車両用動力補助装置
【課題】車両の小型、軽量化が図れる動力補助装置を提供することを課題とする。
【解決手段】発条55は、スイングアーム102、102に固定される発条ケース103に外端部が止められ、駆動輪12の回転中心に配置される発条ボス104に内端部が止められる。この発条ボス104の一端がハブ13に差し込まれる。発条ボス104とハブ13とは一方向クラッチ70で繋がれる。発条ボス104には、駆動ベベルギヤ53に噛み合う従動ベベルギヤ56が一体形成される。発条ボス104は、軸受105を介して発条ケース103に回転自在に支持される。
【効果】発条を駆動輪の側方に配置すると共に発条入力軸を駆動輪の車軸を兼ねるようにした。動力補助装置を駆動輪周りにまとめて配置することができ、動力補助装置の小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【解決手段】発条55は、スイングアーム102、102に固定される発条ケース103に外端部が止められ、駆動輪12の回転中心に配置される発条ボス104に内端部が止められる。この発条ボス104の一端がハブ13に差し込まれる。発条ボス104とハブ13とは一方向クラッチ70で繋がれる。発条ボス104には、駆動ベベルギヤ53に噛み合う従動ベベルギヤ56が一体形成される。発条ボス104は、軸受105を介して発条ケース103に回転自在に支持される。
【効果】発条を駆動輪の側方に配置すると共に発条入力軸を駆動輪の車軸を兼ねるようにした。動力補助装置を駆動輪周りにまとめて配置することができ、動力補助装置の小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発条を利用した車両用動力補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が減速する際に発生する運動エネルギーを蓄え、加速エネルギーに付与することで、燃料の消費量を抑える省エネルギー技術が実用に供されている。
運動エネルギーは回生モータで回収し、バッテリに蓄えることが広く行われているが、回生モータの設置やバッテリの大型化が必要となるため、自動二輪車等の小型車両においては、車両重量の増加に直結するため、改善が求められる。
【0003】
そこで、発条を利用した車両用動力補助装置が提案された(例えば、特許文献1(図1、図4)参照。)。
特許文献1の図1に示されるように、トランスミッション(100)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)からアウトプット軸(101)及びドライブシャフト(400)が延ばされ、これらのアウトプット軸(101)とドライブシャフト(400)との間に発条装置(200)及び遊星歯車機構(300)が介設されている。
【0004】
特許文献1の図4をも参照すれば、特許文献1の図1において、エネルギー回収時は摩擦材B1、B1で遊星歯車機構(300)のアウタリングを制動状態にし、クラッチC1を断状態にする。次に、アシスト時は摩擦材B1、B1を開放し、クラッチC1を接続状態して、発条装置(200)に蓄えてあるエネルギーを駆動輪へ供給する。
【0005】
発条装置(200)の他に、遊星歯車機構(300)と摩擦材B1、B1とクラッチC1とが必須であり、加えて、摩擦材B1、B1の移動機構やクラッチC1の断接制御機構が必要となり、装置が複雑且つ大型化してしまう。結果として、車両の小型、軽量化が図り難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−202167公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両の小型、軽量化が図れる動力補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、内燃機関の出力が変速機を介して駆動輪に伝達される車両に付属され、減速時に動力を発条に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関の出力に前記発条に蓄えた動力を加えることができる発条装置を備える車両用動力補助装置であって、
前記発条装置は、前記内燃機関のクランク軸へ前記動力を伝達する発条出力軸と、前記発条を巻き上げる発条入力軸とを有し、
前記変速機は、前記クランク軸で回される変速機入力軸と、前記駆動輪を駆動する変速機出力軸とを有し、
前記発条出力軸が前記クランク軸と同軸に配置され、前記発条入力軸が前記変速機入力軸と同軸に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、発条出力軸は、クランク軸より発条出力軸の回転速度が大きいときに接続状態になって発条出力軸からクランク軸へ動力が伝達され、クランク軸より発条出力軸の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチを介して前記クランク軸に繋がれていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、内燃機関の出力が変速機を介して駆動輪に伝達される車両に付属され、減速時に動力を発条に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関の出力に前記発条に蓄えた動力を加えることができる発条装置を備える車両用動力補助装置であって、
前記発条は、前記駆動輪の側方に配置され、前記駆動輪のハブに断接可能に接続され、
減速時に動力を前記発条に入力する発条入力軸は、前記駆動輪の車軸を兼ねていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、発条は、車体側に固定される発条ケースに外端部が止められ、駆動輪の回転中心に配置される発条ボスに内端部が止められ、
この発条ボスの一端が前記駆動輪のハブに差し込まれ、
発条ボスの一端は、前記ハブより発条ボスの回転速度が大きいときに接続状態になって発条ボスから径外方に前記ハブへ動力が伝達され、ハブより発条ボスの回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチを介して駆動輪のハブに断接可能に接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、発条入力軸には、発条が所定まで巻き上げられた後はスリップして減速時動力の伝達を止めるトルクリミッターが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、発条装置に、発条が巻き上げられる際に、発条出力軸又はハブが回転することを防止するストップ機構を備え、このストップ機構は、運転者が操作するアクセル操作子の発進又は加速操作に連動して解除されるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、発条へは、発条が巻き上げられる際に連結する噛み合いクラッチ機構を介して減速時の動力が伝達され、
変速機入力軸と発条入力軸との間、又は内燃機関で駆動されるドリブンスプロケットと発条入力軸との間に、内燃機関が減速操作されたことに起因して変速機入力軸又はドリブンスプロケットが減速されるが、発条入力軸が慣性力で回転が維持されることの運動の差により発条入力軸を軸方向へ移動して、噛み合いクラッチ機構を噛み合い状態にする軸スライド機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明では、軸スライド機構は、駆動輪のハブ内に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、発条出力軸をクランク軸と同軸に配置し、発条入力軸を変速機入力軸と同軸に配置する。
発条出力軸をクランク軸と同軸に配置し、発条入力軸を変速機入力軸と同軸に配置することで、発条装置を内燃機関に内蔵させることができる。クランク軸が車幅方向に延びる場合には、内燃機関の車長方向の長さを変えることなく、発条装置を内燃機関に内蔵させることができる。
発条装置のためのケーシング等を省くことができるため、発条装置を内燃機関と別に配置する場合に比べ、本発明によれば、車両の小型、軽量化が図れる。
【0017】
請求項2に係る発明では、一方向クラッチを設けたことにより、発条による動力の伝達が終わった後に、発条装置をクランク軸から分離することができ、通常運転時での機械的損失の増加を防止することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、発条を駆動輪の側方に配置すると共に発条入力軸を駆動輪の車軸を兼ねるようにした。車両用動力補助装置を駆動輪周りにまとめて配置することができ、車両用動力補助装置の小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【0019】
請求項4に係る発明では、発条ボスの一端は、駆動輪のハブに差し込まれ、一方向クラッチを介して駆動輪のハブに断接可能に接続されている。
仮に、駆動輪のハブに発条ボスを同軸に配置すると、駆動輪の車幅方向の幅が増大する。この点、本発明は発条ボスの一端を駆動輪のハブに差し込んだので、駆動輪の車幅方向の幅を減少させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、発条入力軸に、発条が所定まで巻き上げられた後はスリップするトルクリミッターが設けられている。トルクリミッターにより、発条の過度な巻き上げを防止することができ、発条の寿命を延ばすことができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、発条装置に、発条が巻き上げられる際に、発条出力軸又はハブが回転することを防止するストップ機構を備え、このストップ機構は、運転者が操作するアクセル操作子の発進又は加速操作に連動して解除される。
運転者のアクスル操作と同じタイミングで、発条装置から動力を駆動輪へ伝達することができる。ストップ機構操作レバーを別途設ける場合に比較して、本発明によれば、ストップ機構操作レバーが不要となり、且つ運転者の操作項目を少なくすることができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、軸スライド機構により、減速時にのみ発条が巻き上げられる。減速時以外は発条入力軸が、変速機入力軸又は変速機出力軸と分離されるため、発条入力軸の回転に伴って発生する機械的損失の発生を防止することができる。
また、クラッチ機構の制御を電気的に行うと、電気エネルギーが必要となるが、本発明ではクラッチ機構の断接は機械的に軸スライド機構で行うため、電気エネルギーが不要になり、バッテリの負担を軽減することができる
【0023】
請求項8に係る発明では、軸スライド機構を駆動輪のハブ内に収納する。
軸スライド機構を駆動輪のハブに内蔵することで、車両用動力補助装置の一層の小型化が達成でき、車両の一層の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係る動力補助装置を備える自動二輪車の平面図である。
【図2】実施例1に係る動力補助装置の構成図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】図2の5矢視図である。
【図6】図2の6矢視図である。
【図7】トルクリミッターの原理図である。
【図8】軸スライド機構の原理図である。
【図9】実施例1での通常運転時の作用図である。
【図10】減速開始時の作用図である。
【図11】減速中の作用図である。
【図12】動力補助時の作用図である。
【図13】実施例2に係る動力補助装置を備える自動二輪車の要部平面図である。
【図14】実施例2に係る動力補助装置の構成図である。
【図15】図14の15−15線断面図である。
【図16】図14の16−16線断面図である。
【図17】実施例2での通常運転時の作用図である。
【図18】減速中の作用図である。
【図19】動力補助時の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両10は、前輪11と、後輪である駆動輪12とを備え、前輪11と駆動輪12との間に内燃機関20を備え、前輪11の上にハンドル14を備え、このハンドル14にアクセル操作子15を備え、内燃機関20の上に燃料タンク16を備え、駆動輪12の上にシート17を備える自動二輪車である。内燃機関20は発条装置を備えている。アクセル操作子15は、手で操作するアクセルレバーの他、足で操作するアクセルペダルであっても良い。
【0027】
内燃機関20の構造を、次に説明する。
図2に示すように、内燃機関20は、シリンダ21と、このシリンダ21に摺動自在に収納されるピストン22と、ピストン22から延びるコンロッド23と、このコンロッド23で回されるクランク軸24と、このクランク軸の一端に設けられるACジェネレータ25とクランク軸24の他端に設けられる駆動ギヤ26とを、主要素とする。
【0028】
変速機30は、ギヤ群31を支える変速機入力軸32と、この変速機入力軸32に平行に配置されギヤ群31に選択的に噛み合うギヤ群33を支える変速機出力軸34と、この変速機出力軸34に設けられるドライブスプロケット35とを、主要素とする。
変速機入力軸32は一端にクラッチインナ37を備える。このクラッチインナ37に噛み合わせるクラッチアウタ38は、従動ギヤ39を備えており、この従動ギヤ39及び中間ギヤ41を介して駆動ギヤ26に連結される。
【0029】
このような内燃機関20及び変速機30に、車両用動力補助装置50が付設される。この車両用動力補助装置50は、発条装置51と、ストップ機構60と、一方向クラッチ70と、トルクリミッター75と、軸スライド機構80と、噛み合いクラッチ機構87とからなる。
【0030】
発条装置51は、クラッチアウタ38に、軸スライド機構80を介して連結される発条入力軸52と、この発条入力軸52の先端にトルクリミッター75を介して取付けられる駆動ベベルギヤ53と、発条入力軸52に平行に配置される発条出力軸54と、この発条出力軸54の端部に回巻される発条55と、この発条55を囲う従動ベベルギヤ56と、駆動ベベルギヤ53と従動ベベルギヤ56との間に配置される中間ベベルギヤ57とからなる。発条55はゼンマイや渦巻きばねとも呼ばれる。
【0031】
発条出力軸54をクランク軸24と同軸に配置し、発条入力軸52を変速機入力軸32と同軸に配置することで、発条装置51を内燃機関20のクランクケースに内蔵(又は付属)させることができる。自動二輪車では、一般にクランク軸24は車幅方向に延びる。この場合には、内燃機関20の車長方向の長さを変えることなく、発条装置51を内燃機関20に内蔵(又は付属)させることができる。
クランクケースに内蔵することにより発条装51置のためのケーシング等を省くことができる。発条装置51を内燃機関20と離れた位置に別に配置する場合に比べ、本発明によれば、車両の小型、軽量化が図れる。
【0032】
ストップ機構60は、図3に示すように、発条出力軸54に設けた鋸状板61と、この鋸状板61に形成される複数の凹部62の1つに嵌合するピン63と、このピン63を噛み合い側へ付勢する弾性部材64と、ピン63を噛み合いを解く方向へ引くアクセルワイヤ65とからなる。ピン63が凹部62に嵌合すると発条出力軸54は回転不能となり、ピン63が凹部62から外されると発条出力軸54は回転可能となる。弾性部材64は、クランクケース27を起点としてピン63を付勢する。
【0033】
発条55は、図4に示すように、発条55の内端部が発条出力軸54に係止され、外端部が従動ベベルギヤ56に係止される。従動ベベルギヤ56が、図面反時計廻りに回されると、発条55が巻き込まれ、発条55にエネルギーが蓄えられる。
【0034】
従動ベベルギヤ56は、図5に示すように、空転止め機構66で回転が制限される。空転止め機構66は、例えば、従動ベベルギヤ56側に設けるラチェット歯67と、クランクケース27に設けられる揺動爪68と、この揺動爪68を噛み合い側へ付勢するトーションばね69とからなる。このような機構をラチェット機構という。
従動ベベルギヤ56は、揺動爪68がラチェット歯67に噛み合うため、図面時計廻りに回転しない。
一方、従動ベベルギヤ56は、図面反時計廻りに回転しようとすると、揺動爪68が図面時計廻りに回転してラチェット歯67から外れ、回転が可能となる。
【0035】
一方向クラッチ70は、内輪と外輪とコマ(矩形断面の部品)とからなり、正転時にコマが内輪と外輪とに噛み合って動力伝達状態となり、逆転時にコマが内輪と外輪とスリップし動力が伝達できない状態になる。
原理はラチェット機構と同一であるため、ラチェット機構で説明を代用する。すなわち、図6に示すように、一方向クラッチ70は、発条出力軸54側に設けるラチェット歯71と、クランク軸端に設けられるカップ72に揺動自在に設けられる揺動爪73と、この揺動爪73を噛み合い側へ付勢するトーションばね74からなる。
【0036】
カップ72より発条出力軸54が早く図面反時計方向に回ると、揺動爪73がラチェット歯71に噛み合い、発条出力軸54でカップ72が回される。一方、カップ72が発条出力軸54より早く図面反時計方向に回ると、カップ72だけが回転する。
【0037】
トルクリミッター75は、図7に示すように、発条入力軸52の軸端にボルト76で止められる円板77と、この円板77へ駆動ベベルギヤ53を押圧する円錐ばね78と、この円錐ばね78を発条入力軸52に止めるトルク調節ナット79とからなる。このトルク調節ナット79を回して軸方向へ移動することで、駆動ベベルギヤ53と円板77及び駆動ベベルギヤ53と円錐ばね78との間で発生する摩擦力を調節することができる。
【0038】
摩擦力に半径を掛けたものが摩擦トルクとなり、この摩擦トルク以下のトルクが加わったときには発条入力軸52から駆動ベベルギヤ53へトルク(動力)の伝達が行われる。摩擦トルクを超える大きなトルクが加わったときには駆動ベベルギヤ53が空転し、発条入力軸52から駆動ベベルギヤ53へ過大なトルク(動力)の伝達は行われない。
【0039】
次に、軸スライド機構と噛み合いクラッチ機構の構造を説明する。
図8(a)に示すように、軸スライド機構80は、クラッチアウタ38に繋がり直角三角形状の三角歯81が付いている第1部材82と、この三角歯81に噛み合う三角歯83が付いており発条入力軸52に設けられる第2部材84と、クランクケース27を基点にして第2部材84を噛み合い方向へ付勢する弾性材85とからなる。
【0040】
噛み合いクラッチ機構87は、軸方向へは移動しない中間べベルギヤ57と、軸方向へ移動する駆動ベベルギヤ53とからなる。
(a)では、噛み合いクラッチ機構87が噛み合い状態にあって、第1・第2部材83、84が矢印方向に同じ速度で回転しているが、中間べベルギヤ57から駆動ベベルギヤ53が離れているため、噛み合いクラッチ機構87では動力の伝達は行われない。
次に、第1部材82の回転が停止される又は減速されると、第2部材84が回転するため、三角歯81に対して三角歯83が競り上がる。
【0041】
結果、(b)に示すように、発条入力軸52が移動し、中間べベルギヤ53に駆動ベベルギヤ53が噛み合い、噛み合いクラッチ機構87で動力の伝達が行われる。第2部材84は、第1部材82から分離して、第1部材82よりも高速で回転する。
【0042】
以上に説明した車両用動力補助装置の作用を次に説明する。
図9で通常運転の状態、図10で内燃機関の減速開始状態、図11でエネルギー蓄積の状態、図12で動力補助の状態を説明する。
【0043】
通常の運転では、図9に示すように、クランク軸24により、駆動ギヤ26及び中間ギヤ41を介してクラッチアウタ38が回され、変速機30を介してドライブスプロケット35が回され、チェーン88及びドリブンスプロケット89を介して駆動輪12が回される。この駆動輪12の回転方向は、自動二輪車の前進方向に合致する。発条入力軸52は空転し、発条出力軸54は回転しない。
【0044】
内燃機関20が減速状態になると、図10に示すように、第1部材82が減速され、第2部材84が回転を維持する。結果、第2部材84が矢印(1)のように軸方向に移動し、駆動ベベルギヤ53が中間ベベルギヤ57に噛み合う。
すると、図11に示すように、従動ベベルギヤ56が回され、発条55が巻き込まれる。
【0045】
図12に示すように、内燃機関20が始動されると、クランク軸24により第1部材82が回され、第1部材82に第2部材84が噛み合い、中間ベベルギヤ57から駆動ベベルギヤ53が離れる。始動中又は加速中に、運転者がアクセル操作子15を操作して、鋸状板61からピン63を抜くと、発条55により、発条出力軸54が回され、動力がクランク軸24へ付与される。
以上により、発進時や加速時に発条に蓄えた動力を、内燃機関の出力に加えられる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、名称は共通であるが、態様などに変更がある要素については、符号にBを付す。
【0047】
図13に示すように、内燃機関20の出力が変速機30を介して駆動輪12に伝達される。
そして、減速時に動力を発条55に蓄え、発進又は加速時に内燃機関20の出力に発条55に蓄えた動力を加えることができる車両用動力補助装置50Bが、駆動輪12の周りに備えられている。実施例1と共通要素は、符号を流用して、詳細な説明は省略する。
【0048】
発条55は駆動輪12の側方に配置され、図14に示すように、駆動輪12のハブ13に断接可能に接続さる。減速時に動力を発条55に入力する発条入力軸52は、駆動輪12の車軸を兼ねている。
すなわち、発条入力軸52に、軸スライド機構80の第2部材84が一体形成され、この第2部材84がハブ13に車軸方向に移動可能になるようにスプライン91で連結されている。軸スライド機構80の第1部材82は、軸受92を介して回転自在に発条入力軸52に支持され、側面にドリブンスプロケット85が固定される。
【0049】
発条入力軸52は、軸方向途中に逆転機構93を備える。逆転機構93は、ハブ13に設けられる収納凹部94に収納され、正転板95と、この正転板95の円錐面に噛み合い、発条入力軸52と直交する軸96廻りに回転する中間コマ97、97と、これらの中間コマ97、97で逆回転される逆転板98とからなる。正転板95と逆転板98は、中立ばね99、99により付勢され、軸力が付与されないときには、車幅方向の中立位置に保持される。
【0050】
発条55を駆動輪12の側方に(図では右側に)配置すると共に発条入力軸52を駆動輪12の車軸を兼ねるようにした。車両用動力補助装置50Bを駆動輪12周りにまとめて配置することができ、車両用動力補助装置50Bの小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【0051】
このような発条入力軸52にハブ13が軸受101、101を介して回転自在に支持される。発条入力軸52の端部に、トルクリミッター75を介して駆動ベベルギヤ53が取付けられる。
【0052】
発条55は、車体側の部材であるスイングアーム102に固定される発条ケース103に外端部が止められ、駆動輪12の回転中心に配置される発条ボス104に内端部が止められる。この発条ボス104の一端がハブ13に差し込まれる。発条ボス104とハブ13との間に一方向クラッチ70Bが介設される。
【0053】
仮に、駆動輪12のハブ13に発条ボス104を同軸に配置する(車幅方向に並べて直列に配置する)と、駆動輪12の車幅方向の幅が増大する。この点、本発明は発条ボス104の一端を駆動輪12のハブ13に差し込んだので、駆動輪12の車幅方向の幅を減少させることができる。
【0054】
発条ボス104には、駆動ベベルギヤ53に噛み合う従動ベベルギヤ56が一体形成される。
発条ボス104は、軸受105を介して発条ケース103に回転自在に支持される。
発条ボス104は、ストップ機構60B(詳細は、後述。)で回転止めがなされる。
【0055】
図15(a)に示すように、発条55の内端部は発条ボス104に止められ、発条55の外端部は発条ケース103に止められる。発条ケース103は非回転部材であり、発条ボス104が回転部材である。
【0056】
そして、発条ボス104にラチェット歯106が設けられ、発条ケース103に揺動爪107が揺動可能に設けられ、この揺動爪107はトーションばね108で噛み合い方向へ付勢される。揺動爪107はワイヤ109で引くことにより、噛み合いが解除される。
すなわち、ラチェット歯106と揺動爪107とトーションばね108とワイヤ109とで、ストップ機構60Bが構成される。
【0057】
ワイヤ109は運転者が操作するアクセルグリップに繋がれたアクセルワイヤであってもよい。または、ワイヤ109は、アクセルグリップとは別に設けられ運転者が操作するストップ機構操作レバーに繋がれたものであってもよい。
発条ボス104が、図面反時計方向に回されると、発条55が巻き上げられる。
この際、揺動爪107が発条ボス104の逆転を防止する役割を果たす。
【0058】
(b)に示すように、所定まで発条55が巻き上げられる。ワイヤ109を引いて、揺動爪17をラチェット歯106から外すと、発条55により発条ボス104が図面時計方向へ回される。
【0059】
図16に示すように、発条ボス104とハブ13との間に一方向クラッチ70Bが介設される。
この一方向クラッチ70Bは、図6で説明したように、内輪と外輪とコマ(矩形断面の部品)とからなり、正転時にコマが内輪と外輪とに噛み合って動力伝達状態となり、逆転時にコマが内輪と外輪とスリップし動力が伝達できない状態になる。
原理はラチェット機構と同一であるため、ラチェット機構で説明を代用する。すなわち、一方向クラッチ70Bは、発条ボス104側に設けるラチェット歯71と、ハブ13に揺動自在に設けられる揺動爪73と、この揺動爪73を噛み合い側へ付勢するトーションばね74からなる。
【0060】
発条ボス104は、ハブ13より図面時計廻りの回転速度が大きいときに接続状態になって発条ボス104から径外方へハブ13へ動力が伝達され、ハブ13より発条ボス104の回転速度が小さいときには分離状態になる。
【0061】
以上に説明した動力補助装置の作用を次に説明する。
図17で通常運転の状態、図18で内燃機関の減速状態、図19で動力補助の状態を説明する。
【0062】
通常運転では、図17において、ドリブンスプロケット89が車両前進側へ回されと、軸スライド機構80は噛み合い、第2部材84を介してハブ13が回される。従動ベベルギヤ56から駆動ベベルギヤ53が離れているため、発条55が巻き上げられることはない。
【0063】
内燃機関が減速されると、図18に示すように、減速する第1部材82に対して、第2部材84は回転が継続され、第1部材82から第2部材84が離れ、第2部材84と共に発条入力軸52及び駆動ベベルギヤ53が、図面右方向(駆動ベベルギヤ53が従動ベベルギヤ56に接近する方向)へ移動して、駆動ベベルギヤ53が従動ベベルギヤ56に噛み合う。
【0064】
第2部材84に駆動輪を加えた質量が、回転し続ける。この回転は逆転機構93で向きが変えられる。そして、第2部材84に駆動輪12を加えた質量に基づく慣性力により、図15(a)、(b)に示すように、発条55が巻き上げられる。
巻き上げが所定量を超えると、図18に示すトルクリミッター75がスリップして過剰な巻き上げが防止される。
【0065】
発進又は加速のために内燃機関でドリブンスプロケット98を車両前進側へ回すと、図19に示すように第1部材82が第2部材84に噛み合い、結果、中立ばね99、99の中立作用により発条入力軸52が戻され、従動ベベルギヤ56から駆動ベベルギヤ53が外れる。このタイミングでワイヤ109を引く。すると、発条55により、発条ボス104、一方向クラッチ70Bを介してハブ13が回される。
以上により、発進時や加速時に発条に蓄えた動力を、内燃機関の出力に加えられる。
【0066】
尚、本発明の動力補助装置は、車載スペースに制限が大きな自動二輪車に好適である。しかし、三輪車や四輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の動力補助装置は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…車輪、12…駆動輪、13…駆動輪のハブ、15…アクセル操作子、20…内燃機関、24…クランク軸、30…変速機、32…変速機入力軸、34…変速機出力軸、50、50B…車両用動力補助装置、51…発条装置、52…発条入力軸、54…発条出力軸、55…発条、60、60B…ストップ機構、70、70B…一方向クラッチ、75…トルクリミッター、80…軸スライド機構、87…噛み合いクラッチ機構、89…ドリブンスプロケット、103…発条ケース、104…発条ボス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発条を利用した車両用動力補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が減速する際に発生する運動エネルギーを蓄え、加速エネルギーに付与することで、燃料の消費量を抑える省エネルギー技術が実用に供されている。
運動エネルギーは回生モータで回収し、バッテリに蓄えることが広く行われているが、回生モータの設置やバッテリの大型化が必要となるため、自動二輪車等の小型車両においては、車両重量の増加に直結するため、改善が求められる。
【0003】
そこで、発条を利用した車両用動力補助装置が提案された(例えば、特許文献1(図1、図4)参照。)。
特許文献1の図1に示されるように、トランスミッション(100)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)からアウトプット軸(101)及びドライブシャフト(400)が延ばされ、これらのアウトプット軸(101)とドライブシャフト(400)との間に発条装置(200)及び遊星歯車機構(300)が介設されている。
【0004】
特許文献1の図4をも参照すれば、特許文献1の図1において、エネルギー回収時は摩擦材B1、B1で遊星歯車機構(300)のアウタリングを制動状態にし、クラッチC1を断状態にする。次に、アシスト時は摩擦材B1、B1を開放し、クラッチC1を接続状態して、発条装置(200)に蓄えてあるエネルギーを駆動輪へ供給する。
【0005】
発条装置(200)の他に、遊星歯車機構(300)と摩擦材B1、B1とクラッチC1とが必須であり、加えて、摩擦材B1、B1の移動機構やクラッチC1の断接制御機構が必要となり、装置が複雑且つ大型化してしまう。結果として、車両の小型、軽量化が図り難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−202167公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両の小型、軽量化が図れる動力補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、内燃機関の出力が変速機を介して駆動輪に伝達される車両に付属され、減速時に動力を発条に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関の出力に前記発条に蓄えた動力を加えることができる発条装置を備える車両用動力補助装置であって、
前記発条装置は、前記内燃機関のクランク軸へ前記動力を伝達する発条出力軸と、前記発条を巻き上げる発条入力軸とを有し、
前記変速機は、前記クランク軸で回される変速機入力軸と、前記駆動輪を駆動する変速機出力軸とを有し、
前記発条出力軸が前記クランク軸と同軸に配置され、前記発条入力軸が前記変速機入力軸と同軸に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、発条出力軸は、クランク軸より発条出力軸の回転速度が大きいときに接続状態になって発条出力軸からクランク軸へ動力が伝達され、クランク軸より発条出力軸の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチを介して前記クランク軸に繋がれていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、内燃機関の出力が変速機を介して駆動輪に伝達される車両に付属され、減速時に動力を発条に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関の出力に前記発条に蓄えた動力を加えることができる発条装置を備える車両用動力補助装置であって、
前記発条は、前記駆動輪の側方に配置され、前記駆動輪のハブに断接可能に接続され、
減速時に動力を前記発条に入力する発条入力軸は、前記駆動輪の車軸を兼ねていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、発条は、車体側に固定される発条ケースに外端部が止められ、駆動輪の回転中心に配置される発条ボスに内端部が止められ、
この発条ボスの一端が前記駆動輪のハブに差し込まれ、
発条ボスの一端は、前記ハブより発条ボスの回転速度が大きいときに接続状態になって発条ボスから径外方に前記ハブへ動力が伝達され、ハブより発条ボスの回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチを介して駆動輪のハブに断接可能に接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、発条入力軸には、発条が所定まで巻き上げられた後はスリップして減速時動力の伝達を止めるトルクリミッターが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、発条装置に、発条が巻き上げられる際に、発条出力軸又はハブが回転することを防止するストップ機構を備え、このストップ機構は、運転者が操作するアクセル操作子の発進又は加速操作に連動して解除されるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、発条へは、発条が巻き上げられる際に連結する噛み合いクラッチ機構を介して減速時の動力が伝達され、
変速機入力軸と発条入力軸との間、又は内燃機関で駆動されるドリブンスプロケットと発条入力軸との間に、内燃機関が減速操作されたことに起因して変速機入力軸又はドリブンスプロケットが減速されるが、発条入力軸が慣性力で回転が維持されることの運動の差により発条入力軸を軸方向へ移動して、噛み合いクラッチ機構を噛み合い状態にする軸スライド機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明では、軸スライド機構は、駆動輪のハブ内に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、発条出力軸をクランク軸と同軸に配置し、発条入力軸を変速機入力軸と同軸に配置する。
発条出力軸をクランク軸と同軸に配置し、発条入力軸を変速機入力軸と同軸に配置することで、発条装置を内燃機関に内蔵させることができる。クランク軸が車幅方向に延びる場合には、内燃機関の車長方向の長さを変えることなく、発条装置を内燃機関に内蔵させることができる。
発条装置のためのケーシング等を省くことができるため、発条装置を内燃機関と別に配置する場合に比べ、本発明によれば、車両の小型、軽量化が図れる。
【0017】
請求項2に係る発明では、一方向クラッチを設けたことにより、発条による動力の伝達が終わった後に、発条装置をクランク軸から分離することができ、通常運転時での機械的損失の増加を防止することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、発条を駆動輪の側方に配置すると共に発条入力軸を駆動輪の車軸を兼ねるようにした。車両用動力補助装置を駆動輪周りにまとめて配置することができ、車両用動力補助装置の小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【0019】
請求項4に係る発明では、発条ボスの一端は、駆動輪のハブに差し込まれ、一方向クラッチを介して駆動輪のハブに断接可能に接続されている。
仮に、駆動輪のハブに発条ボスを同軸に配置すると、駆動輪の車幅方向の幅が増大する。この点、本発明は発条ボスの一端を駆動輪のハブに差し込んだので、駆動輪の車幅方向の幅を減少させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、発条入力軸に、発条が所定まで巻き上げられた後はスリップするトルクリミッターが設けられている。トルクリミッターにより、発条の過度な巻き上げを防止することができ、発条の寿命を延ばすことができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、発条装置に、発条が巻き上げられる際に、発条出力軸又はハブが回転することを防止するストップ機構を備え、このストップ機構は、運転者が操作するアクセル操作子の発進又は加速操作に連動して解除される。
運転者のアクスル操作と同じタイミングで、発条装置から動力を駆動輪へ伝達することができる。ストップ機構操作レバーを別途設ける場合に比較して、本発明によれば、ストップ機構操作レバーが不要となり、且つ運転者の操作項目を少なくすることができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、軸スライド機構により、減速時にのみ発条が巻き上げられる。減速時以外は発条入力軸が、変速機入力軸又は変速機出力軸と分離されるため、発条入力軸の回転に伴って発生する機械的損失の発生を防止することができる。
また、クラッチ機構の制御を電気的に行うと、電気エネルギーが必要となるが、本発明ではクラッチ機構の断接は機械的に軸スライド機構で行うため、電気エネルギーが不要になり、バッテリの負担を軽減することができる
【0023】
請求項8に係る発明では、軸スライド機構を駆動輪のハブ内に収納する。
軸スライド機構を駆動輪のハブに内蔵することで、車両用動力補助装置の一層の小型化が達成でき、車両の一層の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係る動力補助装置を備える自動二輪車の平面図である。
【図2】実施例1に係る動力補助装置の構成図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】図2の5矢視図である。
【図6】図2の6矢視図である。
【図7】トルクリミッターの原理図である。
【図8】軸スライド機構の原理図である。
【図9】実施例1での通常運転時の作用図である。
【図10】減速開始時の作用図である。
【図11】減速中の作用図である。
【図12】動力補助時の作用図である。
【図13】実施例2に係る動力補助装置を備える自動二輪車の要部平面図である。
【図14】実施例2に係る動力補助装置の構成図である。
【図15】図14の15−15線断面図である。
【図16】図14の16−16線断面図である。
【図17】実施例2での通常運転時の作用図である。
【図18】減速中の作用図である。
【図19】動力補助時の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0026】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両10は、前輪11と、後輪である駆動輪12とを備え、前輪11と駆動輪12との間に内燃機関20を備え、前輪11の上にハンドル14を備え、このハンドル14にアクセル操作子15を備え、内燃機関20の上に燃料タンク16を備え、駆動輪12の上にシート17を備える自動二輪車である。内燃機関20は発条装置を備えている。アクセル操作子15は、手で操作するアクセルレバーの他、足で操作するアクセルペダルであっても良い。
【0027】
内燃機関20の構造を、次に説明する。
図2に示すように、内燃機関20は、シリンダ21と、このシリンダ21に摺動自在に収納されるピストン22と、ピストン22から延びるコンロッド23と、このコンロッド23で回されるクランク軸24と、このクランク軸の一端に設けられるACジェネレータ25とクランク軸24の他端に設けられる駆動ギヤ26とを、主要素とする。
【0028】
変速機30は、ギヤ群31を支える変速機入力軸32と、この変速機入力軸32に平行に配置されギヤ群31に選択的に噛み合うギヤ群33を支える変速機出力軸34と、この変速機出力軸34に設けられるドライブスプロケット35とを、主要素とする。
変速機入力軸32は一端にクラッチインナ37を備える。このクラッチインナ37に噛み合わせるクラッチアウタ38は、従動ギヤ39を備えており、この従動ギヤ39及び中間ギヤ41を介して駆動ギヤ26に連結される。
【0029】
このような内燃機関20及び変速機30に、車両用動力補助装置50が付設される。この車両用動力補助装置50は、発条装置51と、ストップ機構60と、一方向クラッチ70と、トルクリミッター75と、軸スライド機構80と、噛み合いクラッチ機構87とからなる。
【0030】
発条装置51は、クラッチアウタ38に、軸スライド機構80を介して連結される発条入力軸52と、この発条入力軸52の先端にトルクリミッター75を介して取付けられる駆動ベベルギヤ53と、発条入力軸52に平行に配置される発条出力軸54と、この発条出力軸54の端部に回巻される発条55と、この発条55を囲う従動ベベルギヤ56と、駆動ベベルギヤ53と従動ベベルギヤ56との間に配置される中間ベベルギヤ57とからなる。発条55はゼンマイや渦巻きばねとも呼ばれる。
【0031】
発条出力軸54をクランク軸24と同軸に配置し、発条入力軸52を変速機入力軸32と同軸に配置することで、発条装置51を内燃機関20のクランクケースに内蔵(又は付属)させることができる。自動二輪車では、一般にクランク軸24は車幅方向に延びる。この場合には、内燃機関20の車長方向の長さを変えることなく、発条装置51を内燃機関20に内蔵(又は付属)させることができる。
クランクケースに内蔵することにより発条装51置のためのケーシング等を省くことができる。発条装置51を内燃機関20と離れた位置に別に配置する場合に比べ、本発明によれば、車両の小型、軽量化が図れる。
【0032】
ストップ機構60は、図3に示すように、発条出力軸54に設けた鋸状板61と、この鋸状板61に形成される複数の凹部62の1つに嵌合するピン63と、このピン63を噛み合い側へ付勢する弾性部材64と、ピン63を噛み合いを解く方向へ引くアクセルワイヤ65とからなる。ピン63が凹部62に嵌合すると発条出力軸54は回転不能となり、ピン63が凹部62から外されると発条出力軸54は回転可能となる。弾性部材64は、クランクケース27を起点としてピン63を付勢する。
【0033】
発条55は、図4に示すように、発条55の内端部が発条出力軸54に係止され、外端部が従動ベベルギヤ56に係止される。従動ベベルギヤ56が、図面反時計廻りに回されると、発条55が巻き込まれ、発条55にエネルギーが蓄えられる。
【0034】
従動ベベルギヤ56は、図5に示すように、空転止め機構66で回転が制限される。空転止め機構66は、例えば、従動ベベルギヤ56側に設けるラチェット歯67と、クランクケース27に設けられる揺動爪68と、この揺動爪68を噛み合い側へ付勢するトーションばね69とからなる。このような機構をラチェット機構という。
従動ベベルギヤ56は、揺動爪68がラチェット歯67に噛み合うため、図面時計廻りに回転しない。
一方、従動ベベルギヤ56は、図面反時計廻りに回転しようとすると、揺動爪68が図面時計廻りに回転してラチェット歯67から外れ、回転が可能となる。
【0035】
一方向クラッチ70は、内輪と外輪とコマ(矩形断面の部品)とからなり、正転時にコマが内輪と外輪とに噛み合って動力伝達状態となり、逆転時にコマが内輪と外輪とスリップし動力が伝達できない状態になる。
原理はラチェット機構と同一であるため、ラチェット機構で説明を代用する。すなわち、図6に示すように、一方向クラッチ70は、発条出力軸54側に設けるラチェット歯71と、クランク軸端に設けられるカップ72に揺動自在に設けられる揺動爪73と、この揺動爪73を噛み合い側へ付勢するトーションばね74からなる。
【0036】
カップ72より発条出力軸54が早く図面反時計方向に回ると、揺動爪73がラチェット歯71に噛み合い、発条出力軸54でカップ72が回される。一方、カップ72が発条出力軸54より早く図面反時計方向に回ると、カップ72だけが回転する。
【0037】
トルクリミッター75は、図7に示すように、発条入力軸52の軸端にボルト76で止められる円板77と、この円板77へ駆動ベベルギヤ53を押圧する円錐ばね78と、この円錐ばね78を発条入力軸52に止めるトルク調節ナット79とからなる。このトルク調節ナット79を回して軸方向へ移動することで、駆動ベベルギヤ53と円板77及び駆動ベベルギヤ53と円錐ばね78との間で発生する摩擦力を調節することができる。
【0038】
摩擦力に半径を掛けたものが摩擦トルクとなり、この摩擦トルク以下のトルクが加わったときには発条入力軸52から駆動ベベルギヤ53へトルク(動力)の伝達が行われる。摩擦トルクを超える大きなトルクが加わったときには駆動ベベルギヤ53が空転し、発条入力軸52から駆動ベベルギヤ53へ過大なトルク(動力)の伝達は行われない。
【0039】
次に、軸スライド機構と噛み合いクラッチ機構の構造を説明する。
図8(a)に示すように、軸スライド機構80は、クラッチアウタ38に繋がり直角三角形状の三角歯81が付いている第1部材82と、この三角歯81に噛み合う三角歯83が付いており発条入力軸52に設けられる第2部材84と、クランクケース27を基点にして第2部材84を噛み合い方向へ付勢する弾性材85とからなる。
【0040】
噛み合いクラッチ機構87は、軸方向へは移動しない中間べベルギヤ57と、軸方向へ移動する駆動ベベルギヤ53とからなる。
(a)では、噛み合いクラッチ機構87が噛み合い状態にあって、第1・第2部材83、84が矢印方向に同じ速度で回転しているが、中間べベルギヤ57から駆動ベベルギヤ53が離れているため、噛み合いクラッチ機構87では動力の伝達は行われない。
次に、第1部材82の回転が停止される又は減速されると、第2部材84が回転するため、三角歯81に対して三角歯83が競り上がる。
【0041】
結果、(b)に示すように、発条入力軸52が移動し、中間べベルギヤ53に駆動ベベルギヤ53が噛み合い、噛み合いクラッチ機構87で動力の伝達が行われる。第2部材84は、第1部材82から分離して、第1部材82よりも高速で回転する。
【0042】
以上に説明した車両用動力補助装置の作用を次に説明する。
図9で通常運転の状態、図10で内燃機関の減速開始状態、図11でエネルギー蓄積の状態、図12で動力補助の状態を説明する。
【0043】
通常の運転では、図9に示すように、クランク軸24により、駆動ギヤ26及び中間ギヤ41を介してクラッチアウタ38が回され、変速機30を介してドライブスプロケット35が回され、チェーン88及びドリブンスプロケット89を介して駆動輪12が回される。この駆動輪12の回転方向は、自動二輪車の前進方向に合致する。発条入力軸52は空転し、発条出力軸54は回転しない。
【0044】
内燃機関20が減速状態になると、図10に示すように、第1部材82が減速され、第2部材84が回転を維持する。結果、第2部材84が矢印(1)のように軸方向に移動し、駆動ベベルギヤ53が中間ベベルギヤ57に噛み合う。
すると、図11に示すように、従動ベベルギヤ56が回され、発条55が巻き込まれる。
【0045】
図12に示すように、内燃機関20が始動されると、クランク軸24により第1部材82が回され、第1部材82に第2部材84が噛み合い、中間ベベルギヤ57から駆動ベベルギヤ53が離れる。始動中又は加速中に、運転者がアクセル操作子15を操作して、鋸状板61からピン63を抜くと、発条55により、発条出力軸54が回され、動力がクランク軸24へ付与される。
以上により、発進時や加速時に発条に蓄えた動力を、内燃機関の出力に加えられる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、名称は共通であるが、態様などに変更がある要素については、符号にBを付す。
【0047】
図13に示すように、内燃機関20の出力が変速機30を介して駆動輪12に伝達される。
そして、減速時に動力を発条55に蓄え、発進又は加速時に内燃機関20の出力に発条55に蓄えた動力を加えることができる車両用動力補助装置50Bが、駆動輪12の周りに備えられている。実施例1と共通要素は、符号を流用して、詳細な説明は省略する。
【0048】
発条55は駆動輪12の側方に配置され、図14に示すように、駆動輪12のハブ13に断接可能に接続さる。減速時に動力を発条55に入力する発条入力軸52は、駆動輪12の車軸を兼ねている。
すなわち、発条入力軸52に、軸スライド機構80の第2部材84が一体形成され、この第2部材84がハブ13に車軸方向に移動可能になるようにスプライン91で連結されている。軸スライド機構80の第1部材82は、軸受92を介して回転自在に発条入力軸52に支持され、側面にドリブンスプロケット85が固定される。
【0049】
発条入力軸52は、軸方向途中に逆転機構93を備える。逆転機構93は、ハブ13に設けられる収納凹部94に収納され、正転板95と、この正転板95の円錐面に噛み合い、発条入力軸52と直交する軸96廻りに回転する中間コマ97、97と、これらの中間コマ97、97で逆回転される逆転板98とからなる。正転板95と逆転板98は、中立ばね99、99により付勢され、軸力が付与されないときには、車幅方向の中立位置に保持される。
【0050】
発条55を駆動輪12の側方に(図では右側に)配置すると共に発条入力軸52を駆動輪12の車軸を兼ねるようにした。車両用動力補助装置50Bを駆動輪12周りにまとめて配置することができ、車両用動力補助装置50Bの小型、軽量化が可能となり、車両の小型、軽量化が図れる。
【0051】
このような発条入力軸52にハブ13が軸受101、101を介して回転自在に支持される。発条入力軸52の端部に、トルクリミッター75を介して駆動ベベルギヤ53が取付けられる。
【0052】
発条55は、車体側の部材であるスイングアーム102に固定される発条ケース103に外端部が止められ、駆動輪12の回転中心に配置される発条ボス104に内端部が止められる。この発条ボス104の一端がハブ13に差し込まれる。発条ボス104とハブ13との間に一方向クラッチ70Bが介設される。
【0053】
仮に、駆動輪12のハブ13に発条ボス104を同軸に配置する(車幅方向に並べて直列に配置する)と、駆動輪12の車幅方向の幅が増大する。この点、本発明は発条ボス104の一端を駆動輪12のハブ13に差し込んだので、駆動輪12の車幅方向の幅を減少させることができる。
【0054】
発条ボス104には、駆動ベベルギヤ53に噛み合う従動ベベルギヤ56が一体形成される。
発条ボス104は、軸受105を介して発条ケース103に回転自在に支持される。
発条ボス104は、ストップ機構60B(詳細は、後述。)で回転止めがなされる。
【0055】
図15(a)に示すように、発条55の内端部は発条ボス104に止められ、発条55の外端部は発条ケース103に止められる。発条ケース103は非回転部材であり、発条ボス104が回転部材である。
【0056】
そして、発条ボス104にラチェット歯106が設けられ、発条ケース103に揺動爪107が揺動可能に設けられ、この揺動爪107はトーションばね108で噛み合い方向へ付勢される。揺動爪107はワイヤ109で引くことにより、噛み合いが解除される。
すなわち、ラチェット歯106と揺動爪107とトーションばね108とワイヤ109とで、ストップ機構60Bが構成される。
【0057】
ワイヤ109は運転者が操作するアクセルグリップに繋がれたアクセルワイヤであってもよい。または、ワイヤ109は、アクセルグリップとは別に設けられ運転者が操作するストップ機構操作レバーに繋がれたものであってもよい。
発条ボス104が、図面反時計方向に回されると、発条55が巻き上げられる。
この際、揺動爪107が発条ボス104の逆転を防止する役割を果たす。
【0058】
(b)に示すように、所定まで発条55が巻き上げられる。ワイヤ109を引いて、揺動爪17をラチェット歯106から外すと、発条55により発条ボス104が図面時計方向へ回される。
【0059】
図16に示すように、発条ボス104とハブ13との間に一方向クラッチ70Bが介設される。
この一方向クラッチ70Bは、図6で説明したように、内輪と外輪とコマ(矩形断面の部品)とからなり、正転時にコマが内輪と外輪とに噛み合って動力伝達状態となり、逆転時にコマが内輪と外輪とスリップし動力が伝達できない状態になる。
原理はラチェット機構と同一であるため、ラチェット機構で説明を代用する。すなわち、一方向クラッチ70Bは、発条ボス104側に設けるラチェット歯71と、ハブ13に揺動自在に設けられる揺動爪73と、この揺動爪73を噛み合い側へ付勢するトーションばね74からなる。
【0060】
発条ボス104は、ハブ13より図面時計廻りの回転速度が大きいときに接続状態になって発条ボス104から径外方へハブ13へ動力が伝達され、ハブ13より発条ボス104の回転速度が小さいときには分離状態になる。
【0061】
以上に説明した動力補助装置の作用を次に説明する。
図17で通常運転の状態、図18で内燃機関の減速状態、図19で動力補助の状態を説明する。
【0062】
通常運転では、図17において、ドリブンスプロケット89が車両前進側へ回されと、軸スライド機構80は噛み合い、第2部材84を介してハブ13が回される。従動ベベルギヤ56から駆動ベベルギヤ53が離れているため、発条55が巻き上げられることはない。
【0063】
内燃機関が減速されると、図18に示すように、減速する第1部材82に対して、第2部材84は回転が継続され、第1部材82から第2部材84が離れ、第2部材84と共に発条入力軸52及び駆動ベベルギヤ53が、図面右方向(駆動ベベルギヤ53が従動ベベルギヤ56に接近する方向)へ移動して、駆動ベベルギヤ53が従動ベベルギヤ56に噛み合う。
【0064】
第2部材84に駆動輪を加えた質量が、回転し続ける。この回転は逆転機構93で向きが変えられる。そして、第2部材84に駆動輪12を加えた質量に基づく慣性力により、図15(a)、(b)に示すように、発条55が巻き上げられる。
巻き上げが所定量を超えると、図18に示すトルクリミッター75がスリップして過剰な巻き上げが防止される。
【0065】
発進又は加速のために内燃機関でドリブンスプロケット98を車両前進側へ回すと、図19に示すように第1部材82が第2部材84に噛み合い、結果、中立ばね99、99の中立作用により発条入力軸52が戻され、従動ベベルギヤ56から駆動ベベルギヤ53が外れる。このタイミングでワイヤ109を引く。すると、発条55により、発条ボス104、一方向クラッチ70Bを介してハブ13が回される。
以上により、発進時や加速時に発条に蓄えた動力を、内燃機関の出力に加えられる。
【0066】
尚、本発明の動力補助装置は、車載スペースに制限が大きな自動二輪車に好適である。しかし、三輪車や四輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の動力補助装置は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…車輪、12…駆動輪、13…駆動輪のハブ、15…アクセル操作子、20…内燃機関、24…クランク軸、30…変速機、32…変速機入力軸、34…変速機出力軸、50、50B…車両用動力補助装置、51…発条装置、52…発条入力軸、54…発条出力軸、55…発条、60、60B…ストップ機構、70、70B…一方向クラッチ、75…トルクリミッター、80…軸スライド機構、87…噛み合いクラッチ機構、89…ドリブンスプロケット、103…発条ケース、104…発条ボス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(20)の出力が変速機(30)を介して駆動輪(12)に伝達される車両(10)に付属され、減速時に動力を発条(55)に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関(20)の出力に前記発条(55)に蓄えた動力を加えることができる発条装置(51)を備える車両用動力補助装置(50)であって、
前記発条装置(51)は、前記内燃機関(20)のクランク軸(24)へ前記動力を伝達する発条出力軸(54)と、前記発条(55)を巻き上げる発条入力軸(52)とを有し、
前記変速機(30)は、前記クランク軸(24)で回される変速機入力軸(32)と、前記駆動輪(12)を駆動する変速機出力軸(34)とを有し、
前記発条出力軸(54)が前記クランク軸(24)と同軸に配置され、前記発条入力軸(52)が前記変速機入力軸(32)と同軸に配置されていることを特徴とする車両用動力補助装置。
【請求項2】
前記発条出力軸(54)は、前記クランク軸(24)より前記発条出力軸(54)の回転速度が大きいときに接続状態になって前記発条出力軸(54)から前記クランク軸(24)へ動力が伝達され、前記クランク軸(24)より前記発条出力軸(54)の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチ(70)を介して前記クランク軸(24)に繋がれていることを特徴とする請求項1記載の車両用動力補助装置。
【請求項3】
内燃機関(20)の出力が変速機(30)を介して駆動輪(12)に伝達される車両(10)に付属され、減速時に動力を発条(55)に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関(20)の出力に前記発条(55)に蓄えた動力を加えることができる発条装置(51)を備える車両用動力補助装置(50B)であって、
前記発条(55)は、前記駆動輪(12)の側方に配置され、前記駆動輪(12)のハブ(13)に断接可能に接続され、
減速時に動力を前記発条(55)に入力する発条入力軸(52)は、前記駆動輪(12)の車軸を兼ねていることを特徴とする車両用動力補助装置。
【請求項4】
前記発条(55)は、車体側に固定される発条ケース(103)に外端部が止められ、前記駆動輪(12)の回転中心に配置される発条ボス(104)に内端部が止められ、
この発条ボス(104)の一端が前記駆動輪(12)のハブ(13)に差し込まれ、
前記発条ボス(104)の一端は、前記ハブ(13)より前記発条ボス(104)の回転速度が大きいときに接続状態になって前記発条ボス(104)から径外方に前記ハブ(13)へ動力が伝達され、前記ハブ(13)より前記発条ボス(104)の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチ(70B)を介して駆動輪(12)のハブ(13)に断接可能に接続されていることを特徴とする請求項3記載の車両用動力補助装置。
【請求項5】
前記発条入力軸(52)には、前記発条(55)が所定まで巻き上げられた後はスリップして減速時動力の伝達を止めるトルクリミッター(75)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項6】
前記発条装置(51)には、前記発条(55)が巻き上げられる際に、前記発条出力軸(54)又は前記ハブ(13)が回転することを防止するストップ機構(60、60B)を備え、このストップ機構(60、60B)は、運転者が操作するアクセル操作子(15)の発進又は加速操作に連動して解除されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項7】
前記発条(55)へは、前記発条(55)が巻き上げられる際に連結する噛み合いクラッチ機構(87)を介して減速時の動力が伝達され、
前記変速機入力軸(32)と前記発条入力軸(52)との間、又は前記内燃機関(20)で駆動されるドリブンスプロケット(89)と前記発条入力軸(52)との間に、前記内燃機関(20)が減速操作されたことに起因して前記変速機入力軸(32)又は前記ドリブンスプロケット(89)が減速されるが、前記発条入力軸(52)が慣性力で回転が維持されることの運動の差により前記発条入力軸(52)を軸方向へ移動して、噛み合いクラッチ機構(87)を噛み合い状態にする軸スライド機構(80)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項8】
前記軸スライド機構(80)は、前記駆動輪(12)のハブ(13)内に収納されていることを特徴とする請求項7記載の車両用動力補助装置。
【請求項1】
内燃機関(20)の出力が変速機(30)を介して駆動輪(12)に伝達される車両(10)に付属され、減速時に動力を発条(55)に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関(20)の出力に前記発条(55)に蓄えた動力を加えることができる発条装置(51)を備える車両用動力補助装置(50)であって、
前記発条装置(51)は、前記内燃機関(20)のクランク軸(24)へ前記動力を伝達する発条出力軸(54)と、前記発条(55)を巻き上げる発条入力軸(52)とを有し、
前記変速機(30)は、前記クランク軸(24)で回される変速機入力軸(32)と、前記駆動輪(12)を駆動する変速機出力軸(34)とを有し、
前記発条出力軸(54)が前記クランク軸(24)と同軸に配置され、前記発条入力軸(52)が前記変速機入力軸(32)と同軸に配置されていることを特徴とする車両用動力補助装置。
【請求項2】
前記発条出力軸(54)は、前記クランク軸(24)より前記発条出力軸(54)の回転速度が大きいときに接続状態になって前記発条出力軸(54)から前記クランク軸(24)へ動力が伝達され、前記クランク軸(24)より前記発条出力軸(54)の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチ(70)を介して前記クランク軸(24)に繋がれていることを特徴とする請求項1記載の車両用動力補助装置。
【請求項3】
内燃機関(20)の出力が変速機(30)を介して駆動輪(12)に伝達される車両(10)に付属され、減速時に動力を発条(55)に蓄え、発進又は加速時に前記内燃機関(20)の出力に前記発条(55)に蓄えた動力を加えることができる発条装置(51)を備える車両用動力補助装置(50B)であって、
前記発条(55)は、前記駆動輪(12)の側方に配置され、前記駆動輪(12)のハブ(13)に断接可能に接続され、
減速時に動力を前記発条(55)に入力する発条入力軸(52)は、前記駆動輪(12)の車軸を兼ねていることを特徴とする車両用動力補助装置。
【請求項4】
前記発条(55)は、車体側に固定される発条ケース(103)に外端部が止められ、前記駆動輪(12)の回転中心に配置される発条ボス(104)に内端部が止められ、
この発条ボス(104)の一端が前記駆動輪(12)のハブ(13)に差し込まれ、
前記発条ボス(104)の一端は、前記ハブ(13)より前記発条ボス(104)の回転速度が大きいときに接続状態になって前記発条ボス(104)から径外方に前記ハブ(13)へ動力が伝達され、前記ハブ(13)より前記発条ボス(104)の回転速度が小さいときには分離状態になる一方向クラッチ(70B)を介して駆動輪(12)のハブ(13)に断接可能に接続されていることを特徴とする請求項3記載の車両用動力補助装置。
【請求項5】
前記発条入力軸(52)には、前記発条(55)が所定まで巻き上げられた後はスリップして減速時動力の伝達を止めるトルクリミッター(75)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項6】
前記発条装置(51)には、前記発条(55)が巻き上げられる際に、前記発条出力軸(54)又は前記ハブ(13)が回転することを防止するストップ機構(60、60B)を備え、このストップ機構(60、60B)は、運転者が操作するアクセル操作子(15)の発進又は加速操作に連動して解除されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項7】
前記発条(55)へは、前記発条(55)が巻き上げられる際に連結する噛み合いクラッチ機構(87)を介して減速時の動力が伝達され、
前記変速機入力軸(32)と前記発条入力軸(52)との間、又は前記内燃機関(20)で駆動されるドリブンスプロケット(89)と前記発条入力軸(52)との間に、前記内燃機関(20)が減速操作されたことに起因して前記変速機入力軸(32)又は前記ドリブンスプロケット(89)が減速されるが、前記発条入力軸(52)が慣性力で回転が維持されることの運動の差により前記発条入力軸(52)を軸方向へ移動して、噛み合いクラッチ機構(87)を噛み合い状態にする軸スライド機構(80)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用動力補助装置。
【請求項8】
前記軸スライド機構(80)は、前記駆動輪(12)のハブ(13)内に収納されていることを特徴とする請求項7記載の車両用動力補助装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−201355(P2012−201355A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71000(P2011−71000)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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