説明

車両用灯具ユニット

【課題】
ダイレクトプロジェクション型又はプロジェクタ型の車両用灯具ユニットにおいて照度ムラを改善し均一化された照度分布の所定配光パターンを形成する。
【解決手段】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、これに照射される光を透過させる光学面と、前記投影レンズの後側焦点面より後方側に配置され、前記光学面を照射する光源と、を備えており、前記投影レンズの後側焦点面と前記光学面とは、略一致しており、前記光学面には、前記光源が照射する光を散乱させるための処理が施されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具ユニットに係り、特に、配光パターンの照度ムラを防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影レンズの後方側焦点近傍に配置された光源の像を、投影レンズを介して前方に投影するダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の車両用灯具ユニット(例えば、特許文献1参照)、反射面からの反射光で投影レンズの後方側焦点近傍に形成される光源像を、投影レンズを介して前方に投影するプロジェクタ型の車両用灯具ユニット(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−070679号公報
【特許文献2】特開昭61−49302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの車両用灯具ユニットでは、投影レンズの後方側焦点と投影レンズの後方側レンズ面とが物理的に離れており、投影レンズの後方側焦点近傍に配置された光源の像(又は反射面からの反射光で投影レンズの後方側焦点近傍に形成される光源像)を、前方に投影して配光パターンを形成していたので、光源(又は光源像)に輝度ムラがあると、当該輝度ムラに起因して配光パターンに照度ムラが発生するという欠点がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ダイレクトプロジェクション型又はプロジェクタ型の車両用灯具ユニットにおいて照度ムラを改善し均一化された照度分布の所定配光パターンを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、これに照射される光を透過させる光学面と、前記投影レンズの後側焦点面より後方側に配置され、前記光学面を照射する光源と、を備えており、前記投影レンズの後側焦点面と前記光学面とは、略一致しており、前記光学面には、前記光源が照射する光を散乱させるための処理が施されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、投影レンズの後方側焦点近傍に配置された光源の像(又は反射面からの反射光で投影レンズの後方側焦点近傍に形成される光源像)が投影されるのではなく、投影レンズの後側焦点面と略一致した光学面(例えば、当該光学面に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状)の作用で当該光学面上に均一化された照度分布が形成されて、この均一化された照度分布が投影レンズを介して前方へ拡大反転投影されることとなるため、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、均一化された照度分布の所定配光パターンを形成することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された複数のレンズを含む投影レンズと、前記投影レンズの後側焦点面より後方側に配置され、前記投影レンズの後側最終面を照射する光源と、を備えており、前記投影レンズの後側焦点面と前記投影レンズの後側最終面とは、略一致しており、前記投影レンズの後側最終面には、前記光源が照射する光を散乱させるための処理が施されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、投影レンズの後方側焦点近傍に配置された光源の像(又は反射面からの反射光で投影レンズの後方側焦点近傍に形成される光源像)が投影されるのではなく、投影レンズの後側焦点面と略一致した投影レンズの後側最終面(例えば、当該投影レンズの後側最終面に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状)の作用で当該投影レンズの後側最終面上に均一化された照度分布が形成されて、この均一化された照度分布が投影レンズを介して前方へ拡大反転投影されることとなるため、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、均一化された照度分布の所定配光パターンを形成することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、投影レンズが複数のレンズで構成されているため、投影レンズが単レンズで構成されている場合と比べ、色収差によるカラーフリンジを抑えることが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記光源は、前記光軸上に配置された前面及び後面、前記前面に形成された出射口と前記後面に形成された入射口とを連通する筒部、並びに、前記筒部の内周面に形成された反射面を含む導光部材と、前記入射口から前記筒部内に入射し前記反射面で反射されて前記出射口から出射する光を発光する半導体発光素子と、を備えており、前記前面と前記投影レンズの後側最終面とは、略一致していることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、出射口に形成される照度分布が投影されるのではなく、投影レンズの後側焦点面と略一致した投影レンズの後側最終面(例えば、当該投影レンズの後側最終面に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状)の作用で当該投影レンズの後側最終面上に均一化された照度分布が形成されて、この均一化された照度分布が投影レンズを介して前方へ拡大反転投影されることとなるため、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、均一化された照度分布の所定配光パターンを形成することが可能となる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、出射口が投影レンズの後側最終面で塞がれているため、出射口に塵や埃が進入するのを防止することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の発明において、前記光源が照射する光を散乱させるための処理は、微細な凹凸形状を施す処理であることを特徴とする。
【0015】
請求項4は、光源が照射する光を散乱させるための処理の例示である。従って、光源が照射する光を散乱させるための処理は、微細な凹凸形状を施す処理に限られず、シボ印刷を施す処理であってもよいし、あるいは、光を散乱させる粒子(例えば、ナノコンポジット材料)を含有させた散乱層を形成する処理であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、ダイレクトプロジェクション型又はプロジェクタ型の車両用灯具ユニットにおいて照度ムラを改善し均一化された照度分布の所定配光パターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である車両用灯具ユニット10の斜視図である。
【図2】車両用灯具ユニット10をその光軸AXを含む水平面で切断した横断面図である。
【図3】第1レンズ21及び光源ユニット30を光軸AXを含む水平面で切断した横断面図である。
【図4】図3中の円内の拡大図である。
【図5】光源ユニット30の斜視図である。
【図6】(a)図6(b)に示した光源ユニット30のA−A断面図、(b)光源ユニット30の正面図、(c)図6(b)に示した光源ユニット30のB−B断面図である。
【図7】半導体発光素子33aからの光と投影レンズ20(第2レンズ22)との関係を説明するための図である。
【図8】(a)筒部31内に入射した半導体発光素子33aからの光のうち光軸AXに対し広角方向の光Ray2が一回反射で出射口31c〜31cから出射する様子を模式的に表した縦断面図(第1レンズ21省略)、(b)図8(a)中の円内の拡大図である(第1レンズ21省略)。
【図9】(a)筒部31内に入射した半導体発光素子33aからの光のうち光軸AXに対し広角方向の光Ray2が一回反射で出射口31c〜31cから出射する様子を模式的に表した横断面図(第1レンズ21省略)、(b)図9(a)中の円内の拡大図である(第1レンズ21省略)。
【図10】(a)出射口31c〜31cに形成される照度分布の例、(b)出射口31c(31c〜31c)の水平線H(図10(a)中の各半導体発光素子33を通る水平線H)上の照度分布を示すグラフ、(c)投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成される照度分布を示すグラフである。
【図11】導光部材32を用いない車両用灯具ユニット10Aをその光軸を含む鉛直面で切断した縦断面図である(第2レンズ22省略)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具ユニットについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は車両用灯具ユニット10の斜視図、図2は車両用灯具ユニット10をその光軸AXを含む水平面で切断した横断面図である。
【0020】
本実施形態の車両用灯具ユニット10は、自動車等の車両の前面の左右両側にそれぞれ少なくとも1つ配置されている。車両用灯具ユニット10には、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
【0021】
図1、図2に示すように、車両用灯具ユニット10は、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の灯具ユニットであり、投影レンズ20、光源ユニット30等を備えている。
【0022】
[投影レンズ20]
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸AX上に配置された第1レンズ21及び第2レンズ22を備えている。なお、投影レンズ20は、二枚のレンズ21、22に限られず、三枚以上のレンズを備えていてもよい。
【0023】
第1レンズ21は、後方側のレンズ面S1(本発明の光学面、投影レンズの後側最終面に相当)及び前方側のレンズ面S2を含んでいる。第1レンズ21は、放熱部材40の前面にネジN1でネジ止め固定することで、光学ユニット30の前方かつ光軸AX上に配置されている(図2参照)。
【0024】
第2レンズ22は、後方側のレンズ面S3及び前方側のレンズ面S4を含んでいる。第2レンズ22は、これを保持したレンズホルダー50を放熱部材40の前面にネジN2でネジ止め固定することで、第1レンズ21の前方かつ光軸AX上に配置されている(図2参照)。
【0025】
各レンズ面S1〜S4は、公知のソフトウエアを用いて光線追跡を行うことで、レンズ面S4側から入射した平行光がレンズ面S3、S2を通過し、最終的にレンズ面S1上に収束するという条件を満たすように設計されている。これにより、投影レンズ20の後側焦点面と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とが、略一致している。各レンズ面S1〜S4には、透過率を向上させるために、ARコート等の反射防止処理を施してもよい。
【0026】
上記条件を満たす各レンズ面S1〜S4の形状は無数に存在するが、本実施形態では、レンズ面S1は後方に向かって凸の非球面のレンズ面、レンズ面S2は前方に向かって凸の非球面のレンズ面、レンズ面S3は略平面形状のレンズ面、レンズ面S4は前方に向かって凸の非球面のレンズ面とされている。各レンズ面S1〜S4の光軸(回転軸)と光軸AXとは、一致している。上記条件を満たす限り、各レンズ面S1〜S4の形状はその他の形状であってもよい。なお、配光パターンを意図的に変更させる目的で、各レンズ面S1〜S4の一部を自由曲面にしてもよい。
【0027】
図3は第1レンズ21及び光源ユニット30を光軸AXを含む水平面で切断した横断面図、図4は図3中の円内の拡大図である。
【0028】
図3、図4に示すように、レンズ面S1には、光源ユニット30が照射する光を散乱させるための処理、例えば、シボ加工等の微細な凹凸形状が施されている。シボ加工等の微細な凹凸形状は、レンズ面S1のうち少なくとも光源ユニット30からの光が照射される領域に形成されていればよく、当該領域に部分的に形成されていてもよいし、レンズ面S1全域に渡って形成されていてもよい。
【0029】
なお、光源ユニット30が照射する光を散乱させるための処理は、シボ加工等の微細な凹凸形状に限定されず、レンズ面S1にシボ印刷を施す処理、あるいは、レンズ面S1に光を散乱させる粒子(例えば、ナノコンポジット材料)を含有させた散乱層を形成する処理であってもよい。
【0030】
上記構成の投影レンズ20によれば、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)を照射する光源ユニット30からの光は、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状の作用で散乱し、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に均一化された照度分布を形成する。そして、この投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成された均一化された照度分布が、投影レンズ20を介して前方へ拡大反転投影される。
【0031】
[光源ユニット30]
図5は光源ユニット30の斜視図、図6(a)は図6(b)に示した光源ユニット30のA−A断面図、図6(b)は光源ユニット30の正面図、図6(c)は図6(b)に示した光源ユニット30のB−B断面図である。
【0032】
図5〜図6(c)に示すように、光源ユニット30は、内周面に反射面31aが形成された複数の筒部31を含む導光部材32と、筒部31の一端である入射口31bから筒部31内に入射し反射面31aで反射されて筒部31の他端である出射口31c(31c〜31c)から出射する光を発光する複数の半導体発光素子33aが実装された基板33と、を備えている。
【0033】
半導体発光素子33aは、例えば、複数のチップ型LED(例えば、0.7mm角の発光面を有する青色LEDチップ×9)と蛍光体(例えば、黄色蛍光体であるYAG蛍光体)とを組み合わせた白色光を発する光源である。
【0034】
半導体発光素子33aは、その発光面を前方に向けた状態で放熱部材40の前面に固定された金属製基板33上に実装されて、投影レンズ20の車両後方側焦点より後方側かつ光軸AX近傍に配置されている。
【0035】
半導体発光素子33aは、その一辺を光軸AXに直交する水平線に沿わせて所定間隔(2mm程度)で一列にかつ光軸AXに対して対称に配置されている(図6(b)参照)。
【0036】
半導体発光素子33aはこれに接続された制御装置(図示せず)からの制御に従い個別に点消灯制御される。半導体発光素子33aから発生する熱量は放熱部材40の作用により放熱される。なお、半導体発光素子33aは9つに限られず、8つ以下又は10以上であってもよい。
【0037】
なお、半導体発光素子33aに代えて、ハロゲン電球、HID電球、レーザダイオード等を用いてもよい。
【0038】
図7は、半導体発光素子33aからの光と投影レンズ20(第2レンズ22)との関係を説明するための図である。
【0039】
図7に示すように、半導体発光素子33aから放射される光には、光軸AXに対し狭角方向の光Ray1だけでなく、光軸AXに対し広角方向の光Ray2がある。光軸AXに対し広角方向の光Ray2をも投影レンズ20に入射させるために、半導体発光素子33aの前方には、光軸AXに対し広角方向の光Ray2を制御する導光部材32が配置されている(図6(a)等参照)。
【0040】
図6(a)〜図6(c)に示すように、導光部材32は、光軸AX上に配置された前面32a及び後面32b、前面32aに形成された出射口31c(31c〜31c)と後面32bに形成された入射口31bとを連通する筒部31、並びに、筒部31の内周面に鏡面処理(例えばアルミ蒸着)を施すことで形成された反射面31a等を含んでいる。導光部材32は、例えば、耐熱性を有するプラスチック材料を射出成形することで一体的に成形されている。
【0041】
図3に示すように、導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とは、略一致している。なお、導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とは密着していてもよいし、両者間には、若干の間隔があいていてもよい。すなわち、導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とは、実質的に一致していればよい。導光部材32の後面32bは、光軸AXに略直交する平面とされている。
【0042】
導光部材32の前面32aには、9つの出射口31c〜31cが略水平方向に一列にかつ光軸AXに対して対称に隣接配置されている(図6(a)参照)。出射口31c〜31cは、例えば、矩形である。なお、出射口31c〜31cは、矩形に限られず、平行四辺形、台形その各種の形状であってもよい。
【0043】
出射口31c〜31cは、光軸AXから離れるにつれ徐々に大きくなるように設定されている(図6(b)参照。例えば、上下幅:3mm〜6mm、出射口31c〜31cの左右幅:2mm、出射口31c、31cの左右幅:4.5mm)。
【0044】
出射口31c〜31cのうち互いに隣接する出射口(例えば出射口31cと出射口31c)は、同一の縦エッジE(その幅をほとんど無視することができる縦エッジ。略鉛直方向に延びている)を含んで構成されるとともに当該同一の縦エッジEで仕切られている(図6(b)参照)。
【0045】
これにより、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成される照度分布が投影レンズ20を介して前方へ拡大反転投影されることで仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される所定配光パターン間(水平方向に隣接配置され個別に光度が増減される複数の照射領域間)に、縦エッジEに対応する隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止(又は低減)することが可能となる。
【0046】
導光部材32の後面32bには、9つの入射口31bが略水平方向に一列にかつ光軸AXに対して対称に配置されている。導光部材32の後面32b(入射口31b)は、投影レンズ20の後方側焦点より2.0mm程度後方に配置されている(図6(a)参照)。
【0047】
入射口31bは、半導体発光素子33aよりひとまわり大きな寸法に設定されている(例えば、左右幅:1mm、上下幅:1.5mmの矩形)。
【0048】
筒部31(反射面31a)は、筒部31内に入射した半導体発光素子33aからの光(光軸AXに対し広角方向の光Ray2)が一回反射で出射口31c(31c〜31c)から出射するように、出射口31c(31c〜31c)から入射口31bに向かうにつれ略錐体状に狭まる形状に構成されている(図6(a)、図6(c)参照)。この筒部31(反射面31a)の作用により、光軸AXに対し狭角方向の光Ray1だけでなく、光軸AXに対し広角方向の光Ray2をも投影レンズ20に入射させることが可能となる(光利用効率の向上。図8(a)〜図9(b)参照)。
【0049】
なお、筒部31は、出射口31c(31c〜31c)から入射口31bに向かうにつれ略錐体状に狭まる形状に構成され、かつ、互いに隣接する出射口(例えば出射口31cと出射口31c)が同一の縦エッジE(その幅をほとんど無視することができる縦エッジ。略鉛直方向に延びている)を含んで構成されるとともに当該同一の縦エッジEで仕切られていれば、その具体的な形状や拡がり度合等は限定されない。
【0050】
上記構成の導光部材32は、入射口31bを半導体発光素子33aの前方に位置させるとともに第1レンズ21のレンズ面S1と導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)とを略一致させた状態で(図3参照)、第1レンズ21とともに放熱部材40の前面にネジN2でネジ止め固定されている(図2参照)。
【0051】
本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、半導体発光素子33aからの光は、入射口31bから筒部31内に入射し、筒部31の内周面に形成された反射面31aで反射されて(又は反射面31aで反射されることなく)、出射口31c(31c〜31c)から出射し、出射口31c(31c〜31c)に照度分布を形成する。
【0052】
図10(a)は、出射口31c(31c〜31c)に形成される照度分布の例、図10(b)は出射口31c(31c〜31c)の水平線H(図10(a)中の各半導体発光素子33を通る水平線H)上の照度分布を示すグラフである。
【0053】
図10(a)、図10(b)を参照すると、出射口31c(31c〜31c)に形成される照度分布は、均一ではなく、照度ムラが発生していることが分かる。これは、投影レンズ20の後方側焦点から出射口31c〜31cまでの距離が出射口31cごとに相違すること、出射口31c〜31c間にエッジEが存在すること、半導体発光素子33a自体に輝度ムラが存在すること、等が原因である。
【0054】
本実施形態では、出射口31c(31c〜31c)から出射して、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)を照射する光は、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状の作用で散乱し、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に均一化された照度分布を形成する。
【0055】
図10(c)は、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成される照度分布を示すグラフである。
【0056】
図10(c)を参照すると、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成される照度分布は、出射口31c(31c〜31c)に形成される照度分布と比べ、均一化されていることが分かる。
【0057】
上記のように投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に形成された均一化された照度分布は、投影レンズ20を介して前方へ拡大反転投影される。これは、投影レンズ20の後側焦点面と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とが、略一致しているためである。
【0058】
以上のように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、出射口31c(31c〜31c)に形成される照度ムラのある照度分布が投影されるのではなく、投影レンズ20の後側焦点面と略一致した投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)に施されたシボ加工等の微細な凹凸形状の作用で当該投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上に均一化された照度分布が形成されて、この均一化された照度分布が投影レンズ20を介して前方へ拡大反転投影されることとなるため、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、均一化された照度分布の所定配光パターン(水平方向に隣接配置され個別に光度が増減される複数の照射領域)を形成することが可能となる。
【0059】
なお、他のレンズ面(好ましくは前方側最終面、すなわち、レンズ面S2)にも、光源ユニット30が照射する光を散乱させるための処理を施すことで、所定配光パターン(水平方向に隣接配置され個別に光度が増減される複数の照射領域)の照度ムラをさらに低減させることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、投影レンズ20が二枚のレンズ21、22で構成されているため、投影レンズ20が単レンズで構成されている場合と比べ、色収差によるカラーフリンジを抑えることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、出射口31c(31c〜31c)が第1レンズ21(レンズ面S1)で塞がれているため(図3参照)、出射口31c(31c〜31c)に塵や埃が進入するのを防止することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、半導体発光素子33aからの光(出射口31c〜31cに形成された照度分布)は第1レンズ21の作用で光軸AX寄りに集光されるため、半導体発光素子33aからの光を第2レンズ22に効率よく入射させて、前方に照射することが可能となる。すなわち、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、光利用効率の高い車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0063】
次に、変形例について説明する。
【0064】
上記実施形態では、投影レンズ20を用いてダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の車両用灯具ユニット10を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の投影レンズ20を用いてプロジェクタ型の車両用灯具ユニットを構成してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、走行ビーム用配光パターンを形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)と導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)との間にシェードを配置して水平線より上に向かう光を遮光することで、上端縁にカットオフラインを含むすれ違いビーム用配光パターンを形成することが可能となる。
【0066】
上記実施形態でレンズ面S1に形成される微細な凹凸形状(シボ印刷、散乱層も同様)の密度は、均一であってもよいし、場所ごとに変えてもよい。
【0067】
例えば、光軸AX上の出射口31cに形成される照度分布と光軸AXから離れた出射口(例えば、出射口31c)に形成される照度分布とを比較すると、両者は同一ではなく、光軸AXから離れた出射口(例えば、出射口31c)の方が照度ムラを生じやすい。これは、投影レンズ20の後方側焦点から出射口31c(31c〜31c)までの距離が出射口ごとに相違すること、出射口31c(31c〜31c)の開口サイズが出射口ごとに相違すること、等が原因である。
【0068】
この場合、光軸AXから離れた出射口(例えば、出射口31c)前方のレンズ面S1には、光軸AX上の出射口31c前方のレンズ面S1より高密度で微細な凹凸形状を形成するのが望ましい。
【0069】
本変形例によれば、場所ごとに密度を変えた微細な凹凸形状の作用により、投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)上により均一な照度分布を形成することが可能となる。
【0070】
また、上記実施形態では、投影レンズ20の後側焦点面と略一致した光学面が第1レンズ21のレンズ面S1である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、投影レンズ20の後側焦点面と略一致した光学面は、光源ユニット30が照射する光を透過させる光学面であって、光源ユニット30が照射する光を散乱させるための処理(例えば、シボ加工等の微細な凹凸形状)が施された光学面であればよく、例えば、投影レンズ20の後側焦点面と略一致した拡散シート(図示せず)であってもよい。
【0071】
本変形例によれば、投影レンズ20の後側焦点面と略一致した拡散シートの作用で当該拡散シート上に均一化された照度分布が形成されて、この均一化された照度分布が投影レンズ20を介して前方へ拡大反転投影されることとなるため、上記実施形態と同様、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、均一化された照度分布の所定配光パターン(水平方向に隣接配置され個別に光度が増減される複数の照射領域を含む)を形成することが可能となる。
【0072】
また、上記実施形態では、導光部材32を用いて車両用灯具ユニット10を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導光部材32を用いることなく車両用灯具ユニットを構成してもよい。
【0073】
以下、導光部材32を用いない車両用灯具ユニット10Aの例について説明する。
【0074】
図11は、導光部材32を用いない車両用灯具ユニット10Aをその光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である(第2レンズ22省略)。
【0075】
本変形例は、上記実施形態と比較すると、導光部材32を省略している点、レンズ面S1が光軸AXに略直交する平面形状のレンズ面とされている点、レンズ面S1と半導体発光素子33aの発光面とが、略一致している点、半導体発光素子33a(の発光面)が投影レンズ20の後方側焦点近傍に配置されている点が相違する以外、上記実施形態と同様である。本変形例においても、投影レンズ20の後側焦点面と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とが、略一致している。
【0076】
なお、半導体発光素子33a(の発光面)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とは密着していてもよいし、両者間には、若干の間隔があいていてもよい。すなわち、導光部材32の前面32a(出射口31c〜31c)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とは、実質的に一致していればよい。半導体発光素子33a(の発光面)と投影レンズ20の後側最終面(レンズ面S1)とを密着させる場合には、耐熱性の観点から、第1レンズ21としてガラス製のレンズを用いるのが望ましい。なお、シボ加工等の微細な凹凸形状は、レンズ面S1のうち少なくとも半導体発光素子33aからの光が照射される領域に形成されていればよく、当該領域に部分的に形成されていてもよいし、レンズ面S1全域に渡って形成されていてもよい。
【0077】
本変形例の車両用灯具ユニット10Aによっても、上記実施形態の車両用灯具ユニット10と同様の効果を奏することが可能となる。
【0078】
また、上記実施形態では、第1レンズ21として屈折レンズを用いて車両用灯具ユニット10を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1レンズ21として回折レンズを用いて車両用灯具ユニットを構成してもよい。
【0079】
以下、第1レンズ21として回折レンズを用いた車両用灯具ユニット10Bについて説明する。
【0080】
本変形例の車両用灯具ユニット10Bは、第1レンズ21として回折レンズを用いている点以外、上記実施形態と同様である。
【0081】
屈折レンズである第2レンズ22では短波長の光はよく曲がり、長波長の光は曲がりにくいが、回折レンズである第1レンズ21では逆に長波長の光のほうがよく曲がるという特性を持っている。本変形例ではこの特性に基づき、第1レンズ21と第2レンズ22とを組み合わせて色収差を補正する。回折格子は、第1レンズ21のレンズ面S2に設けられている。なお、第1レンズ21に対して色収差を低減するための回折格子を設ける手法については、例えば、国際公開番号WO2009/028686に記載の手法と同様の手法を用いることが可能である。
【0082】
本変形例の車両用灯具ユニット10Bによっても、上記実施形態の車両用灯具ユニット10と同様の効果を奏することが可能となる。
【0083】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…車両用灯具ユニット、20…投影レンズ、21…第1レンズ、22…第2レンズ、30…光源ユニット、31…筒部、31a…反射面、31b…入射口、31c(31c〜31c)…出射口、32…導光部材、32a…前面、32b…後面、33…基板、33a…半導体発光素子、40…放熱部材、50…レンズホルダー、E…エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、
これに照射される光を透過させる光学面と、
前記投影レンズの後側焦点面より後方側に配置され、前記光学面を照射する光源と、
を備えており、
前記投影レンズの後側焦点面と前記光学面とは、略一致しており、
前記光学面には、前記光源が照射する光を散乱させるための処理が施されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項2】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された複数のレンズを含む投影レンズと、
前記投影レンズの後側焦点面より後方側に配置され、前記投影レンズの後側最終面を照射する光源と、
を備えており、
前記投影レンズの後側焦点面と前記投影レンズの後側最終面とは、略一致しており、
前記投影レンズの後側最終面には、前記光源が照射する光を散乱させるための処理が施されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項3】
前記光源は、前記光軸上に配置された前面及び後面、前記前面に形成された出射口と前記後面に形成された入射口とを連通する筒部、並びに、前記筒部の内周面に形成された反射面を含む導光部材と、前記入射口から前記筒部内に入射し前記反射面で反射されて前記出射口から出射する光を発光する発光素子と、を備えており、
前記前面と前記投影レンズの後側最終面とは、略一致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項4】
前記光源が照射する光を散乱させるための処理は、微細な凹凸形状を施す処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−73811(P2013−73811A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212496(P2011−212496)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】