説明

車両用照明システム

【課題】本発明は、車両用照明システムに係り、車両前方に存在する歩行者への光の照射を必要十分な期間に限定することにある。
【解決手段】車両前方に存在する歩行者を検知する歩行者検知手段と、歩行者検知手段により歩行者が検知された場合に該歩行者に向けて光を照射する照射手段と、歩行者検知手段により歩行者が検知された後に車両運転者が該歩行者を認知したか否かを判別する認知判別手段と、を備え、照射手段は、歩行者検知手段により検知された歩行者への光の照射を、認知判別手段により車両運転者が該歩行者を認知したと判別されるまで継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明システムに係り、特に、車両に搭載され、車両前方に存在する歩行者に向けて光を照射する車両用照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方に存在する歩行者が検知された場合にその歩行者に向けて光を照射する車両用照明システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる車両用照明システムは、車両前方に存在する歩行者を検知する検知手段と、その検知手段により検知された歩行者に向けて光を照射する照射手段と、を備えている。この車両用照明システムにおいて、検知手段により歩行者が検知されると、照射手段によりその歩行者に向けて光が照射される。このため、車両側が検知している歩行者を運転者自身が認知していなくても、照射手段による歩行者への光の照射により、運転者にその歩行者の存在を知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−044359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1記載の車両用照明システムでは、照射手段による歩行者への光の照射が、各歩行者の位置に対して所定の順番に従って行われる。このため、ある歩行者への光の照射後、運転者がその歩行者を実際に認知した後でも、その歩行者への光の照射が継続する事態が起こり得るので、その歩行者に光の照射による不要な眩惑が継続し得る。また逆に、ある歩行者への光の照射後、運転者がその歩行者を実際には認知していないにもかかわらず、その歩行者への光の照射が終了する事態が起こり得るので、歩行者が自身を運転者が認知しているのかどうかを判断することができず、歩行者が歩行するうえで自身に向かってくる車両に対して不安感・不信感を払拭することができない。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車両前方に存在する歩行者への光の照射を必要十分な期間に限定することが可能な車両用照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、車両前方に存在する歩行者を検知する歩行者検知手段と、前記歩行者検知手段により前記歩行者が検知された場合に該歩行者に向けて光を照射する照射手段と、前記歩行者検知手段により前記歩行者が検知された後に車両運転者が該歩行者を認知したか否かを判別する認知判別手段と、を備え、前記照射手段は、前記歩行者検知手段により検知された前記歩行者への光の照射を、前記認知判別手段により車両運転者が該歩行者を認知したと判別されるまで継続する車両用照明システムにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両前方に存在する歩行者への光の照射を必要十分な期間に限定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例である車両用照明システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例である車両用照明システムにおいて実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例である車両用照明システムにおいて実現される歩行者への光の照射についての動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明に係る車両用照明システムの具体的な実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例である車両用照明システム10の構成図を示す。本実施例の車両用照明システム10は、運転者により運転操作される車両に搭載されており、車両前方に存在する歩行者に向けて光を照射する装置である。図1に示す如く、車両用照明システム10は、歩行者検出装置12と、照射装置14と、運転者視線検出装置16と、を備えている。
【0011】
歩行者検出装置12は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、歩行者検出ECUと称す)20を備えている。歩行者検出ECU20には、赤外線カメラ22が電気的に接続されている。赤外線カメラ22は、車体前部のグリルやバンパ或いは車内ミラーの裏側などに配設されている。赤外線カメラ22は、車両前方の所定領域(主に、自車両の走路上の、例えば車両前方200メートルまでの領域)に向けて赤外光を発することが可能であり、かかる所定領域内における撮像画像を取得することが可能である。
【0012】
赤外線カメラ22に取得された撮像画像のデータは、歩行者検出ECU20へ供給される。歩行者検出ECU20は、赤外線カメラ22から供給される撮像画像のデータを処理することにより、車両前方の所定領域内に存在する歩行者の有無を監視し、更に、その歩行者が検出された場合にはその歩行者の自車両に対する角度方向及び距離(すなわち、位置)を特定する。
【0013】
照射装置14は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、照射ECUと称す)24を備えている。照射ECU24には、照射ライト26が電気的に接続されている。照射ライト26は、車体前部のグリルやバンパなどに配設されている。照射ライト26は、夜間やトンネル走行時などに車両前方に向けて可視領域の光を照射・点灯する車両前部の前照灯(ヘッドライトやフォグランプなど)である。
【0014】
照射ライト26は、上記した赤外線カメラ22による監視範囲である車両前方の所定領域内において、光の照射位置(照射範囲)を変更可能である。例えば、照射ライト26は、光軸自体を車体に対して水平方向及び上下方向の双方に移動可能であり、或いは、光源全体からの光の透過・遮断状態を遮蔽板などの開閉等により変化させる配光制御により車両前方の所定領域内において光の照射領域と非照射領域とを任意に生成することが可能であり、また、照射ライト26がLEDライトである場合には、照射ライト26を構成する個々のLEDの点灯/非点灯を変化させることで車両前方の所定領域内において光の照射領域と非照射領域とを任意に生成することが可能である。照射ライト26は、照射ECU24からの指令に従って、車両前方の所定領域内において光の照射位置を変更し、車両前方の所定領域内の一部に対して光を照射する。
【0015】
また、運転者視線検出装置16は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、視線検出ECUと称す)30を備えている。視線検出ECU30には、視線監視カメラ32が電気的に接続されている。視線監視カメラ32は、車室内のコンビネーションメータ内やステアリングコラムのアッパカバー上面などに配設されている。視線監視カメラ32は、車両を運転する運転者の顔に向けて指向されており、運転者の顔をほぼ正面から撮影することが可能であり、運転者の顔が映った撮像画像を取得することが可能である。
【0016】
視線監視カメラ32に取得される撮像画像のデータは、視線検出ECU30へ供給される。視線検出ECU30は、視線監視カメラ32から供給される撮像画像のデータを処理することにより、運転者の視線を監視し、車両前方で運転者の視線が到達する位置或いはその視線が向く角度方向を特定する。例えば、照射ライト26から光が照射される可能性のある車両前方の所定領域が所定数(例えば、左−中−右と遠−中−近との組み合わせである“9”)に分割され、その分割された各領域と視線監視カメラ32の撮像画像上での運転者の眼の位置とが対応付けされている場合には、運転者の視線位置又は視線角度が、分割された各領域のうち何れの領域に対応するものであるかを特定する。
【0017】
歩行者検出装置12の歩行者検出ECU20と、照射装置14の照射ECU24と、運転者視線検出装置16の視線検出ECU30と、は互いに車載LAN34を介して電気的に接続されている。歩行者検出ECU20と照射ECU24と視線検出ECU30とは、車載LAN34を介して、相互に後述の如き各種データを送信しかつ受信することが可能である。
【0018】
次に、図2及び図3を参照して、本実施例の車両用照明システム10の動作を説明する。図2は、本実施例の車両用照明システム10において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図2(A)には歩行者検出ECU20が、図2(B)には照射ECU24が、また、図2(C)には視線検出ECU30が、それぞれ実行する制御ルーチンの一例のフローチャートが示されている。更に、図3は、本実施例の車両用照明システム10において実現される照射ライト26による歩行者への光の照射についての動作を説明するための図を示す。尚、図3(A)には歩行者検出装置12により車両前方に存在する歩行者が検出された後、視線検出ECU30により特定された視線方向がその歩行者の存在方向に合致する前の状況が、また、図3(B)には視線検出ECU30により特定された視線方向がその歩行者の存在方向に合致した後の状況が、それぞれ示されている。
【0019】
本実施例の歩行者検出装置12において、歩行者検出ECU20は、自車両周囲の照度を検出するライトコントロールセンサなどを用いて車両周囲が比較的明るいことが検出される場合、又は、車両の前照灯を点灯させる前照灯スイッチがオフである場合は、赤外線カメラ22を非作動状態にして、車両前方に存在する歩行者の検知処理自体を行わない。一方、車両周囲が比較的暗いことが検出される場合、又は、前照灯スイッチがオンである場合は、赤外線カメラ22を作動状態にして、車両前方に存在する歩行者の検知処理を行う。
【0020】
歩行者検出ECU20は、赤外線カメラ22を作動状態にして、歩行者検知処理の実行を開始すると、以後、赤外線カメラ22から供給される撮像画像のデータを処理することにより、車両前方の所定領域内に存在する歩行者の有無を監視する(ステップ100)。その監視の結果、車両前方の所定領域内に歩行者が存在せず、車両前方の所定領域内に存在する歩行者が検知されない場合(ステップ102の否定判定時)は、上記ステップ100の処理を継続する。
【0021】
一方、歩行者検出ECU20は、上記の監視の結果、車両前方の所定領域内に歩行者が存在して、その歩行者が検知された場合(ステップ102の肯定判定時)は、その検知された歩行者の自車両に対する角度方向及び距離(すなわち、位置)を特定する。そしてその後、その特定した歩行者の自車両に対する位置及びその位置周辺を照射ライト26から光を照射すべき照射範囲として設定し、照射指令及びその照射範囲の情報が照射装置14の照射ECU24に通知されるように車載LAN34に対してデータ送信を行う(ステップ104)。
【0022】
歩行者検出ECU20は、また、上記の如く検知された歩行者の自車両に対する位置を特定した後、運転者視線検出装置16に運転者の視線を監視させるべく、視線監視指令が視線検出ECU30に通知されるように車載LAN34に対してデータ送信を行う(ステップ106)と共に、歩行者の自車両に対する位置の情報が視線検出ECU30に通知されるように車載LAN34に対してデータ送信を行う(ステップ108)。
【0023】
また、照射装置14において、照射ECU24は、歩行者検出ECU20から車載LAN34を介して送信される照射指令及び照射範囲の情報を受信する(ステップ200)。照射ECU24は、かかる照射指令及び照射範囲の情報を受信すると、その照射範囲に合わせて光軸などを移動させて光を照射するように照射ライト26に対して駆動指令を行う(ステップ202)。照射ライト26は、照射ECU24からの駆動指令に従って特定の照射範囲に向けて光の照射を実施する。
【0024】
かかる処理によれば、夜間走行時やトンネル走行時などの暗所において、車両前方の所定領域内に歩行者が存在する場合に、照射ライト26からその歩行者に向けて光を照射することができる。このため、暗所において照射ライト26からの光の照射により、運転者に対して車両前方の所定領域内の何れかの位置に歩行者が存在することを注意喚起することができる。
【0025】
また、車両の照射ライト26により歩行者に向けて可視領域の光の照射が行われると、その歩行者は、その歩行者自身が車両の走路上に位置すること(特に車両前方の所定領域内に存在すること)、及び、その歩行者自身を車両側が検知したことを知ることができる。従って、本実施例によれば、照射ライト26による歩行者への光の照射により、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に、車両の歩行者検出装置12がその歩行者を検知したことを伝達することが可能である。
【0026】
また、運転者視線検出装置16において、視線検出ECU30は、歩行者検出ECU20から車載LAN34を介して送信される視線監視指令を受信すると、運転者の顔が映った撮像画像を取得するように視線監視カメラ32に対して駆動指令を行う(ステップ300)。視線監視カメラ32は、視線検出ECU30からの駆動指令に従って運転者の顔を撮影してその撮像画像を取得し、その撮像画像のデータを視線検出ECU30へ供給する。視線検出ECU30は、視線監視カメラ32から供給される撮像画像のデータを処理することにより、運転者の視線を監視して、車両前方で運転者の視線が到達する位置(視線位置)或いはその視線が向く角度方向(視線方向)を特定する。
【0027】
視線検出ECU30は、また、歩行者検出ECU20から車載LAN34を介して送信される歩行者の自車両に対する位置の情報を受信する(ステップ302)。視線検出ECU30は、上記の如く運転者の視線位置又は視線方向を特定すると共に歩行者の位置情報を受信すると、その運転者の視線位置又は視線方向がその歩行者の自車両に対する位置又は方向に合致するか否かを判別する(ステップ304)。
【0028】
その判別の結果、運転者の視線位置又は視線方向が歩行者の位置又は方向に合致していない場合には、その運転者が、照射ライト26により光が照射されている歩行者を未だ認知していないと判断することができるので、その運転者の視線監視を継続する。尚、運転者の視線監視を継続する時間が長時間に亘る場合は、歩行者の自車両に対する位置が変化する可能性があるので、歩行者検出装置10による歩行者の位置又は方向検出は常時又は所定時間ごとに連続して行われることが好ましく、上記のステップ304での判別に用いる歩行者の自車両に対する位置又は方向の情報は常時又は所定時間ごとに更新されることが好ましい。
【0029】
一方、運転者の視線位置又は視線方向が歩行者の位置又は方向に合致している場合には、その運転者が、照射ライト26により光が照射されている歩行者を認知したと判断することができるので、次に、照射ライト26による光の照射停止指令(すなわち、消灯指令)の情報が照射装置14の照射ECU24に通知されるように車載LAN34に対してデータ送信を行う(ステップ306)。
【0030】
照射装置14において、照射ECU24は、上記の如くステップ202において照射ライト26に対して駆動指令を開始した後、その照射ライト26による光の照射を継続しつつ、視線検出ECU30からその照射ライト26による光の照射を停止すべき照射停止指令が送信されてくるのを待機する(ステップ204)。そして、かかる待機状態で、視線検出ECU30から車載LAN34を介して送信される照射停止指令を受信するか否かを判別する(ステップ206)。
【0031】
その判別の結果、視線検出ECU30から車載LAN34を介して送信される照射停止指令を受信しない場合は、運転者が、照射ライト26により光が照射されている歩行者を未だ認知しておらず、その照射を継続すべき状況にあると判断することができるので、照射ライト26による光の照射を継続する。尚、照射ライト26による光の照射を継続する時間が長時間に亘る場合は、歩行者の自車両に対する位置が変化する可能性があるので、歩行者検出装置10による歩行者の位置又は方向検出は常時又は所定時間ごとに連続して行われることが好ましく、照射ライト26による光の照射を行う照射範囲は常時又は所定時間ごとに更新されることが好ましい。
【0032】
一方、視線検出ECU30から車載LAN34を介して送信される照射停止指令を受信する場合は、運転者が、照射ライト26により光が照射されている歩行者を認知し、その照射を停止してもよい状況にあると判断することができるので、次に、照射ライト26による歩行者への光の照射を停止して照射ライト26を消灯する(ステップ208)。尚、この照射ライト26による光の照射停止及び照射ライト26の消灯は、歩行者への光の照射を停止させるものであって、前照灯スイッチのオンによる車両前照灯としての通常の車両前方への光の照射を継続させるものであってもよい。
【0033】
かかる処理によれば、車両前方に存在する歩行者に向けて照射ライト26から光の照射を開始した後、運転者の視線がその歩行者に向けられた場合に、その照射ライト26から歩行者への光の照射を停止することができる。すなわち、本実施例においては、車両側の歩行者検出装置12により車両前方の所定領域内に歩行者が存在することが検知された場合に、照射ライト26からその歩行者への光の照射を実施すると共に、その後、運転者視線検出装置16により運転者がその歩行者を目視により認知したことが検知された場合に、その照射ライト26から歩行者への光の照射を停止することができる。
【0034】
車両の照射ライト26による歩行者への光の照射が停止されると、その歩行者は、その歩行者自身をその車両の運転者が目視で認知したことを知ることができる。従って、本実施例によれば、照射ライト26による歩行者への光の照射停止により、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に、車両の運転者がその歩行者を目視により認知したことを伝達することが可能である。
【0035】
このため、本実施例によれば、照射ライト26による光の点灯/消灯により、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に対して、車両の歩行者検出装置12自体がその歩行者を検知しているか否かを知らせることができ、かつ、歩行者検出装置12がその歩行者を検知しているときには更にその車両の運転者がその歩行者を目視で認知しているか否かを知らせることができるので、運転者が実際に歩行者を認知しているか否かについての歩行者の不安を軽減することが可能である。
【0036】
また、本実施例においては、運転者が歩行者を目視で認知すれば、照射ライト26による歩行者への光の照射が停止されるので、照射ライト26による歩行者への光の照射が不要に長時間に亘って継続するのを防止することができ、その結果として、照射ライト26による光の照射継続に起因した歩行者に対する不要な眩惑を抑止することができると共に、照射ライト26による光の照射に伴う消費電力を削減することができる。
【0037】
このように、本実施例の車両用照明システム10によれば、車両前方の所定領域内に存在する歩行者への照射ライト26による光の照射を必要十分な期間に限定することが可能である。
【0038】
尚、上記の実施例においては、歩行者検出ECU20が、赤外線カメラ22から供給される撮像画像のデータを処理することにより車両前方の所定領域内に存在する歩行者を検知することが特許請求の範囲に記載した「歩行者検知手段」に、照射ECU24が図2に示すルーチン中ステップ202の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「照射手段」に、視線検出ECU30がステップ304の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「認知判別手段」に、視線検出ECU30が、視線監視カメラ32から供給される撮像画像のデータを処理することにより、運転者の視線を監視し、車両前方で運転者の視線が到達する位置或いはその視線が向く角度方向を特定することが特許請求の範囲に記載した「視線検出手段」に、それぞれ相当している。
【0039】
ところで、上記の実施例においては、車両前方の所定領域内に存在する歩行者を検知するのに、赤外線カメラ22を用いることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、レーダを用いることとしてもよい。
【0040】
また、上記の実施例においては、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に光を照射する照射ライト26として、車両の前照灯を兼用することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両の前照灯とは別に設けられた、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に向けて可視領域のスポットライト光を照射する歩行者照射専用のライトを用いることとしてもよい。
【0041】
かかる変形例において、車両前方の所定領域内に存在する歩行者に向けて光を照射する照射ライト26は、車両の前照灯とは別に設けられた歩行者照射専用ライトであるため、照射ライト26により歩行者に向けてスポットライト光の照射が行われると、運転者は、歩行者が存在する方向や位置へ速やかに視線を移動させることができる。従って、本変形例によれば、車両の前照灯の点灯により運転者の前方視界を通常どおり確保しつつ、照射ライト26による歩行者へのスポットライト光の照射により歩行者を認知するための運転者の視線移動量を少なくすることが可能であるので、運転者に対して車両前方の所定領域内に存在する歩行者を認知させ易くすることができる。
【0042】
また、上記の実施例においては、車両前方に存在する歩行者に向けて照射ライト26から光の照射を開始した後、運転者の視線がその歩行者に向けられた場合に、その照射ライト26から歩行者への光の照射を停止することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、運転者の視線が歩行者に向けられる前と後とで、照射ライト26から歩行者へ照射する光の色相を異ならせること、又は、その照射ライト26から歩行者へ照射する光の輝度を異ならせることとしてもよい。具体的には、照射ライト26から歩行者へ照射する光の色相を、運転者の視線が歩行者に向けられる前は赤色としかつ運転者の視線が歩行者に向けられた後は緑色としてもよく、また、照射ライト26から歩行者へ照射する光の輝度を、運転者の視線が歩行者に向けられた後はその前に比べて低くすることとしてもよい。
【0043】
また、上記の実施例においては、車両前方に存在する歩行者に向けて照射ライト26から光の照射を開始した後、運転者の視線がその歩行者に向けられない場合、その運転者の視線監視を継続するが、更に、その運転者に対して車内で音声案内や警報音の発生,運転席やステアリングホイールの振動などにより、車両前方に歩行者が存在することの注意喚起を実施することとしてもよい。かかる変形例によれば、運転者への車両前方に歩行者が存在することの注意喚起を的確にかつ確実に行うことができるので、車両の安全走行を確保することが可能である。
【0044】
更に、車両前方に存在する歩行者に向けて照射ライト26から光の照射を開始した後、運転者の視線がその歩行者に向けられない場合、その歩行者に向けて光の照射を継続するが、更に、その歩行者に対して車外ホーンの吹鳴などにより、運転者がその歩行者を目視で認知していないことの注意喚起を実施することとしてもよい。かかる変形例によれば、運転者が歩行者を認知していない状況の歩行者への伝達を的確にかつ確実に行うことができるので、運転者が歩行者を認知していない状況で歩行者の危険回避を促すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用照明システム
12 歩行者検出装置
14 照射装置
16 運転者視線検出装置
20 歩行者検出ECU
22 赤外線カメラ
24 照射ECU
26 照射ライト
30 視線検出ECU
32 視線監視カメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に存在する歩行者を検知する歩行者検知手段と、
前記歩行者検知手段により前記歩行者が検知された場合に該歩行者に向けて光を照射する照射手段と、
前記歩行者検知手段により前記歩行者が検知された後に車両運転者が該歩行者を認知したか否かを判別する認知判別手段と、を備え、
前記照射手段は、前記歩行者検知手段により検知された前記歩行者への光の照射を、前記認知判別手段により車両運転者が該歩行者を認知したと判別されるまで継続することを特徴とする車両用照明システム。
【請求項2】
前記照射手段は、前記認知判別手段により車両運転者が前記歩行者を認知したと判別された後は、該歩行者への光の照射を停止することを特徴とする請求項1記載の車両用照明システム。
【請求項3】
前記照射手段は、前記認知判別手段により車両運転者が前記歩行者を認知したと判別された後は、該歩行者へ照射する光の色相又は輝度を、前記認知判別手段により車両運転者が前記歩行者を認知したと判別される前と比べて異ならせることを特徴とする請求項1記載の車両用照明システム。
【請求項4】
車両運転者の視線位置又は視線方向を検出する視線検出手段を備え、
前記認知判別手段は、前記視線検出手段により検出された前記視線位置又は前記視線方向が、前記歩行者検知手段により検知された前記歩行者の存在位置又は存在方向に合致する場合に、車両運転者が前記歩行者を認知したと判別することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の車両用照明システム。
【請求項5】
前記歩行者検知手段は、車両周囲が比較的暗い場合又は車両の前照灯スイッチがオンである場合に前記歩行者を検知し、車両周囲が比較的明るい場合又は車両の前照灯スイッチがオフである場合に前記歩行者の検知を行わないことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の車両用照明システム。
【請求項6】
前記照射手段による光の照射は、車両の前照灯を用いて行われることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の車両用照明システム。
【請求項7】
前記照射手段による光の照射は、車両の前照灯とは別に設けられる歩行者照射専用ライトを用いて行われることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の車両用照明システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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