説明

車両用空気ダクト

【課題】 自動車等の車両の空調装置から送出される調温空気を車両室内へ吐出するために、内装部材の内側に配設される車両用空気ダクトにおいて、遮音性の著しい向上により、車両室内への騒音の漏れを防止して空調運転の低騒音化を図る。
【解決手段】 断熱性、吸音性を備えた発泡樹脂層2の内周面と外周面に気密性、剛性を備えた硬質樹脂層3、4を積層した外皮で、多層ブロー成形手段により所定の中空形状体に一体成形したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両において、室内空調のために内装部材の内側に配設される車両用空気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を始めとする車両の室内空調のための部材として、空調装置から送出される調温空気を吐出口へ導き、これを車両室内へ吐出するために、インストルメントパネル等の内装部材の内側に空気ダクトが配設される。一般に、この空気ダクトは、ポリエチレン等の樹脂素材をブロー成形し、配設路に対応した異形断面を有する所定の中空形状体に形成される。
【0003】
かかる車両用空気ダクトにおいて、その外皮が比較的薄肉に形成されるため、調温空気が流通するダクト内とダクト外との温度差で、ダクト表面に結露を生じる不具合がある。この結露の発生を防止するために、発泡ウレタン等の発泡体シートを空気ダクトの外周面に巻き付け、貼着し、所定の断熱性を備えた発泡体シートで空気ダクトを被覆する手段が取られている。しかし、車両用空気ダクトは、内装部材の内側に納められる各種の車両装備品の間を通して配設するために、その外形形状が屈曲面が連続した複雑な3次元形状となり、配設位置に応じてそれぞれ形状も異なることから、上記の発泡体シートの被覆作業は自動化が困難で手作業で行われ、その作業が極めて煩雑である。したがって、著しく作業性、生産性に劣り、結露防止機能を備えた空気ダクトの製作コストが高価である。
【0004】
これに対して、出願人は、先の出願、特願2005−18622号で、気密性、剛性を備えた硬質樹脂層と、断熱性を備えた発泡樹脂層とを積層した外皮で、所定の中空形状体に一体成形した車両用空気ダクトを提案した。これは、多層ブロー成形手段により、硬質樹脂層と発泡樹脂層とを積層した外皮で、所定の中空形状体に一体成形することで、従来の発泡体シートの被覆作業を一切不要とし、製作コストの低減を図ることを目的としたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして、硬質樹脂層と発泡樹脂層とを積層した外皮で一体成形した車両用空気ダクトは、結露防止の機能は認められるものの、ブロワーの運転音や気流の乱れによる騒音の漏れ防止が完全ではなく、遮音性に課題がある。また、多層ブロー成形手段において、高圧のブロー圧で成形する発泡樹脂層の発泡倍率の高倍率化が困難である等、製作上の課題がある。
【0006】
この発明は、こうした課題を解決することを目的とするもので、遮音性の著しい向上により、車両室内への騒音の漏れを防止して空調運転の低騒音化を図るとともに、発泡樹脂層の発泡倍率の高倍率化が可能な製作手段により、性能の向上を図った車両用空気ダクトを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明は、自動車等の車両の空調装置から送出される調温空気を車両室内へ吐出するために、内装部材の内側に配設される車両用空気ダクトにおいて、断熱性、吸音性を備えた発泡樹脂層2の内周面と外周面に気密性、剛性を備えた硬質樹脂層3、4を積層した外皮で、多層ブロー成形手段により所定の中空形状体に一体成形したことを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明の車両用空気ダクトは、真空ブロー成形手段により所定の中空形状体に一体成形するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車両用空気ダクトは、断熱性、吸音性を備えた発泡樹脂層2の内周面と外周面に気密性、剛性を備えた硬質樹脂層3、4を積層した外皮で、所定の中空形状体に一体成形するもので、音の吸音材である発泡樹脂層2の表裏を音の反射材である硬質樹脂層3、4で挟んだ3層構造で外皮が形成される。その結果、遮音性の著しい向上が図られ、空調装置のブロワーの運転音や気流の乱れによる騒音が車両室内へ漏れることが防止され、空調運転の低騒音化、無音化を実現することができる。
【0010】
また、発泡樹脂層2が所定の断熱性を備えているので、空調装置から送出される調温空気が流通するダクト内とダクト外との温度差による結露の発生を防止することができ、従来の発泡体シートの被覆作業が一切不要となり、生産性に優れ、製作コストの大幅な低減を図ることができる。
【0011】
また、真空ブロー成形手段により一体成形することで、低圧のブロー圧で発泡樹脂層2を成形して発泡倍率の高倍率化が可能となり、断熱性、吸音性の向上が図られ、製作上の課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下にこの発明の最良の実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。
図1及び2はこの発明の車両用空気ダクトの実施例で、図1に空気ダクト1の全体を示し、図2に空気ダクト1を切断した端面を示す。図1に示すように、内装部材の内側に配設される空気ダクト1は、配設路に対応した異形断面を有する所定の中空形状体に形成されている。
【0013】
この空気ダクト1は、多層ブロー成形手段により形成され、断熱性、吸音性を備えた発泡樹脂層2の内周面と外周面に気密性、剛性を備えた硬質樹脂層3、4を積層した外皮で一体成形されている。図2に示すように、空気ダクト1は、発泡樹脂層2の表裏を硬質樹脂層3、4で挟んだ3層構造で外皮が形成され、剛性に優れるとともに、音の吸音材で発泡樹脂層2の表裏を音の反射材である硬質樹脂層3、4で挟んだ遮音性に優れた多層構造となっている。
【0014】
この車両用空気ダクトは真空ブロー成形手段で成形することが好ましい。真空ブロー成形手段により低圧のブロー圧で発泡樹脂層2を成形し、発泡樹脂層2の発泡倍率の高倍率化が図られ、その断熱性、吸音性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施例で、空気ダクトの全体の斜視図。
【図2】図1中A−A線で切断した拡大端面図。
【符号の説明】
【0016】
2 発泡樹脂層
3 硬質樹脂層
4 硬質樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車両の空調装置から送出される調温空気を車両室内へ吐出するために、内装部材の内側に配設される車両用空気ダクトにおいて、
断熱性、吸音性を備えた発泡樹脂層2の内周面と外周面に気密性、剛性を備えた硬質樹脂層3、4を積層した外皮で、多層ブロー成形手段により所定の中空形状体に一体成形したことを特徴とする車両用空気ダクト。
【請求項2】
真空ブロー成形手段により所定の中空形状体に一体成形した請求項1に記載の車両用空気ダクト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−30546(P2008−30546A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204021(P2006−204021)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(505033477)エイトリー工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】