説明

車両用操作ペダル装置

【課題】単一の操作ペダルでアクセル操作を含む2種類の操作を行なうことができる車両用操作ペダル装置において、2種類の操作が同時に為された場合にアクセル操作を安価な手法で確実にキャンセルする。
【解決手段】常用ブレーキを作動させるために操作ペダル12が矢印B方向へ踏込み操作されると、図1の(c) に示すように係合歯車30が連動歯車32から離間させられて両者の噛合が機械的に遮断され、操作ペダル12が矢印A方向へ回動しても連動歯車32の回転が阻止されて、回転センサ36によって検出されるアクセル操作量=0に維持される。踏込み操作が解除されて踏込み方向の原位置まで戻されると、図1の(b) に示すように係合歯車30が連動歯車32に接近して機械的に噛み合わされるため、操作ペダル12が矢印A方向へ回動するようにアクセル操作されると、連動歯車32が回転させられてその回転量がアクセル操作量として電気的に検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用操作ペダル装置に係り、特に、支持軸まわりに回動操作できるとともに支持軸に向かって踏込み操作可能な操作ペダルを有し、支持軸まわりの回動操作に基づいてアクセル操作量を検出する車両用操作ペダル装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 支持軸まわりに回動可能に配設されるとともに入力部を有し、その入力部を介してその支持軸まわりに回動操作できるとともにその支持軸に向かって踏込み操作可能な操作ペダルを備えており、(b) 前記支持軸まわりの回動操作に基づいてアクセル操作量(アクセル開度ともいう)を検出する車両用操作ペダル装置が知られている。特許文献1に記載の車両用操作ペダル装置はその一例で、操作ペダルが支持軸まわりに回動操作された際のその操作ペダルの回動量をアクセル操作量として検出する一方、支持軸に向かって踏込み操作されることにより機械的にブレーキ入力部材を押圧して常用ブレーキを作動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−37513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用操作ペダル装置においては、ブレーキ操作のつもりで操作ペダルを踏込み操作した時に、操作ペダルが支持軸まわりに回動すると、踏込み操作に従って常用ブレーキが作動させられるとともに、回動操作に基づいて検出されるアクセル操作量に応じてエンジン等の駆動力源が制御される。このため、運転者の意に反して駆動力変化等が生じる可能性があり、これを防止するために例えばブレーキ作動時には電気的にアクセル操作をキャンセルすることが考えられるが、新たにセンサ等が必要になったり制御が複雑になったりしてコストアップに繋がる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、単一の操作ペダルを用いてアクセル操作(回動操作)を含む2種類の操作を行なうことができる車両用操作ペダル装置において、運転者の誤操作等で2種類の操作が同時に為された場合に、アクセル操作ができるだけ安価な手法で確実にキャンセルされるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 支持軸まわりに回動可能に配設されるとともに入力部を有し、その入力部を介してその支持軸まわりに回動操作できるとともにその支持軸に向かって踏込み操作可能な操作ペダルを備えており、(b) 前記支持軸まわりの回動操作に基づいてアクセル操作量を検出する車両用操作ペダル装置において、(c) 前記操作ペダルおよび車体側部材の何れか一方に一体的に設けられた係合部材と、(d) その係合部材と係合させられるように前記操作ペダルおよび前記車体側部材の他方に配設され、その係合部材との係合によりその操作ペダルの前記支持軸まわりの回動操作に機械的に連動してその他方の部材に対して相対移動させられる連動部材と、(e) その連動部材の前記他方の部材に対する相対移動量を前記アクセル操作量として電気的に検出するセンサと、(f) 前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作されると、前記係合部材と前記連動部材とが互いに離間させられて両者の係合が機械的に遮断される一方、その踏込み操作が解除されて踏込み方向の原位置まで戻されると、その係合部材と連動部材とが互いに接近させられて機械的に係合させられるように、その操作ペダルを案内する係合遮断機構と、を有することを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両用操作ペダル装置において、前記係合遮断機構は、前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作された場合に、その支持軸が操作ペダルと共に踏込み方向へ移動することを許容するものであることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明の車両用操作ペダル装置において、(a) 前記係合遮断機構は、車体に一体的に固設されるブラケットに設けられて前記支持軸を支持するとともに、前記操作ペダルがその支持軸に向かって踏込み操作された場合にその支持軸が踏込み方向へ移動することを許容する長穴を備えており、(b) 前記係合部材は係合歯車で、前記支持軸と同心に且つその支持軸まわりに相対回転不能に前記操作ペダルに配設されており、(c) 前記連動部材は、前記係合歯車と噛み合わされる連動歯車で、前記支持軸まわりにおいて前記踏込み方向の上流側でその係合歯車と噛み合わされるように、その支持軸と平行な軸心まわりに回転可能に前記車体側部材に配設されていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両用操作ペダル装置において、前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作されると、その踏込み操作量に応じて常用ブレーキが作動させられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような車両用操作ペダル装置においては、操作ペダルが支持軸に向かって踏込み操作されると、係合部材と連動部材とが互いに離間させられて両者の係合が機械的に遮断される一方、その踏込み操作が解除されて踏込み方向の原位置まで戻されると、係合部材と連動部材とが互いに接近させられて機械的に係合させられる。したがって、操作ペダルが踏込み方向の原位置に保持された状態で支持軸まわりに回動操作されると、その回動操作に連動して連動部材が他方の部材に対して相対移動させられ、その相対移動量がアクセル操作量としてセンサにより電気的に検出されるが、操作ペダルが踏込み操作されると、係合部材と連動部材との係合が機械的に遮断される。このため、仮に操作ペダルを踏込み操作しつつ支持軸まわりに回動操作しても、その回動操作に拘らず連動部材の相対移動が阻止され、センサによって検出されるアクセル操作量は0すなわちアクセルオフの状態に維持される。
【0011】
このように、運転者が操作ペダルを踏込み操作した場合には、操作ペダルが支持軸まわりに回動してもアクセル操作量=0に維持されるため、運転者の意に反して駆動力変化が生じる恐れがないとともに、操作ペダルの踏込み操作が容易になる。しかも、操作ペダルの踏込み操作に伴い、係合部材と連動部材との係合が機械的に遮断されてアクセル操作量=0とされるため、新たにセンサ等を設けて制御的にアクセル操作(回動操作)をキャンセルする場合に比較して装置が安価に構成されるとともに、そのアクセル操作を確実にキャンセルできる。
【0012】
第2発明では、操作ペダルが踏込み操作された場合に、支持軸が操作ペダルと共に踏込み方向へ移動することにより係合部材と連動部材との係合が遮断されるため、例えば操作ペダルを踏込み方向において2分割して伸縮させる場合等に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。
【0013】
第3発明では、ブラケットに設けられた長穴によって支持軸が踏込み方向への移動可能に支持されるとともに、係合部材として係合歯車が支持軸と同心に且つその支持軸まわりに相対回転不能に操作ペダルに配設される一方、連動部材として連動歯車が支持軸まわりにおいて踏込み方向の上流側で係合歯車と噛み合わされるように、その支持軸と平行な軸心まわりに回転可能に車体側部材に配設される。したがって、操作ペダルが踏込み方向の原位置に保持された状態では、係合歯車と連動歯車との噛合により操作ペダルの回動操作が確実に連動歯車に伝達され、その連動歯車の回転量がアクセル操作量としてセンサによって検出される。また、係合部材として係合歯車が用いられているため、連動歯車と共に市販品等の汎用品を採用することが可能で、装置を簡単且つ安価に構成できる。
【0014】
第4発明は、操作ペダルが踏込み操作されることにより常用ブレーキを作動させる場合で、車両を減速するために操作ペダルを踏込み操作した時に操作ペダルが回動してもアクセル操作量=0に維持されるため、駆動力変化が生じて運転者に違和感を生じさせる恐れがないとともに、操作ペダルを踏込み操作するブレーキ操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である車両用操作ペダル装置を説明する図で、(a) は全体を示す概略側面図、(b) は2種類の操作A、Bを説明する操作ペダルの側面図、(c) は(b) の状態から操作ペダルが踏込み操作された状態を示す操作ペダルの側面図である。
【図2】図1の車両用操作ペダル装置の構成部品を分解して示した斜視図である。
【図3】図1の車両用操作ペダル装置において、操作ペダルの支持軸を案内するスライド駒等を示す縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ図1の(b) 、(c) に相当する操作ペダルの側面図である。
【図5】本発明の更に別の2つの実施例を説明する図で、(a) 、(b) 共に図1の(b) に相当する操作ペダルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、操作ペダルの回動操作に基づいてアクセル操作量を検出する車両用操作ペダル装置に関するもので、操作ペダルの踏込み操作については、例えば第4発明のように常用ブレーキを作動させるように構成されるが、足踏み式パーキングブレーキ等の他の操作ペダルとして機能するように構成することもできる。その場合に、操作ペダルの踏込み操作量(ストロークや押圧力)を電気的に検出し、駆動アクチュエータによって常用ブレーキ等を作動させることもできるが、操作ペダルにプッシュロッド等のブレーキ入力部材を連結して機械的に作動させるようになっていても良い。踏込み方向は、例えば支持軸に対して直交する方向であるが、支持軸とねじれの位置関係となる方向であっても良く、踏込み操作によりガイド等を介して支持軸に直交する方向の力が加えられるようになっていても良い。
【0017】
係合部材および連動部材は、それぞれ操作ペダルおよび車体側部材の一方および他方に設けられ、係合部材を操作ペダルに設けた場合は車体側部材に連動部材を配設する一方、係合部材を車体側部材に設けた場合は操作ペダルに連動部材を配設すれば良い。センサは、連動部材が配設される他方の部材に設けられ、その他方の部材に対する連動部材の相対移動量をアクセル操作量として検出する。連動部材は、所定の中心線まわりに回転させられる回転体が好適に用いられ、センサは回転角度や回転数を検出する回転センサが好適に用いられるが、直線移動させられるラック等を連動部材として採用することもできる。
【0018】
操作ペダルおよび車体側部材の一方に一体的に設けられる係合部材は、例えば、少なくとも操作ペダルが踏込み方向の原位置に保持されている状態において、支持軸を中心とする円弧に沿って設けられて連動部材と係合させられる円弧状係合部を備えており、操作ペダルの支持軸まわりの回動操作に連動して連動部材を他方の部材に対して相対移動させるように構成される。第3発明の係合歯車も、噛合歯が設けられた外周面は円弧状係合部の一態様であり、言い換えれば、第3発明の係合歯車のうち実際に連動歯車と噛み合わされる範囲は、操作ペダルの回動角度と同じ角度範囲であるため、円弧状噛合部を有する扇形等の噛合部材を採用することもできる。この係合部材についても、例えば連動部材として連動歯車を支持軸と同心に相対回転可能に操作ペダルに配設した場合、直線状に噛合歯が設けられたラック等を係合部材として車体側部材に設けることもできる。また、第3発明では、係合部材および連動部材として係合歯車、連動歯車が用いられて互いに噛み合わされるようになっているが、外周面等の係合部に摩擦材等が設けられた係合部材および連動部材を用いて、摩擦接触による摩擦力で連動部材を移動させることもできる。
【0019】
第2発明では、支持軸が操作ペダルと共に踏込み方向へ移動することが許容されるようになっているが、第1発明の実施に際しては、例えば支持軸を移動不能にブラケット等に設けるとともに、操作ペダルを踏込み方向において2分割し、嵌合等によりその踏込み方向に伸縮するように構成したり、操作ペダルに長穴を設けて支持軸に対して相対移動可能に配設したりするなど、種々の態様が可能である。
【0020】
第3発明では、支持軸が踏込み方向へ移動することを許容する長穴を備えて係合遮断機構が構成されているが、踏込み操作が解除された場合に支持軸を踏込み方向の原位置まで押し戻すスプリング等の付勢部材を必要に応じて設けることも可能である。但し、ブレーキ入力部材等によって押し戻される場合は必ずしも必要ない。回動操作についても、操作ペダルの回動操作が解除された場合に、その操作ペダルを回動操作方向の原位置へ戻すためのスプリング等の付勢部材が必要に応じて設けられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用操作ペダル装置10を説明する図で、(a) は全体を示す概略側面図、(b) は2種類の操作A、Bを説明する操作ペダル12の側面図、(c) は(b) の状態から操作ペダル12が矢印B方向へ踏込み操作された状態を示す操作ペダル12の側面図である。図2は、車両用操作ペダル装置10の種々の構成部品を分解して示した斜視図である。この車両用操作ペダル装置10は、操作ペダル12の入力部14の一部が露出する状態で車両の前フロア16内に埋め込まれており、操作ペダル12は、下フロア18に固設されたブラケット20を介して支持軸22まわりに回動可能に支持されている。そして、この操作ペダル12は、運転者の足24により入力部14を介して支持軸22の右まわり(矢印A方向)に回動操作できるとともに、支持軸22と直交する方向(矢印B方向)へ踏込み操作可能で、支持軸22まわりの回動操作に基づいてアクセル操作量が検出される。
【0022】
ブラケット20には、支持軸22を軸心まわりに回転可能に支持する長穴26が設けられており、操作ペダル12が踏込み操作された場合に、支持軸22が長穴26に案内されつつ操作ペダル12と一体的に踏込み方向Bへ移動することが許容される。操作ペダル12には、図3に示すようにスライド駒50が連結されているとともに、そのスライド駒50に設けられたガイドロッド52が図示しないリンク等を介してブレーキブースタ54のプッシュロッド56に機械的に連結されており、操作ペダル12が踏込み方向Bへ踏込み操作(ブレーキ操作)されると、その踏込み操作量(押圧力)に応じて常用ブレーキが機械的に作動させられるようになっている。図3は、操作ペダル12の支持軸22を案内するスライド駒50等を示す縦断面図である。
【0023】
図1に戻って、操作ペダル12の入力部14と反対側の端部すなわち前端部には、係合歯車30が支持軸22と同心に一体的に固定されている一方、ブラケット20或いは下フロア18等の車体側部材には、その係合歯車30と噛み合わされる連動歯車32が支持軸22と平行な軸34まわりに回転可能に配設されている。係合歯車30および連動歯車32はそれぞれ係合部材および連動部材に相当するもので、操作ペダル12が支持軸22まわりに回動操作(アクセル操作)されると、係合歯車30も操作ペダル12と一体的に支持軸22まわりに回動させられ、それに伴って連動歯車32が自身の軸心である軸34まわりに回転させられる。そして、その連動歯車32の回転角度或いは回転数がアクセル操作量として回転センサ36により電気的に検出される。回転センサ36も、連動歯車32と同じくブラケット20或いは下フロア18等の車体側部材に配設されている。操作ペダル12は、矢印A方向へ回動操作するアクセル操作が解除されると、引張コイルスプリング等の付勢部材38(図2参照)の付勢力に従ってその回動操作方向の原位置へ戻されるようになっている。この原位置は、ブラケット20に設けられたストッパ40(図2参照)に操作ペダル12が当接させられることによって規定される。
【0024】
連動歯車32は、支持軸22まわりにおいて前記踏込み方向Bの上流側で係合歯車30と噛み合わされるように、図1(b) において係合歯車30の右斜め上に位置するように配置されている。これにより、操作ペダル12が踏込み方向Bへ踏込み操作された場合に、図1(c) に示すように支持軸22や係合歯車30が操作ペダル12と一体的に長穴26に案内されつつ踏込み方向Bへ移動することが許容されるとともに、係合歯車30が連動歯車32から離間させられて両者の係合が機械的に遮断される。したがって、運転者が常用ブレーキを作動させるために操作ペダル12を踏込み操作した場合に、操作ペダル12が矢印A方向へ回動しても、その回動操作に拘らず連動歯車32の回転が阻止され、アクセル操作量は0すなわちアクセルオフの状態に維持される。すなわち、常用ブレーキを作動させるために操作ペダル12を踏込み操作する際に、アクセル操作方向である矢印A方向へ操作ペダル12が回動してもアクセル操作量=0に維持されるため、操作ペダル12を踏み込むブレーキ操作が容易になる。連動歯車32は、係合歯車30との係合が遮断(解除)されて外力が無くなると、回転センサ36に内蔵された図示しないスプリング等によりアクセル操作量=0の初期位置へ戻されるようになっている。
【0025】
一方、操作ペダル12の踏込み操作が解除されると、圧縮コイルスプリング等の付勢部材42(図2、図3参照)の付勢力に従って支持軸22が長穴26に案内されつつ矢印Bと反対方向へ押し戻され、操作ペダル12が図1(b) に示す踏込み方向の原位置へ戻される。この原位置は、係合歯車30が連動歯車32に当接させられることによって規定されるが、別個にストッパを設けて原位置を規定することも可能である。このように係合歯車30と連動歯車32とが当接して噛み合わされると、操作ペダル12が支持軸22まわりに回動操作(アクセル操作)された場合に、その操作ペダル12の回動量に応じて連動歯車32が軸34まわりに回転させられるようになり、その連動歯車32の回転量が回転センサ36によりアクセル操作量として検出される。本実施例では、長穴26および付勢部材42によって、係合歯車30と連動歯車32とを機械的に係合(噛合)させたり、その係合を機械的に遮断したりする係合遮断機構が構成されている。
【0026】
次に、図2の分解斜視図を参照して更に具体的に説明する。図2の一点鎖線は、複数の構成部品の相互の位置関係を表している。
前記ブラケット20は取付穴60を介して図示しないボルト等により下フロア18に一体的に固設されるとともに、互いに平行な一対の側板部62を有しており、その一対の側板部62の間にスライド駒50が配置される。側板部62には前記長穴26が設けられており、その長穴26とスライド駒50に設けられた貫通穴64とが一致する状態で、円筒形状のカラー66が貫通穴64内に挿入されて固設されるとともに、その貫通穴64から突き出す両端部は長穴26に対しては摺動可能に係合させられる。また、操作ペダル12は、入力部14の車両幅方向両側に連続する一対の側板部68を有して構成され、その一対の側板部68がブラケット20の側板部62を車両幅方向の両側から挟み込むように配置されるとともに、一対の側板部68を接続する上板部にフック69が設けられ、前記引張コイルスプリング等の付勢部材38が掛止されるようになっている。
【0027】
そして、上記一対の側板部68に設けられた連結穴70、72、カラー66の穴部74、および係合歯車30の中心に設けられた取付穴76を互いに一致させるとともに、係合歯車30が最も外側(手前側)に位置する状態で、それ等の取付穴76、連結穴70、穴部74、連結穴72内に支持軸22を挿通させる。支持軸22の一端部には凸条78が設けられており、連結穴70および取付穴76に設けられた凹部と係合させられることにより、操作ペダル12および係合歯車30に対して相対回転不能に連結される一方、カラー66の穴部74に対しては回転可能とされている。
【0028】
前記スライド駒50にはガイドロッド52が一体的に突設されている一方、ブラケット20の背板部80には、側面視(図3と同じ姿勢)において長穴26の延長線上にガイド穴82が設けられており、そのガイド穴82内をガイドロッド52が挿通させられている。このガイド穴82とガイドロッド52との係合により、カラー66を介して長穴26により支持されているスライド駒50が、長穴26の長手方向(前記矢印B方向と同じ)と平行な一定の姿勢に保持され、その状態で矢印B方向への移動可能に支持される。そして、スライド駒50と背板部80との間に前記圧縮コイルスプリング等の付勢部材42が介在させられ、踏込み操作が解除された場合にそのスライド駒50を介して支持軸22および操作ペダル12を踏込み方向の原位置まで押し戻すようになっている。
【0029】
このような車両用操作ペダル装置10においては、操作ペダル12が支持軸22に向かう矢印B方向へ踏込み操作されると、図1の(c) に示すように係合歯車30が連動歯車32から離間させられて両者の噛合が機械的に遮断される一方、その踏込み操作が解除されて付勢部材42の付勢力により踏込み方向の原位置まで戻されると、図1の(b) に示すように係合歯車30が連動歯車32に接近させられて機械的に噛み合わされる。したがって、操作ペダル12が踏込み方向の原位置に保持された状態で支持軸22まわりのA方向へ回動するようにアクセル操作されると、そのアクセル操作に連動して連動歯車32が軸34まわりに回転させられ、その回転量がアクセル操作量として回転センサ36により電気的に検出されるが、操作ペダル12が踏込み操作されると、係合歯車30と連動歯車32との係合が機械的に遮断される。このため、仮に操作ペダル12を矢印B方向へ踏込み操作しつつ支持軸22まわりの矢印A方向へ回動操作しても、その回動操作に拘らず連動歯車32の回転が阻止され、回転センサ36によって検出されるアクセル操作量は0すなわちアクセルオフの状態に維持される。
【0030】
このように、運転者が操作ペダル12を踏込み操作した場合には、操作ペダル12が支持軸22まわりに回動してもアクセル操作量=0に維持されるため、運転者の意に反して駆動力変化が生じる恐れがないとともに、ブレーキを作動させるための操作ペダル12の踏込み操作が容易になる。しかも、操作ペダル12の踏込み操作に伴い、係合歯車30と連動歯車32との噛合が機械的に遮断されてアクセル操作量=0とされるため、新たにセンサ等を設けて制御的にアクセル操作(回動操作)をキャンセルする場合に比較して、車両用操作ペダル装置10が安価に構成されるとともに、そのアクセル操作を確実にキャンセルできる。
【0031】
また、本実施例では、操作ペダル12が踏込み操作された場合に、支持軸22が操作ペダル12と共に踏込み方向Bへ移動することにより係合歯車30と連動歯車32との噛合が遮断されるため、例えば操作ペダル12を踏込み方向Bにおいて2分割して伸縮させる場合等に比較して、車両用操作ペダル装置10が簡単且つ安価に構成される。
【0032】
また、本実施例では、ブラケット20に設けられた長穴26によって支持軸22が踏込み方向Bへの移動可能に支持されるとともに、係合部材として係合歯車30が用いられて支持軸22と同心に且つその支持軸22まわりに相対回転不能に操作ペダル12に配設される一方、連動部材として連動歯車32が用いられ、支持軸22まわりにおいて踏込み方向Bの上流側で係合歯車30と噛み合わされるように、その支持軸22と平行な軸34まわりに回転可能に車体側部材に配設されている。したがって、操作ペダル12が踏込み方向の原位置に保持された状態では、係合歯車30と連動歯車32との噛合により操作ペダル12の回動操作が確実に連動歯車32に伝達され、その連動歯車32の回転量がアクセル操作量として回転センサ36により検出される。また、係合部材として係合歯車30が用いられているため、連動歯車32と共に市販品等の汎用品を採用することが可能で、車両用操作ペダル装置10を簡単且つ安価に構成できる。
【0033】
また、本実施例は、操作ペダル12が踏込み操作されることにより常用ブレーキを作動させる場合で、車両を減速するために操作ペダル12を踏込み操作した時に操作ペダル12が矢印A方向へ回動してもアクセル操作量=0に維持されるため、駆動力変化が生じて運転者に違和感を生じさせる恐れがないとともに、操作ペダル12を踏込み操作するブレーキ操作が容易になる。
【0034】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0035】
図4の(a) 、(b) は前記図1の(b) 、(c) に相当する側面図である。この実施例では、連動部材として機能する連動歯車90が、操作ペダル12の支持軸22から離間した中間位置に支持軸22と平行な軸92まわりに回転可能に配設されている一方、その連動歯車90と噛み合わされる噛合部材94が前記ブラケット20や下フロア18等の車体側部材に位置固定に配設されている。噛合部材94は係合部材として機能するもので、図4の(a) に示すように操作ペダル12が踏込み方向の原位置に保持されている状態において、支持軸22を中心とする円弧に沿って噛合歯が設けられた円弧状噛合部96を備えており、その円弧状噛合部96が連動歯車90と噛み合わされるようになっている。円弧状噛合部96は円弧状係合部に相当し、操作ペダル12が矢印Aで示す方向へ回動操作されると、連動歯車90は円弧状噛合部96と噛み合いながら軸92まわりに回転させられ、操作ペダル12に配設された図示しない回転センサ36により、その連動歯車90の回転量がアクセル操作量として電気的に検出される。
【0036】
上記噛合部材94は、軸92まわりにおいて踏込み方向Bの上流側で連動歯車90と噛み合わされるように、図4(a) において連動歯車90の右側に位置するように配置されている。これにより、操作ペダル12が踏込み方向Bへ踏込み操作された場合に、図4(b) に示すように連動歯車90が操作ペダル12と共に踏込み方向Bへ移動することが許容されるとともに、連動歯車90が噛合部材94から離間させられて両者の噛合が機械的に遮断される。したがって、運転者が常用ブレーキを作動させるために操作ペダル12を踏込み操作した場合に、操作ペダル12が矢印A方向へ回動しても、その回動操作に拘らず連動歯車90の回転が阻止され、アクセル操作量は0すなわちアクセルオフの状態に維持されるなど、前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0037】
図5は、本発明の更に別の実施例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ前記図1の(b) に相当する側面図である。図5(a) の実施例は、前記連動歯車32の代わりに噛合歯102が直線状に設けられたラック部材100が連動部材として用いられ、上下方向の移動可能にブラケット20や下フロア18等の車体側部材に配設されており、操作ペダル12の矢印A方向の回動操作に連動して下方へ移動させられるラック部材100の直線移動量がアクセル操作量として図示しないセンサにより電気的に検出される。また、図5(b) の実施例は、上記ラック部材100と同様に構成されたラック部材110を係合部材として用いて、ブラケット20や下フロア18等の車体側部材に位置固定に配設する一方、連動歯車112を連動部材として用いて、支持軸22と同心に且つ支持軸22まわりに相対回転可能に操作ペダル12に配設した場合である。この場合には、操作ペダル12の矢印A方向の回動操作に連動してその操作ペダル12に対して支持軸22まわりに相対回転させられる連動歯車112の回転量がアクセル操作量として図示しない回転センサ36により電気的に検出される。これ等の実施例においても、前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
10:車両用操作ペダル装置 12:操作ペダル 14:入力部 18:下フロア(車体側部材) 20:ブラケット(車体側部材) 22:支持軸 26:長穴(係合遮断機構) 30:係合歯車(係合部材) 32:連動歯車(連動部材) 36:回転センサ(センサ) 42:付勢部材(係合遮断機構) 90、112:連動歯車(連動部材) 94:噛合部材(係合部材) 100:ラック部材(連動部材) 110:ラック部材(係合部材) A:回動操作方向 B:踏込み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸まわりに回動可能に配設されるとともに入力部を有し、該入力部を介して該支持軸まわりに回動操作できるとともに該支持軸に向かって踏込み操作可能な操作ペダルを備えており、
前記支持軸まわりの回動操作に基づいてアクセル操作量を検出する車両用操作ペダル装置において、
前記操作ペダルおよび車体側部材の何れか一方に一体的に設けられた係合部材と、
該係合部材と係合させられるように前記操作ペダルおよび前記車体側部材の他方に配設され、該係合部材との係合により該操作ペダルの前記支持軸まわりの回動操作に機械的に連動して該他方の部材に対して相対移動させられる連動部材と、
該連動部材の前記他方の部材に対する相対移動量を前記アクセル操作量として電気的に検出するセンサと、
前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作されると、前記係合部材と前記連動部材とが互いに離間させられて両者の係合が機械的に遮断される一方、該踏込み操作が解除されて踏込み方向の原位置まで戻されると、該係合部材と該連動部材とが互いに接近させられて機械的に係合させられるように、該操作ペダルを案内する係合遮断機構と、
を有することを特徴とする車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記係合遮断機構は、前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作された場合に、該支持軸が該操作ペダルと共に踏込み方向へ移動することを許容するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記係合遮断機構は、車体に一体的に固設されるブラケットに設けられて前記支持軸を支持するとともに、前記操作ペダルが該支持軸に向かって踏込み操作された場合に該支持軸が踏込み方向へ移動することを許容する長穴を備えており、
前記係合部材は係合歯車で、前記支持軸と同心に且つ該支持軸まわりに相対回転不能に前記操作ペダルに配設されており、
前記連動部材は、前記係合歯車と噛み合わされる連動歯車で、前記支持軸まわりにおいて前記踏込み方向の上流側で該係合歯車と噛み合わされるように、該支持軸と平行な軸心まわりに回転可能に前記車体側部材に配設されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記操作ペダルが前記支持軸に向かって踏込み操作されると、その踏込み操作量に応じて常用ブレーキが作動させられる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用操作ペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137896(P2012−137896A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289016(P2010−289016)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】