車両用導電路
【課題】運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能であり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能な車両用導電路を提供する。
【解決手段】複数の電源ケーブル2と、複数の電源ケーブルを一括包囲する可とう性を有するシールド部材6と、少なくとも1本の制御用ケーブル3と、制御用ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、隣り合う金属製のパイプ5同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材21と、金属製のパイプ5と連結シールド部材21とシールド部材6で一括包囲された複数の電源ケーブル2の周囲を覆う、可とう性を有する樹脂製のチューブ4と、樹脂製のチューブ4に設けられ、隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25と、を備えた。
【解決手段】複数の電源ケーブル2と、複数の電源ケーブルを一括包囲する可とう性を有するシールド部材6と、少なくとも1本の制御用ケーブル3と、制御用ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、隣り合う金属製のパイプ5同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材21と、金属製のパイプ5と連結シールド部材21とシールド部材6で一括包囲された複数の電源ケーブル2の周囲を覆う、可とう性を有する樹脂製のチューブ4と、樹脂製のチューブ4に設けられ、隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる車両用導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる従来の車両用導電路として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の車両用導電路は、複数の電線と、複数の電線が挿通されるシールド機能を有する金属製のパイプと、金属製のパイプの接続側の端部に設けられ、複数の電線が挿通される筒状の可とう性を有するシールド部材と、を有するものである。この車両用導電路によれば、車両用導電路の形状保持、および飛び石等の外傷からのケーブルの保護をすることができる。
【0004】
しかし、特許文献1の車両用導電路は、金属製のパイプの形状が車種に応じた所望の形状(レイアウト)に予め決められているため、上記車両用導電路の運搬時や保管時等に非常に広いスペースが必要となり、運搬費や保管費が高くなってしまうという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献2及び特許文献3に記載の車両用導電路がある。例えば、特許文献2に記載されている車両用導電路は、複数の電線と、複数の電線が挿通され、長さ方向に並ぶように配された複数の金属製のパイプと、金属製のパイプを連結する可とう性を有するシールド部材と、可とう性を有するシールド部材を覆うプロテクタと、を有するものである。
【0006】
特許文献2,3の車両用導電路によれば、金属製のパイプを分割し、それらを連結するように可とう性を有するシールド部材を設けているので、運搬時や保管時には、シールド部材が設けられている箇所にて折りたたむことができ、運搬時や保管時等のスペースを省スペース化できる。また、車体への取り付け時には、シールド部材にプロテクタ(特許文献3では筒状部材、以下単にプロテクタという)を取り付けることにより、シールド部材を設けた位置での車両用導電路の形状保持、及びシールド部材の保護が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【特許文献2】特開2006−302819号公報
【特許文献3】特開2006−302820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、プロテクタを取り付けるための作業工程が非常に面倒であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、プロテクタが別体となっているため、例えば複数種類の車両用導電路を運搬,保管する際には、取り付け時のペアリングの作業が非常に面倒であり、さらには、運搬時等にプロテクタを紛失する可能性もあり、改善が望まれる。
【0010】
さらにまた、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、取り付け時に車種に応じたレイアウトによって金属製のパイプ間の可とう部が種々に変形される。そのため、取り付け時における可とう部の形状ごとに異なる形状のプロテクタを用意しなければならず、汎用性が低いという問題もある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み為されたものであり、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能であり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能な車両用導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の電源ケーブルと、該複数の電源ケーブルを一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材と、少なくとも1本の制御用ケーブルと、該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプ同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材と、前記金属製のパイプと、前記連結シールド部材と、前記金属製のパイプおよび前記連結シールド部材に沿わせて配置され、前記シールド部材で一括包囲された前記複数の電源ケーブルと、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、前記樹脂製のチューブに設けられ、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材と、を備えた車両用導電路である。
【0013】
前記形状保持部材は、前記可とう部を挟むように前記樹脂製のチューブの外周に設けられた2つの筒状のホルダと、前記両ホルダ間に架け渡して設けられると共に、前記両ホルダに対して回動自在に固定され、かつ、前記可とう部を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材と、を備えてもよい。
【0014】
前記両ホルダは、前記樹脂製のチューブの外方側に突出する突起を有し、前記板状部材は、一方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合する係合穴と、他方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合すると共に、前記突起をスライド自在に収容するスライド穴と、を有してもよい。
【0015】
前記スライド穴は、前記突起と前記スライド穴との間の摩擦により、前記突起を前記スライド穴の任意の位置に保持し、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成されてもよい。
【0016】
前記樹脂製のチューブは、長手方向で少なくとも2つ以上に分割されてもよい。
【0017】
前記シールド部材の外周、又は前記金属製のパイプ及び前記連結シールド部材の外周の少なくとも一方に、可とう性を有する被覆層を設けてもよい。
【0018】
また、本発明は、少なくとも、ケーブルと、該ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、を有し、前記ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材を備えた車両用導電路である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能であり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能な車両用導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は外観を示す平面図、(b)はその内部構造を示す破断面図である。
【図2】図1の車両用導電路を折りたたんだ際の平面図である。
【図3】図1の3A−3A線断面図である。
【図4】図1の車両用導電路で用いる電源ケーブルバンドルを示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、図1の車両用導電路で用いる形状保持部材を示す平面図である。
【図6】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、複数の金属製のパイプに制御用ケーブルを収容したときの平面図である。
【図7】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、(a)は金属製のパイプを所望の形状に成形したときの平面図、(b)はその7B−7B線断面図である。
【図8】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプに連結用編組シールドとシールド線を取り付けたときの平面図である。
【図9】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、成形した複数の金属製のパイプと連結用編組シールドに電源ケーブルバンドルを沿わせたときの平面図である。
【図10】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプと電源ケーブルバンドルとをテープ材で固定したときの平面図である。
【図11】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプと連結用編組シールドと電源ケーブルバンドルとをコルゲートチューブで覆ったときの平面図である。
【図12】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、保護部材、端末用コルゲートチューブを設け、電源ケーブルと制御用ケーブルの端部にコネクタ、接続端子を設けたときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は外観を示す平面図、(b)はその内部構造を示す破断面図である。また、図2は、図1の車両用導電路を折りたたんだ際の平面図、図3は、図1の3A−3A線断面図である。
【0023】
本実施の形態に係る車両用導電路1は、少なくとも、ケーブル(ここでは制御用ケーブル)3と、該ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、を有し、ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を備えている。
【0024】
詳しくは、車両用導電路1は、図1〜3に示すように、複数の電源ケーブル2と、複数の電源ケーブル2を一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材としての編組シールド6と、少なくとも1本の制御用ケーブル3と、制御用ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材としての連結用編組シールド21と、金属製のパイプ5と、連結用編組シールド21と、金属製のパイプ5および連結用編組シールド21に沿わせて配置され、編組シールド6で一括包囲された複数の電源ケーブル2と、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブとしてのコルゲートチューブ4と、コルゲートチューブ4に設けられ、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ形状を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25と、を備えている。
【0025】
車両用導電路1では、制御用ケーブル3を複数の金属製のパイプ5に収容すると共に、制御用ケーブル3を収容した複数の金属製のパイプ5を所望の形状に成形することで、制御用ケーブル3を所望の形状に保持し、かつ、複数の金属製のパイプ5を連結用編組シールド21で連結し、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、その周囲をコルゲートチューブ4で覆うようにしている。なお、コルゲートチューブとは、蛇腹のついた中空のチューブであり、スリットチューブ、可とう電線管などとも呼ばれる。
【0026】
本実施の形態では、三相交流を想定した3本の電源ケーブル2と、1本の制御用ケーブル3の合計4本のケーブルを用いる場合を説明する。電源ケーブル2は、図3に示すように、中心導体2aの外周に絶縁体2bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、中心導体3aの外周に絶縁体3bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、例えば、CAN(Controller Area Network)などに用いられるものである。
【0027】
編組シールド6は、例えば、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものである。軽量化の観点からは、編組シールド6として、アルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いることが望ましい。編組シールド6は、電源ケーブル2で発生するノイズ(電磁波)が外部に放射され、車載される機器等へ影響を及ぼすことを抑制するシールドの役割を果たす。本実施の形態においては、編組シールド6の厚さを0.5mmとした。以下、複数(ここでは3本)の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲したものを、電源ケーブルバンドル7と呼称する。図4に示すように、本実施の形態では、電源ケーブルバンドル7として、3本の電源ケーブル2を撚り合わせ、その周囲を編組シールド6で一括包囲した三相撚り一括シールド編組付きケーブルを用いるようにした。
【0028】
金属製のパイプ5としては、軽量かつ低コストなアルミニウムを用いるとよい。金属製のパイプ5の厚さは、強度を保つため1mm以上とすることが望ましい。これ以下の厚さにすると強度が保てずに車両用導電路1自体の自重による撓みなどが生じる可能性があるためである。この金属製のパイプ5は、配線形状を所望の形状に保持する役割と、制御用ケーブル3のシールドの役割を兼ねている。本実施の形態において、金属製のパイプ5は、内径が9.0mm、外径が12.0mm、厚さが1.5mmのものを用いた。
【0029】
本実施の形態では、2本の金属製のパイプ5を用い、2本の金属製のパイプ5を連結用編組シールド21で連結し、その連結用編組シールド21で2本の金属製のパイプ5間の制御用ケーブル3の周囲を覆うようにしている。制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間には、金属製のパイプ5により形状保持がなされない、可とう性を有する可とう部22が形成される。2本の金属製のパイプ5の長さは、車両用導電路1の略中央部に可とう部22が形成されるように(可とう部22にて折りたたんだ際に最も小さくなるように)、適宜設定するとよい。なお、ここでは2本の金属製のパイプ5を用いる場合を説明するが、3本以上の金属製のパイプ5を用いるようにしてもよい。例えば、金属製のパイプ5を3本用いた場合、可とう部22が2箇所形成されることになる。
【0030】
連結用編組シールド21は、可とう部22における制御用ケーブル3のシールドの役割を果たすものである。連結用編組シールド21としては、編組シールド6と同様に、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いるとよい。連結用編組シールド21は、金属バンド23により金属製のパイプ5に固定される。
【0031】
車両用導電路1では、電源ケーブルバンドル7は、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置され、かつ、金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とは、その長手方向の所定間隔離れた位置にてテープ材8を用いて結束して固定される(図1(b)ではテープ材8を省略している)。このとき、電源ケーブルバンドル7の編組シールド6が金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21に接触するため、それらが車両の振動等により摩耗してしまうことも考えられるが、これは、編組シールド6の外周、又は金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21の外周のうち少なくとも一方に樹脂からなる可とう性を有する被覆層を設けることにより防止することが可能である。また、このようにすることで、編組シールド6と金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21とに異なる金属材料を用いた場合には、それらが水に触れた際に生じる異種金属間の腐食(ガルバニック腐食)を防止することも可能である。
【0032】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7との結束に用いるテープ材8としては、粘着性を有するテープを用いたものであっても、そうでないテープを用いたものであってもよく、またプラスチックバンドのようなものを用いても良い。本実施の形態においては、テープ材8は厚さ0.5mmのものを用いた。
【0033】
コルゲートチューブ4は、予め所定の色(高電圧部であることを示す橙色)に着色される。コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、特に限定するものではないが、耐熱性、難燃性の良好な樹脂を用いることが望ましい。また、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、薬品(例えば、融雪剤としてのCaCl2)からの保護を考慮して耐薬品性を有することが好ましい。これは、例えば、CaCl2をまいた雪道を車両が走行する際に、CaCl2がコルゲートチューブ4に付着してコルゲートチューブ4が損傷してしまうのを低減するためである。
【0034】
また、コルゲートチューブ4は、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2と、少なくとも1本の制御用ケーブル3の、外的な干渉物(例えば、飛び石等)からの保護を考慮して、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は外的な干渉物からの保護ができる程度の強度を有することが望ましい。
【0035】
なお、本実施の形態では、可とう性を有する樹脂製のチューブとしてコルゲートチューブ4を用いたが、コルゲートチューブ4は、表面積が大きく放熱性が良いという利点からも車両用導電路1に用いるのに望ましい。本実施の形態においては、コルゲートチューブ4として、断面視で長円形状(2本の平行な直線と、両直線の端部同士を接続する2本の円弧状の曲線とからなる形状)のものを用いた。樹脂製のチューブとしては、コルゲートチューブ4に限らず、可とう性のある樹脂製またはゴム製のチューブであればどのようなものを用いてもよい。
【0036】
本実施の形態では、コルゲートチューブ4としては、長手方向で少なくとも2つ以上に分割されたものを用いた。ここでは、コルゲートチューブ4を長手方向で2つに分割した場合を説明する。分割したコルゲートチューブ4は、チューブ連結部材であるグロメット24により連結される。グロメット24は、例えばゴムなどからなる。なお、グロメット24を蛇腹構造とすれば、屈曲部分でコルゲートチューブ4を連結することも可能である。グロメット24を屈曲部分に配置することにより、コルゲートチューブ4を屈曲部分に通す作業時間を削減することが可能となる。
【0037】
連結後のコルゲートチューブ4は、2本の金属製のパイプ5全体を覆う程度の長さ(2本の金属製のパイプ5と連結用編組シールド21の全体の長さよりも若干短い長さ)に形成される。コルゲートチューブ4の端部では、コルゲートチューブ4から延出された制御用ケーブル3と電源ケーブルバンドル7とが分岐する。この分岐部には、当該分岐部を保護するためのゴムなどからなる保護部材(分岐用グロメット)10が設けられる。
【0038】
また、金属製のパイプ5の端部(連結用編組シールド21が設けられた側と反対側の端部)には、可とう性を有するシールド線9の一端が電気的に接続され、そのシールド線9で金属製のパイプ5の端部より延出された制御用ケーブル3の周囲を覆うようにされる。シールド線9は、例えば編組シールドからなり、その他端部は、制御用ケーブル3が接続される図示しない機器のシールドケースに電気的に接続される。つまり、シールド線9は、金属製のパイプ5を機器のシールドケースに電気的に接続する役割と、金属製のパイプ5から延出された制御用ケーブル3のシールドの役割を兼ねている。
【0039】
保護部材10から機器側に延出された制御用ケーブル3およびシールド線9は、端末用コルゲートチューブ11内に収容される。制御用ケーブル3の端部には、機器に接続するための接続端子16が設けられる。
【0040】
他方、コルゲートチューブ4の端部から延出された編組シールド6は、複数の電源ケーブル2が接続される図示しない機器のシールドケースに電気的に接続される。保護部材10から機器側に延出された電源ケーブルバンドル7は、端末用コルゲートチューブ12内に収容される。電源ケーブル2の端部には、機器に接続するためのコネクタ13や、接続端子14が設けられる。
【0041】
さて、車両用導電路1は、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を、さらに備えている。なお、図1(b)では形状保持部材25を省略している。
【0042】
図1(a)、図2、および図5(a)〜(c)に示すように、形状保持部材25は、可とう部22を挟むようにコルゲートチューブ4の外周に設けられた2つの筒状のホルダ26と、両ホルダ26間に架け渡して設けられると共に、両ホルダ26に対して回動自在に固定され、かつ、可とう部22を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材27と、を備えている。なお、図1,2,5では板状部材27が1枚しか示されていないが、コルゲートチューブ4を挟むように、2枚の板状部材27が備えられている。
【0043】
ホルダ26は、例えば、POM(ポリアセタール)などの樹脂からなる筒状体である。両ホルダ26の可とう部22側の端部には、対向位置から径方向外方(コルゲートチューブ4の外方側)に突出する突起28が形成される。ホルダ26の可とう部22と反対側の端部には、車両用導電路1を車体に取り付けるための取付金具29が設けられる。
【0044】
ホルダ26と取付金具29は、車両用導電路1を車体に取り付けるために従来より用いられているものであり、車両用導電路1では、コルゲートチューブ4の両端部(連結後のコルゲートチューブ4の両端部)にも、ホルダ26と取付金具29がそれぞれ設けられている。本発明では、従来用いられているホルダ26を利用して、形状保持部材25を形成する。
【0045】
板状部材27としては、樹脂からなるものを用いてもよいし、金属からなるものを用いてもよい。板状部材27は、一方(図5(a)では右側)のホルダ26の突起28を回動自在に係合する係合穴30と、他方(図5(a)では左側)のホルダ26の突起28を回動自在に係合すると共に、突起28をスライド自在に収容するスライド穴31と、を有している。スライド穴31は、可とう部22を直線状とした際に、長手方向に延びる長穴状に形成される(図1(a),図5(a)参照)。
【0046】
図1(a)および図5(a)に示すように、可とう部22を直線状とすると、突起28はスライド穴31の端部側(図5(a)では左側)にスライドする。また、図2および図5(b)に示すように、可とう部22を180度曲げると、突起28は、スライド穴31の中心側(図5(b)では下側)にスライドする。車両用導電路1を運搬あるいは保管する際には、可とう部22を180度曲げた形状とすれば、省スペース化が可能である。
【0047】
さらに、突起28をスライド穴31内でスライド・回動させることで、図5(c)に示すように可とう部22を略S字状とすることもでき、可とう部22を任意の曲げ形状とすることができる。車両用導電路1を車体に取り付ける際には、可とう部22を直線状にすることもできるし、可とう部22を任意の曲げ形状とすることも可能である。
【0048】
2枚の板状部材27は、コルゲートチューブ4を、コルゲートチューブ4の厚さが薄い方向から挟むように設けられる。つまり、2枚の板状部材27は、長円形状のコルゲートチューブ4の2本の直線側から挟むように(図3の上下方向から挟むように)設けられる。このように板状部材27を設けることにより、可とう部22の曲げ方向が、コルゲートチューブ4の厚さが厚い方向(図2に矢印で示す方向)のみに規制される。
【0049】
スライド穴31は、突起28とスライド穴31との間の摩擦により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持し、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成される。これにより、手で力を加えて可とう部22の曲げ形状を変化させた後、手を離せば、そのままの曲げ形状で可とう部22が保持されることになる。なお、板状部材27にロック機構を設け、当該ロック機構により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持できるようにしてもよい。
【0050】
次に、車両用導電路1の製造方法を説明する。
【0051】
車両用導電路1を製造する際は、まず、図6に示すように、複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5に制御用ケーブル3を通し、図7(a),(b)に示すように、制御用ケーブル3を通した複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5を機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)により所望の形状に成形する。金属製のパイプ5を成形する際には、作業性を向上させるため、複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5をクランプなどで連結固定し、1本の金属製のパイプとして取り扱えるようにすることが望ましい。
【0052】
金属製のパイプ5をベンダー等により曲げ加工して所望の形状に成形した後、図8に示すように、金属製のパイプ5同士を連結用編組シールド21で連結し、その連結用編組シールド21で金属製のパイプ5間の制御用ケーブル3の周囲を覆う。連結用編組シールド21は金属バンド23により金属製のパイプ5に取り付けられる。また、金属製のパイプ5の連結用編組シールド21を設けた側と反対側の端部に、シールド線9を接続し、そのシールド線9で金属製のパイプ5の端部より延出された制御用ケーブル3の周囲を覆う。シールド線9は、金属バンド15を用いて金属製のパイプ5に取り付けられる。
【0053】
その後、図9に示すように、電源ケーブルバンドル7を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、図10に示すように、金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とを、長手方向に所定間隔の位置にてテープ材8で結束して固定する。
【0054】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とを固定した後、図11に示すように、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5、および電源ケーブルバンドル7を、コルゲートチューブ4で覆う。ここでは、コルゲートチューブ4を長手方向で2分割しているため、テープ材8により固定した金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7の両端部から分割したコルゲートチューブ4をそれぞれ通し、分割したコルゲートチューブ4をグロメット24により連結する。グロメット24は、コルゲートチューブ4との間に隙間が生じないように設けられる。
【0055】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7をコルゲートチューブ4で覆った後、図12に示すように、電源ケーブルバンドル7と制御用ケーブル3とが分岐する分岐部に保護部材10を設ける。保護部材10は、コルゲートチューブ4との間に隙間が生じないように設けられる。また、保護部材10から機器側に延出する制御用ケーブル3とシールド線9、および電源ケーブルバンドル7を端末用コルゲートチューブ11,12にそれぞれ収容し、制御用ケーブル3の端部に接続端子16、電源ケーブル2の端部にコネクタ13や接続端子14をそれぞれ設ける。
【0056】
その後、コルゲートチューブ4の任意の位置にホルダ26(および取付金具29)を設け、可とう部22に形状保持部材25を設ければ、図1の車両用導電路1が得られる。
【0057】
本実施の形態の作用を説明する。
【0058】
本実施の形態に係る車両用導電路1では、制御用ケーブル3を複数の金属製のパイプ5に収容すると共に、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5を所望の形状に成形することで、制御用ケーブル3を所望の形状に保持すると共に、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5同士を連結用編組シールド21で連結し、かつ、複数の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲した電源ケーブルバンドル7を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、その周囲をコルゲートチューブ4で覆うようにしており、さらに、コルゲートチューブ4に、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を設けている。
【0059】
車両用導電路1では、可とう部22にて車両用導電路1を折りたたむことができるので、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能である。なお、可とう部22を3箇所以上形成することも可能であるが、1箇所または2箇所の可とう部22を形成することで、十分な効果が期待できる。
【0060】
また、車両用導電路1では、形状保持部材25をコルゲートチューブ4に一体に設けているため、車両用導電路1を車体に取り付ける際に、別体となっているプロテクタなどの部材を取り付ける作業が不要となり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能である。また、形状保持部材25をコルゲートチューブ4に一体に設けることにより、形状保持部材25が紛失するなどの問題が発生するおそれもない。
【0061】
さらに、車両用導電路1では、形状保持部材25により可とう部22の曲げ方向を規制しているため、可とう部22の曲げ方向を規制しない場合と比較して、取り付け時の作業が容易となる。
【0062】
さらにまた、車両用導電路1では、形状保持部材25により可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持できるため、プロテクタの形状により可とう部22の曲げ形状が決定される従来の車両用導電路と比較して、汎用性が高い。
【0063】
また、車両用導電路1では、形状保持部材25を、従来用いられている2つのホルダ26と、2枚の板状部材27とで構成しているため、非常に簡易な構造で形状保持部材25を実現でき、低コストである。
【0064】
さらに、車両用導電路1では、ホルダ26に突起28を形成すると共に、板状部材27に突起28を回動自在かつスライド自在に係合するスライド穴31を形成し、そのスライド穴31を、突起28とスライド穴31との間の摩擦により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持するようにしているため、簡易な構造で、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持することが可能である。
【0065】
また、車両用導電路1では、板状部材27において、ホルダ26の突起28を係合する2つの穴30,31のうち、一方のみをスライド穴31としているので、形状保持部材25の位置決めがし易い。
【0066】
また、車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を、長手方向で少なくとも2つ以上に分割している。
【0067】
従来のコルゲートチューブ4を分割しない車両用導電路では、屈曲部分が多い場合、一方の端部からコルゲートチューブ4を通していくと、他方の端部に近くなるほど大きな挿入力が必要となり、挿入作業に時間がかかる。これに対して、本発明の車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を分割しているため、両端から各々のコルゲートチューブ4を挿入することが可能となり、挿入作業を容易にでき、作業時間を短縮できる。例えば、コルゲートチューブ2を2分割した場合、挿入作業の時間を約1/2とすることができる。
【0068】
また、車両用導電路1は、例えばエンジンルームや排気管近傍など高温となる場所に配置される場合もあり、このような高温となる場所に配置されるコルゲートチューブ4は耐熱性が要求される。従来のコルゲートチューブ4を分割しない車両用導電路では、コルゲートチューブ4の一部が高温となる場合であっても、コルゲートチューブ4全体を耐熱仕様としなければならず、コストが非常に高くなる。これに対して、本発明の車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を分割しているため、高温となる部分のみに耐熱仕様(例えば、連続125℃耐熱のナイロン製)のコルゲートチューブ4を用い、その他の部分に安価な通常(例えば、連続95℃耐熱のポリプロピレン製)のコルゲートチューブ4を用いることが可能となり、コストを大幅に低減できる。例えば、全長の1/3に耐熱仕様のコルゲートチューブ4を用いた場合、全体を耐熱仕様とした場合と比較して、コルゲートチューブ4の費用を約2/3に低減できる。
【0069】
また、車両用導電路1では、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5と電源ケーブル2とを予め着色したコルゲートチューブ4に収容しているため、従来行っていた金属製のパイプに塗装を行う塗装工程を省略することが可能となる。これにより製造の容易な車両用導電路1を実現でき、結果的に製造コストも削減できる。また、本実施の形態では、金属製のパイプ5には塗装を施さないので、金属製のパイプに塗装を施す従来技術と比較してリサイクルし易い車両用導電路1を実現できる。
【0070】
さらに、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲しているため、電源ケーブル2にて発生するノイズ(電磁波)の放射を編組シールド6にて抑制することができ、かつ、制御用ケーブル3を金属製のパイプ5(および連結用編組シールド21)に収容しているため、結果的に制御用ケーブル3を2重にシールドしていることになり、電源ケーブル2にて発生するノイズが制御用ケーブル3を伝搬する電気信号に影響を及ぼしてしまうことがなくなる。このため、電源ケーブル2や制御用ケーブル3として、シールド用の外部導体のない安価なケーブルを用いることが可能になり、コスト低減につながる。
【0071】
また、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル2のみを編組シールド6で一括包囲し、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2を制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせているため、電源ケーブル2と制御用ケーブル3とを容易に分岐できる。さらに、車両用導電路1では、分岐した電源ケーブル2は編組シールド6で覆われているため、分岐部分に別途シールドなどを設ける必要がなく、電源ケーブル2の機器への接続が容易となる。
【0072】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5から延出した制御用ケーブル3をそのまま機器に接続することが可能であり、制御用ケーブル3の機器への接続が容易である。なお、本実施の形態では、金属製のパイプ5の端部にシールド線9を設ける場合を説明したが、金属製のパイプ5を接続対象の機器の近傍まで延長し、制御用ケーブル3の露出距離を短くすることで、シールド線9を省略することも可能である。なお、シールド線9を省略する場合、別途用意した電線などを用いて金属製のパイプ5をグランド接続すればよい。
【0073】
なお、金属製のパイプ5と電源ケーブル2とを一括して編組シールド6で覆う構成も考えられるが、この場合、上述のように電源ケーブル2と制御用ケーブル3を分岐しにくくなり、さらに、電源ケーブル2と金属製のパイプ5との関係が比較的自由であるため、振動により電源ケーブル2同士が互いに接触し摩耗・断線などの不具合が顕著に発生するおそれがある。車両用導電路1では、電源ケーブル2が編組シールド6で一括包囲され、かつ、テープ材8により金属製のパイプ5にしっかりと固定されているので、振動による摩耗・断線などの不具合を低減することができる。
【0074】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5の径を小さくできるので、小さい曲げ半径で曲げても、従来の全体を太い金属製のパイプで包囲したものと比較して、金属製のパイプ5が座屈しにくい。よって、金属製のパイプ5の厚さを薄くすることも可能となり、金属製のパイプ5に用いる材料の無駄を少なくできる。
【0075】
さらに、車両用導電路においては、その設置スペース上の制約から、高さ方向または幅方向のいずれか一方の長さをより小さくしたい場合があるが、車両用導電路1は断面視で長円形状に形成されるため、幅高さ方向または幅方向のいずれか一方の長さをより小さくでき、車種に応じて様々なレイアウトに対応することが可能である。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
例えば、上記実施の形態では、1本の制御用ケーブル3を金属製のパイプ5内に収容する場合を説明したが、金属製のパイプ5内に収容する制御用ケーブル3は2本以上であってもよいし、制御用ケーブル3に加えて、金属製のパイプ5内に制御用ケーブル3以外のケーブル、例えば、補助電力線などを収容するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、3相交流を想定して3本の電源ケーブル2を用いる場合を説明したが、電源ケーブル2の本数はこれに限らず、例えば、2相交流を想定して2本の電源ケーブル2を用いるようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、板状部材27において、ホルダ26の突起28を係合する2つの穴30,31のうち、一方のみをスライド穴31としたが、両方をスライド穴としてもよい。
【0080】
また、ホルダ26のコルゲートチューブ4と接触する部分には、コルゲートチューブ4の凹凸に嵌合するような凹凸形状を形成してもよい。こうすることで、可とう部22の形状保持の際、ホルダ26がコルゲートチューブ4上で移動してしまったり、更にはホルダ26がコルゲートチューブ4から抜けてしまうことを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用動電路
2 電源ケーブル
3 制御用ケーブル
4 コルゲートチューブ(樹脂製のチューブ)
5 金属製のパイプ
6 編組シールド(シールド部材)
7 電源ケーブルバンドル
21 連結用編組シールド(連結シールド部材)
22 可とう部
25 形状保持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる車両用導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる従来の車両用導電路として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の車両用導電路は、複数の電線と、複数の電線が挿通されるシールド機能を有する金属製のパイプと、金属製のパイプの接続側の端部に設けられ、複数の電線が挿通される筒状の可とう性を有するシールド部材と、を有するものである。この車両用導電路によれば、車両用導電路の形状保持、および飛び石等の外傷からのケーブルの保護をすることができる。
【0004】
しかし、特許文献1の車両用導電路は、金属製のパイプの形状が車種に応じた所望の形状(レイアウト)に予め決められているため、上記車両用導電路の運搬時や保管時等に非常に広いスペースが必要となり、運搬費や保管費が高くなってしまうという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献2及び特許文献3に記載の車両用導電路がある。例えば、特許文献2に記載されている車両用導電路は、複数の電線と、複数の電線が挿通され、長さ方向に並ぶように配された複数の金属製のパイプと、金属製のパイプを連結する可とう性を有するシールド部材と、可とう性を有するシールド部材を覆うプロテクタと、を有するものである。
【0006】
特許文献2,3の車両用導電路によれば、金属製のパイプを分割し、それらを連結するように可とう性を有するシールド部材を設けているので、運搬時や保管時には、シールド部材が設けられている箇所にて折りたたむことができ、運搬時や保管時等のスペースを省スペース化できる。また、車体への取り付け時には、シールド部材にプロテクタ(特許文献3では筒状部材、以下単にプロテクタという)を取り付けることにより、シールド部材を設けた位置での車両用導電路の形状保持、及びシールド部材の保護が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【特許文献2】特開2006−302819号公報
【特許文献3】特開2006−302820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、プロテクタを取り付けるための作業工程が非常に面倒であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、プロテクタが別体となっているため、例えば複数種類の車両用導電路を運搬,保管する際には、取り付け時のペアリングの作業が非常に面倒であり、さらには、運搬時等にプロテクタを紛失する可能性もあり、改善が望まれる。
【0010】
さらにまた、特許文献2,3に記載の車両用導電路では、取り付け時に車種に応じたレイアウトによって金属製のパイプ間の可とう部が種々に変形される。そのため、取り付け時における可とう部の形状ごとに異なる形状のプロテクタを用意しなければならず、汎用性が低いという問題もある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み為されたものであり、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能であり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能な車両用導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の電源ケーブルと、該複数の電源ケーブルを一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材と、少なくとも1本の制御用ケーブルと、該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプ同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材と、前記金属製のパイプと、前記連結シールド部材と、前記金属製のパイプおよび前記連結シールド部材に沿わせて配置され、前記シールド部材で一括包囲された前記複数の電源ケーブルと、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、前記樹脂製のチューブに設けられ、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材と、を備えた車両用導電路である。
【0013】
前記形状保持部材は、前記可とう部を挟むように前記樹脂製のチューブの外周に設けられた2つの筒状のホルダと、前記両ホルダ間に架け渡して設けられると共に、前記両ホルダに対して回動自在に固定され、かつ、前記可とう部を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材と、を備えてもよい。
【0014】
前記両ホルダは、前記樹脂製のチューブの外方側に突出する突起を有し、前記板状部材は、一方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合する係合穴と、他方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合すると共に、前記突起をスライド自在に収容するスライド穴と、を有してもよい。
【0015】
前記スライド穴は、前記突起と前記スライド穴との間の摩擦により、前記突起を前記スライド穴の任意の位置に保持し、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成されてもよい。
【0016】
前記樹脂製のチューブは、長手方向で少なくとも2つ以上に分割されてもよい。
【0017】
前記シールド部材の外周、又は前記金属製のパイプ及び前記連結シールド部材の外周の少なくとも一方に、可とう性を有する被覆層を設けてもよい。
【0018】
また、本発明は、少なくとも、ケーブルと、該ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、を有し、前記ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材を備えた車両用導電路である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能であり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能な車両用導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は外観を示す平面図、(b)はその内部構造を示す破断面図である。
【図2】図1の車両用導電路を折りたたんだ際の平面図である。
【図3】図1の3A−3A線断面図である。
【図4】図1の車両用導電路で用いる電源ケーブルバンドルを示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、図1の車両用導電路で用いる形状保持部材を示す平面図である。
【図6】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、複数の金属製のパイプに制御用ケーブルを収容したときの平面図である。
【図7】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、(a)は金属製のパイプを所望の形状に成形したときの平面図、(b)はその7B−7B線断面図である。
【図8】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプに連結用編組シールドとシールド線を取り付けたときの平面図である。
【図9】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、成形した複数の金属製のパイプと連結用編組シールドに電源ケーブルバンドルを沿わせたときの平面図である。
【図10】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプと電源ケーブルバンドルとをテープ材で固定したときの平面図である。
【図11】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、金属製のパイプと連結用編組シールドと電源ケーブルバンドルとをコルゲートチューブで覆ったときの平面図である。
【図12】図1の車両用導電路の製造方法を説明する図であり、保護部材、端末用コルゲートチューブを設け、電源ケーブルと制御用ケーブルの端部にコネクタ、接続端子を設けたときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は外観を示す平面図、(b)はその内部構造を示す破断面図である。また、図2は、図1の車両用導電路を折りたたんだ際の平面図、図3は、図1の3A−3A線断面図である。
【0023】
本実施の形態に係る車両用導電路1は、少なくとも、ケーブル(ここでは制御用ケーブル)3と、該ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、を有し、ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を備えている。
【0024】
詳しくは、車両用導電路1は、図1〜3に示すように、複数の電源ケーブル2と、複数の電源ケーブル2を一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材としての編組シールド6と、少なくとも1本の制御用ケーブル3と、制御用ケーブル3が収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプ5と、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材としての連結用編組シールド21と、金属製のパイプ5と、連結用編組シールド21と、金属製のパイプ5および連結用編組シールド21に沿わせて配置され、編組シールド6で一括包囲された複数の電源ケーブル2と、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブとしてのコルゲートチューブ4と、コルゲートチューブ4に設けられ、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ形状を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25と、を備えている。
【0025】
車両用導電路1では、制御用ケーブル3を複数の金属製のパイプ5に収容すると共に、制御用ケーブル3を収容した複数の金属製のパイプ5を所望の形状に成形することで、制御用ケーブル3を所望の形状に保持し、かつ、複数の金属製のパイプ5を連結用編組シールド21で連結し、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、その周囲をコルゲートチューブ4で覆うようにしている。なお、コルゲートチューブとは、蛇腹のついた中空のチューブであり、スリットチューブ、可とう電線管などとも呼ばれる。
【0026】
本実施の形態では、三相交流を想定した3本の電源ケーブル2と、1本の制御用ケーブル3の合計4本のケーブルを用いる場合を説明する。電源ケーブル2は、図3に示すように、中心導体2aの外周に絶縁体2bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、中心導体3aの外周に絶縁体3bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、例えば、CAN(Controller Area Network)などに用いられるものである。
【0027】
編組シールド6は、例えば、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものである。軽量化の観点からは、編組シールド6として、アルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いることが望ましい。編組シールド6は、電源ケーブル2で発生するノイズ(電磁波)が外部に放射され、車載される機器等へ影響を及ぼすことを抑制するシールドの役割を果たす。本実施の形態においては、編組シールド6の厚さを0.5mmとした。以下、複数(ここでは3本)の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲したものを、電源ケーブルバンドル7と呼称する。図4に示すように、本実施の形態では、電源ケーブルバンドル7として、3本の電源ケーブル2を撚り合わせ、その周囲を編組シールド6で一括包囲した三相撚り一括シールド編組付きケーブルを用いるようにした。
【0028】
金属製のパイプ5としては、軽量かつ低コストなアルミニウムを用いるとよい。金属製のパイプ5の厚さは、強度を保つため1mm以上とすることが望ましい。これ以下の厚さにすると強度が保てずに車両用導電路1自体の自重による撓みなどが生じる可能性があるためである。この金属製のパイプ5は、配線形状を所望の形状に保持する役割と、制御用ケーブル3のシールドの役割を兼ねている。本実施の形態において、金属製のパイプ5は、内径が9.0mm、外径が12.0mm、厚さが1.5mmのものを用いた。
【0029】
本実施の形態では、2本の金属製のパイプ5を用い、2本の金属製のパイプ5を連結用編組シールド21で連結し、その連結用編組シールド21で2本の金属製のパイプ5間の制御用ケーブル3の周囲を覆うようにしている。制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間には、金属製のパイプ5により形状保持がなされない、可とう性を有する可とう部22が形成される。2本の金属製のパイプ5の長さは、車両用導電路1の略中央部に可とう部22が形成されるように(可とう部22にて折りたたんだ際に最も小さくなるように)、適宜設定するとよい。なお、ここでは2本の金属製のパイプ5を用いる場合を説明するが、3本以上の金属製のパイプ5を用いるようにしてもよい。例えば、金属製のパイプ5を3本用いた場合、可とう部22が2箇所形成されることになる。
【0030】
連結用編組シールド21は、可とう部22における制御用ケーブル3のシールドの役割を果たすものである。連結用編組シールド21としては、編組シールド6と同様に、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いるとよい。連結用編組シールド21は、金属バンド23により金属製のパイプ5に固定される。
【0031】
車両用導電路1では、電源ケーブルバンドル7は、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置され、かつ、金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とは、その長手方向の所定間隔離れた位置にてテープ材8を用いて結束して固定される(図1(b)ではテープ材8を省略している)。このとき、電源ケーブルバンドル7の編組シールド6が金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21に接触するため、それらが車両の振動等により摩耗してしまうことも考えられるが、これは、編組シールド6の外周、又は金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21の外周のうち少なくとも一方に樹脂からなる可とう性を有する被覆層を設けることにより防止することが可能である。また、このようにすることで、編組シールド6と金属製のパイプ5及び連結用編組シールド21とに異なる金属材料を用いた場合には、それらが水に触れた際に生じる異種金属間の腐食(ガルバニック腐食)を防止することも可能である。
【0032】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7との結束に用いるテープ材8としては、粘着性を有するテープを用いたものであっても、そうでないテープを用いたものであってもよく、またプラスチックバンドのようなものを用いても良い。本実施の形態においては、テープ材8は厚さ0.5mmのものを用いた。
【0033】
コルゲートチューブ4は、予め所定の色(高電圧部であることを示す橙色)に着色される。コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、特に限定するものではないが、耐熱性、難燃性の良好な樹脂を用いることが望ましい。また、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、薬品(例えば、融雪剤としてのCaCl2)からの保護を考慮して耐薬品性を有することが好ましい。これは、例えば、CaCl2をまいた雪道を車両が走行する際に、CaCl2がコルゲートチューブ4に付着してコルゲートチューブ4が損傷してしまうのを低減するためである。
【0034】
また、コルゲートチューブ4は、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2と、少なくとも1本の制御用ケーブル3の、外的な干渉物(例えば、飛び石等)からの保護を考慮して、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は外的な干渉物からの保護ができる程度の強度を有することが望ましい。
【0035】
なお、本実施の形態では、可とう性を有する樹脂製のチューブとしてコルゲートチューブ4を用いたが、コルゲートチューブ4は、表面積が大きく放熱性が良いという利点からも車両用導電路1に用いるのに望ましい。本実施の形態においては、コルゲートチューブ4として、断面視で長円形状(2本の平行な直線と、両直線の端部同士を接続する2本の円弧状の曲線とからなる形状)のものを用いた。樹脂製のチューブとしては、コルゲートチューブ4に限らず、可とう性のある樹脂製またはゴム製のチューブであればどのようなものを用いてもよい。
【0036】
本実施の形態では、コルゲートチューブ4としては、長手方向で少なくとも2つ以上に分割されたものを用いた。ここでは、コルゲートチューブ4を長手方向で2つに分割した場合を説明する。分割したコルゲートチューブ4は、チューブ連結部材であるグロメット24により連結される。グロメット24は、例えばゴムなどからなる。なお、グロメット24を蛇腹構造とすれば、屈曲部分でコルゲートチューブ4を連結することも可能である。グロメット24を屈曲部分に配置することにより、コルゲートチューブ4を屈曲部分に通す作業時間を削減することが可能となる。
【0037】
連結後のコルゲートチューブ4は、2本の金属製のパイプ5全体を覆う程度の長さ(2本の金属製のパイプ5と連結用編組シールド21の全体の長さよりも若干短い長さ)に形成される。コルゲートチューブ4の端部では、コルゲートチューブ4から延出された制御用ケーブル3と電源ケーブルバンドル7とが分岐する。この分岐部には、当該分岐部を保護するためのゴムなどからなる保護部材(分岐用グロメット)10が設けられる。
【0038】
また、金属製のパイプ5の端部(連結用編組シールド21が設けられた側と反対側の端部)には、可とう性を有するシールド線9の一端が電気的に接続され、そのシールド線9で金属製のパイプ5の端部より延出された制御用ケーブル3の周囲を覆うようにされる。シールド線9は、例えば編組シールドからなり、その他端部は、制御用ケーブル3が接続される図示しない機器のシールドケースに電気的に接続される。つまり、シールド線9は、金属製のパイプ5を機器のシールドケースに電気的に接続する役割と、金属製のパイプ5から延出された制御用ケーブル3のシールドの役割を兼ねている。
【0039】
保護部材10から機器側に延出された制御用ケーブル3およびシールド線9は、端末用コルゲートチューブ11内に収容される。制御用ケーブル3の端部には、機器に接続するための接続端子16が設けられる。
【0040】
他方、コルゲートチューブ4の端部から延出された編組シールド6は、複数の電源ケーブル2が接続される図示しない機器のシールドケースに電気的に接続される。保護部材10から機器側に延出された電源ケーブルバンドル7は、端末用コルゲートチューブ12内に収容される。電源ケーブル2の端部には、機器に接続するためのコネクタ13や、接続端子14が設けられる。
【0041】
さて、車両用導電路1は、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を、さらに備えている。なお、図1(b)では形状保持部材25を省略している。
【0042】
図1(a)、図2、および図5(a)〜(c)に示すように、形状保持部材25は、可とう部22を挟むようにコルゲートチューブ4の外周に設けられた2つの筒状のホルダ26と、両ホルダ26間に架け渡して設けられると共に、両ホルダ26に対して回動自在に固定され、かつ、可とう部22を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材27と、を備えている。なお、図1,2,5では板状部材27が1枚しか示されていないが、コルゲートチューブ4を挟むように、2枚の板状部材27が備えられている。
【0043】
ホルダ26は、例えば、POM(ポリアセタール)などの樹脂からなる筒状体である。両ホルダ26の可とう部22側の端部には、対向位置から径方向外方(コルゲートチューブ4の外方側)に突出する突起28が形成される。ホルダ26の可とう部22と反対側の端部には、車両用導電路1を車体に取り付けるための取付金具29が設けられる。
【0044】
ホルダ26と取付金具29は、車両用導電路1を車体に取り付けるために従来より用いられているものであり、車両用導電路1では、コルゲートチューブ4の両端部(連結後のコルゲートチューブ4の両端部)にも、ホルダ26と取付金具29がそれぞれ設けられている。本発明では、従来用いられているホルダ26を利用して、形状保持部材25を形成する。
【0045】
板状部材27としては、樹脂からなるものを用いてもよいし、金属からなるものを用いてもよい。板状部材27は、一方(図5(a)では右側)のホルダ26の突起28を回動自在に係合する係合穴30と、他方(図5(a)では左側)のホルダ26の突起28を回動自在に係合すると共に、突起28をスライド自在に収容するスライド穴31と、を有している。スライド穴31は、可とう部22を直線状とした際に、長手方向に延びる長穴状に形成される(図1(a),図5(a)参照)。
【0046】
図1(a)および図5(a)に示すように、可とう部22を直線状とすると、突起28はスライド穴31の端部側(図5(a)では左側)にスライドする。また、図2および図5(b)に示すように、可とう部22を180度曲げると、突起28は、スライド穴31の中心側(図5(b)では下側)にスライドする。車両用導電路1を運搬あるいは保管する際には、可とう部22を180度曲げた形状とすれば、省スペース化が可能である。
【0047】
さらに、突起28をスライド穴31内でスライド・回動させることで、図5(c)に示すように可とう部22を略S字状とすることもでき、可とう部22を任意の曲げ形状とすることができる。車両用導電路1を車体に取り付ける際には、可とう部22を直線状にすることもできるし、可とう部22を任意の曲げ形状とすることも可能である。
【0048】
2枚の板状部材27は、コルゲートチューブ4を、コルゲートチューブ4の厚さが薄い方向から挟むように設けられる。つまり、2枚の板状部材27は、長円形状のコルゲートチューブ4の2本の直線側から挟むように(図3の上下方向から挟むように)設けられる。このように板状部材27を設けることにより、可とう部22の曲げ方向が、コルゲートチューブ4の厚さが厚い方向(図2に矢印で示す方向)のみに規制される。
【0049】
スライド穴31は、突起28とスライド穴31との間の摩擦により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持し、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成される。これにより、手で力を加えて可とう部22の曲げ形状を変化させた後、手を離せば、そのままの曲げ形状で可とう部22が保持されることになる。なお、板状部材27にロック機構を設け、当該ロック機構により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持できるようにしてもよい。
【0050】
次に、車両用導電路1の製造方法を説明する。
【0051】
車両用導電路1を製造する際は、まず、図6に示すように、複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5に制御用ケーブル3を通し、図7(a),(b)に示すように、制御用ケーブル3を通した複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5を機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)により所望の形状に成形する。金属製のパイプ5を成形する際には、作業性を向上させるため、複数(ここでは2本)の金属製のパイプ5をクランプなどで連結固定し、1本の金属製のパイプとして取り扱えるようにすることが望ましい。
【0052】
金属製のパイプ5をベンダー等により曲げ加工して所望の形状に成形した後、図8に示すように、金属製のパイプ5同士を連結用編組シールド21で連結し、その連結用編組シールド21で金属製のパイプ5間の制御用ケーブル3の周囲を覆う。連結用編組シールド21は金属バンド23により金属製のパイプ5に取り付けられる。また、金属製のパイプ5の連結用編組シールド21を設けた側と反対側の端部に、シールド線9を接続し、そのシールド線9で金属製のパイプ5の端部より延出された制御用ケーブル3の周囲を覆う。シールド線9は、金属バンド15を用いて金属製のパイプ5に取り付けられる。
【0053】
その後、図9に示すように、電源ケーブルバンドル7を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、図10に示すように、金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とを、長手方向に所定間隔の位置にてテープ材8で結束して固定する。
【0054】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7とを固定した後、図11に示すように、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5、および電源ケーブルバンドル7を、コルゲートチューブ4で覆う。ここでは、コルゲートチューブ4を長手方向で2分割しているため、テープ材8により固定した金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7の両端部から分割したコルゲートチューブ4をそれぞれ通し、分割したコルゲートチューブ4をグロメット24により連結する。グロメット24は、コルゲートチューブ4との間に隙間が生じないように設けられる。
【0055】
金属製のパイプ5と電源ケーブルバンドル7をコルゲートチューブ4で覆った後、図12に示すように、電源ケーブルバンドル7と制御用ケーブル3とが分岐する分岐部に保護部材10を設ける。保護部材10は、コルゲートチューブ4との間に隙間が生じないように設けられる。また、保護部材10から機器側に延出する制御用ケーブル3とシールド線9、および電源ケーブルバンドル7を端末用コルゲートチューブ11,12にそれぞれ収容し、制御用ケーブル3の端部に接続端子16、電源ケーブル2の端部にコネクタ13や接続端子14をそれぞれ設ける。
【0056】
その後、コルゲートチューブ4の任意の位置にホルダ26(および取付金具29)を設け、可とう部22に形状保持部材25を設ければ、図1の車両用導電路1が得られる。
【0057】
本実施の形態の作用を説明する。
【0058】
本実施の形態に係る車両用導電路1では、制御用ケーブル3を複数の金属製のパイプ5に収容すると共に、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5を所望の形状に成形することで、制御用ケーブル3を所望の形状に保持すると共に、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5同士を連結用編組シールド21で連結し、かつ、複数の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲した電源ケーブルバンドル7を、成形した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせて配置し、その周囲をコルゲートチューブ4で覆うようにしており、さらに、コルゲートチューブ4に、制御用ケーブル3の長手方向で隣り合う金属製のパイプ5の間の部分である可とう部22の曲げ方向を規制し、かつ、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材25を設けている。
【0059】
車両用導電路1では、可とう部22にて車両用導電路1を折りたたむことができるので、運搬時や保管時の省スペース化に寄与することが可能である。なお、可とう部22を3箇所以上形成することも可能であるが、1箇所または2箇所の可とう部22を形成することで、十分な効果が期待できる。
【0060】
また、車両用導電路1では、形状保持部材25をコルゲートチューブ4に一体に設けているため、車両用導電路1を車体に取り付ける際に、別体となっているプロテクタなどの部材を取り付ける作業が不要となり、取り付け時の作業工程の簡易化への寄与が可能である。また、形状保持部材25をコルゲートチューブ4に一体に設けることにより、形状保持部材25が紛失するなどの問題が発生するおそれもない。
【0061】
さらに、車両用導電路1では、形状保持部材25により可とう部22の曲げ方向を規制しているため、可とう部22の曲げ方向を規制しない場合と比較して、取り付け時の作業が容易となる。
【0062】
さらにまた、車両用導電路1では、形状保持部材25により可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持できるため、プロテクタの形状により可とう部22の曲げ形状が決定される従来の車両用導電路と比較して、汎用性が高い。
【0063】
また、車両用導電路1では、形状保持部材25を、従来用いられている2つのホルダ26と、2枚の板状部材27とで構成しているため、非常に簡易な構造で形状保持部材25を実現でき、低コストである。
【0064】
さらに、車両用導電路1では、ホルダ26に突起28を形成すると共に、板状部材27に突起28を回動自在かつスライド自在に係合するスライド穴31を形成し、そのスライド穴31を、突起28とスライド穴31との間の摩擦により、突起28をスライド穴31の任意の位置に保持するようにしているため、簡易な構造で、可とう部22の形状を任意の曲げ形状で保持することが可能である。
【0065】
また、車両用導電路1では、板状部材27において、ホルダ26の突起28を係合する2つの穴30,31のうち、一方のみをスライド穴31としているので、形状保持部材25の位置決めがし易い。
【0066】
また、車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を、長手方向で少なくとも2つ以上に分割している。
【0067】
従来のコルゲートチューブ4を分割しない車両用導電路では、屈曲部分が多い場合、一方の端部からコルゲートチューブ4を通していくと、他方の端部に近くなるほど大きな挿入力が必要となり、挿入作業に時間がかかる。これに対して、本発明の車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を分割しているため、両端から各々のコルゲートチューブ4を挿入することが可能となり、挿入作業を容易にでき、作業時間を短縮できる。例えば、コルゲートチューブ2を2分割した場合、挿入作業の時間を約1/2とすることができる。
【0068】
また、車両用導電路1は、例えばエンジンルームや排気管近傍など高温となる場所に配置される場合もあり、このような高温となる場所に配置されるコルゲートチューブ4は耐熱性が要求される。従来のコルゲートチューブ4を分割しない車両用導電路では、コルゲートチューブ4の一部が高温となる場合であっても、コルゲートチューブ4全体を耐熱仕様としなければならず、コストが非常に高くなる。これに対して、本発明の車両用導電路1では、コルゲートチューブ4を分割しているため、高温となる部分のみに耐熱仕様(例えば、連続125℃耐熱のナイロン製)のコルゲートチューブ4を用い、その他の部分に安価な通常(例えば、連続95℃耐熱のポリプロピレン製)のコルゲートチューブ4を用いることが可能となり、コストを大幅に低減できる。例えば、全長の1/3に耐熱仕様のコルゲートチューブ4を用いた場合、全体を耐熱仕様とした場合と比較して、コルゲートチューブ4の費用を約2/3に低減できる。
【0069】
また、車両用導電路1では、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5と電源ケーブル2とを予め着色したコルゲートチューブ4に収容しているため、従来行っていた金属製のパイプに塗装を行う塗装工程を省略することが可能となる。これにより製造の容易な車両用導電路1を実現でき、結果的に製造コストも削減できる。また、本実施の形態では、金属製のパイプ5には塗装を施さないので、金属製のパイプに塗装を施す従来技術と比較してリサイクルし易い車両用導電路1を実現できる。
【0070】
さらに、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲しているため、電源ケーブル2にて発生するノイズ(電磁波)の放射を編組シールド6にて抑制することができ、かつ、制御用ケーブル3を金属製のパイプ5(および連結用編組シールド21)に収容しているため、結果的に制御用ケーブル3を2重にシールドしていることになり、電源ケーブル2にて発生するノイズが制御用ケーブル3を伝搬する電気信号に影響を及ぼしてしまうことがなくなる。このため、電源ケーブル2や制御用ケーブル3として、シールド用の外部導体のない安価なケーブルを用いることが可能になり、コスト低減につながる。
【0071】
また、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル2のみを編組シールド6で一括包囲し、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2を制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5と連結用編組シールド21とに沿わせているため、電源ケーブル2と制御用ケーブル3とを容易に分岐できる。さらに、車両用導電路1では、分岐した電源ケーブル2は編組シールド6で覆われているため、分岐部分に別途シールドなどを設ける必要がなく、電源ケーブル2の機器への接続が容易となる。
【0072】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5から延出した制御用ケーブル3をそのまま機器に接続することが可能であり、制御用ケーブル3の機器への接続が容易である。なお、本実施の形態では、金属製のパイプ5の端部にシールド線9を設ける場合を説明したが、金属製のパイプ5を接続対象の機器の近傍まで延長し、制御用ケーブル3の露出距離を短くすることで、シールド線9を省略することも可能である。なお、シールド線9を省略する場合、別途用意した電線などを用いて金属製のパイプ5をグランド接続すればよい。
【0073】
なお、金属製のパイプ5と電源ケーブル2とを一括して編組シールド6で覆う構成も考えられるが、この場合、上述のように電源ケーブル2と制御用ケーブル3を分岐しにくくなり、さらに、電源ケーブル2と金属製のパイプ5との関係が比較的自由であるため、振動により電源ケーブル2同士が互いに接触し摩耗・断線などの不具合が顕著に発生するおそれがある。車両用導電路1では、電源ケーブル2が編組シールド6で一括包囲され、かつ、テープ材8により金属製のパイプ5にしっかりと固定されているので、振動による摩耗・断線などの不具合を低減することができる。
【0074】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5の径を小さくできるので、小さい曲げ半径で曲げても、従来の全体を太い金属製のパイプで包囲したものと比較して、金属製のパイプ5が座屈しにくい。よって、金属製のパイプ5の厚さを薄くすることも可能となり、金属製のパイプ5に用いる材料の無駄を少なくできる。
【0075】
さらに、車両用導電路においては、その設置スペース上の制約から、高さ方向または幅方向のいずれか一方の長さをより小さくしたい場合があるが、車両用導電路1は断面視で長円形状に形成されるため、幅高さ方向または幅方向のいずれか一方の長さをより小さくでき、車種に応じて様々なレイアウトに対応することが可能である。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
例えば、上記実施の形態では、1本の制御用ケーブル3を金属製のパイプ5内に収容する場合を説明したが、金属製のパイプ5内に収容する制御用ケーブル3は2本以上であってもよいし、制御用ケーブル3に加えて、金属製のパイプ5内に制御用ケーブル3以外のケーブル、例えば、補助電力線などを収容するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、3相交流を想定して3本の電源ケーブル2を用いる場合を説明したが、電源ケーブル2の本数はこれに限らず、例えば、2相交流を想定して2本の電源ケーブル2を用いるようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、板状部材27において、ホルダ26の突起28を係合する2つの穴30,31のうち、一方のみをスライド穴31としたが、両方をスライド穴としてもよい。
【0080】
また、ホルダ26のコルゲートチューブ4と接触する部分には、コルゲートチューブ4の凹凸に嵌合するような凹凸形状を形成してもよい。こうすることで、可とう部22の形状保持の際、ホルダ26がコルゲートチューブ4上で移動してしまったり、更にはホルダ26がコルゲートチューブ4から抜けてしまうことを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用動電路
2 電源ケーブル
3 制御用ケーブル
4 コルゲートチューブ(樹脂製のチューブ)
5 金属製のパイプ
6 編組シールド(シールド部材)
7 電源ケーブルバンドル
21 連結用編組シールド(連結シールド部材)
22 可とう部
25 形状保持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源ケーブルと、
該複数の電源ケーブルを一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材と、
少なくとも1本の制御用ケーブルと、
該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、
前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプ同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材と、
前記金属製のパイプと、前記連結シールド部材と、前記金属製のパイプおよび前記連結シールド部材に沿わせて配置され、前記シールド部材で一括包囲された前記複数の電源ケーブルと、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、
前記樹脂製のチューブに設けられ、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材と、
を備えたことを特徴とする車両用導電路。
【請求項2】
前記形状保持部材は、
前記可とう部を挟むように前記樹脂製のチューブの外周に設けられた2つの筒状のホルダと、
前記両ホルダ間に架け渡して設けられると共に、前記両ホルダに対して回動自在に固定され、かつ、前記可とう部を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材と、
を備える請求項1記載の車両用導電路。
【請求項3】
前記両ホルダは、前記樹脂製のチューブの外方側に突出する突起を有し、
前記板状部材は、一方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合する係合穴と、他方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合すると共に、前記突起をスライド自在に収容するスライド穴と、を有する
請求項2記載の車両用導電路。
【請求項4】
前記スライド穴は、前記突起と前記スライド穴との間の摩擦により、前記突起を前記スライド穴の任意の位置に保持し、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成される請求項3記載の車両用導電路。
【請求項5】
前記樹脂製のチューブは、長手方向で少なくとも2つ以上に分割される請求項1〜4いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項6】
前記シールド部材の外周、又は前記金属製のパイプ及び前記連結シールド部材の外周の少なくとも一方に、可とう性を有する被覆層を設けた請求項1〜5いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項7】
少なくとも、
ケーブルと、
該ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、
を有し、
前記ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材を備えた
ことを特徴とする車両用導電路。
【請求項1】
複数の電源ケーブルと、
該複数の電源ケーブルを一括包囲し、シールドするための可とう性を有するシールド部材と、
少なくとも1本の制御用ケーブルと、
該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、
前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプ同士を連結する可とう性を有する連結シールド部材と、
前記金属製のパイプと、前記連結シールド部材と、前記金属製のパイプおよび前記連結シールド部材に沿わせて配置され、前記シールド部材で一括包囲された前記複数の電源ケーブルと、を一括して周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、
前記樹脂製のチューブに設けられ、前記制御用ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材と、
を備えたことを特徴とする車両用導電路。
【請求項2】
前記形状保持部材は、
前記可とう部を挟むように前記樹脂製のチューブの外周に設けられた2つの筒状のホルダと、
前記両ホルダ間に架け渡して設けられると共に、前記両ホルダに対して回動自在に固定され、かつ、前記可とう部を両側から挟むように設けられた2枚の板状部材と、
を備える請求項1記載の車両用導電路。
【請求項3】
前記両ホルダは、前記樹脂製のチューブの外方側に突出する突起を有し、
前記板状部材は、一方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合する係合穴と、他方の前記ホルダの前記突起を回動自在に係合すると共に、前記突起をスライド自在に収容するスライド穴と、を有する
請求項2記載の車両用導電路。
【請求項4】
前記スライド穴は、前記突起と前記スライド穴との間の摩擦により、前記突起を前記スライド穴の任意の位置に保持し、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持できるように形成される請求項3記載の車両用導電路。
【請求項5】
前記樹脂製のチューブは、長手方向で少なくとも2つ以上に分割される請求項1〜4いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項6】
前記シールド部材の外周、又は前記金属製のパイプ及び前記連結シールド部材の外周の少なくとも一方に、可とう性を有する被覆層を設けた請求項1〜5いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項7】
少なくとも、
ケーブルと、
該ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な複数の金属製のパイプと、
を有し、
前記ケーブルの長手方向で隣り合う前記金属製のパイプの間の部分である可とう部の曲げ方向を規制し、かつ、前記可とう部の形状を任意の曲げ形状で保持する形状保持部材を備えた
ことを特徴とする車両用導電路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−35803(P2012−35803A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179442(P2010−179442)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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