説明

車両用充電予約システム

【課題】走行用モータの電源となるバッテリを充電するに際し、ユーザの車両外部からの充電予約を可能とし、充電異常発生があった場合の情報センタに対する通信の集中に伴う不具合を未然に防止する。
【解決手段】車両2に、情報センタ3と通信を行うDCM12を設ける。ユーザの所持する通信端末装置4を、ネットワーク14を介して前記情報センタ3と接続する。情報センタ3は、通信端末装置4から充電予約指定のデータを受信すると、充電予約データを該当する車両2(DCM12)に向けて送信し、充電管理ECU6は、受信した充電予約データに基づいてタイマを設定してバッテリ5の充電を実行する。充電管理ECU6は、充電時の異常発生を検出した場合に、車両2毎にランダムに設定される遅延時間T1を経過した後に、DCM12を介して充電異常発生データを情報センタ3に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用モータの電源となるバッテリに対する充電実行時刻の予約指定をユーザが行うことが可能な車両用充電予約システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギー問題の対策として、バッテリ(二次電池)を電源として駆動する走行用モータを備えた電気自動車や、いわゆるプラグインタイプのハイブリッド車(電動車両と総称する)の普及が進んできている。これら電動車両は、充電設備を備えた充電ステーションや駐車場等でバッテリの充電を行うことは勿論、家庭用電源を用いて自宅でバッテリの充電を行うことが可能とされている。
【0003】
そして、家庭用電源を用いて自宅でバッテリの充電を行う場合、電力料金の安い深夜電力を用いて充電ができるように、ユーザによる充電予約を可能としたものも考えられている(例えば特許文献1参照)。また、この特許文献1においては、タイマの設定が開始された時点から、充放電装置の異常を監視し、例えば停電等の異常を検出した場合には、充電予約を解除するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−60728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の電動車両においては、バッテリに対する充電の予約指定は、ユーザが車両内の入力部を操作することにより行う必要があった。しかし、ユーザの所持する、例えば携帯電話機やパソコン、スマートフォン等の通信端末装置を用いて、車両の外部(遠隔)からバッテリの充電予約ができるようなシステムを構築すれば、ユーザにとっての利便性をより高めることができる。
【0006】
そこで、本発明者は、車両に、情報センタとの間の無線通信を行う通信装置を設け、
ユーザの所持する携帯電話機やパソコン等の通信端末装置を、インターネット等を介して情報センタと接続可能とした車両用充電予約システムを考えた。このシステムによれば、ユーザが、通信端末装置を操作してバッテリの充電実行時刻の予約指定操作を行い、その予約指定のデータを情報センタに送信すると、情報センタが、充電予約データを該当する車両の充電制御装置に送信する。そして、車両側では、ユーザが予め充電準備(充電用ケーブルの接続)をしておくと、充電制御装置が、その充電予約データに基づいてタイマ設定を行って予約指定された時刻に充電を開始させることができる。
【0007】
ところで、このようなシステムにあっては、車両が駐車されている(充電を行う)のが屋外である事情もあり、例えば充電実行中或いは充電予約中(タイマのカウント中)に、風雨や第三者の不用意な接触に起因した充電用ケーブルの外れや、停電等の異常が発生することが考えられる。そのような異常発生時には、車両(充電制御装置)側から、情報センタに異常発生の旨のデータを送信し、情報センタから、ユーザの所持する通信端末装置に対して、充電異常が発生した旨を例えば電子メール等で通知する構成とすることが望ましい。ところが、例えば停電は、一定の地域において発生するものであるため、その地域内で充電していた全て(複数)の車両から、一斉に情報センタに通信(アクセス)がなされる虞があり、ひいては通信異常等のトラブルを招いてしまうことが予想される。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車両の走行用モータの電源となるバッテリを充電するに際し、ユーザの車両外部からの充電予約を可能とするものであって、充電異常発生があった場合の、情報センタに対する通信の集中に伴う不具合を未然に防止することができる車両用充電予約システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の車両用充電予約システムは、充電制御装置及び通信装置を備える車両と、情報センタと、前記車両のユーザの所持する通信端末装置とを備え、前記情報センタは、前記通信端末装置からの予約指定のデータを受信することに基づいて、前記通信装置を介して充電予約データを前記車両の充電制御装置に送信し、前記充電制御装置は、前記充電予約データを受信すると、タイマ設定を行って予約指定された時刻に前記バッテリに対する充電を実行するように構成された車両用充電予約システムであって、前記車両は、前記バッテリに対する充電系の異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段による異常検出時に前記通信装置により前記情報センタに対して充電異常発生データを送信する異常報告手段とを備え、前記情報センタは、前記充電異常発生データを受信した場合に、該当車両のユーザの通信端末装置に対して充電異常が発生した旨を通知する通知手段を備えると共に、前記異常報告手段は、車両毎に設定される遅延時間を経過した後に、前記情報センタに対して充電異常発生データを送信するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0010】
上記構成によれば、ユーザが通信端末装置にてバッテリの充電実行時刻の予約指定操作を行うことにより、ネットワークを介して情報センタに予約指定のデータが送信され、更に情報センタから、車両の通信装置を介して充電制御装置に充電予約データが送信される。従って、ユーザが、車両の外部(遠隔)から通信端末装置を操作してバッテリの充電予約を行うことが可能となる。
【0011】
そして、バッテリの充電実行中或いは充電予約中に、充電系に異常が発生したことが異常検出手段により検出されると、異常報告手段により、通信装置を介して情報センタに対して充電異常発生データが送信される。前記情報センタは、前記充電異常発生データを受信した場合に、通知手段により該当車両のユーザの通信端末装置に対して充電異常が発生した旨を通知する。
【0012】
このとき、例えば停電のような異常は、一定の地域において発生するので、その地域内で充電(充電予約)していた車両が複数台ある場合には、それら複数台の各車両の異常報告手段により情報センタに異常発生の通知がなされるようになる。ところが、異常報告手段は、車両毎に設定される遅延時間を経過した後に、情報センタに対して充電異常発生データを送信するので、情報センタに対する送信が集中することを回避することができ、ひいては通信異常等のトラブルを招くことが未然に防止される。
【0013】
尚、上記通信端末装置としては、ユーザの所持する、例えば携帯電話機やパソコン、スマートフォン等を採用することができる。この通信端末装置と情報センタとの接続は、インターネット等を介して行うことができる。また、車両に設けられる通信装置としては、テレマティクスを用いた通信を行うDCM(Data Communication Module)と称される車載型の高速通信モジュール等を採用することができる。前記通知手段によるユーザの通信端末装置に対する通知は、電子メール等を用いることができる。
【0014】
本発明においては、上記異常報告手段に、前記情報センタに対する充電異常発生データの送信時において通信が不調であった場合に、所定の待ち時間経過後に再度充電異常発生データの送信を繰返す再送手段を設けると共に、前記所定の待ち時間についても、車両毎に設定されるように構成することができる(請求項2の発明)。
【0015】
これによれば、異常報告手段による1回の充電異常発生データの通信が不調であった場合でも、再送手段によって、所定の待ち時間経過後に再度充電異常発生データの送信を行うことが繰返されるので、充電異常発生データを情報センタに確実に送信することができる。この場合も、所定の待ち時間が車両毎に設定されるので、再度のデータ送信時における情報センタに対する通信の集中を回避することができる。
【0016】
また、本発明においては、上記した遅延時間を、当該車両のバッテリの現時点での充電量(残存容量)に基づいて決定するように構成したり(請求項3の発明)、又は、車両毎に付される固有番号に基づいて決定するように構成したり(請求項4の発明)することができる。これらによれば、いずれも、各車両毎に遅延時間を設定するにあたってのランダム性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、車両用充電予約システムの構成を概略的に示すブロック図
【図2】システムにおける充電予約の処理手順を示すフローチャート
【図3】システムにおける充電時の処理手順を示すフローチャート
【図4】図3のステップS17の詳細な処理手順を示すフローチャート
【図5】充電異常発生時の通信の遅延時間を説明するためのタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る車両用充電予約システム1の全体構成を概略的に示している。この車両用充電予約システム1は、例えば電気自動車やいわゆるプラグインハイブリッド車等の、動力源に電動モータを少なくとも備える電動車両2(以下、単に「車両2」という)と、情報センタ3と、例えば前記車両2のユーザが所持する通信端末装置4とを含んでいる。
【0019】
詳しい図示や説明は省略するが、前記車両2は、周知のように、車輪を回転駆動する走行用モータを備えると共に、その走行用モータの電源となるバッテリ5を備えている。このバッテリ5としては、例えばリチウムイオン二次電池が採用される。尚、本発明における「バッテリ」とは、繰り返しの充放電が可能なキャパシタも含む概念である。
【0020】
この車両2には、充電制御装置としての充電管理ECU6が設けられている。後述するように、この充電管理ECU6は、前記バッテリ5の充電を制御するように構成されていると共に、充電実行中(或いは充電予約中)の充電系の異常、例えば後述の充電ケーブルの外れ(接続異常)や商用電源の停電による電源遮断等を検出するようになっており、異常検出手段としての機能も備えている。また、充電管理ECU6は、バッテリ5の出力電圧や出力電流などを監視して残存容量(SOC)を常時検出し、例えばメータ部の所定欄に表示するように構成されている。
【0021】
このとき、車両2の例えばボディの側壁等には、充電コネクタを有する充電口7が設けられている。この充電口7(充電コネクタ)には、充電用ケーブル8を介して外部電源である充電設備9が着脱自在に接続される。前記充電設備9としては、例えば家庭用電源コンセントや、充電ステーションや駐車場等に設けられた外部充電設備等があり、車両2のユーザは、自宅でバッテリ5の充電を行ったり、公共の外部充電設備でバッテリ5の充電を行ったりすることができる。
【0022】
車両2には、車内LAN10が設けられている。この車内LAN10には、例えばCAN(Controller Area Network)と称されるバス型の通信ネットワークシステムが採用されており、図示はしないが、エンジンECU、トランスミッションECU、ブレーキECU、ナビECU等の複数の制御ユニットが相互に接続さている。そして、この車内LAN10(CANバス)には、前記充電管理ECU6が接続されていると共に、HMI(Human Machine Interface)と称される操作入力装置11が接続されている。
【0023】
具体的には、前記操作入力装置11としては、例えば、ディスプレイ、タッチパネル、各種メカスイッチを組込んで構成されセンターコンソール部分に設けられるナビゲーション装置用の表示ユニットが用いられる。或いは、操作入力装置11として、メータ部やステアリングホイールに設けられる操作装置、運転席側部に設けられる操作デバイス等を採用しても良い。ユーザは、操作入力装置11を操作することにより、ナビゲーション等に関する各種の指示入力を行うことができると共に、バッテリ5の充電に関する指示入力を行うことができる。
【0024】
この場合、ユーザは、操作入力装置11を操作して、前記バッテリ5に対するリアルタイムでの充電実行(開始)や停止(終了)を指示することができる。操作入力装置11は、ユーザによる充電開始や終了の指示入力を受付けると、車内LAN10を介して、充電開始や充電終了の信号を充電管理ECU6に送信する。充電管理ECU6は、それら充電開始や終了の信号を受信すると、バッテリ5に対する充電を開始(終了)する。
【0025】
また、本実施例では、ユーザが操作入力装置11を操作することにより、バッテリ5の充電実行時刻の予約指定(充電予約)を行うことができるようになっている。この充電実行時刻の予約指定の操作は、例えば車内の時計機能によって表示されている現在時刻に対し、充電開始時刻を指定することにより行う。又は、何時間何分後に充電を開始するといった経過時間を指定するように構成したり、充電の終了時刻を指定するように構成したりできることは勿論である。
【0026】
操作入力装置11は、ユーザによる予約指定操作を受付けると、充電予約データを、車内LAN10を介して充電管理ECU6に送信する。この充電予約データは、現在時刻から何分後に充電を開始せよという指示を行うデータとなる。充電管理ECU6は、充電予約データを受信すると、データ中に指定された充電開始までの時間(何分後)にタイマを設定し、タイマカウントを開始する。そして、当該時間のカウントが完了すると、バッテリ5に対する充電を開始する。
【0027】
さて、図1に示すように、車両2には、外部とテレマティクスを利用した無線通信を行うための通信装置としてのDCM(Data Communication Module)12が、前記車内LAN10に接続されて設けられている。この場合、DCM12は、例えば携帯電話キャリア(通信網)13を介して情報センタ3との間で通信(テレマティクス通信)を行い、車両2は、テレマティクスサービスで提供される各種の情報及びサービスを受けることができるようになっている。このとき、後述するように、情報センタ3から送信される充電予約データを、DCM12により受信するように構成されている。
【0028】
前記通信端末装置4は、ユーザの所持する、例えば携帯電話機やパソコン、スマートフォン等からなり、インターネット等のネットワーク14を介して前記情報センタ3と接続されている。車両2のユーザは、この通信端末装置4を操作することにより、車両2の外部(遠隔)から、バッテリ5の充電実行時刻の予約指定を行い、ネットワーク14を介してその予約指定のデータを前記情報センタ3に送信することができる。このとき、充電予約を行うに際し、ユーザは、通信端末装置4の操作部を操作して、例えば充電実行(開始)時刻(何月何日の何時何分)を入力する。
【0029】
後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、前記情報センタ3は、通信端末装置4から予約指定のデータを受信すると、充電予約データ(現在から何分後に充電を開始する)を、携帯電話キャリア13を介して該当する車両2(DCM12)に向けて送信する。DCM12が受信した充電予約データは、車内LAN10を介して充電管理ECU6に送信される。充電管理ECU6は、上記と同様に、その充電予約データを受信すると、充電予約データに基づいてタイマを設定してタイマカウントを開始し、当該設定時間のカウントが完了すると、バッテリ5に対する充電を開始する。
【0030】
そして、充電管理ECU6は、上記のように、充電実行中(及び充電予約中)における電源遮断等の主として電源の異常の有無を監視し、異常発生を検出した場合には、DCM12を介して充電異常発生データを情報センタ3に送信する。従って、充電管理ECU6やDCM12等から異常報告手段が構成される。情報センタ3は、車両2(DCM12)から充電異常発生データを受信すると、該当する車両2のユーザが所持する通信端末装置4に対し、充電異常が発生した旨を、ユーザが予め指定した方法、例えば電子メールにて通知する。従って、情報センタ3は、通知手段の機能を含んで構成されている。
【0031】
このとき、充電管理ECU6(DCM12)は、情報センタ3に対し充電異常発生データを送信する際に、車両2毎にランダムに設定される遅延時間T1を経過した後に、送信を行うようになっている。本実施例では、この遅延時間T1は、バッテリ5の現時点での充電量(残存容量SOC)に基づいて決定されるようになっている。より具体的には、図5にも示すように、初回の遅延時間T1は、異常検出時点でのその車両2のバッテリ5の充電量に、初回用デフォルト値(例えば60秒)を乗算した値に設定される。
【0032】
さらに、本実施例では、充電管理ECU6(及びDCM12等)は、充電異常発生データを情報センタ3に送信する際に、通信が不調であった(送信できなかった)場合には、所定の待ち時間T2の経過後に再度充電異常発生データの送信を繰返す(リトライする)ようになっており、再送手段としての機能も備えている。このとき、上記所定の待ち時間についても、バッテリ5の現時点での充電量(残存容量SOC)に基づいて、車両2毎に異なる(ランダムな)値が設定されるようになっている。より具体的には、再送時の遅延時間T2は、異常検出時点でのその車両2のバッテリ5の充電量に、再送用デフォルト値(例えば300秒)を乗算した値に設定される。
【0033】
次に、上記のように構成された車両用充電予約システム1の作用について、図2ないし図5も参照して述べる。図2フローチャートは、本実施例の車両用充電システム1における、外部からのバッテリ5の充電予約に関連する処理の手順を示している。図3のフローチャートは、車両用充電システム1における、予約されたバッテリ5の充電制御の処理手順を示している。また、図4のフローチャートは、図3のステップS17における、DCM12から情報センタ3に対する充電異常発生データの送信(通知)の詳細な処理手順を示している。以下、これらフローチャートについて、順に述べる。
【0034】
まず、図2のフローチャートにおいて、ユーザが外部から車両2のバッテリ5の充電予約を行うにあたっては、ステップS1にて、ユーザは、通信端末装置4を操作して、充電を実行(開始)させたい時刻、例えば何月何日の何時(或いは現在時刻から何時間何分後)を入力する。次のステップS2では、通信端末装置4から情報センタ3に、その予約指定のデータ(何月何日の何時)が送信される。そして、ステップS3にて、情報センタ3から、充電予約データ、つまり現在から何分後に充電を開始するかを指示するデータが、該当する車両2(DCM12)に向けて送信される。
【0035】
すると、ステップS4では、車両2においてDCM12が受信した充電予約データ(何分後に充電予約)が、車内LAN10を介して充電管理ECU6に送信され、充電管理ECU6は、その充電予約データに基づいてタイマを設定してタイマカウントを開始する。これにて、外部からの充電予約が完了する。この場合、ユーザが、例えば深夜帯の充電予約を行うことにより、充電時に立ち会わなくても、安価な深夜電力を利用してバッテリ2の充電を行うことが可能となる。尚、予約を行った場合には、ユーザが、充電ケーブル8の接続など、充電に必要な準備作業を予め行っておくことは勿論である。
【0036】
次に、図3のフローチャートにおいて、ステップS11にて、充電管理ECU6は予約時間になったかどうかを常に判断し、設定されたタイマ時間のタイマウントが終了すると(ステップS11にてYes)、ステップS12にて充電を開始する。これにて、ユーザが通信端末装置4を操作して予約した時刻に、充電動作が開始される。そして、ステップS13にて、充電管理ECU6は、充電実行中における電源が正常かどうか(異常の有無)を常に監視している。充電異常がない場合には(ステップS13にてYes)、次のステップS14にて、バッテリ5が満充電になったかどうかが判断される。異常が発生することなく満充電になった場合には(ステップS14にてYes)、充電が終了される。
【0037】
これに対し、充電実行中に、例えば風雨や第三者の不用意な接触に起因した充電用ケーブル8の外れや、停電の発生等により、電源遮断の異常が検出される場合がある(ステップS13にてNo)。この場合には、まずステップS15にて、充電管理ECU6は、充電動作を停止する。次のステップS16にて、充電管理ECU6は、充電異常発生データをDCM12に送信し、ステップS17にて、DCM12から情報センタ3に対し、充電異常発生データが送信される。このステップS17における充電異常発生データの送信処理の詳細については、図4及び図5の説明にて述べる。
【0038】
DCM12から情報センタ3に対する充電異常発生データの送信が完了すると、次のステップS18では、情報センタ3から、該当する車両2のユーザの所持する通信端末装置4に対して、充電異常が発生した(充電動作を停止した)旨が、例えば電子メール等で通知され、処理が終了する。この通知により、ユーザは、速やかに(例えば夜間の就寝時であれば翌朝に)電源遮断等の異常が発生したことを知ることができ、必要な対処を行うことができる。
【0039】
さて、上記ステップS17における、DCM12から情報センタ3に対する充電異常発生データの送信の処理について、図4及び図5を参照して詳述する。即ち、図4に示すように、まずステップS21にて、DCM12からの情報センタ3に対する通信接続を、即座に行うのではなく、遅延時間T1だけ遅延させる。図5に示すように、このときの遅延時間T1は、異常検出時点でのその車両2のバッテリ5の充電量(残存容量SOC)に、初回用デフォルト値(例えば60秒)を乗算した値に設定される。一例をあげると、充電量が25%の場合には、T1=0.25×60秒で、遅延時間T1は15秒となる。
【0040】
遅延時間T1経過後、ステップS22にて、情報センタ3との通信接続が行われ、充電異常発生データが送信される。次のステップS23では、情報センタ3との通信が正しく行われたか(情報センタ3からの応答があったか)どうかが判断され、通信が正しく行われた場合には(ステップS23にてYes)、処理が終了する。これに対し、例えば複数の車両2のDCM12から情報センタ3に対して同時にアクセスがあった場合など、通信接続が不調に終るケースも考えられる。
【0041】
そこで、DCM12から充電異常発生データを情報センタ3に送信する際に、通信が不調であった場合には(ステップS23にてNo)、再度充電異常発生データの送信を実行(リトライ)することが行われるのであるが、その際、ステップS24にて、所定の待ち時間T2の経過を待ち、その後リトライを行う(ステップS22)ことを繰返すようになっている。図5に示すように、このときの待ち時間T2は、上記したバッテリ5の充電量(残存容量SOC)に、再送用デフォルト値(例えば300秒)を乗算した値に設定される。例えば充電量が25%の例では、T2=0.25×300秒で、待ち時間T2は75秒となる。
【0042】
ここで、上記した充電異常が停電によるものであった場合には、一定の地域において発生するものであるため、その地域内で充電していた全て(複数)の車両2のDCM12から、一斉に情報センタ3に充電異常発生データが送信されることがあると、通信が集中し、ひいては通信異常等のトラブルを招いてしまうことが予想される。しかし、本実施例では、車両2毎にランダムに設定される遅延時間T1を経過した後に、情報センタ3に対して充電異常発生データを送信するので、情報センタ3に対する送信が集中することを回避することができる。再送(リトライ)時においても、所定の待ち時間T2が車両2毎にランダムに設定されるので、再送時における情報センタ3に対する通信の集中も回避することができる。
【0043】
このように本実施例の車両用充電予約システム1によれば、ユーザが、携帯電話機、パソコン、スマートフォン等の通信端末装置4を操作して、外部からバッテリ5の充電実行時刻の予約指定を行うことができる。このとき、車両2において、情報センタ3と通信が可能なDCM12を、車内LAN10に接続した状態で追加したことにより、簡易な構成で車両用充電予約システム1を実現することができる。
【0044】
そして、本実施例では、充電管理ECU6が、バッテリ5の充電実行中(或いは充電予約中)に、充電系に異常が発生したことを検出した場合には、DCM12から情報センタ3に対して充電異常発生データを送信し、情報センタ3は、該当車両2のユーザの通信端末装置4に対して充電異常が発生した旨を通知する構成とした。これにより、ユーザに対して、電源遮断等の異常が発生したことを速やかに知らせることができる。
【0045】
このとき、例えば停電のような異常は、一定の地域において発生するので、その地域内で充電(充電予約)していた車両2が複数台ある場合には、それら複数台の各車両2のDCM12からの情報センタ3に対する通信(アクセス)が集中する虞がある。ところが、車両2毎に設定される遅延時間T1を経過した後に、情報センタ3に対する通信が行われるので、情報センタ3に対する通信が集中することを回避することができ、この結果、通信異常等の不具合を未然に防止することができる。
【0046】
また、特に本実施例では、DCM12から情報センタ3への1回の充電異常発生データの通信が不調であった場合でも、所定の待ち時間T2経過後にリトライが行われるので、充電異常発生データを情報センタ3に確実に送信することができる。この場合も、待ち時間T2が車両2毎に設定されるので、再度のデータ送信時における情報センタ3に対する通信の集中を回避することができる。本実施例では、上記遅延時間T1及び待ち時間T2を、当該車両2のバッテリ5の現時点での充電量に基づいて決定するように構成したので、各車両2毎に遅延時間を設定するにあたってのランダム性を確保することができるといった利点も得ることができる。
【0047】
尚、上記実施例では、遅延時間T1及び待ち時間T2を該当車両2のバッテリ5の充電量に基づいて決定するようにしたが、車両2毎に付される固有番号(製造番号やID)に基づいて決定するように構成することもできる。より具体的には、例えば、デフォルト値に車両のIDの下一桁の数値を加算や減算して遅延時間としたり、IDの下二桁の数値をそのまま遅延時間(秒数)としたり、上記バッテリ5の充電量に基づいて算出された値にIDの下一桁の数値を加算した遅延時間としたりする等、様々な手法で決定することが可能である。また、DCM12が測位手段を備える場合には、当該測位手段により取得した位置情報に基づいて、例えば、緯度情報、経度情報を加算や減算して、遅延時間T1、待ち時間T2を決定しても良い。これによっても、上記実施例と同様に、各車両2毎に遅延時間や待ち時間を設定するにあたってのランダム性を確保することができる。
【0048】
また、遅延時間T1と待ち時間T2とを別の手法で決定したり、遅延時間T1に対して所定値を加算或いは乗算した数値を待ち時間T2にしたりすることも可能である。さらには、リトライを2回、3回と繰返す場合には、待ち時間についても変化させていくようにしても良い。その他、本発明は、車両として、例えば屋根部分等に太陽電池を備えその太陽電池の発電電力をバッテリの充電の一部に利用する構成のものにも適用することができ、また、上記した遅延時間T1や待ち時間T2等の具体的な数値についても、あくまでも一例を示したに過ぎない等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0049】
図面中、1は車両用充電予約システム、2は車両、3は情報センタ(通知手段)、4は通信端末装置、5はバッテリ、6は充電管理ECU(充電制御装置、異常検出手段、異常報告手段、再送手段)、10は車内LAN、11は操作入力装置、12はDCM(通信装置)、14はネットワークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータの電源となるバッテリに対し、外部電源による充電を実行する充電制御装置と、外部と無線通信を行う通信装置とを備える車両と、
前記車両と前記通信装置を介して通信可能な情報センタと、
前記情報センタとネットワークを介して接続され、前記車両のユーザによる前記バッテリの充電実行時刻の予約指定操作に基づいてその予約指定のデータを該情報センタに送信可能な通信端末装置とを備え、
前記情報センタは、前記通信端末装置からの予約指定のデータを受信することに基づいて、前記通信装置を介して充電予約データを前記車両の充電制御装置に送信し、
前記充電制御装置は、前記充電予約データを受信すると、タイマ設定を行って予約指定された時刻に前記バッテリに対する充電を実行するように構成された車両用充電予約システムであって、
前記車両は、前記バッテリに対する充電系の異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段による異常検出時に前記通信装置により前記情報センタに対して充電異常発生データを送信する異常報告手段とを備え、
前記情報センタは、前記充電異常発生データを受信した場合に、該当車両のユーザの前記通信端末装置に対して充電異常が発生した旨を通知する通知手段を備えると共に、
前記異常報告手段は、車両毎に設定される遅延時間を経過した後に、前記情報センタに対して充電異常発生データを送信することを特徴とする車両用充電予約システム。
【請求項2】
前記異常報告手段は、前記情報センタに対する充電異常発生データの送信時において、通信が不調であった場合に、所定の待ち時間経過後に再度充電異常発生データの送信を繰返す再送手段を含んでおり、
前記所定の待ち時間についても、車両毎に設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用充電予約システム。
【請求項3】
前記遅延時間は、前記バッテリの現時点での充電量に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用充電予約システム。
【請求項4】
前記遅延時間は、前記車両毎に付される固有番号に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用充電予約システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147549(P2012−147549A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2979(P2011−2979)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】