説明

車両用収納ボックス

【課題】1種類のばねの利用であっても、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるときだけでなく、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、蓋体に与える操作力を半減させることができる車両用収納ボックスを提供すること。
【解決手段】車両用収納ボックス14は、蓋体60が閉状態に対応する第1の位置から、蓋体60が開状態に対応する第2の位置へ向けて蓋体60と共にスライダ40をスライドさせると、スライドさせたスライダ40が第1の位置へ戻る方向に向けて付勢力が作用するように、ボックス20とスライダ40との間にトーションばね48が掛け留めされており、トーションばね48の付勢力に抗して第1の位置から第2の位置へとスライダ40をスライドさせていくと、この両位置の途中位置でトーションばね48の付勢力が作用する方向が逆転するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用収納ボックスに関し、詳しくは、被収容物を収容可能な車両用収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ボックスに形成されている開口が蓋体によって完全に閉ざされた状態(以降において、「開口の閉塞状態」または「蓋体の閉状態」と記す。なお、これらは、同義とする。)から蓋体をボックスに対して後方へ向けてスライドさせ、このスライドさせた状態から、さらに、この蓋体の前側がボックスに対して起き上がるように蓋体をボックスに対して回動させると、開口を略完全に開放させた状態(以降において、「開口の開放状態」または「蓋体の開状態」と記す。なお、これらは、同義とする。)に切り替えることができ、これとは逆に、開口を開放状態から閉塞状態に戻すように蓋体を切り替えることもできる車両用収納ボックスが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるとき、第1のばね力を利用して蓋体をボックスに対して回動させ、これとは逆に、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるとき、第2のばね力を利用して蓋体をボックスに対して前方へ向けてスライドさせることができる車両用収納ボックスが開示されている。これにより、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるときだけでなく、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、蓋体に与える操作力を半減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−151293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、第1のばねと第2のばねとの2種類のばねを利用して開口の状態を切り替えているため、車両用収納ボックスの構成が複雑になっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、1種類のばねの利用であっても、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるときだけでなく、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、蓋体に与える操作力を半減させることができる車両用収納ボックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、開口を有するボックスと、ボックスの開口における幅方向の両縁に橋渡した状態で、この両縁に沿ってスライド可能なスライダと、スライダに対してヒンジ結合され、このボックスの開口を塞ぐことができるように形成されている蓋体とを備えており、ボックスの開口を塞いだ閉状態から開状態へと、スライダと共に蓋体をスライドさせていくと、開口が広がる方向に向けて蓋体がスライダに対してヒンジを介して傾動可能となっており、蓋体が閉状態に対応する第1の位置から、蓋体が開状態に対応する第2の位置へ向けて蓋体と共にスライダをスライドさせると、スライドさせたスライダが第1の位置へ戻る方向に向けて付勢力が作用するように、ボックスとスライダとの間にトーションばねが掛け留めされており、トーションばねの付勢力に抗して第1の位置から第2の位置へとスライダをスライドさせていくと、この第1の位置と第2の位置との途中位置でトーションばねの付勢力が作用する方向が逆転する車両用収納ボックスである。
この構成によれば、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるとき、トーションばねの付勢力を利用して蓋体をボックスに対して回動させることができる。また、これとは逆に、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、上述したトーションばねの付勢力を逆方向に作用させて蓋体をボックスに対して前方へ向けてスライドさせることができる。そのため、1種類のばねの利用(トーションばねのみの利用)であっても、従来技術と同様に、開口を閉塞状態から開放状態に切り替えるときだけでなく、開口を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、蓋体に与える操作力を半減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るコンソールボックスを組み付けた車両内部の概略斜視図である。
【図2】図2は、図1のコンソールボックスの全体斜視図である。
【図3】図3は、図2のコンソールボックスの分解斜視図である。
【図4】図3は、図2のコンソールボックスの平面模式図であり、蓋体が閉状態のときを示している。
【図5】図5は、図4の蓋体が開状態に向けて途中状態のときを示している。
【図6】図6は、図5の蓋体が開状態のときを示している。
【図7】図7は、図2のコンソールボックスの側面模式図であり、蓋体が閉状態のときを示している。
【図8】図8は、図7の蓋体が開状態に向けて途中状態のときを示している。
【図9】図9は、図8の蓋体が開状態のときを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜9を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0009】
まず、図1を参照して、本発明の車両用収納ボックスの一実施形態であるコンソールボックス14の概略構成を説明する。図1に示すように、コンソールボックス14は、例えば、自動車等の車両1の内部に配置されており、詳しくは、車両1の運転席10と助手席12との間に配置されている。そして、このコンソールボックス14は、運転席10または助手席12の着座者(以下、単に、「着座者」と記す)が着座状態で使用することができるように構成されている。
【0010】
次に、図2〜3を参照して、コンソールボックス14の詳細な構成を説明する。コンソールボックス14は、主として、ボックス20と、スライダ40と、蓋体60とから構成されている。以下に、これら各構成部材20、40、60を個別に説明していく。
【0011】
はじめに、ボックス20を説明する。ボックス20は、その内部に収納部22が形成された略四角形状の箱部材である。この収納部22には、その上部にボックス20の外部と連通する開口24が形成されている。これにより、開口24を介して被収容物(例えば、図示しない、財布、煙草等の小物)を収納することができる。
【0012】
この収納部22の後部には、後述する蓋体60を開状態にしたとき、後述するスライダ40を格納する格納部26が収納部22と連通する格好で形成されている。この格納部26の底面26aには、長孔30を有する案内板32が立てられている。この長孔30は、その前側から後側に向けて水平部30aと湾曲状に下り傾斜する傾斜部30bとから構成されている。
【0013】
一方、この開口24の幅方向(左右方向)の両縁には、対を成すようにスライド溝28、28が形成されている。また、この収納部22の左右の内面には、一対のトーションばね48、48の各一端48a、48aを掛け留め可能な引っ掛け孔34、34が形成されている。
【0014】
次に、スライダ40を説明する。スライダ40は、その幅方向(左右方向)の両縁に上述した一対のスライド溝28、28に嵌め合い可能に対を成すスライドガイド42、42が形成された略四角形状の板部材である。この両スライドガイド42、42は、後述する蓋体60が閉状態または開状態にあるとき、ボックス20の両スライド溝28、28の前端または後端に位置するように形成されている。なお、この両スライド溝28、28の前端が、特許請求の範囲に記載の「第1の位置」に相当し、同後端が、特許請求の範囲に記載の「第2の位置」に相当する。
【0015】
このスライダ40の上面には、後述するピン64、64をそれぞれ差し込み可能な一対のボス44、44が形成されている。一方、このスライダ40の下面には、一対のトーションばね48、48の各他端48b、48bを掛け留め可能な引っ掛け孔46、46が形成されている。
【0016】
最後に、蓋体60を説明する。蓋体60は、上述したボックス20の開口24を塞ぐことができるように略四角形状に形成されているカバー部材である。蓋体60の内面には、上述したスライダ40のボス44、44に差し込んだピン64、64を、さらに、差し込み可能な一対のボス62、62が形成されている。また、蓋体60の内面には、上述した案内板32の長孔30に差し込み可能なガイドピン66も取り付けられている。
【0017】
続いて、上述したボックス20、スライダ40、蓋体60とから構成されるコンソールボックス14の組み付け構造を説明する。まず、スライダ40の両スライドガイド42、42をボックス20の両スライド溝28、28に嵌め合わせた状態で、スライダ40をボックス20に組み付ける。これにより、スライダ40をボックス20の開口24の両縁に沿ってスライドさせることができる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「ボックスの開口における幅方向の両縁に橋渡した状態で、この両縁に沿ってスライド可能なスライダ」に相当する。
【0018】
次に、トーションばね48の一端48aをボックス20の引っ掛け孔34に掛け留め、同他端48bをスライダ40の引っ掛け孔46に掛け留める。このとき、トーションばね48の一端48aを、その軸方向がボックス20の引っ掛け孔34の軸方向に対して回転可能に掛け留める。このことは、トーションばね48の他端48bも同様である。
【0019】
なお、この掛け留めは、左右に対を成すように、2個のトーションばね48、48によって行われている。また、両トーションばね48、48は、スライダ40の両スライドガイド42、42のスライド位置が蓋体60の閉状態に対応する位置にあるとき、定常状態(付勢力が作用していない状態)となるように設定されている。このことは、スライダ40の両スライドガイド42、42のスライド位置が蓋体60の開状態に対応する位置にあるときも同様である。
【0020】
そして、この掛け留め状態のまま、スライダ40の下面にカバー50を組み付ける。これにより、両トーションばね48、48はスライダ40とカバー50との間に挟み込まれる格好となるため、被収容物が両トーションばね48、48に干渉することを防止できる。
【0021】
続いて、蓋体60のボス62とスライダ40のボス44とにピン64を差し込んで、蓋体60をスライダ40に組み付ける。この記載が、特許請求の範囲に記載の「ヒンジ結合」に相当する。このとき、蓋体60のガイドピン66をボックス20の案内板32の長孔30にガイドさせた状態で、蓋体60をスライダ40に組み付ける。なお、上述したピン64の差し込みは、左右に対を成すボス44、62でそれぞれ行われている。コンソールボックス14は、このように組み付けられている。
【0022】
最後に、図2、4〜9を参照して、上述した構成から成るコンソールボックス14の使用例を説明する。まず、蓋体60を閉状態(図2において、実線で示す状態)から開状態(図2において、想像線(2)で示す状態)に切り替える例を説明する。なお、この閉状態では、既に説明したように、スライダ40の両スライドガイド42、42は、ボックス20の両スライド溝28、28の前端に位置している(図4、7参照)。
【0023】
また、この閉状態では、両トーションばね48、48も、既に説明したように、定常状態となっている。これにより、スライダ40の両スライドガイド、42、42のスライド位置が保持されるため、蓋体60も閉状態に保持されている。
【0024】
はじめに、着座者は、蓋体60を後方へ向けて押していく。すると、この蓋体60にヒンジ結合されているスライダ40も、その両スライドガイド42、42がボックス20の両スライド溝28、28に沿って後方へスライドしていく。このとき、両トーションばね48、48は、その各両端48a、48bが狭まる方向へ向けて撓んでいくため、スライダ40と蓋体60とに前方に向けて付勢力が作用し始める。
【0025】
この付勢力に抗して、さらに、蓋体60を後方へ向けて押していくと、両トーションばね48、48は、その各両端48a、48bが狭まる方向へ向けて撓んだ状態から広がる方向へ向けて復元していく(図5参照)。これにより、両トーションばね48、48による付勢力が作用する方向が逆転するため、以降において、主として、この付勢力によって、スライダ40と共に蓋体60も後方へスライドしていく。この逆転が、特許請求の範囲に記載の「トーションばねの付勢力に抗して第1の位置から第2の位置へとスライダをスライドさせていくと、この第1の位置と第2の位置との途中位置でトーションばねの付勢力が作用する方向が逆転する」に相当する。
【0026】
そして、蓋体60のガイドピン66が長孔30の水平部30aから傾斜部30bに到達すると、蓋体60は、その前側が起き上がる方向に向けて両ピン64、64の軸回りに回動し始める(図2において、想像線(1)で示す状態、図8参照)。この記載が、特許請求の範囲に記載の「開口が広がる方向に向けて蓋体がスライダに対してヒンジを介して傾動可能となっており」に相当する。
【0027】
やがて、スライダ40の両スライドガイド42、42がボックス20の両スライド溝28、28の後端に到達すると、既に説明したように、両トーションばね48、48も定常状態に戻される(図6参照)。これにより、スライダ40の両スライドガイド、42、42のスライド位置が保持される。このとき、蓋体60のガイドピン66も案内板32の長孔30の後端に到達しているため、蓋体60も開状態に保持される(図9参照)。このようにして、蓋体60は閉状態から開状態へと切り替わる。
【0028】
次に、これとは逆に、蓋体60を開状態から閉状態に切り替える例を説明する。はじめに、着座者は、蓋体60を、その前側が倒れる方向に向けて両ピン64、64の軸回りに回動させていく。すると、この蓋体60にヒンジ結合されているスライダ40も、その両スライドガイド42、42がボックス20の両スライド溝28、28に沿って前方へスライドしていく。このとき、両トーションばね48、48は、その各両端48a、48bが狭まる方向へ向けて撓んでいくため、スライダ40と蓋体60とに後方に向けて付勢力が作用し始める。
【0029】
この付勢力に抗して、さらに、蓋体60を回動させていくと、両トーションばね48、48は、その各両端48a、48bが狭まる方向へ向けて撓んだ状態から広がる方向へ向けて復元していく(図5参照)。これにより、両トーションばね48、48による付勢力が作用する方向が逆転するため、以降において、主として、この付勢力によって、蓋体60が回動していくと共にスライダ40も前方へスライドしていく。
【0030】
そして、蓋体60のガイドピン66が長孔30の傾斜部30bから水平部30aに到達すると、蓋体60は、その前方へスライドしていく(図8参照)。
【0031】
やがて、スライダ40の両スライドガイド42、42がボックス20の両スライド溝28、28の前端に到達すると、既に説明したように、両トーションばね48、48も定常状態に戻される(図4参照)。これにより、スライダ40の両スライドガイド42、42のスライド位置が保持される。このとき、蓋体60のガイドピン66も案内板32の長孔30の前端に到達しているため、蓋体60も閉状態に保持される(図7参照)。このようにして、蓋体60は開状態から閉状態へと切り替わる。
【0032】
本発明の実施例に係るコンソールボックス14は上述したように構成されている。この構成によれば、開口24を閉塞状態から開放状態に切り替えるとき、両トーションばね48、48の付勢力を利用して蓋体60をボックス20に対して回動させることができる。また、これとは逆に、開口24を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、上述した両トーションばね48、48の付勢力を逆方向に作用させて蓋体60をボックス20に対して前方へ向けてスライドさせることができる。そのため、1種類のばねの利用(この実施例では、2個のトーションばね48、48を利用しているが、ばねの種類としては1種類の利用)であっても、従来技術と同様に、開口24を閉塞状態から開放状態に切り替えるときだけでなく、開口24を開放状態から閉塞状態に切り替えるときも、蓋体60に与える操作力を半減させることができる。
【0033】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、左右に対を成すように2個のトーションばね48、48を掛け留める構成を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、左右のどちらかの1個のトーションばね48のみを掛け留める構成でも構わない。なお、1個のトーションばね48より、左右に対を成すように2個のトーションばね48、48を掛け留めた方が、スライダ40に対して付勢力をスムーズに作用させることができるため、好ましいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
14 コンソールボックス(車両用収納ボックス)
20 ボックス
24 開口
40 スライダ
48 トーションばね
60 蓋体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するボックスと、ボックスの開口における幅方向の両縁に橋渡した状態で、この両縁に沿ってスライド可能なスライダと、スライダに対してヒンジ結合され、このボックスの開口を塞ぐことができるように形成されている蓋体とを備えており、ボックスの開口を塞いだ閉状態から開状態へと、スライダと共に蓋体をスライドさせていくと、開口が広がる方向に向けて蓋体がスライダに対してヒンジを介して傾動可能となっており、蓋体が閉状態に対応する第1の位置から、蓋体が開状態に対応する第2の位置へ向けて蓋体と共にスライダをスライドさせると、スライドさせたスライダが第1の位置へ戻る方向に向けて付勢力が作用するように、ボックスとスライダとの間にトーションばねが掛け留めされており、トーションばねの付勢力に抗して第1の位置から第2の位置へとスライダをスライドさせていくと、この第1の位置と第2の位置との途中位置でトーションばねの付勢力が作用する方向が逆転する車両用収納ボックス。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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