車両用係止装置
【課題】蓋部材や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差による係止力のばらつきを抑制することができる車両用係止装置を提供する。
【解決手段】ヒンジHにより揺動して開閉可能とされた蓋部材2を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材2から突出形成された係止用金具2aと係止し得る車両用係止装置1において、車両側における蓋部材2の係止用金具2aと対応した位置に固定された係止装置本体4と、該係止装置本体4内に配設されるとともに、係止用金具2aを案内する案内路5aを有し、当該係止装置本体4内で案内路5aの延設方向に摺動自在とされた摺動部材5と、該摺動部材5に形成されるとともに、案内路5aにて案内された係止用金具2aと係止し得る爪部6とを具備したものである。
【解決手段】ヒンジHにより揺動して開閉可能とされた蓋部材2を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材2から突出形成された係止用金具2aと係止し得る車両用係止装置1において、車両側における蓋部材2の係止用金具2aと対応した位置に固定された係止装置本体4と、該係止装置本体4内に配設されるとともに、係止用金具2aを案内する案内路5aを有し、当該係止装置本体4内で案内路5aの延設方向に摺動自在とされた摺動部材5と、該摺動部材5に形成されるとともに、案内路5aにて案内された係止用金具2aと係止し得る爪部6とを具備したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、二輪車の着座用シート(タンデムシートなど)は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされており、通常時に当該着座シートを閉状態にて保持すべく係止装置が車両側に固定されている。かかる車両用係止装置は、例えば係止装置本体内にバネ等で付勢された爪部を有しており、当該爪部が係止用金具の所定位置に形成された切欠きと合致することにより係止するよう構成されていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用係止装置においては、車両側に固定されて係止用金具との係止位置が固定されていたため、着座シート(蓋部材)や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差等が生じた場合、係止力にばらつきが生じ、開閉時に付与すべき荷重が異なってしまう虞があり問題であった。即ち、係止力が過小な場合、着座シートが不用意に開いてしまう虞がある一方、係止力が過大な場合、開閉作業が困難となってしまうのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、蓋部材や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差による係止力のばらつきを抑制することができる車両用係止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置において、車両側における前記蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、該係止装置本体内に配設されるとともに、前記係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、該摺動部材に形成されるとともに、前記案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段とを具備したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用係止装置において、前記摺動部材における案内路及び係止手段は、前記係止金具の幅寸法より大きく形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用係止装置において、前記案内路は、前記係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、蓋部材を閉状態まで揺動させる過程で、係止用金具が案内路にて案内されつつ摺動部材を係止装置本体内で摺動させ得るので、蓋部材や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差を摺動部材の摺動動作にて吸収し、係止力のばらつきを抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、摺動部材における案内路及び係止手段は、係止金具の幅寸法より大きく形成されているので、組み付け誤差により係止用金具と係止装置本体とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、当該誤差を許容しつつ係止手段による係止を確実に行わせることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、案内路は、係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされているので、蓋部材のオーバーストロークを許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両用係止装置は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得るものであり、図1及び図2に示すように、二輪車の着座シートから成る蓋部材2がヒンジHにて揺動されて開閉可能とされたものに適用される。
【0012】
蓋部材2は、その一部に屈曲しつつ突出形成された金属製棒状部材から成る係止用金具2aを有しており、図1に示す如き開状態のとき、二輪車に形成された収容空間3を開放させ、例えば荷物等を収容又は取り出し可能とされている。また、通常時(車両の走行時等)においては、蓋部材2がヒンジHにて揺動され、図2に示すように、収容空間3を塞ぐとともに、車両用係止装置1により閉状態が保持されるよう構成されている。尚、図中符号2bは、係止用金具2aを蓋部材2に取り付けて一体化する取付金具を示している。
【0013】
車両用係止装置1は、図3〜図5に示すように、係止装置本体4と、摺動部材5と、係止手段としての爪部6とから主に構成されている。係止装置本体4は、両端縁部にネジ孔4bが形成されており、当該ネジ孔4bにネジ(不図示)を挿通させつつ車両の所定部位に螺着させることにより、車両側における係止用金具2aと対応した位置(図1及び図2参照)に固定され得るようになっている。
【0014】
係止装置本体4内には、開口部4aaにて上方へ開口した収容凹部4aが形成されており、当該収容凹部4a内には、当該係止装置本体4とは別体の摺動部材5が配設されている。かかる摺動部材5には、係止用金具2の形状に倣って屈曲しつつ延設された案内路5aが形成されており、その途中にスプリング7で付勢された爪部6が形成されている。尚、爪部6は、図4で示すように、スプリング7にて付勢されつつ案内路5aの途中に形成された孔5b内に収容されて、その突端が当該案内路5aに突出した状態とされており、凸部6aにて案内路5a側への更なる突出が規制されている。
【0015】
案内路5aは、蓋部材2を閉状態とする過程の係止用金具2を爪部6まで案内すべく摺動部材5に造り込まれた溝形状から成り、その開口縁部はテーパ面5aa、5abにて面取りされている。しかして、ヒンジHにて蓋部材2を揺動させ、開状態から閉状態とすると、係止用金具2aが案内路5a内に挿通され、図6及び図7に示すように、爪部6側へ案内されることとなる。
【0016】
一方、係止用金具2aの先端近傍には、切欠き2aa(図1の拡大図参照)が形成されており、爪部6の突端が当該切欠き2aaと対応した形状とされている。然るに、上述の如く案内路5aにて案内された係止用金具2aの切欠き2aaが爪部6の突端と合致(図8参照)することにより、その位置で当該爪部6が係止用金具2aを係止し得るよう構成されている。
【0017】
ここで、本実施形態においては、摺動部材5の長手方向(案内路5aの延設方向であって図4中左右方向)の寸法は、収容凹部4aの同方向寸法より小さく設定されており、摺動部材5が収容凹部4aにおいて当該方向へ摺動自在とされている。これにより、蓋部材2を閉状態まで揺動させる過程で、係止用金具2aが案内路5aにて案内されつつ摺動部材5を係止装置本体4内で摺動させ得るので、蓋部材2や係止装置本体4の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差を摺動部材5の摺動動作にて吸収し、係止力のばらつきを抑制することができる。
【0018】
また、図5に示すように、摺動部材5における案内路5a及び爪部6の幅寸法t2は、係止用金具2aの幅寸法t1より大きく設定されている。これにより、組み付け誤差により係止用金具2aと係止装置本体4とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、寸法t2の範囲内に係止用金具2aが収まれば、当該誤差を許容しつつ爪部6による係止を確実に行わせることができる。
【0019】
更に、摺動部材5における案内路5aは、係止用金具2aが爪部6と係止された状態における当該係止用金具2aの突端位置よりも更に延設されて案内可能とする延長部D(図8参照)が形成されている。これにより、係止状態の蓋部材2を更に閉方向に揺動させた場合も、図9に示すように、同方向へ係止用金具2aを案内することができるので、蓋部材2のオーバーストロークを許容することができる。
【0020】
次に、上記車両用係止装置における作用について説明する。
図1で示す如く開状態とされた蓋部材2をヒンジHにて揺動させ、閉状態とする場合、図6に示すように、係止用金具2aの先端が係止装置本体4の開口部4aaを介して摺動部材5の案内路5aに至る。このとき、案内路5aが係止用金具2aの揺動軌跡と合致していれば、摺動部材5は摺動せず、図7に示すように、係止用金具2aが爪部6と当接する。
【0021】
そして、更なる蓋部材2の揺動により係止用金具2aが案内路5aを進むと、爪部6がスプリング7の付勢力に抗して孔5b内に没するとともに、切欠き2aaが爪部6の位置となったとき、爪部6がスプリング7の付勢力で切欠き2aaと合致するまで再び突出する(図8参照)。これにより、係止用金具2aが爪部6によって係止され、蓋部材2を閉状態にて保持することができる。
【0022】
また、かかる係止状態から更に蓋部材2を閉方向に揺動させると、爪部6がスプリング7の付勢力に抗して孔5b内に没するとともに、延長部Dに係止用金具2aの突端が至ることとなるので、蓋部材2のオーバーストロークを許容することができる。尚、閉状態の蓋部材2を、スプリング7の付勢力より大きな力で引き上げれば、切欠き2aaから爪部6が外れて係止が解除され、開状態まで揺動させることができる。
【0023】
一方、蓋部材2や係止装置本体4の車両に対する組み付け誤差が生じていて、図10に示すように、案内路5a入口における一方のテーパ面5aaに係止用金具2aが当接すると、摺動部材5が同図中矢印方向に押圧され、同方向に摺動するので、係止用金具2aは、組み付け誤差がないときと同様に案内路5aにて案内された後、図11で示すように、爪部6による係止がなされる。
【0024】
また、図12に示すように、組み付け誤差により案内路5a入口における他方のテーパ面5abに係止用金具2aが当接すると、摺動部材5が同図中矢印方向に押圧され、同方向に摺動するので、係止用金具2aは、組み付け誤差がないときと同様に案内路5aにて案内された後、図13で示すように、爪部6による係止がなされる。即ち、組み付け誤差により係止用金具2aと案内路5aとが相対的に位置ずれが生じていると、当該位置ずれを解消する方向に摺動部材5が摺動するので、係止用金具2aの係止を常に確実に行わせることができる。
【0025】
上記実施形態によれば、係止用金具2aを屈曲させ、それに伴って案内路5aが摺動部材5に対して傾斜しつつ形成されているので、係止用金具2aと案内路5aとが相対的に位置ずれが生じている場合、係止用金具2aの揺動動作を効率よく摺動部材5側に伝達させ、摺動させることができる。また、既述のように、組み付け誤差により係止用金具2aと係止装置本体4とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、当該誤差を許容しつつ爪部6による係止を確実に行わせることができる。しかして、組み付け誤差の有無に拘わらず、係止用金具2aに対する係止力を常に一定とすることができるので、蓋部材2の開閉動作時に操作者が付与すべき荷重が一定となり、開閉時の操作性を良好とすることができる。
【0026】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば摺動部材において幅方向に係止用金具2aを案内する別個の案内路を設け、当該幅方向にも摺動部材が摺動することにより、組み付け誤差を吸収させるよう構成してもよい。また、蓋部材2に複数の係止用金具を固定させ、これと対応させて車両側に複数の車両用係止装置を固定させるようにしてもよい。尚、本実施形態においては、蓋部材が二輪車の着座シートから成るものであるが、車両においてヒンジで開閉可能な種々形態の蓋部材の係止装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
車両側における蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、該係止装置本体内に配設されるとともに係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、該摺動部材に形成されるとともに、案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段とを具備した車両用係止装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用係止装置が適用される開状態の蓋部材を示す模式図
【図2】同車両用係止装置が適用される閉状態の蓋部材を示す模式図
【図3】同車両用係止装置を示す平面図及び正面図
【図4】図3におけるIV−IV線断面図
【図5】図3におけるV−V線断面図
【図6】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし)を示す模式図
【図7】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし)を示す模式図
【図8】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし、係止状態)を示す模式図
【図9】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし、オーバーストローク状態)を示す模式図
【図10】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり)を示す模式図
【図11】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり、係止状態)を示す模式図
【図12】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり)を示す模式図
【図13】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり、係止状態)を示す模式図
【符号の説明】
【0029】
1 車両用係止装置
2 蓋部(着座シート)
2a 係止用金具
3 収容空間
4 係止装置本体
5 摺動部材
5a 案内路
6 爪部(係止手段)
7 スプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、二輪車の着座用シート(タンデムシートなど)は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされており、通常時に当該着座シートを閉状態にて保持すべく係止装置が車両側に固定されている。かかる車両用係止装置は、例えば係止装置本体内にバネ等で付勢された爪部を有しており、当該爪部が係止用金具の所定位置に形成された切欠きと合致することにより係止するよう構成されていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用係止装置においては、車両側に固定されて係止用金具との係止位置が固定されていたため、着座シート(蓋部材)や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差等が生じた場合、係止力にばらつきが生じ、開閉時に付与すべき荷重が異なってしまう虞があり問題であった。即ち、係止力が過小な場合、着座シートが不用意に開いてしまう虞がある一方、係止力が過大な場合、開閉作業が困難となってしまうのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、蓋部材や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差による係止力のばらつきを抑制することができる車両用係止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置において、車両側における前記蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、該係止装置本体内に配設されるとともに、前記係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、該摺動部材に形成されるとともに、前記案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段とを具備したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用係止装置において、前記摺動部材における案内路及び係止手段は、前記係止金具の幅寸法より大きく形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用係止装置において、前記案内路は、前記係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、蓋部材を閉状態まで揺動させる過程で、係止用金具が案内路にて案内されつつ摺動部材を係止装置本体内で摺動させ得るので、蓋部材や係止装置本体の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差を摺動部材の摺動動作にて吸収し、係止力のばらつきを抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、摺動部材における案内路及び係止手段は、係止金具の幅寸法より大きく形成されているので、組み付け誤差により係止用金具と係止装置本体とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、当該誤差を許容しつつ係止手段による係止を確実に行わせることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、案内路は、係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされているので、蓋部材のオーバーストロークを許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両用係止装置は、ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得るものであり、図1及び図2に示すように、二輪車の着座シートから成る蓋部材2がヒンジHにて揺動されて開閉可能とされたものに適用される。
【0012】
蓋部材2は、その一部に屈曲しつつ突出形成された金属製棒状部材から成る係止用金具2aを有しており、図1に示す如き開状態のとき、二輪車に形成された収容空間3を開放させ、例えば荷物等を収容又は取り出し可能とされている。また、通常時(車両の走行時等)においては、蓋部材2がヒンジHにて揺動され、図2に示すように、収容空間3を塞ぐとともに、車両用係止装置1により閉状態が保持されるよう構成されている。尚、図中符号2bは、係止用金具2aを蓋部材2に取り付けて一体化する取付金具を示している。
【0013】
車両用係止装置1は、図3〜図5に示すように、係止装置本体4と、摺動部材5と、係止手段としての爪部6とから主に構成されている。係止装置本体4は、両端縁部にネジ孔4bが形成されており、当該ネジ孔4bにネジ(不図示)を挿通させつつ車両の所定部位に螺着させることにより、車両側における係止用金具2aと対応した位置(図1及び図2参照)に固定され得るようになっている。
【0014】
係止装置本体4内には、開口部4aaにて上方へ開口した収容凹部4aが形成されており、当該収容凹部4a内には、当該係止装置本体4とは別体の摺動部材5が配設されている。かかる摺動部材5には、係止用金具2の形状に倣って屈曲しつつ延設された案内路5aが形成されており、その途中にスプリング7で付勢された爪部6が形成されている。尚、爪部6は、図4で示すように、スプリング7にて付勢されつつ案内路5aの途中に形成された孔5b内に収容されて、その突端が当該案内路5aに突出した状態とされており、凸部6aにて案内路5a側への更なる突出が規制されている。
【0015】
案内路5aは、蓋部材2を閉状態とする過程の係止用金具2を爪部6まで案内すべく摺動部材5に造り込まれた溝形状から成り、その開口縁部はテーパ面5aa、5abにて面取りされている。しかして、ヒンジHにて蓋部材2を揺動させ、開状態から閉状態とすると、係止用金具2aが案内路5a内に挿通され、図6及び図7に示すように、爪部6側へ案内されることとなる。
【0016】
一方、係止用金具2aの先端近傍には、切欠き2aa(図1の拡大図参照)が形成されており、爪部6の突端が当該切欠き2aaと対応した形状とされている。然るに、上述の如く案内路5aにて案内された係止用金具2aの切欠き2aaが爪部6の突端と合致(図8参照)することにより、その位置で当該爪部6が係止用金具2aを係止し得るよう構成されている。
【0017】
ここで、本実施形態においては、摺動部材5の長手方向(案内路5aの延設方向であって図4中左右方向)の寸法は、収容凹部4aの同方向寸法より小さく設定されており、摺動部材5が収容凹部4aにおいて当該方向へ摺動自在とされている。これにより、蓋部材2を閉状態まで揺動させる過程で、係止用金具2aが案内路5aにて案内されつつ摺動部材5を係止装置本体4内で摺動させ得るので、蓋部材2や係止装置本体4の車両に対する組み付け誤差が生じても、当該誤差を摺動部材5の摺動動作にて吸収し、係止力のばらつきを抑制することができる。
【0018】
また、図5に示すように、摺動部材5における案内路5a及び爪部6の幅寸法t2は、係止用金具2aの幅寸法t1より大きく設定されている。これにより、組み付け誤差により係止用金具2aと係止装置本体4とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、寸法t2の範囲内に係止用金具2aが収まれば、当該誤差を許容しつつ爪部6による係止を確実に行わせることができる。
【0019】
更に、摺動部材5における案内路5aは、係止用金具2aが爪部6と係止された状態における当該係止用金具2aの突端位置よりも更に延設されて案内可能とする延長部D(図8参照)が形成されている。これにより、係止状態の蓋部材2を更に閉方向に揺動させた場合も、図9に示すように、同方向へ係止用金具2aを案内することができるので、蓋部材2のオーバーストロークを許容することができる。
【0020】
次に、上記車両用係止装置における作用について説明する。
図1で示す如く開状態とされた蓋部材2をヒンジHにて揺動させ、閉状態とする場合、図6に示すように、係止用金具2aの先端が係止装置本体4の開口部4aaを介して摺動部材5の案内路5aに至る。このとき、案内路5aが係止用金具2aの揺動軌跡と合致していれば、摺動部材5は摺動せず、図7に示すように、係止用金具2aが爪部6と当接する。
【0021】
そして、更なる蓋部材2の揺動により係止用金具2aが案内路5aを進むと、爪部6がスプリング7の付勢力に抗して孔5b内に没するとともに、切欠き2aaが爪部6の位置となったとき、爪部6がスプリング7の付勢力で切欠き2aaと合致するまで再び突出する(図8参照)。これにより、係止用金具2aが爪部6によって係止され、蓋部材2を閉状態にて保持することができる。
【0022】
また、かかる係止状態から更に蓋部材2を閉方向に揺動させると、爪部6がスプリング7の付勢力に抗して孔5b内に没するとともに、延長部Dに係止用金具2aの突端が至ることとなるので、蓋部材2のオーバーストロークを許容することができる。尚、閉状態の蓋部材2を、スプリング7の付勢力より大きな力で引き上げれば、切欠き2aaから爪部6が外れて係止が解除され、開状態まで揺動させることができる。
【0023】
一方、蓋部材2や係止装置本体4の車両に対する組み付け誤差が生じていて、図10に示すように、案内路5a入口における一方のテーパ面5aaに係止用金具2aが当接すると、摺動部材5が同図中矢印方向に押圧され、同方向に摺動するので、係止用金具2aは、組み付け誤差がないときと同様に案内路5aにて案内された後、図11で示すように、爪部6による係止がなされる。
【0024】
また、図12に示すように、組み付け誤差により案内路5a入口における他方のテーパ面5abに係止用金具2aが当接すると、摺動部材5が同図中矢印方向に押圧され、同方向に摺動するので、係止用金具2aは、組み付け誤差がないときと同様に案内路5aにて案内された後、図13で示すように、爪部6による係止がなされる。即ち、組み付け誤差により係止用金具2aと案内路5aとが相対的に位置ずれが生じていると、当該位置ずれを解消する方向に摺動部材5が摺動するので、係止用金具2aの係止を常に確実に行わせることができる。
【0025】
上記実施形態によれば、係止用金具2aを屈曲させ、それに伴って案内路5aが摺動部材5に対して傾斜しつつ形成されているので、係止用金具2aと案内路5aとが相対的に位置ずれが生じている場合、係止用金具2aの揺動動作を効率よく摺動部材5側に伝達させ、摺動させることができる。また、既述のように、組み付け誤差により係止用金具2aと係止装置本体4とが、互いの幅方向に寸法誤差を生じていても、当該誤差を許容しつつ爪部6による係止を確実に行わせることができる。しかして、組み付け誤差の有無に拘わらず、係止用金具2aに対する係止力を常に一定とすることができるので、蓋部材2の開閉動作時に操作者が付与すべき荷重が一定となり、開閉時の操作性を良好とすることができる。
【0026】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば摺動部材において幅方向に係止用金具2aを案内する別個の案内路を設け、当該幅方向にも摺動部材が摺動することにより、組み付け誤差を吸収させるよう構成してもよい。また、蓋部材2に複数の係止用金具を固定させ、これと対応させて車両側に複数の車両用係止装置を固定させるようにしてもよい。尚、本実施形態においては、蓋部材が二輪車の着座シートから成るものであるが、車両においてヒンジで開閉可能な種々形態の蓋部材の係止装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
車両側における蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、該係止装置本体内に配設されるとともに係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、該摺動部材に形成されるとともに、案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段とを具備した車両用係止装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用係止装置が適用される開状態の蓋部材を示す模式図
【図2】同車両用係止装置が適用される閉状態の蓋部材を示す模式図
【図3】同車両用係止装置を示す平面図及び正面図
【図4】図3におけるIV−IV線断面図
【図5】図3におけるV−V線断面図
【図6】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし)を示す模式図
【図7】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし)を示す模式図
【図8】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし、係止状態)を示す模式図
【図9】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差なし、オーバーストローク状態)を示す模式図
【図10】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり)を示す模式図
【図11】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり、係止状態)を示す模式図
【図12】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり)を示す模式図
【図13】同車両用係止装置の係止用金具に対する係止動作(組み付け誤差あり、係止状態)を示す模式図
【符号の説明】
【0029】
1 車両用係止装置
2 蓋部(着座シート)
2a 係止用金具
3 収容空間
4 係止装置本体
5 摺動部材
5a 案内路
6 爪部(係止手段)
7 スプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置において、
車両側における前記蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、
該係止装置本体内に配設されるとともに、前記係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、
該摺動部材に形成されるとともに、前記案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段と、
を具備したことを特徴とする車両用係止装置。
【請求項2】
前記摺動部材における案内路及び係止手段は、前記係止用金具の幅寸法より大きく形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用係止装置。
【請求項3】
前記案内路は、前記係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用係止装置。
【請求項1】
ヒンジにより揺動して開閉可能とされた蓋部材を閉状態にて保持すべく、当該蓋部材から突出形成された係止用金具と係止し得る車両用係止装置において、
車両側における前記蓋部材の係止用金具と対応した位置に固定された係止装置本体と、
該係止装置本体内に配設されるとともに、前記係止用金具を案内する案内路を有し、当該係止装置本体内で案内路の延設方向に摺動自在とされた摺動部材と、
該摺動部材に形成されるとともに、前記案内路にて案内された係止用金具と係止し得る係止手段と、
を具備したことを特徴とする車両用係止装置。
【請求項2】
前記摺動部材における案内路及び係止手段は、前記係止用金具の幅寸法より大きく形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用係止装置。
【請求項3】
前記案内路は、前記係止用金具が係止手段と係止された状態における当該係止用金具の突端位置よりも更に延設されて案内可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用係止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−18817(P2008−18817A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191694(P2006−191694)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
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