説明

車両用座席のシートクッション

【課題】一人ずつの各座席単位の位置を明確に認識させる。上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持させる。クッションパッドやバネ構造体の経年劣化による弱体化が少なく、着座者に違和感を与えるのを防止する。隣席に乗客が着座しても振動を最小限に抑える。
【解決手段】バネ構造体5は枠状フレーム3に取付けられた直線状のI字状バネ11と、I字状バネ11の下方に配置されたS字状バネ13と、S字状バネ13の下方に配置され、中央部18が平面から見て略Z字状に屈折され、且つ両端部16が枠状フレーム3に取付けられ、側面からみて中央部18が上方に凸状に形成されたZ字状バネ15とを備える。S字状バネ13とZ字状バネ15とをI字状バネ11に結束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道やバスその他の乗物の車両用座席のシートクッションに関し、更に詳細に説明すると、フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
近時の車両用座席のシートクッションは、複数の着座部を横方向に形成し、この複数の着座部に定員人数を確実に着座させるために、各着座部の表面に一人分の凹部(インバース)を形成している。また複数の着座部のクッションパッドの下方のバネ構造体はコイルバネや略S字状の連続するS字状バネを用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような複数の着座部を横方向に有し、フロアに載置された台座部に横長のシートフレームが設けられ、このシートフレームの上部に表皮材とクッションパッドが一体モールド成形された車両用座席のシートクッションであって、各着座部の表面に一人分の凹部を形成している構成は従来知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平06−31964号公報
【特許文献2】特開平06−154061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の特許文献1に記載のバネ構造体はコイルバネや略S字状の連続するS字状バネを用いるものであり、着座時の上下振動が激しく、更に座り心地の良い座席を得ることができないものであった。また車両等の上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持させることができないものであった。また従来のコイルバネを用いるバネ構造体は取付作業が煩雑で高価となり経済性に欠けるものであった。
【0005】
更に、従来の特許文献2に記載のクッションパッドでは、一人ずつの座席単位で表皮材とクッションパッドを一体モールド成形しているので、着座者に視覚的にも座った感触でも一人ずつの各座席単位の位置(区画)を明確に認識させることができるも、一体モールド成形作業が煩雑で、成形装置の大型化が避けられず、また一体モールド成形品の経年劣化による弱体化により、長時間の着座において、着座者に違和感を与えている。また車両座席として、車両の側壁に沿って配設される車両座席のシートクッションにおいては、車両の加減速により着座者の横移動が増大し、またシートクッションの中央部が大きく沈み込む欠点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、一人ずつの各座席単位の位置を明確に認識させることができ、バネ構造体にコイルバネを用いることなく、上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持させることができ、クッションパッドの成形作業が容易で、クッションパッドやバネ構造体の経年劣化による弱体化が少なく、着座者にクッションパッドの材質やバネ構造体による違和感を与えることがなく、シートクッションの中央部が大きく沈み込む虞がなく、複数の着座部において、隣席に乗客が着座しても振動を最小限に抑えることができ、組付作業が容易で部品交換等のメンテナンスを容易に行なうことができ、経済性に優れた車両用座席のシートクッションを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用座席のシートクッションは、フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームに取付けられた直線状のI字状バネと、該I字状バネの下方に配置され、中央部が平面から見て略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記Z字状バネの上部がI字状バネに結束されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る車両用座席のシートクッションは、フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームに取付けられた略S字状の連続するS字状バネと、該S字状バネの下方に配置され、中央部が平面から見て略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記Z字状バネの上部がS字状バネに結束されていることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の請求項3に係る車両用座席のシートクッションは、フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームの左右方向に延びて取付けられた直線状のI字状バネと、該I字状バネの下方に配置され、前記枠状フレームの前後方向に延びて取付けられた略S字状の連続するS字状バネと、該S字状バネの下方に配置され、中央部が平面から見て略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームの前後フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記S字状バネとZ字状バネとが前記I字状バネに結束されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る車両用座席のシートクッションは、複数の着座部を横方向に有し、前記複数の着座部に対応して着座人数分の凹部が形成され、該着座部の凹部の両側部に対応して前記Z字状バネが配設され、該Z字状バネの両端に基部が形成され、前記枠状フレームの少なくとも前後フレームが断面略コ字状に形成され、該前後フレームの下部に前記Z字状バネの両端の基部が取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用座席のシートクッションによれば、Z字状バネが着座部の沈み込みを防止し、着座者の腰部を確実に保持することができ、上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持することができ、クッションパッドやバネ構造体の経年劣化による弱体化が少なく、着座者に違和感を与えることがなく、隣席に乗客が着座しても振動を最小限に抑えることができ、組付作業が容易で部品交換等のメンテナンスを容易に行なうことができ、経済性を向上させる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用座席のシートクッションを図面を参照して説明する。
【0013】
図1乃至図4は本発明に係る車両用座席のシートクッションを夫々示すもので、図1はシートクッションの概略断面図、図2はバネ構造体の側面説明図、図3(a)はZ字状バネの平面説明図、図3(b)はZ字状バネの側面説明図、図4(a)は横方向に複数の着座部を形成したシートクッションの一部平面説明図、図4(b)は横方向に複数の着座部を形成したシートクッションのバネ構造体の一部平面説明図である。尚、本実施の形態においては、複数の着座部を横方向に形成した鉄道の車両用座席のシートクッションに本発明を適用したが、単一または複数の着座部を横方向に形成したバスや乗用車、その他の乗り物のシートクッションにも同様に適用することができるものである。
【0014】
図1に示す如く、車両用座席のシートクッション1は、本実施の形態では複数の着座部2を横方向に有し、フロアに載置された台座部2に横長の枠状フレーム3が着脱可能に設けられている。この横長の枠状フレーム3は着座部4の数、例えば1人掛け、2人掛け、3人掛け、4人掛け、7人掛け等に対応して所定の長さに形成される。この枠状フレーム3は断面が略コ字状に形成され、上部3a,下部3b及び止め金具3cを備えている。この枠状フレーム3の止め金具3cがフロアに載置された台座部2に着脱自在に取付けられる。尚、枠状フレーム3は上部3aを変形した断面が略L字状に形成することもできる。
【0015】
前記枠状フレーム3にバネ構造体5が取付けられ、このバネ構造体5の上部に防水シートやバネ受け用のシート等を介して人工化繊,綿,ポリエステル,ウレタン等から形成されたクッションパッド7が載置される。このクッションパッド7が表皮材9により被覆されている。前記クッションパッド7及び表皮材9に、図4(a)に示す如く、複数の着座部4に対応して着座人数分のインバース形状としての凹部4aが形成されている。
【0016】
図2及び図4(b)に示す如く、前記バネ構造体5は枠状フレーム3の横方向に張設された直線状のブレースワイヤからなるI字状バネ11と、このI字状バネ11の下方に配置され、前記枠状フレーム3の前後方向に延びて取付けられた略S字状の連続するS字状バネ13と、このS字状バネ13の下方に配置されたZ字状バネ15とを備えている。尚、I字状バネ11とS字状バネ13とは近接して設けられているので、上下位置を逆とすることもできる。
【0017】
前記I字状バネ11の両端は枠状フレーム3の側部フレームの上部3aに取付けられ、またS字状バネ13の両端は前後フレームの上部3aに取付けられている。S字状バネ13のS字を形成する中間部には水平部14が形成されている。またS字状バネ13を側面からみて上方に凸状に弯曲して形成することにより、上方への付勢力を向上させることができる。尚、前記バネ構造体5を構成する各バネの太さは適宜設定することができる。
【0018】
図3(a),(b)に示す如く、前記Z字状バネ15の両端に長手方向に対して略90°折り曲げられて基部16が形成され、このZ字状バネ15の両端の基部16が枠状フレーム3の前後フレームの下部3bにフリー状態で載置されている。Z字状バネ15の両端の基部16をフリー状態とすることにより上下揺動が可能で、メンテナンスを容易に行なうことができる。尚、基部16を枢支状態でまたは固定状態で前後フレームの下部3bに取付けるものであってもよい。
【0019】
また、前記Z字状バネ15の両端の基部16からS字状バネ13の下部に近接する位置まで上方に延びて前後に傾斜部17が夫々形成され、この前後の傾斜部17の上端間に中央部18が形成されている。この中央部18が平面から見て略Z字状に屈折されている。この中央部18はZ字を形成する前後の水平部19と、この水平部19間に対角線状に設けられた対角線部20とを有している。
【0020】
また図3(b)に示す如く、前記Z字状バネ15は傾斜部17の存在により、側面からみて中央部18が上方に凸状の略台形状に形成されている。尚、Z字状バネ15を上方に凸状の弯曲形状として形成することもできる。このZ字状バネ15に上方から負荷が加えられた場合に、この負荷は中央部18を変形させると共に、前後の傾斜部17を介して両端の基部16より前後フレームの下部3bに伝達される。
【0021】
前記バネ構造体5のS字状バネ13の水平部14とZ字状バネ15の水平部19とが前記I字状バネ11に結束部材21により結束されている。尚、前記バネ構造体5のS字状バネ13を省略してZ字状バネ15をI字状バネ11に結束部材21により結束するものであってもよい。これらI字状バネ11とS字状バネ13及びZ字状バネ15のスプリング力が合算される。
【0022】
またI字状バネ11を省略してZ字状バネ15をS字状バネ13に結束部材21により結束するものであってもよい。更にZ字状バネ15を前後フレームの下部3b間に取付けたが、左右フレーム間に取付けるものであってもよい。また結束部材21により結束する位置は相互に平行する位置が好ましいが、交差する位置でもよい。
【0023】
図4(a),(b)に示す如く、横方向に複数の着座部4を形成したシートクッション1の複数の着座部4に対応して、一人ずつの各座席単位の位置を明確に認識させることができるように、クッションパッド7及び表皮材9に着座人数分のインバース形状としての凹部4aが形成されている。
【0024】
この着座部4の凹部4aのバネ構造体5は各座席単位において、前記Z字状バネ15が左右両側部に対応する位置に、本実施の形態では2本づつ設けられ、S字状バネ13が6本づつ略等間隔に平行して設けられ、前記I字状バネ11が3本前記Z字状バネ15の長手方向に対して直交する方向に適宜の間隔で平行して設けられている。前記着座部4の凹部4aと左右両側部に対応する位置のZ字状バネ15により、上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持することができる。
【0025】
前記Z字状バネ15により着座部4の左右両側部のクッション性の硬度を強化している。このため、着座者は着座部4の中央部に違和感なく着座することができ、且つ着座者の腰部が安定的に支持される。尚、I字状バネ11,S字状バネ13及びZ字状バネ15の太さ,形状,取付け本数、取付け方向等適宜変形変更することができ、例えばZ字状バネ15を等間隔に設けることもできる。
【0026】
前記Z字状バネ15が着座部4の沈み込みを防止し、着座者の腰部を確実に保持することができ、凹部4aの存在により上下振動や横揺れに対して確実に着座者の着座姿勢を保持することができ、クッションパッド7やバネ構造体5の経年劣化による弱体化が少なく、着座者に違和感を与えることがなく、隣の着座部4に乗客が着座しても振動を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両用座席のシートクッションの概略断面図である。
【図2】本発明に係る車両用座席のシートクッションのバネ構造体の側面説明図である。
【図3】本発明に係る車両用座席のシートクッションのZ字状バネを示すもので、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図である。
【図4】本発明に係る車両用座席のシートクッションの複数の着座部を夫々示すもので、(a)はシートクッションの一部平面説明図、(b)はバネ構造体の一部平面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1…シートクッション、2…台座部、3…枠状フレーム、3a…上部、3b…下部、3c…止め金具、4…着座部、4a…凹部、5…バネ構造体、7…クッションパッド、9…表皮材、11…I字状バネ、13…S字状バネ、14…水平部、15…Z字状バネ、16…基部、17…傾斜部、18…中央部、19…水平部、20…対角線部、21…結束部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームに取付けられた直線状のI字状バネと、該I字状バネの下方に配置され、中央部が略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記Z字状バネの上部がI字状バネに結束されていることを特徴とする車両用座席のシートクッション。
【請求項2】
フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームに取付けられた略S字状の連続するS字状バネと、該S字状バネの下方に配置され、中央部が略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記Z字状バネの上部がS字状バネに結束されていることを特徴とする車両用座席のシートクッション。
【請求項3】
フロアに載置された台座部に枠状フレームが設けられ、該枠状フレームにバネ構造体が取付けられ、該バネ構造体の上部にクッションパッドが載置され、該クッションパッドが表皮材により被覆された車両用座席のシートクッションにおいて、
前記バネ構造体は前記枠状フレームの左右方向に延びて取付けられた直線状のI字状バネと、該I字状バネの下方に配置され、前記枠状フレームの前後方向に延びて取付けられた略S字状の連続するS字状バネと、該S字状バネの下方に配置され、中央部が略Z字状に屈折され、且つ両端部が前記枠状フレームの前後フレームに取付けられ、側面からみて中央部が上方に凸状に形成されたZ字状バネとを備え、前記S字状バネとZ字状バネとが前記I字状バネに結束されていることを特徴とする車両用座席のシートクッション。
【請求項4】
複数の着座部を横方向に有し、前記複数の着座部に対応して着座人数分の凹部が形成され、該着座部の凹部の両側部に対応して前記Z字状バネが配設され、該Z字状バネの両端に基部が形成され、前記枠状フレームの少なくとも前後フレームが断面略コ字状に形成され、該前後フレームの下部に前記Z字状バネの両端の基部が取付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用座席のシートクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−221953(P2008−221953A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60966(P2007−60966)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000148276)株式会社浅羽製作所 (13)
【出願人】(507078131)有限会社 岡田工業 (1)
【Fターム(参考)】