車両用灯具システム
【課題】 ESS点滅に続くハザード点滅を好ましい形態で実行し、より安全性の高い運転を可能にした車両用灯具システムを提供する。
【解決手段】 CAR(自動車)の走行状態に基づいてTSL(ターンシグナルランプ)の点灯を制御するECU1を備えており、ECU1はCARの第1の走行状態のときにTSLをESS(緊急停止)点滅させ、第2の走行状態に変化したときにTSLをハザード点滅し、ハザード点滅の間に第3の走行状態を検出したときにハザード点滅を停止する。ハザード点滅により後続車による追突を確実に防止する一方で、無用なハザード点滅を回避して後続車や自車の運転者に対する悪影響を防止し、安全性の高い運転を実現する。
【解決手段】 CAR(自動車)の走行状態に基づいてTSL(ターンシグナルランプ)の点灯を制御するECU1を備えており、ECU1はCARの第1の走行状態のときにTSLをESS(緊急停止)点滅させ、第2の走行状態に変化したときにTSLをハザード点滅し、ハザード点滅の間に第3の走行状態を検出したときにハザード点滅を停止する。ハザード点滅により後続車による追突を確実に防止する一方で、無用なハザード点滅を回避して後続車や自車の運転者に対する悪影響を防止し、安全性の高い運転を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の緊急停止及び停止状態を他車に報知するためのランプ点滅制御が可能な灯具システムに関し、特に点滅状態を適切に制御することを可能にした車両用灯具システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では減速時や停車時のブレーキ操作に連動して点灯するストップランプにより後続車に対する自車の減速、停車状態を報知している。また、スイッチ操作により自動車の左右両側に配置されているターンシグナルランプを両方同時に点滅して、いわゆるハザードランプとして機能させることにより後続車を含む他車に対する自車の減速、停車状態を報知している。近年、自動車の急ブレーキ操作により急減速した際に後続車の追突を防止することを目的として、自車の急減速を検知して自動的にストップランプやターンシグルナルランプを点滅させる技術が提案されている。例えば、特許文献1では、自車の制動が必要な状況を検出し、このとき後方に他車(後方車)が存在することを検出したときに、後方車に対する警告灯を点滅させる技術が提案されている。
【0003】
このような技術を更に改善するものとして、近年、自車が急減速する走行状態となったことを制御装置が検出したときに緊急ストップシグナル(ESS)を出し、このESSによってストップランプやターンシグナルランプをこれまでのハザードランプの点滅よりも短周期(高周波数)で点滅させるようにした灯具システムが提案されている。以下、本明細書ではESSに基づくランプの点滅を便宜的にESS点滅と称する。このESS点滅は点滅周期が周波数で4Hz程度であり、これまでのハザードランプの点滅(以下、ハザード点滅と称する)の周波数で1〜2Hzの周期よりも短周期であるため後続車に対する警告度が強く、後続車による追突を回避する上で有効である。
【0004】
また、ESS点滅を行った後は、自動的にハザード点滅に切り替えることも提案されている。これは、ESS点滅は急減速時にのみ実行されるため急減速が解消された走行状態となったときにはESS点滅が停止される。そのため、道路が渋滞したときの最後尾で低速走行しあるいは停車したときのような場合にESS点滅が行われなくなると後続車に対する警告度が無くなってしまい追突される危険性が生じてしまう。このような場合には、ESS点滅からハザード点滅に自動的に切り替えるようにすることで後続車に対する警告は継続でき、追突を回避する上で有効になる。
【特許文献1】特開2006−256480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにESS点滅を自動的にハザード点滅に切り替える技術は提案されているが、このハザード点滅をどのようなタイミングで停止するのかについては未だ好適な技術は提案されていない。現在の技術ではハザード点滅に切り替えられた後は、運転者が後続車の存在や走行状態を確認し、自身の判断に基づいて手操作によってハザード点滅を停止させている。そのため、後続車が自車の直後で低速走行に移り、あるいは停車する等して追突の危険性が無くなった場合でも、運転者がハザード点滅を停止する操作を行わない限りハザード点滅が継続して行われてしまい、後続車に眩惑を生じさせてしまう。この点、特許文献1の技術では後続車を検出して警告灯を点滅させているのでこのような問題に対しては有効であるが、後続車を検出するための装置が必要であり、システムが高価なものになるという問題がある。
【0006】
また、高速走行中の緊急ブレーキ等によってESS点滅が実行され、その後再び加速する等して緊急性が解消された場合でも、ESS点滅が継続して行われていたり、あるいはESS点滅から切り替わったハザード点滅が継続して行われることがあり、他車に対して無用な警告を与えてしまい他車の安全走行の点で好ましくない。この点については特許文献1においても同様な問題が生じる。また、このような状態を解消するためにはその都度運転者がハザード点滅を停止させる操作を行う必要があり、操作が面倒であると共に、自車の運転者の前方注意の障害になることになり、自車の安全走行の点で好ましくない。
【0007】
本発明の目的はハザード点滅を好ましいタイミングで自動的に停止させることで、ESS点滅に続くハザード点滅を好ましい形態で実行し、より安全性の高い運転を可能にした車両用灯具システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用灯具システムは、少なくとも他車両から点灯の確認可能なランプを備える車両において、当該車両の走行状態に基づいてランプの点灯を制御する制御装置を備えており、当該制御装置は当該車両の第1の走行状態を検出したときにランプを短周期で点滅する第1の点滅信号を出力し、第2の走行状態に変化したことを検出したときにランプを長周期で点滅する第2の点滅信号を出力し、第2の点滅信号が出力されている間に第3の走行状態を検出したときにランプの点滅を停止する点滅停止信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の点滅信号によりランプを短周期で点滅させて緊急停止点滅を実現した後、自動的に第2の点滅信号によりランプを長周期で点滅させてハザード点滅に移行することができ、さらには当該ハザード点滅での警告が行われた後には自動的に或いは意図的にハザード点滅を停止させることができる。これにより、後続車による追突を確実に防止する一方で、無用なハザード点滅を回避して後続車や自車の運転者に対する悪影響を防止し、安全性の高い運転を実現することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、第1の点滅信号は周波数がほぼ4Hz周期の緊急停止点滅信号であり、前記第2の点滅信号は周波数が1〜2Hz周期のハザード点滅信号であり、これにより車両の緊急停止点滅とハザード点滅が実現できる。すなわち、通常の危険性を報知する周波数はターンシグナルと同じ1〜2Hzが良く、緊急性を報知する場合はその約2倍の周波数とすると、他車の運転者が効果的に危険度を認識できる。また、本発明において、第1の点滅信号により点滅するランプは車両のストップランプ又はターンシグナルランプで構成し、第2の点滅信号により点滅するランプは車両のターンシグナルランプで構成する。既存のストップランプやターンシグナルランプで緊急ストップシグナルによる点滅を行い、既存のターンシグナルランプでハザード点滅を行うことで、既存のランプを利用しての本発明の灯具システムが実現できる。したがって、新たな光源を用いずに緊急性を他車に報知できる。さらに、本発明において、第3の走行状態の検出には、手動操作による停止信号の入力の検出を含ませることが可能であり、これにより手操作によってハザード点滅を意図的に停止させることも可能である。すなわち、走行環境に合わせて好適にハザード点滅信号の停止を操作でき、他車への不要な報知を無くすことができる。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明の車両用灯具システムの実施例1を説明する。図1は実施例1のシステム構成図である。自動車CARには複数のターンシグナルランプ(以下、TSLと称することもある)が配設されている。ここでは、自動車CARの前部の右ヘッドランプRHLと左ヘッドランプLHLにそれぞれ隣接して右前ターンシグナルランプRFTSLと左前ターンシグナルランプLFTSLが配設されている。また、自動車CARの後部の右ストップランプRSLと左ストップランプLSLにそれぞれ隣接して右後ターンシグナルランプRRTSLと左後ターンシグナルランプLRTSLが配設されている。また、ここでは自動車CARの左右のフェンダー部にも右サイドターンシグナルランプRSTSLと左サイドターンシグナルランプLSTSLが設けられている。前記RFTSLとRRTSLとRSTSLは一体に電気接続されて両者は同時に点滅されるようになっている。同様に、LFTSLとLRTSLとLSTSLも一体に電気接続されて両者は同時に点滅されるようになっている。なお、図示は省略するが運転席に設けられてTSLの点滅を確認するためのインジケータについても同様に電気接続されてTSLと同時に点滅されるようになっている。ここで、後述するようにこれらのTSLは周波数が4Hzの短周期で点滅させることができるように、例えばLED等の半導体光素子を光源とするランプで構成されることが好ましい。また、前記自動車にはランプ制御回路(電子制御ユニット:以下、ECUと称する)1が設けられており、当該ECU1に入力される各種信号に基づいて自車の走行状態を検出し、この検出した走行状態に基づいて前記各TSLの点滅を制御する。
【0012】
前記ECU1は入力される各種信号に基づいて所要の演算を行う中央処理部(以下、CPUと称する)11と、車載電源+Bから各TSLに対して供給される点灯用の電流をオン・オフして各TSLを点滅させるための右用リレーRRLと左用リレーLRLとを備えており、これらのリレーRRL,LRLは前記CPU11によってオン・オフ制御される。このリレーRRL,LRLは機械的な接点を有するメカニカルリレー、あるいは半導体スイッチで構成されるエレクトロリレーのいずれで構成されてもよいが、少なくとも4Hz周期の短周期から1〜2Hzの長周期で入力される点滅信号に追従してオン・オフ動作が可能なことが必要である。前記CPU11には自車の走行状態を検出するための各種信号として、ここでは車速信号、ABS(アンチロックブレーキシステム)信号、ハザードスイッチ信号、ハザードオフスイッチ信号、ターン(方向)信号が入力される。ここで、ハザードスイッチ信号とハザードオフスイッチ信号は運転者のハザードスイッチの操作により発生する信号である。またターン信号は運転者のウインカースイッチの操作により右、左の各ターン信号が選択的に発生する信号である。また、前記CPU11は車速信号から自車の車速を検出すると共に、車速の変化、すなわち加速度(減速度を含む)を演算し、これら車速と加速度から自車の走行状態を判定し、予め条件設定した後述する走行状態のいずれに該当するかを判定することが可能である。
【0013】
この灯具システムによれば、自動車CARの右左折時等に運転者のウインカースイッチ操作により右又は左のターン信号がECU1に入力されると、CPU11はこれに対応する左右のリレーRRL又はLRLのいずれか一方をオン・オフ動作させる。他方のリレーはオフのままである。例えば、右リレーRRLがオン・オフ制御されると、自動車右側のターンシグナルランプRFTSL,RRTSL,RSTSLが点滅されてターン点滅となり、自車の進行方向を報知する。このときの点滅周期は任意であるが、ここでは1〜2Hzの長周期での点滅となる。このターン点滅はターン信号が入力されなくなるまで、すなわち運転者によって、あるいはステアリング操作に連動してウインカースイッチがオフされるまで継続される。
【0014】
また、自動車CARの停車時や高速道路での渋滞最後尾のときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号がECU1に入力されるとCPU11は左右のリレーRRL又はLRLの両方を同時にオン・オフ動作させる。これにより、自動車の全てのTSLが点滅され、ハザード点滅となる。このときの点滅周期はターン点滅と同じ1〜2Hzの長周期での点滅となる。ハザード点滅が行われているときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードオフスイッチ信号がECU1に入力されると、CPU11は左右のリレーRRL,LRLをオフにし、各TSLの点滅を停止させる。
【0015】
次に車速信号とABS信号に基づいてCPU11によるTSLでのESS点滅、ハザード点滅の動作について説明する。
【0016】
(ESS点滅動作)
図2はESS点滅動作のフローチャート、図3は車速と、加速度と、各TSLの点滅状態の相関を示すタイミング図である。CPU11は車速信号に基づいて車速と加速度を認識し、自車が所定車速V1(ここでは、V1=50km/h)以上で走行していることを検出したときに(S101)、自車の加速度が所定加速度−a1以下での走行状態となったとき(ここでは、所定加速度−a1=−2.5m/s2と負の値であるので減速度と言い換えることができ、この所定減速度以下となったとき)、換言すれば緊急ブレーキ状態になったとき(S102)を第1の走行状態C1として検出し、第1の点滅信号としてのESS点滅信号を出力し、このESS点滅信号に基づいて2つのリレーRRL,LRLを制御する。このESS点滅信号は両リレーRRL,LRLを4Hzの短周期でオン・オフ制御するものである。これにより、全てのTSLは短周期で点滅し、ESS点滅を実行する(S103)。このESS点滅により後続車に対して自車が緊急減速の状況にあることを警告する。なお、ステップS101,S102においてそれぞれの条件を満たさないときにはESS点滅は実行しない。なお、この第1の走行状態C1としての走行状態は緊急減速時に発生するABS信号がCPU11に入力されることによっても検出してもよい。CPU11は第1の走行状態が続いている間はESS信号を継続して出力し、したがってESS点滅は継続される。
【0017】
(ハザード点滅動作)
図4はハザード点滅動作のフローチャートである。ESS点滅が行われているとき(S201)に第1の走行状態C1が解消され、CPU11が第2の走行状態C2を検出したとき、ここでは加速度が前記所定加速度−a1より大きくなったこと(すなわち、減速度が緩和されて緊急減速状態を脱したとき)を検出したときには(S202)、ESS点滅を停止すると同時に(S203)、第2の点滅信号としてハザード点滅信号を出力し、このハザード点滅信号に基づいて2つのリレーRRL,LRLを制御する。ここでは、ハザード点滅信号は両リレーRRL,LRLを1〜2Hzの長周期でオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLは長周期で点滅し、ハザード点滅を実行する(S204)。このハザード点滅により後続車に対して自車が減速ないし停止している状況にあることを警告する。なお、このときの車速は考慮しない。
【0018】
次いで、CPU11は前記第2の走行状態C2でハザード点滅を行っているときに(S301)、各種信号に基づいて自車が第3の走行状態C3に変化したことを検出したときにハザード点滅を停止する。この第3の走行状態C3においては、次の第1ないし第8の点滅停止動作がある。これらの点滅停止動作を図5のフローチャートと図3及び図6ないし図10のタイミング図を参照して説明する。
【0019】
(第1の点滅停止動作)
図5において、ここでは前記第3の走行状態C3として自車の車速が所定速度V2(ここで、V2=5〜10km/h程度の徐行速度)未満になったことを検出したとき(S302)、この場合には交通量の多寡を判定する(S303)。ここでは、交通量を「多い」,「中」,「少ない」のいずれかであると判定することにしている。ここで、交通量の多寡については運転者が判定してECU1に対して信号を入力させるようにしてもよいが、ECU1の初期デフォルト値として交通量が少ないことをECU1に設定しておくようにしてもよい。このステップS303において交通量が「多い」と判定した場合には、図3にタイミングを示すようにハザード点滅が開始されてから所定時間T1が経過したことを判定したときに(S304)、TSLのハザード点滅を停止する(S307)。この時間T1は例えば5秒程度とする。これは交通量が比較的に多い高速道路を走行している際に渋滞が発生し、渋滞の最後尾について最徐行ないし停車した場合に、後続車が自車の後ろに付くまでの間はハザード点滅を継続して追突を防止する。このような交通量の多い場合の渋滞では、統計的に見て時間T1以内で後続車が自車の後ろに付く確率が高いので、この時間T1の間はハザード点滅を継続し、この時間T1が経過後は自動的にハザード点滅を停止することで無用なハザード点滅を止め、後続車が自車の後ろについたときにもハザード点滅が継続されることによって後続車に対する眩惑や運転者がインジケータが点滅している煩わしさを解消する。
【0020】
(第2の点滅停止動作)
図5のステップS303において交通量が「少ない」と判定したときには、図6にタイミングを併せて示すように、自車の車速がV2未満の間はハザード点滅を継続する(S305)。これは交通量が少ない高速道路を走行している際に工事規制等による渋滞が発生し、渋滞の最後尾について徐行しているような場合には、後続車がいつ自車の後ろに付くか判らないが、安全のために運転者が後続車が自車の後ろについて停車ないし減速するまでは安全のためにハザード点滅を継続する。したがって、この第2の点滅停止動作はハザード点滅を停止しない動作である。交通量の多寡については前述のようにECU1の初期デフォルト値として交通量が少ないことをECU1に設定しておけば、原則として自車が停車ないし停車に近い走行状態になったときにはハザード点滅は継続されることになり、安全性を確保することができる。この場合、ハザード点滅は無限に継続されるため、ハザードオフスイッチ信号が入力されたときに(S311)、ハザード点滅を停止する(S307)。
【0021】
(第3の点滅停止動作)
図5のステップS303において交通量が「中」と判定したときは、図7にタイミングを併せて示すように、自車の車速が所定速度V2よりもさらに低速の所定速度V3(ここて、V3=0.7km/hないし停車に近い速度)になってから所定時間T1が経過したことを判定したときに(S306)、TSLのハザード点滅を停止する(S307)。これは交通量が多くもなく、少なくもない高速道路を走行しているときに渋滞や道路規制等で減速して徐行ないし停車したときには、交通量が多い場合よりは長い時間であるが交通量が少ない場合よりは短い時間で後続車が自車の後ろに付くことが多いので、それまでの間ハザード点滅を継続する。すなわち、前記第1の点滅停止動作よりも長い時間だけハザードを点滅させる一方で、前記第2の点滅停止動作よりも短い時間だけハザードを点滅させることで、交通量に対応して安全性を確保する一方で、無駄な点滅を解消する。ここでの所定時間T1は、第1の点滅停止動作の所定時間T1と同じにしているが、異なる時間であってもよい。
【0022】
(第4の点滅停止動作)
第4の点滅停止動作は、ハザード点滅が開始された後においても車速が所定速度V2以上の速度を維持している場合にハザード点滅を停止する動作である。ここでは先ず加速度を判定する(S308)。ここでは、加速度が所定加速度−a2,a2を基準にし、「a2以上」,「−a2未満」,「−a2以上a2未満」のいずれであるかを判定する。ここで、所定加速度−a2と所定加速度a2の絶対値は同じにしてあり、例えば0.78m/s2とする。したがって、所定加速度−a2は減速であり、所定加速度a2は加速となる。第1ないし第3の点滅停止動作の場合のように自車が徐行ないし停車することなく、図5及び図8に示すように、ステップS302で自車の車速が所定速度V2以上の速度での走行であると判定したときに、ステップS308で自車の加速度が所定加速度−a2以上でa2未満であると判定したときには、ハザード点滅が開始されてから時間T2を経過した時点(S309)でハザード点滅を停止する(S307)。時間T2は前記時間T1よりも短い時間であり、例えば3秒程度である。高速道路での渋滞の最後尾についた場合でも、比較的に短い自然渋滞の場合には自車が停車することはなく、渋滞の流れに伴って速度V2、すなわち徐行速度以上の速度で走行しており、しかも等速に近い状態での走行が継続されていて後続車に追突されるおそれが少ないので、ハザード点滅が開始されてから時間T2の間だけハザード点滅を継続すれば後続車に対して十分な警告が可能である。この時間T2が経過後は自動的にハザード点滅を停止することで無用なハザード点滅を止め、後続車に対する眩惑や運転者がインジケータが点滅している煩わしさを解消する。
【0023】
(第5の点滅停止動作)
第5の点滅停止動作は基本的には第4の点滅停止動作と同じであるが、ここでは図5のステップS309における所定時間T2の計時を、車速が所定速度V4(ここでV4=20km/h程度)よりも高速になった時点から計時している。図9に示すように、自車が車速V2以上であるが所定速度V4よりも低速となった後、所定加速度−a2以上でa2未満で車速が緩やかに増加して行き、所定速度V4以上になったときには、それまで継続していたハザード点滅の時間とは関係なく、車速が所定速度V4以上になった時点から所定時間T2の計時を開始し、時間T2の経過後にハザード点滅を停止させる(S307)。車速が増加したときには速やかにハザード点滅を停止させることが好ましい。なお、この第5の点滅動作停止では、所定速度V4以上になった時点の代わりに、所定加速度−a2以上になった時点から所定時間T2が経過するまでハザードの点滅を行うようにしてもよい。
【0024】
(第6の点滅停止動作)
第6の点滅停止動作は第4及び第5のハザード点滅停止動作と同様に車速が所定速度V2以上の速度を維持している場合に(S302)、ハザード点滅を停止する動作である。ここでは、図5及び図10に示すように、ステップS308において自車の加速度がa2以上であると判定したときには、ハザード点滅が開始されてから所定時間T3を経過した時点(S310)でハザード点滅を停止する(S307)。この所定時間T3は前記所定時間T2と同程度の時間かそれよりも短い時間であり、例えば0.5秒である。高速道路等での自動車の流れが一時的に渋滞したような場合には、渋滞の最後尾について減速しても直に渋滞を抜けて車速を増加させる場合があり、特にこの場合には所定加速度a2以上の加速度であるので車速が増加している状態であり、後続車の追突のおそれは少なく直にハザード点滅を停止させる。これにより、後続車の追突のおそれが解消された後もハザード点滅がいたずらに継続されることが防止される。
【0025】
(第7の点滅停止動作)
第7の点滅停止動作は基本的には第6の点滅停止動作と同じであるが、ここでは図5のステップS310における所定時間T3の計時を、タイミング図は省略するが、車速が所定速度V4よりも一旦下がった後、再びV4より高速になった時点から計時している。なお、この場合において、車速が所定速度V4以上になった時点の代わりに加速度が所定加速度a2以上になった時点から所定時間T3を計時するようにしてもよい。
【0026】
(第8の点滅停止動作)
図5において、ステップS302で車速が所定車速V2以上の場合でも自車の減速状態が極めて緩やかな場合、ここではステップS308において加速度が−a2未満の場合であると判定したときには、ハザード点滅を継続させる(S305)。すなわち、タイミング図は省略するが図6に示した第2の点滅停止動作と同じ動作を行う。これは車速がV2以上であっても自車が減速状態にあるときには、短い時間で車速がV2未満になることが想定されるため、自車の走行状態が変化されるまでの間はハザード点滅を継続していることが安全の点で好ましいからである。
【0027】
なお、前記第1ないし第8の点滅停止動作においては、いずれの場合においてもハザード点滅が行われている最中でも運転者によってハザードスイッチが操作されたときにハザード点滅を強制的に停止する動作を含ませるようにしてもよい。運転者によってハザード点滅を継続する必要がないと判断された場合には、直ちにハザード点滅を停止させることが好ましいからである。なお、図5において図示は省略しているが、ハザードオフスイッチ信号に基づいてTSLのハザード点滅を停止するステップをステップS301の上流に配置するようにフローを構成することも可能である。
【0028】
以上のように、実施例1ではESS点滅からハザード点滅に切り替わった後は自動車の走行状態に応じてハザード点滅を自動的に停止させることを可能にしているので、無用なハザード点滅の継続を回避し、他車に対する眩惑を防止するとともに、自車の運転者に対する煩わしさを無くし、安全運転に有益なものとなる。
【実施例2】
【0029】
図11は実施例2の灯具システムのシステム構成図であり、ここではESS点滅を自動車のストップランプにて行ない、ハザード点滅をターンシグナルランプにて行うように構成している。図1と等価な部分には同一符号を付しており、自動車CARにはターンシグナルランプRFTSL,RSTSL,RRTSL,LFTSL,LSTSL,LRTSLが配置されている。これらのTSLはそれぞれ右側と左側の各TSLが一体に接続された上でそれぞれがほぼ1〜2Hzの長周期でオン・オフ動作するフラッシャリレーFRLを介して車載電源に接続され、このフラッシャリレーFRLのオン・オフによって点滅されるようになっている。このフラッシャリレーFRLはECU1のCPU11に接続され、CPU11からは後述するハザード点滅信号が入力されるようになっている。また、フラッシャリレーFRLには運転者の操作によって出力されるハザードスイッチ信号とターン信号が入力され、これらの信号により左右両側のTSLが同時にあるいは個別に点滅されるようになっている。
【0030】
また、自動車の後部に配置された左右のストップランプRSL,LSLはECU1に接続されている。ここでストップランプRSL,LSLは4Hzの短周期で点滅させることができるように、例えばLED等の半導体光素子を光源とするランプで構成されることが好ましい。前記ECU1は実施例1と同様に入力される各種信号に基づいて所要の演算を行うCPU11と、車載電源からストップランプRSL,LSLに供給される点灯用の電流をオン・オフしてストップランプを点灯ないし点滅させるための単一のリレーRLを備えており、このリレーRLは前記CPU11によってオン・オフ制御される。このリレーRLは機械的な接点を有するメカニカルリレー、あるいは半導体スイッチで構成されるエレクトロリレーのいずれで構成されてもよいが、少なくとも4Hzの短周期で入力される点滅信号に追従してオン・オフ動作が可能なことが必要である。前記CPU11には自車の走行状態を検出するための各種信号として、ここでは車速信号、ABS信号、ストップ信号、ハザードオフスイッチ信号が入力される。
【0031】
この灯具システムによれば、自動車の右左折時等に運転者のウインカースイッチ操作により右又は左のターン信号がフラッシャリレーFRLに入力されると、フラッシャリレーFRLはこれに対応して左右のいずれかの回路をオン・オフ制御し、これにより対応する側のTSLが点滅されてターン点滅となり、自車の進行方向を報知する。このときの点滅周期は1〜2Hzの長周期での点滅となる。このターン点滅はターン信号が入力されなくなるまで、すなわち運転者によって、あるいはステアリング操作に連動してウインカースイッチがオフされるまで継続される。
【0032】
また、自動車の停車時や高速道路での渋滞最後尾のときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号がフラッシャリレーFRLに入力されるとフラッシャリレーFRLは左右の回路を同時にオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLが同時に点滅され、ハザード点滅となる。このときの点滅周期はターン点滅と同じ1〜2Hzの長周期での点滅となる。ハザード点滅が行われているときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号をオフ状態にすると、フラッシャリレーFRLはTSLの点滅を停止させる。
【0033】
他方、自動車の走行に伴い車速信号とABS信号がECU1に入力されると、実施例1と同様に、CPU11は車速信号に基づいて車速と加速度を認識し、自車が所定車速V1以上で走行しているときに、所定加速度−a1以下での走行状態となったとき、すなわち第1の走行状態C1である緊急減速の走行状態となったときに第1の点滅信号としてのESS点滅信号を出力し、このESS点滅信号に基づいてリレーRLを制御する。このESS点滅信号はリレーRLを4Hzの短周期でオン・オフ制御し、これにより各ストップランプRSL,LSLは短周期で点滅し、ESS点滅を実行する。なお、この第1の走行状態C1としての緊急減速の走行状態はABS信号がCPU11に入力されることによっても検出してもよい。CPU11は第1の走行状態C1が続いている間はESS信号を継続して出力し、したがってストップランプRSL,LSLによるESS点滅は継続される。
【0034】
次いで、第1の走行状態C1が解消され、CPU11が第2の走行状態C2を検出したとき、すなわち加速度が所定加速度−a1よりも大きくなった状態を検出したときには第2の点滅信号としてハザード点滅信号をフラッシャリレーFRLに出力する。フラッシャリレーFRLはこのハザード点滅信号に含まれるハザード点滅命令に基づいて左右の回路を同時に1〜2Hzの長周期でオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLは長周期で点滅し、ハザード点滅を実行する。
【0035】
CPU11は前記第2の走行状態C2でハザード点滅を行っているときに、各種信号に基づいて自車が第3の走行状態C3に変化したことを検出したときにハザード点滅信号をフラッシャリレーFRLに出力し、このハザード点滅信号に含まれるハザード点滅停止命令によって各TSLにおけるハザード点滅を停止する。この第3の走行状態C3においては、実施例1と同様に第1ないし第8のハザード点滅停止動作があるが、これら第1ないし第8のハザード点滅動作については実施例1と同じであるので説明は省略する。
【0036】
ここで、前記実施例1,2における所定速度V1,V2、所定加速度−a1,a2,−a2、及び所定時間T1,T2,T3の各具体的な数値はあくまでも一例であり、それぞれ任意な値に設定することが可能である。また、ステップS303における交通量の多寡の判定については自車の周囲の車両を検出する環境センサを利用して判定を行うように構成することも可能である。
【0037】
実施例1,2では運転者がウインカースイッチを操作してTSLでの方向指示を行うべく左右一方のTSLの点滅を行っているときにはこのTSLの点滅動作が優先されることになる。すなわち、ターンシグナル点滅を行っているときには前記第1ないし第8のいずれの点滅停止動作によっても当該TSLによる方向指示の点滅が停止されることはない。また、運転者がハザードスイッチを操作してハザード点滅を行ったときにもこのハザード点滅が優先され、前記第1ないし第8のいずれの点滅停止動作によってもハザード点滅が停止されることはなく、運転者がハザードスイッチを操作してハザードオフ信号が入力されたときにのみハザード点滅が停止されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の車両用灯具システムの構成図である。
【図2】ESS点滅のフローチャートである。
【図3】ESS点滅とハザード点滅及び第1の点滅停止動作のタイミング図である。
【図4】ハザード点滅のフローチャートである。
【図5】点滅停止動作のフローチャートである。
【図6】第2の点滅停止動作のタイミング図である。
【図7】第3の点滅停止動作のタイミング図である。
【図8】第4の点滅停止動作のタイミング図である。
【図9】第5の点滅停止動作のタイミング図である。
【図10】第6の点滅停止動作のタイミング図である。
【図11】実施例2の車両用灯具システムの構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ECU(ランプ制御回路)
11 CPU(中央処理部)
TSL(RFTSL,RSTSL,RRTSL,LFTSL,LSTSL,LRTSL) ターンシグナルランプ
RSL,LSL ストップランプ
RL,RRL,LRL リレー
FRL フラッシャリレー
CAR 自動車
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の緊急停止及び停止状態を他車に報知するためのランプ点滅制御が可能な灯具システムに関し、特に点滅状態を適切に制御することを可能にした車両用灯具システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では減速時や停車時のブレーキ操作に連動して点灯するストップランプにより後続車に対する自車の減速、停車状態を報知している。また、スイッチ操作により自動車の左右両側に配置されているターンシグナルランプを両方同時に点滅して、いわゆるハザードランプとして機能させることにより後続車を含む他車に対する自車の減速、停車状態を報知している。近年、自動車の急ブレーキ操作により急減速した際に後続車の追突を防止することを目的として、自車の急減速を検知して自動的にストップランプやターンシグルナルランプを点滅させる技術が提案されている。例えば、特許文献1では、自車の制動が必要な状況を検出し、このとき後方に他車(後方車)が存在することを検出したときに、後方車に対する警告灯を点滅させる技術が提案されている。
【0003】
このような技術を更に改善するものとして、近年、自車が急減速する走行状態となったことを制御装置が検出したときに緊急ストップシグナル(ESS)を出し、このESSによってストップランプやターンシグナルランプをこれまでのハザードランプの点滅よりも短周期(高周波数)で点滅させるようにした灯具システムが提案されている。以下、本明細書ではESSに基づくランプの点滅を便宜的にESS点滅と称する。このESS点滅は点滅周期が周波数で4Hz程度であり、これまでのハザードランプの点滅(以下、ハザード点滅と称する)の周波数で1〜2Hzの周期よりも短周期であるため後続車に対する警告度が強く、後続車による追突を回避する上で有効である。
【0004】
また、ESS点滅を行った後は、自動的にハザード点滅に切り替えることも提案されている。これは、ESS点滅は急減速時にのみ実行されるため急減速が解消された走行状態となったときにはESS点滅が停止される。そのため、道路が渋滞したときの最後尾で低速走行しあるいは停車したときのような場合にESS点滅が行われなくなると後続車に対する警告度が無くなってしまい追突される危険性が生じてしまう。このような場合には、ESS点滅からハザード点滅に自動的に切り替えるようにすることで後続車に対する警告は継続でき、追突を回避する上で有効になる。
【特許文献1】特開2006−256480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにESS点滅を自動的にハザード点滅に切り替える技術は提案されているが、このハザード点滅をどのようなタイミングで停止するのかについては未だ好適な技術は提案されていない。現在の技術ではハザード点滅に切り替えられた後は、運転者が後続車の存在や走行状態を確認し、自身の判断に基づいて手操作によってハザード点滅を停止させている。そのため、後続車が自車の直後で低速走行に移り、あるいは停車する等して追突の危険性が無くなった場合でも、運転者がハザード点滅を停止する操作を行わない限りハザード点滅が継続して行われてしまい、後続車に眩惑を生じさせてしまう。この点、特許文献1の技術では後続車を検出して警告灯を点滅させているのでこのような問題に対しては有効であるが、後続車を検出するための装置が必要であり、システムが高価なものになるという問題がある。
【0006】
また、高速走行中の緊急ブレーキ等によってESS点滅が実行され、その後再び加速する等して緊急性が解消された場合でも、ESS点滅が継続して行われていたり、あるいはESS点滅から切り替わったハザード点滅が継続して行われることがあり、他車に対して無用な警告を与えてしまい他車の安全走行の点で好ましくない。この点については特許文献1においても同様な問題が生じる。また、このような状態を解消するためにはその都度運転者がハザード点滅を停止させる操作を行う必要があり、操作が面倒であると共に、自車の運転者の前方注意の障害になることになり、自車の安全走行の点で好ましくない。
【0007】
本発明の目的はハザード点滅を好ましいタイミングで自動的に停止させることで、ESS点滅に続くハザード点滅を好ましい形態で実行し、より安全性の高い運転を可能にした車両用灯具システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用灯具システムは、少なくとも他車両から点灯の確認可能なランプを備える車両において、当該車両の走行状態に基づいてランプの点灯を制御する制御装置を備えており、当該制御装置は当該車両の第1の走行状態を検出したときにランプを短周期で点滅する第1の点滅信号を出力し、第2の走行状態に変化したことを検出したときにランプを長周期で点滅する第2の点滅信号を出力し、第2の点滅信号が出力されている間に第3の走行状態を検出したときにランプの点滅を停止する点滅停止信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の点滅信号によりランプを短周期で点滅させて緊急停止点滅を実現した後、自動的に第2の点滅信号によりランプを長周期で点滅させてハザード点滅に移行することができ、さらには当該ハザード点滅での警告が行われた後には自動的に或いは意図的にハザード点滅を停止させることができる。これにより、後続車による追突を確実に防止する一方で、無用なハザード点滅を回避して後続車や自車の運転者に対する悪影響を防止し、安全性の高い運転を実現することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、第1の点滅信号は周波数がほぼ4Hz周期の緊急停止点滅信号であり、前記第2の点滅信号は周波数が1〜2Hz周期のハザード点滅信号であり、これにより車両の緊急停止点滅とハザード点滅が実現できる。すなわち、通常の危険性を報知する周波数はターンシグナルと同じ1〜2Hzが良く、緊急性を報知する場合はその約2倍の周波数とすると、他車の運転者が効果的に危険度を認識できる。また、本発明において、第1の点滅信号により点滅するランプは車両のストップランプ又はターンシグナルランプで構成し、第2の点滅信号により点滅するランプは車両のターンシグナルランプで構成する。既存のストップランプやターンシグナルランプで緊急ストップシグナルによる点滅を行い、既存のターンシグナルランプでハザード点滅を行うことで、既存のランプを利用しての本発明の灯具システムが実現できる。したがって、新たな光源を用いずに緊急性を他車に報知できる。さらに、本発明において、第3の走行状態の検出には、手動操作による停止信号の入力の検出を含ませることが可能であり、これにより手操作によってハザード点滅を意図的に停止させることも可能である。すなわち、走行環境に合わせて好適にハザード点滅信号の停止を操作でき、他車への不要な報知を無くすことができる。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明の車両用灯具システムの実施例1を説明する。図1は実施例1のシステム構成図である。自動車CARには複数のターンシグナルランプ(以下、TSLと称することもある)が配設されている。ここでは、自動車CARの前部の右ヘッドランプRHLと左ヘッドランプLHLにそれぞれ隣接して右前ターンシグナルランプRFTSLと左前ターンシグナルランプLFTSLが配設されている。また、自動車CARの後部の右ストップランプRSLと左ストップランプLSLにそれぞれ隣接して右後ターンシグナルランプRRTSLと左後ターンシグナルランプLRTSLが配設されている。また、ここでは自動車CARの左右のフェンダー部にも右サイドターンシグナルランプRSTSLと左サイドターンシグナルランプLSTSLが設けられている。前記RFTSLとRRTSLとRSTSLは一体に電気接続されて両者は同時に点滅されるようになっている。同様に、LFTSLとLRTSLとLSTSLも一体に電気接続されて両者は同時に点滅されるようになっている。なお、図示は省略するが運転席に設けられてTSLの点滅を確認するためのインジケータについても同様に電気接続されてTSLと同時に点滅されるようになっている。ここで、後述するようにこれらのTSLは周波数が4Hzの短周期で点滅させることができるように、例えばLED等の半導体光素子を光源とするランプで構成されることが好ましい。また、前記自動車にはランプ制御回路(電子制御ユニット:以下、ECUと称する)1が設けられており、当該ECU1に入力される各種信号に基づいて自車の走行状態を検出し、この検出した走行状態に基づいて前記各TSLの点滅を制御する。
【0012】
前記ECU1は入力される各種信号に基づいて所要の演算を行う中央処理部(以下、CPUと称する)11と、車載電源+Bから各TSLに対して供給される点灯用の電流をオン・オフして各TSLを点滅させるための右用リレーRRLと左用リレーLRLとを備えており、これらのリレーRRL,LRLは前記CPU11によってオン・オフ制御される。このリレーRRL,LRLは機械的な接点を有するメカニカルリレー、あるいは半導体スイッチで構成されるエレクトロリレーのいずれで構成されてもよいが、少なくとも4Hz周期の短周期から1〜2Hzの長周期で入力される点滅信号に追従してオン・オフ動作が可能なことが必要である。前記CPU11には自車の走行状態を検出するための各種信号として、ここでは車速信号、ABS(アンチロックブレーキシステム)信号、ハザードスイッチ信号、ハザードオフスイッチ信号、ターン(方向)信号が入力される。ここで、ハザードスイッチ信号とハザードオフスイッチ信号は運転者のハザードスイッチの操作により発生する信号である。またターン信号は運転者のウインカースイッチの操作により右、左の各ターン信号が選択的に発生する信号である。また、前記CPU11は車速信号から自車の車速を検出すると共に、車速の変化、すなわち加速度(減速度を含む)を演算し、これら車速と加速度から自車の走行状態を判定し、予め条件設定した後述する走行状態のいずれに該当するかを判定することが可能である。
【0013】
この灯具システムによれば、自動車CARの右左折時等に運転者のウインカースイッチ操作により右又は左のターン信号がECU1に入力されると、CPU11はこれに対応する左右のリレーRRL又はLRLのいずれか一方をオン・オフ動作させる。他方のリレーはオフのままである。例えば、右リレーRRLがオン・オフ制御されると、自動車右側のターンシグナルランプRFTSL,RRTSL,RSTSLが点滅されてターン点滅となり、自車の進行方向を報知する。このときの点滅周期は任意であるが、ここでは1〜2Hzの長周期での点滅となる。このターン点滅はターン信号が入力されなくなるまで、すなわち運転者によって、あるいはステアリング操作に連動してウインカースイッチがオフされるまで継続される。
【0014】
また、自動車CARの停車時や高速道路での渋滞最後尾のときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号がECU1に入力されるとCPU11は左右のリレーRRL又はLRLの両方を同時にオン・オフ動作させる。これにより、自動車の全てのTSLが点滅され、ハザード点滅となる。このときの点滅周期はターン点滅と同じ1〜2Hzの長周期での点滅となる。ハザード点滅が行われているときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードオフスイッチ信号がECU1に入力されると、CPU11は左右のリレーRRL,LRLをオフにし、各TSLの点滅を停止させる。
【0015】
次に車速信号とABS信号に基づいてCPU11によるTSLでのESS点滅、ハザード点滅の動作について説明する。
【0016】
(ESS点滅動作)
図2はESS点滅動作のフローチャート、図3は車速と、加速度と、各TSLの点滅状態の相関を示すタイミング図である。CPU11は車速信号に基づいて車速と加速度を認識し、自車が所定車速V1(ここでは、V1=50km/h)以上で走行していることを検出したときに(S101)、自車の加速度が所定加速度−a1以下での走行状態となったとき(ここでは、所定加速度−a1=−2.5m/s2と負の値であるので減速度と言い換えることができ、この所定減速度以下となったとき)、換言すれば緊急ブレーキ状態になったとき(S102)を第1の走行状態C1として検出し、第1の点滅信号としてのESS点滅信号を出力し、このESS点滅信号に基づいて2つのリレーRRL,LRLを制御する。このESS点滅信号は両リレーRRL,LRLを4Hzの短周期でオン・オフ制御するものである。これにより、全てのTSLは短周期で点滅し、ESS点滅を実行する(S103)。このESS点滅により後続車に対して自車が緊急減速の状況にあることを警告する。なお、ステップS101,S102においてそれぞれの条件を満たさないときにはESS点滅は実行しない。なお、この第1の走行状態C1としての走行状態は緊急減速時に発生するABS信号がCPU11に入力されることによっても検出してもよい。CPU11は第1の走行状態が続いている間はESS信号を継続して出力し、したがってESS点滅は継続される。
【0017】
(ハザード点滅動作)
図4はハザード点滅動作のフローチャートである。ESS点滅が行われているとき(S201)に第1の走行状態C1が解消され、CPU11が第2の走行状態C2を検出したとき、ここでは加速度が前記所定加速度−a1より大きくなったこと(すなわち、減速度が緩和されて緊急減速状態を脱したとき)を検出したときには(S202)、ESS点滅を停止すると同時に(S203)、第2の点滅信号としてハザード点滅信号を出力し、このハザード点滅信号に基づいて2つのリレーRRL,LRLを制御する。ここでは、ハザード点滅信号は両リレーRRL,LRLを1〜2Hzの長周期でオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLは長周期で点滅し、ハザード点滅を実行する(S204)。このハザード点滅により後続車に対して自車が減速ないし停止している状況にあることを警告する。なお、このときの車速は考慮しない。
【0018】
次いで、CPU11は前記第2の走行状態C2でハザード点滅を行っているときに(S301)、各種信号に基づいて自車が第3の走行状態C3に変化したことを検出したときにハザード点滅を停止する。この第3の走行状態C3においては、次の第1ないし第8の点滅停止動作がある。これらの点滅停止動作を図5のフローチャートと図3及び図6ないし図10のタイミング図を参照して説明する。
【0019】
(第1の点滅停止動作)
図5において、ここでは前記第3の走行状態C3として自車の車速が所定速度V2(ここで、V2=5〜10km/h程度の徐行速度)未満になったことを検出したとき(S302)、この場合には交通量の多寡を判定する(S303)。ここでは、交通量を「多い」,「中」,「少ない」のいずれかであると判定することにしている。ここで、交通量の多寡については運転者が判定してECU1に対して信号を入力させるようにしてもよいが、ECU1の初期デフォルト値として交通量が少ないことをECU1に設定しておくようにしてもよい。このステップS303において交通量が「多い」と判定した場合には、図3にタイミングを示すようにハザード点滅が開始されてから所定時間T1が経過したことを判定したときに(S304)、TSLのハザード点滅を停止する(S307)。この時間T1は例えば5秒程度とする。これは交通量が比較的に多い高速道路を走行している際に渋滞が発生し、渋滞の最後尾について最徐行ないし停車した場合に、後続車が自車の後ろに付くまでの間はハザード点滅を継続して追突を防止する。このような交通量の多い場合の渋滞では、統計的に見て時間T1以内で後続車が自車の後ろに付く確率が高いので、この時間T1の間はハザード点滅を継続し、この時間T1が経過後は自動的にハザード点滅を停止することで無用なハザード点滅を止め、後続車が自車の後ろについたときにもハザード点滅が継続されることによって後続車に対する眩惑や運転者がインジケータが点滅している煩わしさを解消する。
【0020】
(第2の点滅停止動作)
図5のステップS303において交通量が「少ない」と判定したときには、図6にタイミングを併せて示すように、自車の車速がV2未満の間はハザード点滅を継続する(S305)。これは交通量が少ない高速道路を走行している際に工事規制等による渋滞が発生し、渋滞の最後尾について徐行しているような場合には、後続車がいつ自車の後ろに付くか判らないが、安全のために運転者が後続車が自車の後ろについて停車ないし減速するまでは安全のためにハザード点滅を継続する。したがって、この第2の点滅停止動作はハザード点滅を停止しない動作である。交通量の多寡については前述のようにECU1の初期デフォルト値として交通量が少ないことをECU1に設定しておけば、原則として自車が停車ないし停車に近い走行状態になったときにはハザード点滅は継続されることになり、安全性を確保することができる。この場合、ハザード点滅は無限に継続されるため、ハザードオフスイッチ信号が入力されたときに(S311)、ハザード点滅を停止する(S307)。
【0021】
(第3の点滅停止動作)
図5のステップS303において交通量が「中」と判定したときは、図7にタイミングを併せて示すように、自車の車速が所定速度V2よりもさらに低速の所定速度V3(ここて、V3=0.7km/hないし停車に近い速度)になってから所定時間T1が経過したことを判定したときに(S306)、TSLのハザード点滅を停止する(S307)。これは交通量が多くもなく、少なくもない高速道路を走行しているときに渋滞や道路規制等で減速して徐行ないし停車したときには、交通量が多い場合よりは長い時間であるが交通量が少ない場合よりは短い時間で後続車が自車の後ろに付くことが多いので、それまでの間ハザード点滅を継続する。すなわち、前記第1の点滅停止動作よりも長い時間だけハザードを点滅させる一方で、前記第2の点滅停止動作よりも短い時間だけハザードを点滅させることで、交通量に対応して安全性を確保する一方で、無駄な点滅を解消する。ここでの所定時間T1は、第1の点滅停止動作の所定時間T1と同じにしているが、異なる時間であってもよい。
【0022】
(第4の点滅停止動作)
第4の点滅停止動作は、ハザード点滅が開始された後においても車速が所定速度V2以上の速度を維持している場合にハザード点滅を停止する動作である。ここでは先ず加速度を判定する(S308)。ここでは、加速度が所定加速度−a2,a2を基準にし、「a2以上」,「−a2未満」,「−a2以上a2未満」のいずれであるかを判定する。ここで、所定加速度−a2と所定加速度a2の絶対値は同じにしてあり、例えば0.78m/s2とする。したがって、所定加速度−a2は減速であり、所定加速度a2は加速となる。第1ないし第3の点滅停止動作の場合のように自車が徐行ないし停車することなく、図5及び図8に示すように、ステップS302で自車の車速が所定速度V2以上の速度での走行であると判定したときに、ステップS308で自車の加速度が所定加速度−a2以上でa2未満であると判定したときには、ハザード点滅が開始されてから時間T2を経過した時点(S309)でハザード点滅を停止する(S307)。時間T2は前記時間T1よりも短い時間であり、例えば3秒程度である。高速道路での渋滞の最後尾についた場合でも、比較的に短い自然渋滞の場合には自車が停車することはなく、渋滞の流れに伴って速度V2、すなわち徐行速度以上の速度で走行しており、しかも等速に近い状態での走行が継続されていて後続車に追突されるおそれが少ないので、ハザード点滅が開始されてから時間T2の間だけハザード点滅を継続すれば後続車に対して十分な警告が可能である。この時間T2が経過後は自動的にハザード点滅を停止することで無用なハザード点滅を止め、後続車に対する眩惑や運転者がインジケータが点滅している煩わしさを解消する。
【0023】
(第5の点滅停止動作)
第5の点滅停止動作は基本的には第4の点滅停止動作と同じであるが、ここでは図5のステップS309における所定時間T2の計時を、車速が所定速度V4(ここでV4=20km/h程度)よりも高速になった時点から計時している。図9に示すように、自車が車速V2以上であるが所定速度V4よりも低速となった後、所定加速度−a2以上でa2未満で車速が緩やかに増加して行き、所定速度V4以上になったときには、それまで継続していたハザード点滅の時間とは関係なく、車速が所定速度V4以上になった時点から所定時間T2の計時を開始し、時間T2の経過後にハザード点滅を停止させる(S307)。車速が増加したときには速やかにハザード点滅を停止させることが好ましい。なお、この第5の点滅動作停止では、所定速度V4以上になった時点の代わりに、所定加速度−a2以上になった時点から所定時間T2が経過するまでハザードの点滅を行うようにしてもよい。
【0024】
(第6の点滅停止動作)
第6の点滅停止動作は第4及び第5のハザード点滅停止動作と同様に車速が所定速度V2以上の速度を維持している場合に(S302)、ハザード点滅を停止する動作である。ここでは、図5及び図10に示すように、ステップS308において自車の加速度がa2以上であると判定したときには、ハザード点滅が開始されてから所定時間T3を経過した時点(S310)でハザード点滅を停止する(S307)。この所定時間T3は前記所定時間T2と同程度の時間かそれよりも短い時間であり、例えば0.5秒である。高速道路等での自動車の流れが一時的に渋滞したような場合には、渋滞の最後尾について減速しても直に渋滞を抜けて車速を増加させる場合があり、特にこの場合には所定加速度a2以上の加速度であるので車速が増加している状態であり、後続車の追突のおそれは少なく直にハザード点滅を停止させる。これにより、後続車の追突のおそれが解消された後もハザード点滅がいたずらに継続されることが防止される。
【0025】
(第7の点滅停止動作)
第7の点滅停止動作は基本的には第6の点滅停止動作と同じであるが、ここでは図5のステップS310における所定時間T3の計時を、タイミング図は省略するが、車速が所定速度V4よりも一旦下がった後、再びV4より高速になった時点から計時している。なお、この場合において、車速が所定速度V4以上になった時点の代わりに加速度が所定加速度a2以上になった時点から所定時間T3を計時するようにしてもよい。
【0026】
(第8の点滅停止動作)
図5において、ステップS302で車速が所定車速V2以上の場合でも自車の減速状態が極めて緩やかな場合、ここではステップS308において加速度が−a2未満の場合であると判定したときには、ハザード点滅を継続させる(S305)。すなわち、タイミング図は省略するが図6に示した第2の点滅停止動作と同じ動作を行う。これは車速がV2以上であっても自車が減速状態にあるときには、短い時間で車速がV2未満になることが想定されるため、自車の走行状態が変化されるまでの間はハザード点滅を継続していることが安全の点で好ましいからである。
【0027】
なお、前記第1ないし第8の点滅停止動作においては、いずれの場合においてもハザード点滅が行われている最中でも運転者によってハザードスイッチが操作されたときにハザード点滅を強制的に停止する動作を含ませるようにしてもよい。運転者によってハザード点滅を継続する必要がないと判断された場合には、直ちにハザード点滅を停止させることが好ましいからである。なお、図5において図示は省略しているが、ハザードオフスイッチ信号に基づいてTSLのハザード点滅を停止するステップをステップS301の上流に配置するようにフローを構成することも可能である。
【0028】
以上のように、実施例1ではESS点滅からハザード点滅に切り替わった後は自動車の走行状態に応じてハザード点滅を自動的に停止させることを可能にしているので、無用なハザード点滅の継続を回避し、他車に対する眩惑を防止するとともに、自車の運転者に対する煩わしさを無くし、安全運転に有益なものとなる。
【実施例2】
【0029】
図11は実施例2の灯具システムのシステム構成図であり、ここではESS点滅を自動車のストップランプにて行ない、ハザード点滅をターンシグナルランプにて行うように構成している。図1と等価な部分には同一符号を付しており、自動車CARにはターンシグナルランプRFTSL,RSTSL,RRTSL,LFTSL,LSTSL,LRTSLが配置されている。これらのTSLはそれぞれ右側と左側の各TSLが一体に接続された上でそれぞれがほぼ1〜2Hzの長周期でオン・オフ動作するフラッシャリレーFRLを介して車載電源に接続され、このフラッシャリレーFRLのオン・オフによって点滅されるようになっている。このフラッシャリレーFRLはECU1のCPU11に接続され、CPU11からは後述するハザード点滅信号が入力されるようになっている。また、フラッシャリレーFRLには運転者の操作によって出力されるハザードスイッチ信号とターン信号が入力され、これらの信号により左右両側のTSLが同時にあるいは個別に点滅されるようになっている。
【0030】
また、自動車の後部に配置された左右のストップランプRSL,LSLはECU1に接続されている。ここでストップランプRSL,LSLは4Hzの短周期で点滅させることができるように、例えばLED等の半導体光素子を光源とするランプで構成されることが好ましい。前記ECU1は実施例1と同様に入力される各種信号に基づいて所要の演算を行うCPU11と、車載電源からストップランプRSL,LSLに供給される点灯用の電流をオン・オフしてストップランプを点灯ないし点滅させるための単一のリレーRLを備えており、このリレーRLは前記CPU11によってオン・オフ制御される。このリレーRLは機械的な接点を有するメカニカルリレー、あるいは半導体スイッチで構成されるエレクトロリレーのいずれで構成されてもよいが、少なくとも4Hzの短周期で入力される点滅信号に追従してオン・オフ動作が可能なことが必要である。前記CPU11には自車の走行状態を検出するための各種信号として、ここでは車速信号、ABS信号、ストップ信号、ハザードオフスイッチ信号が入力される。
【0031】
この灯具システムによれば、自動車の右左折時等に運転者のウインカースイッチ操作により右又は左のターン信号がフラッシャリレーFRLに入力されると、フラッシャリレーFRLはこれに対応して左右のいずれかの回路をオン・オフ制御し、これにより対応する側のTSLが点滅されてターン点滅となり、自車の進行方向を報知する。このときの点滅周期は1〜2Hzの長周期での点滅となる。このターン点滅はターン信号が入力されなくなるまで、すなわち運転者によって、あるいはステアリング操作に連動してウインカースイッチがオフされるまで継続される。
【0032】
また、自動車の停車時や高速道路での渋滞最後尾のときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号がフラッシャリレーFRLに入力されるとフラッシャリレーFRLは左右の回路を同時にオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLが同時に点滅され、ハザード点滅となる。このときの点滅周期はターン点滅と同じ1〜2Hzの長周期での点滅となる。ハザード点滅が行われているときに運転者がハザードスイッチを操作してハザードスイッチ信号をオフ状態にすると、フラッシャリレーFRLはTSLの点滅を停止させる。
【0033】
他方、自動車の走行に伴い車速信号とABS信号がECU1に入力されると、実施例1と同様に、CPU11は車速信号に基づいて車速と加速度を認識し、自車が所定車速V1以上で走行しているときに、所定加速度−a1以下での走行状態となったとき、すなわち第1の走行状態C1である緊急減速の走行状態となったときに第1の点滅信号としてのESS点滅信号を出力し、このESS点滅信号に基づいてリレーRLを制御する。このESS点滅信号はリレーRLを4Hzの短周期でオン・オフ制御し、これにより各ストップランプRSL,LSLは短周期で点滅し、ESS点滅を実行する。なお、この第1の走行状態C1としての緊急減速の走行状態はABS信号がCPU11に入力されることによっても検出してもよい。CPU11は第1の走行状態C1が続いている間はESS信号を継続して出力し、したがってストップランプRSL,LSLによるESS点滅は継続される。
【0034】
次いで、第1の走行状態C1が解消され、CPU11が第2の走行状態C2を検出したとき、すなわち加速度が所定加速度−a1よりも大きくなった状態を検出したときには第2の点滅信号としてハザード点滅信号をフラッシャリレーFRLに出力する。フラッシャリレーFRLはこのハザード点滅信号に含まれるハザード点滅命令に基づいて左右の回路を同時に1〜2Hzの長周期でオン・オフ制御する。これにより、全てのTSLは長周期で点滅し、ハザード点滅を実行する。
【0035】
CPU11は前記第2の走行状態C2でハザード点滅を行っているときに、各種信号に基づいて自車が第3の走行状態C3に変化したことを検出したときにハザード点滅信号をフラッシャリレーFRLに出力し、このハザード点滅信号に含まれるハザード点滅停止命令によって各TSLにおけるハザード点滅を停止する。この第3の走行状態C3においては、実施例1と同様に第1ないし第8のハザード点滅停止動作があるが、これら第1ないし第8のハザード点滅動作については実施例1と同じであるので説明は省略する。
【0036】
ここで、前記実施例1,2における所定速度V1,V2、所定加速度−a1,a2,−a2、及び所定時間T1,T2,T3の各具体的な数値はあくまでも一例であり、それぞれ任意な値に設定することが可能である。また、ステップS303における交通量の多寡の判定については自車の周囲の車両を検出する環境センサを利用して判定を行うように構成することも可能である。
【0037】
実施例1,2では運転者がウインカースイッチを操作してTSLでの方向指示を行うべく左右一方のTSLの点滅を行っているときにはこのTSLの点滅動作が優先されることになる。すなわち、ターンシグナル点滅を行っているときには前記第1ないし第8のいずれの点滅停止動作によっても当該TSLによる方向指示の点滅が停止されることはない。また、運転者がハザードスイッチを操作してハザード点滅を行ったときにもこのハザード点滅が優先され、前記第1ないし第8のいずれの点滅停止動作によってもハザード点滅が停止されることはなく、運転者がハザードスイッチを操作してハザードオフ信号が入力されたときにのみハザード点滅が停止されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の車両用灯具システムの構成図である。
【図2】ESS点滅のフローチャートである。
【図3】ESS点滅とハザード点滅及び第1の点滅停止動作のタイミング図である。
【図4】ハザード点滅のフローチャートである。
【図5】点滅停止動作のフローチャートである。
【図6】第2の点滅停止動作のタイミング図である。
【図7】第3の点滅停止動作のタイミング図である。
【図8】第4の点滅停止動作のタイミング図である。
【図9】第5の点滅停止動作のタイミング図である。
【図10】第6の点滅停止動作のタイミング図である。
【図11】実施例2の車両用灯具システムの構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ECU(ランプ制御回路)
11 CPU(中央処理部)
TSL(RFTSL,RSTSL,RRTSL,LFTSL,LSTSL,LRTSL) ターンシグナルランプ
RSL,LSL ストップランプ
RL,RRL,LRL リレー
FRL フラッシャリレー
CAR 自動車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも他車両から点灯の確認可能なランプを備える車両において、当該車両の走行状態に基づいて前記ランプの点灯を制御する制御装置を備え、前記制御装置は当該車両の第1の走行状態を検出したときに前記ランプを短周期で点滅する第1の点滅信号を出力し、第2の走行状態に変化したことを検出したときに前記ランプを長周期で点滅する第2の点滅信号を出力し、前記第2の点滅信号が出力されている間、第3の走行状態を検出したときに前記ランプの点滅を停止する点滅停止信号を出力することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
前記第1の点滅信号は周波数がほぼ4Hz周期の緊急停止点滅信号であり、前記第2の点滅信号は周波数が1〜2Hz周期のハザード点滅信号であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記第1の点滅信号で点滅するランプはストップランプ又はターンシグナルランプであり、前記第2の点滅信号で点滅するランプはターンシグナルランプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記第3の走行状態の検出には、手動操作による停止信号の入力の検出を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【請求項1】
少なくとも他車両から点灯の確認可能なランプを備える車両において、当該車両の走行状態に基づいて前記ランプの点灯を制御する制御装置を備え、前記制御装置は当該車両の第1の走行状態を検出したときに前記ランプを短周期で点滅する第1の点滅信号を出力し、第2の走行状態に変化したことを検出したときに前記ランプを長周期で点滅する第2の点滅信号を出力し、前記第2の点滅信号が出力されている間、第3の走行状態を検出したときに前記ランプの点滅を停止する点滅停止信号を出力することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
前記第1の点滅信号は周波数がほぼ4Hz周期の緊急停止点滅信号であり、前記第2の点滅信号は周波数が1〜2Hz周期のハザード点滅信号であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記第1の点滅信号で点滅するランプはストップランプ又はターンシグナルランプであり、前記第2の点滅信号で点滅するランプはターンシグナルランプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記第3の走行状態の検出には、手動操作による停止信号の入力の検出を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−12554(P2009−12554A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175008(P2007−175008)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]