説明

車両用空調装置の故障診断装置

【課題】電気式ヒータの故障か温度センサの故障かを判断する。
【解決手段】作動初期に突入電流が流れて温度が上がると抵抗値が上昇する電気特性を有するヒータ6と、ヒータ6に電力を供給するバッテリ1と、ヒータ6の温度を検出する温度センサ10と、を備える車両用空調装置の故障診断装置であって、ヒータ6に流れる電流を検出する電流検出手段11と、所定時間、ヒータ6に電力を供給し、ヒータ6に流れる電流と、ヒータ6の電気特性と、に基づいてヒータ6及び温度センサ10の故障を診断する故障診断手段(S9)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置の故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置として、発熱体にPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを用いた電気式ヒータを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用空調装置において、電気式ヒータの温度を検出する温度センサの出力値に基づいて電気式ヒータの故障診断を実施しようとすると、温度センサの出力値が異常値を示したときに、電気式ヒータの故障なのか、温度センサの故障なのかを判断できないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、温度センサの出力値が異常値を示したときに、電気式ヒータの故障なのか、温度センサの故障なのかを判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明は、作動初期に突入電流が流れて温度が上がると抵抗値が上昇する電気特性を有するヒータと、ヒータに電力を供給するバッテリと、ヒータの温度を検出する温度センサと、を備える車両用空調装置の故障診断装置である。本発明による車両用空調装置の故障診断装置は、ヒータに流れる電流を検出する。そして、所定時間ヒータに電力を供給し、ヒータに流れる電流とヒータの電気特性とに基づいてヒータ及び温度センサの故障を診断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータに流れる電流とヒータの電気特性とに基づいて、ヒータと温度センサとをそれぞれ個別に故障診断する。したがって、温度センサの出力値に異常があった場合でも、それが電気式ヒータの故障によるものか、温度センサの故障によるものなのかを個別に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電動車両の車両空調装置の概略システム図である。
【図2】PTCヒータの電気特性について説明する図である。
【図3】第1実施形態による故障診断制御について説明するフローチャートである。
【図4】ヒータ温度に基づいて最適システム電圧を算出するマップである。
【図5】PTCヒータの故障診断処理について説明するフローチャートである。
【図6】温度センサの故障診断処理について説明するフローチャートである。
【図7】ヒータ温度、システム電圧及び突入電流のピーク値の関係を示した図である。
【図8】第2実施形態による故障診断制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による電動車両の車両空調装置の概略システム図である。本実施形態では電動車両として電気自動車(Electric Vehicle;EV)を適用した。
【0012】
電動車両の車両空調装置は、バッテリ1と、インバータ2と、モータ3と、外部電源接続部4と、DC/DCコンバータ5と、PTCヒータ6と、メインリレー7と、ヒータリレー8と、ヒューズ9と、温度センサ10と、電圧センサ11と、電流センサ12と、コントローラ13と、を備える。
【0013】
バッテリ1は、モータ3や車両の各種電装品に供給する電気を蓄える。
【0014】
インバータ2は、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、変換した交流電流をモータ3に供給する。インバータ2は、平滑コンデンサ21を備え、メインリレー7がオンのときにバッテリ1と等電位となる。
【0015】
モータ3は、インバータ2から供給される交流電流によって作動し、車両を駆動させるトルクを発生する。
【0016】
外部電源接続部4は、外部電源に対して着脱自在な接続コネクタ41を備え、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換する。接続コネクタ41が外部電源に接続されると、バッテリ1に直流電流が供給されてバッテリ1に電気が蓄えられる。
【0017】
DC/DCコンバータ5は双方向性のコンバータであり、バッテリ1からの出力電圧を降圧させるとともに、外部電源接部からの入力電圧を昇圧させる。
【0018】
PTCヒータ6は、暖房能力が不足しているときに用いられて空調風を加熱する電気式ヒータである。PTCヒータ6は、発熱体の温度上昇に応じて電気抵抗値が増加する、いわゆるPTC特性を有する。この特性によって、PTCヒータ6が所定の上限温度まで達すると電気抵抗値の増加によって電流が流れにくくなり、それ以上温度が上がらなくなる。また、電流が流れにくくなるため消費電力も低下する。
【0019】
メインリレー7は、バッテリ1とモータ3及び車両の各種電装品とを結ぶ電流ラインに設けられる。メインリレー7をオン(短絡状態)にすることで、バッテリ1の充放電が実施される。
【0020】
ヒータリレー8は、バッテリ1とPTCヒータ6とを結ぶ電流ラインに設けられる。ヒータレイレーをオン(短絡状態)にすることで、PTCヒータ6に電流が供給される。
【0021】
ヒューズ9は、バッテリ1とPTCヒータ6とを結ぶ電流ラインに設けられ、定格以上の電流がPTCヒータ6に流れるのを防止する。
【0022】
温度センサ10は、PTCヒータ6に設けられ、PTCヒータ6の温度(以下「ヒータ温度」という)を検出する。
【0023】
電圧センサ11は、バッテリ1の電圧(以下「システム電圧」という)を検出する。
【0024】
電流センサ12は、バッテリ1に流れ込む電流及びバッテリ1から流れ出す電流(以下「システム電流」という)を検出する。
【0025】
コントローラ13は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ13には、前述した温度センサ10や、電圧センサ11、電流センサ12の他にも電動車両の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力される。コントローラ13は、これらの入力信号に基づいて、PTCヒータ6及び温度センサ10の故障診断を実施する。以下では、まずPCTヒータの特性について説明した後、PTCヒータ6及び温度センサ10の故障診断について説明する。
【0026】
次に図2を参照してPTCヒータ6の電気特性について説明する。
【0027】
図2は、PTCヒータ6の電気特性について説明する図であり、PTCヒータ6を作動させたときのシステム電圧及びシステム電流を示した図である。
【0028】
PTCヒータ6には、その特性上、作動初期に突入電流と呼ばれる大電流が流れる。そのため、時刻t1でヒータリレー8をオンにしてPTCヒータ6を作動させると(図2(A))、システム電流は時刻t2でピーク値Irに達し、その後、定常電流値Icまで低下する(図2(C))。なお、この突入電流のピーク値Irは、後述するようにシステム電圧及びヒータ温度に応じて変化する。
【0029】
図3は、PTCヒータ6及び温度センサ10の故障診断制御について説明するフローチャートである。コントローラ13は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0030】
ステップS1において、コントローラ13は、故障診断完了フラグが1にセットされているか否かを判定する。故障診断完了フラグは、PTCヒータ6及び温度センサ10の故障診断が完了したときに1にセットされるフラグである。コントローラ13は、故障診断完了フラグが1にセットされていれば今回の処理を終了する。一方で、故障診断完了フラグが0にセットされていればステップS2に処理を移行する。
【0031】
ステップS2において、コントローラ13は、PTCヒータ通電フラグが1にセットされているか否かを判定する。PTCヒータ通電フラグは、故障診断中にヒータリレー8がオンにされたときに1にセットされるフラグである。コントローラ13は、PTCヒータ通電フラグが1にセットされていればステップS9に処理を移行する。一方で、PTCヒータ通電フラグが0にセットされていればステップS3に処理を移行する。
【0032】
ステップS3において、コントローラ13は、接続コネクタ41が外部電源に接続されているか、すなわち、バッテリ充電中か否かを判定する。これは、バッテリ充電中であれば、車両は停止状態であり、運転者の加速要求等によってシステム電圧が急激に変動することがなく、システム電圧を制御できるためである。コントローラ13は、バッテリ充電中であればステップS4に処理を移行する。一方で、バッテリ充電中でなければ今回の処理を終了する。
【0033】
ステップS4において、コントローラ13は、システム電圧及びヒータ温度を検出する。
【0034】
ステップS5において、コントローラ13は、後述する図4のマップを参照し、検出したヒータ温度に基づいて、突入電流のピーク値Irが最小となる最適システム電圧を算出する。
【0035】
ステップS6において、コントローラ13は、システム電圧と、最適システム電圧と、を比較する。コントローラ13は、最適システム電圧よりもシステム電圧の方が小さければステップS7に処理を移行する。一方で、最適システム電圧よりもシステム電圧の方が大きければステップS8に処理を移行する。
【0036】
ステップS7において、コントローラ13は、バッテリ1の充電を継続する。これにより、システム電圧を最適システム電圧まで上昇させる。
【0037】
ステップS8において、コントローラ13は、バッテリ1の充電を一時停止する。
【0038】
ステップS9において、コントローラ13は、PTCヒータ6の故障診断処理を実施する。具体的な内容については図5を参照して後述する。
【0039】
ステップS10において、コントローラ13は、接続コネクタ41が外部電源から切り離されたか否かを判定する。コントローラ13は、接続コネクタ41が外部電源から切り離されたときはステップS11に処理を移行する。一方で、接続コネクタ41が外部電源から切り離されてなければ今回の処理を終了する。
【0040】
ステップS11において、コントローラ13は、故障診断完了フラグを0にセットする。
【0041】
図4は、ヒータ温度に基づいて、最適システム電圧を算出するマップである。
【0042】
図4に示すように、システム電圧が同じ値の場合で比較すると、突入電流のピーク値Irは、ヒータ温度が低いときほど小さくなる。また、ヒータ温度ごとに突入電流のピーク値Irが最小となる最適システム電圧が存在する。突入電流のピーク値Irは、システム電圧が最適システム電圧より低くなるにつれて大きくなり、またシステム電圧が最適システム電圧より高くなるにつれて大きくなる。
【0043】
このように、突入電流のピーク値Irは、ヒータ温度とシステム電圧とに応じて変化する。
【0044】
図5は、PTCヒータ6の故障診断処理について説明するフローチャートである。
【0045】
ステップS91において、コントローラ13は、PTCヒータ通電フラグが1にセットされているか否かを判定する。コントローラ13は、PTCヒータ通電フラグが1にセットされていればステップS93に処理を移行する。一方で、PTCヒータ通電フラグが0にセットされていればステップS92に処理を移行する。
【0046】
ステップS92において、コントローラ13は、ヒータリレー8をオンしてPTCヒータ6への通電を開始し、PTCヒータ通電フラグを1にセットする。
【0047】
ステップS93において、コントローラ13は、電流センサ12によって、PTCヒータ6を通過する電流(以下「PTCヒータ通過電流」という)を検出する。
【0048】
ステップS94において、コントローラ13は、PTCヒータ通過電流が通常の使用方法で想定される突入電流の最大値(以下「最大ピーク値」という)Irmaxよりも大きいか否かを判定する。最大ピーク値Irmaxは、ヒータ温度が低温で、かつ、システム電圧が高いときにおける突入電流のピーク値Irに製品バラツキ等を考慮した値を加えた数値である。コントローラ13は、PTCヒータ通過電流が最大ピーク値Irmaxよりも小さければステップS95に処理を移行する。一方で、PTCヒータ通過電流が最大ピーク値Irmaxよりも大きければステップS99に処理を移行する。
【0049】
ステップS95において、コントローラ13は、PTCヒータ通過電流がピークを迎えたか否かを判定する。具体的には、電流センサ12によって検出している電流値が単調増加から単調減少に変化すればピークに達したと判定する。コントローラ13は、PTCヒータ通過電流がピークに達していなければステップS96に処理を移行する。一方で、PTCヒータ通過電流がピークに達していればステップS97に処理を移行する。
【0050】
ステップS96において、コントローラ13は、ヒータリレー8をオンにしてからの経過時間が所定時間より大きいか否かを判定する。所定時間は、ヒータリレー8をオンにしてからシステム電流がピーク値Irに達するまでの時間に対して、十分に長い時間である。コントローラ13は、ヒータリレー8をオンにしてからの経過時間が所定時間よりも小さければ今回の処理を終了する。一方で、ヒータリレー8をオンにしてからの経過時間が所定時間よりも大きければステップS99に処理を移行する。
【0051】
ステップS97において、コントローラ13は、温度センサ10の故障診断処理を実施する。具体的な内容については図6を参照して後述する。
【0052】
ステップS98において、コントローラ13は、PTCヒータ6が正常に作動していると診判定する。
【0053】
ステップS99において、コントローラ13は、PTCヒータ6が故障していると判定し、以後はPCTヒータが正常と判定されるまでPCTヒータへの通電を禁止する。
【0054】
ステップS100において、コントローラ13は、ヒータリレー8をオフにしてPTCヒータ6への通電を停止し、PTCヒータ通電フラグを0にセットする。
【0055】
ステップS101において、コントローラ13は、故障診断完了フラグを1にセットする。
【0056】
ステップS102において、コントローラ13は、一時停止していたバッテリ1の充電を再開する。
【0057】
図6は、温度センサ10の故障診断処理について説明するフローチャートである。
【0058】
ステップS971において、コントローラ13は、電流センサ12の検出値に基づいて突入電流のピーク値Irを検出する。具体的には、電流センサ12によって検出している電流値が単調増加から単調減少に変化したときの値を突入電流のピーク値Irとする。
【0059】
ステップS972において、コントローラ13は、図4のマップを参照し、システム電圧とPTCヒータ6の実温度とから予想される突入電流のピーク値(以下「予想ピーク値」という)Irpreを算出する。
【0060】
ステップS973において、コントローラ13は、ピーク値Irと予想ピーク値Irpreとの乖離量が所定量より大きいか否かを判定する。コントローラ13は、ピーク値Irと予想ピーク値Irpreの乖離量が所定量より小さければ今回の処理を終了する。一方で、乖離量が所定量より大きければステップS974に処理を移行する。
【0061】
ステップS974において、コントローラ13は、温度センサ10が故障していると判定する。
【0062】
ステップS975において、コントローラ13は、乖離量に応じて以後の温度センサ10の出力値を補正する。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、PTCヒータ通過電流が通常の使用方法で想定される突入電流の最大値である最大ピーク値Irmaxよりも大きければ、PTCヒータ6の故障と診断する。これは、PTCヒータ6の電気特性は予め任意に設定されているため、通常の使用方法で想定される突入電流の最大ピーク値Irmaxは予め決まっている。そのため、PTCヒータ通過電流が最大ピーク値Irmaxよりも大きくなったときは、PTCヒータ6がショートしていると考えられためである。
【0064】
また、PTCヒータ通過電流が、所定時間を経過してもピークを迎えないとき、すなわち、単調増加のまま単調減少へと変化しないときも、PTCヒータ6の故障と診断する。
【0065】
これは、先と同様にPTCヒータ6の電気特性は予め任意に設定されているため、ピークを迎えるまでの時間も予め決まっている。そのため、PTCヒータ通過電流が所定時間を経過してもピークを迎えないときは、PTCヒータ6の漏電が考えられるためである。
【0066】
さらに、電流センサ12の検出値に基づいて算出した突入電流のピーク値Irと、システム電圧とPTCヒータ6の実温度とに基づいて、予め定められたマップから算出した突入電流の予想ピーク値Irpreと、の乖離量が所定量よりも大きければ、温度センサ10の故障と診断する。これは、実測値であるピーク値Irと、PTCヒータ6の実温度から算出した予想ピーク値Irpreとの乖離量が大きければ、温度センサ10が故障して異常な値を出力していると判断できるためである。
【0067】
このように、本実施形態ではPTCヒータ通過電流とPTCヒータ6の電気特性とに基づいてPTCヒータ6及び温度センサ10の故障を診断する。したがって、温度センサ10が異常な出力値を示したときでも、PTCヒータ6が故障しているのか、温度センサ10が故障しているのかを判断することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、車両停止後のバッテリ充電中という消費電力が制御できる状態、すなわちシステム電圧が制御できる状態のときに故障診断を実施する。PTCヒータ6を作動させたときの突入電流のピーク値は、システム電圧とヒータ温度とに応じて変化する。したがって、システム電圧が制御できる状態のときに故障診断を実施することで、突入電流にピーク値を小さくすることができる。よって、ヒューズ9の耐久性を向上させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、バッテリ1への充電を開始したときに、すぐに故障診断を開始するのか、しばらく充電をしてから故障診断を開始するのかを判断する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0070】
図7は、ヒータ温度、システム電圧及び突入電流のピーク値の関係を示した図である。
【0071】
運転直後にバッテリ1を充電する場合には、PTCヒータ6がまだ高温のままのときがある。このときは、図7に示すように、充電開始直後のシステム電圧が低く、ヒータ温度が高いP点でPTCヒータ6を作動させて故障診断を実施するよりも、ヒータ温度が多少低くなってもシステム電圧が高いQ点でPTCヒータ6を作動させた方が突入電流のピーク値Irが低くなる。
【0072】
そこで本実施形態では、まず充電開始時のバッテリ1の充電量(State of Charge;SOC)と外部電源からの供給電力量とに基づいて、システム電圧の推移を算出する。そして、それと同時に予め実験等で定められたPTCヒータ6の放熱モデルと外気温とに基づいて、ヒータ温度の推移を算出する。
【0073】
次に、システム電圧の推移とヒータ温度の推移とに基づいて、ヒータ温度が低くなってもシステム電圧が高くした方が突入電流のピーク値が小さくなる点があるか否かを判断する。
【0074】
そして、ヒータ温度が低くなってもシステム電圧が高くした方が突入電流のピーク値が小さくなる点がある場合には、その点に推移するまでは故障診断を実施しない。
【0075】
図8は、第2実施形態によるPTCヒータ6及び温度センサ10の故障診断制御について説明するフローチャートである。コントローラ13は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0076】
ステップS21において、コントローラ13は、充電開始時のバッテリ1の充電量と外部電源からの供給電力量とに基づいてシステム電圧の推移を算出すると同時に、予め実験等で定められたPTCヒータ6の放熱モデルと外気温とに基づいてヒータ温度の推移を算出する。
【0077】
ステップS22において、コントローラ13は、システム電圧の推移とヒータ温度の推移とに基づいて、突入電流のピーク値が最小になる最適システム電圧を算出する。
【0078】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られると共に、故障診断時にPTCヒータ6に流れる突入電流のピーク値Irを小さくできるので、ヒューズ9の耐久性をより向上させることができる。
【0079】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0080】
例えば、上記各実施形態では、電流センサ11によって検出した電流値と、ヒータ6の電気特性と、に基づいて故障診断を実施したが、図2(B)に示すようにシステム電圧も突入電流の発生に応じて変化するので、電圧センサによって検出した電圧値と、ヒータ6の電気特性と、に基づいて故障診断を実施しても良い。
【0081】
また、温度センサの補正を、ピーク値及び予想ピーク値のデータを複数の電圧・温度条件で計測し、それぞれの乖離量に基づいて実施しても良い。
【0082】
また、上記各実施形態では、充電時に故障診断を実施したが、システム電圧が制御できる状態であれば充電時のみに限られるものではない。したがって、電気自動車のみならず、燃料電池車などの電動車両に適用しても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 バッテリ
6 PTCヒータ(ヒータ)
10 温度センサ
11 電流センサ(電流検出手段)
S3 故障診断許可手段
S4 故障診断許可手段
S5 故障診断許可手段、最適電圧算出手段
S6 故障診断許可手段
S9 故障診断手段
S21 故障診断許可手段、推移検出手段
S22 故障診断許可手段、最適電圧算出手段
S94 第1故障診断手段
S96 第2故障診断手段
S971 第1ピーク値算出手段
S972 第2ピーク値算出手段
S973 第3故障診断手段
S975 温度センサ補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動初期に突入電流が流れて温度が上がると抵抗値が上昇する電気特性を有するヒータと、
前記ヒータに電力を供給するバッテリと、
前記ヒータの温度を検出する温度センサと、
を備える車両用空調装置の故障診断装置であって、
前記ヒータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
所定時間、前記ヒータに電力を供給し、前記ヒータに流れる電流と、前記ヒータの電気特性と、に基づいて前記ヒータ及び前記温度センサの故障を診断する故障診断手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項2】
前記故障診断手段は、
前記電流検出手段の検出値が、前記ヒータの電気特性から定まる所定の最大ピーク値よりも大きいときに、前記ヒータが故障していると診断する第1故障診断手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項3】
前記故障診断手段は、
前記電流検出手段の検出値が、単調増加のまま前記所定時間を経過したときに、前記ヒータが故障していると診断する第2故障診断手段を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項4】
前記所定時間は、前記ヒータに電力を供給してから前記ヒータの温度が平衡状態になるまでの時間よりも短い
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1つに記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項5】
前記故障診断手段は、
前記電流検出手段の検出値に基づいて、前記ヒータに流れる突入電流のピーク値を算出する第1ピーク値算出手段と、
前記バッテリの電圧と前記ヒータの温度と基づいて、前記ヒータに流れる突入電流のピーク値を算出する第2ピーク値算出手段と、
前記第1ピーク値算出手段によって算出した突入電流のピーク値と、前記第2ピーク値算出手段によって算出した突入電流のピーク値と、の乖離量が所定量よりも大きいときに前記温度センサが故障していると診断する第3故障診断手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1つに記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項6】
前記第1ピーク値算出手段は、
前記電流検出手段の検出値が単調増加から単調減少に移行したときの電流値を突入電流のピーク値として算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項7】
前記乖離量に基づいて、前記温度センサの出力値を補正する温度センサ補正手段を備える
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項8】
前記故障診断手段は、
前記バッテリの電圧を制御できるときに、前記バッテリの電圧値に応じて前記車両用空調装置の故障診断を許可するか否かを判定する故障診断許可手段を備える
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1つに記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項9】
前記故障診断許可手段は、
前記ヒータの温度に基づいて、前記ヒータに流れる突入電流のピーク値が最小となる前記バッテリの最適電圧を算出する最適電圧算出手段を備え、
前記バッテリの電圧値が、前記最適電圧以上のときに前記車両用空調装置の故障診断を許可する
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項10】
前記故障診断許可手段は、
充電直前のバッテリ充電量と充電時に供給される電力量とに基づいて、前記バッテリの電圧値の推移を検出する手段と、
前記ヒータの温度と外気温とに基づいて、前記ヒータの温度の推移を検出する手段と、
前記バッテリの電圧値の推移と前記ヒータの温度の推移とに基づいて、前記ヒータに流れる突入電流のピーク値が最小となる前記バッテリの最適電圧を算出する最適電圧算出手段と、
を備え、
前記バッテリの電圧値が、前記最適電圧以上のときに前記車両用空調装置の故障診断を許可する
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置の故障診断装置。
【請求項11】
作動初期に突入電流が流れて温度が上がると抵抗値が上昇する電気特性を有するヒータと、
前記ヒータに電力を供給するバッテリと、
前記ヒータの温度を検出する温度センサと、
を備える車両用空調装置の故障診断装置であって、
前記バッテリの電圧を検出する電圧検出手段と、
所定時間、前記ヒータに電力を供給し、前記バッテリの電圧と、前記ヒータの電気特性と、基づいて前記ヒータ及び前記温度センサの故障を診断する故障診断手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−221772(P2010−221772A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69553(P2009−69553)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】