説明

車両用ランプ装置

【課題】ランプハウジングの内部空間で、LEDランプによる光の照射に対し他のランプの照射する光が悪影響を与えないようにして、ランプ装置の光照射時における外観上の見栄えが良好に保持されるようにする。
【解決手段】車両用ランプ装置は、ランプハウジング7の内部空間8に設けられ、光9を照射するLEDランプ21と、LEDランプ21の後方に配置され、LEDランプ21を実装する配線基板23と、LEDランプ21の前方に配置され、LEDランプ21が照射した光9を透過させるインナレンズ24と、内部空間8に設けられ、光9を照射する他のランプ30とを備える。インナレンズ24から他のランプ30の後方にまで一体的に延出する延出体32を設けると共に、他のランプ30が照射する光9を前方側に向かって反射させるよう延出体32を表面処理する。配線基板23の前方に延出体32の少なくも一部分を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取り付けたランプハウジングの内部空間に、LED(発光ダイオード)ランプと、他のランプとを設けた場合に、この他のランプが照射する光が、上記LEDランプによる光の照射に悪影響を与えないようにするための車両用ランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両用ランプ装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両用ランプ装置は、車体に取り付けられ、その内部空間で照射される光を、ある一方向側である前方側に向かって透過させるランプハウジングと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射するLEDランプと、上記内部空間で上記LEDランプの後方に配置され、このLEDランプを実装する配線基板と、上記内部空間で上記LEDランプの前方に配置され、このLEDランプが照射した光を透過させるインナレンズとを備えている。
【0003】
そして、上記配線基板からLEDランプに電力が供給されると、このLEDランプは光を照射し、この光は上記インナレンズを透過して前方側に向かって照射される。このように、光が上記インナレンズを透過する際、上記光は、順次、集光、拡散させられた後、前方側に向かって照射される。これにより、上記LEDランプの光につき、所望の照射状態が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−227603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記車両用ランプ装置では、ランプハウジングの内部空間に、LEDランプに加えて他のランプを設けたい場合がある。この場合、仮に、この他のランプの照射する光が上記インナレンズの前面側に漏れるとすると、この漏光は、上記インナレンズを前方側に透過する上記LEDランプの光の照射に対し何らかの悪影響を与えがちとなる。よって、この場合には、上記ランプ装置の光照射時における外観上の見栄えが低下するおそれが生じて好ましくない。
【0006】
そこで、上記インナレンズの前面側への漏光を防止するため、上記他のランプが照射する光を前方側に向かい反射させて、上記インナレンズの前面側に向かう光を遮光するリフレタクを別途に設けることが考えられる。
【0007】
しかし、上記ランプハウジングの内部空間には、上記LEDランプやインナレンズに加え、その配線基板などが設けられているため、上記内部空間における余剰空間は極めて狭いものである。よって、上記リフレクタを別途に設けることは容易でない。また、仮に、上記リフレクタを設けることができたとしても、これでは、上記ランプ装置の部品点数が増加して、その構成が複雑になるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、ランプハウジングの内部空間に、LEDランプと他のランプとを設けた車両用ランプ装置において、上記他のランプの照射する光が上記LEDランプによる光の照射に対し悪影響を与えないようにして、このランプ装置の光照射時における外観上の見栄えが良好に保持されるようにすることである。また、上記したランプ装置の見栄えの良好な保持が、簡単な構成によって達成されるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、車体2に取り付けられ、その内部空間8で照射される光9を、ある一方向A側である前方側に向かって透過させるランプハウジング7と、上記内部空間8に設けられ、前方側に向かって光9を照射するLEDランプ21と、上記内部空間8で上記LEDランプ21の後方に配置され、このLEDランプ21を実装する配線基板23と、上記内部空間8で上記LEDランプ21の前方に配置され、このLEDランプ21が照射した光9を透過させるインナレンズ24と、上記内部空間8に設けられ、前方側に向かって光9を照射する他のランプ30とを備えた車両用ランプ装置において、
上記インナレンズ24から上記他のランプ30の後方にまで一体的に延出する延出体32を設けると共に、上記他のランプ30が照射する光9を前方側に向かって反射させるよう上記延出体32を表面処理し、
上記配線基板23の前方に上記延出体32の少なくも一部分を配置したことを特徴とする車両用ランプ装置である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、車体に取り付けられ、その内部空間で照射される光を、ある一方向側である前方側に向かって透過させるランプハウジングと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射するLEDランプと、上記内部空間で上記LEDランプの後方に配置され、このLEDランプを実装する配線基板と、上記内部空間で上記LEDランプの前方に配置され、このLEDランプが照射した光を透過させるインナレンズと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射する他のランプとを備えた車両用ランプ装置において、
上記インナレンズから上記他のランプの後方にまで一体的に延出する延出体を設けると共に、上記他のランプが照射する光を前方側に向かって反射させるよう上記延出体を表面処理している。
【0013】
このため、上記他のランプが照射する光は、上記延出体により前方側に向かって反射させられることから、上記インナレンズの前面側に向かおうとする光は遮光され、つまり、この光がインナレンズの前面側に漏れることは防止される。よって、このインナレンズを前方側に透過する上記LEDランプの光の照射に対し、上記他のランプの光が何らかの悪影響を与えることが防止されることから、上記ランプ装置の光照射時における外観上の見栄えは良好に保持される。
【0014】
また、上記したランプ装置の見栄えの良好な保持は、上記LEDランプの光を所望の照射状態にさせるためのインナレンズを利用して、このインナレンズから一体的に延出する上記延出体を設けたことによるものである。このため、ランプハウジングの内部空間における余剰空間は狭いものではあるが、上記他のランプ用として別途にリフレクタを設けることに比べ、上記のように延出体を設けることは比較的容易にできる。また、上記のように、インナレンズに延出体を一体的に形成したことにより、ランプ装置の部品点数の増加が抑制されることから、上記ランプ装置の見栄えの良好な保持は、簡単な構成によって達成される。
【0015】
また、上記発明によれば、配線基板の前方に上記延出体の少なくも一部分を配置している。
【0016】
このため、上記ランプ装置をその前方側から見たとき、上記配線基板が容易に見えることは、上記延出体の利用によって防止される。よって、上記したランプ装置の見栄えが、より良好に保持されると共に、これが簡単な構成で達成される。
【0017】
また、上記延出体はインナレンズから一体的に延出したものであるため、上記したように他のランプ用として別途にリフレクタを設け、かつ、このリフレクタを何らかの取付手段によって上記ランプハウジングに取り付ける、ということに比べ、このランプハウジングの内部空間への上記延出体のレイアウトは容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図2のI−I線矢視断面図である。
【図2】車両用ランプ装置を車両の後側から見た背面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】車両用ランプ装置の斜視展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両用ランプ装置に関し、ランプハウジングの内部空間に、LEDランプと他のランプとを設けた車両用ランプ装置において、上記他のランプの照射する光が上記LEDランプによる光の照射に対し悪影響を与えないようにして、このランプ装置の光照射時における外観上の見栄えが良好に保持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車両用ランプ装置は、車体に取り付けられ、その内部空間で照射される光を、ある一方向側である前方側に向かって透過させるランプハウジングと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射するLEDランプと、上記内部空間で上記LEDランプの後方に配置され、このLEDランプを実装する配線基板と、上記内部空間で上記LEDランプの前方に配置され、このLEDランプが照射した光を透過させるインナレンズと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射する他のランプとを備える。
【0021】
上記インナレンズから上記他のランプの後方にまで一体的に延出する延出体が設けられると共に、上記他のランプが照射する光を前方側に向かって反射させるよう上記延出体が表面処理される。上記配線基板の前方に上記延出体の少なくも一部分が配置されている。
【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0023】
図において、符号1は自動車で例示される車両である。この車両1は、車体2と、車体2の長手方向の車体2後部の端面側部に設けられるランプ装置3とを備えている。また符号4は、車体2後部の端面に形成されたバックドア開口4である。
【0024】
上記ランプ装置3はリアコンビランプであって、このランプ装置3は、その外殻を構成して車体2に対し締結具6により取り付けられるランプハウジング7を備えている。このランプハウジング7は、その内部空間8で照射される光9を、ある一方向A側である前方側(車体2の後方側)に向かって透過させるものである。上記ランプハウジング7は樹脂製で、上記締結具6により車体2に取り付けられ、上記前方側に向かって開口する黒色など不透明なハウジング本体10と、このハウジング本体10の前端開口を閉じ、上記光9を前方側に向かって透過させる透明なランプアウタレンズ11とを備えている。
【0025】
上記ハウジング本体10の前面には前方に向かって開口する第1〜第3凹所14〜16が形成されている。これら各凹所14〜16は、上記ハウジング本体10の前面に一体的に形成された隔壁17により、それぞれ取り囲まれて互いに独立するよう形成されている。上記各凹所14〜16は、それぞれ上記内部空間8の一部を形成している。
【0026】
上記第1凹所14の上部内には、前方側に向かって赤色の光9を照射する複数(6つ)のLEDランプ21と、これら各LEDランプ21の後方に配置され、これらLEDランプ21を実装して上記ハウジング本体10に締結具22により固着される配線基板23と、上記各LEDランプ21の前方近傍に配置され、これら各LEDランプ21が照射した光9を透過させるインナレンズ24とを備えている。
【0027】
上記配線基板23とインナレンズ24とは樹脂製で、配線基板23はグレーや黒色など不透明体であり、インナレンズ24は無色の透明体とされている。この場合、上記ランプ装置3の各構成部品21〜24は、車両1のストップランプを構成している。
【0028】
上記配線基板23は、車体2の後面視で長方形の板状をなし、その上部に上記各LEDランプ21が実装されている。また、上記配線基板23は電流制御用の抵抗やダイオードなどを含む回路を内有し、上記ハウジング本体10を後方に向かって貫通する不図示の入力端子を介し、コネクタにより外部電源に接続される。
【0029】
上記インナレンズ24は、上記各LEDランプ21と配線基板23の上部との前方に位置し、これら21,23をその前方から全体的に覆う円形のレンズ基部26と、上記各LEDランプ21のそれぞれ前方に位置して上記レンズ基部26に一体的に形成され、上記各LEDランプ21からの光9をそれぞれ透過させる複数(6つ)のレンズ本体27とを備えている。これら各レンズ本体27は全体的に凸レンズとされている。
【0030】
そして、上記LEDランプ21からの光9は、まず、上記レンズ本体27の後面で集光され、次に、このレンズ本体27を透過した後、その前面で前方側に向かい拡散させられて照射される。これにより、上記各LEDランプ21の光9につき、所望の照射状態が得られる。
【0031】
上記凹所14の下部内には、前方側に向かって赤色の光9を照射する他のランプ30が設けられる。この他のランプ30はフィラメントを光源とするもので、上記ハウジング本体10に着脱可能に取り付けられ、車両1のテールランプを構成している。
【0032】
上記インナレンズ24のレンズ基部26の下部から下方に向かって、かつ、上記他のランプ30の後方にまで一体的に延出する延出体32が設けられる。この延出体32は、この延出体32の延出端部側を構成し、前方に向かって開口する箱状体33を有している。この箱状体33は、上下方向で離れて対面する上、下板34,35と、車体2の幅方向で離れて対面し、上記上、下板34,35を互いに一体的に結合する左、右側板36,37と、これら各板34〜37の各後端縁部を一体的に結合する底板38とを備えている。
【0033】
上記延出体32の基部39は、上記上板34の後部と互いに一体的に結合されている。上記上板34は、上記インナレンズ24の前面側と上記他のランプ30との間に介設されている。
【0034】
上記底板38に貫通孔40が形成され、この貫通孔40に上記他のランプ30が前方に向けて挿通されている。上記箱状体33の内面に表面処理としてメッキが施されており、このメッキを施した部分は、図中、梨地模様で示している。そして、上記他のランプ30が照射する光9は、上記箱状体33の内面のメッキにより、前方側に向かって反射させられる。また、上記箱状体33の前端開口を閉じる他のインナレンズ41が設けられる。この他のインナレンズ41は、樹脂製で、無色の透明体とされ、上記他のランプ30からの光9を前方側に向かって透過させる。
【0035】
上記配線基板23の下部の前方近傍に、上記延出体32の少なくとも一部分である延出体32の基部39と、上記箱状体33の上側部とが配置されている。
【0036】
前記第2、第3凹所15,16内には、それぞれ前方に向かって光9を照射する更に他のランプ43,44が設けられている。これら各他のランプ43,44はフィラメントを光源とするもので、上記ハウジング本体10に着脱自在に取り付けられ、車両1のバックランプ、ターンランプを構成している。また、上記第2、第3凹所15,16の各内面には、前記箱状体33の内面と同様に表面処理(図中、梨地模様)が施されている。そして、上記各他のランプ43,44が照射する光9は、上記第2、第3凹所15,16の内面のメッキにより、前方側に向かって反射させられる。
【0037】
上記構成によれば、インナレンズ24から他のランプ30の後方にまで一体的に延出する延出体32を設けると共に、上記他のランプ30が照射する光9を前方側に向かって反射させるよう上記延出体32を表面処理している。
【0038】
このため、上記他のランプ30が照射する光9は、上記延出体32により前方側に向かって反射させられることから、上記インナレンズ24の前面側に向かおうとする光9は遮光され、また、特に、上記延出体32における箱状体33の上板34によって、より確実に遮光される。つまり、上記他のランプ30の光9が上記インナレンズ24の前面側に漏れることは防止される。よって、このインナレンズ24を前方側に透過する上記LEDランプ21の光9の照射に対し、上記他のランプ30の光9が何らかの悪影響を与えることが防止されることから、上記ランプ装置3の光9照射時における外観上の見栄えは良好に保持される。
【0039】
また、上記したランプ装置3の見栄えの良好な保持は、上記LEDランプ21の光9を所望の照射状態にさせるためのインナレンズ24を利用して、このインナレンズ24から一体的に延出する上記延出体32を設けたことによるものである。このため、ランプハウジング7の内部空間8における余剰空間は狭いものではあるが、上記他のランプ30用として別途にリフレクタを設けることに比べ、上記のように延出体32を設けることは比較的容易にできる。また、上記のようにインナレンズ24に延出体32を一体的に形成したことにより、ランプ装置3の部品点数の増加が抑制されることから、上記ランプ装置3の見栄えの良好な保持は、簡単な構成によって達成される。
【0040】
また、上記構成によれば、配線基板23の前方に上記延出体32の少なくも一部分を配置している。
【0041】
このため、上記ランプ装置3をその前方側から見たとき、上記配線基板23が容易に見えることは、上記延出体32の利用によって防止される。よって、上記したランプ装置3の見栄えが、より良好に保持されると共に、これが簡単な構成で達成される。
【0042】
また、上記延出体32はインナレンズ24から一体的に延出したものであるため、上記したように他のランプ30用として別途にリフレクタを設け、かつ、このリフレクタを何らかの取付手段によって上記ランプハウジング7に取り付ける、ということに比べ、このランプハウジング7の内部空間8への上記延出体32のレイアウトは容易にできる。
【0043】
なお、以上は図示の例によるが、上記ランプ装置3はヘッドランプに係るランプ装置であってもよい。また、上記他のランプ30は複数であってもよく、上記他のランプ30,43,44はLEDランプであってもよい。また、上記延出体32の箱状体33における下板35と各側板36,37とは設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 車体
3 ランプ装置
7 ランプハウジング
8 内部空間
9 光
10 ハウジング本体
11 ランプアウタレンズ
14 凹所
15 凹所
16 凹所
17 隔壁
21 LEDランプ
22 締結具
23 配線基板
24 インナレンズ
30 他のランプ
32 延出体
33 箱状体
34 上板
35 下板
36 側板
37 側板
38 底板
39 基部
40 貫通孔
A 一方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、その内部空間で照射される光を、ある一方向側である前方側に向かって透過させるランプハウジングと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射するLEDランプと、上記内部空間で上記LEDランプの後方に配置され、このLEDランプを実装する配線基板と、上記内部空間で上記LEDランプの前方に配置され、このLEDランプが照射した光を透過させるインナレンズと、上記内部空間に設けられ、前方側に向かって光を照射する他のランプとを備えた車両用ランプ装置において、
上記インナレンズから上記他のランプの後方にまで一体的に延出する延出体を設けると共に、上記他のランプが照射する光を前方側に向かって反射させるよう上記延出体を表面処理し、
上記配線基板の前方に上記延出体の少なくも一部分を配置したことを特徴とする車両用ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−71014(P2011−71014A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222363(P2009−222363)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】