説明

車両用空調装置制御システム

【課題】気象予報を空調制御に利用することで車内環境の悪化を事前に検知し、悪化する前に車内環境を快適に維持するように空調装置を制御する車両用空調装置制御システムを提供する。
【解決手段】本発明は、気象予報を取り込む気象予報取得手段41と、気象予報に基づき、車両用空調装置6の空調設定温度を予め設定されている目標温度よりも所定値だけ調整して目標温度指令とする最適温度設定手段43,46とを備えた車両用空調装置制御システムを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天気予報を反映させて車両用空調装置を制御する車両用空調装置制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置を制御する制御装置として図5に示す構成のものが知られている。この従来の車両用空調装置制御システムは、パンタグラフ101より入力される電力を補助電源装置102に与え、ここで空調用電源を生成して、空調装置103、空調制御装置104に供給している。空調装置103は、空調制御装置104によって、内部のコンプレッサの運転台数や運転時間を制御して空調能力を制御している。空調制御装置104はマイクロコンピュータを搭載しており、記憶領域に記憶された空調設定温度に対して、車内温度センサ106による車内温度検出値との差が大きい程、空調能力を高める制御を行っている。この空調設定温度は、車内湿度センサ107による車内湿度検出値、情報制御装置105からの車外温度検出値や車両の乗車率を信号化した応荷重検出値により補正も行っている。
【0003】
この従来の車両用空調装置制御システムにおいては、空調装置を制御する根拠とする情報として車内情報を主にしているため、車内環境の悪化を検知してから改善を行う制御方式になってしまい、利用客が不快に感じる前に快適な車内環境を維持するように空調装置を制御することができない問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、気象予報を空調装置の制御に利用することで車内環境の悪化を事前に検知し、悪化する前に車内環境を快適に維持するように空調装置を制御することができる車両用空調装置制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、気象予報を取り込む気象予報取得手段と、前記気象予報に基づき、車両用空調装置の空調設定温度を予め設定されている目標温度よりも所定値だけ調整して目標温度指令とする最適温度設定手段とを備えた車両用空調装置制御システムを特徴とする。
【0006】
上記車両用空調装置制御システムにおいて、気象予報として「晴れ」、「曇り」、「雨」の天気情報と共に予想気温情報を取り込み、天気情報及び予想外気温と車内設定温度との差の大小の組み合わせによって目標温度指令を調整するものとできる。
【0007】
また、上記車両用空調装置制御システムにおいて、気象予報が降雨と判断されるときに、空調設定湿度を予め設定されている目標湿度よりも所定値だけ調整して目標湿度指令とするものとできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用空調装置制御システムによれば、端境期のような季節の変わり目、夕立のような急激な天候の変化に際しても、空調装置によって車内の温湿度を予めその変化に対応したものに調整するため、車内環境の悪化を未然に防ぎ、常に快適な車内環境を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は、本発明の1つの実施の形態の車両用空調装置制御システムを示し、図2には空調制御装置の機能構成を示している。
【0010】
図1に示してあるように、車両用空調装置制御システムは、駅1や基地局2から送信される気象予報を直接、もしくは車両情報装置3経由で空調制御装置4が受信し、温湿度制御指令を生成して各車両5内の空調装置6に送信する構成である。
【0011】
空調制御装置4は、駅1や基地局2から送信される気象予報を直接、もしくは車両情報装置3経由で取り込み、予想される温度変化、湿度変化など天気情報を各空調装置6の空調に加味させる制御を行う。図2に示したように、この空調制御装置4は、駅1や基地局2からの気象予報データを取得する気象予報取得部41、現在の温湿度設定値と気象予報とを対比して車内温湿度の調整度合を指示する図3に示すデータテーブル42を保持する温湿度調整テーブル記憶部43、気象予報取得部41にて取得した気象予報と車内温湿度を検出する温度センサ(TH−S)44、湿度センサ(HM−S)45からの温湿度情報とを比較し、車内環境を最適にする車内温湿度を生成し制御指令として出力する最適環境計算部46、そしてこの最適環境計算部46の生成した温湿度指令を各空調装置6に出力する温湿度指令部47を備えている。
【0012】
次に、上記構成の車両用空調装置制御システムによる車両用空調装置の制御動作について説明する。空調制御装置4では、気象予報取得部41にて、車両5の駅停車時に駅1構内の端末1Aから送信されてくる現地の気象予報を直接に受信し、また、沿線に設置されている基地局2から送信されてくる現地の気象予報を直接に受信する。尚、これらの気象予報は、車両5の車両情報装置3にていったん受信し、空調制御装置4に転送されてきたものを受信するものとしてもよい。
【0013】
気象予報取得部41にて受信された現地の気象予報は最適環境計算部46に送信される。最適環境計算部46では温湿度調整テーブル記憶部43に登録されているデータテーブル42を参照し、現地の現在及び今後の気象情報が「快晴」、「晴れ」、「曇り」、「雨」のいずれであるか、また予想温度が何度であるかにより、現在の空調装置6に対する温湿度制御指令を図3に示す温湿度調整データテーブル42に基づいて最適温湿度を算出する。
【0014】
このデータテーブル42には、例えば、予測天気が「快晴」であり、予想温度が空調装置6の車内設定温度よりも5℃以上高い場合には乗客には設定温度では暑すぎることになると予想されるので、温度指令を一定温度だけ、例えば、設定温度よりも1℃刻みで下げる温度指令を生成する。また、例えば、予測天気が「曇り」であり、予想温度が空調装置6の車内設定温度よりも5℃以上低い場合には、乗客には設定温度では肌寒く感じることになると予想されるので、温度指令を一定温度だけ、例えば、設定温度よりも1℃刻みで上げる温度指令を生成すると共に、湿度指令も設定湿度よりも5%下げる湿度指令を生成する。さらに、例えば、予測天気が「雨」であり、予想温度が空調装置6の車内設定温度に対して±5℃の範囲内である場合には、温度指令は設定温度に維持し、じめじめ感を解消するために湿度指令だけを設定湿度よりも5%下げる湿度指令を生成する。尚、温度の調整刻みは1℃に限定されることはなく、0.5℃刻みであってもよい。また、湿度の調整刻みも5%に限定されることはなく、10%刻みにしたり、あるいはより細かい刻みに設定するようにしてもよい。また、輻射熱を考慮して、快晴時には1℃刻み、晴れ時には0.5℃刻みとすることも可能である。
【0015】
最適環境計算部46にて温度指令、湿度指令が生成されると、この指令温度、指令湿度は温湿度指令部47から各空調装置6に対して送信され、空調装置6各々は指令温度、指令湿度を新たな設定温度、設定湿度に設定し直し、これを目標温度、目標湿度にして車内温湿度を調整する。
【0016】
尚、気象予報取得部41が取得する現地の気象予報としては、現在、車内サービス用に配信されている気象予報データを受信して使用するができる。また、図2において破線で示したように、気象予報取得部41が天気予測情報と共に、運転台ワイパー10の動作情報11によって降雨を検知し、降雨が検知されれば天気予測情報よりも優先して空調制御に反映させるようにすることができる。
【0017】
また、図4に示すように、車両5の直射日光の当たる部分に温度センサ13を取り付け、気象予報取得部41がこの温度センサ13の検出する検出温度と車内温度のとの差が大きいときは「晴れ」と判断して、天気情報として空調制御に使用するようにすることができる。
【0018】
これにより、本実施の形態の車両用空調装置制御システムによれば、端境期のような季節の変わり目、夕立のような急激な天候の変化に際しても、空調装置によって車内の温湿度を予めその変化に対応したものに調整でき、車内環境の悪化を未然に防ぎ、常に快適な車内環境を維持できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1つの実施の形態の車両用空調装置制御システムのブロック図。
【図2】上記実施の形態における空調制御装置のブロック図。
【図3】上記実施の形態における空調制御装置が採用する温湿度調整テーブル。
【図4】上記実施の形態における空調制御装置の別例のブロック図。
【図5】従来例のブロック図。
【符号の説明】
【0020】
1 駅
2 基地局
3 車両情報装置
4 空調制御装置
5 車両
6 空調装置
10 ワイパー
11 ワイパー信号
13 温度センサ
41 気象予報取得部
42 温湿度調整データテーブル
43 温湿度調整テーブル記憶部
44 温度センサ
45 湿度センサ
46 最適環境計算部
47 温湿度指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象予報を取り込む気象予報取得手段と、
前記気象予報に基づき、車両用空調装置の空調設定温度を予め設定されている目標温度よりも所定値だけ調整して目標温度指令とする最適温度設定手段とを備えたことを特徴とする車両用空調装置制御システム。
【請求項2】
前記気象予報取得手段は、駅構内の端末から送信されてくる気象予報を受信することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項3】
前記気象予報取得手段は、沿線に建設されている基地局から送信されてくる気象予報を受信することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項4】
前記気象予報取得手段は、車内サービス用に配信される気象予報を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項5】
前記気象予報取得手段は、運転台ワイパーの稼動情報を受信し、「降雨」と判断することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項6】
前記気象予報取得手段は、直射日光の当たり得る場所に設置された温度センサから外気温度を取り込み、車内温度のとの差が所定値だけ大きいときに「晴れ」と判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項7】
前記気象予報取得手段は、前記気象予報として「晴れ」、「曇り」、「雨」の天気情報と共に予想気温情報を取り込み、
前記最適温度設定手段は、前記天気情報及び予想外気温と車内設定温度との差の大小の組み合わせによって前記目標温度指令を調整することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用空調装置制御システム。
【請求項8】
前記気象予報取得手段が取得した気象予報が降雨と判断されるときに、空調設定湿度を予め設定されている目標湿度よりも所定値だけ調整して目標湿度指令とする最適湿度設定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両用空調装置制御システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−126765(P2008−126765A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312004(P2006−312004)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】