説明

車両用冷却装置

【課題】車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器の着霜状況を良好に判定して除霜処理を行うことができる車両用冷却装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載される収納庫内部を冷却する蒸発器の除霜処理を制御する制御手段は、蒸発器の通過直後の空気温度と収納庫の内部温度との差を算出する温度差算出手段と、除霜処理毎に除霜が完了してから着霜するまでの安定期間における温度差算出手段により算出される差の平均値を算出して安定値として更新・記憶する更新記憶手段と、これに記憶される安定値に対する現時点の温度差の偏差を算出する偏差算出手段と、これにより算出される偏差の時間的変化量を算出する変化量算出手段と、温度差の偏差等と、収納庫の設定温度帯毎に予め決められた複数のルールから選択された今回の設定温度帯のルールに基づいてファジィ推論により着霜量を推定し、除霜開始タイミングを求める推論部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に関し、より詳細には、例えば冷凍車等の車両に搭載される収納庫の内部を冷却する車両用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商品を所望の温度帯に冷却した状態で収納する収納庫の内部に配設された蒸発器の除霜運転を行う冷却装置が特許文献1に提案されている。この特許文献1に提案されている冷却装置においては、収納庫の庫内温度が設定温度よりも低くなって圧縮機が駆動停止した場合に、蒸発器の冷媒入口側に配設された蒸発器温度センサにより検出される蒸発器の温度勾配の変化に基づいて蒸発器の着霜状況を判定して除霜運転が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−81843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に提案されている冷却装置では、収納庫の庫内温度が設定温度よりも低くなって圧縮機が停止した場合に、蒸発器温度センサにより検出される蒸発器の温度勾配の変化に基づいて蒸発器の着霜状況を判定していたために、例えば冷凍車等の車両が炎天下かつ高湿度である真夏の昼間に走行する状況においては、圧縮機が連続運転することが考えられ、結果的に蒸発器の着霜状況を判定することが困難である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器の着霜状況を良好に判定して除霜処理を行うことができる車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用冷却装置は、車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器と、前記蒸発器に付着した霜を除去する除霜処理を制御する制御手段とを備えた車両用冷却装置において、前記制御手段は、前記蒸発器の通過直後の空気温度と、前記収納庫内部の空気温度との差を算出する温度差算出手段と、除霜処理毎に除霜が完了してから着霜するまでの安定期間における前記温度差算出手段により算出される差の平均値を算出して安定値として更新・記憶する更新記憶手段と、前記更新記憶手段により記憶される安定値に対する現時点の温度差の偏差を算出する偏差算出手段と、前記偏差算出手段により算出される偏差の時間的変化量を算出する変化量算出手段と、前記偏差算出手段により算出される温度差の偏差、並びに変化量算出手段により算出される時間的変化量と、前記収納庫の設定温度帯毎に予め決められた複数のルールから選択された今回の設定温度帯のルールとに基づいてファジィ推論により着霜量を推定し、除霜開始タイミングを求める推論部とを備え、前記除霜開始タイミングにより除霜処理開始指令を与えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る車両用冷却装置は、上述した請求項1において、前記制御手段は、前回の除霜処理からの経過時間を計測する経過時間計測手段と、前記経過時間計測手段を通じて計測された経過時間と、毎回の除霜間隔の移動平均である除霜間隔基準値との時間差を算出する時間差算出手段とを備え、前記時間差算出手段により算出された時間差も入力条件として前記推論部を通じてファジィ推論により除霜開始タイミングを求めることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係る車両用冷却装置は、上述した請求項2において、前記制御手段は、外気温度検出手段を通じて検出される外気温度と、外気湿度検出手段を通じて検出される外気湿度とから外気エンタルピを算出して最適除霜間隔値を演算し、前記経過時間計測手段を通じて計測された経過時間と最適除霜間隔値との差を算出する除霜間隔算出手段を備え、前記除霜間隔算出手段により算出された最適除霜間隔値も入力条件として前記推論部を通じてファジィ推論により除霜開始タイミングを求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御手段は、温度差算出手段を通じて蒸発器の通過直後の空気温度と、収納庫内部の空気温度との差を算出し、更新記憶手段を通じて除霜処理毎に除霜が完了してから着霜するまでの安定期間における温度差算出手段により算出される差の平均値を算出して安定値として更新・記憶し、偏差算出手段を通じて更新記憶手段により記憶される安定値に対する現時点の温度差の偏差を算出し、変化量算出手段を通じて偏差算出手段により算出される偏差の時間的変化量を算出し、推論部を通じて偏差算出手段により算出される温度差の偏差、並びに変化量算出手段により算出される時間的変化量と、収納庫の設定温度帯毎に予め決められた複数のルールから選択された今回の設定温度帯のルールとに基づいてファジィ推論により着霜量を推定し、除霜開始タイミングを求め、求めた除霜開始タイミングにより除霜処理開始指令を与えるようにしているので、除霜開始のタイミングをファジィ制御にて実施することができ、車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器の着霜状況を良好に判定することができる。また、収納庫の設定温度帯毎に予め決められた複数のルールから選択された今回の設定温度帯のルールを用いているので、様々な温度帯で商品を冷却した状態で運搬する車両(冷凍車)には好適なものである。従って、車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器の着霜状況を良好に判定して除霜処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置が適用される車両の模式図である。
【図2】図2は、冷却ユニットを構成する冷媒回路を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置(冷却ユニット)の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図4】図4は、図3に示した除霜開始判断手段の構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】図5は、ルール部に定められたルールの一例を示す図表である。
【図6】図6は、図3に示した除霜制御手段が実施する除霜開始判断処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】図7は、図3に示した除霜制御手段40が実施する除霜処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用冷却装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置が適用される車両の模式図である。ここで例示する車両は、例えば冷凍車のようなものであり、収納庫10と、車両用冷却装置である冷却ユニット20とを搭載するものである。
【0013】
収納庫10は、平板状の断熱パネル11を適宜組み合わせることによって後面に開口部12が形成された直方状を成しており、断熱構造を有するものである。この収納庫10の開口部12は、扉体13により開閉されるものである。
【0014】
冷却ユニット20は、冷媒回路20aを備えて構成している。冷媒回路20aは、内部に冷媒が封入してあり、図2に示すように、蒸発器21と、圧縮機22と、凝縮器23と、膨張機構24とを冷媒配管25にて順次接続することにより構成されるものである。
【0015】
蒸発器21は、収納庫10を構成する前面側断熱パネル11の上部側前面に取り付けられた筐体30の内部に配設されており、より詳細には、収納庫10の内部と吹出口31及び吸込口32を通じて連通する断熱構造の蒸発器収容庫33の内部に配設されている。この蒸発器21は、供給された冷媒を蒸発させるものである。
【0016】
圧縮機22は、筐体30の外部であって車両の下部に配設されており、蒸発器21で蒸発した冷媒を吸引して圧縮するものである。
【0017】
凝縮器23は、筐体30の内部であって蒸発器収容庫33の前方側に配設されており、圧縮機22で圧縮された冷媒を凝縮させるものである。この凝縮器23の近傍には、凝縮器用送風ファン23Fが配設されている。この凝縮器用送風ファン23Fは、駆動することにより凝縮器23の周囲に外気を通過させるものである。
【0018】
膨張機構24は、例えばキャピラリーチューブのようなものであり、筐体30の内部に配設されている。この膨張機構24は、凝縮器23で凝縮した冷媒を断熱膨張させるもので、断熱膨張させた冷媒を蒸発器21に供給するものである。
【0019】
このような冷却ユニット20においては、冷媒回路20aで冷媒を循環させることにより、蒸発器21の周囲空気、すなわち蒸発器収容庫33の内部空気が冷却される。そして、蒸発器21の近傍に配設された蒸発器用送風ファン21Fが駆動することにより、吸込口32を通じて収納庫10の内部空気を蒸発器収容庫33に吸い込み、かつ吹出口31を通じて蒸発器収容庫33の内部空気を収納庫10の内部に吹き出すことで、収納庫10と蒸発器収容庫33との間で互いの内部空気を循環させる結果、収納庫10の内部を冷却することができる。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置(冷却ユニット20)の制御系を模式的に示すブロック図である。この図3に示すように、冷却ユニット20は、その制御系の1つとして庫内温度センサS1、出口空気温度センサS2、入口冷媒温度センサS3、外気温度センサS4、外気湿度センサS5及び除霜制御手段40を備えている。
【0021】
庫内温度センサS1は、収納庫10の内部において、吹出口31の近傍に配設してあり、吹出口31から吹き出される空気の温度を庫内温度として検出するものである。
【0022】
出口空気温度センサS2は、蒸発器21の風下側の空気温度、すなわち蒸発器21を通過した直後の空気温度を検出するものである。
【0023】
入口冷媒温度センサS3は、蒸発器21の入口側近傍の冷媒温度、すなわち蒸発器21に供給される直前の冷媒温度を検出するものである。
【0024】
外気温度センサS4は、収納庫10の外部に配設されており、外気温度を検出するものである。外気湿度センサS5は、収納庫10の外部に配設されており、外気湿度を検出するものである。
【0025】
除霜制御手段40は、設定記憶部41と、時間計測部42と、除霜制御部43と、除霜開始判断手段44とを備えている。
【0026】
設定記憶部41は、種々の情報を予め設定し、かつこれを記憶するものである。より詳細には、蒸発器21の風下側における空気温度の目標温度(第1基準温度)と、蒸発器21に供給される直前の冷媒温度の目標温度(第2基準温度)とを予め設定し、かつこれらを記憶するとともに、後述する除霜処理における水切り時間を予め設定し、かつ記憶するものである。本実施の形態では、例えば、第1基準温度を7℃、第2基準温度を0℃としている。ここで、第1基準温度及び第2基準温度は、蒸発器21に付着した霜が完全に融解されたと判断するのに必要十分な温度である。
【0027】
時間計測部42は、時間を計測するためのものである。除霜制御部43は、除霜処理を行う際に圧縮機22及びヒータ26の駆動を制御するためのものである。ここでヒータ26は、図1や図2には明示していないが、蒸発器21の近傍に配設されている。
【0028】
除霜開始判断手段44は、除霜開始タイミングを求めて除霜開始信号を与えるものであり、図4に示すように、空気温度差算出部441と、偏差算出部442と、変化量算出部443と、除霜後経過時間計測部444と、時間差算出部445と、除霜間隔算出部446と、ファジィ推論部447と、メンバシップ関数448と、ルール部449とを備えている。
【0029】
空気温度差算出部441は、庫内温度センサS1により検出される温度(庫内温度T1)と、出口空気温度センサS2により検出される温度(出口空気温度T2)との差(T1−T2)を算出するものである。
【0030】
偏差算出部442は、空気温度差算出部441を通じて算出された温度差(T1−T2)について、当該収納庫10の安定値T0に対する偏差ΔTを算出するものである。ここで安定値T0とは、当該収納庫10の除霜時において求めた固有の値である。すなわち、除霜を開始すると、庫内温度及び出口空気温度が一旦上昇してから下降して安定する。通常、安定するまで数時間を要し、その後着霜が始まるまでの所定時間が一定に保持される。この間における温度差(T1−T2)を除霜の度に取り込みその移動平均を安定値T0としている。
【0031】
変化量算出部443は、偏差算出部442を通じて算出された偏差ΔTの時間的変化量dTを算出するものである。
【0032】
除霜後経過時間計測部444は、前回の除霜を行ってからの経過時間tpを計測するものである。
【0033】
時間差算出部445は、除霜後経過時間計測部444を通じて計測された経過時間tpと、除霜間隔基準値t0との時間差Δtを算出するものである。この除霜間隔基準値t0は、毎回の除霜の移動平均を用いている。
【0034】
除霜間隔算出部446は、外気温度センサS4により検出される外気温度T3と、外気湿度センサS5により検出される外気湿度Hとから外気エンタルピを算出して最適除霜間隔値taを演算し、上記除霜後経過時間計測部444を通じて計測された経過時間tpと、最適除霜間隔値taとの差(tp−ta)を算出するものである。また、除霜間隔算出部446は、図示せぬ開口部検出センサにより、扉体13が開移動して開口部12が開成されていることを検出された場合には、演算した最適除霜間隔値taから所定値を減算する補正を行うものである。
【0035】
尚、上記時間差算出部445においては、除霜が初回の場合には、除霜間隔算出部446を通じて算出された最適除霜間隔値taを除霜間隔基準値t0として時間差Δtを算出するものである。
【0036】
ファジィ推論部447は、入力された各データ、すなわち偏差ΔT、時間的変化量dT、時間差Δt、差(tp−ta)に基づくファジィ推論により除霜の有無を判定するものである。具体的には、ファジィ推論部447は、入力された各データと、ルール部449に定められた複数のルールの中から選択されたルールとに基づいて除霜の有無を判定し、除霜が必要な場合には、除霜開始信号を除霜制御部43に与えるものである。
【0037】
メンバシップ関数448は、ファジィ推論部447へ与えられる各データ、すなわち偏差ΔT、時間的変化量dT、時間差Δt、差(tp−ta)に対して霜がどれくらいついているか、あるいは除霜するまでにどのくらいの余裕があるかといった、余裕度又は無理度を判断するために用いられる。
【0038】
ルール部449は、ファジィ推論部447にて除霜の有無を判定するためのルールを収納庫10の設定温度帯毎に定めている。より詳細には、設定温度帯が−25℃以下のルール、設定温度帯が−20〜−25℃のルール、設定温度帯が−10〜−15℃のルール、設定温度帯が5〜−5℃のルールを定めている。そして、これら複数のルールの中から、今回の収納庫10の設定温度帯が車両の運転席近くにある入力手段(図示せず)を通じて入力されることで、1つのルールが選択される。ここで、ルール部449に定められたルールは、図5に示すような冷凍車についての専門技術者が有する除霜制御に関するノウハウをルール化したものであり、偏差ΔTが大きくなれば除霜開始、偏差ΔTが小さくても時間差Δt大きくなれば除霜開始、時間的変化量が大きくなれば除霜開始等々を定めたものである。
【0039】
図6は、図3に示した除霜制御手段40が実施する除霜開始判断処理の処理内容を示すフローチャートである。尚、この除霜開始処理を行う前提として、入力手段を通じて今回の収納庫10の設定温度帯が入力されることでルール部449に定められた複数のルールの中から今回の設定温度帯に対応したルールが選択されている。
【0040】
除霜開始判断処理において除霜制御手段40における除霜開始判断手段44は、庫内温度センサS1を通じて庫内温度T1を検出するとともに、出口空気温度センサS2を通じて出口空気温度T2を検出する(ステップS101)。
【0041】
庫内温度T1及び出口空気温度T2を検出した除霜開始判断手段44は、空気温度差算出部441を通じて温度差(T1−T2)を算出し(ステップS102)、その後、偏差算出部442を通じて空気温度差算出部441で算出された温度差(T1−T2)について収納庫10の安定値T0に対する偏差ΔTを算出する(ステップS103)。
【0042】
偏差ΔTを算出した除霜開始判断手段44は、変化量算出部443を通じて偏差算出部442で算出されたΔTの時間的変化量dTを算出する(ステップS104)。時間的変化量dTを算出した除霜開始判断手段44は、除霜後経過時間計測部444を通じて前回の除霜を行ってからの経過時間tpを計測し(ステップS105)、時間差算出部445を通じて除霜後経過時間計測部444で計測された経過時間tpと、除霜間隔基準値t0との時間差Δtを算出する(ステップS106)。
【0043】
時間差Δtを算出した除霜開始判断手段44は、外気温度センサS4を通じて外気温度T3を検出するとともに、外気湿度センサS5を通じて外気湿度Hを検出する(ステップS107)。
【0044】
外気温度T3及び外気湿度Hを検出した除霜開始判断手段44は、除霜間隔算出部446を通じて外気温度T3と外気湿度Hとから外気エンタルピを算出して最適除霜間隔値taを演算し、上記除霜後経過時間計測部444を通じて計測された経過時間tpと、最適除霜間隔値taとの差(tp−ta)を算出する(ステップS108,ステップS109,ステップS110)。
【0045】
そして、除霜開始判断手段44は、ファジィ推論部447を通じて入力された偏差ΔT、時間的変化量dT、時間差Δt、差(tp−ta)に基づくファジィ推論により除霜の有無を判定し(ステップS111)、今回の処理を終了して手順をリターンする。
【0046】
この除霜開始判断処理により「除霜する」旨の判定がなされると、除霜開始判断手段44は除霜開始信号を除霜制御部43に与え、これにより除霜制御手段40は次のような除霜処理を実施する。
【0047】
図7は、図3に示した除霜制御手段40が実施する除霜処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0048】
除霜処理において除霜制御手段40は、除霜開始信号が与えられた場合(ステップS201:Yes)、除霜制御部43を通じて、圧縮機22を駆動停止させるとともに、ヒータ26を通電させて駆動させる(ステップS202,ステップS203)。このように圧縮機22を駆動停止にさせることにより冷媒回路20aでの冷媒の循環が停止する。またヒータ26が駆動することにより、ヒータ26により加熱された空気は、蒸発器用送風ファン21Fにより送風される結果、蒸発器21の周囲を通過することとなり、この結果、蒸発器21に霜が融解される。
【0049】
その後、除霜制御手段40は、出口空気温度センサS2を通じて出口空気温度T2を検出するとともに、入口冷媒温度センサS3を通じて入口冷媒温度T4を検出する(ステップS204)。
【0050】
そして、除霜制御手段40は、除霜制御部43を通じて出口空気温度T2が設定記憶部41に記憶された第1基準温度以上であるか否かを判断し(ステップS205)、出口空気温度T2が第1基準温度未満である場合(ステップS205:No)には、上記ステップS204の処理を実施する一方、出口空気温度T2が第1基準温度以上である場合(ステップS205:Yes)には、入口冷媒温度T4が設定記憶部41に記憶された第2基準温度以上であるか否かを判断する(ステップS206)。
【0051】
入口冷媒温度T4が第2基準温度未満である場合(ステップS206:No)には、上記ステップS204の処理を実施する一方、入口冷媒温度T4が第2基準温度以上である場合(ステップS206:Yes)には、除霜制御部43を通じてヒータ26の通電を停止してヒータ26を駆動停止にさせ(ステップS207)、これと同時に時間計測部42を通じて時間計測を開始する(ステップS208)。このステップS207においてヒータ26の駆動を停止させることにより霜の融解から融解により生じた水の除去、いわゆる水切りを開始することになる。
【0052】
そして、ステップS208で開始した計測時間が所定時間、すなわち設定記憶部41に記憶された水切り時間を経過したか否かを判断し(ステップS209)、かかる水切り時間を経過している場合(ステップS209:Yes)には、除霜制御部43を通じて圧縮機22を駆動させて(ステップS210)、手順をリターンさせて今回の処理を終了する。これにより冷媒回路20aでの冷媒の循環が開始される。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態である車両用冷却装置では、除霜制御手段40の除霜開始判断手段44が除霜開始のタイミングをファジィ制御にて実施することができ、車両に搭載される収納庫10の内部を冷却する蒸発器21の着霜状況を良好に判定することができる。また、除霜開始判断手段44のルール部449には、ファジィ推論部447にて除霜の有無を判定するためのルールを収納庫10の設定温度帯毎に定めてあり、ファジィ推論部447にて今回の収納庫10の設定温度帯に対応したルールを用いて蒸発器21の着霜の有無を判定するので、様々な温度帯で商品を冷却した状態で運搬する車両(冷凍車)には好適なものである。
【0054】
従って、本実施の形態である車両用冷却装置によれば、車両に搭載される収納庫10の内部を冷却する蒸発器21の着霜状況を良好に判定して除霜処理を行うことができる。
【0055】
また、上記車両用冷却装置によれば、除霜開始のタイミングをファジィ制御にて行うことで、除霜処理の回数を必要最低限にすることができ、これにより収納庫10の庫内温度を上昇させる回数を低減させることができるので、商品に与えるダメージを最小限にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係る車両用冷却装置は、例えば冷凍車等の車両に搭載される収納庫10の内部を冷却するのに有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 収納庫
11 断熱パネル
12 開口部
13 扉体
20 冷却ユニット
20a 冷媒回路
21 蒸発器
21F 蒸発器用送風ファン
22 圧縮機
23 凝縮器
23F 凝縮器用送風ファン
24 膨張機構
25 冷媒配管
26 ヒータ
30 筐体
31 吹出口
32 吸込口
33 蒸発器収容庫
40 除霜制御手段
41 設定記憶部
42 時間計測部
43 除霜制御部
44 除霜開始判断手段
441 空気温度差算出部
442 偏差算出部
443 変化量算出部
444 除霜後経過時間計測部
445 時間差算出部
446 除霜間隔算出部
447 ファジィ推論部
448 メンバシップ関数
449 ルール部
S1 庫内温度センサ
S2 出口空気温度センサ
S3 入口冷媒温度センサ
S4 外気温度センサ
S5 外気湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される収納庫の内部を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器に付着した霜を除去する除霜処理を制御する制御手段と
を備えた車両用冷却装置において、
前記制御手段は、
前記蒸発器の通過直後の空気温度と、前記収納庫内部の空気温度との差を算出する温度差算出手段と、
除霜処理毎に除霜が完了してから着霜するまでの安定期間における前記温度差算出手段により算出される差の平均値を算出して安定値として更新・記憶する更新記憶手段と、
前記更新記憶手段により記憶される安定値に対する現時点の温度差の偏差を算出する偏差算出手段と、
前記偏差算出手段により算出される偏差の時間的変化量を算出する変化量算出手段と、
前記偏差算出手段により算出される温度差の偏差、並びに変化量算出手段により算出される時間的変化量と、前記収納庫の設定温度帯毎に予め決められた複数のルールから選択された今回の設定温度帯のルールとに基づいてファジィ推論により着霜量を推定し、除霜開始タイミングを求める推論部と
を備え、
前記除霜開始タイミングにより除霜処理開始指令を与えることを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前回の除霜処理からの経過時間を計測する経過時間計測手段と、
前記経過時間計測手段を通じて計測された経過時間と、毎回の除霜間隔の移動平均である除霜間隔基準値との時間差を算出する時間差算出手段と
を備え、
前記時間差算出手段により算出された時間差も入力条件として前記推論部を通じてファジィ推論により除霜開始タイミングを求めることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
外気温度検出手段を通じて検出される外気温度と、外気湿度検出手段を通じて検出される外気湿度とから外気エンタルピを算出して最適除霜間隔値を演算し、前記経過時間計測手段を通じて計測された経過時間と最適除霜間隔値との差を算出する除霜間隔算出手段を備え、
前記除霜間隔算出手段により算出された最適除霜間隔値も入力条件として前記推論部を通じてファジィ推論により除霜開始タイミングを求めることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113562(P2013−113562A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262549(P2011−262549)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】