説明

車両用空調システム

【課題】暖房運転初期時の暖房性能を向上できる車両空調システムの提供を図る。
【解決手段】ヒートポンプ回路10と、廃熱回収回路30と、を備え、廃熱回収回路30は、ポンプ31と、車両から排出される廃熱を熱媒体に吸熱させる廃熱回収熱交換器34と、廃熱回収熱交換器34の下流において廃熱回収熱交換器34で加熱された熱媒体でヒートポンプ回路10を循環する冷媒を温める熱媒体冷媒熱交換器20と、を備える車両用空調システム1において、廃熱回収回路30を循環する熱媒体を加熱可能とするヒータ35をさらに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプにより車室内を冷房または暖房する車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調システムとしては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この車両用空調システムは、冷暖房兼用のヒートポンプ回路と、車室内から車外に排出される換気空気が持つ排熱量を回収し当該回収熱を利用して冷房時にヒートポンプ回路の冷媒を冷やして冷媒凝縮させ暖房時にヒートポンプ回路の冷媒を温めて冷媒蒸発させる排熱利用手段と、を備えて構成されている。
【0003】
排熱利用手段は、車室内と車外とを連通する換気通路に配置された排熱回収熱交換器と、ヒートポンプ回路の室外熱交換器にその冷媒用流路が並列に接続された熱媒体冷媒熱交換器と、熱媒体冷媒熱交換器の熱媒体用流路と排熱回収熱交換器とを結ぶポンプ介装の熱媒体管路と、熱媒体冷媒熱交換器の冷媒用流路への冷媒流入を制御する電磁弁と、を備える。
【0004】
排熱利用手段の電磁弁は、制御手段の制御により、冷房時に熱媒体温度が外気温度よりも低いときのみに開弁され、暖房時に熱媒体温度が外気温度よりも高いときのみに開弁されるようになっている。そのため、冷媒時には、車室内から換気排出される冷えた空気を回収してヒートポンプ回路の冷房能力を高めることができ、また暖房時には、車室内から換気排出される暖かい空気を回収してヒートポンプ回路の暖房能力を高めることができる。
【特許文献1】特許3485379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常、暖房初期時には車室内温度が低く熱媒体温度が低いため、上記従来の車両用空調システムでは、ヒートポンプ回路の冷媒を排熱利用手段によって温めてアシストすることができず、ウォームアップ性能が悪いという欠点がある。
【0006】
つまり、コンプレッサに吸い込まれる冷媒が低温であると(過熱度が低いと)、コンプレッサによる圧縮が進まず(コンプレッサの仕事量が増えず)、コンプレッサからの吐出される冷媒温度が高くなり且つ冷媒循環量が多くなるまでに時間がかかり、このため、暖房用の室内熱交換器から温風を吹き出すまでに時間がかかってしまう。
【0007】
そこで本発明は、低温環境における暖房運転初期時の暖房性能を向上できる車両空調システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷媒を循環させ冷房・暖房運転を可能としたヒートポンプ回路と、熱媒体を循環させ車両から排出される廃熱を回収してヒートポンプ回路の冷媒を加熱可能な廃熱回収回路と、を備え、廃熱回収回路が、熱媒体を循環させるポンプと、車両から排出される廃熱を熱媒体に吸熱させる廃熱回収熱交換器と、廃熱回収熱交換器の下流に配置され当該廃熱回収回路を循環する熱媒体とヒートポンプ回路を循環する冷媒とで熱交換させる熱媒体冷媒熱交換器と、を備える車両用空調システムであって、当該廃熱回収回路を循環する熱媒体を加熱可能するヒータを設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、暖房初期時の車室内温度が低いときでも、廃熱回収回路を循環する熱媒体をヒータで加熱することができるため、当該加熱された熱媒体でヒートポンプ回路を循環する冷媒を温めることができ、ヒートポンプ回路の暖房能力を早期に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の車両用空調システムの概略図、図2は同車両用空調システムの冷房運転の動作を示す概略図、図3は同車両用空調システムを暖房運転の動作を示す概略図、図4は暖房運転の制御フローを示す図、図5はヒータ出力調整の処理フローを示す図である。また、図6は廃熱回収量、冷媒吸熱量およびCOPと、目標水温との関係をグラフ化した図である。
【0012】
「車両用空調システム」
車両用空調システム1は、主に車室内の空調をするためのものであり、冷媒を循環させ冷暖房運転を可能とした「ヒートポンプ回路10」と、熱媒体としての水を循環させて車両から排出される廃熱を回収して当該回収した熱をヒートポンプ回路10を循環する冷媒に与える「廃熱回収回路30」と、を備えている。
【0013】
「ヒートポンプ回路」
まず、ヒートポンプ回路10について説明する。
【0014】
ヒートポンプ回路10は、コンプレッサ11と、コンプレッサ11で圧縮した冷媒の熱を車室外に放熱する第1のコンデンサ13と、コンプレッサ11で圧縮した冷媒の熱を車室内に放熱して車室内を加熱する第2のコンデンサ18と、コンプレッサ11から吐出された冷媒を第1のコンデンサ13および第2のコンデンサ18のいずれかに向けて流すか選択する切換弁12と、第1のコンデンサ13で放熱された冷媒を膨張させる第1の膨張手段15と、第2のコンデンサ18で放熱された冷媒を膨張させる第2の膨張手段19と、第1の膨張手段15によって膨張された冷媒に車室内の熱を吸熱させることで車室内を冷却する第1のエバポレータ16と、第2の膨張手段19によって膨張された冷媒に吸熱させる第2のエバポレータ20と、を備え、コンプレッサ11によって運動エネルギが与えられた冷媒が、これらを循環するように構成されたものである。
【0015】
第1のコンデンサ13の下流で且つ第1の膨張弁15の上流には、受液器14が設けられ、また、第1のエバポレータ16および第2のエバポレータ20の下流で且つコンプレッサ11の上流にアキュウムレータ17が設けられている。
【0016】
つまり、ヒートポンプ回路10は、図2中の矢印で示すように冷媒が流れる第1の回路10a(室内冷房用の回路)と、図3中の矢印で示すように流れる第2の回路10b(室内暖房用の回路)と、を備えて構成され、これらの回路10a、10bの切り換えが、切換弁12で行われるようになっている。
【0017】
そのため、切換弁12により第1の回路10a(室内冷房用の回路)に切り換ると、冷媒は、図2中の実線矢印で示すように、コンプレッサ11→切換弁12→第1のコンデンサ13→受液器14→第1の膨張手段15→第1のエバポレータ16→アキュウムレータ17→コンプレッサ11の順に流れる。また、切換弁12により第2の回路10b(室内暖房用の回路)に切り換えると、冷媒は、図3中の実線矢印で示すように、コンプレッサ11→切換弁12→第2のコンデンサ18→第2の膨張手段19→第2のエバポレータ20→アキュウムレータ17→コンプレッサ11の順に流れる。
【0018】
なお、第1の回路10aの第1のコンデンサ13と第1の膨張弁15との間と、第2の回路の10bの第2のコンデンサ18と第2の膨張弁19との間とは、バイバス通路10cによって接続されている。そのため、図2に示すように、第1の回路10a(室内冷房用の回路)に冷媒を循環させる際には、冷媒が循環していない第2の回路10b(室内暖房用の回路)の第2のコンデンサ18に貯留する冷媒を、圧力差によって第の1回路10aに引き込んで、当該第2のコンデンサ18に寝込む冷媒を最小限にとどめることがでる。逆に、図3に示すように、第2の回路10b(室内暖房用の回路)に冷媒を循環させる際には、冷媒が循環してない第1の回路10a(室内冷房用の回路)の第1のコンデンサ13に貯留する冷媒を、圧力差によって第2の回路10bに引き込んで、当該第1のコンデンサ13に寝込む冷媒を最小限にとどめることができる。
【0019】
ヒートポンプ回路10は以上のように構成されており、当該ヒートポンプ回路10の第1のエバポレータ16と第2のコンデンサ18とが後述する空調ユニット40内に配置されている。
【0020】
図2に示すように第1の回路10aに冷媒を循環させると、第1のエバポレータ16により冷風を生成して車室内を冷房できる。一方、図3に示すように第2の回路10bに冷媒を循環させると、第2のコンデンサ18により温風を生成して車室内を暖房できる。つまり、ヒートポンプ回路10の第1のエバポレータ16は、室内冷房用熱交換器として機能し、同じくヒートポンプ回路10の第2のコンデンサ18は、室内暖房用熱交換器として機能する。
【0021】
また、第2の回路10bの第2のエバポレータ20は、後述する廃熱回収回路30を循環する熱媒体の熱を吸熱させる熱媒体冷媒熱交換器として機能する。詳しくは後述する。
【0022】
「空調ユニット」
上述のように、室内冷房用熱交換器としての第1のエバポレータ16と、室内暖房用熱交換器としての第2のコンデンサ18とは、空調ユニット40内に配置され、車室内の温度調整のために用いられる。
【0023】
空調ユニット40は、車両前方の図示せぬインストルパネルと同じく図示せぬダッシュパネルとの間に配置されおり、当該空調ユニット40は、送風路を形成すにケーシング41と、当該ケーシング41内の送風路にPに配置された前記第1のエバポレータ16および第2のコンデンサ18と、フロントブロア43と、を備えて構成されている。
【0024】
ケーシング41の送風路の上流端部には、該送風路に内外気を選択的に導入するための図示せぬインテークボックスが設けられている。インテークボックスは、車室内の空気を導入する図示せぬ内気導入口と車室外の空気を導入する図示せぬ外気導入口と、これら内気導入口および外気導入口を選択的に開閉するインテークドアと、を備えて構成され、これにより、ケーシング41内の送風路に取り込む空気を、車室内からにするかまたは車室外からにするかを選択できるようになっている。
【0025】
一方、ケーシング41の送風路Pの下流端には、送風路内で温度調整された空気を車室内に吹き出すための吹出口が形成されている。吹出口は、例えば、車両前面窓に向けて開口するデフロスタ吹出口、乗員上半身に向けて開口するフェイス吹出口、乗員足下に向けて開口するフット吹出口などからなる。
【0026】
送風路内のフロントブロア43を作動すると、送風路の上流端の内気導入口または外気導入口から空気が導入され、図2に示すようにヒートポンプ回路10の第1の回路10aに冷媒が循環している場合には第1の回路10aの第1のエバポレータ16によって冷風が生成され、逆に図3に示すようにヒートポンプ回路10の第2の回路10bに冷媒が循環している場合には第2の回路10bの第2のコンデンサ18により温風が生成され、このように生成された冷風または温風が送風路の下流端の何れかの1つまたは複数の吹出口から車室内に吹き出される。
【0027】
空調ユニット40のインテークボックスの内気導入口が開き且つ外気導入口が閉じているときには、空調ユニット40は車室内から空気と取り込んで温度調整した空気を車室内に吹き出し、空調ユニット40から吹き出された空気は再び空調ユニット40に吸い込まれて温度調整される。つまり、車室内を空気が循環する内気循環モードとなる。
【0028】
逆に、空調ユニット40のインテークボックスの内気導入口が閉じ且つ外気導入口が開いているときには、空調ユニット40は、車外から空気を吸い込こんで温度調整されたのち、車室内に吹き出すようになっており、空調ユニット40から車室内に吹き出されたされた空気は、換気ユニット45を通じて車室外に排出されることとなる。つまり、車外から空気を導入する外気導入モードとなる。
【0029】
「換気ユニット」
換気ユニット45は、例えば車両後部に設けられ、車室内と車室外とを連通しする換気通路47を備えている。換気通路47は、車室内と車室外との圧力差に応じて開閉する図示せぬ弁で閉じられている。この開閉弁は、車室内の圧力が車室外よりも高くなり圧力差が一定以上になると換気通路47を開いて、車室内と車室外との圧力差が一定未満となると換気通路47を閉じる。つまり、内気循環モードでは換気通路47は閉じ、外気導入モードでは換気通路47から排気される。
【0030】
換気通路47の途中には、リアブロア49が配置されており、外気導入モードでは、フロントブロア43の送風量と同一の風量を排気するようになっている。そして、車室内から車室外に排気される空気が通過するように後述する廃熱回収回路30の廃熱回収熱交換器34が配置されている。これにより、車から排出される廃熱を廃熱回収熱交換器34で回収できる。
【0031】
「廃熱回収回路」
次に、廃熱回収熱交換器34が介装される廃熱回収回路30について説明する。
【0032】
廃熱回収回路30は、図1に示すように、廃熱回収熱交換器34、電気ヒータ35、ポンプ31、熱媒体冷媒熱交換機20、を備えて構成されている。つまり、廃熱回収回路30は、熱媒体を循環させるポンプ31と、車両から排出される廃熱を熱媒体に吸熱させる廃熱回収熱交換器34と、廃熱回収熱交換器34の下流に配置され当該廃熱回収回路34を循環する熱媒体とヒートポンプ回路10を循環する冷媒とで熱交換させる熱媒体冷媒熱交換器20(ヒートポンプ回路10の第2のエバポレータ)と、を備える基本構成に加えて、当該廃熱回収回路30を循環する熱媒体を加熱する電気ヒータ35を備えて構成されている。なお、符号33は、廃熱回収熱交換器34の入口の温度を検出する温度センサである。
【0033】
そのため、ポンプ31を運転すると、熱媒体が、ポンプ31→熱媒体冷媒熱交換器20→廃熱回収熱交換器34→電気ヒータ35→ポンプ31の経路で循環を繰り返すこととなる。
【0034】
廃熱回収熱交換器34は、上述した如く、車室内から車室外に排出される排出空気の熱を回収できるため、当該回収した廃熱を熱媒体冷媒熱交換器20を介して、ヒートポンプ回路10の第2の回路10b(室内暖房用の回路)に与えて、暖房運転をアシストすることができる。
【0035】
このように、廃熱回収回路30は、ポンプ31、廃熱回収熱交換器34、および熱媒体冷媒熱交換器20を備える基本構成により、ヒートポンプ回路10の暖房運転をアシストすることができることに加え、電気ヒータ35を備えているため、熱媒体の温度が低いときに強制的に熱媒体の温度を上昇させて、ヒートポンプ回路10の暖房運転をアシストすることも可能である。
【0036】
特に、低温環境における暖房運転初期時には車室内が暖まっていないため、通常は熱媒体を加熱することができないが、本実施形態のように電気ヒータ35を備える構造にあっては、そのような低温環境における暖房運転初期時にも熱媒体を加熱でき、暖房能力を早期に高くすることができる。
【0037】
「暖房運転」
このように構成された車両用空調システムの暖房運転の好適な制御の一例を、以下に、図4を参照しつつ説明する。
【0038】
まず、制御部は、暖房運転命令を受けると、切換弁12で冷媒の循環経路を第2の回路10bに切り換え、コンプレッサ11をON、フロントブロア43をON、外気導入モードをON(インテークボックスの外気導入口を開き内気導入口を閉じる)、リアブロア49をON、ポンプ31をON、電気ヒータ35をONして、暖房運転をスタートする。
【0039】
これにより、車室外からフロントブロア43によって取り込まれた空気は、図3に示すように、第2のコンデンサ18(室内暖房用熱交換器)によって加熱されて車室内に吹き出され、最終的にリア側の換気ユニット45を通じて車室内から車室外に排出される。このとき、車室外に排気される空気の熱が、廃熱回収熱交換器34を通過する熱媒体(この例では水)に吸収される。そして、廃熱を受け取って温められた熱媒体は、下流のヒータ35で加熱された後、ポンプ31および熱媒体冷媒熱交換器20を通過して、再び廃熱回収熱交換器34に帰還する。廃熱回収回路30を循環する熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器20を通過する際に、ヒートポンプ回路10の第2の回路10b(室内暖房用の回路)を循環する冷媒に熱を与えて、熱媒体冷媒熱交換器20(ヒートポンプ回路10の第2のエバポレータ)での冷媒の蒸発を促進させ、ヒートポンプ回路10の暖房性能を向上させることができる。
【0040】
このように暖房運転をスタートすると、制御部は、図4に示すように、まず、車室外温度Ta、車室内温度Tr、乗員が設定した車室内目標温度Trtを読み込み(ステップS1)、車室内温度Trが車室内目標温度Trtになるように、周知の方法によって、フロントブロア出力Wbfを調整するとともに(ステップS3)、コンプレッサ回転数Ncを調整する(ステップS5)。なお、このとき、フロントブロア43とリアブロア49の風量は同一になるようにリアブロア出力Wbrが設定されており、フロント側から車室内に吸い込んだ空気と同量の空気を、リア側から車室外に吹き出す。
【0041】
次に、制御部は、廃熱回収熱交換器34の入口の上流に取り付けられた温度センサ33で検出した熱媒体温度(水温)Twを読み込み(ステップS7)、ポンプ31の出力Wpを調整する(ステップS9)。この例では、ポンプ31の出力Wpは、予め定めた一定値にしている。
【0042】
図7は、廃熱回収熱交換器34を流れる熱媒体の流量(廃熱回収回路30を流れる熱媒体の流量)と、当該廃熱回収熱交換器34で吸熱する吸熱量(廃熱回収量)と、の関係を示す図である。図7から明らかなように、廃熱回収熱交換器34を流れる熱媒体の流量が変曲点f1を超えると、当該廃熱回収熱交換器34で回収できる熱量(廃熱回収量)がほぼ一定になるため、この実施形態では、電力の無駄遣いをさけるため、変曲点f1よりも流量が大きい値をあらかじめ設定しておき、流量が当該設定値となるようにポンプ31の出力Wpを一定にして運転する。なお、ポンプ31の出力Wpは、例えば、ブロア31の出力Wbr、車室内温度Tr、水温Twを変数として、少なくとも流量が前記変曲点f1より大きい値になるように、ポンプ31の出力値を随時変更制御してもよいし、その他の変数に基づいて変更制御してもよい。
【0043】
以上のようにステップS9でポンプ31の出力調整した後は、ステップS11でヒータ35の出力を調整する。この実施形態のヒータ出力制御では、後で詳しく説明するが、ヒータ35をやみくもに運転するとシステム全体として暖房成績係数COP(Coefficient of Peformance)が低下するため、COPが高くなるようにヒータ35の出力値を制御している。
【0044】
最終的に、ステップS13で、現在の車室内温度Tと目標車室内温度Trtとが略同一(Tr≒Trt)であるか判断する。たとえば、現在の車室内温度Tが目標車室内温度Trtの誤差±0.5℃の範囲に入っているか否かを判断する。範囲内であれば(ステップS13でYES)、暖房運転を終了し、範囲外であれば(ステップS13でNO)、再びステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0045】
「ヒータの出力制御」
次に、上述のステップS11におけるヒータ35の出力制御について、図5を参照しつつより詳しく説明する。
【0046】
上述したように、ヒータ35を常に最大出力で運転するとシステム全体として暖房成績係数COP(Coefficient of Performance)が低下してしまうため、この実施形態では、COPが高くなるように、ヒータ35の出力値を制御している。
【0047】
この実施形態では、廃熱回収回路30の1点(この例では廃熱回収熱交換器34の入口)の熱媒体の温度(水温Tw)を検出し、当該水温Twが、COPが最も高くなる水温(目標水温Twt)となるように、ヒータ35の出力Whを制御する。
【0048】
COPがもっとも高くなる水温Twtは、廃熱回収量QeをTwで表した式と、冷媒吸熱量QeをTwで表した式と、の交点の水温Twで、COPがもっとも高くなることがわかっている(図6参照)。
【0049】
図6は、水温Tw以外の変数(Ta、Tr、Trt、Wbf、Nc、Wp、ζ、Wbr、Wpなど)を一定値に固定してTwを変数とした場合、成績係数COP、廃熱回収量Qrおよび冷媒吸熱量Qeのグラフであり、図6からも明らかなように、廃熱回収量QeをTwで表した式と、冷媒吸熱量QeをTwで表した式との交点で、COPがもっとも高くなることがわかる。なお、暖房成績係数COPは、暖房能力/動力で定義され、外部から行う仕事量に対する暖房能力を表わされる。
【0050】
まず、本実施形態のヒータ35の出力制御を詳しく説明する前に、廃熱回収量Qrおよび冷媒吸熱量Qeの式の導き出し方について説明する。
【0051】
廃熱回収量Qrおよび冷媒吸熱量Qeの、Twを変数とする式は、以下のように導かれる。
【0052】
廃熱回収量Qrおよび冷媒吸熱量Qeは、その入口および出口の温度から以下の式1および式2で表せる。
【0053】
Qr=(Trout−Tw)×Gw×C×ρ・・・・・・・・・・・(式1)
Qe=(Teout−Tein)×Gw×C×ρ・・・・・・・・・(式2)
Tw:廃熱回収熱交換器34の入口の水温(温度センサ33の検出温度)
Trout:廃熱回収熱交換器34の出口の水温
Tein:熱媒体冷媒熱交換器20の入口の水温
Teout:熱媒体冷媒熱交換器20の出口の水温
Gw:廃熱回収回路の流量(ポンプ電力Wpにより決まる値)
C:熱媒体の比熱
ρ:熱媒体の密度
ここで、廃熱回収熱交換器34の出口の水温Trout、熱媒体冷媒熱交換器20の入口水温Tein(ヒータ35をオフにした条件)、熱媒体冷媒熱交換器20の出口水温Teoutは、以下の式3、式4、式5で表せる。
【0054】
Trout=γr×(Tb−Tw)+Tw・・・・・・・・・・・・(式3)
Tein=Trout+Tp−α・・・・・・・・・・・・・・・・(式4)
Teout=Tein−γe(Tein−Tcin)・・・・・・・・(式5)
Tb:リアブロア出口の空気温度(目標車室内温度Trtからの温度降下とリアブロア廃熱Wbr×k1によって決まる値)
γr:廃熱回収側の補正係数(廃熱回収熱交換器34の効率、目標車室内温度Trt、リアブロワ風量(リアブロア電力Wbrによって決まる値)、廃熱回収回路の流量Gw(ポンプ電力Wpによって決まる値)、水温Twによって決まる値)
Tp:ポンプ昇温代(ポンプの電力Wpにより決まる値)
α:ロス
Tcin:熱媒体冷媒熱交換器20の入口の冷媒温度(コンプレッサ回転数Ncおおよび膨張弁開度ζによって決まる値)
γe:冷媒回収側の補正係数(熱媒体冷媒熱交換器20の効率、外気温Ta、コンプレッサ回転数Nc、フロントブロワ風量(フロントブロア電力Wbfによって決まる値)、廃熱回収回路の流量Gw(ポンプ出力Wpによって決まる値)、および水温Twによって決まる値)
そのため、式1に式3を代入すると廃熱回収量QrのTwを変数とした式6が得られ、式2に式3、4、5を代入すると冷媒吸熱量QeのTwを変数とする式7が得られる。
【0055】
Qr=(γr×(Tb−Tw))×Gw×C×ρ・・・・・・・・・・・・(式6)
Qe=−γe(γr×(Tb−Tw)+Tw+Tp−α−Tcin))×Gw×C×ρ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式7)
このように、廃熱回収量QrのTwを変数とした式(式6)および冷媒吸熱量QeのTwを変数とする式(式7)が得られるが、これらの式6および式7にそのときの検出値を代入して、これら2式が交差するTwの値を求めれば、COPが最も高くなる目標水温Trtを求めることができる(図6参照)。
【0056】
なお、上述の関係式から、式6で示す廃熱回収量Qrは、目標車室内温度Trt、リアブロア電力Wbr、水温Twおよびポンプ出力Wpを入力パラメータをとする式Qr=f(Trt、Wbr、Wp、Tw)で記載できる。また式7で示す冷媒吸熱量Qeは、外気温Ta、コンプレッサ回転数Nc、膨張弁開度ζ、目標車室内温度Trt、リアブロア電力Wbr、フロントブロア電力Wbfおよびポンプ電力wpを入力パラメータとする式Qe=f(Ta、Trt、Nc、ζ、Wbr、Wbf、Wp、Tw)で記載できる。
【0057】
次に、ヒータの制御方法について、図5を参照しつつより具体的に説明する。
【0058】
ヒータ出力調整制御(ステップS11、図4参照)が開始されると、まず、図5に示すように、リアブロア電力Wbr、ポンプ電力Wpを読み込み(ステップS31)、上述の廃熱回収側の補正係数γrを算出して(ステップS33)、Twを変数とする廃熱回収量Qrを算出する(ステップS35)。また、フロントブロア電力Wbf、外気温Ta、ポンプ電力Wp、コンプレッサ回転数Nc、膨張弁開度ζを読み込み(ステップS37)、上述の冷媒吸熱側の補正係数γeを算出して(ステップS39)、Twを変数とする冷媒吸熱量Qeを算出する(ステップS41)。
【0059】
次に、これら廃熱回収量Qrおよび冷媒吸熱量Qeをもとに、成績係数COPが最も高くなる水温(目標水温Twt)を算出する(ステップS43)。
【0060】
次に、現在の水温Twが、算出された目標水温Twtと、ほぼ一致するか判定する(ステップS45)。この例は、誤差dが±0.5℃以内にあるか判定している。
【0061】
ステップS45の判定で、現在の水温Twが目標水温Twtとほぼ同一の値になってなければ(ステップS45の判定でNO)、ステップS47に進み、現在の水温Twが目標水温Twtよりも小さいか否かを判定する。
【0062】
現在の水温Twが目標水温Twt(≒Twt−d)よりも大きい場合(ステップS47でNO)、現在のヒータ電力Whが大きいので、不要な電力消費を避けるべくヒータ35をオフし(ステップS53)、ステップS45に戻る。
【0063】
逆に現在の水温Twが目標水温(≒Twt−d)よりも小さい場合(ステップS47でYES)、ステップS49で、現在の水温Twと目標水温Twtとの差に基づいて必要なヒータ電力Whを計算し(ステップS49)、この値に基づいてヒータの出力値Whの変更制御を行い(ステップS51)、ステップS45に戻る。なお、ヒータ電力Whは、下記の式8に基づいて算出される。
【0064】
Wh[W]=(Twt−Tw)*Gw*C*ρ・・・・・・・・・・(式8)
そして、ステップS45において現在の水温Twが目標水温Twtとほぼ同一の値になっていれば(ステップS45の判定でYES)、現在のヒータ35の出力値Whで効率的な運転がなされているので、その出力値Whのままヒータ35の出力制御を終了する。
【0065】
「効果」
次に、本実施形態の主な効果を列挙する。
【0066】
(1)本実施形態の車両用空調システムは、冷暖房運転が可能なヒートポンプ回路10と、熱媒体(この実施形態では水)を循環させて車両から排出される廃熱を回収して当該回収した廃熱をヒートポンプ回路10の冷媒に与える廃熱回収回路30と、を備えた車両用空調システムであって、前記廃熱回収回路30が、ポンプ31と、廃熱回収熱交換器34と、当該廃熱回収熱交換器34で回収した熱をヒートポンプ回路10を循環する冷媒に与える熱媒体冷媒熱交換器20と、を備えるとともに、当該廃熱回収回路30を循環する熱媒体を加熱するヒータ35をさらに備えるものである。
【0067】
そのため、本実施形態によれば、廃熱回収回路30が、ポンプ31と廃熱回収熱交換器34と熱媒体冷媒熱交換器20とを備える基本構成に加えてヒータ35をさらに備えることで、低温環境における暖房運転開始時には、ヒータ35によって熱媒体を温めて、当該ヒータ35で温められた熱媒体を熱媒体冷媒熱交換器20に循環させることで、即座に熱媒体冷媒熱交換器20を介してヒートポンプ回路10の冷媒を温めることができる。
【0068】
これにより、低温環境における暖房運転開始時にあっても、早期に、ヒートポンプ回路10の冷媒を温めて冷媒循環量を高めることができ、ウォームアップ性能を格段に向上させることができる。
【0069】
(2)また本実施形態の車両用空調システム1にあっては、熱媒体冷媒熱交換器20の下流に廃熱回収熱交換器34が設けられ、廃熱回収熱交換器34の下流で且熱媒体冷媒熱交換器20の上流にポンプ31およびヒータ35が設けられている。
【0070】
そのため、このようなレイアウトによれば、ヒータ35の熱だけではなく、ポンプ31の廃熱も熱媒体冷媒熱交換器20に供給されることになるため、さらにウォームアップ性能を高めることができる。
【0071】
また、以上のレイアウトにより、廃熱回収回路30を循環する熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器20で冷やされた後に、その他の部品(ヒータ35およびポンプ31)を通過することなく、そのまま廃熱回収熱交換器34を流通することとなる。そのため、低い温度の熱媒体が廃熱回収熱交換器34を通過することとなるため、車両から排出される廃熱をより効率的に吸収することができ、廃熱回収量を多くすることができ、システム全体の能力を高くすることができる。
【0072】
(3)また本実施形態の車両用空調システム1にあっては、ポンプ31がヒータ35の下流に配置されている。つまり、廃熱回収回路30内において、上流側から、廃熱回収熱交換器34、ヒータ35、ポンプ31、熱媒体冷媒熱交換器20の順に設けられている。
【0073】
このようなレイアウトによれば、ヒータ35で温められ粘性が低くなった熱媒体がポンプ31に供給される。すると、ポンプ31で送り出す熱媒体の流量が増えることとになり、熱媒体冷媒熱交換器20での冷媒吸熱量が増え、さらにシステム全体の性能を高めることができる。
【0074】
(4)また本実施形態の車両用空調システム1にあっては、暖房運転時に曇り止めのために車室内から車外に排出される空気の熱を廃熱として利用しているため、既存のシステムを有効に利用することができる。
【0075】
(5)なお、本発明にあってはリアブロア49が無くても車両から排出される排気空気の熱を回収することができるが、本実施形態ではリアブロア49を設けて強制的に廃熱回収熱交換器34に空気を吹き付けることができるため、より確実に廃熱を回収することができる利点がある。
【0076】
(6)また本実施形態の車両用空調システム1にあっては、暖房成績係数COPが最も高くなる熱媒体の温度を算出して目標温度Trtとし(ステップS31〜S43)、当該目標温度Trtと実際の検出温度Trとの差に基づいて当該熱媒体が目標温度となるようにヒータ35を制御する(ステップS49、S51)制御部を備える。そのため、本実施形態によれば、成績係数COPが最も良くなるため(消費電力を削減できるため)、特にエンジン(内燃機関)で走行しない電気自動車や燃料電池車またはハイブリット車に有効な運転制御となる。
【0077】
(7)また本実施形形態の車両用空調システム1にあっては、COPが最も高くなる目標水温Twtを算出するために、目標車室内温度Trt、リアブロア電力Wbr、水温Twおよびポンプ出力Wpを入力パラメータとして、廃熱回収熱交換器34の廃熱回収量Qr=f(Trt、Wbr、Wp、Tw)を求めるとともに、外気温Ta、コンプレッサ回転数Nc、膨張弁開度ζ、目標車室内温度Trt、リアブロア電力Wbr、フロントブロア電力Wbfおよびポンプ電力wpを入力パラメータとして、熱媒体冷媒熱交換器20の冷媒吸熱量Qe=f(Ta、Trt、Nc、ζ、Wbr、Wbf、Wp、Tw)を求め、これら廃熱回収量Qrと冷媒吸熱量Qeとの交点の水温Twを目標水温Trtとしている。
【0078】
そのため、車室内温度の制御に必要な入力パラメータ(外気温度Ta、室内温度Tr、目標室内温度Trt、フロントブロア電圧Wbr(=リアブロア電圧Wbf)、コンプレッサ回転数Nc、膨張弁開度ζと、検出センサを設けずに値を検出できるポンプ電圧Wp以外に、廃熱回収回路30に1つの温度センサ33を取り付けるのみで、少ないセンサ数で制御が可能となる。
【0079】
次に、他の実施形態について説明する。
【0080】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態の車両用空調システムのヒータ出力制御のフローチャートである。なお、ヒータの出力制御以外は第1実施形態と同一の構成であるため、重複する構成および作用効果の説明は省略する。
【0081】
図8に示すように第2実施形態のヒータの出力制御の制御フローは、ステップS43とステップS45との間に、ステップS61、S63を備える点で、図5に示す第1実施形態の制御フローと異なる。
【0082】
つまり、ステップS43で目標水温Twtを算出した後、算出された目標水温Twtがコンプレッサ作動可能温度の下限値T1よりも高いか否かを判定する(ステップS61)。
【0083】
算出された目標水温Twtがコンプレッサ作動可能温度の下限値T1よりも低い場合には(ステップS61でNO)、コンプレッサ11が作動できないので、COPが低下するが、目標水温Twtをコンプレッサ作動可能温度の下限値T1に置き換え(ステップS63)、第1実施形態と同様のステップS45以降の処理を行う。
【0084】
逆に、算出された目標水温Twtがコンプレッサ作動可能温度の下限値T1よりも高い場合には(ステップS61でYES)、そのまま第1実施形態と同様のステップS45以降の処理を行う。
【0085】
なお、コンプレッサ11の作動可能温度の下限値T1は、例えばフロン冷媒である場合には−5℃程度であるが、冷媒の種類などによって値は異なる。)
このように第2実施形態では、目標水温Twtがコンプレッサ11の作動可能温度から外れていた場合には、コンプレッサ作動可能温度で且つ目標水温Twtに最も近い値にしてヒータ制御することで、コンプレッサ11の起動を確保しつつ、COPの最も良くなる水温Twで作動させることができる。
【0086】
以上のように、第1、第2実施形態の車両用空調システム1によれば、低温環境における暖房初期時にウォームアップ性能を向上できる。
【0087】
なお、上述の実施形態は、本発明を説明するための好適な一例であり、本発明は上述の実施形態のみに限定解釈されるべきではない。
【0088】
例えば、上述の実施形態においては、車両から排出される廃熱は、車室内から車室外に排出される排出空気の熱であったが、本発明では、車両走行用のエンジン、モータおよびバッテリの廃熱を利用してもよいし、その他の車両に搭載された機器の廃熱を利用してもよい。
【0089】
また、本発明では、ヒートポンプ回路のさまざまな変更が可能である。つまり、少なくとも、ヒートポンプ回路を循環する冷媒に車室内の熱を吸熱して車室内を冷却できるエバポレータと、ヒートポンプ回路を循環する冷媒の熱を車室内に放熱できるコンデンサと、廃熱回収回路を流れる熱媒体とヒートポンプ回路を循環する冷媒とで熱交換させて、熱交換して暖まった冷媒を前記コンデンサに流通させることができる熱媒体冷媒熱交換器と、を備えるヒートポンプであれば、回路構成は、さまざまな変更が可能である。
【0090】
また、ヒートポンプ回路に用いられるコンプレッサとしては、上述の実施形態では、吐出容量が不変で且つ回転数によって冷媒吐出量を変更可能な固定容量コンプレッサを例にとって説明したが、例えば斜板式可変容量コンプレッサのように吐出容量を変更可能な可変容量コンプレッサを用いてもよい。なお、可変容量コンプレッサを用いた場合、ヒートポンプ回路を流れる冷媒流量は、コンプレッサの回転数に加えて、容量を変更するための容量制御電磁弁などの開弁度などに基づいて周知の方法により計算できる。
【0091】
また、上述の本実施形態は、COPが最適値となるように制御することで、走行駆動源としてのエンジン(内燃機関)を備えない電気自動車、燃料電池車などに適用するのに好適であるが、本発明は勿論、エンジン(内燃機関)などにより走行する車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は第1実施形態の車両用空調システムの概略図。
【図2】図2は同車両用空調システムの冷房運転時の動作を示す概略図。
【図3】図3は同車両用空調システムを暖房運転時の動作を示す概略図。
【図4】図4は同車両用空調システムの制御部による暖房運転の制御フローを示す図。
【図5】図5はヒータ出力制御処理を示すフローチャート。
【図6】図6は廃熱回収量Qr、冷媒吸熱量QeおよびCOPと、水温Twとの関係をグラフ化した図。
【図7】図7は廃熱回収回路を流れる水の流量と、熱媒体冷媒熱交換器で水から冷媒が吸熱する熱量と、の相関関係を示す図。
【図8】図8は第2実施形態のヒータ出力制御処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0093】
1 車両用空調システム
10 ヒートポンプ回路
10a 第1の回路(冷房用の回路)
10b 第2の回路(暖房用の回路)
11 コンプレッサ
12 切換弁
13 第1のコンデンサ
14 受液器
15 第1の膨張手段
16 第1のエバポレータ(室内冷房用熱交換器)
17 アキュウムレータ
18 第2のコンデンサ(室内暖房用熱交換器)
19 第2の膨張手段
20 第2のエバポレータ(熱媒体冷媒熱交換器)
30 廃熱回収回路
31 ポンプ
34 廃熱回収熱交換器
35 電気ヒータ
40 空調ユニット
41 ケーシング
43 フロントブロア
45 換気ユニット
47 換気通路
49 リアブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させ冷・暖房運転を可能としたヒートポンプ回路と、
熱媒体を循環させ、車両から排出される廃熱を回収して前記ヒートポンプ回路の冷媒に与える廃熱回収回路と、
を備え、
前記廃熱回収回路は、
熱媒体を循環させるポンプと、車両から排出される廃熱を熱媒体に吸熱させる廃熱回収熱交換器と、前記廃熱回収熱交換器の下流に配置され当該廃熱回収回路を循環する熱媒体と前記ヒートポンプ回路を循環する冷媒とで熱交換させる熱媒体冷媒熱交換器と、を備えるとともに、当該廃熱回収回路を循環する熱媒体を加熱するヒータをさらに備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調システムであって、
前記廃熱回収回路は、前記廃熱回収熱交換器の下流で且つ前記熱媒体冷媒熱交換器の上流に前記ポンプおよび前記ヒータが設けられていることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調システムであって、
前記ポンプが前記ヒータの下流に配置されていることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用空調システムであって、
成績係数COPが最も高くなる熱媒体の温度を算出して目標温度とし、熱媒体の目標温度と熱媒体の検出温度との差に基づいて当該熱媒体が目標温度となるように前記ヒータを制御する制御部を備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調システムであって、
前記制御部は、前記目標温度が前記コンプレッサの作動可能温度の下限値を下まわる場合、前記目標温度を当該作動可能温度の下限値に設定して前記ヒータを制御する車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−95154(P2010−95154A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267744(P2008−267744)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】