説明

車両用ルーフ構造

【課題】熱膨張によりルーフパネルが変形してもルーフパネルと車体骨格部材との接合状態を良好に維持することができる車両用ルーフ構造を得る。
【解決手段】ルーフパネル24は樹脂製とされており、本体部24Aと車両幅方向の端部24Bとを備えている。車両幅方向の端部24Bは断面形状がT字状とされており、接着剤塗布部24B1が接着部26によってルーフサイドレール部12の縦壁20に接合されている。そして、本体部24Aが熱膨張したときの伸び力Fの作用線P1は、接着部26の高さ方向中間部で交わるように本体部24Aと接着部26の高さが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルが樹脂製又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金製とされた車両用ルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、樹脂製のルーフパネルの端部を、接着剤を用いて車体骨格に接合した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3914525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、ルーフパネルの端部の断面形状がL字状に形成されており、当該端部の略全面を車体側のパネルに接着剤で接合する構成であるため、樹脂製のルーフパネルが熱で膨張すると、L字形断面の根元部分には圧縮力が作用し、L字形断面の先端部分には引張力が作用する。このため、ルーフパネルが熱膨張により伸びると、接着部におけるL字形断面の先端部分に対応する部位にせん断及び引張による変形が生じ、接着部の剥離の原因になる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、熱膨張によりルーフパネルが変形してもルーフパネルと車体骨格部材との接合状態を良好に維持することができる車両用ルーフ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、樹脂製又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金製とされたルーフパネルと、鋼板製とされ、かつ前記ルーフパネルの車両幅方向の端部に沿って車両前後方向に延在する車体側構成部材と、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部を前記車体側構成部材に接合する接着部と、を有し、前記ルーフパネルの本体部が熱膨張したときの伸び力が前記接着部にその上縁から下縁に亘って圧縮力として作用するように、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部の形状が設定されている。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、請求項1記載の発明において、前記ルーフパネルの伸び力は当該ルーフパネルの本体部に沿って作用し、さらに、当該ルーフパネルの伸び力の作用線が前記接着部の高さ方向中間部で交わるように、当該ルーフパネルの本体部と当該接着部との高さ関係が設定されている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記車体側構成部材は、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部と対向する位置に車両上下方向に延在する縦壁を備えており、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部は、前記縦壁に対して平行に配置されて前記接着部の接着剤が塗布される接着剤塗布部と、前記ルーフパネルの本体部に連続して形成されかつ当該接着剤塗布部に対して上縁部及び下縁部を除く途中部位にて接続される接続部と、を有する。
【0009】
請求項4記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、請求項4の発明は、前記ルーフパネルを車両幅方向に沿って切断したときのルーフパネルの車両幅方向の端部の縦断面形状は、T字形とされている。
【0010】
請求項5記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部には、当該ルーフパネルの車両幅方向の端部の上端部から車両幅方向外側へ張り出す庇部が形成されている。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、車体側構成部材が鋼板製とされ、ルーフパネルが樹脂製又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金製とされているので、各々の部材の熱膨張率が異なる。このため、例えばルーフパネルが樹脂製であると、車両が高温環境下におかれた場合にルーフパネルの本体部が熱膨張し、それに伴ってルーフパネルが車体側構成部材を車両幅方向外側へ押す力(伸び力)が発生する。
【0012】
ここで、本発明では、ルーフパネルが熱膨張したときの伸び力が接着部にその上縁から下縁に亘って圧縮力として作用するように、ルーフパネルの車両幅方向の端部の形状が設定されているので、上記伸び力が発生しても、接着部にはその上縁から下縁に亘って圧縮力が作用する。このため、接着部の上縁又は下縁に引張力やせん断力が作用して、接着部の上縁又は下縁に亀裂が入って剥離の原因となることはない。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、ルーフパネルは本体部を備えており、伸び力は本体部に沿って作用する。
【0014】
ここで、本発明では、ルーフパネルの伸び力の作用線が接着部の高さ方向中間部で交わるようにルーフパネルの本体部と接着部との高さ関係が設定されているため、接着部の全体に伸び力が圧縮力として作用する。すなわち、接着部の上縁又は下縁にのみ圧縮力が加わり、その結果として接着部の下縁又は上縁に剥離の起点となる亀裂が入ることを効果的に防ぐことができる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、ルーフパネルの車両幅方向の端部には、車体側構成部材の縦壁に対して平行に配置されて接着剤が塗布される接着剤塗布部が形成されており、ルーフパネルの本体部に連続して形成される接続部は、接着剤塗布部の上縁部及び下縁部を除く途中部位にて接続されているので、本体部から接続部を経由して接着剤塗布部に作用する伸び力は、接着剤塗布部の全域に作用する。従って、接着部はその全体で圧縮力を受けることができる。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、ルーフパネルの車両幅方向の端部の縦断面形状がT字形とされているので、ルーフパネルの面剛性が高くなる。このため、ルーフパネルの重みや熱膨張等によってルーフパネルの意匠面が設計位置から下がるのを防止又は見た目に判らない程度に抑えることができる。このことは、同時に車両用シートに着座している乗員の頭部とルーフ下面(ルーフヘッドライニングの下面)との距離が縮まるのを防止又は抑制することにもなる。従って、車両用シートに着座した乗員に天井が低いと感じることによる圧迫感を与えずに済む。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、ルーフパネルの車両幅方向の端部の上端部から車両幅方向外側へ張り出す庇部が形成されているので、庇部が張り出した範囲においては直射日光が庇部によって遮られる。つまり、庇部が張り出した範囲においては、直射日光が接着部に直接照射されることはない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、熱膨張によりルーフパネルが変形してもルーフパネルと車体骨格部材との接合状態を良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、接着部の全体を圧縮し、接着部の剥がれを効果的に防止することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、本体部に対して接着剤塗布部を設けるという簡素な構成で、接着部の全体に圧縮力を作用させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、ルーフパネルひいては車両の外観品質を良好に維持することができると共に、車両用シートに着座した乗員の快適性を良好に保つことができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係る車両用ルーフ構造は、接着部を直射日光から守り、接着部が劣化するのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係り、車両のルーフサイドレール部を車両幅方向に沿って切断した状態を車両後方側から見た拡大縦断面図である。
【図2】第1実施形態の変形例を示す図1に対応する拡大縦断面図である。
【図3】第2実施形態に係る車両用ルーフ構造の要部を示す図1に対応する拡大縦断面図である。
【図4】第3実施形態に係る車両用ルーフ構造の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】第3実施形態の変形例を示す図4に対応する斜視図である。
【図6】参考例に係る車両用ルーフ構造を示す図2に対応する拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図1を用いて、本発明に係る車両用ルーフ構造の第1実施形態について説明する。なお、図1示される矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0025】
図1には、車両のルーフサイドレール部を車両幅方向に沿って切断した状態を車両後方側から見た拡大縦断面図が示されている。この図に示されるように、車両のルーフ10の両サイドには、左右一対の「車体側構成部材」としてのルーフサイドレール部12が車両前後方向に沿って配設されている。ルーフサイドレール部12は、車室内側に配置されたレールインナパネル14と、レールインナパネル14とで閉断面を形成するレールアウタリインフォース16と、レールアウタリインフォース16の車室外側に配置されたサイドアウタパネル18との三枚のパネルで構成されている。なお、レールインナパネル14、レールアウタリインフォース16及びサイドアウタパネル18は、いずれも鋼板製とされている。
【0026】
レールインナパネル14は、三枚のパネルの最も車室内側に配置されており、両側壁がやや開いた略U字状に形成されると共に底壁が斜め上方外側を向くように配置された本体部14Aと、この本体部14Aの内端部から車両幅方向内側へ水平に屈曲された内側フランジ部14Bと、本体部14Aの外端部から斜め下方外向きに屈曲された外側フランジ部14Cと、によって構成されている。
【0027】
レールアウタリインフォース16は、三枚のパネルの中間に配置されており、両側壁がやや開いたハット状に形成されると共に底壁が本体部14Aの底壁と略平行に配置された本体部16Aと、この本体部16Aの内端部から車両幅方向内側へ水平に屈曲された内側フランジ部16Bと、本体部16Aの外端部から斜め下方外向きに屈曲された外側フランジ部16Cと、によって構成されている。
【0028】
サイドアウタパネル18は、三枚のパネルの最も車室外側に配置されており、レールアウタリインフォース16の本体部16Aを車室外側から覆うことが可能な膨らみを有する本体部18Aと、この本体部18Aの内端部から車両幅方向内側へ水平に屈曲された内側フランジ部18Bと、本体部18Aの外端部から斜め下方外向きに屈曲された外側フランジ部18Cと、によって構成されている。さらに言及すると、サイドアウタパネル18の本体部18Aにおける車両幅方向内側の側壁(以下、この側壁を「縦壁20」と称す。)は、車両上下方向に略垂直に配置されている。
【0029】
上記レールインナパネル14の内側フランジ部14Bと、レールアウタリインフォース16の内側フランジ部16Bと、サイドアウタパネル18の内側フランジ部18Bの三枚が重ね合わされてスポット溶接により結合されている。同様に、レールインナパネル14の外側フランジ14Cと、レールアウタリインフォース16の外側フランジ部16Cと、サイドアウタパネル18の外側フランジ部18Cの三枚が重ね合わされてスポット溶接により結合されている。これにより、ルーフサイドレール部12に、車両前後方向に沿って閉断面部22が延在する車両骨格部材が形成されている。
【0030】
上述した左右のルーフサイドレール部12間には、ポリプロピレン、繊維強化樹脂、ポリカーボネート等の樹脂材料で構成されたルーフパネル24が接着部26にて接合されており、以下に詳細に説明する。
【0031】
ルーフパネル24は、車両上方側へ凸となる緩やかな湾曲形状に形成されると共にキャビンを車両上方側から覆う本体部24Aを備えている。また、ルーフパネル24の車両幅方向の両端部24Bの縦断面形状はT字状に形成されている。
【0032】
より具体的には、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bは、サイドアウタパネル18の本体部18Aにおける縦壁20に対して平行に配置されて接着部26の接着剤が塗布される接着剤塗布部24B1と、本体部24Aに連続して形成されかつ接着剤塗布部24B1の高さ方向中間部に接続された接続部24B2と、によって構成されている。なお、ここでいう「平行」には、縦壁20に対して完全に平行な場合の他、接着剤塗布部24B1が縦壁20に対して僅かに傾斜している場合も含まれる(後述する第2実施形態以降においても同様とする。)。
【0033】
接着部26は、一例としてウレタン系接着剤を塗布することにより構成されている。また、ルーフパネル24の本体部24Aに作用する伸び力(横力)Fの作用線P1は、接着部26の塗布範囲Qの高さ方向中間部で交わるように、ルーフパネル24の本体部24Aと接着部26との高さ関係が設定されている。なお、図1では、接着剤塗布部24B1の下縁に接着部26の下縁が位置するようになっているが、必ずしも下縁を揃える必要はなく、接着剤塗布部24B1とサイドアウタパネル18の縦壁20との間に接着剤が塗布されて接着部26が形成されていればよい。
【0034】
用語の解釈について補足すると、伸び力Fの「作用線P1」は、ルーフパネル24の本体部24Aが熱膨張により伸びて接着部26を車両幅方向外側へ押す力の作用線であることから、本体部24Aの板厚の中心線とみなしてよい。また、接着部26の「高さ方向中間部」とは、接着部26の塗布範囲Qの高さ方向の中間位置のみをいうのではなく、これより高さ方向に多少ずれていてもよい。
【0035】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0036】
ルーフサイドレール部12が鋼板製とされ、ルーフパネル24が樹脂製とされているので、各々の部材の熱膨張率が異なる。このため、車両が高温環境下におかれた場合、ルーフパネル24の本体部24Aが熱膨張し、それに伴ってルーフパネル24がルーフサイドレール部12を車両幅方向外側へ押す力(伸び力F)が発生する。
【0037】
ここで、本実施形態では、ルーフパネル24の本体部24Aの伸び力Fの作用線P1が接着部26の高さ方向中間部で交わるようにルーフパネル24の本体部24Aと接着部26との高さ関係が設定されているため、接着部26の上縁から下縁に亘る全体に伸び力Fが圧縮力として作用する。すなわち、接着部26の上縁又は下縁にのみ圧縮力が加わり、その結果として接着部26の下縁又は上縁に剥離の起点となる亀裂が入ることを効果的に防ぐことができる。その結果、本実施形態によれば、熱膨張によりルーフパネル24が変形しても、接着部26の剥がれを効果的に防止して、ルーフパネル24とルーフサイドレール部12との接合状態を良好に維持することができる。
【0038】
また、接着部26が全体で圧縮力(横力)を受けるような構造であると、上記と同様の理由から、側面衝突時の衝突荷重がセンタピラーを介してルーフサイドレール部12に入力されたときにも極めて有効である。すなわち、本実施形態において、センタピラーを介してルーフサイドレール部12に車両幅方向内側への衝突荷重(伸び力Fと反対向きの荷重)が入力されると、縦壁20から接着部26に車両幅方向内側への衝突荷重が入力される。このとき、本実施形態では、接着部26の全体がルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bの接着剤塗布部24B1から反力を受けて車両幅方向に圧縮されるので、接着部26の上縁部又は下縁部に剥離を助長させる亀裂が生じることはない。従って、側面衝突荷重をルーフサイドレール部12からルーフパネル24の本体部24Aを介して反対側のルーフサイドレール部12に伝達する(流す)ことができる。
【0039】
特に、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bには、ルーフサイドレール部12の縦壁20に対して平行に配置されて接着剤が塗布される接着剤塗布部24B1が形成されており、ルーフパネル24の本体部24Aに連続して形成される接続部24B2は、接着剤塗布部24B1の上縁部及び下縁部を除く途中部位(本実施形態では、接着剤塗布部24B1の高さ方向中間部)にて接続されているので、本体部24Aから接続部24B2を経由して接着剤塗布部24B1に作用する伸び力Fは、接着剤塗布部24B1の全域に作用する。従って、接着部26はその全体で圧縮力を受けることができる。その結果、本実施形態によれば、本体部24Aに対して接着剤塗布部24B1を設けるという簡素な構成で、接着部26の全体に圧縮力を作用させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bの縦断面形状がT字形とされているので、ルーフパネル24の面剛性が高くなる。このため、ルーフパネル24の重みや熱膨張等によってルーフパネル24の本体部24Aの意匠面が設計位置から下がるのを防止又は見た目に判らない程度に抑えることができる。このことは、同時に車両用シートに着座している乗員の頭部とルーフ下面(ルーフパネル24の下方に内張りされたルーフヘッドライニングの下面)との距離が縮まるのを防止又は抑制することにもなる。従って、車両用シートに着座した乗員に天井が低いと感じることによる圧迫感を与えずに済む。その結果、本実施形態によれば、ルーフパネル24ひいては車両の外観品質を良好に維持することができると共に、車両用シートに着座した乗員の快適性を良好に保つことができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bの形状をT字形にしたが、これに限らず、図2に示されるように、接着剤塗布部24B1の上端部に車両幅方向外側(サイドアウタパネル18の縦壁20側)へ張り出す庇部28を設けてもよい。この構成によれば、庇部28が張り出した範囲においては直射日光が庇部28によって遮られる。つまり、庇部28が張り出した範囲においては、直射日光が接着部26に直接照射されることはない。よって、接着部26を直射日光から守り、接着部26が劣化するのを抑制することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
以下、図3を用いて、本発明に係る車両用ルーフ構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0043】
図3に示されるように、この第2実施形態に係る車両用ルーフ構造では、ルーフパネル30の本体部30Aの車両幅方向の端部30Bの形状が車両下方側が開放された略逆U字状に形成されている点に特徴がある。
【0044】
より具体的に説明すると、ルーフパネル30の車両幅方向の端部30Bは、本体部30Aの車両幅方向外側の端部から斜め上方外側へ延出された傾斜部30B1と、傾斜部30B1の上端部から車両幅方向外側へ水平に延出された水平部30B2と、水平部30B2の外側の端部から車両下方側へ屈曲垂下された垂直部30B3と、によって構成されている。垂直部30B3は、第1実施形態で説明した接着剤塗布部24B1と同様であり、サイドアウタパネル18の縦壁20に対して平行に配置されて接着剤が塗布されるようになっている。
【0045】
また、ルーフパネル30の本体部30Aの伸び力Fの作用線P2が接着部26の高さ方向中間部で交わるようにルーフパネル30の本体部30Aと接着部26との高さ関係が設定されている
【0046】
(作用・効果)
車両が高温環境下におかれてルーフパネル30の本体部30Aが熱膨張すると、それに伴ってルーフパネル30がルーフサイドレール部12を車両幅方向外側へ押す力(伸び力F)が発生する。
【0047】
ここで、本実施形態では、ルーフパネル30の本体部30Aの伸び力Fの作用線P2が接着部26の高さ方向中間部で交わるようにルーフパネル30の本体部30Aと接着部26との高さ関係が設定されているため、接着部26の上縁から下縁に亘る全体に伸び力Fが圧縮力として作用する。詳細には、本実施形態のルーフパネル30の車両幅方向の端部30Bの形状の場合、接着剤塗布部である垂直部30B3の上端部に水平部30B2が接続されているため、一見すると、接着部26の下縁側にせん断荷重及び引張荷重が入って亀裂が発生する構造のようにも見える。しかし、本実施形態では、水平部30B2の内端から傾斜部30B1を介してルーフパネル30の本体部30Aの高さを下げているので、ルーフパネル30の本体部30Aの伸び力Fは、垂直部30B3の高さ方向中間部に入力される。よって、前述した第1実施形態と同様の作用が得られる。すなわち、接着部26の上縁又は下縁にのみ圧縮力が加わり、その結果として接着部26の下縁又は上縁に剥離の起点となる亀裂が入ることを効果的に防ぐことができる。その結果、本実施形態においても前述した第1実施形態と同様に、熱膨張によりルーフパネル30が変形しても、接着部26の剥がれを効果的に防止して、ルーフパネル30とルーフサイドレール部12との接合状態を良好に維持することができる。
【0048】
また、本実施形態においても、接着部26が全体で圧縮力(横力)を受けるような構造であるため、第1実施形態と同様の理由から、側面衝突時の衝突荷重をルーフサイドレール部12からルーフパネル30の本体部30Aを介して反対側のルーフサイドレール部12に伝達する(流す)ことができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、ルーフパネル30の本体部30Aの車両幅方向の端部30Bの形状を車両下方側が開放された略逆U字状に形成したので、当該端部30Bは車両幅方向にある程度弾性変形可能なバネ性を有している。このため、ルーフパネル30の本体部30Aの膨張・収縮を当該端部30Bの弾性変形により吸収することができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
以下、図4及び図5を用いて、本発明に係る車両用ルーフ構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0051】
図4に示されるように、この第3実施形態では、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bにおいて接着剤塗布部24B1と接続部24B2とが交差する部位に、各々略直角三角形状とされた複数の補強リブ40が車両前後方向に所定の間隔で立設されている点に特徴がある。これらの補強リブ40は、ルーフパネル24と一体に形成されており、ルーフパネル24の表裏面に設けられている。なお、本実施形態を採用する場合、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bにおいて接着剤塗布部24B1と接続部24B2とが交差する部位に水抜き孔若しくは水抜き溝を設けるのが好ましい。
【0052】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態の構成を踏襲しているので、第1実施形態と同様の作用並びに効果が得られる。さらに、複数の補強リブ40を設けたことにより、ルーフパネル24の車両幅方向の端部24Bの接着剤塗布部24B2が補強されるので、ルーフパネル24の本体部24Aの伸びに対する反力が接着剤塗布部24B2に作用した場合や側面衝突荷重がルーフサイドレール部12に作用した場合にも、充分な荷重伝達を行うことができる。
【0053】
図4に示される実施形態では、補強リブ40を所定間隔ごとに設ける構成を採ったが、これに限らず、図5に示されるように、複数の補強リブを車両前後方向に繋げた形状にしてもよい。すなわち、ルーフパネル42の本体部42Aから車両幅方向外側へ向けて裾広がり形状に厚さを増す厚肉部42Bを一体に形成してもよい。このようにすれば、水抜き孔を別途形成する必要もなく、製造が容易である。
【0054】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した実施形態では、ルーフパネル24等が樹脂製とされていたが、これに限らず、アルミニウム若しくはアルミニウム合金製とされていてもよい。
【0055】
(参考例)
以下、図6を用いて、参考例について簡単に説明する。図6に示されるように、この参考例では、ルーフパネル60の本体部60Bと車両幅方向の端部60Bとの境界部の下面に車両前後方向に延在する凹溝62を形成すると共に、本体部60Bの下面外側に鍵状のストッパ64が一体に形成されている。ストッパ64は本体部60Bの下面から垂下するように形成されており、更にストッパ64の下端部には、車両幅方向外側へ突出する突起状の係合部66が一体に形成されている。係合部66の先端部は、ルーフサイドレール部12の三枚の内側フランジ部14B、16B、18Bの車両下方側に近接して配置されている。
【0056】
上記構成は、何らかの理由により、ルーフパネルの車両幅方向の端部をサイドアウタパネルの縦壁に接着できない場合に好適である。上記構成を採った場合、側面衝突時に衝突荷重(横力)がルーフサイドレール部12に入力されると、凹溝62を起点にしてルーフパネル60の本体部60Bを車両上方側へ撓ませながら、三枚の内側フランジ部14B、16B、18Bがストッパ64の係合部66に係合される。これにより、側面衝突荷重がストッパ64を介してルーフパネル60の本体部60Aに入力され、反対側のルーフサイドレール部12へ伝達される(流される)。
【符号の説明】
【0057】
10 ルーフ
12 ルーフサイドレール部(車体側構成部材)
20 縦壁
24 ルーフパネル
24A 本体部
24B 車両幅方向の端部
24B1 接着剤塗布部
24B2 接続部
26 接着部
28 庇部
30 ルーフパネル
30A 本体部
30B 車両幅方向の端部
42 ルーフパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金製とされたルーフパネルと、
鋼板製とされ、かつ前記ルーフパネルの車両幅方向の端部に沿って車両前後方向に延在する車体側構成部材と、
前記ルーフパネルの車両幅方向の端部を前記車体側構成部材に接合する接着部と、
を有し、
前記ルーフパネルの本体部が熱膨張したときの伸び力が前記接着部にその上縁から下縁に亘って圧縮力として作用するように、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部の形状が設定されている、
車両用ルーフ構造。
【請求項2】
前記ルーフパネルの伸び力は当該ルーフパネルの本体部に沿って作用し、
さらに、当該ルーフパネルの伸び力の作用線が前記接着部の高さ方向中間部で交わるように、当該ルーフパネルの本体部と当該接着部との高さ関係が設定されている、
請求項1記載の車両用ルーフ構造。
【請求項3】
前記車体側構成部材は、前記ルーフパネルの車両幅方向の端部と対向する位置に車両上下方向に延在する縦壁を備えており、
前記ルーフパネルの車両幅方向の端部は、前記縦壁に対して平行に配置されて前記接着部の接着剤が塗布される接着剤塗布部と、前記ルーフパネルの本体部に連続して形成されかつ当該接着剤塗布部に対して上縁部及び下縁部を除く途中部位にて接続される接続部と、を有する、
請求項1又は請求項2記載の車両用ルーフ構造。
【請求項4】
前記ルーフパネルを車両幅方向に沿って切断したときのルーフパネルの車両幅方向の端部の縦断面形状は、T字形とされている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ルーフ構造。
【請求項5】
前記ルーフパネルの車両幅方向の端部には、当該ルーフパネルの車両幅方向の端部の上端部から車両幅方向外側へ張り出す庇部が形成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両用ルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25256(P2012−25256A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165066(P2010−165066)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】