車両用前照灯
【課題】小型で低コストな車両用前照灯を提供する。
【解決手段】車両用前照灯10のランプユニット11は、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれ、光源ユニット14,15および光源取付部12bが収容される灯室Sと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成されて防水キャップ12fが被着された防水構造の呼吸孔12dと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成された配線挿通孔12eと、配線挿通孔12eに挿通されて光源ユニット14,15と接続される配線ケーブル18と、灯室Sの外部にてヒートシンク12に取付固定された光軸調整用フレーム20との連結部12g〜12iを備える。
【解決手段】車両用前照灯10のランプユニット11は、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれ、光源ユニット14,15および光源取付部12bが収容される灯室Sと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成されて防水キャップ12fが被着された防水構造の呼吸孔12dと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成された配線挿通孔12eと、配線挿通孔12eに挿通されて光源ユニット14,15と接続される配線ケーブル18と、灯室Sの外部にてヒートシンク12に取付固定された光軸調整用フレーム20との連結部12g〜12iを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDなどの発光素子を用いたランプでは、発光素子の長寿命化を図るために温度上昇を抑制しなければならず、ヒートシンクを設ける必要がある。
また、車両用前照灯(ヘッドランプ、フォグランプ)は、光軸調整を可能にすることが法規により義務付けられており、光軸調整機構を設ける必要がある。
従来の車両用前照灯(車両用灯具)では、発光素子が搭載された光源ユニット(灯具ユニット)に取付固定されたヒートシンク(放熱部材)に光軸調整機構を連結し、これら(光源ユニット、ヒートシンク、光軸調整機構)をランプハウジングとアウタレンズとで形成される密閉された防水構造の灯室内に配設していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165536号公報(段落[0020]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用前照灯では、光源ユニットとヒートシンクの一体物が光軸調整機構によって灯室内で傾動されることから、光源ユニットおよびヒートシンクがランプハウジングやアウタレンズに干渉するのを防ぐため、灯室が大型化するという問題があった。
そして、ランプハウジングとアウタレンズとで形成される灯室が大型化すると、車両用前照灯の部品コストが増大するという問題もあった。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、小型で低コストな車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0006】
<第1の局面>
第1の局面は、
発光素子が搭載された光源ユニットと、
前記光源ユニットが取付固定される光源取付部を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンクに取付固定されたアウタレンズと、
前記ヒートシンクおよび前記アウタレンズによって囲まれ、前記光源ユニットおよび前記光源取付部が収容される灯室と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された防水構造の呼吸孔と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された配線挿通孔と、
外部から前記配線挿通孔に挿通されて前記光源ユニットと接続される配線ケーブルと、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに取付固定された光軸調整機構との連結部とを備えるランプユニットが設けられた車両用前照灯である。
【0007】
第1の局面によれば、ランプユニットの灯室を密閉された防水構造にすることが可能になり、ランプユニットを傾動させる光軸調整機構をランプユニットの外部に設けることにより、従来のランプハウジングを省くことができる。
そして、光軸調整機構が灯室の内部に無いため、灯室を小型化することが可能になり、車両用前照灯の部品コストが削減されることから、小型で低コストな車両用前照灯を実現できる。
【0008】
<第2の局面>
第2の局面は、第1の局面において、前記連結部に連結され、前記ランプユニットを傾動させて光軸調整を行う光軸調整機構を備える。
そのため、光軸調整機構に意匠部品を取り付けることが可能になり、車両用前照灯の意匠性を向上できる。
また、光軸調整機構を車体の一部と一体形成すれば、車体の一部を光軸調整機構と共用することが可能になり、車両用前照灯の更なる低コスト化を実現できる。
【0009】
<第3の局面>
第3の局面は、第2の局面において、前記光軸調整機構は、前記ヒートシンクを取り囲んで露出させるフレーム本体を備える。
そのため、ヒートシンクの放熱性が光軸調整機構によって阻害されず、ヒートシンクの放熱性を高めることが可能になるため、発光素子の温度上昇を抑制して高寿命化を図ることができる。
また、ランプユニットと光軸調整機構とが重ね合わされた状態で配置されるため、車両用前照灯の奥行寸法を小さくすることが可能になり、車両用前照灯の更なる小型化を実現できる。
【0010】
<第4の局面>
第4の局面は、第1〜3の局面において、前記発光素子を点灯させるための電子回路が形成され、前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに取り付けられた回路基板を備える。
そのため、ヒートシンクを導電性材料によって形成すれば、ヒートシンクが電磁シールド板として機能するため、回路基板の背面側から放出される電磁波をヒートシンクが遮蔽できる。
ここで、車両用前照灯は車両の前方部に取り付けられ、車両の電子機器は車両用前照灯の背面側に設けられているため、回路基板の背面側から放出される電磁波を遮蔽できれば、車両の電子機器が当該電磁波の影響を受けることはほとんど無くなることから、当該電磁波が車両の電子機器に悪影響を与えるのを防止できる。
【0011】
<第5の局面>
第5の局面は、第1〜4の局面において、前記ヒートシンクの外周縁に沿って環状に形成された取付溝を備え、前記アウタレンズの周縁が前記取付溝に嵌合されて接着固定される。
そのため、ヒートシンクとアウタレンズとの接続部分を完全に密閉することが可能になり、ランプユニットの防水性を高めることができる。
【0012】
<第6の局面>
第6の局面は、第1〜5の局面において、前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに突設された複数枚の放熱フィンを備え、前記呼吸孔および前記配線挿通孔は前記放熱フィンの間に形成される。
そのため、呼吸孔および配線挿通孔がヒートシンクの構成に制約を与えることがなく、呼吸孔および配線挿通孔を最適な箇所に形成できる。
【0013】
<第7の局面>
第7の局面は、第1〜6の局面において、前記光源ユニットは、前記発光素子から放出された光を反射するリフレクタを備える。
そのため、発光素子の光を無駄にすることなく車両用前照灯の前方側を効率的に照射できる。
【0014】
<第8の局面>
第8の局面は、第1〜7の局面において、ロービーム用の前記光源ユニットと、ハイビーム用の前記光源ユニットとを備える。
そのため、ロービーム用の光源ユニットとハイビーム用の光源ユニットとを、1個の車両用前照灯に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)は、本発明を具体化した第1実施形態の車両用前照灯10の上面図。図1(B)は車両用前照灯10の正面図。図1(C)は車両用前照灯10の右側面図。
【図2】車両用前照灯10を構成するランプユニット11の上面図。
【図3】ランプユニット11の正面図。
【図4】ランプユニット11の右側面図。
【図5】ランプユニット11の背面図。
【図6】ランプユニット11の要部断面図であり、図3におけるα−α矢線断面図。
【図7】ランプユニット11の要部断面図であり、図3におけるβ−β矢線断面図。
【図8】図8(A)は、車両用前照灯10を構成する光軸調整用フレーム20の上面図。図8(B)は光軸調整用フレーム20の正面図。図8(C)は光軸調整用フレーム20の右側面図。
【図9】図9(A)は、本発明を具体化した第2実施形態の車両用前照灯50の上面図。図9(B)は車両用前照灯50の正面図。図9(C)は車両用前照灯50の右側面図。
【図10】車両用前照灯50を構成するランプユニット51の上面図。
【図11】ランプユニット51の正面図。
【図12】ランプユニット51の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態の車両用前照灯10について、図1〜図8を参照して説明する。
車両用前照灯10は、ランプユニット11および光軸調整用フレーム(エイミングベース)20から構成され、車両(図示略)の前方部に取り付けられる。
【0018】
[ランプユニット11の構成]
図1〜図7に示すように、ランプユニット(灯具本体)11は、ヒートシンク12、アウタレンズ13(突条13a、接着剤13b)、灯室S、光源ユニット14(発光素子14a、リフレクタ14b、レンズホルダー14c、投影レンズ14d)、光源ユニット15(発光素子15a、リフレクタ15b)、回路ケース16、回路基板17、配線ケーブル18などから構成されている。
【0019】
ヒートシンク12は高い熱伝導性および導電性を有する材料(例えば、金属材料、導電性合成樹脂材料など)によって一体形成されており、壁部12a、光源取付部12b、放熱フィン部12c、呼吸孔(通気孔)12d、配線挿通孔12e、防水キャップ12f、連結部12g〜12i、取付溝12jなどから構成されている。
壁部12aは矩形平板状を成し、壁部12aの正面側(表面側)には光源取付部12bが突設され、壁部12aの背面側(裏面側)には放熱フィン部12cが突設されてる。そして、壁部12aは、車両用前照灯10の光軸方向に対して略垂直方向に延びている。
【0020】
光源取付部12bは、矩形平板状を成し、壁部12aに対して略垂直方向に突出されている。
光源取付部12bの上部側には光源ユニット(光学部材)14が取付固定され、光源取付部12bの下部側には光源ユニット15が取付固定されている。
放熱フィン部12cは、ランプユニット11の上下方向に延出された矩形平板状の複数枚(図示例では9枚)のフィンから構成されており、そのフィンはランプユニット11の横方向に間隔を空けて配置されている。
【0021】
呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは、放熱フィン部12cを構成するフィンの間にて、壁部12aの正面側と背面側とを繋ぐように貫通形成された円形の透孔から成る。
呼吸孔12dは、壁部12aの左上部および右下部にそれぞれ1個ずつ設けられている。
防水キャップ12fは、呼吸孔12dにおける壁部12aの背面側の開口部に被着され、呼吸孔12dにおける空気の通過を阻害せずに通気性を確保した状態で、呼吸孔12dの開口部からの水の浸入を防止して液密性を保持する。
【0022】
連結部12g〜12iは同一寸法形状の矩形平板状を成し、連結部12g〜12iの略中央部には光軸調整用フレーム20のボールジョイント25(図1および図8参照)が連結される矩形状の取付孔が貫通形成されている。
連結部12gは壁部12aの左上部近傍にて、連結部12hは壁部12aの左下部近傍にて、連結部12iは壁部12aの右下部近傍にて、それぞれ壁部12aの平面方向に突設されている。
取付溝12jは、壁部12aの正面側における外周近傍に沿って矩形環状に穿設されている。
【0023】
アウタレンズ13は略直方体箱状を成し、半透明な材料(例えば、ポリカーボネイトなどの合成樹脂材料)によって形成され、図6に示すように、アウタレンズ13の開口部周縁端面には突条13aが突設されている。
図6に示すように、アウタレンズ13の突条13aは、ヒートシンク12の取付溝12jに嵌合され、取付溝12j内に充填された接着剤13bによって突条13aと取付溝12jとが接着固定されることにより、アウタレンズ13はヒートシンク12に取付固定されている。
【0024】
そのため、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれた灯室Sが形成され、光源ユニット14,15および光源取付部12bは灯室Sに収容され、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは灯室Sの内部に設けられ、連結部12g〜12iは灯室Sの外部に設けられ、後述する回路ケース16および回路基板17は灯室Sの内部に設けられることになる。
【0025】
光源ユニット14はプロジェクタタイプのロービームランプであり、発光素子14a、リフレクタ14b、レンズホルダー14c、投影レンズ(アウタレンズ)14dなどから構成されている。
発光素子14aは、ヒートシンク12の光源取付部12bの上面側に取付固定されており、光源取付部12bの上方へ光を放出する。
尚、発光素子14aは、例えば、LED素子、無機EL素子、有機EL素子などの光半導体素子(半導体型光源)から構成されている。
【0026】
リフレクタ14bは光源取付部12bの上面側に取付固定されており、リフレクタ14bの内面側には発光素子14aから放出された光の一部を反射する凹型の反射面(図示略)が設けられている。
リフレクタ14bの第1焦点近傍には発光素子14aが配置され、リフレクタ14bの第2焦点は投影レンズ14dの後側の焦点と略一致する位置に設定されている。
略円筒状のレンズホルダー14cは、投影レンズ14dの外周縁に嵌合固定されている。
投影レンズ14dは、レンズホルダー14cを介してヒートシンク12の光源取付部12bの正面側端部に取付固定されている。
【0027】
光源ユニット14において、発光素子14aを点灯発光させると、発光素子14aから放出された光の一部はリフレクタ14bの反射面で反射され、その反射光と発光素子14aから放出された直射光とが投影レンズ14dによって集光されて車両用前照灯10の正面側へ向けて照射され、車両用前照灯10の前方側を照明する。
【0028】
光源ユニット15はプロジェクタタイプのハイビームランプであり、発光素子15aおよびリフレクタ15bなどから構成されている。
発光素子15aは、ヒートシンク12の光源取付部12bの下面側に取付固定されており、光源取付部12bの下方へ光を放出する。
尚、発光素子15aは、光源ユニット15の発光素子14aと同一構成である。
【0029】
リフレクタ15bは光源取付部12bの下面側に取付固定されており、リフレクタ15bの上面には凹型に湾曲した反射面が設けられている。
光源ユニット15において、発光素子15aを点灯発光させると、発光素子15aから放出された光はリフレクタ15bの反射面で反射されて車両用前照灯10の正面側へ向けて照射され、車両用前照灯10の前方側を照明する。
【0030】
回路ケース16は略直方体箱状を成し、導電性材料((例えば、金属材料、導電性合成樹脂材料など)によって形成され、図7に示すように、回路ケース16の開口部周縁はヒートシンク12の壁部12aの正面側に取付固定され、回路ケース16と壁部12aとは電気的に接続されている。
【0031】
回路基板17は、光源ユニット14,15に搭載された発光素子14a,15aを点灯させるための電子回路を構成する電子部品(図示略)が搭載されて回路パターンが配線形成されたプリント配線基板であり、発光素子14a,15aとリード線(図示略)によって接続されている。
図7に示すように、回路基板17は回路ケース16内にてヒートシンク12の壁部12aに取付固定され、回路基板17は回路ケース16および壁部12aに囲まれて収容されている。
回路基板17に接続された配線ケーブル18は、ヒートシンク12の配線挿通孔12eに挿通されてランプユニット11の外部へ引き出されている。そのため、配線ケーブル18は、回路基板17およびリード線を介して光源ユニット14,15の発光素子14a,15aと間接的に接続されている。
【0032】
[光軸調整用フレーム20の構成]
図1および図8に示すように、光軸調整用フレーム20は、フレーム本体21(開口部21a、バカ孔21b)、取付部材22a,22b、光軸調整用アクチュエータ23、エイミング軸24a〜24c、ボールジョイント25などから構成されている。
【0033】
フレーム本体21は矩形枠状を成し、フレーム本体21の開口部21aの内寸はランプユニット11のヒートシンク12の壁部12aの外寸より僅かに大きく形成されている。
取付部材22a,22bは同一寸法形状の矩形平板状を成し、取付部材22a,22bの略中央部には円形の取付孔が貫通形成されている。
取付部材22aはフレーム本体21の左下部近傍にて、取付部材22aはフレーム本体21の右上部近傍にて、それぞれフレーム本体21の平面方向に突設されている。
そして、取付部材22a,22bの取付孔に挿通されたボルト(図示略)によってフレーム本体21を車両の前方部(図示略)に取付固定することにより、光軸調整用フレーム20は車両の前方部に取付固定される。
【0034】
光軸調整用アクチュエータ23は、フレーム本体21の右下部の背面側に取付固定されており、光軸調整用アクチュエータ23とフレーム本体21との取付部分は防水構造になっている。
エイミング軸24aはフレーム本体21の左上部近傍にて、エイミング軸24bはフレーム本体21の左下部近傍にて、エイミング軸24cはフレーム本体21の右下部近傍にて、それぞれフレーム本体21に対して垂直方向に突出されている。
【0035】
エイミング軸24a,24bの背面側の基端部は、フレーム本体21に取付固定されている。
エイミング軸24cはフレーム本体21に貫通形成されたバカ孔21bに対して回動可能に挿通され、エイミング軸24cの背面側の基端部は光軸調整用アクチュエータ23に取り付けられている。
エイミング軸24a〜24cの先端にはボールジョイント25が取付られている。
【0036】
図1に示すように、車両用前照灯10を組み付けるには、ランプユニット11のヒートシンク12の放熱フィン部12cを、光軸調整用フレーム20の正面側からフレーム本体21の開口部21aに差し入れ、エイミング軸24a〜24cのボールジョイント25を、ヒートシンク12の連結部12g〜12iの背面側から連結させることにより、光軸調整用フレーム20に対してランプユニット11を脱落不能に取り付ける。
【0037】
そして、光軸調整用アクチュエータ23によってエイミング軸24cを伸縮させると、各エイミング軸24a〜24cおよびボールジョイント25と、ランプユニット11のヒートシンク12の連結部12g〜12iとの協働により、ランプユニット11が上下方向あるいは水平方向に傾動されることにより、車両用前照灯10の光軸調整が行われる。
【0038】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態の車両用前照灯10によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0039】
[1]車両用前照灯10のランプユニット11は、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれ、光源ユニット14,15および光源取付部12bが収容される灯室Sと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成されて防水キャップ12fが被着された防水構造の呼吸孔12dと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成された配線挿通孔12eと、配線挿通孔12eに挿通されて光源ユニット14,15と接続される配線ケーブル18と、灯室Sの外部にてヒートシンク12に取付固定された光軸調整用フレーム20(光軸調整機構)との連結部12g〜12iを備える。
【0040】
そのため、ランプユニット11の灯室Sを密閉された防水構造にすることが可能になり、ランプユニット11を傾動させる光軸調整用フレーム20をランプユニット11の外部に設けることにより、従来のランプハウジングを省くことができる。
そして、光軸調整用フレーム20が灯室Sの内部に無いため、灯室Sを小型化することが可能になり、車両用前照灯10の部品コストが削減されることから、小型で低コストな車両用前照灯10を実現できる。
【0041】
[2]光軸調整用フレーム20のエイミング軸24a〜24cはボールジョイント25を介して、ランプユニット11の連結部12g〜12iに連結されており、光軸調整用フレーム20はランプユニット11の外部に設置されている。
そのため、光軸調整用フレーム20に意匠部品を取り付けることが可能になり、車両用前照灯10の意匠性を向上できる。
また、光軸調整用フレーム20のフレーム本体21を車体の一部と一体形成すれば、車体の一部をフレーム本体21と共用することが可能になり、車両用前照灯10の更なる低コスト化を実現できる。
【0042】
[3]ランプユニット11のヒートシンク12は、光軸調整用フレーム20のフレーム本体21の開口部21aに差し込まれており、フレーム本体21はヒートシンク12を取り囲んで露出させている。
【0043】
そのため、ヒートシンク12の放熱性が光軸調整用フレーム20によって阻害されず、ヒートシンク12の放熱性を高めることが可能になるため、発光素子14a,15aの温度上昇を抑制して高寿命化を図ることができる。
また、図1(A)(C)に示すように、ランプユニット11と光軸調整用フレーム20とが重ね合わされた状態で配置されるため、車両用前照灯10の奥行寸法Dを小さくすることが可能になり、車両用前照灯10の更なる小型化を実現できる。
【0044】
[4]発光素子14a,15aを点灯させるための電子回路が形成された回路基板17は、回路ケース16内にてヒートシンク12の壁部12aに取付固定され、回路基板17は回路ケース16および壁部12aに囲まれて収容されている。
そして、ヒートシンク12および回路ケース16は導電性材料によって形成され、ヒートシンク12と回路ケース16は電気的に接続されている。
そのため、ヒートシンク12および回路ケース16により、回路基板17に対して電磁シールドを施すことが可能になり、回路基板17が発生した電磁波が車両の電子機器に悪影響を与えるのを防止できる。
【0045】
尚、回路ケース16を省いた場合には、ヒートシンク12が電磁シールド板として機能するため、回路基板17の背面側から放出される電磁波をヒートシンク12が遮蔽できる。
車両用前照灯10は車両の前方部に取り付けられ、車両の電子機器は車両用前照灯10の背面側に設けられているため、回路基板17の背面側から放出される電磁波を遮蔽できれば、車両の電子機器が当該電磁波の影響を受けることはほとんど無くなることから、回路ケース16を省いても同等の効果が得られる。
【0046】
[5]ヒートシンク12の壁部12aの正面側における外周近傍に沿って矩形環状に取付溝12jが穿設されており、アウタレンズ13の開口部周縁端面に突設された突条13aが取付溝12jに嵌合され、取付溝12j内に充填された接着剤13bによって突条13aと取付溝12jとが接着固定されることにより、アウタレンズ13はヒートシンク12に取付固定されている。
そのため、ヒートシンク12とアウタレンズ13との接続部分を完全に密閉することが可能になり、ランプユニット11の防水性を高めることができる。
【0047】
[6]複数枚の放熱フィンから構成された放熱フィン部12cは、灯室Sの外部であるヒートシンク12の背面側に突設されている。そして、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは放熱フィン部12cの放熱フィンの間に形成されている。
そのため、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eがヒートシンク12の構成に制約を与えることがなく、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eを最適な箇所に形成できる。
【0048】
ここで、呼吸孔12dは、灯室Sの内部と外部とを通気することにより内部に籠もった熱を外部へ放出するものであり、灯室Sの内部に効率的な空気の流れを発生させるために、ヒートシンク12の壁部12aの左上部および右下部にそれぞれ1個ずつ設けられている。
尚、呼吸孔12dを3個以上設ければ更に効果的であり、その場合には灯室Sの内部の空気の流れを勘案した箇所に設ければよい。
【0049】
[7]光源ユニット14,15はそれぞれ、発光素子14a,15aから放出された光を反射するリフレクタ14b,15bを備えるため、発光素子14a,15aの光を無駄にすることなく車両用前照灯10の前方側を効率的に照射できる。
【0050】
[8]ロービーム用の光源ユニット14と、ハイビーム用の光源ユニット15とを1個の車両用前照灯10に設けることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図9〜図12に示すように、第2実施形態の車両用前照灯50は、ランプユニット51および光軸調整用フレーム20から構成されている。
第2実施形態において、第1実施形態と異なるのは、ランプユニット51が横方向に並べて配置された2個の光源ユニット14を備えることだけである。
尚、2個の光源ユニット14を区別するため、符号の末尾に「L」「R」を付して図示する。
光源ユニット14Lはハイビーム用であり、光源ユニット14Rはロービーム用である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0052】
本発明は、前記各局面および前記実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0053】
10,50…車両用前照灯
11,51…ランプユニット11
20…光軸調整用フレーム(光軸調整機構)
12…ヒートシンク
13…アウタレンズ
13a…アウタレンズ13の突条
13b…接着剤
14,14L,14R…光源ユニット
14a,15a…発光素子
14b,15b…リフレクタ
16…回路ケース
17…回路基板
18…配線ケーブル
12a…ヒートシンク12の壁部
12b…ヒートシンク12の光源取付部12b
12c…ヒートシンク12の放熱フィン部
12d…呼吸孔
12e…配線挿通孔
12f…防水キャップ
12g〜12i…ヒートシンク12の連結部
12j…ヒートシンク12の取付溝
S…灯室
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDなどの発光素子を用いたランプでは、発光素子の長寿命化を図るために温度上昇を抑制しなければならず、ヒートシンクを設ける必要がある。
また、車両用前照灯(ヘッドランプ、フォグランプ)は、光軸調整を可能にすることが法規により義務付けられており、光軸調整機構を設ける必要がある。
従来の車両用前照灯(車両用灯具)では、発光素子が搭載された光源ユニット(灯具ユニット)に取付固定されたヒートシンク(放熱部材)に光軸調整機構を連結し、これら(光源ユニット、ヒートシンク、光軸調整機構)をランプハウジングとアウタレンズとで形成される密閉された防水構造の灯室内に配設していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165536号公報(段落[0020]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用前照灯では、光源ユニットとヒートシンクの一体物が光軸調整機構によって灯室内で傾動されることから、光源ユニットおよびヒートシンクがランプハウジングやアウタレンズに干渉するのを防ぐため、灯室が大型化するという問題があった。
そして、ランプハウジングとアウタレンズとで形成される灯室が大型化すると、車両用前照灯の部品コストが増大するという問題もあった。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、小型で低コストな車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0006】
<第1の局面>
第1の局面は、
発光素子が搭載された光源ユニットと、
前記光源ユニットが取付固定される光源取付部を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンクに取付固定されたアウタレンズと、
前記ヒートシンクおよび前記アウタレンズによって囲まれ、前記光源ユニットおよび前記光源取付部が収容される灯室と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された防水構造の呼吸孔と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された配線挿通孔と、
外部から前記配線挿通孔に挿通されて前記光源ユニットと接続される配線ケーブルと、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに取付固定された光軸調整機構との連結部とを備えるランプユニットが設けられた車両用前照灯である。
【0007】
第1の局面によれば、ランプユニットの灯室を密閉された防水構造にすることが可能になり、ランプユニットを傾動させる光軸調整機構をランプユニットの外部に設けることにより、従来のランプハウジングを省くことができる。
そして、光軸調整機構が灯室の内部に無いため、灯室を小型化することが可能になり、車両用前照灯の部品コストが削減されることから、小型で低コストな車両用前照灯を実現できる。
【0008】
<第2の局面>
第2の局面は、第1の局面において、前記連結部に連結され、前記ランプユニットを傾動させて光軸調整を行う光軸調整機構を備える。
そのため、光軸調整機構に意匠部品を取り付けることが可能になり、車両用前照灯の意匠性を向上できる。
また、光軸調整機構を車体の一部と一体形成すれば、車体の一部を光軸調整機構と共用することが可能になり、車両用前照灯の更なる低コスト化を実現できる。
【0009】
<第3の局面>
第3の局面は、第2の局面において、前記光軸調整機構は、前記ヒートシンクを取り囲んで露出させるフレーム本体を備える。
そのため、ヒートシンクの放熱性が光軸調整機構によって阻害されず、ヒートシンクの放熱性を高めることが可能になるため、発光素子の温度上昇を抑制して高寿命化を図ることができる。
また、ランプユニットと光軸調整機構とが重ね合わされた状態で配置されるため、車両用前照灯の奥行寸法を小さくすることが可能になり、車両用前照灯の更なる小型化を実現できる。
【0010】
<第4の局面>
第4の局面は、第1〜3の局面において、前記発光素子を点灯させるための電子回路が形成され、前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに取り付けられた回路基板を備える。
そのため、ヒートシンクを導電性材料によって形成すれば、ヒートシンクが電磁シールド板として機能するため、回路基板の背面側から放出される電磁波をヒートシンクが遮蔽できる。
ここで、車両用前照灯は車両の前方部に取り付けられ、車両の電子機器は車両用前照灯の背面側に設けられているため、回路基板の背面側から放出される電磁波を遮蔽できれば、車両の電子機器が当該電磁波の影響を受けることはほとんど無くなることから、当該電磁波が車両の電子機器に悪影響を与えるのを防止できる。
【0011】
<第5の局面>
第5の局面は、第1〜4の局面において、前記ヒートシンクの外周縁に沿って環状に形成された取付溝を備え、前記アウタレンズの周縁が前記取付溝に嵌合されて接着固定される。
そのため、ヒートシンクとアウタレンズとの接続部分を完全に密閉することが可能になり、ランプユニットの防水性を高めることができる。
【0012】
<第6の局面>
第6の局面は、第1〜5の局面において、前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに突設された複数枚の放熱フィンを備え、前記呼吸孔および前記配線挿通孔は前記放熱フィンの間に形成される。
そのため、呼吸孔および配線挿通孔がヒートシンクの構成に制約を与えることがなく、呼吸孔および配線挿通孔を最適な箇所に形成できる。
【0013】
<第7の局面>
第7の局面は、第1〜6の局面において、前記光源ユニットは、前記発光素子から放出された光を反射するリフレクタを備える。
そのため、発光素子の光を無駄にすることなく車両用前照灯の前方側を効率的に照射できる。
【0014】
<第8の局面>
第8の局面は、第1〜7の局面において、ロービーム用の前記光源ユニットと、ハイビーム用の前記光源ユニットとを備える。
そのため、ロービーム用の光源ユニットとハイビーム用の光源ユニットとを、1個の車両用前照灯に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)は、本発明を具体化した第1実施形態の車両用前照灯10の上面図。図1(B)は車両用前照灯10の正面図。図1(C)は車両用前照灯10の右側面図。
【図2】車両用前照灯10を構成するランプユニット11の上面図。
【図3】ランプユニット11の正面図。
【図4】ランプユニット11の右側面図。
【図5】ランプユニット11の背面図。
【図6】ランプユニット11の要部断面図であり、図3におけるα−α矢線断面図。
【図7】ランプユニット11の要部断面図であり、図3におけるβ−β矢線断面図。
【図8】図8(A)は、車両用前照灯10を構成する光軸調整用フレーム20の上面図。図8(B)は光軸調整用フレーム20の正面図。図8(C)は光軸調整用フレーム20の右側面図。
【図9】図9(A)は、本発明を具体化した第2実施形態の車両用前照灯50の上面図。図9(B)は車両用前照灯50の正面図。図9(C)は車両用前照灯50の右側面図。
【図10】車両用前照灯50を構成するランプユニット51の上面図。
【図11】ランプユニット51の正面図。
【図12】ランプユニット51の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した各実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、各実施形態において、同一の構成部材および構成要素については符号を等しくすると共に、同一内容の箇所については重複説明を省略してある。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態の車両用前照灯10について、図1〜図8を参照して説明する。
車両用前照灯10は、ランプユニット11および光軸調整用フレーム(エイミングベース)20から構成され、車両(図示略)の前方部に取り付けられる。
【0018】
[ランプユニット11の構成]
図1〜図7に示すように、ランプユニット(灯具本体)11は、ヒートシンク12、アウタレンズ13(突条13a、接着剤13b)、灯室S、光源ユニット14(発光素子14a、リフレクタ14b、レンズホルダー14c、投影レンズ14d)、光源ユニット15(発光素子15a、リフレクタ15b)、回路ケース16、回路基板17、配線ケーブル18などから構成されている。
【0019】
ヒートシンク12は高い熱伝導性および導電性を有する材料(例えば、金属材料、導電性合成樹脂材料など)によって一体形成されており、壁部12a、光源取付部12b、放熱フィン部12c、呼吸孔(通気孔)12d、配線挿通孔12e、防水キャップ12f、連結部12g〜12i、取付溝12jなどから構成されている。
壁部12aは矩形平板状を成し、壁部12aの正面側(表面側)には光源取付部12bが突設され、壁部12aの背面側(裏面側)には放熱フィン部12cが突設されてる。そして、壁部12aは、車両用前照灯10の光軸方向に対して略垂直方向に延びている。
【0020】
光源取付部12bは、矩形平板状を成し、壁部12aに対して略垂直方向に突出されている。
光源取付部12bの上部側には光源ユニット(光学部材)14が取付固定され、光源取付部12bの下部側には光源ユニット15が取付固定されている。
放熱フィン部12cは、ランプユニット11の上下方向に延出された矩形平板状の複数枚(図示例では9枚)のフィンから構成されており、そのフィンはランプユニット11の横方向に間隔を空けて配置されている。
【0021】
呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは、放熱フィン部12cを構成するフィンの間にて、壁部12aの正面側と背面側とを繋ぐように貫通形成された円形の透孔から成る。
呼吸孔12dは、壁部12aの左上部および右下部にそれぞれ1個ずつ設けられている。
防水キャップ12fは、呼吸孔12dにおける壁部12aの背面側の開口部に被着され、呼吸孔12dにおける空気の通過を阻害せずに通気性を確保した状態で、呼吸孔12dの開口部からの水の浸入を防止して液密性を保持する。
【0022】
連結部12g〜12iは同一寸法形状の矩形平板状を成し、連結部12g〜12iの略中央部には光軸調整用フレーム20のボールジョイント25(図1および図8参照)が連結される矩形状の取付孔が貫通形成されている。
連結部12gは壁部12aの左上部近傍にて、連結部12hは壁部12aの左下部近傍にて、連結部12iは壁部12aの右下部近傍にて、それぞれ壁部12aの平面方向に突設されている。
取付溝12jは、壁部12aの正面側における外周近傍に沿って矩形環状に穿設されている。
【0023】
アウタレンズ13は略直方体箱状を成し、半透明な材料(例えば、ポリカーボネイトなどの合成樹脂材料)によって形成され、図6に示すように、アウタレンズ13の開口部周縁端面には突条13aが突設されている。
図6に示すように、アウタレンズ13の突条13aは、ヒートシンク12の取付溝12jに嵌合され、取付溝12j内に充填された接着剤13bによって突条13aと取付溝12jとが接着固定されることにより、アウタレンズ13はヒートシンク12に取付固定されている。
【0024】
そのため、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれた灯室Sが形成され、光源ユニット14,15および光源取付部12bは灯室Sに収容され、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは灯室Sの内部に設けられ、連結部12g〜12iは灯室Sの外部に設けられ、後述する回路ケース16および回路基板17は灯室Sの内部に設けられることになる。
【0025】
光源ユニット14はプロジェクタタイプのロービームランプであり、発光素子14a、リフレクタ14b、レンズホルダー14c、投影レンズ(アウタレンズ)14dなどから構成されている。
発光素子14aは、ヒートシンク12の光源取付部12bの上面側に取付固定されており、光源取付部12bの上方へ光を放出する。
尚、発光素子14aは、例えば、LED素子、無機EL素子、有機EL素子などの光半導体素子(半導体型光源)から構成されている。
【0026】
リフレクタ14bは光源取付部12bの上面側に取付固定されており、リフレクタ14bの内面側には発光素子14aから放出された光の一部を反射する凹型の反射面(図示略)が設けられている。
リフレクタ14bの第1焦点近傍には発光素子14aが配置され、リフレクタ14bの第2焦点は投影レンズ14dの後側の焦点と略一致する位置に設定されている。
略円筒状のレンズホルダー14cは、投影レンズ14dの外周縁に嵌合固定されている。
投影レンズ14dは、レンズホルダー14cを介してヒートシンク12の光源取付部12bの正面側端部に取付固定されている。
【0027】
光源ユニット14において、発光素子14aを点灯発光させると、発光素子14aから放出された光の一部はリフレクタ14bの反射面で反射され、その反射光と発光素子14aから放出された直射光とが投影レンズ14dによって集光されて車両用前照灯10の正面側へ向けて照射され、車両用前照灯10の前方側を照明する。
【0028】
光源ユニット15はプロジェクタタイプのハイビームランプであり、発光素子15aおよびリフレクタ15bなどから構成されている。
発光素子15aは、ヒートシンク12の光源取付部12bの下面側に取付固定されており、光源取付部12bの下方へ光を放出する。
尚、発光素子15aは、光源ユニット15の発光素子14aと同一構成である。
【0029】
リフレクタ15bは光源取付部12bの下面側に取付固定されており、リフレクタ15bの上面には凹型に湾曲した反射面が設けられている。
光源ユニット15において、発光素子15aを点灯発光させると、発光素子15aから放出された光はリフレクタ15bの反射面で反射されて車両用前照灯10の正面側へ向けて照射され、車両用前照灯10の前方側を照明する。
【0030】
回路ケース16は略直方体箱状を成し、導電性材料((例えば、金属材料、導電性合成樹脂材料など)によって形成され、図7に示すように、回路ケース16の開口部周縁はヒートシンク12の壁部12aの正面側に取付固定され、回路ケース16と壁部12aとは電気的に接続されている。
【0031】
回路基板17は、光源ユニット14,15に搭載された発光素子14a,15aを点灯させるための電子回路を構成する電子部品(図示略)が搭載されて回路パターンが配線形成されたプリント配線基板であり、発光素子14a,15aとリード線(図示略)によって接続されている。
図7に示すように、回路基板17は回路ケース16内にてヒートシンク12の壁部12aに取付固定され、回路基板17は回路ケース16および壁部12aに囲まれて収容されている。
回路基板17に接続された配線ケーブル18は、ヒートシンク12の配線挿通孔12eに挿通されてランプユニット11の外部へ引き出されている。そのため、配線ケーブル18は、回路基板17およびリード線を介して光源ユニット14,15の発光素子14a,15aと間接的に接続されている。
【0032】
[光軸調整用フレーム20の構成]
図1および図8に示すように、光軸調整用フレーム20は、フレーム本体21(開口部21a、バカ孔21b)、取付部材22a,22b、光軸調整用アクチュエータ23、エイミング軸24a〜24c、ボールジョイント25などから構成されている。
【0033】
フレーム本体21は矩形枠状を成し、フレーム本体21の開口部21aの内寸はランプユニット11のヒートシンク12の壁部12aの外寸より僅かに大きく形成されている。
取付部材22a,22bは同一寸法形状の矩形平板状を成し、取付部材22a,22bの略中央部には円形の取付孔が貫通形成されている。
取付部材22aはフレーム本体21の左下部近傍にて、取付部材22aはフレーム本体21の右上部近傍にて、それぞれフレーム本体21の平面方向に突設されている。
そして、取付部材22a,22bの取付孔に挿通されたボルト(図示略)によってフレーム本体21を車両の前方部(図示略)に取付固定することにより、光軸調整用フレーム20は車両の前方部に取付固定される。
【0034】
光軸調整用アクチュエータ23は、フレーム本体21の右下部の背面側に取付固定されており、光軸調整用アクチュエータ23とフレーム本体21との取付部分は防水構造になっている。
エイミング軸24aはフレーム本体21の左上部近傍にて、エイミング軸24bはフレーム本体21の左下部近傍にて、エイミング軸24cはフレーム本体21の右下部近傍にて、それぞれフレーム本体21に対して垂直方向に突出されている。
【0035】
エイミング軸24a,24bの背面側の基端部は、フレーム本体21に取付固定されている。
エイミング軸24cはフレーム本体21に貫通形成されたバカ孔21bに対して回動可能に挿通され、エイミング軸24cの背面側の基端部は光軸調整用アクチュエータ23に取り付けられている。
エイミング軸24a〜24cの先端にはボールジョイント25が取付られている。
【0036】
図1に示すように、車両用前照灯10を組み付けるには、ランプユニット11のヒートシンク12の放熱フィン部12cを、光軸調整用フレーム20の正面側からフレーム本体21の開口部21aに差し入れ、エイミング軸24a〜24cのボールジョイント25を、ヒートシンク12の連結部12g〜12iの背面側から連結させることにより、光軸調整用フレーム20に対してランプユニット11を脱落不能に取り付ける。
【0037】
そして、光軸調整用アクチュエータ23によってエイミング軸24cを伸縮させると、各エイミング軸24a〜24cおよびボールジョイント25と、ランプユニット11のヒートシンク12の連結部12g〜12iとの協働により、ランプユニット11が上下方向あるいは水平方向に傾動されることにより、車両用前照灯10の光軸調整が行われる。
【0038】
[第1実施形態の作用・効果]
第1実施形態の車両用前照灯10によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0039】
[1]車両用前照灯10のランプユニット11は、ヒートシンク12およびアウタレンズ13によって囲まれ、光源ユニット14,15および光源取付部12bが収容される灯室Sと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成されて防水キャップ12fが被着された防水構造の呼吸孔12dと、灯室Sの内部にてヒートシンク12に貫通形成された配線挿通孔12eと、配線挿通孔12eに挿通されて光源ユニット14,15と接続される配線ケーブル18と、灯室Sの外部にてヒートシンク12に取付固定された光軸調整用フレーム20(光軸調整機構)との連結部12g〜12iを備える。
【0040】
そのため、ランプユニット11の灯室Sを密閉された防水構造にすることが可能になり、ランプユニット11を傾動させる光軸調整用フレーム20をランプユニット11の外部に設けることにより、従来のランプハウジングを省くことができる。
そして、光軸調整用フレーム20が灯室Sの内部に無いため、灯室Sを小型化することが可能になり、車両用前照灯10の部品コストが削減されることから、小型で低コストな車両用前照灯10を実現できる。
【0041】
[2]光軸調整用フレーム20のエイミング軸24a〜24cはボールジョイント25を介して、ランプユニット11の連結部12g〜12iに連結されており、光軸調整用フレーム20はランプユニット11の外部に設置されている。
そのため、光軸調整用フレーム20に意匠部品を取り付けることが可能になり、車両用前照灯10の意匠性を向上できる。
また、光軸調整用フレーム20のフレーム本体21を車体の一部と一体形成すれば、車体の一部をフレーム本体21と共用することが可能になり、車両用前照灯10の更なる低コスト化を実現できる。
【0042】
[3]ランプユニット11のヒートシンク12は、光軸調整用フレーム20のフレーム本体21の開口部21aに差し込まれており、フレーム本体21はヒートシンク12を取り囲んで露出させている。
【0043】
そのため、ヒートシンク12の放熱性が光軸調整用フレーム20によって阻害されず、ヒートシンク12の放熱性を高めることが可能になるため、発光素子14a,15aの温度上昇を抑制して高寿命化を図ることができる。
また、図1(A)(C)に示すように、ランプユニット11と光軸調整用フレーム20とが重ね合わされた状態で配置されるため、車両用前照灯10の奥行寸法Dを小さくすることが可能になり、車両用前照灯10の更なる小型化を実現できる。
【0044】
[4]発光素子14a,15aを点灯させるための電子回路が形成された回路基板17は、回路ケース16内にてヒートシンク12の壁部12aに取付固定され、回路基板17は回路ケース16および壁部12aに囲まれて収容されている。
そして、ヒートシンク12および回路ケース16は導電性材料によって形成され、ヒートシンク12と回路ケース16は電気的に接続されている。
そのため、ヒートシンク12および回路ケース16により、回路基板17に対して電磁シールドを施すことが可能になり、回路基板17が発生した電磁波が車両の電子機器に悪影響を与えるのを防止できる。
【0045】
尚、回路ケース16を省いた場合には、ヒートシンク12が電磁シールド板として機能するため、回路基板17の背面側から放出される電磁波をヒートシンク12が遮蔽できる。
車両用前照灯10は車両の前方部に取り付けられ、車両の電子機器は車両用前照灯10の背面側に設けられているため、回路基板17の背面側から放出される電磁波を遮蔽できれば、車両の電子機器が当該電磁波の影響を受けることはほとんど無くなることから、回路ケース16を省いても同等の効果が得られる。
【0046】
[5]ヒートシンク12の壁部12aの正面側における外周近傍に沿って矩形環状に取付溝12jが穿設されており、アウタレンズ13の開口部周縁端面に突設された突条13aが取付溝12jに嵌合され、取付溝12j内に充填された接着剤13bによって突条13aと取付溝12jとが接着固定されることにより、アウタレンズ13はヒートシンク12に取付固定されている。
そのため、ヒートシンク12とアウタレンズ13との接続部分を完全に密閉することが可能になり、ランプユニット11の防水性を高めることができる。
【0047】
[6]複数枚の放熱フィンから構成された放熱フィン部12cは、灯室Sの外部であるヒートシンク12の背面側に突設されている。そして、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eは放熱フィン部12cの放熱フィンの間に形成されている。
そのため、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eがヒートシンク12の構成に制約を与えることがなく、呼吸孔12dおよび配線挿通孔12eを最適な箇所に形成できる。
【0048】
ここで、呼吸孔12dは、灯室Sの内部と外部とを通気することにより内部に籠もった熱を外部へ放出するものであり、灯室Sの内部に効率的な空気の流れを発生させるために、ヒートシンク12の壁部12aの左上部および右下部にそれぞれ1個ずつ設けられている。
尚、呼吸孔12dを3個以上設ければ更に効果的であり、その場合には灯室Sの内部の空気の流れを勘案した箇所に設ければよい。
【0049】
[7]光源ユニット14,15はそれぞれ、発光素子14a,15aから放出された光を反射するリフレクタ14b,15bを備えるため、発光素子14a,15aの光を無駄にすることなく車両用前照灯10の前方側を効率的に照射できる。
【0050】
[8]ロービーム用の光源ユニット14と、ハイビーム用の光源ユニット15とを1個の車両用前照灯10に設けることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図9〜図12に示すように、第2実施形態の車両用前照灯50は、ランプユニット51および光軸調整用フレーム20から構成されている。
第2実施形態において、第1実施形態と異なるのは、ランプユニット51が横方向に並べて配置された2個の光源ユニット14を備えることだけである。
尚、2個の光源ユニット14を区別するため、符号の末尾に「L」「R」を付して図示する。
光源ユニット14Lはハイビーム用であり、光源ユニット14Rはロービーム用である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0052】
本発明は、前記各局面および前記実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0053】
10,50…車両用前照灯
11,51…ランプユニット11
20…光軸調整用フレーム(光軸調整機構)
12…ヒートシンク
13…アウタレンズ
13a…アウタレンズ13の突条
13b…接着剤
14,14L,14R…光源ユニット
14a,15a…発光素子
14b,15b…リフレクタ
16…回路ケース
17…回路基板
18…配線ケーブル
12a…ヒートシンク12の壁部
12b…ヒートシンク12の光源取付部12b
12c…ヒートシンク12の放熱フィン部
12d…呼吸孔
12e…配線挿通孔
12f…防水キャップ
12g〜12i…ヒートシンク12の連結部
12j…ヒートシンク12の取付溝
S…灯室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が搭載された光源ユニットと、
前記光源ユニットが取付固定される光源取付部を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンクに取付固定されたアウタレンズと、
前記ヒートシンクおよび前記アウタレンズによって囲まれ、前記光源ユニットおよび前記光源取付部が収容される灯室と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された防水構造の呼吸孔と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された配線挿通孔と、
外部から前記配線挿通孔に挿通されて前記光源ユニットと接続される配線ケーブルと、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに取付固定された光軸調整機構との連結部と
を備えるランプユニットが設けられた車両用前照灯。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記連結部に連結され、前記ランプユニットを傾動させて光軸調整を行う光軸調整機構を備える車両用前照灯。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用前照灯において、
前記光軸調整機構は、前記ヒートシンクを取り囲んで露出させるフレーム本体を備える車両用前照灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記発光素子を点灯させるための電子回路が形成され、前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに取り付けられた回路基板を備える車両用前照灯。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記ヒートシンクの外周縁に沿って環状に形成された取付溝を備え、
前記アウタレンズの周縁が前記取付溝に嵌合されて接着固定される車両用前照灯。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに突設された複数枚の放熱フィンを備え、
前記呼吸孔および前記配線挿通孔は前記放熱フィンの間に形成される車両用前照灯。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記光源ユニットは、前記発光素子から放出された光を反射するリフレクタを備える車両用前照灯。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
ロービーム用の前記光源ユニットと、ハイビーム用の前記光源ユニットとを備える車両用前照灯。
【請求項1】
発光素子が搭載された光源ユニットと、
前記光源ユニットが取付固定される光源取付部を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンクに取付固定されたアウタレンズと、
前記ヒートシンクおよび前記アウタレンズによって囲まれ、前記光源ユニットおよび前記光源取付部が収容される灯室と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された防水構造の呼吸孔と、
前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに貫通形成された配線挿通孔と、
外部から前記配線挿通孔に挿通されて前記光源ユニットと接続される配線ケーブルと、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに取付固定された光軸調整機構との連結部と
を備えるランプユニットが設けられた車両用前照灯。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記連結部に連結され、前記ランプユニットを傾動させて光軸調整を行う光軸調整機構を備える車両用前照灯。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用前照灯において、
前記光軸調整機構は、前記ヒートシンクを取り囲んで露出させるフレーム本体を備える車両用前照灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記発光素子を点灯させるための電子回路が形成され、前記灯室の内部にて前記ヒートシンクに取り付けられた回路基板を備える車両用前照灯。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記ヒートシンクの外周縁に沿って環状に形成された取付溝を備え、
前記アウタレンズの周縁が前記取付溝に嵌合されて接着固定される車両用前照灯。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記灯室の外部にて前記ヒートシンクに突設された複数枚の放熱フィンを備え、
前記呼吸孔および前記配線挿通孔は前記放熱フィンの間に形成される車両用前照灯。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
前記光源ユニットは、前記発光素子から放出された光を反射するリフレクタを備える車両用前照灯。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用前照灯において、
ロービーム用の前記光源ユニットと、ハイビーム用の前記光源ユニットとを備える車両用前照灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−204168(P2012−204168A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68310(P2011−68310)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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