説明

車両用液体注入装置

【課題】生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットに取り付けた注入ガンから注入口に液体を注入する場合において、注入口と注入ガンとの位置合わせが容易で、注入中の大きな位置変動に対しても柔軟に対応することのできる車両用液体注入装置を提供すること。
【解決手段】車両用液体注入装置10は、車両1を搬送する車両搬送装置20と、車両搬送装置20の搬送方向と同方向に同期して移送されるロボット40とを備え、車両1の搬送中に、ロボット40に取り付けた注入ガン50から車両1の注入口2に液体を注入する。注入ガン50のロボット40への取付管55と、先端のノズル57とを、内部が視認可能な樹脂製ホース56で連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に燃料等の液体を注入する車両用液体注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の生産ラインにおいて所定の組立工程が終了した車両には、その後自走させるために燃料タンクに給油することが行われる。通常、この種の給油作業は、車両をラインに停止させた状態で、ラインの側方に据え付けられたロボットに取り付けた注入ガンから車両の燃料注入口に燃料を注入することが行われている。
【0003】
この場合、車種に応じて燃料注入口の高さや角度が相違するため、ラインに流す車種ごとに、注入ガンの挿し込み高さや角度をロボットにあらかじめティーチングしておく。これにより、ラインを流れてくる車種がさまざまな車種であっても、ロボットは車種に応じてあらかじめ施されたティーチングに基づいて、車両の燃料注入口に注入ガンを挿し込んで燃料を注入することができる。
【0004】
また、ラインに流す車種に応じて、給油する燃料の種類(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油の3種類)を変える必要がある。そのため、従来は、ロボットに3本の注入ガンを取り付けて、油種ごとに注入ガンを使い分けていた。
【0005】
最近では、車両をラインに停止させた状態で給油する場合に比べて生産効率を向上させることを企図して、車両をラインに流している状態で給油することが提案されている。すなわち、生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットに取り付けた注入ガンから燃料注入口に燃料を注入することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−149356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両の燃料注入口は、車両をラインに停止させた場合のように静止状態には保たれない。すなわち、車両を搬送する車両搬送装置には、例えばチェーンコンベヤが用いられるため、チェーンコンベヤ特有の揺れ(サージング)が起きることが避けられない。
【0008】
また、車両搬送装置と同期して移動しながら作業を行うロボットは、ラインの側方に据え付けられたロボットの場合のように、ロボット本体の姿勢が不変ではない。すなわち、この場合のロボットは適宜の移送装置に搭載されるため、移送装置の揺れや振動がロボット本体の姿勢に影響を及ぼす。これにより、ロボットにあらかじめ施したティーチングは、その座標基準がずれてしまうことが避けられない。
【0009】
したがって、生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットに取り付けた注入ガンから燃料注入口に燃料を注入する場合には、車両の燃料注入口の位置と、ロボットに取り付けた注入ガンの位置とが、それぞれ無関係に変動する。これにより、車両の燃料注入口に注入ガンを挿し込む際に、燃料注入口と注入ガンとの位置合わせが困難であり、注入中に大きな位置変動が生じた際にも対応が困難である。
【0010】
さらに、この場合も、車種に応じて給油する燃料の種類を変えるため、ロボットに3本の注入ガンを取り付けて、油種ごとに注入ガンを使い分ける必要がある。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットに取り付けた注入ガンから注入口に液体を注入する場合において、注入口と注入ガンとの位置合わせが容易で、注入中の大きな位置変動に対しても柔軟に対応することのできる車両用液体注入装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、ロボットに取り付けた1本の注入ガンによって3種類の液体を切り替えて注入することのできる車両用液体注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用液体注入装置は、車両を搬送する車両搬送装置と、前記車両搬送装置の搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットとを備え、前記車両の搬送中に、前記ロボットに取り付けた注入ガンから前記車両の注入口に液体を注入する車両用液体注入装置であって、前記注入ガンと前記ロボットへの取付管との間を、内部が視認可能な樹脂製ホースで連結したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、車両の注入口とロボットの注入ガンとの位置合わせが容易で、注入中の大きな位置変動に対しても柔軟に対応することができる。
【0015】
この場合、前記樹脂製ホースは、透明であることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、樹脂製ホースの内部の状況を肉眼で容易に確認することができる。
【0017】
この場合、前記樹脂製ホースは、導電性を有することが好ましい。
【0018】
この発明によれば車両1の車体に帯電しているかもしれない静電気をノズルからロボット側に流すことができる。
【0019】
この場合、前記注入ガンの上流側において、前記ロボットに、各々バルブを有する複数のバルブ管路と、前記注入ガンの前記取付管を接続する単一の出口管とを有するマニホールドを取り付け、前記複数のバルブ管路が、複数種類の注入用液体の液体源をそれぞれ接続する複数の液体バルブ管路を含むことが好ましい。
【0020】
この発明によれば、ロボットに取り付けた複数本の注入ガンによって複数種類の液体を切り替えて注入することができる。
【0021】
この場合、前記マニホールドの少なくとも前記液体バルブ管路の各々が、前記単一の出口管側から上流側に向けて鈍角に傾斜して配置されていることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、マニホールド内の液体の流れを良好にすることができるとともに、バルブを閉じた際の液切れも良好になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生産ラインで車両搬送装置により搬送中の車両に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットに取り付けた注入ガンから注入口に液体を注入する場合において、注入口と注入ガンとの位置合わせが容易で、注入中の大きな位置変動に対しても柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用液体注入装置を備えた生産ラインの要部の概略的平面図である。
【図2】図1の右方から見た概略的立面図である。
【図3】待機状態にある注入ガンの(a)断面図、(b)要部の拡大図である。
【図4】注入状態にある注入ガンの(a)断面図、(b)要部の拡大図である。
【図5】マニホールドの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図6】マニホールド組立体の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態に係る車両用液体注入装置10は、車両1を搬送する車両搬送装置20と、車両搬送装置20の搬送方向と同方向に同期して移送する移送装置30と、移送装置30に搭載されるロボット40とを備える。そして、車両1の搬送中に、ロボット40に取り付けた注入ガン50から車両1の注入口2に液体を注入する。
【0026】
車両搬送装置20は、車両1を載置して、生産ラインに沿って車両1を搬送する。車両搬送装置20としては、例えばチェーンコンベヤのような搬送コンベヤ20を用いることができる。この場合、チェーンコンベヤ20は、左車輪用と右車輪用の2本のチェーンコンベヤ20l、20rで構成してもよい。
【0027】
左車輪用チェーンコンベヤ20l上に、車両1の左前輪および左後輪を載置する一方、右車輪用チェーンコンベヤ20r上に、車両1の右前輪および右後輪を載置した状態で、左右2本のチェーンコンベヤ20l、20rを互いに同期させて所定のライン速度で駆動することで、車両1を生産ラインに沿ってあらかじめ設定されたライン速度で搬送することができる。
【0028】
移送装置30はロボット40を移送するものである。そのため、移送装置30は、車両搬送装置20によって車両1が生産ラインに沿って搬送されるとき、車両1の注入口(例えば燃料注入口)2のある側、例えば車両1の左側に設けられる。すなわち、移送装置30は、車両搬送装置20による車両1の搬送方向左側において、チェーンコンベヤ20から所定間隔離れた位置に、チェーンコンベヤ20の搬送方向と平行に移送可能に配置される。
【0029】
移送装置30は、チェーンコンベヤ20の搬送方向と平行に設置されたガイドレール31と、ガイドレール31と係合してガイドレール31に沿って移動可能な移動体32と、移動体32をガイドレール31に沿って移送させることが可能な図示しない駆動装置とを備える。また、移送装置30は、車両搬送装置20による車両1の搬送と、移送装置30によるロボット40の移送とを同期させるための、車両1と移送装置30との一体化装置33を備える。
【0030】
一体化装置33は、移動体32に設けられたクランプ部材34を備え、クランプ部材34は、図1に2点鎖線で示す待避位置から実線で示すクランプ位置に変位することで、車両搬送装置20上の車両1の左後輪Tを前後からクランプする。車両1の左後輪Tと移動体32のクランプ部材34とがクランプにより一体化することで、車両搬送装置20による車両1の搬送と、移送装置30によるロボット40の移送とが、搬送/移送にともなう先行または遅れを生じることなく、車両1とロボット40とはつねに一体で搬送/移送されることができる。
【0031】
ロボット40はいわゆる多関節ロボットである。そのため、ロボット40は、移送装置30の移動体32に搭載される機台41と、機台41上に機台41に対して垂直軸回りに回転可能な回転台42と、回転台42に対して水平軸回りに揺動可能な第1アーム43と、第1アーム43に対して水平軸回りに揺動可能な第2アーム44と、第2アーム44に対して第2アーム44の軸線回りに回動可能な回動アーム45と、回動アーム45に対して回動アーム45の回動軸線と直交する軸線回りに回動可能な先端アーム46とを備える。
【0032】
図3、図4に示すように、注入ガン50は、ロボット40の先端アーム46に、ブラケット47を介して取り付けられる。ブラケット47には、先端アーム46の回動面内に延びる伸縮シリンダ(例えばエアシリンダ)51が固定される。エアシリンダ51のロッド52は、エアシリンダ51が不作動状態にあるとき(注入ガン50が待機状態にあるとき)、エアシリンダ51から注入ガン50の後方に向かって突出する。また、エアシリンダ51が作動状態にあるとき(注入ガン50が注入を行う状態にあるとき)、ロッド52は、後端部を残してエアシリンダ51内に収容される。このとき、ロッド52の前端部付近は、エアシリンダ51から注入ガン50の前方に向かって突出してもよい。
【0033】
エアシリンダ51の外側には、エアシリンダ51と平行に延びる筒状ハウジング53が、エアシリンダ51に隣接して固定される。筒状ハウジング53の前端には、位置決めホルダ54が固定される。
【0034】
エアシリンダ51のロッド52の後端には、エアシリンダ51と平行に延びる取付管55の後端が一体に固定される。取付管55の前端には、アース線入りホース56が連結され、アース線入りホース56の前端には、注入ガン50の先端のノズル57が連結される。すなわち、注入ガン50は、ロボット40への取付管55と、先端のノズル57とを、アース線入りホース56によって連結したものである。
【0035】
取付管55は、エアシリンダ51が不作動状態から作動状態に切り替わるとき、そのほぼ全長が筒状ハウジング53から後方へ突出している位置から、そのほぼ全長が筒状ハウジング53内に収容される位置まで移動する。また、エアシリンダ51が作動状態から不作動状態に切り替わるとき、そのほぼ全長が筒状ハウジング53内に収容される位置から、そのほぼ全長が筒状ハウジング53から後方へ突出する位置まで移動する。そのため、取付管55は、少なくとも剛性のある硬質パイプであることが必要であり、好ましくは導電性の金属パイプで構成される。
【0036】
位置決めホルダ54は、エアシリンダ51が不作動状態から作動状態に切り替わるとき、アース線入りホース56の後端かしめ部56rに対してストッパ作用を発揮することで、突出するノズル57の先端位置を決める。また、位置決めホルダ54は、エアシリンダ51が作動状態から不作動状態に切り替わるとき、アース線入りホース56の前端かしめ部56fに対してストッパ作用を発揮することで、後退するノズル57の先端位置を決める。
【0037】
ノズル57は、給油の際に車両1の車体に帯電しているかもしれない静電気をロボット40側に流すため、導電性の金属パイプで構成されることが必要である。
【0038】
アース線入りホース56は、柔軟性のある軟質ホースに、両端間に延びる導電性のアース線を備えて構成される。なお、当該ホースは、例えば、(1)ホースに導電材料をまぜる。(2)ホースに導電性のファイバーを封じ込める。等、導電材を内部に混入させておく構成にしてもよい。軟質ホースを用いた理由、およびアース線を備えた理由はつぎのとおりである。
【0039】
ロボット40への取付管55と、先端のノズル57とが、剛性のある硬質パイプで一体に構成されている場合には、車両1の燃料注入口2に注入ガン50を挿し込む際に、燃料注入口2と注入ガン50のノズル57との位置合わせが困難である。また、注入ガン50を燃料注入口2から抜き取るまでの燃料注入中に、燃料注入口2またはノズル57あるいは燃料注入口2回りの車体が損傷する虞がある。
【0040】
これを未然に防止するため、取付管55とノズル57とを柔軟性のある軟質ホースで連結することによって、取付管55に対してノズル57をある程度位置変更可能にできる。許容範囲内でのノズル57の位置変更により、燃料注入口2と注入ガン50のノズル57との位置合わせが容易になり、また、注入ガン50のノズル57を燃料注入口2から抜き取るまでの燃料注入中に、燃料注入口2またはノズル57あるいは燃料注入口2回りの車体が損傷する虞が回避される。
【0041】
また、軟質ホースは、一般に合成樹脂製であり、導電性を有していない。このような軟質ホースをこのまま用いた場合、車両1の車体に帯電しているかもしれない静電気をノズル57からロボット40側に流すことができない。そこで、軟質ホースにアース線を備えることで、静電気をノズル57からアース線を通してロボット40側に流すことができるようになる。すなわち、柔軟性のある軟質ホースにその両端間に延びる導電性のアース線を備えることで、軟質ホースのもつ柔軟性と、アース線のもつ導電性とを両立させることができる。
【0042】
また、車両用液体注入装置10は、注入ガン50の上流側において、ロボット40の第2アーム44に取り付けたマニホールド組立体60Aを備える。マニホールド組立体60Aは、マニホールド60に複数のバルブを組み付けたものである。
【0043】
図5、図6に示すように、マニホールド60は複数(例えば6個)の開口を有する。第1の開口61には、第1のバルブ61vが装着されて第1のバルブ管路61となる。第2の開口62には、第2のバルブ62vが装着されて第2のバルブ管路62となる。第3の開口63には、第3のバルブ63vが装着されて第3のバルブ管路63となる。第4の開口64には、第4のバルブ64vが装着されて第4のバルブ管路64となる。第5の開口65には、第5のバルブ65vが装着されて第5のバルブ管路65となる。第6の開口66は、アース線入りホース67によって注入ガン50の取付管55の後端と接続されて出口管66となる。アース線入りホース67は、アース線入りホース56と同様のものである。
【0044】
すなわち、マニホールド組立体60Aは、各々バルブを有する複数(例えば5本)のバルブ管路(例えば、第1バルブ管路61〜第5バルブ管路65)と、単一の出口管66とを有している。
【0045】
出口管66側から見て最上流側に位置する第1バルブ管路61は、出口管66と同一軸線上に配置される。第1バルブ管路61から1つ下流側に位置する第2バルブ管路62および3つ下流側に位置する第4バルブ管路64は、出口管66側から見て、マニホールド60の取り付け面と垂直な基準面から左側に所定角度α(例えば35°)傾斜している。
【0046】
また、第1バルブ管路61から2つ下流側に位置する第3バルブ管路63および4つ下流側に位置する第5バルブ管路65は、出口管66側から見て、マニホールド60の取り付け面と垂直な基準面から右側に所定角度α(例えば35°)傾斜している。
【0047】
また、第2バルブ管路62から第5バルブ管路65の4本はすべて、出口管66側から上流側に向けて鈍角β(例えば135°)に傾斜して配置されている。
【0048】
第1バルブ管路61は、例えば窒素ガス導入用のバルブ管路であり、第1バルブ61vを介して、図示しない窒素ガス源に接続される。第1バルブ61vを開放することにより、窒素ガス源からの窒素ガスが、第1バルブ管路61からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。
【0049】
第2バルブ管路62は、例えば大気開放用のバルブ管路であり、第2バルブ62vを開放することにより、マニホールド60内が大気に開放される。
【0050】
第3バルブ管路63は、例えば軽油導入用の液体バルブ管路であり、第3バルブ63vを介して、図示しない軽油源に接続される。第3バルブ63vを開放することにより、軽油源からの軽油が、第3バルブ管路63からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。
【0051】
第4バルブ管路64は、例えばハイオクガソリン導入用の液体バルブ管路であり、第4バルブ64vを介して、図示しないハイオクガソリン源に接続される。第4バルブ64vを開放することにより、ハイオクガソリン源からのハイオクガソリンが、第4バルブ管路64からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。
【0052】
第5バルブ管路65は、例えばレギュラーガソリン導入用の液体バルブ管路であり、第5バルブ65vを介して、図示しないレギュラーガソリン源に接続される。第5バルブ65vを開放することにより、レギュラーガソリン源からのレギュラーガソリンが、第5バルブ管路65からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。
【0053】
上記のように構成された車両用液体注入装置10の作用について説明する。
まず、ロボット40は、移送装置30によって初期位置に待機している。車両搬送装置20により車両1が対応する位置まで搬送されると、一体化装置33のクランプ部材34が、車両搬送装置20上の車両1の左後輪Tを前後からクランプする。これにより、ロボット40は移送装置30によって、車両1の搬送速度と同期して車両1と平行に移送される。
【0054】
この同期移送が開始すると、ロボット40は、車両1の車種に応じてあらかじめ施されたティーチングにしたがってアーム43〜46等を駆動して、注入ガン50のノズル57を車両1の注入口2に位置合わせする。このとき、ロボット40への取付管55と、ノズル57とが、柔軟性のあるアース線入りホース56で連結されているため、車両1の搬送による注入口2の揺れや、ロボット40の移送による取付管55の揺れがあっても、ノズル57を比較的容易に注入口2に位置合わせすることができ、エアシリンダ51を作動させることで、ノズル57を容易に注入口2に挿し込むことができる。
【0055】
ノズル57を容易に注入口2に挿し込んだら、車両1の車種に応じて、第3バルブ63v〜第5バルブ65vのいずれか1つを開放する。すなわち、車両1のエンジンが例えばディーゼルエンジンの場合は、第3バルブ63vを開放することにより、軽油源からの軽油が、第3バルブ管路63からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。さらに、注入ガン50の取付管55からアース線入りホース56を通ってノズル57から車両1の燃料タンク内に注入される。
【0056】
また、車両1のエンジンが例えばハイオクガソリンを用いるガソリンエンジンの場合は、第4バルブ64vを開放することにより、ハイオクガソリン源からのハイオクガソリンが、第4バルブ管路64からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。さらに、注入ガン50の取付管55からアース線入りホース56を通ってノズル57から車両1の燃料タンク内に注入される。
【0057】
また、車両1のエンジンが例えばレギュラーガソリンを用いるガソリンエンジンの場合は、第5バルブ65vを開放することにより、レギュラーガソリン源からのレギュラーガソリンが、第5バルブ管路65からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。さらに、注入ガン50の取付管55からアース線入りホース56を通ってノズル57から車両1の燃料タンク内に注入される。
【0058】
車両1への燃料注入が終了すると、第3バルブ63v〜第5バルブ65vの開放していたバルブを閉鎖する。続いて、第2バルブ62vを所定の短時間開放して、マニホールド60内の気体を大気に開放する。
【0059】
続いて、第1バルブ61vを開放することにより、窒素ガス源からの窒素ガスが、第1バルブ管路61からマニホールド60内に導入されて、出口管66からアース線入りホース67を通って注入ガン50に供給される。さらに、注入ガン50の取付管55からアース線入りホース56を通ってノズル57から排出される。これにより、マニホールド60からノズル57の先端まで残留していた使用燃料(軽油、ハイオクガソリンまたはレギュラーガソリン)がブローされて車両1の燃料タンク内に注入される。
【0060】
このようにして、窒素ガスによる燃料注入用管路のブローが終了すると、第1バルブ61vを閉鎖する。そして、注入ガン50のエアシリンダ51を不作動にさせることで、ノズル57を注入口2から抜き取り、注入ガン50を他と干渉しない待避位置にした状態で、一体化装置33のクランプ部材34を車両1の左後輪Tから取り外す。これにより、移送装置30は車両搬送装置20から外れてフリーとなり、駆動装置を作動させることで、初期位置に復帰させることができる。
【0061】
本実施形態によれば、つぎのような効果がある。
(1)生産ラインで車両搬送装置20により搬送中の車両1に対して、その搬送方向と同方向に同期して移送されるロボット40に取り付けた注入ガン50から注入口2に液体を注入する場合において、注入口2と注入ガン50との位置合わせが容易で、注入中の大きな位置変動に対しても柔軟に対応することができる。
【0062】
具体的には、注入口2にノズル57を位置合わせするときに、ロボット40への取付管55と、ノズル57とが、柔軟性のあるアース線入りホース56で連結されているため、車両1の搬送による注入口2の揺れや、ロボット40の移送による取付管55の揺れがあっても、ノズル57を比較的容易に注入口2に位置合わせすることができ、エアシリンダ51を作動させることで、ノズル57を容易に注入口2に挿し込むことができる。
【0063】
また、ノズル57を注入口2に挿し込んだ状態での液体注入中にも、車両搬送装置20により搬送中の車両1の揺れに起因する注入口2の位置、角度の変化や、移送中のロボット40の揺れに起因するノズル57の位置、角度の変化が生じる。この場合も、それらの変化にともなう注入口2とノズル57との相対的な位置変化、角度変化をアース線入りホース56が吸収することにより、ノズル57を注入口2に挿し込んだ状態を保つことができ、これにより、液体注入を最後まで支障なく継続することができる。
【0064】
(2)ロボット40に取り付けた1本の注入ガン50によって3種類の液体を切り替えて注入することができる。
【0065】
具体的には、マニホールド組立体60Aを使用し、しかも、第1バルブ管路61は、出口管66と同一軸線上に配置し、第2バルブ管路62および第4バルブ管路64は、出口管66側から見て基準面から左側に所定角度α(例えば35°)傾斜し、第3バルブ管路63および第5バルブ管路65は、出口管66側から見て基準面から右側に所定角度α(例えば35°)傾斜してある。また、第2バルブ管路62から第5バルブ管路65の4本はすべて、出口管66側か上流側に向けて鈍角β(例えば135°)に傾斜して配置してある。これにより、マニホールド60内の液体の流れを良好にすることができるとともに、バルブを閉じた際の液切れも良好になる。
【符号の説明】
【0066】
1…車両
2…注入口
10…車両用液体注入装置
20…車両搬送装置
30…移送装置
40…ロボット
50…注入ガン
55…取付管
56…アース線入りホース(樹脂製ホース)
57…ノズル
60…マニホールド
60A…マニホールド組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を搬送する車両搬送装置と、
前記車両搬送装置の搬送方向と同方向に同期して移送されるロボットとを備え、
前記車両の搬送中に、前記ロボットに取り付けた注入ガンから前記車両の注入口に液体を注入する車両用液体注入装置であって、
前記注入ガンと前記ロボットへの取付管との間を、内部が視認可能な樹脂製ホースで連結したことを特徴とする車両用液体注入装置。
【請求項2】
前記樹脂製ホースは、透明であることを特徴とする請求項1に記載の車両用液体注入装置。
【請求項3】
前記樹脂製ホースは、導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用液体注入装置。
【請求項4】
前記注入ガンの上流側において、前記ロボットに、各々バルブを有する複数のバルブ管路と、前記注入ガンの前記取付管を接続する単一の出口管とを有するマニホールドを取り付け、
前記複数のバルブ管路が、複数種類の注入用液体の液体源をそれぞれ接続する複数の液体バルブ管路を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用液体注入装置。
【請求項5】
前記マニホールドの少なくとも前記液体バルブ管路の各々が、前記単一の出口管側から上流側に向けて鈍角に傾斜して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用液体注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93602(P2011−93602A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252021(P2009−252021)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】