説明

車両用照明装置

【課題】反対方向に付勢された光学可動板をモータによって移動させ、モータに供給する保持電流によって該光学可動板を定位置に保持させるものにあって、たとえ車両の電源環境が変動しても、前記保持電流の低下を防止できる車両用照明装置を提供する。
【解決手段】光源と、この光源の光路内の第1位置および光路外の第2位置の間を可動し得る光学可動板と、この光学可動板を第1位置側へ付勢させる付勢手段と、前記光学可動板を第1位置から第2位置へ移動させるモータと、電源に接続され前記モータを駆動させる駆動回路とを備える。駆動回路は、この駆動回路への電源投入時から所定時間、モータに起動電流を流す起動タイマ回路と、モータの駆動時に、付勢手段の付勢力に抗した第2位置への保持のための保持電流を流すとともに、駆動回路に印加される入力電圧の低下の検出によって保持電流の電流値を増大させる低入力時出力増大回路を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に係り、特に、光源の光路内に配置される可動型のたとえば遮光板等を備える車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に備えられるたとえばヘッドライトには、たとえば下記特許文献1に示すように、光源の光路内に配置される可動型の遮光板を備えるものが知られている。
【0003】
この遮光板は、光源から出射される光の一部を遮って配置される第1位置と光りを遮ることなく配置される第2位置との間を可動できるようになっている。遮光板が、第1位置に配置される際は対向車両の運転手を眩惑させないようにいわゆるロービームの状態とすることができ、第2位置に配置される際はいわゆるハイビームの状態とすることができる。
【0004】
遮光板は、第1位置から第2位置への移動は、モータの駆動によってなされるようになっている。また、遮光板は、ハウジングとの間に伸縮バネが取り付けられ、遮光板のモータによる第1位置から第2位置への移動は、前記伸縮バネの付勢力に抗してなされるようになっている。伸縮バネは、たとえばモータが故障した際に、遮光板を安全な位置(対向車両の運転手を眩惑させない第1位置)に自動的に復帰できるようにするために備えられている。このことから、遮光板を第2位置に維持させる間は、モータには保持電流を流すように構成されている。
【0005】
なお、上述した説明では、遮光板が備えられた車両照明装置について示した。しかし、遮光板に替えて赤外線フィルタ等が備えられた車両照明装置も知られており、この赤外線フィルタ等も上述した遮光板と同様な動作がなされるようになっている。このため、この明細書において、遮光板あるいは赤外線フィルタ等のような機能を有するものを光学可動板と称する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−342615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した車両用照明装置は、モータに印加される電圧がたとえば9V〜16Vの通常範囲である場合には、安定した電流がモータに供給され、光学可動板は正常に駆動するようになっている。
【0008】
しかし、たとえば車両の電源環境が変動してしまい、たとえ短時間であってもモータに印加される電圧が9V以下となった場合、モータに流している保持電流が低下し、遮光板は伸縮バネによって保持電流の低下分だけ第1位置の側へ移動してしまう懸念を有する構成となっている。
【0009】
この場合、ドライバが、たとえばスイッチ操作によって、ハイビームの状態を一旦解除し、再度ハイビームの状態に切替えない限り、遮光板は、第2位置と第1位置の間の中途半端な位置を維持し続けてしまうという不都合を有する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、反対方向に付勢された光学可動板をモータによって移動させ、モータに供給する保持電流によって該光学可動板を定位置に保持させるものにあって、たとえ車両の電源環境が変動しても、前記保持電流の低下を防止できる車両用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、駆動回路に印加される入力電圧の低下の検出によって保持電流の電流値を増大させる低入力時出力増大回路を設けることによって、上記目的を達せんとするようにしたものである。
【0012】
本発明の車両用照明装置は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用照明装置は、光源と、この光源の光路内の第1位置および前記光路外の第2位置の間を可動し得る光学可動板と、この光学可動板を第1位置側へ付勢させる付勢手段と、前記光学可動板を第1位置から第2位置へ移動させるモータと、電源に接続され前記モータを駆動させる駆動回路と、を備える車両用照明装置であって、前記駆動回路は、この駆動回路への電源投入時から所定時間、前記モータに起動電流を流す起動タイマ回路と、前記モータの駆動時に、前記付勢手段の付勢力に抗した前記第2位置への保持のための保持電流を流すとともに、前記駆動回路に印加される入力電圧の低下の検出によって前記保持電流の電流値を増大させる低入力時出力増大回路と、を備えることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明の車両用照明装置は、(1)の構成を前提とし、前記起動タイマ回路は、少なくとも、前記電源との間に前記モータと直列に接続された第1スイッチング素子と、前記電源投入時から所定時間にチャージがなされるコンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子は、前記コンデンサにチャージが完了されていない間はオンになり、チャージが完了した際にオフとなるように構成され、前記低入力時出力増大回路は、少なくとも、前記電源の間に前記モータと直列に接続されたトランジスタと、前記電源の間に接続され、入力電圧の低下によってオフする第2スイッチング素子と、この第2スイッチング素子と並列に接続されたダイオードと、を備え、前記第2スイッチング素子あるいは前記ダイオードを流れる電流は前記トランジスタのベースに供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明の車両用照明装置は、(1)の構成を前提とし、前記電源の間に少なくとも前記モータと第1抵抗との直列体が接続され、前記起動タイマ回路は、前記第1抵抗に並列接続された少なくとも第1スイッチング素子と第2抵抗の直列体と、前記電源投入時から所定時間にチャージがなされるコンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子は、前記コンデンサにチャージが完了されていない間はオンになり、チャージが完了した際にオフとなるように構成され、前記低入力時出力増大回路は、前記電源の間に接続され、入力電圧の低下によってオンする第2スイッチング素子を備え、前記第2スイッチング素子のオンは、前記コンデンサにチャージがなされた電荷を抜くとともに、前記第1スイッチング素子をオンにするように構成されていることを特徴とする。
【0015】
(4)本発明の車両用照明装置は、(2)、(3)の何れかの構成を前提とし、入力電圧の低下は、前記電源の間に接続されたツェナーダイオードのツェナー電圧以下の電圧が印加されることにより検出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用照明装置によれば、反対方向に付勢された光学可動板をモータによって移動させ、モータに供給する保持電流によって該光学可動板を定位置に保持させるものにあって、たとえ車両の電源環境が変動しても、前記保持電流の低下を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の車両照明装置に具備される駆動回路の実施態様1を示す回路図で、(b)はその機能ブロック図である。
【図2】図1に示す回路のタイムチャートである。
【図3】(a)、(b)は本発明の車両照明装置の概略を示す構成図である。
【図4】本発明の車両照明装置の実施態様1の他の変形例を示す図である。
【図5】(a)は本発明の車両照明装置に具備される駆動回路の実施態様2を示す回路図で、(b)はその機能ブロック図である。
【図6】図5に示す回路のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
〈ランプ構成〉
図3(a)は、本発明の車両用照明装置の実施態様1の概略を示した構成図である。図3において、たとえばヘッドライト1があり、このヘッドライト1のハウジング2内には光源3が内蔵されている。また、光源3は凹面をなすリフレクタ4内に配置され、光源3からの光は、直接にあるいはリフレクタ4に反射させることによって、ヘッドライト1の前方に出射できるようになっている。ヘッドライト1の前方にはハウジング2に固定されたレンズ5が配置され、光源3からの光はレンズ5を通して出射されるようになっている。
【0019】
また、光源3とレンズ5の間にはたとえば遮光板6が配置され、この遮光板6は第1位置と第2位置との間を可動できるように構成されている。第1位置にある遮光板(図中実線で示す)6は、光源3から出射される光の一部を遮って配置されるようになっている。第2位置にある遮光板(図中点線で示す)6は、光源3から出射される光を遮ることなく配置されるようになっている。遮光板6が、第1位置に配置される際は対向車両の運転手を眩惑させないようにいわゆるロービームの状態とすることができ、第2位置に配置される際はいわゆるハイビームの状態とすることができるようになっている。
【0020】
ここで、図3(b)に示すように、遮光板6を第1位置から第2位置へ移動させる際は、モータMの駆動によって行うようになっている。また、遮光板6は、ハウジング2との間に伸縮バネ7が取り付けられ、遮光板6のモータMによる第1位置から第2位置への移動は、前記伸縮バネ7の付勢力に抗してなされるようになっている。伸縮バネ7は、たとえばモータMが故障した際に、遮光板6を安全な位置(対向車両の運転手を眩惑させない第1位置)に自動的に復帰できるようにするために備えられている。
【0021】
モータMには、このモータを駆動させる駆動回路8が備えられ、この駆動回路8は、遮光板6を第1位置から第2位置へ移動させ、その後、遮光板6を伸縮バネ7の付勢力に抗して第2位置に保持するように、モータMを駆動するようになっている。
【0022】
なお、上述したように、本発明の車両用照明装置は、たとえば赤外線フィルタを前記遮光板6に替えて構成してもよい。そして、このような遮光板6、赤外線フィルタ等をこの明細書では光学可動板と称する場合がある。
【0023】
〈光学可動板の駆動回路〉
図1(a)は、前記駆動回路8の実施態様1を示す回路図である。
図1(a)において、駆動回路8は、図示しない電源に接続される端子TM1、TM2を有する。端子TM1は電源供給端子であり、端子TM2はグランド端子となっている。端子TM1、TM2の間には、順方向に配置されるダイオードD1、抵抗R1、逆方向に配置されるツェナーダイオードZD1の直列体が接続されている。このツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、後述する入力電圧の低下によって電流が流れないようになっている。抵抗R1とツェナーダイオードZD1の接続点には抵抗R2を介してPNPトランジスタQ1のベースに接続されている。PNPトランジスタQ1のエミッタはダイオードD1と抵抗R1の接続点に接続されている。また、ダイオードD1と抵抗R1の接続点とグランド端子TM2との間には、それぞれ順方向に配置されるダイオードD2、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R3の直列体が接続されている。PNPトランジスタQ1のコレクタはダイオードD2とダイオードD3の接続点に接続されている。
【0024】
また、ダイオードD1と抵抗R1の接続点とグランド端子TM2との間には、抵抗R4、PNPトランジスタQ2、逆方向に配置されたダイオードD5、順方向に配置されたツェナーダイオードZD2の直列体が接続されている。PNPトランジスタQ2は、そのベースがダイオードD4と抵抗R3の接続点に接続され、エミッタが抵抗R4に接続され、コレクタがダイオードD5に接続されている。また、ダイオードD5とツェナーダイオードZD2の直列体に並列にモータMが接続されている。ダイオードD5とツェナーダイオードZD2は電流の逆流等を防止してモータを保護するようになっている。抵抗R4には、抵抗R5とPNPトランジスタQ3の直列体が並列に接続されている。PNPトランジスタQ3は、そのエミッタが抵抗R5に接続され、コレクタが抵抗R4とPNPトランジスタQ2の接続点に接続されている。
【0025】
さらに、ダイオードD1と抵抗R1の接続点とグランド端子TM2との間には、コンデンサC、抵抗R6、抵抗R7の直列体、および抵抗R8、NPNトランジスタQ4の直接体が接続されている。NPNトランジスタQ4は、そのベースが抵抗R6と抵抗R7の接続点に接続され、コレクタが抵抗R8に接続され、エミッタがグランド端子TM2に接続されている。また、抵抗R8とNPNトランジスタQ4の接続点には抵抗R9を介してPNPトランジスタのベース電極が接続されている。
【0026】
ここで、図1(b)は、上述した駆動回路8を機能的に示したブロック図である。駆動回路8は、モータM、低入力時出力増加回路9、起動タイマ回路10を備えて構成されている。図1(b)に示すように、モータMには、電流Iaが流れる経路と、電流Iaに加算させて電流Ibが流れる経路を設けている。
電流Iaが流れる経路には、低入力時出力増加回路9によって電流Ia(必要に応じて電流Iaよりも電流値の大きな電流Ia’)が流れるように構成され、電流Ibが流れる経路は、起動タイマ回路10によって接続(オン)あるいは遮断(オフ)させるように構成されている。図1(b)に示す低入力時出力増加回路、起動タイマ回路は、それぞれ、図1(a)における点線枠A、点線枠Bに相当する回路となっている。
【0027】
〈回路の動作〉
図2(a)、(b)は図1に示した光学可動板の駆動回路8の動作を示すタイムチャートである。図2(a)は駆動回路8の端子TM1、TM2に印加される入力電圧を時間(t)とともに示し、図2(b)はモータMに流れる電流を時間(t)とともに示している。図2(a)、(b)のタイムチャートは、その時間軸(横軸)が互いに一致づけられ描画されている。
【0028】
まず、通常の状態で、電源が投入された場合、抵抗R1、ツェナーダイオードZD1に電流が流れPNPトランジスタQ1がオンする。そして、PNPトランジスタQ1、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R3に電流が流れPNPトランジスタQ2がオンする。これにより、抵抗R4、PNPトランジスタQ2、モータMに電流Iaが流れるようになる。また、この際、コンデンサCはチャージがされている途中であることから、NPNトランジスタQ4はオンとなっている。そして、抵抗R8、NPNトランジスタQ4に電流が流れPNPトランジスタQ3はオンする。これにより、抵抗R5、PNPトランジスタQ3、モータMに電流Ibが流れるようになる。これにより、電源投入時には、モータMに電流(Ia+Ib)が流れるようになり、比較的大きな起動力で光学可動板を第1位置から第2位置へ移動させるようにできる。図2(a)、(b)において、この区間をT1で示している。
【0029】
その後、コンデンサCのチャージが完了し、NPNトランジスタQ4がオフし、PNPトランジスタQ3もオフになる。これにより、いままで流れていた電流IbがPNPトランジスタQ3によって遮断され、モータには電流Iaしか流れなくなる。この電流Iaは光学可動板を第2位置に維持されるための保持電流となる。図2(a)、(b)において、この区間をT2で示している。
【0030】
ここで、駆動回路8の端子TM1、TM2における入力電圧が、たとえば車両の電源環境の変動により、ある値(図2(a)において低電圧閾値として示す)以下にまで低下した場合、ツェナーダイオードZD1にはツェナー電圧以下の電圧が印加され、電流が流れなくなる。これによりPNPトランジスタQ1はオフになり、いままでPNPトランジスタQ1に流れていた電流は、このPNPトランジスタと並列に接続されているダイオードD2を介して、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R3へと流れるようになる。これにより、PNPトランジスタQ2のベースと端子TM2の電位差が小さくなり、抵抗R4、PNPトランジスタQ2、モータMを流れる電流は、いままでの電流Iaよりも大きな電流値をもつ電流Ia’に変化するようになる。このため、入力電圧が低下した場合でも、モータMへの保持電流が低下することがない(むしろ増加する)ので、反対方向に付勢された光学可動板を定位置(第2位置)に保持させることができるようになる。図2(a)、(b)において、この区間をT3で示している。
【0031】
その後において、車両の電源環境が元に戻り、入力電圧が低電圧閾値よりも高くなった場合は、抵抗R1、ツェナーダイオードZD1に電流が流れPNPトランジスタQ1がオンする。そして、PNPトランジスタQ1、ダイオードD3、ダイオードD4、抵抗R3に電流が流れPNPトランジスタQ2がオンし、抵抗R4、PNPトランジスタQ2、モータMには元の保持電流Iaが流れるようになる。これにより、反対方向に付勢された光学可動板はいまだ定位置(第2位置)に保持されたままとすることができる。図2(a)、(b)において、この区間をT4で示している。
【0032】
このように構成された車両用照明装置によれば、反対方向に付勢された光学可遮光板6をモータMによって移動させ、モータMに供給する保持電流によって該光学可動板を定位置に保持させるものにあって、たとえ車両の電源環境が変動しても、前記保持電流の低下を防止できるようになる。
【0033】
なお、上述した実施態様では、モータMを、その電源供給用の各端子の一つがグランド端子TM2側に接続されるようにしたものである。しかし、たとえば図4に示すように、モータMを、その電源供給用の各端子の一つが電源供給端子TM1側に接続させるように構成してもよいことはもちろんである。ここで、図4は、図1(b)に対応させて描いた図である。
【0034】
(実施態様2)
〈光学可動板の駆動回路〉
図5(a)は、前記駆動回路8の実施態様2を示す回路図である。
図5(a)において、駆動回路8は、図示しない電源に接続される端子TM1、TM2を有する。端子TM1は電源供給端子であり、端子TM2はグランド端子である。端子TM1、TM2の間には、ダイオードD6、モータM、NPNトランジスタQ5、抵抗R10の直列体が接続されている。ダイオードD6とモータMの接続点とグランド端子TM2の間には、抵抗11、それぞれ順方向に配置されるダイオードD7、ダイオードD8の直列体が接続され、抵抗R11およびダイオードD7の接続点はNPNトランジスタQ5のベースに接続されている。モータMには、逆方向に配置されるダイオードD9、順方向に配置されるツェナーダイオードZD3の直列体が並列接続されている。抵抗R10には、NPNトランジスタQ6、抵抗R12の直列体が並列接続されている。NPNトランジスタQ6のエミッタは抵抗12に接続されている。
【0035】
一方、ダイオードD6とモータMの接続点とグランド端子TM2の間に、抵抗R13、抵抗R14、コンデンサCの直列体が接続されている。そして、ダイオードD6とモータMの接続点にエミッタが接続され、ベースが抵抗R13、抵抗R14の接続点に接続されたPNPトランジスタQ7があり、このPNPトランジスタQ7のコレクタは抵抗R15を介してNPNトランジスタQ6のベースに接続されるようになっている。
【0036】
さらに、ダイオードD6、モータMの接続点とグランド端子TM2の間には、逆方向に配置されるツェナーダイオードZD4、抵抗R16の直列体が接続されている。ダイオードD6とモータMの接続点とグランド端子TM2の間には、抵抗R17とNPNトランジスタQ8の直列体が接続され、NPNトランジスタQ8のベースはグランド端子TM2に接続されている。抵抗R13、抵抗R14の接続点とグランド端子TM2の間には、抵抗R18、NPNトランジスタQ9の直列体が接続され、NPNトランジスタQ9のベースは抵抗R17とNPNトランジスタQ8の接続点に接続されている。
【0037】
ここで、図5(b)は、上述した駆動回路8を機能的に示したブロック図である。図1(b)に示す駆動回路8は、モータM、低入力時出力増加回路9、起動タイマ回路10を備えて構成されている。図5(b)に示すように、駆動回路8の駆動時において、モータMには電流Iaが常時流れる経路と、必要時においてモータMに電流lbを電流Iaに加算させて流す経路を設け、この経路は、低入力時出力増加回路9あるいは起動タイマ回路10によって接続(オン)あるいは遮断(オフ)させるように構成されている。図5(b)に示す低入力時出力増加回路9、起動タイマ回路10は、それぞれ、図5(a)における点線枠9、点線枠10によって囲まれる回路に相当している。
【0038】
〈回路の動作〉
図6(a)、(b)は図5に示した駆動回路8の動作を示すタイムチャートである。図6(a)は駆動回路8の端子TM1、TM2に印加される入力電圧を時間(t)とともに示し、図6(b)はモータMに流れる電流を時間(t)とともに示している。図6(a)、(b)のタイムチャートは、その時間軸(横軸)が互いに一致づけられて描画されている。
【0039】
まず、通常の状態で、電源が投入された場合、まず、NPNトランジスタQ5がオンすることによって、モータMに電流Iaが流れるようになる。この際、コンデンサCはいまだチャージがされている途中であり、PNPトランジスタQ7、NPNトランジスタQ6はともにオンとなり、モータMに、前記電流Iaとともに電流Ibが流れるようになる。これにより、モータには電流(Ia+Ib)が流れ、比較的大きな機動力で光学可動板を第1位置から第2位置へ移動させることができる。図6(a)、(b)において、この区間をT1で示している。
【0040】
その後、コンデンサCのチャージが完了し、PNPトランジスタQ7、NPNトランジスタQ6はともにオフとなる。これにより、いままで流れていた電流IbがNPNトランジスタQ6により遮断され、モータMには電流Iaしか流れなくなる。この電流Iaは光学可動板を第2位置に維持させるための保持電流となる。図6(a)、(b)において、この区間をT2で示している。
【0041】
ここで、端子TM1、TM2における入力電圧が、たとえば車両の電源環境の変動により、ある値(図6(a)において低電圧閾値として示す)以下にまで低下した場合、ツェナーダイオードZD4にはツェナー電圧以下の電圧が印加され、電流が流れなくなる。これにより、NPNトランジスタQ8がオフ、NPNトランジスタQ9がオンとなり、いままでコンデンサCにチャージされていた電荷が抜かれるようになる。この際に、モータMには、いままでの電流Iaよりも大きな電流であって、モータMのコイルインピーダンスで決定される電流Imが流れるようになる。このため、入力電圧が低下した場合でも、モータMへの保持電流が低下することがない(むしろ増加する)ので、反対方向に付勢された光学可動板を定位置(第2位置)に保持させることができるようになる。図6(a)、(b)において、この区間をT3で示している。
【0042】
その後において、車両の電源環境が元に戻り、入力電圧が低電圧閾値よりも高くなった場合は、電源投入時と同様となる。すなわち、PNPトランジスタQ7、NPNトランジスタQ6はともにオンになり、モータには電流Iaに電流Ibが加算された電流(Ia+Ib)が流れるようになる。図6(a)、(b)において、この区間をT4で示している。
【0043】
このように構成された車両用照明装置によれば、反対方向に付勢された光学可遮光板6をモータMによって移動させ、モータMに供給する保持電流によって該光学可動板を定位置に保持させるものにあって、たとえ車両の電源環境が変動しても、前記保持電流の低下を防止できるようになる。
【0044】
なお、上述した実施態様では、モータMを、その電源供給用の各端子の一つが電源供給端子TM1側に接続されるようにしたものである。しかし、これに限定されることはなく、モータMを、その電源供給用の各端子の一つがグランド端子TM2側に接続させるように構成してもよいことはもちろんである。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1……ヘッドライト、2……ハウジング、3……光源、4……リフレクタ、5……レンズ、6……遮光板、7……伸縮バネ、8……駆動回路、9……低入力時出力回路、10……起動タイマ回路、ZD1〜ZD4……ツェナーダイオード、D1〜D9……ダイオード、R1〜R18……抵抗、Q1〜Q9……トランジスタ、C……コンデンサ、M……モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源の光路内の第1位置および前記光路外の第2位置の間を可動し得る光学可動板と、この光学可動板を第1位置側へ付勢させる付勢手段と、前記光学可動板を第1位置から第2位置へ移動させるモータと、電源に接続され前記モータを駆動させる駆動回路と、を備える車両用照明装置であって、
前記駆動回路は、この駆動回路への電源投入時から所定時間、前記モータに起動電流を流す起動タイマ回路と、
前記モータの駆動時に、前記付勢手段の付勢力に抗した前記第2位置への保持のための保持電流を流すとともに、前記駆動回路に印加される入力電圧の低下の検出によって前記保持電流の電流値を増大させる低電圧入力時出力増大回路と、を備えることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
前記起動タイマ回路は、少なくとも、前記電源との間に前記モータと直列に接続された第1スイッチング素子と、前記電源投入時から所定時間にチャージがなされるコンデンサとを備え、
前記第1スイッチング素子は、前記コンデンサにチャージが完了されていない間はオンになり、チャージが完了された際にオフとなるように構成され、
前記低電圧入力時出力増大回路は、少なくとも、前記電源の間に前記モータと直列に接続されたトランジスタと、前記電源の間に接続され、入力電圧の低下によってオフする第2スイッチング素子と、この第2スイッチング素子と並列に接続されたダイオードと、を備え、
前記第2スイッチング素子あるいは前記ダイオードを流れる電流は前記トランジスタのベースに供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記電源の間に少なくとも前記モータと第1抵抗との直列体が接続され、
前記起動タイマ回路は、前記第1抵抗に並列接続された少なくとも第1スイッチング素子と第2抵抗の直列体と、前記電源投入時から所定時間にチャージがなされるコンデンサとを備え、
前記第1スイッチング素子は、前記コンデンサにチャージが完了されていない間にはオンになり、チャージが完了された際にオフとなるように構成され、
前記低入力時出力増大回路は、前記電源の間に接続され、入力電圧の低下によってオンする第2スイッチング素子を備え、
前記第2スイッチング素子のオンは、前記コンデンサにチャージがなされた電荷を抜くとともに、前記第1スイッチング素子をオンにするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
入力電圧の低下は、前記電源の間に接続されたツェナーダイオードのツェナー電圧以下の電圧が印加されることにより検出されることを特徴とする請求項2、3の何れかに記載の車両用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116448(P2012−116448A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270920(P2010−270920)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】