が停止すると、カムギア170及びウォームギア112は、リターンスプリング180に蓄えられた付勢力によって、オープンレバー160は前記オープンレバーばねによって、それぞれ図20〜図23に示す初期位置へ戻る。
【0066】
以上のように、車両用ラッチ装置LA2は、オープンレバー160の入力部162aをカムギア170の回転面と並行させて重ねて配置すると共に、ユニット保持部50Bに取り付けられ、少なくともオープンレバー160のオープンレバー軸101と入力部262a、電動モータ110及びカムギア170を覆うユニットカバー150を設けたので、車両用ラッチ装置LA2の大型化を抑えつつ、装置内部へ水の浸入を抑えることができる。
【0067】
なお、オープンレバー160は、図28に示すように、オープンレバー260とケーブルレバー270とを組み合わせた分割タイプとしてもよい。ここで、オープンレバー260は、図28(a)に示すように、本体261に形成した軸孔265を基準として三方向に延出するアームのうち入力アーム262の端部に入力部262aが形成され、出力アーム264の端部に出力部264aが形成されている。そして、残る1つのアームが係止アーム266として構成されている。
【0068】
一方、ケーブルレバー270は、図28(a)に示すように、本体アーム271の一端にケーブル係合部273が形成され、他端にはオープンレバー軸101を挿通する軸孔275が形成されている。そして、本体アーム271は、軸孔275近傍の側縁に係止片271aが設けられている。なお、ケーブル係合部273には、車両本体BもしくはバックドアDの車室内側に設けた操作ハンドルとの間を連結する操作ケーブルCの一端が係合される。
【0069】
オープンレバー260とケーブルレバー270は、図28(b)に示すように、軸孔275に軸孔265を重ね合わせると共に、係止片271aを係止アーム266の側縁に当接させて一体化させ、ユニット保持部50Bに設けたオープンレバー軸101に回転自在に支持させることができる。
【0070】
なお、実施の形態2は、車両用ラッチ装置がフルラッチ位置にある場合にラッチ20とラチェット30との噛合を解除する場合について説明したが、車両用ラッチ装置がハーフラッチ位置にある場合にも同様にしてラッチ20とラチェット30との噛合を解除することができることは言うまでもない。
【0071】
また、実施の形態2の車両用ラッチ装置LA2は、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1と同様に、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってアクチュエータユニット100に電源供給ができない非常時には、冶具Rを開口45に挿通するというワンアクションの操作によってラチェット30のラッチ20への噛合を解除することができる。
【0072】
(変形例1)
ここで、車両本体BもしくはバックドアDの車室内側に設けた操作ハンドルを開操作することによって、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する場合には、以下のようにする。先ず、操作ハンドルを開操作すると、ケーブル係合部273が操作ケーブルCによって引っ張られる。
【0073】
これにより、オープンレバー260がケーブルレバー270と共にオープンレバー軸101の軸心回りに図22に示すオープンレバー160の位置から時計回り方向に回転し、図29に示すように、オープンレバー260の出力部264aがラチェット30の第1解除操作部32を図中左方へ押圧する。この結果、ラッチ20とラチェット30との噛合が解除され、ラッチ20が図5の(a)に示すアンラッチ位置へ切り換わる。
【0074】
このため、車両本体BもしくはバックドアDの車室内側に設けた前記操作ハンドルを開操作するワンアクションの操作によってバックドアDを開くことができる。なお、ラッチ20とラチェット30との噛合を操作ハンドルの操作によって解除した場合、操作ハンドルの開操作を停止することにより、オープンレバー260は、前記オープンレバーばねによってオープンレバー軸101の軸心回りに反時計回り方向へ回転されて元の位置へ戻る。
【0075】
尚、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1は、解除手段であるケーブルレバー120とオープンレバー130及びギア部材であるロックレバー140をユニットカバー150の動作凹部151に配置し、実施の形態2の車両用ラッチ装置LA2は、解除手段であるオープンレバー160及びギア部材であるカムギア170をユニットカバー150の動作凹部151に配置する。このため、実施の形態1の車両用ラッチ装置LA1及び実施の形態2の車両用ラッチ装置LA2は、それぞれ同一のユニットカバー150、本体ボディ40及びバックプレート50を共用することができる。
【0076】
従って、本発明の車両用ラッチ装置は、同一のユニットカバー150、本体ボディ40及びバックプレート50を使用しつつ、ユニットカバー150の動作凹部151に配置する部材をケーブルレバー120、オープンレバー130及びロックレバー140とするか、オープンレバー160及びカムギア170とするかによって電気解除式と電気施解錠式とに使い分けることができる。このため、本発明の車両用ラッチ装置は、使用上の自由度が増すうえ、ユニットカバー150の動作凹部151に配置する部材の配置が共通しているので、車両への取り付け作業も容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明の車両用ラッチ装置は、装置の大型化を抑えつつ、内部への水の浸入を抑えるのに有用である。
【符号の説明】
【0078】
10 カバープレート
11 ストライカ進入溝
20 ラッチ
30 ラチェット
32 第1解除操作部
34 第2解除操作部
40 本体ボディ
50 バックプレート
50A ラッチカバー部
50B ユニット保持部
100 アクチュエータユニット
101 オープンレバー軸
102 ロックレバー軸
110 電動モータ
120 ケーブルレバー
130 オープンレバー
131 出力アーム
131a 出力部
132 入力アーム
133 スライダ
133c カムピン
140 ロックレバー
144 ギア部
160 オープンレバー
162 入力アーム
162a 入力部
164 出力アーム
164a 出力部
165 軸孔
170 カムギア
171 外周壁
171a ギア部
173 カム壁
180 リターンスプリング
260 オープンレバー
261 本体
262 入力アーム
262a 入力部
264 出力アーム
264a 出力部
265 軸孔
266 係止アーム
270 ケーブルレバー
271 本体アーム
271a 係止片
273 ケーブル係合部
275 軸孔
B 車両本体
D バックドア
LA1 車両用ラッチ装置
LA2 車両用ラッチ装置
R 冶具
S ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アクチュエータの保持部材に設けた支持軸を中心として回動し、前記電動アクチュエータの駆動力が入力される入力部と、前記支持軸を中心とする回動によってラッチとラチェットとの噛合を解除する出力部とを有する解除手段と、
前記支持軸を中心として回動すると共に、前記電動アクチュエータと前記解除手段との間を接続し、前記電動アクチュエータの駆動力を前記入力部へ入力するギア部材と、
を備えた車両用ラッチ装置であって、
前記入力部を前記ギア部材の回転面と重ねて配置し、
前記保持部材に取り付けられ、前記少なくとも前記支持軸、前記入力部、前記電動アクチュエータ及び前記ギア部材を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする車両用ラッチ装置。
【請求項2】
前記ギア部材は、前記電動アクチュエータに設けたウォーム歯車と噛合するギア部と、前記入力部が摺動可能に係合するカム溝とを有するロックレバーであり、
前記解除手段は、
前記支持軸に支持され、操作ハンドルとの間を連結する操作ケーブルの一端が係合されるケーブル係合部と、前記操作ケーブルを介して伝達される前記操作ハンドルの操作力を前記入力部へ出力する操作出力部とを有するケーブルレバーと、
前記入力部を設けたスライダを長手方向に沿って移動可能に設けた入力アームと前記出力部を端部に設けた出力アームとを有し、前記支持軸を中心として回動するオープンレバーと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項3】
前記支持軸は、第1の支持軸と第2の支持軸とを有し、
前記ケーブルレバーと前記オープンレバーは、前記第1の支持軸を中心として回動し、
前記ロックレバーは、前記第2の支持軸を中心として回動することを特徴とする請求項2に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項4】
前記ギア部材は、前記電動アクチュエータに設けたウォーム歯車と噛合するギア部と、前記入力部が摺動可能に係合するカム壁とを有するカムギアであり、
前記解除手段は、前記入力部が設けられた入力アームと、端部に前記出力部が設けられた出力アームとを有し、前記入力部への入力を前記出力部へと伝達するオープンレバーを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用ラッチ装置。
【請求項5】
前記支持軸は、第1の支持軸と第2の支持軸とを有し、
前記オープンレバーは、前記第1の支持軸を中心として回動し、
前記カムギアは、前記第2の支持軸を中心として回動することを特徴とする請求項4に記載の車両用ラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−236661(P2011−236661A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109603(P2010−109603)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】