説明

車両用操舵装置

【課題】転舵軸に負荷されるラジアル荷重の影響を受け難くでき、耐久性に優れた車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】転舵輪3Aからタイロッド7Aに沿って転舵軸6の端部61に負荷される路面反力Fの成分として、ラジアル荷重F1が存在する。反対荷重付与機構24Aは、転舵軸6の軸方向移動に連動する第1のリンク25と、キングピン21の変位に連動する第2のリンク26とを含む。反対荷重付与機構24Aが、第1のリンク25に沿って、転舵軸6の端部61に抗力Rを付与する。抗力Rの成分としての反対荷重R1が、転舵軸6の端部61に付与される。ラジアル荷重F1の少なくとも一部を相殺する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤからステアリング・ナックルを介してラックに伝達されるラジアル荷重とスラスト荷重を弾性体を介して伝達するステアリング制御装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
また、操舵モータの回転を、ピニオンおよび操向ギヤによる減速を経てキングピンに伝達することにより、キングピンを回動させて前輪を操舵する車両用操舵装置が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【0003】
また、車幅方向に延びるステアリングシリンダの左右のピストンロッドを伸長・短縮することにより、左右のホイールブラケットおよびそれに取り付けられた車輪を、縦軸の軸線を中心として旋回させる産業車両のリヤアクスルが提案されている(例えば特許文献3を参照)。
また、ハンドルの回転角の検出信号に基づいて演算された転舵輪角度信号に応じて、転舵輪の舵角を変える旋回機構を設けたフォークリフトが提案されている(例えば特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−56944号公報〔図6(a)〜(c)、第14頁第28欄第9行〜第16頁第32欄第42行〕
【特許文献2】特開2003−170849号公報(図2、第35〜第38段落)
【特許文献3】特開平11−1179号公報(図1、図2、第10段落)
【特許文献4】特開2005−263392号公報(図8〜図11、第63段落および要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業車両や福祉車両においては、後輪を転舵するタイプの車両が多く、そのような車両では、所要の操舵角を確保するためには、転舵輪としての後輪を大きな転舵角で転舵する必要がある。このため、転舵軸が、路面反力による多大なラジアル荷重を受ける傾向にある。例えば、ステアバイワイヤ式の車両では、転舵軸に設けられたボールねじ機構やこれを駆動するアクチュエータが多大なラジアル荷重を受けて、耐久性が低下する。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、転舵軸に負荷されるラジアル荷重の影響を抑制することができ耐久性に優れた車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(2)の操作に伴って、軸方向(X1)に駆動される転舵軸(6)と、上記転舵軸の端部(61)にタイロッド(7A,7B)を介して連結され、転舵輪(3A,3B)をキングピン(21)回りに揺動可能に支持するナックルアーム(8A,8B)と、路面から上記転舵軸の上記端部に伝達されるラジアル荷重(F1)に抗する反対荷重(R1;T1;R2)を、上記転舵軸の上記端部に付与する反対荷重付与機構(24A,24B;124A,124B;224A,224B)と、を備え、上記反対荷重付与機構は、上記転舵軸の軸方向移動に連動する第1の要素(25;32;35)と、上記キングピンの変位に連動し、上記第1の要素と係合する第2の要素(26;33;36)と、を含む車両用操舵装置(1)を提供する(請求項1)。
【0008】
本発明では、転舵軸の端部に負荷される路面反力によるラジアル荷重に抗して、反対荷重付与機構によって、転舵軸の端部に反対荷重を付与することができる。したがって、路面反力によるラジアル荷重の少なくとも一部を相殺して、転舵軸のラジアル負荷を軽減することができる。反対荷重付与機構として、転舵軸の軸方向移動に連動する第1の要素とキングピンの変位に連動する第2の要素を互いに係合させて用いるので、構造が簡単である。
【0009】
また、上記反対荷重付与機構(24A)は、上記第1の要素としての第1のリンク(25)と、上記第2の要素としての第2のリンク(26)と、を含み、上記第1のリンクは、上記転舵軸の端部に回転可能に支持された第1の端部(251)と、第2の端部(252)と、を含み、上記第2のリンクは、上記キングピン回りに回転可能に支持された第1の端部(261)と、第2の端部(262)と、を含み、上記第1のリンクに長手方向に延びる長孔(28)が形成され、上記第2のリンクの上記第2の端部に設けられた枢軸(29)が、上記第1のリンクの上記長孔に、回転可能に且つ上記長手方向に摺動可能に連結されている場合がある(請求項2)。
【0010】
この場合、長孔内を摺動する枢軸が長孔の端部に達した状態で、すなわち、第1および第2のリンクの拘束条件の数が1つ増えて第1および第2のリンクが限定運動を行う状態で、長孔の端部から転舵軸の端部に向かう第1のリンクの軸力を用いて、転舵軸の端部に、路面反力によるラジアル荷重に抗する反対荷重を付与することができる。
また、上記転舵軸の上記端部を中心とする、上記タイロッドの揺動方向および上記第1のリンクの揺動方向が、互いに逆向きになるようにしてある場合がある(請求項3)。この場合、転舵輪の転舵角の増大に応じて、転舵軸の軸方向に対するタイロッドの傾斜角が増大するときに、転舵軸の軸方向に対する第1のリンクの傾斜角を増大させることができる。したがって、転舵に際して、路面反力によるラジアル荷重の増大に応じて、上記ラジアル荷重に抗する反対荷重を増大させることができ、転舵軸のラジアル負荷の低減に寄与することができる。
【0011】
また、上記長孔は、上記第1のリンクの上記第1の端部に近接する第1の端部(281)と、第2の端部(282)と、を含み、上記第2のリンクの上記第2の端部の上記枢軸を、上記長孔の上記第1の端部に付勢する付勢機構(30)を備える場合がある(請求項4)。この場合、長孔内での枢軸の不必要な遊びを抑制することができる。
例えば、上記付勢機構としては、上記ナックルアームおよび上記第1のリンクに係合し、上記ナックルアームおよび上記第1のリンクの交差角度を拡げるばね部材であってもよい。その場合、簡単な構成で枢軸を長孔の第1の端部に付勢することができる。
【0012】
また、例えば、上記付勢機構は、上記長孔内に配置されたばね部材であってもよい。その場合、簡単な構成で枢軸を長孔の第1の端部に付勢することができる。また、ばね部材を長孔内に配置するので、小型化に寄与することができる。
また、上記反対荷重付与機構(124A)は、上記第1の要素としての第1のリンク(32)と、上記第2の要素としての第2のリンク(33)と、を含み、上記第1のリンクは、上記転舵軸の上記端部に回転可能に支持された第1の端部(321)と、上記第2の端部(322)と、を含み、上記第2のリンクは、上記キングピン回りに回転可能に支持された第1の端部(331)と、第2の端部(332)と、を含み、上記第1のリンクの上記第2の端部および上記第2のリンクの上記第2の端部が、所定の軸線(C1)回りに相対回転可能に連結され、上記所定の軸線回りに、上記第1のリンクを上記第2のリンクに対して回転駆動可能な回転アクチュエータ(34)を備える場合がある(請求項5)。
【0013】
この場合、回転アクチュエータによって、第1のリンクを回転駆動することにより、転舵軸の端部に負荷される路面反力によるラジアル荷重に抗して、転舵軸の端部に反対荷重を付与することができる。したがって、ラジアル荷重の少なくとも一部を相殺して、転舵軸のラジアル負荷を軽減することができる。反対荷重付与機構として、転舵軸の軸方向移動に連動する第1のリンクとキングピンの変位に連動する第1のリンクを互いに係合させて用いるので、構造が簡単である。
【0014】
また、上記反対荷重付与機構(224A)は、上記第1の要素としてのセクタギヤ(35)と、上記第2の要素としてのラック(36)と、を含み、上記セクタギヤは、上記キングピンと同伴回転可能に設けられ、上記ラックは、上記転舵軸の上記端部から上記転舵軸の上記軸方向に延設された延設軸(37)に設けられ、所定の転舵角以上で、上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合うようにしてある場合がある(請求項6)。この場合、転舵角が大きいときの転舵に歯車伝動を用いるので、リンク伝動と比較して、転舵軸の端部のラジアル負荷を低減することができる。また、反対荷重付与機構として、互いに噛み合うセクタギヤおよびラックを用いるので、構造が簡単である。
【0015】
また、転舵角の増加に伴って上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合いを始めるときに、上記タイロッドの延びる方向(K1)が上記転舵軸の軸方向に一致するようにしてある場合がある(請求項7)。この場合、タイロッドが転舵軸に対して傾斜角をゼロから増加させていくときに、セクタギヤとラックを噛み合わせを開始することにより、路面反力によるラジアル荷重に抗する反対荷重を転舵軸の端部に付与することができる。
【0016】
また、上記ナックルアームの端部および上記タイロッドの端部を回転可能に連結する連結軸(38)を備え、上記連結軸は、上記ナックルアームの上記端部に設けられた長孔(39)に、当該長孔の長手方向に摺動可能に且つ回転可能に連結されており、転舵角の増加に伴って上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合いを始めるときに、上記長孔の長手方向(K2)が、上記タイロッドの延びる方向に対して直交している場合がある(請求項8)。この場合、セクタギヤとラックの噛み合い運動が、ナックルアームとタイロッドによるリンク運動によって妨げられることがない。これにより、ラックおよびセクタギヤの歯車伝動を介する転舵を実質的に可能にすることができる。
【0017】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用操舵装置の転舵機構の要部の平面図である。
【図3】転舵機構の要部の平面図であり、ニュートラルの状態を示している。
【図4】転舵機構の要部の平面図であり、右転舵された状態を示している。
【図5】転舵機構の要部の平面図であり、最大転舵角で右転舵された状態を示している。
【図6】転舵機構の要部の平面図であり、最大転舵角で左転舵された状態を示している。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る転舵機構の要部の概略図であり、ストッパを設ける構造を示している。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る転舵機構の要部の概略図であり、付勢機構の変更例を示している。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】図9の転舵機構の要部の平面図であり、ニュートラルの状態を示している。
【図11】図9の転舵機構の要部の平面図であり、最大転舵角で左転舵された状態を示している。
【図12】図9の転舵機構の要部の平面図であり、最大転舵角で右転舵された状態を示している。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図14】図13の転舵機構の要部の平面図であり、ニュートラルの状態を示している。
【図15】図13の転舵機構の要部の平面図であり、所定の転舵角の右転舵により、反対荷重付与機構のセクタギヤとラックが噛み合いを開始した状態を示している。
【図16】図13の転舵機構の要部の平面図であり、最大転舵角で右転舵された状態を示している。
【図17】図15の状態に相当するタイロッドおよびナックルアームの要部の概略図である。
【図18】タイロッドおよび転舵軸の要部を前方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、本車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と左右の転舵輪3A,3Bとの機械的な結合が解除された、いわゆるステアバイワイヤシステムを構成している。
【0020】
本実施の形態では、転舵輪3A,3Bが後輪である場合に則して説明する。転舵輪3A,3Bが後輪である場合、操舵部材2(車両)が左操舵されるときに、転舵輪3A,3Bが右転舵され、操舵部材2(車両)が右操舵されるときに、転舵輪3A,3Bが左転舵されることになる。また、転舵輪3A,3Bを後輪とする場合、転舵輪を前輪とする場合と比較して、転舵角を大きくとる必要がある。例えば、フォークリフト等の産業車両や福祉車両では、転舵輪3A,3Bの最大転舵角は、80°程度の大角度を要する。したがって、路面反力によって、転舵軸6の端部に多大なラジアル荷重が負荷される傾向にある。
【0021】
操舵部材2の回転操作に応じて駆動される、例えばブラシレスの電動モータを含む転舵用アクチュエータ4の動作を、ハウジング5に支持された転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪3A,3Bの転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
転舵用アクチュエータ4の駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた運動変換機構(たとえば、ボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向X1(車幅方向)の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の両端から突出して設けられた左右のタイロッド7A,7Bに伝達され、左右のナックルアーム8A,8Bの回動を引き起こす。これにより、対応するナックルアーム8A,8Bに支持された転舵輪3A,3Bの転舵が達成される。
【0022】
また、左右の転舵輪3A,3Bをそれぞれ介して転舵軸6の対応する端部に伝達される路面反力のラジアル荷重に抗して、反対荷重を生起し、その反対荷重を転舵軸6の対応する端部に付与するための、左右の反対荷重付与機構24A,24Bが設けられている。
転舵軸6、タイロッド7A,7Bおよびナックルアーム8A,8Bなどにより、転舵輪3A,3Bを転舵するための転舵機構100が構成されている。転舵軸6を支持するハウジング5は、図示しないブラケット等を介して車体に固定されている。
【0023】
操舵部材2は、車体に対して回転可能に支持された回転シャフト9に連結されている。この回転シャフト9には、操舵部材2に操作反力を与えるための反力用アクチュエータ10が付設されている。反力用アクチュエータ10は、回転シャフト9と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータを含む。
回転シャフト9の操作部材2とは反対側の端部には、例えば渦巻きばね等からなる弾性部材11が車体との間に結合されている。この弾性部材11は、反力用アクチュエータ10が操舵部材2にトルクを付加していないときに、その弾性力によって、操舵部材2を直進操舵位置に復帰させる。
【0024】
操舵部材2の操作入力値を検出するために、回転シャフト9に関連して、操舵部材2の操舵角θh を検出するための操舵角センサ12が設けられている。また、回転シャフト9には、操舵部材2に加えられた操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ13が設けられている。一方、転舵軸6に関連して、転舵輪3A,3Bの転舵角δW (タイヤ角)を検出するための転舵角センサ14が設けられている。
【0025】
これらのセンサの他にも、車速Vを検出する車速センサ15と、車体の上下加速度GZ を検出する悪路状態検出センサとしての上下加速度センサ16と、車両の横加速度Gy を検出する横加速度センサ17と、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ18とが設けられている。
上記のセンサ類12〜18の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニット(ECU)からなる車両制御手段としての制御装置19に入力されるようになっている。
【0026】
制御装置19は、操舵角センサ12によって検出された操舵角θh および車速センサ15によって検出された車速Vに基づいて、目標転舵角を設定し、この目標転舵角と転舵角センサ14によって検出された転舵角δW との偏差に基づいて、駆動回路20Aを介し、転舵用アクチュエータ4を駆動制御(転舵制御)する。
一方、制御装置19は、センサ類12〜18が出力する検出信号に基づいて、操舵部材2の操舵方向と逆方向の適当な反力が発生されるように、駆動回路20Bを介して、反力用アクチュエータ10を駆動制御(反力制御)する。
【0027】
左右の転舵輪3A,3Bを転舵する機構は左右対称な関係にあるので、左の転舵輪3Aを転舵する機構とこれに関連する反対荷重付与機構24Aに則して説明する。図2に示すように、転舵軸6の端部61に、タイロッド7Aを介してナックルアーム8Aが連結されている。ナックルアーム8Aの一端は、縦方向に延びるキングピン21に固定されている。転舵輪3Aは、キングピン21を枢軸として操向可能に支持されている。ナックルアーム8Aの他端は、ジョイント22を介して、タイロッド7Aに連結されている。タイロッド7Aは、ジョイント23を介して、転舵軸6の端部61に連結されている。
【0028】
キングピン21と転舵軸6の端部61との間に、路面から転舵軸6の端部61に伝達されるラジアル荷重F1に抗する反対荷重R1を、転舵軸6の端部61に付与するための反対荷重付与機構24Aが備えられている。反対荷重付与機構24Aは、転舵軸6の軸方向移動に連動する第1の要素としての第1のリンク25と、キングピン21の変位に連動する第2の要素としての第2のリンク26とを含んでいる。
【0029】
第1のリンク25は、転舵軸6の端部61に枢軸27を介して回転可能に支持された第1の端部251と、第2の端部252とを有している。第1のリンク25に長手方向Y1に延びる長孔28が形成されている。
第2のリンク26は、キングピン21の回りに回転可能に支持された第1の端部261と、第2の端部262とを有している。また、第2のリンク26の第2の端部262に設けられた枢軸29が、第1のリンク25の長孔28に、回転可能に且つ長手方向Y1に摺動可能に嵌合され連結されている。第1のリンク25の長孔28は、第1のリンク25の第1の端部251に近接する第1の端部281と、第2の端部282とを有している。
【0030】
また、第2のリンク26の第2の端部262の枢軸29を、長孔28の第1の端部281に付勢する付勢機構として、ばね部材30が設けられている。付勢機構としてのばね部材30は、キングピン21の回りに配置された、「く」の字形状の板ばねである。ばね部材30の第1の端部301が、ナックルアーム8Aに係合され、ばね部材30の第2の端部302が、第2のリンク26に係合されている。ばね部材30は、ナックルアーム8Aに対する第1のリンク25の交差角度を拡げるように、第2のリンク26をキングピン21の回りに(図2において、左回りに)回動付勢している。なお、後述する図3〜図6では、簡略化のため、付勢機構としてのばね部材30の図示を省略してある。
【0031】
本実施の形態の主に特徴とするところは、図3〜図5にそれぞれ示すように、転舵軸6の端部61に負荷される路面反力によるラジアル荷重F1に抗して、反対荷重付与機構24Aによって、転舵軸6の端部61に反対荷重R1を付与できるようにしていることである。
具体的には、図3は、転舵角がゼロであるニュートラルの状態であり、転舵輪3Aを右転舵するために、転舵軸6の左側の端部61が、左方に伸長するためにタイロッド7Aおよび第1のリンク25を左方に押している状態(転舵輪3Aの右転舵を開始しようとする状態)である。
【0032】
ニュートラルのときに、タイロッド7Aは、転舵軸6の軸方向X1に対して傾斜している。すなわち、タイロッド7Aの転舵軸6側の端部が、ナックルアーム8A側の端部よりも車両の前方Z1に位置するように、タイロッド7Aが傾斜している。転舵輪3Aが受ける路面反力は、タイロッド7Aの軸力Fとして、転舵軸6の端部61に与えられる。その軸力Fのラジアル成分が、路面反力によるラジアル荷重F1に相当し、車両の前方Z1に向けて働くことになる。
【0033】
一方、ニュートラルのときに、反対荷重付与機構24Aの第1のリンク25は、転舵軸6の軸方向X1に対して、タイロッド7Aとは逆向きに傾斜している。具体的には、第1のリンク25の第2の端部252が、第1の端部251よりも、車両の前方Z1に位置するように配置されている。また、第2のリンク26の枢軸29は、第1のリンク25の長孔28の第1の端部281に位置しており、第1および第2のリンク25,26が限定運動可能な状態となっている。
【0034】
反対荷重付与機構24Aの第1のリンク25は、転舵軸6からの押圧力をその軸方向に受け、その押圧力に対する軸力としての抗力Rを、転舵軸6の端部61に付与する。抗力Rのラジアル成分が、路面反力によるラジアル荷重F1に抗する反対荷重R1として、車両の後方Z2に向けて働き、転舵軸6の端部61に付与される。
図3に示すニュートラルの状態から図4の状態を経て図5に示す最大転舵角まで転舵される状態まで、後輪である転舵輪3Aが右転舵(車両が左操舵)されるときに、タイロッド7Aは、ジョイント23を中心として、右回りに揺動される。一方、第1のリンク25は、枢軸27を中心として、左回りに揺動されるようになっている。すなわち、転舵のときに、タイロッド7Aの揺動方向と、第1のリンク25の揺動方向とが、互いに逆向きになる。
【0035】
所定の転舵角で転舵輪3Aが右転舵された図4の状態では、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜方向が、図3のときのタイロッド7Aの傾斜方向とは逆になっている。すなわち、図4の状態では、ナックルアーム8A側の端部が、タイロッド7Aの転舵軸6側の端部よりも車両の前方Z1に位置するように、タイロッド7Aが傾斜している。また、反対荷重付与機構24Aの第1のリンク25は、転舵軸6の軸方向X1に対して、タイロッド7Aとは逆向きに傾斜している。具体的には、第1のリンク25の第1の端部251が、第2の端部252よりも、車両の前方Z1に位置するように配置されている。
【0036】
したがって、図4では、転舵輪3Aが受ける路面反力が、タイロッド7Aの軸力Fとして、転舵軸6の端部61に与えられる。その軸力Fのラジアル成分が、路面反力によるラジアル荷重F1に相当し、車両の後方Z2に向けて働くことになる。一方、反対荷重付与機構24Aの第1のリンク25は、転舵軸6からの押圧力をその軸方向に受け、その押圧力に対する軸力としての抗力Rを、転舵軸6の端部61に付与する。抗力Rのラジアル成分が、路面反力によるラジアル荷重F1に抗する反対荷重R1として、車両の前方Z1に向けて働くことになる。
【0037】
図4に示す状態から、転舵輪3Aが最大転舵角で転舵される図5の状態まで、タイロッド3Aが、転舵軸6の軸方向X1に対する傾斜角を増大させる一方、反対荷重付与機構24Aの第1のリンク25が、転舵軸6の軸方向に対する傾斜角を増大させている。したがって、路面反力によるラジアル荷重F1の増大に応じて、そのラジアル荷重F1に抗する反対荷重R1を増大させることができる。
【0038】
一方、図3に示すニュートラルの状態において、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角は、比較的小さく設定されており、また、図3のニュートラルの状態から、転舵輪3Aが最大転舵角で左転舵される図6に示す状態まで、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角は、傾斜角がゼロに近い状態まで漸減している。すなわち、ニュートラル状態からの転舵輪3Aの左転舵において、タイロッド7Aは転舵軸6の軸方向X1に対して、非常に浅い角度をなしているので、路面反力によるラジアル荷重は、問題にならないほど小さい。したがって、反対荷重を付与する必要がない。
【0039】
図3のニュートラル状態から図6の最大転舵角に達するにしたがって、反対荷重付与機構24Aの第2のリンク26の枢軸27は、第1のリンク25の長孔28の第1の端部281から第2の端部282まで摺動する。この間、反対荷重付与機構24Aから転舵軸6の端部61に反対荷重が付与されることはない。図6の最大転舵角の状態では、第1のリンク25および第2のリンク26が、直線状に連結されることになる。
【0040】
本実施の形態によれば、反対荷重付与機構24Aによる反対荷重R1を転舵軸6の端部61に付与することにより、路面反力によるラジアル荷重R1の少なくとも一部を相殺して、転舵軸6のラジアル負荷を軽減することができる。したがって、転舵軸6に設けられた、例えばボールねじ機構やこれを駆動するアクチュエータ(例えば、転舵軸6と同軸に配置された電動モータ)に、多大なラジアル荷重が負荷されることを防止することができ、その結果、車両用操舵装置1の耐久性を向上することができる。
【0041】
また、反対荷重付与機構24Aとして、転舵軸6の軸方向X1の移動に連動する第1の要素としての第1のリンク25と、キングピン21の変位に連動する第2の要素としての第2のリンク26を互いに係合させて用いるので、構造が簡単である。
また、第1のリンク25が、転舵軸6の端部61に回転可能に支持された第1の端部251と第2の端部252とを含み、第2のリンク26が、キングピン21回りに回転可能に支持された第1の端部261と第2の端部262とを含む。第1のリンク25に長手方向に延びる長孔28が形成され、その長孔28に、第2のリンク26の第2の端部262に設けられた枢軸27が、回転可能に且つ長手方向に摺動可能に連結されている。したがって、図3〜図5に示すように、枢軸27が長孔28の第2の端部281に達した状態で、すなわち、第1および第2のリンク25,26の拘束条件の数が1つ増えて第1および第2のリンク25,26が限定運動を行う状態で、長孔28の第2の端部281から転舵軸6の端部61に向かう第1のリンク25の軸力Rを用いて、転舵軸の端部に、路面反力によるラジアル荷重F1に抗する反対荷重R1を付与することができる。
【0042】
また、転舵輪3Aの転舵方向および第1のリンク25の揺動方向が、互いに逆向きになるようにしてあるので、転舵に際して、タイロッド7Aの揺動方向と第1のリンク25の揺動方向が、互いに逆向きとなる。したがって、タイロッド7Aを介する路面反力によるラジアル荷重F1の増大に応じて、第1のリンク25による反対荷重R1を増大させることができる。これにより、転舵軸6のラジアル負荷の低減に寄与することができる。
【0043】
また、第2のリンク26の第2の端部262の枢軸27を、第1のリンク25の長孔28の第1の端部281に付勢する付勢機構としての、ばね部材30を設けているので、長孔28内での枢軸27の不必要な遊びを抑制することができる。また、第1および第2のリンク25,26の上記の限定運動を可能とすることができる。
なお、図6の最大転舵角の状態で、第1のリンク25および第2のリンク26が、直線状に連結されたときに、図7に示す第2の実施の形態のように、第1のリンク25および第2のリンク26が逆方向に折れ曲がることを防止するためのストッパ31を設けるようにしてもよい。ストッパ31としては、第1のリンク25および第2のリンク26の何れか一方に固定され、他方の側縁に当接可能な規制部材であってもよい。図7の例では、ストッパ31は、第1のリンク25に固定され、第2のリンク26の側縁に当接して、両リンク25,26のなす角度が180°を超えないようにする。
【0044】
また、図2の実施の形態では、付勢機構として、ナックルアーム8Aおよび第1のリンク25に係合し、ナックルアーム8Aおよび第1のリンク25の交差角度を拡げるばね部材30を用いたが、これに代えて、図8に示す第3の実施の形態のように、付勢機構として、長孔28内に配置されたばね部材30Aを用いてもよい。この場合、簡単な構成で枢軸29を長孔28の第1の端部281側へ付勢することができる。また、ばね部材30Aを長孔28内に配置するので、小型化に寄与することができる。
【0045】
次いで、図9は、左右の反対荷重付与機構124A,124Bが設けられた第4の実施の形態を示している。反対荷重付与機構124A,124Bは、左右対称の構成であるので、左側の反対荷重付与機構124Aに則して説明する。本実施の形態では、図10に示すように、反対荷重付与機構124Aが、第1の要素としての第1のリンク32と、第2の要素としての第2のリンク33とを含んでいる。図10に示す、転舵角がゼロであるニュートラルの状態で、タイロッド7A、ナックルアーム8A、第1のリンク32および第2のリンク33が四角形をなすようにされている。
【0046】
具体的には、第1のリンク32は、転舵軸6の一端61に回転可能に支持された第1の端部321と、第2の端部322とを有している。また、第2のリンク33は、キングピン21回りに回転可能に支持された第1の端部331と第2の端部332とを有している。第1のリンク32の第2の端部322および第2のリンク33の第2の端部332が、所定の軸線C1回りに相対回転可能に連結されている。
【0047】
所定の軸線C1回りに、第1のリンク32を第2のリンク33に対して回転駆動可能な回転アクチュエータ34が設けられている。回転アクチュエータ34としては、所定の軸線C1の回りに配置された電動モータを用いることができる。その電動モータは、第1のリンク32の第1の端部322および第2のリンク33の第2の端部332の何れか一方と同伴回転可能なステータと、他方と同伴回転可能なロータを備えていればよい。
【0048】
制御装置19は、転舵角センサ14によって検出された転舵角δW に基づいて、転舵角−制御電流マップ(図示せず)を用いて、駆動回路20Cを介して回転アクチュエータ34を駆動制御するようにしている。
図10に示すニュートラルの状態では、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角が非常に小さくされている。また、図11に示すように、転舵輪3Aが最大転舵角で左転舵された状態では、軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角はゼロにされている。すなわち、ニュートラルから左転舵されるときに、路面反力によるラジアル荷重は非常に小さいので、反対荷重を付与する必要がない。
【0049】
一方、図10に示すニュートラルの状態から、図12に示す状態へと転舵輪3Aが右転舵されるときには、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角が大きくなる。すなわち、図12に示す状態では、タイロッド7Aの転舵軸6側の端部が、タイロッド7Aのナックルアーム8A側の端部よりも車両の後方Z2に位置するように、タイロッド7Aが傾斜している。このため、転舵軸6の端部61に対して、路面反力によるラジアル荷重F1が、車両の後方Z2に向けて負荷されている。
【0050】
一方、制御装置19は、第2のリンク33に対して、第1のリンク32が、所定の軸線C1を中心として、右回りのトルクTを受けるように、回転アクチュエータ34を駆動制御する。これにより、路面反力によるラジアル荷重F1に抗して、車両の前方Z1に、反対荷重T1を生起することができる。
右転舵の転舵角が大きくなるほど、転舵軸6の軸方向X1に対するタイロッド7Aの傾斜角が大きくなるので、制御装置19は、転舵角センサ14により検出された転舵角δW が大きいほど、回転アクチュエータ34としての電動モータの制御電流を増大させて回転アクチュエータ34の発生トルクが大きくなるように、回転アクチュエータ34を駆動制御する。
【0051】
本実施の形態によれば、回転アクチュエータ34によって、第1のリンク32を回転駆動することにより、転舵軸6の端部61に負荷される路面反力によるラジアル荷重F1に抗して、転舵軸6の端部61に反対荷重T1を付与することができる。したがって、ラジアル荷重F1の少なくとも一部を相殺して、転舵軸6のラジアル負荷を軽減することができる。反対荷重付与機構124Aとして、転舵軸6の軸方向X1の移動に連動する第1のリンク32とキングピン21の変位に連動する第2のリンク33とを互いに係合させて用いるので、構造が簡単である。
【0052】
次いで、図13は、左右の反対荷重付与機構224A,224Bが設けられた第5の実施の形態を示している。反対荷重付与機構224A,224Bは、左右対称の構成であるので、左側の反対荷重付与機構224Aに則して説明する。図14〜図16において、タイロッド7Aおよびナックルアーム8Aは、簡略化して示してある。
本実施の形態において、反対荷重付与機構224Aは、第1の要素としてのセクタギヤ35と、第2の要素としてのラック36とを含んでいる。セクタギヤ35は、キングピン21と同伴回転可能に設けられている。セクタギヤ35を用いるのは小型化のためである。ラック36は、転舵軸6の端部61から転舵軸6の軸方向X1に延設された延設軸37に設けられている。図14に示すニュートラルの状態では、セクタギヤ35とラック36とは、離間しており、噛み合っていない。図15および図16に示すように、転舵輪3Aが所定の転舵角以上で右転舵されたときに、セクタギヤ35とラック36が噛み合うようにしてある。
【0053】
具体的には、転舵輪3Aが上記所定の転舵角をなすときに、図15に示すように、タイロッド7Aの延びる方向K1が、転舵軸6の軸方向X1に一致している。
また、図17に示すように、ナックルアーム8Aの端部およびタイロッド7Aの端部を回転可能に連結する連結軸38が設けられている。その連結軸38は、ナックルアーム8Aの端部に設けられた長孔39に、長孔39の長手方向K2に摺動可能に且つ回転可能に連結されている。また、長孔39内に収容された付勢部材40によって、連結軸38が長孔39の端部に付勢されている。図15に示すように、転舵輪3Aが上記所定の転舵角をなして、タイロッド7Aの延びる方向K1と転舵軸6の軸方向X1が一致するときに、図17に示すように、長孔39の長手方向K2が、タイロッド7Aの延びる方向K1に対して直交している。
【0054】
また、図18に示すように、タイロッド7Aが、一対の板部材41,42で構成されている。これら一対の板部材41,42の間に、転舵軸6の端部61が配置される状態で、一対の板部材41,42および転舵軸6が、枢軸27により相対回転可能に連結されている。転舵軸6とタイロッド7Aの相対回転に伴って、転舵軸6からの延設軸37が、一対の板部材41,42間に進退できるようになっている。
【0055】
本実施の形態によれば、転舵角δw が大きいときの転舵に歯車伝動を用いるので、リンク伝動の場合と比較して、転舵軸6の端部61のラジアル負荷を低減することができる。また、反対荷重付与機構224Aとして、互いに噛み合うセクタギヤ35およびラック36を用いるので、構造が簡単である。
また、転舵輪3Aが上記所定の転舵角をなすときに、タイロッド7Aの延びる方向K1が転舵軸6の軸方向X1に一致している。したがって、タイロッド7Aが転舵軸6の軸方向X1に対して傾斜角をゼロから増加させていくときに、セクタギヤ35とラック36の噛み合わせを開始することができ、噛み合いの抗力の成分として、路面反力によるラジアル荷重F1に抗する反対荷重R2を転舵軸6の端部61に付与することができる。
【0056】
また、ナックルアーム8Aの端部およびタイロッド7Aの端部を回転可能に連結する連結軸38が、ナックルアーム8Aの端部に設けられた長孔39に、長孔39の長手方向K2に摺動可能に且つ回転可能に連結されており、転舵輪3Aが上記所定の転舵角をなすときに、長孔39の長手方向K2が、タイロッド7Aの延びる方向K1に対して直交している。
【0057】
すなわち、図15に示すように、セクタギヤ35およびラック36が噛み合いを開始するときに、タイロッド7Aとナックルアーム8Aの拘束条件の1つが減り、タイロッド7Aおよびナックルアーム8Aが限定運動しなくなる。したがって、セクタギヤ35とラック36の噛み合い運動が、ナックルアーム8Aおよびタイロッド7Aによるリンク運動によって妨げられることがない。これにより、セクタギヤ35およびラック36の歯車伝動を介する転舵を実質的に可能にすることができる。
【0058】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0059】
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、3A,3B…転舵輪、4…転舵用アクチュエータ、5…ハウジング、6…転舵軸、61…(転舵軸の)端部、7A,7B…タイロッド、8A,8B…ナックルアーム、14…転舵角センサ、19…制御装置、21…キングピン、22,23…ジョイント、24A,24B;124A,124B;224A,224B…反対荷重付与機構、25…第1のリンク(第1の要素)、251…第1の端部、252…第2の端部、26…第2のリンク(第2の要素)、261…第1の端部、262…第2の端部、27…枢軸、28…長孔、281…第1の端部、282…第2の端部、29…枢軸、30;30A…ばね部材(付勢機構)、31…ストッパ、32…第1のリンク(第1の要素)、321…第1の端部、322…第2の端部、33…第2のリンク(第2の要素)、331…第1の端部、332…第2の端部、34…回転アクチュエータ、35…セクタギヤ(第1の要素)、36…ラック(第2の要素)、37…延設軸、38…連結軸、39…長孔、X1…軸方向、Y1…長手方向、Z1…前方、Z2…後方、K1…タイロッドの延びる方向、K2…長手方向、F1…ラジアル荷重、R1;T1;R2…反対荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材の操作に伴って、軸方向に駆動される転舵軸と、
上記転舵軸の端部にタイロッドを介して連結され、転舵輪をキングピン回りに揺動可能に支持するナックルアームと、
路面から上記転舵軸の上記端部に伝達されるラジアル荷重に抗する反対荷重を、上記転舵軸の上記端部に付与する反対荷重付与機構と、を備え、
上記反対荷重付与機構は、上記転舵軸の軸方向移動に連動する第1の要素と、上記キングピンの変位に連動し、上記第1の要素と係合する第2の要素と、を含む車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記反対荷重付与機構は、上記第1の要素としての第1のリンクと、上記第2の要素としての第2のリンクと、を含み、
上記第1のリンクは、上記転舵軸の上記端部に回転可能に支持された第1の端部と、第2の端部と、を含み、
上記第2のリンクは、上記キングピン回りに回転可能に支持された第1の端部と、第2の端部と、を含み、
上記第1のリンクに長手方向に延びる長孔が形成され、
上記第2のリンクの上記第2の端部に設けられた枢軸が、上記第1のリンクの上記長孔に、回転可能に且つ上記長手方向に摺動可能に連結されている車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項2において、上記転舵軸の上記端部を中心とする、上記タイロッドの揺動方向および上記第1のリンクの揺動方向が、互いに逆向きになるようにしてある車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3において、上記長孔は、上記第1のリンクの上記第1の端部に近接する第1の端部と、第2の端部と、を含み、
上記第2のリンクの上記第2の端部の上記枢軸を、上記長孔の上記第1の端部に付勢する付勢機構を備える車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1において、上記反対荷重付与機構は、上記第1の要素としての第1のリンクと、上記第2の要素としての第2のリンクと、を含み、
上記第1のリンクは、上記転舵軸の上記端部に回転可能に支持された第1の端部と、上記第2の端部と、を含み、
上記第2のリンクは、上記キングピン回りに回転可能に支持された第1の端部と、第2の端部と、を含み、
上記第1のリンクの上記第2の端部および上記第2のリンクの上記第2の端部が、所定の軸線回りに相対回転可能に連結され、
上記所定の軸線回りに、上記第1のリンクを上記第2のリンクに対して回転駆動可能な回転アクチュエータを備える車両用操舵装置。
【請求項6】
請求項1において、上記反対荷重付与機構は、上記第1の要素としてのセクタギヤと、上記第2の要素としてのラックと、を含み、
上記セクタギヤは、上記キングピンと同伴回転可能に設けられ、
上記ラックは、上記転舵軸の上記端部から上記転舵軸の上記軸方向に延設された延設軸に設けられ、
所定の転舵角以上で、上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合うようにしてある車両用操舵装置。
【請求項7】
請求項6において、転舵角の増加に伴って上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合いを始めるときに、上記タイロッドの延びる方向が上記転舵軸の軸方向に一致するようにしてある車両用操舵装置。
【請求項8】
請求項7において、上記ナックルアームの端部および上記タイロッドの端部を回転可能に連結する連結軸を備え、
上記連結軸は、上記ナックルアームの上記端部に設けられた長孔に、当該長孔の長手方向に摺動可能に且つ回転可能に連結されており、
転舵角の増加に伴って上記セクタギヤおよび上記ラックが噛み合いを始めるときに、上記長孔の長手方向が、上記タイロッドの延びる方向に対して直交するようにしてある車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−20645(P2012−20645A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159733(P2010−159733)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】