説明

車両用冷却装置

【課題】車両前方側から冷却用熱交換器に導入する冷却風による冷媒の効率的な冷却を可能とする。
【解決手段】冷却装置10は、ラジエタ12の車両前方側に縮流ダクト30が設けられている。この縮流ダクトは、開口面積が車両前方の開口部32からラジエタ側の開口部へ向けて徐々に狭められている。また、縮流ダクトは、ラジエタ側の開口部によってラジエタ内の冷媒の流通方向と直交する方向の全域を覆っていると共に、ラジエタの表面で冷却風の流速にムラが生じるのを抑えるように整流フィン42が設けられている。これにより、ラジエタを通過する冷媒を均一に冷却することができるので、冷媒の冷却にムラが生じることによる冷却効率の低下を防止して、効率的な冷媒の冷却が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられて、車両前方から冷却用熱交換器に導入される空気を冷却風として、この冷却風によって冷却用熱交換器を通過する冷媒を冷却する車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジンラジエタやコンデンサなどの冷却用熱交換器が設けられている。例えば、内燃機関(エンジン)を備えた車両では、エンジンラジエタ(以下、ラジエタとする)が設けられ、車両前方側からラジエタへ導入される空気を冷却風として、この冷却風によってエンジンの冷却液(例えば、冷却水)を冷却する。
【0003】
このような冷却装置としては、ラジエタの車両前方側にダクト状のファンシュラウドを設けると共に、このファンシュラウド内に整流用のフィンを設けることにより、ラジエタの導風効率及び風量ムラを防止して冷却効率の向上を図る提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、冷却装置としては、エア吸引口、排出口にルーバ機構を設け、ラジエタ水温、作動油油温、ラジエタフィン間通過風量に対応するルーバ開口角度を設定し、ラジエタ水温、作動油油温、ラジエタフィン間通過風量に基づいてルーバ開度を制御する提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、冷却装置としては、ラジエタの車両前方側に配置したエアガイド内に、バンパアーマチュアの上方及び下方を通過した空気を、バンパアーマチュアの裏側に位置する熱交換器のチューブへ案内する車両用エアガイドを設ける提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
ところで、車両の前部には、ラジエタグリルが形成され、このラジエタグリルから冷却風を導入するようにしている。ここで、ラジエタグリルの開口の全域をダクトで覆うと、ラジエタへの冷却風の導入効率は向上するが、ラジエタの下流側となるエンジンコンパートメント内には、このラジエタを通過した空気のみが導入される。このために、エンジンコンパートメント内で温度上昇が生じ易くなる。
【0007】
また、車両の前部には、バンパが設けられており、このバンパを挟んで上下にラジエタグリルとラジエタグリルロアが設けられるのが一般的となっている。このときに、ラジエタグリル及びラジエタグリルロアのそれぞれにダクトの開口を設けても、ラジエタの表面では冷却風の風量にムラが生じ、これにより、ラジエタでの冷却液の冷却効率が生じてしまう。
【特許文献1】実開平5−17374号公報
【特許文献2】実公平7−48977号公報
【特許文献3】特開2007−216748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、車両前方側から冷却用熱交換器に導入する冷却風によって冷媒の効率的な冷却を可能とする車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、所定方向に沿って通過する冷媒を、車両前方から導入される冷却風によって冷却する冷却用熱交換器と、前記冷却用熱交換器側の第1の開口部が前記冷媒の流通方向と直交する方向の全域に対応され、車両前方側の第2の開口部から前記第1の開口部へ向けて開口断面積が狭められて形成され、前記第2の開口部から導入される前記冷却風を前記冷却用熱交換器へ案内する縮流ダクトと、を含む。
【0010】
この発明によれば、車両前方側の第2の開口部から冷却用熱交換器側の第1の開口部へ向けて開口断面積が徐々に狭められた縮流ダクトを設けている。また、この縮流ダクトは、冷却用熱交換器での冷媒の流通方向と直交する方向に沿った全域に対向されている。
【0011】
冷却用熱交換器では、冷媒の流速が高いことにより冷却能力が向上される。また、冷却風が冷媒の流通方向と直交する方向に沿った全域を通過することにより、冷媒をムラなく冷却することができる。したがって、冷却用熱交換器での冷媒の効率的な冷却が可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記第2の開口部の開口幅が、前記車両の前部に前記冷却風の導入用として形成されている前部開口部の開口幅よりも狭められている。
【0013】
この発明によれば、冷却風の一部が、縮流ダクトを経ずに導入されるので、エンジンコンパートメント内の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記縮流ダクト内に、それぞれが前記冷却用熱交換器の前記冷媒の流通方向に沿うように配置された整流フィンと、前記整流フィンを前記冷媒の流通方向と直交する方向へ揺動する揺動手段と、前記冷媒の温度に応じて作動されて、車両前方の空気を前記冷却用熱交換器へ案内可能とする冷却ファンと、前記冷却ファンの作動に応じて前記揺動手段を作動する揺動制御手段と、を含む。
【0015】
この発明によれば、例えば、冷却ファンが作動しているときには、縮流ダクト内での冷却風の抵抗が減少するように整流フィンを揺動し、冷却ファンが停止しているときには、第1の開口部を通過する冷却風の流速に生じるムラを抑えるように整流フィンを揺動する。
【0016】
これにより、車両の走行状態及び冷却ファンの作動状態に応じた効率的な冷媒の冷却が可能となる。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、前記縮流ダクト内に、それぞれが前記冷却用熱交換器の前記冷媒の流通方向に沿うように配置された整流フィンと、前記整流フィンを前記冷媒の流通方向と直交する方向へ揺動する揺動手段と、前記第1の開口側で前記冷媒の流通方向と交差する方向に沿って配置されてそれぞれが前記冷却用熱交換器に導入される冷却風の流速を検出する流速検出手段と、前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記揺動手段を作動する揺動制御手段と、
を含む。
【0018】
この発明によれば、縮流ダクト内を通過する冷媒の流速を検出し、流速にムラが生じないように整流フィンの向きを制御する。これにより、車両の走行状態及び冷却ファンの作動状態に応じた効率的な冷媒の冷却が可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記冷却用熱交換器で冷却される前記冷媒の温度を検出する温度検出手段を含み、前記冷却ファンが停止されているときに、前記温度検出手段によって検出される前記冷媒の温度が予め設定された温度以下である場合、前記揺動制御手段が、前記縮流ダクト内の前記冷却風の通路が、前記整流フィンによって閉塞されるように前記揺動手段を作動する。
【0020】
この発明によれば、冷媒の温度が予め設定している温度より低く、冷媒用熱交換器での冷却能力を高くする必要がないと判断されるときには、縮流ダクト内の冷却風の通路を閉じる。これにより、車両のcd値を下げて、燃費向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、縮流ダクトを設けて、冷却用熱交換器に冷却風を案内することにより、冷媒の効率的な冷却が可能となる。また、第1の開口幅を前部開口部の開口幅より狭めることにより、比較的温度の低い冷却風をエンジンコンパートメント内に供給して、エンジンコンパートメント内の温度上昇を抑えることができる。
【0022】
また、本発明では、冷却ファンの作動状態、冷却風の流速の分布に基づいて整流フィンの揺動を制御することにより、冷却用熱交換器での冷媒の効率的な冷却を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の一形態を説明する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
図1から図3には、第1の実施の形態に係る冷却装置10の概略構成が示されている。冷却装置10は、冷却用熱交換器としてラジエタ12を備えている。このラジエタ12は、図示しない内燃機関(エンジン)との間で、エンジンの冷却液(例えば、冷却水)が循環される。
【0025】
冷却装置10では、ラジエタ12に導入される冷却風と、ラジエタ12を通過する冷却水との間で熱交換が行われることにより、冷却水の冷却を行う。これにより、エンジンの冷却及び、エンジンの温度上昇の抑制がなされる。
【0026】
なお、本実施の形態では、冷却用熱交換器として、ラジエタ12を適用して説明するが、これに限らず、車両用空調装置において冷凍サイクルを形成するときの冷却用熱交換器となるコンデンサに適用してもよく、また、ラジエタ12とコンデンサとを隣接して配置して、ラジエタ12及びコンデンサを用いた冷媒の冷却に適用しても良い。
【0027】
図2及び図3に示されるように、冷却装置10が設けられる車両14では、前部に図示しないエンジンが収容されるエンジンコンパートメント16が設けられ手いる。ラジエタ12は、このエンジンコンパートメント16内に配置されている。なお、以下では、車両の前後方向の前方を矢印F、上下方向の上方を矢印Uで示すと共に、車幅方向を矢印Wで示している。
【0028】
図2に示されるように、車両14の前部には、バンパ18が設けられ、このバンパ18の上側にラジエタグリル20が形成され、バンパ18の下側にラジエタグリルロア22が形成されている。車両14では、このラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から車両前方の空気が、エンジンコンパート16内に導入される。
【0029】
図2及び図3に示されるように、ラジエタ12は、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22の開口に対向されて配置されている。
【0030】
また、ラジエタ12には、車両後方側がファンシュラウド24によって囲われている。このファンシュラウド24には、開口部24Aが形成され、この開口部24A内に冷却ファン26が設けられている。
【0031】
これにより、冷却ファン26が作動されると、車両停止中であっても、車両前方側の空気がラジエタグリル20及びラジエタグリル22から冷却風として導入される。この冷却ファン26は、エンジンの駆動力によって回転駆動されるものであっても良いが、本実施の形態では、ファンモータ28が駆動されることにより、冷却ファン26が作動されるものとしている。なお、ファンシュラウド24の形状、ファンシュラウド24に設ける冷却ファン26の位置及び、冷却ファン26の数は、公知の構成を適用することができる。
【0032】
ところで、図1乃至図3に示されるように、本実施の形態に適用した冷却装置10には、ラジエタ12の車両前方側に縮流ダクト30が設けられている。この縮流ダクト30は、車両前後方向の中間部で、上方側のダクト30Aと下方側のダクト30Bに分岐されている。ダクト30A、30Bの先端には、第2の開口部とされる開口部32A、32B(以下、総称するときは、開口部32とする)が形成されている。また、縮流ダクト30には、ラジエタ12に対向する端部に、第1の開口部とされる開口部34が形成されている。
【0033】
図2に示されるように、縮流ダクト30は、ダクト30Aの開口部32Aがラジエタグリル20に対向され、ダクト30Bの開口部32Bがラジエタグリルロア22に対向されている。
【0034】
これにより、冷却装置10では、車両走行ないし冷却ファン26の作動によって車両前方側の空気が、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から縮流ダクト30へ導入され、ラジエタ12へ向けて送り出される。
【0035】
一方、図1及び図3に示されるように、縮流ダクト30は、車両前方側から車両後方側へ向けて、開口断面積が徐々に狭められている。すなわち、開口部32の開口面積(開口部32A、32Bの開口面積の総和)をSa、開口部34の開口面積をSbとしたときに、Sb<Saとなるように絞りこまれている。
【0036】
これにより、縮流ダクト30に導入された冷却風は、縮流ダクト30内の開口断面積が徐々に狭められることにより、流速が増加される。ここで、開口面積Sa、Sbの比を面積比Sr(Sr=Sa/Sb)としたときに、Sr≦1.5とすることが好ましく、本実施の形態では、Sr≦1.5となるように縮流ダクト30を形成している。
【0037】
図3に示されるように、この縮流ダクト30の開口部32A、32Bは、車幅方向に沿った開口幅が、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22の開口幅より小さく(狭く)なっている。
【0038】
冷却装置10では、開口部32A、32Bのそれぞれが、ラジエタグリル20の開口及びラジエタグリルロア22の開口内で、車幅方向の一端側に偏寄して配置されている。これにより、車両14では、車両前方側の空気の一部が、縮流ダクト30を通過せずに、エンジンコンパートメント16内に導入可能となっている。
【0039】
一方、図1及び図4に示されるように、本実施の形態に適用しているラジエタ12は、車幅方向の一端側にタンク36Aが設けられ、他端側にタンク36Bが設けられている。車両14では、エンジンからタンク36Aに冷却水が供給され、タンク36Bから冷却水が戻されるように循環される。
【0040】
図4に示されるように、タンク36A、36Bの間には、例えば、冷却水が通過する多数のチューブ38が設けられ、チューブ38の間を連結する横フィン40A及び横フィン40Aの間を連結する縦フィン40Bが配置されて形成されている。これにより、ラジエタ12では、車幅方向(例えば、タンク36Aからタンク36B)に沿って冷却水が通過する(矢印C方向)ようになっている。このときに、冷却水は、横フィン40A、縦フィン40Bを介して冷却風との間で熱交換が行われる。なお、ラジエタ12の構成は、これに限らず、車幅方向に沿って冷却水が通過する構成であれば、任意の構成を適用することができる。
【0041】
図1、図2及び図4に示されるように、縮流ダクト30の開口部34は、車両上下方向に沿った開口高さが、ラジエタ12の車両上下方向に沿った寸法に合わせられている。これにより、図1、図3、図4に示されるように、縮流ダクト30の開口部34の開口幅は、ラジエタ12の車幅方向に沿った幅寸法より短くなっている。
【0042】
冷却装置10では、この縮流ダクト30の開口部34を、ラジエタ12の車幅方向に沿った所定位置に対向するように配置されている。本実施の形態では、一例として、ラジエタ12の車幅方向に沿った一端側となるタンク36A側に開口部34が対向されるように縮流ダクト30を設けている。なお、これに限らず、ラジエタ12の車幅方向の中間部に、開口部34を対向させるなどの任意の構成を適用することができる。
【0043】
一方、図1及び図2に示されるように(図3では図示省略)、縮流ダクト30内には、整流フィン42が設けられている。整流フィン42は、ダクト30A側に設けられた整流フィン42Aと、ダクト30B側に設けられている整流フィン42Bとに分けられている。
【0044】
図5に示されるように、整流フィン42は、縮流ダクト30への冷却風の導入方向の上流側である車両前方側(先端側)の端部近傍に支軸44が設けられている。整流フィン42は、この支軸44を軸にして、車両後方側である後端側が所定の角度θの範囲で上下に揺動可能となっている。
【0045】
これにより、冷却装置10では、整流フィン42を揺動することにより、縮流ダクト42を通過する冷却風の方向が変更されるようになっている。すなわち、整流フィン42を水平状態としたときには、冷却風はそのままの高さでラジエタ12へ向けて流れるが、整流フィン42の後端が下方へ向けて揺動されることにより、冷却風の風向がラジエタ12の下側へ向けられ、ラジエタ12の下側を通過する冷却風の風量が増加される。また、整流フィン42の後端が上方へ向けて揺動されることにより、冷却風の風向がラジエタ12の上側へ向けられ、ラジエタ12の上側の通過する冷却風の風量が増加される。
【0046】
なお、このような整流フィン42としては、一般的構成を適用することができるが、本実施の形態では、一例として先端側及び上面、下面が滑らかに湾曲され、後端側が絞りこまれた形状となっている。また、本実施の形態では、縮流ダクト30の車両前後方向に沿った長さをL(図3参照)、整流フィン42の車両前後方向に沿った長さをM、支軸44から先端までの長さをN、整流フィンの厚みをtとしたときに、t≦10(mm)、N=M/5、L・2/3≦M≦L、とし、整流フィン42の揺動範囲は、−14°≦θ≦14°としている。
【0047】
ここで、冷却装置10では、各整流フィン42の揺動角を調整することにより、開口部34からラジエタ12へ吹き出される冷却風の流速分布が均一となるように設定している。
【0048】
このように構成されている車両14では、車両走行ないし冷却ファン26の作動によって車両前方の空気がラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22からエンジンコンパートメント16内に導入される。
【0049】
このときに、冷却風がラジエタ12を通過することにより、エンジンの冷却水が冷却される。なお、車両14では、エンジンの冷却水の水温が上昇すると、ファンモータ28が駆動され、これにより、車両停止中であって、ラジエタ12に冷却風が導入されて、冷却水の冷却がなされる。
【0050】
ところで、車両14には、冷却装置10が設けられている。この冷却装置10は、ラジエタ12の車両前方側に縮流ダクト30が設けられており、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から導入される冷却風は、縮流ダクト30によってラジエタ12へ案内される。
【0051】
ここで、縮流ダクト30は、冷却風が導入される開口部32側からラジエタ12側の開口部34へ向けて開口断面積が減少されており、これにより、縮流ダクト30内に導入された冷却風の流速が増加されてラジエタ12へ送られる。
【0052】
また、縮流ダクト30の開口部34は、開口部34が、ラジエタ12内での冷却水の通過方向と直交する方向であるラジエタ12の高さ方向の全域を覆うように設けられている。
【0053】
ラジエタ12では、通過する冷却風の流速が高くなることにより、熱交換効率が向上し、冷却水の冷却が促進される。このときに、縮径ダクト30が、冷却水の通過方向の全域へ、この冷却風を案内するので、ラジエタ12では、タンク36Aからタンク36Bへ流れる冷却水を冷却することができる。
【0054】
一方、縮流ダクト30内には、整流フィン42が設けられている。冷却装置10では、この整流フィン42によって開口部34の全域からラジエタ12へ送られる冷却風の流速にムラが生じるのを抑えている。
【0055】
一般、整流フィン42を設けた場合、整流フィン42の上面及び下面で冷却風の剥離が生じ、整流フィン42を通過した冷却風には、流速ムラが生じ易い。このときに、縮流ダクト30では、開口断面積が狭められていることにより、冷却風の流速が高くなっており、これにより、冷却風が整流フィン42の上面や下面を通過するときの剥離が防止されている。
【0056】
したがって、縮流ダクト30が設けられたラジエタ12では、縮流ダクト30の開口部34が対向する全域に高い流速でかつ流速のムラがない冷却風が供給されるため、この冷却風によって冷却水を効率的に冷却することができる。
【0057】
一方、冷却装置10では、縮流ダクト30の開口部32野か移行幅が、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22の開口幅より狭くなっており、また、開口部32が車幅方向の一端側に片寄って設けられている。
【0058】
これにより、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から導入される空気の一部は、縮流ダクト30へ導入されず、そのまま、ラジエタ12を通過して、エンジンコンパートメント16内に導入される。
【0059】
ラジエタ12の全面で効率的に熱交換が行われた場合、ラジエタ12を通過した冷却風の温度が上昇しており、このために、エンジンコンパートメント16内の温度が上昇し易くなる。
【0060】
これに対して、ラジエタ12では、縮流ダクト30に導入されない冷却風が通過する部位の熱交換効率が低くなっているので、この冷却風は、比較的低い温度のままエンジンコンパートメント16内に導入される。したがって、冷却装置10では、縮流ダクト30を通過しない冷却風が導入されるようにしているので、エンジンコンパートメント16内の温度上昇を抑えることができる。
【0061】
すなわち、図6(B)及び図6(C)に示されるように、縮流ダクト30を設けていない場合、ラジエタグリル20とラジエタグリルロア22の間に、バンパ18があるため、ラジエタ12上での冷却風の流速にムラが生じ、流速の高い領域46と低い領域48が生じる。また、ラジエタ12上では、流速の低い領域48の面積が広くなってしまうことがある。
【0062】
このときに、冷却液の流れる方向に沿って高い領域46と低い領域48が生じると、タンク36B内では、冷却された冷却水と冷却がなされていない冷却水が混合されるために、全体として冷却水の冷却が抑制され、ラジエタ12での冷却効率が低くなっている。なお、図6(B)は高速走行中を示し、図6(C)は低速走行中を示している。
【0063】
これに対して、図6(A)に示されるように、ラジエタ12に縮流ダクト30を設けた場合、縮流ダクト30を通過しない冷却風が当たる領域は、冷却風の流速が低い領域48となっているのに対して、縮流ダクト30が対向する領域は、流速の高い領域46となっている。また、この流速の高い領域46は、ラジエタ12での冷却水の流通方向と直交する方向の全域を覆っている。
【0064】
これにより、縮流ダクト30を設けた場合、冷却水の全てが流速の高い領域46を通過する。これにより、ラジエタ12で確実に冷却水の冷却が行われるため、ラジエタ12で効率的な冷却水の冷却を行うことができる。
【0065】
〔第2の実施の形態〕
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。尚、第2の実施の形態の基本的構成は前記した第1の実施の形態と同じであり、第2の実施の形態において第1の実施の形態と同等の部品には同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0066】
図7には、第2の実施の形態に係る冷却装置50の制御部の概略構成を示している。前記した冷却装置10では、縮流ダクト30内に設けている整流フィン42の角度を予め調整するようにしたが、第2の実施の形態に係る冷却装置50では、整流フィン42の揺動を制御する。
【0067】
車両14では、エンジンECUなどのファンコントローラ52が設けられており、このファンコントローラ52に冷却ファン26のファンモータ28が接続されている。ファンコントローラ52では、例えば冷却水の水温を検出し、検出した水温が予め設定されている温度を越えると、ファンモータ28を駆動する。これにより、ラジエタ12への車両前方側の空気の導入量(風量)が増加され、ラジエタ12での冷却水の冷却が促進されるようにしている。
【0068】
一方、冷却装置50には、整流フィン42を揺動するアクチュエータ54が設けられている。冷却装置50では、一例として二つのアクチュエータ54A、54B(総称するときは、アクチュエータ54とする)を用いて、整流ファン42A、42Bを制御するものとしているが、一つのアクチュエータ54を用いた構成であっても良い。
【0069】
また、冷却装置50には、アクチュエータ54の作動を制御するコントローラ56を備えており、このコントローラ56にアクチュエータ54(54A、54B)が接続されている。また、このコントローラ56は、ファンコントローラ52に接続している。
【0070】
コントローラ56は、図示しないCPU、ROM、RAM等がバスによって接続された一般的構成のマイクロコンピュータ及び駆動回路、入出力回路を備えており、このマイクロコンピュータによってアクチュエータ54の作動を制御する。このときに、コントローラ56では、ファンコントローラ52から冷却ファン26(ファンモータ28)の作動状態を取得して、冷却ファン26の作動状態に応じて、整流フィン42を揺動するようにしている。
【0071】
冷却装置50では、例えば、整流フィン42のそれぞれが略水平状態とされることにより、縮流ダクト30内での通風抵抗が最も低くなる。また、冷却装置50では、例えば、整流フィン42を傾けることにより、縮流ダクト30内での通風抵抗が高くなる。
【0072】
ここから、コントローラ56では、冷却ファン26が作動されているときには、整流フィン42が水平状態となるようにアクチュエータ54を作動させ(以下、水平位置とする)、冷却ファン26が停止しているときには、例えば、整流フィン42Aが下方へ向けられ、整流フィン42Bが上方へ向けられるようにアクチュエータ54を作動する(以下、傾斜位置とする)。
【0073】
図8には、このときの冷却装置50のコントローラ56での処理の一例を示している。このフローチャートは、図示しないイグニッションスイッチがオンされてエンジンが始動されると実行され、イグニッションスイッチがオフされることにより停止される。
【0074】
このフローチャートでは、最初のステップ100で、ファンコントローラ52からファンモータ28の作動状態、すなわち、冷却ファン26の作動状態を読み込み、次のステップ102では、冷却ファン26が作動されているか否か、すなわち、ファンモータ28が駆動されているか否かを確認する。
【0075】
ここで、冷却ファン26が停止されているときには、ステップ102で否定判定してステップ104へ移行する。このステップ104では、整流フィン42が傾斜位置となるようにアクチュエータ54を作動する。
【0076】
これに対して、冷却ファン26が作動されているときには、ステップ102で肯定判定してステップ106へ移行する。このステップ106では、整流フィン42が水平位置となるようにアクチュエータ54を作動する。
【0077】
ファンコントローラ52が冷却ファン26を作動するときには、冷却水の温度が上昇し、冷却水の冷却を促進する必要があるときであり、このときに、整流フィン42を水平状態として通風抵抗を減少させる。これにより、冷却風の流速を上昇させることができる。
【0078】
また、冷却ファン26によって強制的に空気を導入したときには、縮流ダクト30内での冷却風の流速の均一化が図られる。
【0079】
したがって、ラジエタ12での冷却効率の向上が図られ、冷却水の冷却を促進することができる。特に、車両走行が停止しているアイドル状態では、車両走行による冷却風の導入が無いために、ラジエタ12の冷却能力が低下するが、このときに、通風抵抗を減少させて冷却効率の向上を図ることにより、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0080】
また、冷却ファン26が停止しているときには、冷却水の冷却を促進する必要性が低いときであり、このときに冷却装置50では、通気抵抗を増加させるようにしているので、車両走行中であっても、冷却水の冷却が不必要に促進されてしまうのを防止することができる。
【0081】
〔第3の実施の形態〕
次に本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、第3の実施の形態では、第1又は第2の実施の形態と同等の部品には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0082】
図9に示されるように、第3の実施の形態に係る冷却装置60には、縮流ダクト30内の開口部34の近傍に複数の流速センサ62が配置されている。流速センサ62は、ラジエタ12での冷却水の流通方向と直交する方向である車両14の上下方向に沿って所定間隔で配置されている。なお、流速センサ62の位置及び数は、開口部24を通過する冷却風の流速が略均一か否か(流速の差が許容範囲か否か)が判断可能であれば良い。
【0083】
図10に示されるように、冷却装置60に設けられているコントローラ64には、流速センサ62のそれぞれが接続されており、これにより、コントローラ64は、縮流ダクト30の開口部34を通過する冷却風の流速を検出することができる。
【0084】
ここで、コントローラ64では、冷却ファン26が停止していると、流速センサ62によって冷却風の流速を検出し、検出した流速が所定の範囲となるようにアクチュエータ54A、54Bを作動し、整流ファン42A、42Bのそれぞれを揺動するようにしている。
【0085】
このときに、例えば、流速センサ62によって検出される流速の最大値(最大流速Asmax)と流速の最低値(最低流速Asmin)の比r(r=Asmax/Asmin)が、r≦1.3とするなど、予め設定している設定値以内となるようにする。これにより、コントローラ64では、流速Asのばらつきが所定の範囲内となるように平均化を図る。
【0086】
ここで、図11を参照しながら、コントローラ64での整流フィンの制御を説明する。
【0087】
このフローチャートでは、最初のステップ100で冷却ファン26の作動状態を読み込むと、ステップ102で冷却ファン26が作動中か否かを判定する。このときに、冷却ファン26が作動中であれば、ステップ102で肯定判定してステップ106へ移行し、整流フィン42(42A、42B)が流通抵抗を最小とするようにアクチュエータ54A、54Bを作動する。
【0088】
これに対して、冷却ファン26が停止されていると、ステップ102で否定判定して、ステップ110へ移行する。このステップ110では、各流速センサ62が検出する冷却風の流速Asを読み込み、ステップ112では、流速Asのばらつきが所定の範囲内か否かを確認する。
【0089】
ここで、最大流速Asmaxと最小流速Asminの比rが、設定値を外れるとステップ112で否定判定されてステップ114へ移行し、流速比rが設定値以内となるようにアクチュエータ54A、54Bを作動させ、泳流フィン42A、42Bの角度調整を行う。
【0090】
図9に示されるように、車両14が高速走行中であるか低速走行中であるかによって、車両前方の空気の流れが変化する。例えば、車両14が高速走行中であると、図9に二点鎖線で示されるように、ラジエタグリル20側からの冷却風の導入量が増加するように空気の流れが生じる。また、車両14の走行速度が低下すると(低速走行中)、図9に破線で示されるようにラジエタグリルロア22からの冷却風の導入量が増加するように空気の流れが生じる。
【0091】
冷却ファン26が停止されているときには、車両14の走行によって生じる空気の流れで、冷却風が導入される。このときに、車両14の走行速度に応じてラジエタグリル20、ラジエタグリルロア22からの冷却風の導入量が変化すると、開口部34を通過する冷却風の流速の分布も変化する。
【0092】
ここから、冷却装置60では、整流フィン42の揺動を制御することにより、縮流ダクト30の開口部34からラジエタ12を通過する冷却風の流速の平均化を図ることにより、ラジエタ12での効率的な冷却水の冷却が行われるようにしている。
【0093】
一方、車両14では、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から導入される冷却風の一部は、縮流ダクト30を通過せずにラジエタ12へ至るようになっている。また、縮流ダクト30内を閉塞することにより、車両14のcd値の低減を図ることができる。
【0094】
ここから、例えば、図10に示されるように、冷却水の水温を検出する水温センサ66を設ければよい。コントローラ64は、水温センサ66によって検出される水温Twが、予め設定された温度Twsより低いとき(Tw<Tws)に、冷却水の冷却が不要であると判断して、縮流ダクト30を閉塞する。
【0095】
このときには、整流フィン42の揺動範囲を、縮流ダクト30内を閉塞する角度まで広げればよく、また、ダクト30A、30Bの開口部332A、32Bは、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22の開口の中央部に配置することが好ましい。
【0096】
図12には、このときの整流フィン42の揺動制御の一例を示している。このフローチャートでは、冷却ファン26が停止されて、ステップ102で否定判定されると、ステップ120へ移行する。このステップ120では、水温センサ66によって冷却水の水温Twを検出し、次のステップ122では、水温Twが設定水温Twsを越えているか否かを確認する。
【0097】
ここで、水温Twが設定水温Twを越え(Tw≧Tws)、冷却ファン26を作動させるまでもないが、冷却水の冷却が必要であるときには、ステップ122で肯定判定して、ステップ110へ移行する。
【0098】
これに対して、冷却水の水温Twが設定水温Twsより低いときには、ステップ122で否定判定してステップ124へ移行する。このステップ124では、整流フィン42によって縮流ダクト30内を閉塞するようにアクチュエータ54A、54Bを作動する。
【0099】
これにより、ラジエタグリル20及びラジエタグリルロア22から、エンジンコンパートメント16内に導入される空気が抑えられるので、車両14のcd値を低下させることができる。したがって、エンジンの燃料消費を抑えることができる。
【0100】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。本発明は、車両走行ないし冷却ファンの作動によって冷却用熱交換器に導入される冷却風を用い、冷却用熱交換器を通過する冷媒を冷却する任意の構成の冷却装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1の実施の形態に係るラジエタと縮流ダクトを示す概略斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る車両幅方向から見た車両前部の概略構成図である。
【図3】車両上方から見た車両前部の概略構成図である。
【図4】ラジエタの一例を示す概略図である。
【図5】整流フィンの一例を示す概略図である。
【図6】(A)〜(C)はラジエタ上での冷却風の流速を示す概略図であり、(A)は縮流ダクトを設けたラジエタを示し、(B)及び(C)は縮流ダクトを設けていないときのラジエタを示している。
【図7】第2の実施の形態に係る冷却装置の制御部を示す概略図である。
【図8】第2の実施の形態に係る冷却装置での整流フィンの揺動制御の一例を示す流れ図である。
【図9】第1の実施の形態に係る車両幅方向から見た車両前部の概略構成図である。
【図10】第3の実施の形態に係る冷却装置の制御部を示す概略図である。
【図11】第3の実施の形態に係る冷却装置での整流フィンの揺動制御の一例を示す流れ図である。
【図12】整流フィンの揺動制御の他の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0102】
10、50、60 冷却装置
12 ラジエタ(冷却用熱交換器)
14 車両
16 エンジンコンパートメント
18 バンパ
20 ラジエタグリル(前部開口部)
22 ラジエタグリルロア(前部開口部)
26 冷却ファン
30 縮流ダクト
30A、30B ダクト
32(32A、32B) 開口部(第2の開口部)
34 開口部(第1の開口部)
42(42A、42B) 整流フィン
54(54A、54B) アクチュエータ(揺動手段)
56、64 コントローラ(揺動制御手段)
62 流速センサ(流速検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って通過する冷媒を、車両前方から導入される冷却風によって冷却する冷却用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器側の第1の開口部が前記冷媒の流通方向と直交する方向の全域に対応され、車両前方側の第2の開口部から前記第1の開口部へ向けて開口断面積が狭められて形成され、前記第2の開口部から導入される前記冷却風を前記冷却用熱交換器へ案内する縮流ダクトと、
を含む車両用冷却装置。
【請求項2】
前記第2の開口部の開口幅が、前記車両の前部に前記冷却風の導入用として形成されている前部開口部の開口幅よりも狭められている請求項1に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
前記縮流ダクト内に、それぞれが前記冷却用熱交換器の前記冷媒の流通方向に沿うように配置された整流フィンと、
前記整流フィンを前記冷媒の流通方向と直交する方向へ揺動する揺動手段と、
前記冷媒の温度に応じて作動されて、車両前方の空気を前記冷却用熱交換器へ案内可能とする冷却ファンと、
前記冷却ファンの作動に応じて前記揺動手段を作動する揺動制御手段と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項4】
前記縮流ダクト内に、それぞれが前記冷却用熱交換器の前記冷媒の流通方向に沿うように配置された整流フィンと、
前記整流フィンを前記冷媒の流通方向と直交する方向へ揺動する揺動手段と、
前記第1の開口側で前記冷媒の流通方向と交差する方向に沿って配置されてそれぞれが前記冷却用熱交換器に導入される冷却風の流速を検出する流速検出手段と、
前記流速検出手段の検出結果に基づいて前記揺動手段を作動する揺動制御手段と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項5】
前記冷却用熱交換器で冷却される前記冷媒の温度を検出する温度検出手段を含み、
前記冷却ファンが停止されているときに、前記温度検出手段によって検出される前記冷媒の温度が予め設定された温度以下である場合、
前記揺動制御手段が、前記縮流ダクト内の前記冷却風の通路が、前記整流フィンによって閉塞されるように前記揺動手段を作動する請求項4に記載の車両用冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−89523(P2010−89523A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258250(P2008−258250)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】