説明

車両用方向指示装置及びその誤作動防止装置

【課題】電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制する。
【解決手段】誤作動防止回路5が、方向指示ランプがLED6a,6bにより構成されている時の電位差と方向指示ランプが白熱球により構成されていた時の電位差とを比較し、電位差の差分値分の電流をウィンカー制御ユニット4に加算することにより断線検出機能の誤作動を防止する。これにより、従来の車両用方向指示装置のようにダミー素子に電流を流すのではなく、ウィンカー制御ユニット4に微小電位差を加算することにより、断線検出機能の誤作動を抑制するので、電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断線検出機能を有する車両用方向指示装置及びその誤作動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、進行方向を変更する際に方向指示ランプを点滅動作させて進行方向を表示する車両用方向指示装置が知られている。このような車両用方向指示装置の中には、方向指示ランプを構成する白熱球に断線が生じた場合、制御ユニットの電気的負荷が減少することによって断線していない白熱球が高速点滅動作することにより、白熱球の断線を報知する断線(球切れ)検出機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−139206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、省電力化の観点から、方向指示ランプを構成する白熱球をLED(Light Emitting Diode)に変更することが行われている。しかしながら、断線検出機能を有する車両用方向指示装置において白熱球をLEDに変更した場合、断線時と同様、制御ユニットの電気的負荷が減少するために、断線が発生していないのにも係わらず方向指示ランプが高速点滅動作する。このような背景から、従来の車両用方向指示装置では、白熱球をLEDに変更する際、電気的負荷の減少分に相当する抵抗素子をダミー素子として制御ユニットに接続し、制御ユニットの電気的負荷の減少を抑制することにより、断線検出機能の誤作動を防止していた。ところがダミー素子を接続することにより断線検出機能の誤作動を防止するようにした場合、ダミー素子が電力を消費するために、電力が無駄に消費されると同時にダミー素子部分に熱が発生する。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制可能な車両用方向指示装置及びその誤作動防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用方向指示装置は、進行方向を変更する際に方向指示ランプを点滅動作させて進行方向を表示する車両用方向指示装置であって、方向指示ランプの点滅動作を制御する制御ユニットと、方向指示ランプが白熱球により構成されている時の制御ユニットの作動状態に関する情報を第1の作動状態情報として記憶する記憶手段と、方向指示ランプを白熱球からLEDに変更した時の制御ユニットの作動状態に関する情報を第2の作動状態情報として検出する検出手段と、記憶手段により記憶されている第1の作動状態情報と第2の検出手段により検出された第2の作動状態情報を用いて第1の作動状態から第2の作動状態への変化量を算出し、算出された変化量を用いて略第1の作動状態になるように制御ユニットの作動状態を補正する補正手段とを備える。
【0007】
本発明に係る車両用方向指示装置の誤作動防止装置は、方向指示ランプが白熱球により構成されている時の方向指示ランプの点滅動作を制御する制御ユニットの作動状態に関する情報を第1の作動状態情報として記憶する記憶手段と、方向指示ランプを白熱球からLEDに変更した時の制御ユニットの作動状態に関する情報を第2の作動状態情報として検出する検出手段と、記憶手段により記憶されている第1の作動状態情報と第2の検出手段により検出された第2の作動状態情報を用いて第1の作動状態から第2の作動状態への変化量を算出し、算出された変化量を用いて略第1の作動状態になるように制御ユニットの作動状態を補正する補正手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用方向指示装置及びその誤作動防止装置によれば、電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態となる車両用方向指示装置の構成及び方向指示ランプが白熱球に構成されている時の動作を説明するための回路図である。
【図2】図1に示す車両用方向指示装置における方向指示ランプが白熱球からLEDに変更された際の車両用方向指示装置の動作を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる車両用方向指示装置及びその動作について説明する。
【0011】
〔車両用方向指示装置の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の実施形態となる車両用方向指示装置の構成について説明する。
【0012】
本発明の実施形態となる車両用方向指示装置1は、図1に示すように、ウィンカー制御ユニット4に対し並列接続された2つの白熱球2a,2bと、白熱球2a,2bに電力を供給するバッテリー3と、白熱球2a,2bへの電力供給のオン/オフを制御するウィンカー制御ユニット4と、断線検出機能の誤作動を防止する誤作動防止回路5を備える。誤作動防止回路5は、白熱球2a,2bに供給される電気信号が入力される端子11と、バッテリー3からの電気信号が入力される端子12と、端子11に直列接続されたインダクタL及びMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のスイッチング素子Qと、端子12に直列接続された抵抗素子R及びダイオードDと、インダクタLの端子11側端部とダイオードDのカソード端子との間に配設された平滑化コンデンサCAと、制御回路13とを備える。ダイオードDのアノード端子はインダクタLとスイッチング素子Qの接続点に接続されている。
【0013】
〔車両用方向指示装置の動作〕
図1に示す車両用方向指示装置1は、以下に説明するように動作することにより、車両が進行方向を変更する際に白熱球2a,2bを点滅動作させて進行方向を表示する。すなわち車両のECU(Electronic Control Unit)からウィンカー制御ユニット4に駆動命令が入力されると、ウィンカー制御ユニット4は、バッテリー3から供給された電気信号をウィンカー信号に準じた60〜120回/分(1〜0.5Hz)の範囲内で固定されたタイミングでパルス制御する。ウィンカー制御ユニット4から出力されたパルス信号は並列に接続された白熱球2a,2bに入力され、白熱球2a,2bはウィンカー制御ユニット4により固定されたタイミングで点滅動作する。なお白熱球2a,2bの点滅動作(点滅周期)は運転席メータ内の方向指示装置モニタ及びリレー動作音から確認することができる。
【0014】
またこの車両用方向指示装置1では、誤作動防止回路5が以下に説明するように動作することにより、方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されている時の作動状態に関する情報を記憶する。すなわち制御回路13は、端子11及び入力ポート14を介して入力されたウィンカー制御ユニット4からのパルス信号をA/D変換する。また制御回路13は、端子12及び入力ポート15を介して入力されたバッテリー3からの電力信号をA/D変換する。なお図1中の矢印はこの処理の際の電流の向きを示す。そして制御回路13は、ウィンカー制御ユニット4からのパルス信号とバッテリー3からの電気信号の電位差を方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されている時の作動状態に関する情報として算出,記憶する。なおこの電位差は白熱球2a,2bが断線した場合には小さくなり、断線していない白熱球が高速点滅動作することにより白熱球の断線が報知される(断線検出機能)。
【0015】
〔白熱球をLEDに変更した際の動作〕
このような構成を有する車両用方向指示装置1では、白熱球2a,2bがLEDに変更された際、誤作動防止装置5が以下に説明するように動作することにより電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制する。すなわち図2に示すように白熱球2a,2bがLED6a,6bに変更された場合、制御回路13は、端子11及び入力ポート14を介して入力されたウィンカー制御ユニット4からのパルス信号をA/D変換する。また制御回路13は、端子12及び入力ポート15を介して入力されたバッテリー3からの電力信号をA/D変換する。そして制御回路13は、ウィンカー制御ユニット4からのパルス信号とバッテリー3からの電力信号の電位差を算出する。白熱球2a,2bがLED6a,6bに変更されることによりウィンカー制御ユニット4の電気的負荷(仕事量)は減少するので、算出された電位差は方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されていた時に記憶した電位差よりも小さくなる。
【0016】
そこで制御回路13は、方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されていた時の電位差と算出された電位差とを比較し、算出された電位差の方が小さい場合、方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されていた時の電位差と略等しくなるようにウィンカー制御ユニット4に電流を加算する。具体的には、本実施形態では、制御回路13はポート17を介してスイッチング素子QにPWM制御信号を出力する。スイッチング素子QはPWM制御信号がハイ(High)レベルにある時にオン状態となり、ウィンカー制御ユニット4からのパルス信号がインダクタLを介してアースに流れると共にインダクタLにエネルギーが蓄積される。
【0017】
一方、PWM制御信号がロー(Low)レベルにある時には、スイッチング素子Qはオフ状態となり、インダクタLからアースに流れる電流は停止し、図2中の矢印で示すように、インダクタLに蓄積されたエネルギーがダイオードD,抵抗素子R,端子12を介してウィンカー制御ユニット4を通過して再びインダクタLに供給される。このようにしてPWM制御信号の作動に応じてウィンカー制御ユニット4には電流が加算される。ウィンカー制御ユニット4に流れる電流量はPWM制御信号のデューティ比により決まり、ハイレベルの時間が長ければ電流は増加し、逆にハイレベルの時間が短ければ電流は減少する。従って、制御回路13は、算出された電位差が方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されていた時の電位差となるようにPWM制御信号のデューティ比を調整することにより、LED6a,6bが高速点滅動作することを抑制できる。なおPWM制御信号のデューティ比は、ポート14における入力電圧値,ポート15における電圧値,ポート16における入力電圧値(抵抗素子RとダイオードD間の電圧値),及びポート15の電圧検出タイミング等の条件を解析することにより決定できる。
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる車両用方向指示装置1では、誤作動防止回路5が、方向指示ランプがLED6a,6bにより構成されている時の電位差と方向指示ランプが白熱球2a,2bにより構成されていた時の電位差とを比較し、電位差の差分値分の電流をウィンカー制御ユニット4に加算することにより断線検出機能の誤作動を防止する。そしてこのような構成によれば、従来の車両用方向指示装置のようにダミー素子に電流を流すのではなく、ウィンカー制御ユニット4に微小電位差を加算することにより、断線検出機能の誤作動を抑制するので、電力を無駄に消費することなく、且つ、発熱を抑制しつつ、断線検出機能の誤作動を抑制することができる。
【0019】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば本実施形態は白熱球が2つにより構成されているものであるが、本発明は白熱球の数に限定されることはない。またウィンカー制御ユニット4は車両集中制御ユニット内に組み込まれているものであってもよい。すなわち本発明は本実施形態以外の種々の車両形態に適用することができる。このように本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0020】
1:車両用方向指示装置
2a,2b:白熱球
3:バッテリー
4:ウィンカー制御ユニット
5:誤作動防止回路
6a,6b:LED
11,12:端子
13:制御回路
14,15,16,17:ポート
CA:平滑化コンデンサ
D:ダイオード
L:インダクタ
Q:スイッチング素子
R:抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向を変更する際に方向指示ランプを点滅動作させて進行方向を表示する車両用方向指示装置であって、
前記方向指示ランプの点滅動作を制御する制御ユニットと、
方向指示ランプが白熱球により構成されている時の前記制御ユニットの作動状態に関する情報を第1の作動状態情報として記憶する記憶手段と、
方向指示ランプを白熱球からLEDに変更した時の前記制御ユニットの作動状態に関する情報を第2の作動状態情報として検出する検出手段と、
前記記憶手段により記憶されている第1の作動状態情報と前記第2の検出手段により検出された第2の作動状態情報を用いて第1の作動状態から第2の作動状態への変化量を算出し、算出された変化量を用いて略第1の作動状態になるように前記制御ユニットの作動状態を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする車両用方向指示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用方向指示装置において、
前記制御ユニットの作動状態に関する情報は当該制御ユニットにおける電位差の情報を含むことを特徴とする車両用方向指示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用方向指示装置において、
前記補正手段は、方向指示ランプが白熱球により構成されている時に制御ユニットに流れる電流と方向指示ランプがLEDにより構成されている時に制御ユニットに流れる電流の差分値を制御ユニットに追加して流すことにより、略第1の作動状態になるように前記制御ユニットの作動状態を補正することを特徴とする車両用方向指示装置。
【請求項4】
方向指示ランプが白熱球により構成されている時の方向指示ランプの点滅動作を制御する制御ユニットの作動状態に関する情報を第1の作動状態情報として記憶する記憶手段と、
方向指示ランプを白熱球からLEDに変更した時の前記制御ユニットの作動状態に関する情報を第2の作動状態情報として検出する検出手段と、
前記記憶手段により記憶されている第1の作動状態情報と前記第2の検出手段により検出された第2の作動状態情報を用いて第1の作動状態から第2の作動状態への変化量を算出し、算出された変化量を用いて略第1の作動状態になるように前記制御ユニットの作動状態を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする車両用方向指示装置の誤作動防止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用方向指示装置の誤作動防止装置において、
前記制御ユニットの作動状態に関する情報は当該制御ユニットにおける電位差の情報を含むことを特徴とする車両用方向指示装置の誤作動防止装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用方向指示装置の誤作動防止装置において、
前記補正手段は、方向指示ランプが白熱球により構成されている時に制御ユニットに流れる電流値と方向指示ランプがLEDにより構成されている時に制御ユニットに流れる電流値の差分値を制御ユニットに追加して流すことにより、略第1の作動状態になるように前記制御ユニットの作動状態を補正することを特徴とする車両用方向指示装置の誤作動防止装置。

【図1】
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【図2】
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