説明

車両用空気調和装置

【課題】乗員に対し、より一層快適な車室内空間を提供する。
【解決手段】車両用空気調和装置10によれば、空調ユニット34が作動しているときに、加湿ユニット14が作動して、車室内の乗員Pの顔部Fに向けて加湿空気が送風されるときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側に向けた方向、より具体的には、乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側の部位(すなわち、例えば乗員Pの腹部等)に向けた方向とされる。従って、加湿空気を空調風と干渉させることなく乗員Pの顔部Fに十分に到達させつつ、乗員Pへの空調風の送風状態を維持できる。これにより、乗員Pに対し、より一層快適な車室内空間を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置に係り、特に、車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気を送風可能な構成を備えた車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置としては、次のものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。例えば、特許文献1に記載の例では、ピラーに加湿器が設けられており、この加湿器と接続された吹出口は、運転者の眼部に向けられている。また、この例では、加湿器が作動して運転者の眼部に向けて高湿度の冷風が吹き出されているときには、車両用空調装置の吹出口モードが、フロントガラスに空調風を吹き出すDEFモードか、フロントガラスと足元とに空調風を吹き出すB/Lモードに固定されるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に記載の例では、車室内の天井部に加湿器が設けられており、この加湿器には、フレキシブル管が接続されている。また、この例では、フレキシブル管の吹出方向を乗員が任意に変化させることによって後部座席に着座した二人の乗員のうちどちらか一方の乗員の顔部に向けて加湿空気を吹出することができるようになっている。
【特許文献1】特開2004−189082号公報(図1,図2)
【特許文献2】特許平4−303016号公報(図18)
【特許文献3】特許平6−72141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、特許文献1又は特許文献2に記載の例の如く、乗員の顔部等に向けて加湿空気を送風可能な加湿手段を備える場合、乗員の顔部等に対して的確に加湿空気を送風するためには空調装置から吹出される空調風が乗員の顔部等に当たらないことが望ましい。
【0005】
また、例えば、特許文献1に記載の例では、加湿器が作動して運転者の眼部に向けて高湿度の冷風が吹き出されているときには、車両用空調装置の吹出口モードが、フロントガラスに空調風を吹き出すDEFモードか、フロントガラスと足元とに空調風を吹き出すB/Lモードに固定されるようになっている。すなわち、複数の吹出口のうちいずれかが選択されて、この選択された吹出口から運転者を外すように車室内に空調風が吹出されるようになっている。しかしながら、乗員の顔部等に向けて加湿空気が送風されている場合でも、乗員が空調風を望む場合がある。従って、乗員に対し、より一層快適な車室内空間を提供するためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、乗員に対し、より一層快適な車室内空間を提供することができる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用空気調和装置は、車室内の天井部に設けられ車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気を送風可能な加湿手段と、前記加湿手段の作動を検出するための作動検出手段と、空調装置の空調風吹出口に取付姿勢を変更可能に設けられると共に、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に向けた方向とする第一の取付姿勢と、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に対し車両上下方向下側に向けた方向とする第二の取付姿勢とを取り得るように構成された吹出方向変更手段と、前記吹出方向変更手段を前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更させるように動作可能な駆動手段と、前記作動検出手段によって前記加湿手段の作動が検出された場合に、前記吹出方向変更手段が前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更されるように前記駆動手段の動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の車両用空気調和装置では、空調装置が作動すると、空調風吹出口から空調風が車室内に吹出される。一方、車室内の天井部には、加湿手段が設けられており、この加湿手段が作動すると、車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気が送風される。加湿手段の作動は作動検出手段によって検出され、作動検出手段によって加湿手段の作動が検出された場合には、制御手段によって駆動手段の動作が制御されて吹出方向変更手段の空調風吹出口に対する取付姿勢が第一の取付姿勢から第二の取付姿勢に変更される。これにより、空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向が乗員の顔部に向けた方向から乗員の顔部に対し車両上下方向下側に向けた方向、すなわち、乗員の顔部に当たらない方向に変更される。
【0009】
このように、請求項1に記載の車両用空気調和装置によれば、空調装置が作動しているときに、加湿手段が作動されて、車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気が送風されるときには、空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向が乗員の顔部に対し車両上下方向下側に向けた方向、すなわち、乗員の顔部に当たらない方向に変更される。従って、加湿空気が空調風と干渉することなく乗員の顔部に十分に到達される。これにより、乗員に対し、より一層快適な車室内空間を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の車両用空気調和装置は、請求項1に記載の車両用空気調和装置において、前記吹出方向変更手段は、前記第二の取付姿勢とされた場合に前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に対し車両上下方向下側の部位に向けた方向とするように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の車両用空気調和装置によれば、上述の空調風吹出口から吹き出される空調風の変更後の吹出方向は、より具体的には、乗員の顔部に対し車両上下方向下側の部位に向けた方向とされる。従って、加湿空気を空調風と干渉させることなく乗員の顔部に十分に到達させつつ、乗員への空調風の送風状態を維持できる。これにより、乗員に対し、さらにより一層快適な車室内空間を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用空気調和装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置において、前記空調風吹出口は、車室内のインストルメントパネルに設けられ、前記吹出方向変更手段は、前記第二の取付姿勢とされた場合に前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を車両水平方向に対し車両上下方向下側に向けた方向とするように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の車両用空気調和装置によれば、吹出口吹出口は、車室内のインストルメントパネルに設けられている。ここで、一般に、インストルメントパネルは、乗員の顔部に対し車両上下方向下側に配置される。従って、空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向が車両水平方向に対し車両上下方向下側に向けた方向に変更されるようにすれば、空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を確実に乗員の顔部に対し車両上下方向下側に向けた方向とすることができ、空調風が乗員の顔部に当たらないようにすることができる。これにより、加湿空気が空調風と干渉することを確実に防止でき、加湿空気を乗員の顔部に十分に到達させることができる。
【0014】
請求項4に記載の車両用空気調和装置は、請求項1に記載の車両用空気調和装置において、前記空調風吹出口に取付姿勢を変更可能に設けられると共に、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員に向けた方向とする第一の取付姿勢と、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員に対し車両幅方向にずれた方向とする第二の取付姿勢とを取り得るように構成された補助吹出方向変更手段を備え、前記駆動手段は、前記吹出方向変更手段及び前記補助吹出方向変更手段をそれぞれ前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更させるように動作可能に構成され、前記制御手段は、前記作動検出手段によって前記加湿手段の作動が検出された場合に、前記吹出方向変更手段及び前記補助吹出方向変更手段がそれぞれ前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更されるように前記駆動手段の動作を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の車両用空気調和装置によれば、空調装置が作動しているときに、加湿手段が作動されて、車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気が送風されるときには、吹出方向変更手段及び補助吹出方向変更手段がそれぞれ第一の取付姿勢から第二の取付姿勢に変更されることで、空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向が乗員の顔部に対し車両上下方向下側且つ車両幅方向にずれた方向に変更される。これにより、加湿空気が空調風と干渉することをさらにより確実に防止でき、加湿空気を乗員の顔部に十分に到達させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、加湿空気を空調風と干渉させることなく乗員の顔部に十分に到達させることができ、しかも、この加湿空気を乗員の顔部に十分に到達させつつ、乗員への空調風の送風状態も維持できる。これにより、乗員に対し、より一層快適な車室内空間を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
はじめに、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10の構成について説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10が適用された車両12の側面断面図が示されており、図2には、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10が適用された車両12の平面断面図が示されている。なお、これらの図において示される矢印Fr、矢印Up、矢印Outは、車両前後方向前側、車両上下方向上側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0019】
これらの図において示される本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10は、例えば、乗用自動車等の車両12に好適に搭載されるものである。この車両用空気調和装置10は、加湿手段としての加湿ユニット14と、作動検出手段としての作動検出器16と、空調装置の空調用レジスタ18と、制御手段としてのECU(Electronic Control Unit)20と、を主要な構成として備えている。
【0020】
加湿ユニット14は、乗員P(運転者)の頭上に位置する車室内の天井部22に設けられている。この加湿ユニット14としては、例えば、車室内の湿気を吸着して放出する無給水式のものや、超音波式のものやスチーム式のものが用いられる。この加湿ユニット14は、後述するECU20によって作動され、作動時には車室内の天井部22に設けられた吹出口24から乗員Pの顔部Fに向けて局所的に加湿空気を送風可能な構成とされている。
【0021】
作動検出器16は、加湿ユニット14の作動状態を検出するものであり、例えば、加湿ユニット14に一体的に組み込まれている。この作動検出器16は、加湿ユニット14の作動の有無に応じた検出信号を後述するECU20に出力する構成とされている。
【0022】
空調用レジスタ18は、空調装置の一部として設けられたものであり、車室内に開口する空調風吹出口としてのレジスタケース26と、吹出方向変更手段としての複数の上下風向調整用フィン28と、駆動手段としてのアクチュエータ30と、を有して構成されている。この空調用レジスタ18は、インストルメントパネル32の中央部に一体的に設けられている。
【0023】
レジスタケース26は、インストルメントパネル32内に設けられた空調装置の空調ユニット34と図示しないダクトを介して連通されており、この空調ユニット34から送風された空調風を車室内へ吹出する構成とされている。
【0024】
上下風向調整用フィン28は、レジスタケース26の内部に車両幅方向に延在するように配置されると共に上下方向(R1方向)に回動可能に設けられている。この上下風向調整用フィン28は、車両上下方向上側を向いた第一の取付姿勢とされたときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向を乗員Pの顔部Fに向けた方向とし、車両上下方向下側を向いた第二の取付姿勢とされたときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向を乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側(車両水平方向Hに対し車両上下方向下側で、より具体的には、乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側の部位)に向けた方向とするように構成されている。
【0025】
アクチュエータ30は、後述するECU20によって作動され、各上下風向調整用フィン28を車両上下方向上側を向いた第一の取付姿勢と車両上下方向下側を向いた第二の取付姿勢との間で上下方向(R1方向)に回動させるように動作可能な構成とされている。
【0026】
ECU20は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えた電気回路等により構成されており、作動検出器16、オートエアコン起動スイッチ36、加湿ユニット起動スイッチ38とそれぞれ電気的に接続され、これらからの出力信号が入力されるようになっている。なお、オートエアコン起動スイッチ36及び加湿ユニット起動スイッチ38は、例えばインストルメントパネル32に設けられている。そして、ECU20は、これらの出力信号に応じて加湿ユニット14、アクチュエータ30、空調ユニット34の動作を制御する構成とされている。このECU20の動作詳細については以下の作用と併せて説明する。
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10の作用について説明する。
【0028】
オートエアコン起動スイッチ36が乗員Pによって操作されると、このオートエアコン起動スイッチ36からECU20に起動操作信号が出力される。ECU20は、オートエアコン起動スイッチ36から出力された起動操作信号を入力すると、空調ユニット34を通常のオートエアコンモードで作動させる。
【0029】
空調ユニット34は、ECU20から出力された起動操作信号に応じて作動すると空調風(例えば冷房風)を吹出し、この空調ユニット34からの空調風は、図示しないダクトを介してレジスタケース26に搬送されてレジスタケース26から車室内に吹出される。このとき、レジスタケース26内の複数の上下風向調整用フィン28が車両上下方向上側を向いた第一の取付姿勢とされている場合には、図1,図2の矢印A1で示される如く、レジスタケース26から乗員Pの顔部Fに向けて空調風が吹出される。
【0030】
また、ECU20は、空調ユニット34を作動させると、図3のフローチャートで示されるプログラムの処理を開始する。ECU20は、このプログラムの処理を開始すると、先ず、作動検出器16から出力された検出信号を入力し(ステップS1)、加湿ユニット14が作動中であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0031】
ここで、加湿ユニット14が作動されていないときには、作動検出器16から停止検出信号が出力される。従って、この場合、ECU20は、作動検出器16から出力された停止検出信号に基づき加湿ユニット14が作動していないと判断する(ステップS2:NO)。続いて、ECU20は、空調ユニット34に通常のオートエアコンの動作を維持させて(ステップS3)、リターンする。そして、ECU20は、加湿ユニット14が作動していると判断(ステップS2:YES)するまで、上述のステップS1〜ステップS3の処理を繰り返し行う。
【0032】
一方、空調ユニット34の作動後に、乗員Pによって加湿ユニット起動スイッチ38が操作されて、この加湿ユニット起動スイッチ38からECU20に起動操作信号が出力されると、ECU20は、加湿ユニット14に作動信号を出力して加湿ユニット14を作動させる。
【0033】
加湿ユニット14は、ECU20からの作動信号に応じて作動すると、図1の矢印Bで示される如く、車室内の天井部22に設けられた吹出口24から乗員Pの顔部Fに向けて加湿空気を送風する。これにより、乗員Pの顔部Fに潤いが供給される。
【0034】
また、このようにして加湿ユニット14が作動すると、作動検出器16がECU20に作動検出信号を出力する。従って、この場合、ECU20は、上述のステップS1〜ステップS3を繰り返し行う中のステップS2の処理で、作動検出器16から出力された停止検出信号に基づき加湿ユニット14が作動していると判断する(ステップS2:YES)。そして、ECU20は、アクチュエータ30に駆動指令信号を出力する(ステップS4)。
【0035】
アクチュエータ30は、ECU20から出力された駆動指令信号を入力すると作動し、各上下風向調整用フィン28を車両上下方向上側を向いた第一の取付姿勢から車両上下方向下側を向いた第二の取付姿勢に回動させるように動作する。そして、複数の上下風向調整用フィン28は、このアクチュエータ30の動作によって車両上下方向上側を向いた第一の取付姿勢から車両上下方向下側を向いた第二の取付姿勢に回動される。これにより、図1,図2の矢印A2で示される如く、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側の部位に向けた方向、すなわち、乗員Pの顔部Fに当たらない方向で例えば乗員Pの腹部等に向けた方向に変更される。
【0036】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10によれば、空調ユニット34が作動しているときに、加湿ユニット14が作動して、車室内の乗員Pの顔部Fに向けて加湿空気が送風されるときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側に向けた方向、すなわち、乗員Pの顔部Fに当たらない方向に変更される。従って、加湿空気が空調風(例えば冷房風)と干渉することなく乗員Pの顔部Fに十分に到達される。これにより、乗員Pに対し、より一層快適な車室内空間を提供することができる。
【0037】
しかも、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10によれば、上述のレジスタケース26から吹き出される空調風の変更後の吹出方向は、より具体的には、乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側の部位、すなわち、例えば乗員Pの腹部等に向けた方向とされる。従って、加湿空気を空調風と干渉させることなく乗員Pの顔部Fに十分に到達させつつ、乗員Pへの空調風の送風状態を維持できる。これにより、乗員Pに対し、さらにより一層快適な車室内空間を提供することができる。
【0038】
さらに、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10によれば、レジスタケース26は、車室内のインストルメントパネル32に設けられている。ここで、一般に、インストルメントパネル32は、乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側に配置される。従って、本実施形態のように、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が車両水平方向Hに対し車両上下方向下側に向けた方向に変更されるようにすれば、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向を確実に乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側に向けた方向とすることができ、空調風が乗員Pの顔部Fに当たらないようにすることができる。これにより、加湿空気が空調風と干渉することを確実に防止でき、加湿空気を乗員Pの顔部Fに十分に到達させることができる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置10の変形例について説明する。
【0040】
上記実施形態では、空調ユニット34が作動しているときに、加湿ユニット14が作動して、車室内の乗員Pの顔部Fに向けて加湿空気が送風されるときには、空調用レジスタ18の上下風向調整用フィン28が車両上下方向下側に回動されることで、図1,図2の矢印A2で示される如く、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側の部位に向けた方向に変更されるように構成されていたが、このときのレジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向は次のようにしても良い。
【0041】
すなわち、図2に示されるように、上下風向調整用フィン28に加えて、空調用レジスタ18に設けられた補助吹出方向変更手段としての左右風向調整用フィン29を用いて吹出方向を変更しても良い。左右風向調整用フィン29は、レジスタケース26の内部に車両上下方向に延在するように配置されると共に左右方向(R2方向)に回動可能に設けられている。この左右風向調整用フィン29は、車両幅方向右側を向いた第一の取付姿勢とされたときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向を乗員Pに向けた方向とし、車両幅方向左側を向いた第二の取付姿勢とされたときには、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向を乗員Pに対し車両幅方向にずれた方向とするように構成されている。
【0042】
そして、この上下風向調整用フィン28及び左右風向調整用フィン29を備えた構成において、空調ユニット34が作動しているときに、加湿ユニット14が作動して、車室内の乗員Pの顔部Fに向けて加湿空気が送風されるときには、アクチュエータ30によって空調用レジスタ18の上下風向調整用フィン28が車両上下方向下側に回動されると共に、左右風向調整用フィン29が車両幅方向左側に回動されることで、図2の矢印A3で示される如く、レジスタケース26から吹き出される空調風の吹出方向が乗員Pの顔部Fに対し車両上下方向下側且つ車両幅方向にずれた方向に変更されても良い。このようにすれば、加湿空気が空調風と干渉することをさらにより確実に防止でき、加湿空気を乗員Pの顔部Fに十分に到達させることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、インストルメントパネル32の中央部に設けられた空調用レジスタ18について吹出方向を変更するようにしたが、例えば、インストルメントパネル32の車両幅方向端側に設けられた空調用レジスタ40(図2参照)について吹出方向を変更するようにしても良い。また、インストルメントパネル32以外の場所(例えば、センターコンソール等)に空調用レジスタ18を設け、この空調用レジスタ18について吹出方向を変更するようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、運転座席用の空調用レジスタ18について吹出方向を変更するようにしたが、例えば、助手席用の空調用レジスタや後部座席用の空調用レジスタについて吹出方向を変更するようにしても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、空調ユニット34から空調風としての冷房風が吹出されているときに空調用レジスタ18の吹出方向を変更するようにしたが、空調ユニット34から空調風としての暖房風が吹出されているときに空調用レジスタ18の吹出方向を変更するようにしても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、加湿ユニット起動スイッチ38とは別に作動検出器16が設けられ、ECU20は、この作動検出器16からの検出信号に基づいて加湿ユニット14の作動の有無を判断するように構成されていたが、加湿ユニット起動スイッチ38を本発明に係る作動検出手段として構成し、ECU20は、この作動検出手段としての加湿ユニット起動スイッチ38からの出力信号に基づいて加湿ユニット14の作動の有無を判断するように構成されていても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、空調ユニット34が作動しているときに加湿ユニット14を作動させた場合には空調用レジスタ18の吹出方向が変更されるように構成されていたが、空調ユニット34を作動させていないときに加湿ユニット14を作動させた場合にも空調用レジスタ18の吹出方向が変更されるように構成されていても良い。このようにすれば、先に加湿ユニット14を作動させているときに後から空調ユニット34を作動させた場合でも、空調ユニット34の作動に伴って空調風が乗員Pの顔部Fに向けて吹出されることを防止できる。
【0048】
また、上記実施形態では、インストルメントパネル32に設けられた加湿ユニット起動スイッチ38からECU20に起動操作信号が出力されたことに伴って加湿ユニット14が作動されるように構成されていたが、例えば、車室内の湿度が基準値を下回ったことに応じて湿度センサからECU20に湿度低下検出信号が出力され、これに伴って加湿ユニット14が作動されるように構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置が適用された車両の側面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置が適用された車両の平面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用空気調和装置
12 車両
14 加湿ユニット(加湿手段)
16 作動検出器(作動検出手段)
18 空調用レジスタ
20 ECU(制御手段)
22 天井部
26 レジスタケース(空調風吹出口)
28 上下風向調整用フィン(吹出方向変更手段)
29 左右風向調整用フィン(補助吹出方向変更手段)
30 アクチュエータ(駆動手段)
32 インストルメントパネル
34 空調ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の天井部に設けられ車室内の乗員の顔部に向けて加湿空気を送風可能な加湿手段と、
前記加湿手段の作動を検出するための作動検出手段と、
空調装置の空調風吹出口に取付姿勢を変更可能に設けられると共に、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に向けた方向とする第一の取付姿勢と、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に対し車両上下方向下側に向けた方向とする第二の取付姿勢とを取り得るように構成された吹出方向変更手段と、
前記吹出方向変更手段を前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更させるように動作可能な駆動手段と、
前記作動検出手段によって前記加湿手段の作動が検出された場合に、前記吹出方向変更手段が前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更されるように前記駆動手段の動作を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記吹出方向変更手段は、前記第二の取付姿勢とされた場合に前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員の顔部に対し車両上下方向下側の部位に向けた方向とするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記空調風吹出口は、車室内のインストルメントパネルに設けられ、
前記吹出方向変更手段は、前記第二の取付姿勢とされた場合に前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を車両水平方向に対し車両上下方向下側に向けた方向とするように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記空調風吹出口に取付姿勢を変更可能に設けられると共に、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員に向けた方向とする第一の取付姿勢と、前記空調風吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を前記乗員に対し車両幅方向にずれた方向とする第二の取付姿勢とを取り得るように構成された補助吹出方向変更手段を備え、
前記駆動手段は、前記吹出方向変更手段及び前記補助吹出方向変更手段をそれぞれ前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更させるように動作可能に構成され、
前記制御手段は、前記作動検出手段によって前記加湿手段の作動が検出された場合に、前記吹出方向変更手段及び前記補助吹出方向変更手段がそれぞれ前記第一の取付姿勢から前記第二の取付姿勢に変更されるように前記駆動手段の動作を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−254639(P2008−254639A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100539(P2007−100539)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】