説明

車両用温度調整庫

【課題】貯蔵物を貯蔵する際の温調性能を向上するとともに、各貯蔵物の貯蔵温度のばらつきを低減することができる車両用温度調整庫を提供する。
【解決手段】外殻を形成するアウターケース2と、このアウターケース2の内部に設けられ、内部に温調室12を形成するインナーケース3と、これらのアウターケース2およびインナーケース3間に介在する断熱部4とを有する車両用温度調整庫1に、断熱部4とインナーケース3との間に送風路8と、インナーケース3に送風路8から温調室12へ温調風を吹き出す複数の吹出口9a〜9eとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに搭載される車両用温度調整庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術に関連するものとして、特許文献1に記載されるように「自動車用冷温蔵庫制御装置」が提案されている。これは図5に示すように、ケース101内に、送風機102、エバポレータ103、および冷蔵庫104を備えている。エバポレータ103には、図示しない自動車エンジンで駆動されるコンプレッサから冷媒が供給されるとともに、送風機102より空気がエバポレータ103の上部送風路105を通って送られるので、上部送風路105で熱交換により空気を冷却して、冷風を1箇所の吹出口106より冷蔵庫104の上部へ吹き出すことによって、冷蔵庫104内の食品や飲み物などの冷蔵物を保冷する。次いで、冷蔵庫104内から空気がエバポレータ103の下部を通って送風機102へ戻される。
【特許文献1】実開平6−49117号公報 また、他の従来技術として、図6に示すように、冷蔵庫110の一方の側に送風機111を設け、この送風機111の上方にエバポレータ112を配置して、冷蔵庫110の下部から空気を送風機111で吸い込んでエバポレータ112で冷却した後、1箇所の吹出口113から冷蔵庫110の上部へ冷風を吹き出すものが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来技術では、冷風が1箇所のみの吹出口106から冷蔵庫104内へ吹き出すようになっているので、冷蔵庫104内で冷風が通る流路が1つの方向のみに限定され、冷蔵庫104内の各部に吹出される冷風の状態が均一ではないので、冷蔵庫104内の各部で冷蔵物を保冷する温度のばらつきが生じるという問題があった。また、吹出口106の近傍に冷蔵物がある場合、この冷蔵物により冷風の流れが妨げられるので、吹出口106より離れた場所にある冷蔵物が冷えにくいという問題があった。また、前述した図11に示す従来技術でも同様の問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術を考慮してなされたもので、その目的は、インナーケース内で貯蔵物を貯蔵する際の温調性能を向上できるとともに、各貯蔵物を貯蔵する温度のばらつきを低減することができる車両用温度調整庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、外殻を形成するアウターケースと、このアウターケースの内部に設けられ、内部に温調室を形成するインナーケースと、これらのアウターケースおよびインナーケース間に介在する断熱部とを有する車両用温度調整庫であって、前記断熱部と前記インナーケースとの間に送風路と、前記インナーケースに前記送風路から前記温調室へ温調風を吹き出す複数の吹出口とを設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用温度調整庫であって、前記インナーケースの底面と前記断熱部との間に前記送風路と、前記インナーケースの底面に吹出口と、前記アウターケースの底部に前記送風路と連通する排水用ドレン孔とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、アウターケース内の断熱部とインナーケースとの間の送風路を介して温調風を供給して、複数の吹出口からインナーケース内の温調室に温調風を吹き出すので、温調風が通る流路をインナーケース内部で複数形成し、インナーケース内部の比較的多くの箇所を温調風が流動することにより、各貯蔵物へ温調風を吹出す状態の均一化を図ることができる。
【0008】
また、一部の吹出口の近傍に貯蔵物があって温調風の流れが妨げられても、他の吹出口からインナーケース内部に温調風を吹き出すので、各貯蔵物を確実に貯蔵することができる。これにより、インナーケース内部で貯蔵物を貯蔵する際の温調性能を向上できるとともに、各貯蔵物を貯蔵する温度のばらつきを低減することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、温調風の吹出口と排水用ドレン孔とが連通しているので、装置全体の構成を複雑にすることなく温調性能を確保しつつ、温調室内の凝縮水、および貯蔵物から漏れ出た液体が庫外に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用温度調整庫を図に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両用温度調整庫を示す平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のB−B線に沿う断面図、図4は図3のC部を拡大して示す断面図である。なお、図1ではインナーケースの上部を取除いた状態でインナーケースの内部を図示している。また、図1〜図4において空気の流れを矢印で示している。
【0011】
図1〜図4に示すように本実施形態の車両用温度調整庫1は、外殻を形成するアウターケース2と、このアウターケース2の内部に設けられ、温調室12を形成し、この温調室12に図示しない貯蔵物を収容するインナーケース3と、これらのアウターケース2およびインナーケース3間に介在する断熱部4と、インナーケース3の上部の吸込口5より空気を吸込んで循環する送風機6と、上部の吸込口5と送風機6との間に介在するエバポレータ7とを備えている。
【0012】
インナーケース3の4つの側面3a〜3dの底部と断熱部4との間、およびインナーケース3の底面3eと断熱部4との間には、送風機6からの温調風が送風される送風路8が形成されている。そして、インナーケース3の底面近傍の側面3a〜3dと底面3eに、上記の送風路8からインナーケース3内部に空気を吹き出す吹出口9a〜9eが設けられている。
【0013】
インナーケース3の底面近傍の側面の各吹出口9a〜9dは、送風機6とほぼ同等の高さ位置で、かつインナーケース3の4つの側面3a〜3dにそれぞれ配置されている。
【0014】
アウターケース2の底部には、排水用ドレン孔10が設けられている。このドレン孔10は、インナーケース3の底面3eに設けられた吹出口9eと送風路8とを通じてインナーケース3の内部に連通しており、温調室12内の結露水、および貯蔵物から漏れ出た液体が庫外に排出される。なお、温調室12内に大量の液体が流入した際には、インナーケース3の各側面3a〜3dに設けられた吹出口9a〜9dから送風路8と排水用ドレン孔10とを通じて庫外に液体が排出される。
【0015】
この実施形態にあっては、送風機6の作動により吸込口5を介して温調室12から空気を吸込んでエバポレータ7で冷却した後、送風機6からの温調風としての冷風を、断熱部4とインナーケース3との間の送風路8を介して供給し、複数の吹出口9a〜9dから温調室12に冷風を吹き出す。その結果、インナーケース3内部で冷風が通る流路を複数形成し、インナーケース3内部の比較的多くの箇所を冷風が流動することにより、各貯蔵物へ冷風を吹出す状態の均一化を図ることができる。また、吹出口9aの近傍に飲み物などの貯蔵物があって冷風の流れが妨げられても、他の吹出口9b〜9dから温調室12に冷風を吹き出すことにより、各貯蔵物を確実に貯蔵することができる。さらに、通常使用時には凝縮水がないため、インナーケース3の底面3eの吹出口9eからも温調室12に冷風を吹き出す。
【0016】
このように構成した実施形態では、温調室12で貯蔵物を貯蔵する際の温調性能を向上できるとともに、各貯蔵物を貯蔵する温度のばらつきを低減することができる。また、送風路8を介してインナーケース3の底面に冷風を廻すことによって、車両下部からの熱害に対して断熱効果を上げることができるので、この点でも貯蔵物を貯蔵する際の温調性能を向上できる。
【0017】
なお、本実施形態では、温調室12をエバポレータ7を用いて冷却する構成を示しているが、加熱源としてヒータコアを設置することで、温調室を暖める構成としても良く、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用温度調整庫を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図3のC部を拡大して示す断面図である。
【図5】従来の自動車用冷温蔵庫を示す断面図である。
【図6】従来の車両用冷蔵庫を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…車両用温度調整庫
2…アウターケース
3…インナーケース
3e…インナーケース底面
4…断熱部
8…送風路
9a〜9e…吹出口
10…排水用ドレン孔
12…温調室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を形成するアウターケース(2)と、このアウターケース(2)の内部に設けられ、内部に温調室(12)を形成するインナーケース(3)と、これらのアウターケース(2)およびインナーケース(3)間に介在する断熱部(4)とを有する車両用温度調整庫であって、
前記断熱部(4)と前記インナーケース(3)との間に送風路(8)と、
前記インナーケース(3)に前記送風路(8)から前記温調室(12)へ温調風を吹き出す複数の吹出口(9a〜9e)とを設けたことを特徴とする車両用温度調整庫。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用温度調整庫であって、
前記インナーケース(3)の底面(3e)と前記断熱部(4)との間に前記送風路(8)と、
前記インナーケース(3)の底面(3e)に吹出口(9e)と、
前記アウターケース(2)の底部に前記送風路(8)と連通する排水用ドレン孔(10)とを設けたことを特徴とする車両用温度調整庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−309543(P2007−309543A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136498(P2006−136498)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】