説明

車両用注意喚起装置

【課題】対向右折車両の運転者に対し、自車両の死角に後続直進車両が存在することを報知することで、対向右折車両と後続直進車両の衝突事故を防ぐ車両用注意喚起装置の提供。
【解決手段】自車両の周囲に存在する他車両を検出する他車両検出手段と、第1他車両および第2他車両の運転者が自車両により形成される死角によって相互に相手他車両を視認できないために当該第1他車両と当該第2他車両が衝突する危険性がある状況を、上記他車両検出手段の出力に基づき検出する危険状況検出手段と、上記危険状況検出手段により上記状況が検出された場合、上記第1他車両および上記第2他車両の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在を報知する報知手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用注意喚起装置に関し、より詳しくは、対向右折車両の運転者に対し、自車両の死角に後続直進車両が存在することを報知することで、対向右折車両と後続直進車両の衝突事故を防ぐことができる車両用注意喚起装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の交差点右折時において、対向右折車線に対向右折車両が存在する場合、自車両の運転者は対向右折車両の死角により、対向直進車の確認がし難くなり、運転者の負担が大きくなる。
【0003】
そこで、従来、特許文献1に記載の車両用運転支援装置が提案されている。
特許文献1に記載の車両用運転支援装置は、自車両の交差点右折時において、対向右折車線に対向右折車両が存在するか否かを判断し、対向右折車両が存在する場合には当該対向右折車両の死角に対向直進車両が存在するか否かを判断し、対向直進車両が存在する場合には自車両の運転者に対して警報を行う。対向直進車両が存在するか否かの判断は、自車両のカメラが対向右折車両の死角から外れた位置に対向直進車両の一部を認識できる場合にのみ行うことができる。
この車両用運転支援装置によれば、対向直進車両の存在を自車両の運転者に報知することにより、自車両と対向直進車両の衝突事故を防ぐことができる。
【0004】
しかしながら、この車両用運転支援装置には、以下の課題があった。
上記したように、対向直進車両が存在するか否かの判断は、自車両のカメラが対向右折車両の死角から外れた位置に対向直進車両の一部を認識できる場合にのみ行うことができる。よって、自車両のカメラから見て対向右折車両の死角に対向直進車両が完全に隠れている場合には、自車両の車両用運転支援装置は、対向直進車両の存在を運転者に報知することができない。
この車両用運転支援装置は、当該支援装置を搭載する自車両の運転者に対向直進車両の存在を報知するものであり、対向右折車両から見て自車両の死角に位置する後続車両の存在を、当該対向右折車両に報知するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−314843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、対向車両の運転者に対し、自車両の死角に後続直進車両が存在することを報知して、対向右折車両と後続直進車両の衝突事故を防ぐことができる車両用注意喚起装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、
自車両に搭載され、他車両の運転者に注意喚起する車両用注意喚起装置であって、
自車両の周囲に存在する他車両を検出する他車両検出手段と、
第1他車両および第2他車両の運転者が自車両により形成される死角によって相互に相手他車両を視認できないために当該第1他車両と当該第2他車両が衝突する危険性がある状況を、上記他車両検出手段の出力に基づき検出する危険状況検出手段と、
上記危険状況検出手段により上記状況が検出された場合、上記第1他車両および上記第2他車両の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在を報知する報知手段とを備えた車両用注意喚起装置である。
【0008】
第1の発明によれば、第1他車両および第2他車両の運転者が自車両により形成される死角によって相互に相手他車両を視認できないために当該第1他車両と当該第2他車両が衝突する危険性がある状況が検出された場合、第1他車両および第2他車両の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在が報知される。本発明では、死角を形成する自車両が他車両を検出するので、自車両は他車両同士の衝突の危険性を確実に検出することができる。よって、第1他車両と第2他車両の衝突事故を防ぐことができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
上記第1他車両は、上記自車両が交差点付近を走行中である場合における対向車線の右折車両であり、上記第2他車両は、上記自車両の後方に位置する車両であることを特徴とする。ここで、「自車両が交差点付近を走行中である場合」には、自車両が交差点の手前を直進中である場合、自車両が交差点内を右折中である場合、および、自車両が交差点内で右折待機中である場合が含まれる。
【0010】
第2の発明によれば、対向右折車両と、自車両の死角に存在する後続直進車両との衝突事故を防ぐことができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
上記報知手段は、灯火系であることを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、ヘッドライト、ハザードランプ、フォグランプ等の灯火系によって、他車両の存在を報知することができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、
上記報知手段は、ハザードランプの点滅とは異なるパターンで点滅することを特徴とする。
【0014】
第4の発明によれば、第2他車両の運転者にハザードランプの点滅であると誤認識されるのを防止することができる。
【0015】
第5の発明は、第2の発明において、
上記危険状況検出手段は、上記自車両に対してその後方から上記第2他車両が接近しているか否か、上記自車両の速度が第1閾値以上であるか否か、および、上記自車両の右折用方向指示器が点滅しているか否かに基づいて、上記第1他車両と上記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
上記報知手段は、上記第1他車両に対し、上記第2他車両の存在を報知することを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、第1他車両に対し、第2他車両の存在を報知することができる。
【0017】
第6の発明は、第2の発明において、
上記危険状況検出手段は、上記自車両の速度が第1閾値以上であるか否か、上記第2他車両の速度が上記自車両の速度よりも第2閾値以上大きいか否か、上記第2他車両の速度が第3閾値以下であるか否か、および自車両2の右折用方向指示器が点滅しているか否かに基づいて、上記第1他車両と上記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
上記報知手段は、上記第1他車両に対し、上記第2他車両の存在を報知することを特徴とする。
【0018】
第6の発明によれば、第1他車両に対し、第2他車両の存在を報知することができる。
【0019】
第7の発明は、第2の発明において、
上記危険状況検出手段は、上記第1他車両が存在するか否かに基づいて、上記第1他車両と上記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
上記報知手段は、上記第2他車両に対し、上記第1他車両の存在を報知することを特徴とする。
【0020】
第7の発明によれば、第2他車両に対し、第1他車両の存在を報知することができる。
【0021】
第8の発明は、第2の発明において、
上記危険状況検出手段は、上記第1他車両が存在するか否か、および上記第2他車両が存在するか否かに基づいて、上記第1他車両と上記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出することを特徴とする。
【0022】
第8の発明によれば、第1他車両および第2他車両に対し、相手他車両と衝突する危険性を報知することができる。
【0023】
第9の発明は、第2の発明において、
上記危険状況検出手段は、上記自車両の右折用方向指示器が点滅していることを検出する右折検出手段を含むことを特徴とする。
【0024】
第9の発明によれば、自車両が右折しようとしていることを検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対向車両の運転者に対し、自車両の死角に後続直進車両が存在することを報知して、対向右折車両と後続直進車両の衝突事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用注意喚起装置の構成を示すブロック図
【図2】交差点付近における自車両と他車両の位置関係の例を示す図
【図3】交差点付近における自車両と他車両の位置関係の例を示す図
【図4】交差点付近における自車両と他車両の位置関係の例を示す図
【図5】図1に示される車両用注意喚起装置の動作の第1例を示すフローチャート
【図6】図1に示される車両用注意喚起装置の動作の第2例を示すフローチャート
【図7】交差点付近における自車両と他車両の位置関係の例を示す図
【図8】交差点付近における自車両と他車両の位置関係の例を示す図
【図9】図1に示される車両用注意喚起装置の動作の第3例を示すフローチャート
【図10】図1に示される車両用注意喚起装置の動作の第4例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る車両用注意喚起装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用注意喚起装置の構成を示すブロック図である。図2乃至4は、交差点付近における自車両と他車両の位置関係の様々な例を示す図である。図5は、図1に示される車両用注意喚起装置の動作の第1例を示すフローチャートである。図2乃至4の状況が図5のフローチャートで詳しく説明される。
【0028】
図1に示される車両用注意喚起装置1は、図2乃至4に示される自車両2に搭載される装置であり、第1他車両6の運転者および第2他車両7の運転者の少なくともいずれか一方に対して注意を喚起する装置である。以下の説明において、「自車両2の前方」には、自車両2の前方および斜め前方が含まれるものとする。また、「自車両2の後方」には、自車両2の後方および斜め後方が含まれるものとする。
【0029】
第1他車両6と第2他車両7は、それぞれの運転者が自車両2により形成される死角によって相手他車両7,6を視認できないような位置関係にあるものとする。具体的には、例えば、第1他車両6は、自車両2が交差点付近を走行中である場合における対向車線(自車両2から見て)の右折車両であり(図2,3,4参照)、第2他車両7は、自車両2の後方に位置する車両である(図2,3,4参照)。ここで、「自車両2が交差点付近を走行中である場合」には、自車両2が交差点の手前を直進中である場合(図2参照)と、自車両が交差点の手前で直進待機している場合(図示せず)と、自車両2が交差点内で右折中である場合(図3,4参照)と、自車両2が交差点内で右折待機中である場合(図3,4参照)とが含まれる。自車両2が交差点の手前で直進待機している場合とは、いわゆる「サンキュー事故」と呼ばれる衝突事故が起きる可能性のある場合である。「サンキュー事故」は、交差点を直進しようとする自車両が,対向車線の右折車に道を譲るために発生する事故である。つまり、直進車が停止すると当該直進車の左から二輪車等が飛び出して、当該二輪車等が右折車と衝突してしまうなどの事故である。なお、図3では、第2他車両7が自車両2と同じ車線を走行しているのに対し、図4では、第2他車両7が自車両2の左側の車線を走行している。図2乃至4のいずれの場合も、第1他車両6と第2他車両7は、それぞれの運転者が自車両2により形成される死角によって相手他車両7,6を視認できないような位置関係にある。
【0030】
図1に示されるように、第1実施形態に係る車両用注意喚起装置1は、他車両検出手段3と、危険状況検出手段4と、報知手段5とを備えている。他車両検出手段3と、危険状況検出手段4は、例えば、マイクロコンピュータの機能部としてECU(Electric Control Unit)内に構成される。
【0031】
他車両検出手段3は、自車両2の周囲に存在する他車両を検出する。他車両検出手段3は、主として、自車両2の前方、自車両2の後方、の少なくともいずれか一方に存在する他車両を検出する。他車両検出手段3は、例えば、レーダ装置が出力するレーダ信号(障害物の位置情報を含む)に基づき、他車両を検出する。なお、他車両検出手段3は、例えば、デジタルカメラ等の撮像装置が出力するカメラ信号(撮像画像情報を含む)に基づき他車両を検出してもよい。
【0032】
危険状況検出手段4は、第1他車両6の運転者および第2他車両7の運転者が自車両2により形成される死角によって相手他車両7,6を視認できないために第1他車両6と第2他車両7が衝突する危険性がある状況(以下、危険状況と称する)を、他車両検出手段3の出力等に基づき検出する。危険状況検出手段4による上記危険状況の検出方法は特に限定されないが、例えば、後述の第1例(図5参照)のように、自車両2の速度が第1閾値th1以上であるか否か、第2他車両7の速度V2が自車両2の速度V1よりも第2閾値th2以上大きいか否か、第2他車両7の速度V2が第3閾値th3以下であるか否か、および自車両2の右折用方向指示器(右ウインカ)が点滅しているか否かに基づいて検出する。第1閾値th1は、例えば、自車両2が交差点内で右折する速度である(図3,4参照)。第1閾値th1の大きさは特に限定されないが、例えば、10km/hである。第2閾値th2は、例えば、右車線に存在する自車両2を第2他車両7が左車線から追い抜こうとするとき(図2参照)の、自車両2と第2他車両7の速度差である。第2閾値th2の大きさは特に限定されないが、例えば、20km/hである。第3閾値th3は、例えば、第2他車両7がほぼ停止しているとみなせる速度の上限値である(図3参照)。第3閾値th3の大きさは特に限定されないが、例えば2km/hである。また、危険状況検出手段4は、自車両2の右折用方向指示器(右ウインカ)が点滅していることを検出する。
【0033】
なお、危険状況検出手段4による上記危険状況の検出方法は上記の方法に限定されない。例えば、後述の第2例(図6参照)のように、危険状況検出手段4は、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近しているか否か、および、自車両2の速度V1が第1閾値th1以上であるか否か、および、自車両2の右折用方向指示器が点滅しているか否かに基づいて、上記危険状況を検出してもよい。
【0034】
また、後述の第3例(図9参照)のように、危険状況検出手段4は、対向車線に右折車両(第1他車両6)(図7,8参照)が存在するか否かに基づいて、上記危険状況を検出してもよい。
【0035】
また、後述の第4例(図10参照)のように、危険状況検出手段4は、対向車線に右折車両(第1他車両6)(図7,8参照)が存在するか否か、および自車両2の後方に車両(第2他車両7)(図7,8参照)が存在するか否かに基づいて、上記危険状況を検出してもよい。
【0036】
報知手段5は、危険状況検出手段4により危険状況が検出された場合、第1他車両6および第2他車両7の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在を報知する。報知手段5は、特に限定されないが、例えば、灯火系により構成される。灯火系の具体例としては、例えば、ヘッドライト、方向指示器、フォグランプを挙げることができる。報知手段5を灯火系で構成する場合、報知手段5は、ハザードランプの点滅とは異なるパターンで点滅することが好ましい。なお、報知手段5は灯火系に限定されず、警音器(クラクション)、或いは車々間通信システムで構成されてもよい。
【0037】
次に、車両用注意喚起装置1の動作の第1例乃至第4例について説明する。以下の第1例乃至第4例の動作は、例えば選択することができる(動作モード選択)。運転者がモード選択スイッチ9を操作して動作モードを切替えることにより、任意に動作モードを選択することができる。なお、これら第1例乃至第4例のうち複数のモードが並行して動作するようにしてもよい。例えば、第1例と第3例のモードが並行して動作し、或いは、第2例と第4例のモードが並行して動作するようにしてもよい。
【0038】
まず、車両用注意喚起装置1の動作の第1例について説明する。図5は、動作の第1例を示すフローチャートである。第1例では、車両用注意喚起装置1が後方車両(第2他車両7)(図2乃至4参照)を検知して、対向車線の右折車両(第1他車両6)に後方車両の存在を報知する。第1例における他車両検出手段3は、自車両2の後方を検知エリアとする後方レーダ装置または撮像装置から他車両情報を取得する。
【0039】
まず、他車両検出手段3は、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近しているかどうかの判断を行う(ステップS1)。ステップS1では、第2他車両7の速度V2が検知される。第2他車両7が接近していないと判断された場合には、ステップS8に移行し、報知手段5は報知動作を停止する(既に停止している場合は停止状態を継続する)。ステップS8の後は、ステップS1に戻る。一方、第2他車両7が接近していると判断された場合には、車速センサが、自車両2の速度V1を検出する(ステップS2)。次いで、危険状況検出手段4は、自車両2の速度V1が第1閾値th1以上であるか否かを判断する(ステップS3)。第1閾値th1は、例えば10km/hに設定されている。自車両2の速度V1が第1閾値th1以上であると判断された場合には、自車両2は右折する可能性が低いので、ステップS4に移行する。
【0040】
ステップS4では、危険状況検出手段4は、第2他車両7の速度V2が自車両2の速度V1よりも第2閾値th2以上大きいか否かを判断する。第2他車両7の速度V2が自車両2の速度V1よりも第2閾値th2以上大きい場合には、第2他車両7は交差点の手前で自車両2を追い抜いて高速で交差点に進入する可能性が高く(図2参照)、第1他車両6が右折すれば第1他車両6と第2他車両7が衝突する危険性があるので、ステップS5に移行する。ステップS5では、報知手段5は、自車両2の前方へ報知動作を行う。具体的には、例えば、報知手段5(ヘッドライトまたはフォグランプ)がハザードランプの点滅周期よりも速い周期で点滅する。点滅光による報知を符号10で示す。報知手段5の点滅中、対向車線には必ずしも第1他車両6(右折車両)が存在するとは限らないが、第1他車両6が存在する場合には、第1他車両6の運転者は自車両2が発する点滅光を見て、自車両2の死角に第2他車両7が存在するのを認識することができる。これにより、第1他車両6の運転者は、第2他車両6が自車両2の死角から現れるまで右折を待機し、第2他車両7の動向を見ながら右折をすることができるので、右折の安全性が確保される。ステップS5の後は、ステップS1に戻る。
【0041】
一方、ステップS4で、第2他車両7の速度が自車両2よりも小さいか、或いは、第2他車両7の速度V2が自車両2の速度V1より大きくても速度差が第2閾値th2未満である場合には、ステップS6に移行する。この場合、右折しようとする自車両2の後方から第2他車両7は低速で交差点に進入する可能性が高く(図4参照)、第1他車両6が右折しても第1他車両6と第2他車両7が衝突する危険性は低いと考えられるからである。ステップS6では、報知手段5は、自車両2の前方へ報知動作を停止する。ステップS6の後は、ステップS1に戻る。
【0042】
ステップS3で、自車両2の速度V1が第1閾値th1未満であると判断された場合には、自車両2は右折する可能性があるので、ステップS7に移行する。ステップS7では、危険状況検出手段4は、他車両検出手段3が取得した第2他車両7の速度V2に基づき、当該速度V2が第3閾値th3以下であるか否かを判断する。第3閾値th3は、例えば2km/hである。速度V2が第3閾値th3以下である場合は、第2他車両7は停止に近い状態なので、第1他車両6が右折しても、第2車両7と第1他車両6が衝突する可能性は低い。よって、報知手段5は報知動作を停止する(ステップS8)。一方、速度V2が第3閾値th3より大きい場合には、ステップS9に移行する。ステップS9では、自車両2の右折用方向指示器が点滅しているかどうかが判断される。右折用方向指示器が点滅している場合には、自車両2が右折しようとしている可能性が高いので、ステップS5に移行する。ステップS5では、報知手段5は、自車両2の前方へ報知動作を行う。一方、右折用方向指示器が点滅していない場合には、自車両2が右折しようとしている可能性が低いので、ステップS8に移行する。この場合には、自車両2は交通渋滞でノロノロ運転をしている可能性が高い。ステップS8では、報知手段5は報知動作を停止する。ステップS8の後は、ステップS1に戻る。
以上が、動作の第1例である。
【0043】
次に、動作の第2例について説明する。図6は、動作の第2例を示すフローチャートである。第2例でも、車両用注意喚起装置1が後方車両(第2他車両7)(図2乃至4参照)を検知して、対向車線の右折車両(第1他車両6)に後方車両の存在を報知する。第2例における他車両検出手段3も、自車両2の後方を検知エリアとする後方レーダ装置または撮像装置から他車両情報を取得する。
【0044】
まず、他車両検出手段3は、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近しているかどうかの判断を行う(ステップS1)。第2他車両7が接近していないと判断された場合には、報知手段5は報知動作を停止する(既に停止している場合は停止状態を継続する)。ステップS4の後は、ステップS1に戻る。一方、第2他車両7が接近していると判断された場合には、車速センサ8が、自車両2の速度を検出する(ステップS2)。次いで、危険状況検出手段4は、自車両2の速度の大きさが第1閾値th1以上であるか否かを判断する(ステップS3)。第1閾値th1は、例えば10km/hに設定されている。
【0045】
自車両2の速度が第1閾値th1以上である場合には、自車両2は右折しない可能性が高いので、ステップS4に移行する。ステップS4では、報知手段5は報知動作を停止する。一方、自車両2の速度が第1閾値th1未満である場合には、自車両2は右折する可能性が高いので、ステップS5に移行する。ステップS5では、自車両2の右折用方向指示器が点滅しているかどうかが判断される。右折用方向指示器が点滅している場合には、自車両2が右折しようとしている可能性が高いので、ステップS6に移行する。ステップS6では、報知手段5は、自車両2の前方へ報知動作を行う。具体的には、例えば、ヘッドライトまたはフォグランプをハザードランプの点滅周期よりも速い周期で点滅(点滅光10)させる。報知手段5の点滅中、対向車線には必ずしも第1他車両6(右折車両)が存在するとは限らないが、第1他車両6が存在する場合には、第1他車両6は自車両2が発する点滅光を見て、自車両2の死角に第2他車両7が存在するのを認識することができる。これにより、第1他車両6の運転者は、第2他車両6が自車両2の死角から現れるまで右折を待機し、第2他車両7の動向を見ながら右折をすることができるので、右折の安全性が確保される。ステップS6の後は、ステップS1に戻る。一方、右折用方向指示器が点滅していない場合には、ステップS1に戻る。
以上が、動作の第2例である。
【0046】
次に、車両用注意喚起装置1の動作の第3例について説明する。図9は、動作の第3例を示すフローチャートである。第3例では、車両用注意喚起装置1が対向車線の右折車両(第1他車両6)(図7,8参照)を検知して、自車両2の後方車両(第2他車両7)に第1他車両6の存在を報知する。第3例における他車両検出手段3は、例えば、自車両2の前方を検知エリアとする撮像装置から他車両情報を取得する。
【0047】
まず、他車両検出手段3は、自車両2の前方の撮像画像に基づき、対向車線に右折車両(第1他車両6)が存在するか否かを判断する(ステップS1)。具体的には、他車両検出手段3は、撮像画像内の対向車両が右折用方向指示器を点滅させているか否かを判断し、点滅させている場合には、対向車線に右折車両(第1他車両6)が存在すると判断する。撮像画像内に対向車両が検知されないか、または、撮像画像内に対向車両が検知されても、その対向車両が右折用方向指示器を点滅させていない場合には、対向車線に右折車両(第1他車両6)が存在しないと判断される。
【0048】
第1他車両6が存在すると判断された場合、報知手段5は自車両2の後方へ報知動作を行う(ステップS2)。具体的には、例えば、自車両2の後側にある右折用および左折用方向指示器をハザードランプの点滅周期よりも速い周期で同時に点滅させる。報知手段5の点滅中、自車両2の後方には必ずしも第2他車両7が存在するとは限らないが、第2他車両6が存在する場合には、第2他車両7の運転者は自車両2が発する点滅光を見て、自車両2の死角に第1他車両6が存在するのを認識することができる。これにより、第2他車両6の運転者は、第1他車両6が自車両2の死角から現れるまで速度を落とし、第1他車両6の動向を見ながら直進することができるので、安全性が確保される。ステップS2の後は、ステップS1に戻る。一方、第1他車両6が存在しないと判断された場合には、報知手段5は自車両2の後方へ報知動作を停止する(ステップS3)。ステップS3の後は、ステップS1に戻る。
以上が、動作の第3例である。
【0049】
次に、車両用注意喚起装置1の動作の第4例について説明する。図10は、動作の第4例を示すフローチャートである。第4例は、第1ステップまでは第3例と同様である。
ステップS1において、第1他車両6が存在しないと判断された場合、ステップS4に移行する。ステップS4では、報知手段5は自車両2の後方へ報知動作を停止する。一方、ステップS1において、第1他車両6が存在すると判断された場合、ステップS2に移行する。ステップS2では、他車両検出手段3は、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近しているかどうかの判断を行う。ステップS2において、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近していると判断された場合には、報知手段5は自車両2の後方へ報知動作を行う(ステップS3)。一方、ステップS2において、自車両2に対してその後方から第2他車両7が接近していないと判断された場合には、報知手段5は自車両2の後方へ報知動作を停止する(ステップS4)。ステップS4の後は、ステップS1に戻る。
以上が、動作の第4例である。
【0050】
以上説明したように、車両用注意喚起装置1によれば、第1他車両6および第2他車両7の運転者が自車両2により形成される死角によって相手他車両7,6を視認できないために当該第1他車両6と当該第2他車両7が衝突する危険性がある状況が検出された場合、第1他車両6および第2他車両7の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在が報知される。よって、第1他車両6と第2他車両7の衝突事故を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、対向右折車両の運転者に対し、自車両の死角に後続直進車両が存在することを報知することで、対向右折車両と後続直進車両の衝突事故を防ぐ車両用注意喚起装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用注意喚起装置
2 自車両
3 他車両検出手段
4 危険状況検出手段
5 報知手段
6 第1他車両
7 第2他車両
9 モード選択スイッチ
10 報知用の点滅光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、他車両の運転者に注意喚起する車両用注意喚起装置であって、
自車両の周囲に存在する他車両を検出する他車両検出手段と、
第1他車両および第2他車両の運転者が自車両により形成される死角によって相互に相手他車両を視認できないために当該第1他車両と当該第2他車両が衝突する危険性がある状況を、前記他車両検出手段の出力に基づき検出する危険状況検出手段と、
前記危険状況検出手段により前記状況が検出された場合、前記第1他車両および前記第2他車両の少なくともいずれか一方の運転者に対し、相手他車両の存在を報知する報知手段とを備えた車両用注意喚起装置。
【請求項2】
前記第1他車両は、前記自車両が交差点付近を走行中である場合における対向車線の右折車両であり、前記第2他車両は、前記自車両の後方に位置する車両であることを特徴とする請求項1に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項3】
前記報知手段は、灯火系であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項4】
前記報知手段は、ハザードランプの点滅とは異なるパターンで点滅することを特徴とする請求項3に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項5】
前記危険状況検出手段は、前記自車両に対してその後方から前記第2他車両が接近しているか否か、前記自車両の速度が第1閾値以上であるか否か、および、前記自車両の右折用方向指示器が点滅しているか否かに基づいて、前記第1他車両と前記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
前記報知手段は、前記第1他車両に対し、前記第2他車両の存在を報知することを特徴とする請求項2に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項6】
前記危険状況検出手段は、前記自車両の速度が第1閾値以上であるか否か、前記第2他車両の速度が前記自車両の速度よりも第2閾値以上大きいか否か、前記第2他車両の速度が第3閾値以下であるか否か、および自車両2の右折用方向指示器が点滅しているか否かに基づいて、前記第1他車両と前記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
前記報知手段は、前記第1他車両に対し、前記第2他車両の存在を報知することを特徴とする請求項2に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項7】
前記危険状況検出手段は、前記第1他車両が存在するか否かに基づいて、前記第1他車両と前記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出し、
前記報知手段は、前記第2他車両に対し、前記第1他車両の存在を報知することを特徴とする請求項2に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項8】
前記危険状況検出手段は、前記第1他車両が存在するか否か、および前記第2他車両が存在するか否かに基づいて、前記第1他車両と前記第2他車両が衝突する危険性がある状況を検出することを特徴とする請求項2に記載の車両用注意喚起装置。
【請求項9】
前記危険状況検出手段は、前記自車両の右折用方向指示器が点滅していることを検出する右折検出手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用注意喚起装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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