説明

車両用物体認識装置

【課題】超音波センサの照射範囲内の複数方向に検出点を設定し、それらの点から正確に位置が検出された点を抽出することで、超音波センサを用いた物体形状認識の精度を向上させるとともに、これに伴うコストの低減を図る。
【解決手段】超音波センサを用いて物体の形状を認識する車両用物体認識装置1において、物体形状推定部8により、円錐状に広がる所定の照射範囲を横断した扇状の水平面の少なくとも一方側および他方側臨界線近辺の対象線のうち、超音波センサ2,3による自車両からの検出距離で、一方側および他方側対象線上それぞれに検出点を設定し、自車両の移動に伴って繰り返し設定された各検出点それぞれを繋ぎ合わせて物体上の検出点軌跡を生成し、生成された検出点軌跡それぞれに基づいて検出範囲を形成し、形成した各検出範囲の重複部分を物体の形状と認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波センサを用いて物体の形状を認識する車両用物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駐車支援システムには、より安価な構成とするために駐車空間の認識手段として超音波センサが多く用いられている。このシステムは、超音波センサを測距センサとして使用し、自車両と対象物体までの距離を測定し、その距離を自車両の移動とともに測定し続けることで物体の形状を認識する。
【0003】
距離の検出方法は、物体に超音波を照射し、その物体から帰ってくる反射波を検出し、超音波を照射してから反射波が帰ってくるまでの時間を計測する。そして、その時間と超音波の進行速度からセンサと物体との距離を算出し、その距離を自車両から物体までの距離としている。
【0004】
超音波は音波であるため、拡散することにより指向性が低く検知範囲角が大きくなるという特徴を有する。そのため、超音波センサは、通常、超音波センサの所定の照射範囲内に物体が存在する場合に、超音波センサから物体までの最短距離を自車両から物体までの距離として検出するが、物体が超音波センサの照射範囲内のどの位置に存在するのか、つまり、自車両位置を基準とした物体の方向は検出することができない。
【0005】
そこで、超音波センサを用いて照射範囲内の物体の位置を推定するにあたり、自車両を基準とした物体の方向は、略円錐形を有する超音波照射範囲の中心の方向(超音波照射方向)にあると仮定して、検出された距離に基づき物体の位置を推定することが一般的に行われている。つまり、超音波照射方向であって、検出された距離だけ自車両から離れた位置に対象物体が存在するものと推定する。
【0006】
特に、駐車空間を認識する場合は、駐車の妨げとなる障害物(物体)の形状を認識する必要があることから、上記した物体の位置(検出点)の検出を自車両の移動に伴い繰り返し行い、それらの検出点を繋ぎ合わせることで障害物の形状を推定している。
【0007】
しかし、このような方法の場合、実際には超音波照射方向に障害物がない場合であったとしても超音波センサの照射範囲内に障害物の一部でも入っていれば、当該障害物の一部からの超音波の反射波により、超音波センサから障害物までの最短距離として検出し、それを障害物の形状の一部を構成する検出点として認識してしまうため、障害物の形状が自車両進行方向と平行方向に実際よりも伸びた形状となり、障害物の形状を正確に認識できない。
【0008】
そこで、従来では、上記した検出点を自車両の移動に伴い検出し続け、それらの点を繋ぎ合わせた線に基づき物体の形状を再推定する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−34297(段落0051〜0063、図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、超音波センサにより検出した検出点を自車両の移動に伴い検出し続け、それらの点を繋ぎ合わせて対象物体の形状を推定し、その形状からさらに複雑な演算処理を施すことにより対象物体の形状を再推定しているため、演算処理負荷が高く、高価な演算装置が必要となり、その分、車両コストが高くなる。
【0011】
また、障害物が自車両に対して斜めに位置している場合、上記形状の再推定ができないという問題も生じる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、対象物体の側面形状を精度よく検出するとともに、これに伴うコストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用物体形状認識装置では、自車両周辺の円錐状に広がる所定の照射範囲内の物体から前記自車両までの距離を検出する超音波センサを有し、前記超音波センサを用いて前記物体の形状を認識する車両用物体認識装置において、前記照射範囲を横断した扇状の水平面の少なくとも一方側臨界線近辺の一方側対象線および他方側臨界線近辺の他方側対象線のうち、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記一方側対象線上および前記他方側対象線上それぞれに一方側検出点および他方側検出点を設定する設定手段と、前記自車両の移動に伴って繰り返し設定される前記一方側検出点および他方側検出点それぞれを繋ぎ合わせて前記物体上の一方側検出点軌跡および他方側検出点軌跡を生成する生成手段と、前記生成手段により生成される前記一方側検出点軌跡および前記他方側検出点軌跡それぞれに基づいて一方側検出範囲および他方側検出範囲を形成し、形成した前記一方側検出範囲および前記他方側検出範囲の重複部分を前記物体の形状と認識する認識手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
また、本発明の車両用物体認識装置は、請求項1に記載の車両用物体認識装置において、前記設定手段は、前記一方側対象線および前記他方側対象線に加えて前記扇状の水平面の中心線近辺の中心対象線のうち、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記一方側対象線上、前記他方側対象線上および前記中心対象線上それぞれに前記一方側検出点、前記他方側検出点および中心検出点を設定し、前記生成手段は、前記一方側検出点軌跡および前記他方側検出点軌跡のほか、前記自車両の移動に伴って繰り返し設定される中心検出点を繋ぎ合わせて前記物体上の中心検出点軌跡を生成し、前記認識手段は、前記一方側検出範囲および前記他方側検出範囲のほか、前記生成手段により生成される前記中心検出点軌跡に基づいて中心検出範囲を形成し、形成した前記一方側検出範囲、前記他方側検出範囲および前記中心検出範囲の重複部分を前記物体の形状と認識することを特徴とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる発明によれば、超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の少なくとも一方側対象線および他方側対象線のうち、超音波センサによる自車両からの検出距離で、一方側対象線上および他方側対象線上それぞれに一方側検出点および他方側検出点が設定される。超音波センサは、上記のように超音波センサから物体までの最短距離を検出するため、例えば、対象物体が自車両の進行方向に対して斜めに位置する場合、一方側または他方側検出点のどちらか片方が正確な対象物体の位置を示し、もう片方の検出点は実際の位置よりも自車両よりにずれた位置を示す。
【0016】
そして、自車両の移動に伴って繰り返し設定される一方側検出点および他方側検出点それぞれを繋ぎ合わせて物体上の一方側検出点軌跡および他方側検出点軌跡が生成され、これらの生成された一方側検出点軌跡および他方側検出点軌跡それぞれに基づいて一方側検出範囲および他方側検出範囲が形成される。このとき、各検出範囲を構成する検出点には、上記したように自車両よりにずれが生じた検出点を含むため、これらのずれた検出点の軌跡に基づいて形成された各検出範囲の形状は、実際の物体の形状よりも自車両進行方向と平行方向に伸びた形状となる。
【0017】
ところが、上記形成された各検出範囲の重複部分を構成する各検出点は、自車両から超音波センサまでの最短距離を示す点、つまり、対象物体の位置が正確に示された点であり、これらの集合である各検出範囲の重複部分の形状は、対象物体の車両進行方向の長さを正確に表す形状になる。
【0018】
したがって、従来のように複雑な演算を行わなくとも、単に各検出範囲の重複部分を抽出するだけで物体の形状を認識することができるので、高価な演算装置を必要とせず、低コストな構成で物体の形状を認識することができる。
【0019】
また、各検出範囲の誤差をそれぞれの検出範囲により修正することができるため、特に、車両進行方向の対象物体の長さが正確に表された形状を認識することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記した、一方側対象線および他方側対象線に加えて扇状の水平面の中心近辺の中心対象線のうち、自車両からの検出距離で、一方側対象線上、他方側対象線上および中心対象線上それぞれに一方側検出点、他方側検出点および中心検出点が設定され、自車両の移動に伴って、繰り返し設定される検出点を繋ぎ合わせてそれぞれの検出範囲が形成され、これらの検出範囲の重複部分が物体の形状として認識される。
【0021】
このとき、物体が自車両とほぼ平行に物体が位置する場合には、自車両が当該物体の横を通過するときの、超音波センサから対象物体までの最短距離を示す点は各中心検出点であり、この点が対象物体の位置を正確に示す点となる。このとき、一方側および他方側検出点はそれぞれ実際の対象物体の位置よりも自車両側にずれた位置を示す。したがって、一方側および他方側検出点軌跡のみで検出範囲を形成し、重複部分を対象物体の形状として認識した場合、車両進行方向の対象物体の長さは正確に認識できるものの、対象物体の側面から自車両までの距離にずれが生じる。
【0022】
そこで、中心線上に検出点を設定し、自車両の移動に伴って一方側検出点、他方側検出点および中心検出点それぞれを繋ぎ合わせて物体上の一方側検出軌跡、他方側検出軌跡および中心検出軌跡を生成し、それらに基づいて一方側検出範囲、他方側検出範囲および中心検出範囲を形成し、それらの検出範囲の重複部分を抽出すれば、それらを構成する検出点は、物体側面と自車両との距離が正確に検出された中心検出点を含む検出範囲となるため、さらに正確な物体側面の形状認識が可能になる。
【0023】
また、従来のように複雑な演算を行わなくとも、単に3つの検出範囲の重複部分を抽出するだけで物体の形状を認識することができるので、高価な演算装置を必要とせず、低コストな構成で物体の形状を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の車両用物体認識装置のブロック図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図1の動作説明図である。
【図5】図1の動作説明図である。
【図6】図1のマップ生成の動作説明図である。
【図7】図1の車両用物体認識装置の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。なお、図1は本発明にかかる一実施形態の車両用物体認識装置のブロック図、図2は各検出点設定の説明図、図3は各検出点軌跡の生成および検出範囲の説明図、図4は物体認識手段の説明図、図5は各検出点軌跡の生成および検出範囲の説明図、図6はマップ生成の動作説明図、図7は図1の動作説明用のフローチャートである。
【0026】
(構成)
本発明にかかる一実施形態の車両用物体形状認識装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0027】
左側面超音波センサ2および右側面超音波センサ3は、自車両10から物体までの距離を測定するためのセンサであり、自車両10の左右側面にそれぞれ設置される。これらの超音波センサ2,3は、物体に向けて超音波を照射し、当該物体からの反射波を検出して自車両10から物体までの距離を検出する。このとき、超音波は、略円錐状に照射されるため、その照射範囲が物体までの距離を検出する検出範囲となるが、地面からの反射波の影響を極力抑えるために、超音波の照射範囲は円錐を偏平させて水平方向に広がる楔形状になっている。また、距離の検出は、一定時間間隔で継続的に行われ、自車両10の移動に伴い自車両10から物体までの距離を検出し続けることで、物体の形状を推定することが可能になる。
【0028】
車速センサ4は、自車両10の速度を検出するために用いられ、舵角センサ5は、自車両10のハンドル操舵角を検出するために用いられる。
【0029】
車両移動量管理部6は、車速センサ4と舵角センサ5により検出された自車両10の車速および操舵角に関する情報に基づき自車両10の移動量(移動方向を含む)を算出し、算出した自車両10の移動量を測距データ管理部7に送る。この移動量の算出は、自車両10の移動に伴い、一定時間間隔で行われる。
【0030】
測距データ管理部7は、車両移動量管理部6から送られた自車両10の移動量データに基づいて、後述するマップ上の自車両10の位置を推定し、その位置データ(x、y座標,自車両10の向き)とその位置における左右側面超音波センサ2,3から取得した超音波センサ2,3それぞれから物体までの検出距離に関する測距データを記憶し、それらの測距データを物体形状推定部8に送る。
【0031】
物体形状推定部8は、測距データ管理部7から送られた自車両10の位置データおよびそのときの測距データに基づいて物体の形状を推定するが、その機能については、以下に説明する。
【0032】
上記したように、超音波センサ2,3は、超音波センサから物体までの最短距離を自車両から物体までの距離として検出するが、物体が超音波センサの照射範囲内のどの位置に存在するのか、つまり、自車両10の位置を基準とした物体の方向は検出することができない。そこで、図2に示すように、左側面超音波センサ2を例にとると、物体形状推定部8は、超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の一方側臨界線近辺の一方側対象線12、他方側臨界近辺の他方側対象線13および中心線近辺の中心対象線14のうち、超音波センサ2,3による自車両からの検出距離で、一方側対象線12上、他方側対象線13上および中心対象線14上それぞれに、白抜き三角印で示す一方側検出点12A、白抜き四角印で示す他方側検出点13Aおよび黒塗り丸印で示す中心検出点14Aを設定する。このような物体形状推定部8の設定機能が本発明における設定手段に相当する。
【0033】
そして、物体形状推定部8は、図2に示すように、自車両10の進行方向に対して斜めに位置する物体である障害物11がある場合は、超音波センサ2による検出距離に基づき、一方側対象線12上、他方側対象線13上および中心対象線14上に超音波センサ2から検出された距離と同じ距離となる一方側検出点12A、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aを設定する。このとき、超音波センサ2から障害物11までの最短距離は、超音波センサ2から一方側検出点12Aまでの距離であり、この距離は超音波センサ2により検出された距離と一致しており、一方側検出点12Aは障害物11の位置を正確に示す。これに対して、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aは、実際の障害物11の位置よりも自車両10側にずれた位置を示す。このように、各対象線12,13,14上に検出点12A,13A,14Aを設定することで、障害物11の位置を正確に示す検出点を抽出することができる。
【0034】
次に、物体形状推定部8は、自車両10の移動に伴って繰り返し設定した一方側検出点12A、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aそれぞれを繋ぎ合わせて物体上の一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡を生成し、これらの生成した一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡それぞれに基づいて一方側検出範囲12B、他方側検出範囲13Bおよび中心検出範囲14Bを形成する。このような物体形状推定部8の各検出点軌跡の生成機能が本発明における生成手段に相当する。
【0035】
例えば、図3に示すように、自車両10の進行方向に対して斜めに位置する障害物11が存在する場合に、物体形状推定部8は、自車両10が10aから10iの位置まで移動するのに伴い、繰り返し一方側検出点12A、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aを設定し、それぞれの検出点を繋ぎ合わせて一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡を生成し、それら各検出点軌跡を基に、自車両10の進行方向に直行し、かつ、超音波照射方向に広がりを有する面を規定することにより、一方側検出範囲12B、他方側検出範囲13Bおよび中心検出範囲14Bをそれぞれ形成する。
【0036】
ところで、自車両が10aの位置にある場合、超音波センサ2により検出された検出距離は、超音波センサ2から障害物11までの最短距離である超音波センサ2から一方側検出点12Aまでの距離と一致するため、一方側検出点12Aは障害物11の位置を正確に示すが、他方側検出点13Aと中心検出点14Aは、実際の障害物11の位置よりも自車両10側にずれた位置を示し、この傾向は自車両が10gの位置に移動するまで続く。自車両が10hの位置までくると、超音波センサ2から障害物11までの最短距離が超音波センサ2から他方側検出点13Aまでの距離となるため、今度は他方側検出点13Aが障害物11の正確な位置を示すが、一方側検出点12Aと中心検出点14Aは実際の障害物11の位置よりも自車両10側にずれた位置を示し、自車両が10iの位置にあるときも同様に、一方側検出点12Aと中心検出点14Aは、実際の障害物11の位置よりも自車両10側にずれた位置を示す。
【0037】
自車両10の移動に伴い、これらの検出点それぞれを繋ぎ合わせて生成された一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡に基づいて略矩形状の一方側検出範囲12B、他方側検出範囲13Bおよび中心検出範囲14Bが形成されるが、これらの検出範囲12B,13B,14Bを構成する検出点には、上記したように自車両10寄りにずれが生じた検出点を含むため、これらのずれた検出点の軌跡に基づいて形成された各検出範囲12B,13B,14Bの形状は、実際の物体の形状よりも自車両10の進行方向に平行方向に伸びた形状を有する。
【0038】
次に、物体形状推定部8は、各検出範囲を重ね合わせて重複部分を抽出し、その重複部分を障害物11の形状と認識する(本発明における認識手段)。つまり、図4に示すように、各検出範囲12B、13Bおよび14Bの重複部分15は、各検出範囲を構成する実際の障害物11の位置とは異なる位置を示す検出点を排除し、障害物11の正確な位置を示す検出点のみから構成される。
【0039】
また、障害物11が、図5に示すような自車両10進行方向に対してほぼ平行に位置する場合、障害物11の側面部の超音波センサ2から障害物11までの最短距離は、超音波センサ2から中心検出点14Aまでの距離であり、これらの中心検出点14Aは障害物11の位置を正確に示すが、一方側12Aおよび他方側検出点13Aは実際の位置とは異なる位置を示す。また、自車両10が障害物11の一方側である10h〜10iの位置までくると、他方側検出点13Aが超音波センサ2との最短距離となり障害物11の位置を正確に示し、自車両10が障害物11の他方側である10a〜10bに位置するときは、一方側検出点12Aが超音波センサ2との最短距離となり障害物11の位置を正確に示す。そして、各検出点それぞれを繋ぎ合わせて生成された一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡に基づき形成された各検出範囲の重複部分15が障害物11の形状として認識される。このように、自車両10の側面部における一方側検出点12Aと他方側検出点13Aを排除することにより、障害物の自車両10進行方向の長さと自車両10と障害物側面との距離が正確に検出されるため、障害物11の側面形状を正確に認識することができる。
【0040】
周辺マップ生成部9は、物体形状推定部8で推定された物体形状に基づいて自車両10周辺のマップを生成する。例えば、本実施形態の車両用物体認識装置1を用いて駐車空間を認識する場合、図6に示すように、ドライバのボタン操作などを契機に、その時の自車両10の位置を原点16として、自車両10の進行方向をY軸、これとは垂直の方向をX軸とする座標平面を設定する。
【0041】
そして、自車両10の移動に伴い超音波センサ2,3により自車両10から駐車車両17までの距離を検出し続け、それらのデータに基づいて物体形状推定部8で駐車車両17の形状を推定する。このとき、自車両10の位置は、車速センサ4と舵角センサ5から検出した自車両10の速度と操舵角に関する情報に基づき推定し、その時の超音波センサ2、3の測距データをもとに駐車車両の大きさと位置に対応する駐車車両17をマップ上に生成し、この生成を繰り返すことで駐車空間を認識する。
【0042】
次に、本実施形態の車両用物体認識装置1の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、ドライバのボタン操作などを契機として、そのときの自車両10の位置を示す原点16およびX−Y座標平面が設定される。そして、車速センサ4と舵角センサ5により検出された自車両10の速度と操舵角に関する情報をもとに車両移動量推定部6で自車両10の移動量を算出し(ステップS1)、設定された座標平面における自車両10の位置を推定する(ステップS2)とともに、超音波センサ2,3から測距データを取得する(ステップS3)。
【0044】
次に、ステップS4にて、取得した測距データが障害物(駐車車両17)を検知するものであるかどうかを判断する。測距データが障害物を示すものでない場合は、ステップS8にて形状推定が完了していない障害物があるかどうかを判断する。形状推定が完了していない場合は、それまでの測距データに基づいて障害物形状を推定し(ステップS9)、その推定した形状を周辺マップ上に追加する(ステップS10)。形状推定が完了していない障害物がない場合はステップS8をNOで通過して、ステップS6にて駐車空間があるか否かを判断する(ステップS6)。このとき、駐車空間がない場合はステップS6をNOで通過して再び障害物の検知を繰り返す。また、障害物が周辺マップに追加された結果、駐車空間が見つかった場合は、ステップS6をYESで通過し、駐車空間の存在を自車両10に設けられた液晶ディスプレイの表示画面に表示するなどしてドライバに通知して(ステップS7)物体形状認識を終了する。
【0045】
ステップS4にて、測距データが障害物を示すものである場合は、超音波センサ2または3による自車両10からの測定距離で、超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の一方側臨界線近辺の一方側対象線12、他方側対象線13および中心対象線14上それぞれに一方側検出点12A、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aを設定する(ステップS5)。このとき、障害物の存在を検知したことになるのでそれまでの自車両10の移動した距離から駐車空間があるかどうかをステップS6で判断し、駐車空間がない場合はステップS6をNOで通過し、再び駐車空間が見つかるまで障害物の形状認識を繰り返す。また、駐車空間が見つかった場合は、ステップS6をYESで通過し、駐車空間の存在を液晶ディスプレイの表示画面に表示するなどして、ドライバに通知し(ステップS7)物体形状認識を終了する。
【0046】
したがって、上記実施形態によれば、超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の一方側臨界線近辺の一方側対象線12、他方側臨界線近辺の他方側対象線13および中心近辺の中心対象線14のうち、超音波センサによる自車両10からの検出距離で、一方側対象線上、他方側対象線上および中心対象線上それぞれに一方側検出点12A、他方側検出点13Aおよび中心検出点14Aが設定され、自車両10の移動に伴って、各検出点それぞれを繋ぎ合わせて一方側検出点軌跡、他方側検出点軌跡および中心検出点軌跡が生成され、これらの生成された検出点軌跡に基づいて一方側検出範囲12B、他方側検出範囲13Bおよび中心検出範囲14Bが形成され、これらの形成された検出範囲の重複部分15が物体の形状と認識されるため、各検出範囲に実際の物体の位置より自車両10側にずれた検出点が存在する場合であっても、物体の位置を正確に検出できている他の検出点により修正されることにより、物体の側面形状を正確に認識することができる。
【0047】
また、従来のように複雑な演算を行わなくとも、単に各検出範囲の重複部分を抽出するだけで物体の形状を認識することができるので、高価な演算装置を必要とせず、低コストな構成で物体の形状を認識することができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、上記した実施形態では、検出点を、一方側、他方側および中心の3点で設定したが、一方側と他方側のみで設定してもよいし、さらに検出点を複数加えて設定しても良い。つまり、物体の自車両10の進行方向に対する長さだけを正確に認識したい場合は、一方側と他方側のみに検出点を設定するだけでよいので、形状推定にかかる演算負荷を極力抑えることができる。また、物体形状が複雑なものであれば、検出点をさらに増やすことでより正確な物体形状認識が可能になる。また、各対象線12,13,14は、それぞれ一方側臨界線、他方側臨界線、中心線と一致してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1… 車両用物体形状認識装置
2… 左側面超音波センサ
3… 右側面超音波センサ
7… 測距データ管理部
8… 物体形状推定部(設定手段、生成手段、認識手段)
12… 一方側対象線
12A… 一方側検出点
12B… 一方側検出範囲
13… 他方側対象線
13A… 他方側検出点
13B… 他方側検出範囲
14… 中心対象線
14A… 中心検出点
14B… 中心検出範囲




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の円錐状に広がる所定の照射範囲内の物体から前記自車両までの距離を検出する超音波センサを有し、前記超音波センサを用いて前記物体の形状を認識する車両用物体認識装置において、
前記照射範囲を横断した扇状の水平面の少なくとも一方側臨界線近辺の一方側対象線および他方側臨界線近辺の他方側対象線のうち、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記一方側対象線上および前記他方側対象線上それぞれに一方側検出点および他方側検出点を設定する設定手段と、
前記自車両の移動に伴って繰り返し設定される前記一方側検出点および他方側検出点それぞれを繋ぎ合わせて前記物体上の一方側検出点軌跡および他方側検出点軌跡を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成される前記一方側検出点軌跡および前記他方側検出点軌跡それぞれに基づいて一方側検出範囲および他方側検出範囲を形成し、形成した前記一方側検出範囲および前記他方側検出範囲の重複部分を前記物体の形状と認識する認識手段と
を備えたことを特徴とする車両用物体認識装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記一方側対象線および前記他方側対象線に加えて前記扇状の水平面の中心線近辺の中心対象線のうち、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記一方側対象線上、前記他方側対象線上および前記中心対象線上それぞれに前記一方側検出点、前記他方側検出点および中心検出点を設定し、
前記生成手段は、前記一方側検出点軌跡および前記他方側検出点軌跡のほか、前記自車両の移動に伴って繰り返し設定される中心検出点を繋ぎ合わせて前記物体上の中心検出点軌跡を生成し、
前記認識手段は、前記一方側検出範囲および前記他方側検出範囲のほか、前記生成手段により生成される前記中心検出点軌跡に基づいて中心検出範囲を形成し、形成した前記一方側検出範囲、前記他方側検出範囲および前記中心検出範囲の重複部分を前記物体の形状と認識する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用物体認識装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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