説明

車両用内装装置

【課題】 樹脂製軸の爪部と回動部材との係合が外れてしまうことを抑制できる車両用内装装置の提供。
【解決手段】樹脂製軸40は、軸本体部41から軸本体部41の半径方向外側に延びて設けられるフランジ部44を備えている。固定部材20は、軸受孔22から軸受孔22の半径方向外側に延び樹脂製軸40の軸本体部41を軸受孔22に挿入するときに樹脂製軸40のフランジ部44が挿通する切欠き孔23と、軸受孔22および切欠き孔23の周囲に設けられ樹脂製軸40の軸本体部41を軸受孔22に挿入し回動させたときに樹脂製軸40のフランジ部44と対向し合う引っ掛かり部24と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製軸を有する車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、軸受孔2aを備える固定部材2と、固定部材2に対して開位置と閉位置とに回動可能な回動部材3と、回動部材3の回動軸部を構成する樹脂製軸4と、を有する車両用内装装置1を示している。
樹脂製軸4は、固定部材2の軸受孔2aに挿入され固定部材2に回動可能に支持される軸本体部4aと、回動部材3に係合する爪部4bと、を備えている。樹脂製軸4の爪部4bは、固定部材2の軸受孔2aを通過するため比較的小さくされている。
【0003】
しかし、従来の、樹脂製軸を有する車両用内装装置には、次の問題点がある。
樹脂製軸4の爪部4bが比較的小さくされているため、爪部4bの回動部材3への係合力が比較的弱い。また、樹脂製軸4と固定部材2とに、樹脂製軸4の軸本体部4aが固定部材2の軸受孔2aから抜ける方向に移動することを抑制する対策が何ら施されていない。そのため、開位置にある回動部材3に開側に力がかかり回動部材3が固定部材2に対して過開きしてしまうとき等に、樹脂製軸4がねじれ、樹脂製軸4の軸本体部4aが固定部材2の軸受孔2aから抜ける方向に動き、爪部4bと回動部材3との係合が外れてしまうおそれがある。
【特許文献1】発明協会公開技報公技番号2006−503932号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、樹脂製軸の爪部と回動部材との係合が外れてしまうことを抑制できる車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) (a)軸受孔を備える固定部材と、
(b)爪係合部を備え前記固定部材に対して開位置と閉位置とに回動可能な回動部材と、
(c)前記固定部材の軸受孔に挿入され前記固定部材に回動可能に支持される軸本体部と、前記回動部材の爪係合部に係合する爪部と、を備え、前記回動部材の回動軸部を構成する樹脂製軸と、
を有し、
前記樹脂製軸は、前記軸本体部から該軸本体部の半径方向外側に延びて設けられるフランジ部を備えており、
前記固定部材は、前記軸受孔から該軸受孔の半径方向外側に延び前記樹脂製軸の軸本体部を前記軸受孔に挿入するときに前記樹脂製軸のフランジ部が挿通する切欠き孔と、前記軸受孔および前記切欠き孔の周囲に設けられ前記樹脂製軸の軸本体部を前記軸受孔に挿入し回動させたときに前記樹脂製軸のフランジ部と対向し合う引っ掛かり部と、を備えている、車両用内装装置。
(2) 前記回動部材が開位置または閉位置にあるとき、前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っており、前記回動部材が開位置と閉位置との間の半開位置にあるとき、前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っておらず前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の切欠き孔とが対向し合っている、(1)記載の車両用内装装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用内装装置によれば、樹脂製軸がフランジ部を備えており、固定部材が、樹脂製軸の軸本体部を軸受孔に挿入するときに樹脂製軸のフランジ部が挿通する切欠き孔と、軸受孔および切欠き孔の周囲に設けられ樹脂製軸の軸本体部を軸受孔に挿入し回動させたときに樹脂製軸のフランジ部と対向し合う引っ掛かり部と、を備えている。そのため、樹脂製軸の軸本体部が固定部材の軸受穴から抜ける方向に移動しようとしても、フランジ部が引っ掛かり部に当接するまで(引っ掛かるまで)しか移動することができない。そのため、樹脂製軸がフランジ部を備えておらず固定部材が切欠き孔と引っ掛かり部とを備えていない場合(従来)に比べて、樹脂製軸の軸本体部が固定部材から抜ける方向に移動できる量を小にすることができ、樹脂製軸の爪部と回動部材の爪係合部との係合が外れてしまうことを抑制できる。
上記(2)の車両用内装装置によれば、回動部材が開位置または閉位置にあるとき、樹脂製軸のフランジ部と固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っており、回動部材が開位置と閉位置との間の半開位置にあるとき、樹脂製軸のフランジ部と固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っておらず樹脂製軸のフランジ部と固定部材の切欠き孔とが対向し合っている。そのため、開位置にある回動部材に開側に力がかかり回動部材が固定部材に対して過開きしてしまうとき、または、車両用内装装置を使用しておらず回動部材が閉位置にあるとき(回動部材の固定部材に対する状態として最も長時間継続すると考えられる状態にあるとき)、樹脂製軸の軸本体部が固定部材から抜ける方向に移動できる量を従来に比べて小にすることができ樹脂製軸の爪部と回動部材の爪係合部との係合が外れてしまうことを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明実施例の車両用内装装置を、図1〜図8を参照して、説明する。
本発明実施例の車両用内装装置10は、たとえば、自動車の車両前方側の天井に配置されサングラスなどの小物を収容するスペースを有する車両用オーバーヘッドコンソール装置である。ただし、車両用内装装置10は、後述する樹脂製軸によって回動部材の回動軸部が構成されていれば、車両用オーバーヘッドコンソール装置に限定されるものではなく、車両用カンバセーションミラー装置であってもよく、車両の内装部材であるインストルメントパネルまたはコンソールパネル等に配置される、車両用カップホルダ装置、車両用小物入れ装置等であってもよい。以下、本発明実施例では、車両用内装装置10が車両用オーバーヘッドコンソール装置である場合を説明する。
【0008】
車両用内装装置10は、図1に示すように、固定部材20と、回動部材30と、樹脂製軸40と、を有する。車両用内装装置10は、さらに、ダンパ50と、ロック装置60と、を有する。
【0009】
固定部材20は、樹脂製であり型成形品である。固定部材20は、車両の内装部材であるオーバーヘッドコンソールに一体に形成されるか、オーバーヘッドコンソールと別体に形成されてオーバーヘッドコンソールに固定して取付けられる。
固定部材20は、下方(鉛直方向下方)に開放する凹部21と、図2に示すように、軸受孔22と、切欠き孔23と、引っ掛かり部24と、を備える。
【0010】
軸受孔22は、凹部21を形成する側壁のうちの、装置10の幅方向(車両左右方向)両側壁21aに設けられている。軸受孔22は、側壁21aを貫通して形成されている。軸受孔22の形状は、周方向の一部が切り欠かれた円形(略円形を含む)である。
【0011】
切欠き孔23は、軸受孔22に連なり軸受孔22から軸受孔22の半径方向外側に延びて形成されている。切欠き孔23には、樹脂製軸40の後述の軸本体部41を軸受孔22に挿入するときに樹脂製軸40の後述のフランジ部44が挿通する。そのため、切欠き孔23は、樹脂製軸40のフランジ部44が挿通できるように、フランジ部44の数と同数設けられている。
【0012】
引っ掛かり部24は、固定部材20の側壁21aの、軸受孔22および切欠き孔23の周囲部分からなる。引っ掛かり部24は、樹脂製軸40の軸本体部41を軸受孔22に挿入し回動させたときに、樹脂製軸40のフランジ部44と対向し合う。
【0013】
回動部材30は、樹脂製であり型成形品である。回動部材30は、固定部材20に対して開位置と閉位置とに回動可能とされている。なお、開位置は、回動部材30が固定部材20に対して下方に回動し回動部材30の大部分が凹部21から下方に出ている位置であり、閉位置は、回動部材30が固定部材20に対して下方に回動しておらず回動部材30の全体または略全体が凹部21内に入り込んでいる位置である。
回動部材30は、図3に示すように、樹脂製軸40の爪部42が係合する爪係合部31を備えている。爪係合部31は、回動部材30に一体に形成されている。
【0014】
樹脂製軸40は、樹脂製であり型成形品である。樹脂製軸40は、回動部材30と別体に作製されて回動部材30に組付けられ、回動部材30の回動軸部を構成する。樹脂製軸40は、回動部材30の左右一側の回動軸部のみを構成している。ただし、樹脂製軸40は、回動部材30の左右両側の回動軸部を構成していてもよい。
【0015】
樹脂製軸40は、固定部材20の軸受孔22に固定部材20の外側から挿入され固定部材20に回動可能に支持される軸本体部41と、回動部材30の爪係合部31に係合する爪部42と、ダンパ50のダンパギア51に噛合するギア部43と、軸本体部41から軸本体部41の半径方向(軸直交方向)外側に延びて設けられるフランジ部44と、を備える。
【0016】
軸本体部41は、図4または図5に示すように、円筒形状または円柱形状である。軸本体部41の軸芯は、装置10の幅方向と平行であり、軸受孔22の軸芯と一致している。軸本体部41は、固定部材20に対して軸本体部41の軸芯まわりに回動可能とされている。
【0017】
爪部42は、軸本体部41と一体に成形されている。爪部42は、軸本体部41の軸受け穴22への挿入方向先端部から該挿入方向先方に延びて設けられている。爪部42の延び方向先端は自由端でありフック状とされている。爪部42は、軸本体部41からの延び方向と直交する方向に樹脂弾性を利用して弾性変形可能である。爪部42は、弾性変形して復元することにより、図3に示すように、回動部材30の爪係合部31に係合する。爪部42が爪係合部31に係合するため、樹脂製軸40は、回動部材30に対して相対回転不能であり、回動部材30が固定部材20に対して回動するとき回動部材30とともに(一体的に)固定部材20に対して回動する。
【0018】
ギア部43は、軸本体部41と一体に成形されている。ギア部43は、図4または図5に示すように、軸本体部41の軸受孔22への挿入方向根元部に設けられる扇状部分の円弧部分に設けられている。
【0019】
フランジ部44は、軸本体部41と一体に成形されている。フランジ部44は、軸本体部41の軸受孔22への挿入方向中間部から、軸本体部41の半径方向外側に延びて設けられている。フランジ部44は、1個のみ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。なお、本発明図示例では、フランジ部44が、軸本体部41から互いに反対方向に延びて、計2個設けられている場合を示している。
【0020】
軸本体部40は、回動部材30が開位置と閉位置との間の半開位置にある状態(図7に示す状態)で、フランジ部44を固定部材20の切欠き孔23に挿通させつつ軸本体部41を固定部材20の軸受孔22に挿入し、爪部42を回動部材30の爪係合部31に係合させることで、固定部材20と回動部材30に組付けられる。
【0021】
ダンパ50は、回動部材30が固定部材20に対して回動するときに、回動部材30に制動力を付与するために設けられる。ダンパ50は、図3に示すように、固定部材20の側壁21aの外表面に取付けられる。ダンパ50は、樹脂製軸40のギア部43と噛み合うダンパギア51を備えている。
【0022】
ロック装置60は、たとえば公知のハートカム機構を用いたロック装置である。ロック装置60は、回動部材30を固定部材20に対して閉位置にてロックするとともに(保持するとともに)、閉位置にある回動部材30を押し込んでロック解除する装置である。
【0023】
ここで、回動部材30の固定部材20に対する位置における、樹脂製部材40のフランジ部44と固定部材20の切欠き孔23および引っ掛かり部24との関係を説明する。
(i)図6、図8に示すように、回動部材30が固定部材20に対して開位置または閉位置にあるとき、樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の引っ掛かり部24とが対向し合っている。
(ii)図7に示すように、回動部材30が開位置と閉位置との間の位置の一部である半開位置(途中位置)にあるとき、樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の引っ掛かり部24とが対向し合っておらず、樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の切欠き孔23とが対向し合っている。
【0024】
次に、本発明実施例の作用、効果を説明する。
本発明実施例では、樹脂製軸40がフランジ部44を備えており、固定部材20が、樹脂製軸40の軸本体部41を軸受孔22に挿入するときに樹脂製軸40のフランジ部44が挿通する切欠き孔23と、軸受孔22および切欠き孔23の周囲に設けられ樹脂製軸40の軸本体部41を軸受孔22に挿入し回動させたときに樹脂製軸40のフランジ部44と対向し合う引っ掛かり部44と、を備えているため、つぎの作用、効果を得ることができる。
樹脂製軸40の軸本体部41が固定部材20の軸受穴22から抜ける方向に移動しようとしても、軸本体部41は、フランジ部44が引っ掛かり部24に当接するまで(引っ掛かるまで)しか移動することができない。そのため、樹脂製軸40がフランジ部44を備えておらず固定部材20が切欠き孔23と引っ掛かり部24とを備えていない場合(従来)に比べて、樹脂製軸40の軸本体部41が固定部材20から抜ける方向に移動できる量を小にすることができ、樹脂製軸40の爪部42と回動部材30の爪係合部31との係合が外れてしまうことを抑制できる。
【0025】
回動部材30が開位置または閉位置にあるとき、樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の引っ掛かり部24とが対向し合っている。また、回動部材30が開位置と閉位置との間の半開位置にあるとき、樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の引っ掛かり部24とが対向し合っておらず樹脂製軸40のフランジ部44と固定部材20の切欠き孔23とが対向し合っている。そのため、つぎの作用、効果を得ることができる。
開位置にある回動部材30に開側に力がかかり回動部材30が固定部材20に対して過開きしてしまうとき、または、車両用内装装置10を使用しておらず回動部材30が閉位置にあるとき(回動部材30の固定部材20に対する状態として最も長時間継続すると考えられる状態にあるとき)、樹脂製軸40の軸本体部41が固定部材20から抜ける方向に移動できる量を従来に比べて小にすることができ、樹脂製軸40の爪部42と回動部材30の爪係合部31との係合が外れてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例の車両用内装装置の分解斜視図である。
【図2】本発明実施例の車両用内装装置の、固定部材の部分側面図である。
【図3】本発明実施例の車両用内装装置の、樹脂製軸部位での部分断面図である。
【図4】本発明実施例の車両用内装装置の、樹脂製軸の斜視図である。
【図5】本発明実施例の車両用内装装置の、図4の場合とは異なる方向から見たときの樹脂製軸の斜視図である。
【図6】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材が開位置にあるときの、樹脂製軸のフランジ部と固定部材の切欠き孔および引っ掛かり部との位置関係を示す、部分側面図である。
【図7】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材が半開位置にあるときの、樹脂製軸のフランジ部と固定部材の切欠き孔および引っ掛かり部との位置関係を示す、部分側面図である。
【図8】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材が閉位置にあるときの、樹脂製軸のフランジ部と固定部材の切欠き孔および引っ掛かり部との位置関係を示す、部分側面図である。
【図9】従来の車両用内装装置の、断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 車両用内装装置
20 固定部材
21 凹部
21a 側壁
22 軸受孔
23 切欠き孔
24 引っ掛かり部
30 回動部材
31 爪係合部
40 樹脂製軸
41 軸本体部
42 爪部
43 ギア部
44 フランジ部
50 ダンパ
51 ダンパギア
60 ロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)軸受孔を備える固定部材と、
(b)爪係合部を備え前記固定部材に対して開位置と閉位置とに回動可能な回動部材と、
(c)前記固定部材の軸受孔に挿入され前記固定部材に回動可能に支持される軸本体部と、前記回動部材の爪係合部に係合する爪部と、を備え、前記回動部材の回動軸部を構成する樹脂製軸と、
を有し、
前記樹脂製軸は、前記軸本体部から該軸本体部の半径方向外側に延びて設けられるフランジ部を備えており、
前記固定部材は、前記軸受孔から該軸受孔の半径方向外側に延び前記樹脂製軸の軸本体部を前記軸受孔に挿入するときに前記樹脂製軸のフランジ部が挿通する切欠き孔と、前記軸受孔および前記切欠き孔の周囲に設けられ前記樹脂製軸の軸本体部を前記軸受孔に挿入し回動させたときに前記樹脂製軸のフランジ部と対向し合う引っ掛かり部と、を備えている、車両用内装装置。
【請求項2】
前記回動部材が開位置または閉位置にあるとき、前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っており、前記回動部材が開位置と閉位置との間の半開位置にあるとき、前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の引っ掛かり部とが対向し合っておらず前記樹脂製軸のフランジ部と前記固定部材の切欠き孔とが対向し合っている、請求項1記載の車両用内装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−111326(P2010−111326A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287004(P2008−287004)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】