説明

車両用空調装置

【課題】冷房する際のコンプレッサの負荷を軽減しつつ、より急速な冷房効果を得ることが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させ、窓開閉駆動部31によって全ての窓ガラス31aを開放させ、風向切替部19によって風向板19aを適切な向きに変更させて吹出口から吹き出される空気の吹出方向を車内の中央方向に変更する。また、このような動作状態で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも低くなった場合、制御部10は、空調切替部16によって外気導入部16aの動作を終了して内気循環部16bを動作させ、窓開閉駆動部31によって窓ガラス31aの開閉状態を元の状態に戻し、風向切替部19によって風向板19aの向きを元の向きに戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度が車外の温度よりも高い場合に、急速な冷房効果が得られる車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される空調装置は、空調部に車外の空気を取り込んで導入する外気導入機能と、空調部によって空調された空気を車室内で循環させる内気循環機能とを有しており、例えば運転者が、外気導入機能と内気循環機能との切り替えを手動で行なっている。また、自動車に車内の温度及び車外の温度を検出する温度センサを設け、車内の温度と車外の温度との温度差によって外気導入機能及び内気循環機能を適宜切り替えて動作させる空調装置が提案されている。特許文献1には、車内の温度が車外の温度に対して一定値以上高い場合に、一定時間外気導入機能を動作させ、その後は内気循環機能に切り替えて冷房を行なう装置が開示されている。この装置を用いることにより、急速な冷房効果が得られると共に、空調装置に設けられたコンプレッサの負担が軽減される。
【0003】
また、特許文献2には、運転者が一時的に車両から離れる場合であっても、適切に空調処理を行なう装置が開示されている。この装置を用いることにより、運転者が車両から離れている間でも車内の温度が快適に保たれ、車内に残された子供が車内で快適に過ごすことができる。
【特許文献1】特開平8−99524号公報
【特許文献2】特開2005−297816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示された空調装置は、車内の温度が車外の温度に対して一定値以上高い場合に、単に内気循環機能から外気導入機能に切り替えて動作させるので、急速な冷房効果に限界があり、より急速な冷房効果が得られる空調装置が要望されている。また、特許文献2で開示された空調装置は、運転者が一時的に車両から離れている場合であっても車内の温度を快適に保つことができるが、急速な冷房効果が得られるものではない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、車室内の空気を入れ替えつつ車外の空気を取り込んで冷却することにより、空気を冷房する際のコンプレッサの負荷を軽減しつつ、より急速な冷房効果を得ることが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合に、車室内の空気を冷房して循環させ、車両の開閉部材の開/閉状態を、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高かった時点の状態に戻すことにより、ある程度の冷房効果が得られた後は開閉部材の開/閉状態を維持することが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0007】
更に、本発明の他の目的は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、車室内の空気を入れ替えつつ車外の空気を取り込んで冷却しつつ、車室内において適切な空気の流れを作ることにより、より急速な冷房効果を得ることが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合に、車室内の空気を冷房して循環させ、車両の開閉部材の開/閉状態及び冷却された空気の吹出方向を、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高かった時点の状態に戻すことにより、ある程度の冷房効果が得られた後は開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を維持することが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0009】
更に、本発明の他の目的は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合に、車両に付着する雨滴量に応じて開閉部材の開放量を変更することにより、降雨時に、雨滴が車室内に入り込むことを防止しつつ、車室内の空気を入れ替えることが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の他の目的は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合に、車両の速度に応じて開閉部材の開放量を変更することにより、車両の走行中に速度によって発生し得る危険を防止しつつ、車室内の空気を入れ替えることが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0011】
更に、本発明の他の目的は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる際に、その旨を周囲に通知することが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0012】
更に、本発明の他の目的は、例えば運転者が許可した場合にのみ、車両の開閉部材を開放させることにより、安全性を向上させることが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る車両用空調装置は、車室内の温度を検出する車内温度検出手段と、車外の温度を検出する車外温度検出手段と、空気を冷却して車室内に吹き出す冷却手段と、車外の空気を取り込んで前記冷却手段に導入する外気導入手段と、前記冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段と、前記外気導入手段及び内気循環手段のいずれかを動作させる切替を行なう切替手段と、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開閉させる駆動手段とを備える車両用空調装置において、前記車内温度検出手段によって検出された車室内の温度が、前記車外温度検出手段によって検出された車外の温度よりも、所定値以上高いか否かを判断する判断手段と、該判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記切替手段に前記外気導入手段を動作させる切替を行なわせる切替制御手段と、前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる開閉制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、車外の空気を取り込んで冷却手段に導入する外気導入手段と、冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段とを備え、外気導入手段及び内気循環手段を切り替えていずれかを動作させる車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、外気導入手段を動作させ、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開放させる。よって、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合、外気導入手段の動作を行ないつつ、車両に設けられた開閉部材を開放させる。
【0015】
本発明に係る車両用空調装置は、前記判断手段は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを複数回判断するように構成してあり、前記判断手段が否と判断した状態から所定値以上高いと判断した場合、前記開閉部材の開/閉状態を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記開閉部材の開/閉状態を記憶する記憶手段とを備え、前記切替制御手段は、前記外気導入手段が動作している状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記切替手段に前記内気循環手段を動作させる切替を行なわせるように構成してあり、前記開閉制御手段は、前記開閉部材を開放させている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記駆動手段に、前記記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて前記開閉部材を開/閉させるように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった場合に、この時点での開閉部材の開/閉状態を記憶手段に記憶しておく。車両用空調装置は、外気導入手段が動作している状態で、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、内気循環手段を動作させる。また、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させている状態で、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて開閉部材を開/閉させる。よって、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、外気導入手段の動作から内気循環手段の動作に切り替え、開閉部材の開/閉状態を、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった時点に戻すことが可能となる。
【0017】
本発明に係る車両用空調装置は、車室内の温度を検出する車内温度検出手段と、車外の温度を検出する車外温度検出手段と、空気を冷却して車室内に吹き出す冷却手段と、車外の空気を取り込んで前記冷却手段に導入する外気導入手段と、前記冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段と、前記外気導入手段及び内気循環手段のいずれかを動作させる切替を行なう切替手段と、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開閉させる駆動手段と、前記冷却手段によって車室内に吹き出される空気の吹出方向を変更する変更手段とを備える車両用空調装置において、前記車内温度検出手段によって検出された車室内の温度が、前記車外温度検出手段によって検出された車外の温度よりも、所定値以上高いか否かを判断する判断手段と、該判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記切替手段に前記外気導入手段を動作させる切替を行なわせる切替制御手段と、前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる開閉制御手段と、前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記変更手段に、車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向に変更させる吹出方向制御手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、車外の空気を取り込んで冷却手段に導入する外気導入手段と、冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段とを備え、外気導入手段及び内気循環手段を切り替えていずれかを動作させる車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、外気導入手段を動作させ、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開放させ、車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向に変更する。よって、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合、外気導入手段の動作を行ないつつ、車両に設けられた開閉部材を開放させる。更に、車両用空調装置は、冷却されて車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向に変更する。
【0019】
本発明に係る車両用空調装置は、前記判断手段は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを複数回判断するように構成してあり、前記判断手段が否と判断した状態から所定値以上高いと判断した場合、前記開閉部材の開/閉状態及び車室内に吹き出される空気の吹出方向を検出する検出手段と、該検出手段が検出した前記開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を記憶する記憶手段とを備え、前記切替制御手段は、前記外気導入手段が動作している状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記切替手段に前記内気循環手段を動作させる切替を行なわせるように構成してあり、前記開閉制御手段は、前記開閉部材を開放させている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記駆動手段に、前記記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて前記開閉部材を開/閉させるように構成してあり、前記吹出方向制御手段は、空気の吹出方向を所定方向にしている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記変更手段に、前記記憶手段に記憶してある吹出方向に基づいて車室内に吹き出される空気の吹出方向を変更させるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった場合に、この時点での開閉部材の開/閉状態及び車室内に吹き出される空気の吹出方向を記憶手段に記憶しておく。車両用空調装置は、外気導入手段が動作している状態で、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、内気循環手段を動作させる。また、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させている状態で、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて開閉部材を開/閉させる。更に、車両用空調装置は、空気の吹出方向を所定方向にしている状態で、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、記憶手段に記憶してある吹出方向に基づいて車室内に吹き出される空気の吹出方向を変更する。よって、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、外気導入手段の動作から内気循環手段の動作に切り替え、開閉部材の開/閉状態及び冷却されて車室内に吹き出される空気の吹出方向を、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった時点に戻すことが可能となる。
【0021】
本発明に係る車両用空調装置は、車両に付着する雨滴量を検出する雨滴量検出手段を備え、前記開閉制御手段は、前記駆動手段に、前記雨滴量検出手段が検出した雨滴量に応じた開放量に前記開閉部材を開放させるように構成してあることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、車両に付着する雨滴量を検出し、検出した雨滴量に応じた開放量に開閉部材を開放させる。よって、雨滴量に応じて開閉部材の開放量を変更することが可能となる。
【0023】
本発明に係る車両用空調装置は、車両の速度を検出する速度検出手段を備え、前記開閉制御手段は、前記駆動手段に、前記速度検出手段が検出した速度に応じた開放量に前記開閉部材を開放させるように構成してあることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、車両の速度を検出し、検出した速度に応じた開放量に開閉部材を開放させる。よって、車両の速度に応じて開閉部材の開放量を変更することが可能となる。
【0025】
本発明に係る車両用空調装置は、前記開閉制御手段が前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる場合、その旨を通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、その旨を周囲に通知する。
【0027】
本発明に係る車両用空調装置は、前記駆動手段による前記開閉部材の開放を許可する許可信号を取得する取得手段と、前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記取得手段が前記許可信号を取得するまでの間、前記駆動手段による前記開閉部材の開放を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合であっても、開閉部材の開放を許可する許可信号を取得するまでの間、車室内の空気を入れ替えるために行なう開閉部材の開放を禁止する。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、外気導入手段を動作させて車外の空気を取り込んで冷却しつつ、車両に設けられた開閉部材を開放させる。よって、車室内の温度が車外の温度と比較して高すぎる場合に、車室内よりも低い温度の車外の空気を冷却して車室内に吹き出すことにより、冷房効率がよく、冷房する際のコンプレッサの負荷を軽減できると共に、冷房するために必要な燃料の節約が可能となり、省エネ効果が得られる。また、開閉部材を開放させて車室内の空気を入れ替えることにより車室内の温度を急速に下げることができ、開閉部材を開放させつつ冷房することにより、単に車外の空気を冷却して車室内に導入する場合と比較して、より急速な冷房効果を得ることができる。
【0030】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった場合に、この時点での開閉部材の開/閉状態を記憶手段に記憶しておく。車両用空調装置は、外気導入手段が動作している状態で車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、外気導入手段の動作から内気循環手段の動作に切り替え、開閉部材の開/閉状態を記憶手段に記憶してある開/閉状態に戻す。これにより、例えば運転者によって予め設定されていた開閉部材の開/閉状態を、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合に元の状態に戻すことができる。具体的には、例えば、冷房開始時に開閉部材の開/閉状態を記憶手段に記憶した場合には、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、開閉部材の開/閉状態を冷房開始時点の状態に戻すことができる。従って、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合には、より急速な冷房効果を得ることができると共に、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合には、運転者が所望する開閉部材の開/閉状態を維持することができる。
【0031】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、外気導入手段を動作させて車外の空気を取り込んで冷却しつつ、車両に設けられた開閉部材を開放させる。また同時に、車両用空調装置は、冷却されて車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向に変更する。よって、車室内の温度が車外の温度と比較して高すぎる場合に、車室内よりも低い温度の車外の空気を冷却して車室内に吹き出すことにより、冷房効率がよく、冷房する際のコンプレッサの負荷を軽減できると共に、冷房するために必要な燃料の節約が可能となり、省エネ効果が得られる。また、開閉部材を開放させて車室内の空気を入れ替えることにより車室内の温度を急速に下げることができ、開閉部材を開放させつつ冷房することにより、単に車外の空気を冷却して車室内に導入する場合と比較して、より急速な冷房効果を得ることができる。更に、冷却されて車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向にすることにより、車室内の空気を効率よく入れ替えることができるような空気の流れを作ることができ、冷房効率をより向上させることができる。
【0032】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低い状態から所定値以上高くなった場合に、この時点での開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を記憶手段に記憶しておく。車両用空調装置は、外気導入手段が動作している状態で車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、外気導入手段の動作から内気循環手段の動作に切り替え、開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を、記憶手段に記憶してある開/閉状態及び吹出方向に戻す。これにより、例えば運転者によって予め設定されていた開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合に元の状態に戻すことができる。具体的には、例えば、冷房開始時に開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を記憶手段に記憶した場合には、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合、開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を、冷房開始時点の状態に戻すことができる。従って、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合には、より急速な冷房効果を得ることができると共に、車室内の温度が車外の温度から所定値高い温度よりも低くなった場合には、運転者が所望する開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を維持することができる。
【0033】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、車両に付着する雨滴量に応じて開閉部材の開放量を変更する。よって、降雨時において、雨滴が車室内に入り込むことを防止しつつ、車室内の空気を入れ替えることによって冷房効率を向上させることができる。
【0034】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、車両の速度に応じて開閉部材の開放量を変更する。よって、例えば、車両が高速で走行している場合には開閉部材の開放量を少なくすることにより、高速での走行中に発生し得る危険を防止しつつ、車室内の空気を入れ替えることによって冷房効率を向上させることができる。
【0035】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の空気を入れ替えるために開閉部材を開放させる場合、その旨を周囲に通知する。よって、例えば運転者が、開閉部材を開放させる際に発生し得る危険を回避することができると共に、開閉部材が開放された後に発生し得る危険に対して用心することができ、安全性を確保することができる。
【0036】
本発明では、車両用空調装置は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合であっても、開閉部材の開放を許可する許可信号を取得するまでの間、車室内の空気を入れ替えるために行なう開閉部材の開放を禁止する。よって、例えば運転者が許可した場合にのみ開閉部材を開放させることにより、安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明に係る車両用空調装置をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図であり、図中1は本実施形態1に係る車両用空調装置を示している。本実施形態1の車両用空調装置1は、CPU(Central Processing Unit )又はMPU(Micro Processor Unit)等により構成された制御部10を制御中枢とし、バス1aを介して接続される以下のハードウェア各部の動作を制御する。バス1aには、ROM11、RAM12、操作部13、車外の温度を検出する車外温度センサ(車外温度検出手段)14、車内(車室内)の温度を検出する車内温度センサ(車内温度検出手段)15、空調切替部16、空調部17、LANとの接続を行なうためのLANインタフェース18、風向切替部19、警報器20等が接続されている。
【0038】
制御部10は、時計手段(図示せず)を備えており、時計手段にて計時するタイミングに従って、ROM11に予め記憶してある制御プログラムを適宜RAM12に読み出して実行する。ROM11には、車両用空調装置1を本発明に係る車両用空調装置として動作させるために必要な種々の制御プログラムが予め格納されている。RAM12はSRAM又はSDRAM等で構成されており、制御部10による制御プログラムの実行時に発生する種々のデータを一時的に記憶する。操作部13は、運転者又は搭乗者からの種々の指示を受け付けるためのキーを備えている。
【0039】
空調切替部16には、車外の空気を取り込んで空調部17に導入する外気導入部(外気導入手段)16aと、空調部17によって空調された車内の空気を循環させる内気循環部(内気循環手段)16bとが接続されている。空調切替部16は、外気導入部16a又は内気循環部16bを動作させる切替を行なう切替手段として動作しており、外気導入部16aによって車外から取り込んだ車外の空気、又は内気循環部16bによって車内を循環する車内の空気を空調部17へ送り込む。
【0040】
空調部17は、コンプレッサ、減圧機、熱交換器、冷媒回路、送風ファン(全て図示せず)等を備えており、車外の空気と車内の空気との間で熱交換を行なうことによって冷房運転又は暖房運転を行なう。具体的には、冷媒回路内に充填された冷媒が、コンプレッサ又は減圧機によって圧縮又は減圧され、熱交換器にて放熱又は吸熱することにより、外気導入部16aによって車外から取り込まれた空気、又は内気循環部16bによって車内を循環する空気が加熱又は冷却され、適切に空調された空気が送風ファンによって車内に吹き出される。従って、空調部17は、空気を冷却して車内に吹き出す冷却手段として動作する。
【0041】
LANインタフェース18は、LANを介して窓開閉制御装置3及び車両制御装置4と接続されている。窓開閉制御装置3は、CPU又はMPU等により構成された制御部30、窓開閉駆動部31、LANとの接続を行なうためのLANインタフェース32等を備え、これらのハードウェア各部はそれぞれ、バス3aを介して相互に接続されている。窓開閉駆動部(駆動手段)31は、車両に開閉可能に設けられた開閉部材である窓ガラス31aを開閉させる駆動モータを備えており、制御部30による制御に従って、窓ガラス31aを適切に開閉させる。なお、ここでの窓ガラス31aとしては、車両の各ドアに設けられた窓ガラス、車両の天井に設けられたスライドルーフがある。また、制御部30は、LANを介して車両用空調装置1の制御部10からの指示に従って、窓開閉駆動部31を制御する。
【0042】
車両制御装置4は、図示していないが、CPU又はMPU等により構成された制御部、ROM、RAM、LANとの接続を行なうためのLANインタフェース等を備えており、LANを介して接続されている車両用空調装置1及び窓開閉制御装置3を制御する。また、LANには、車両用空調装置1及び窓開閉制御装置3のほかに、例えば、車両の搭乗者に対するインタフェースに係る車載機器、車両の走行に係る制御系の車載機器等が接続されており、車両制御装置4は、LANを介して、これらの機器の制御も行なう。なお、以下では、説明の便宜上、車両用空調装置1の制御部10が、LANを介して窓開閉制御装置3を制御する構成を例に説明する。
【0043】
風向切替部19は、風向板19aの向きを切り替える駆動モータを備えており、制御部10からの制御に従って、風向板19aの向きを切り替えることによって、空調部17によって空調されて車内に吹き出される空気の吹出方向を適切な向きに変更する変更手段として動作する。図2は風向板19aの構成例を示す模式図である。風向板19aは、図示しないダッシュボードに設けられた空気の吹出口19bに設けられており、車内に吹き出される空気の吹出方向を上下方向に沿って変更する風向板19aa,19aa,19aaと、車内に吹き出される空気の吹出方向を左右方向に沿って変更する風向板19ab,19abとを有する。なお、風向板19aの構成は、図2に示した構成には限られない。
【0044】
警報器(通知手段)20は、例えばブザーにより構成されており、本実施形態1の車両用空調装置1においては、窓開閉制御装置3の窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開閉させる際に、その旨を運転者又は搭乗者に通知するためにブザーを鳴動させる。また、警報器20をLEDによって構成することもでき、この場合、LEDを点灯させることにより運転者又は搭乗者に通知及び警告することができる。
上述したようなハードウェア各部は、図示しないエンジンからの出力によって充電されたバッテリ(図示せず)から供給される電力によって動作する。
【0045】
上述したような構成の本実施形態1の車両用空調装置1は、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することにより、空調部17による冷房運転の開始が指示された場合、車外温度センサ14及び車内温度センサ15によってそれぞれ車外の温度及び車内の温度を検出する。制御部10は、車外温度センサ14によって検出された車外の温度に、予めROM11に格納されている所定値を加算した温度と、車内温度センサ15によって検出された車内の温度とを比較し、車内の温度が、車外の温度よりも所定値以上高いか否かを判断する判断手段として動作する。
【0046】
制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、空調切替部16、LANインタフェース18を介して窓開閉制御装置3及び風向切替部19のそれぞれに、その旨を通知する。空調切替部16は、制御部10からの通知に従って、外気導入部16aを動作させる切替を行なう。また、窓開閉制御装置3においては、窓開閉駆動部31が、制御部30からの制御に従って、全ての窓ガラス31aを開放させる。更に、風向切替部19は、風向板19a(具体的には、3つの風向板19aa及び2つの風向板19ab)を適切な向きに変更することにより、吹出口19bから吹き出される空気の吹出方向を車内の中央方向に変更する。
【0047】
従って、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合、空調切替部16に外気導入部16aを動作させる切替を行なわせる切替制御手段、窓開閉駆動部31に窓ガラス31aを開放させる開閉制御手段、風向切替部19に空気の吹出方向を変更させる吹出方向制御手段として動作する。なお、空気の吹出方向を車内の中央方向にするための風向板19aの向きは、例えばROM11に予め記憶されている。
【0048】
一方、制御部10は、車内の温度が、車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合、空調切替部16にその旨を通知し、空調切替部16は、制御部10からの通知に従って、内気循環部16bを動作させる切替を行なう。なお、この場合、制御部10は、窓開閉駆動部31及び風向切替部19を動作させない。
【0049】
ここで、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、空調切替部16、窓開閉駆動部31及び風向切替部19のそれぞれに上述したような動作を行わせる前に、この時点での窓ガラス31aの開閉状態及び風向板19aによる吹出方向をそれぞれ、窓開閉駆動部31及び風向切替部19によって検出する検出手段として動作する。なお、窓ガラス31aの開閉状態は、窓開閉制御装置3の制御部30を介して窓開閉駆動部31から取得する。また、制御部10は、それぞれ検出した窓ガラス31aの開閉状態及び風向板19aによる吹出方向をRAM(記憶手段)12に記憶させておく。なお、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かの判断処理を、所定時間間隔で行なっている。
【0050】
制御部10は、運転者又は搭乗者によって冷房運転の開始が指示された時点で、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断し、この時点での窓ガラス31aの開閉状態及び風向板19aによる吹出方向をRAM12に記憶させ、空調切替部16、窓開閉駆動部31及び風向切替部19のそれぞれに上述したような動作を行なわせている状態において、次の判断処理によって車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合、その旨を空調切替部16、窓開閉駆動部31及び風向切替部19に通知する。
【0051】
この場合、空調切替部16は、制御部10からの通知に従って、外気導入部16aの動作を終了して内気循環部16bを動作させる切替を行なう。また、窓開閉駆動部31は、RAM12に記憶させた窓ガラス31aの開閉状態に基づいて、各窓ガラス31aの開閉状態を元の状態に戻し、風向切替部19は、RAM12に記憶させた吹出方向に基づいて、風向板19aの向きを元の向きに戻す。なお、制御部10は、窓ガラス31aの開閉指示を、RAM12に記憶させた窓ガラス31aの開閉状態と共に窓開閉制御装置3の制御部30へ送出する。これにより、窓開閉駆動部31は、制御部30からの指示に従って、制御部10から取得した開閉状態に各窓ガラス31aを開閉させることができる。
【0052】
なお、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断し、窓開閉駆動部31によって窓ガラス31aを開放させる場合、及び窓ガラス31aを開放させている状態で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断し、開放させた窓ガラス31aを窓開閉駆動部31によって元の開閉状態に戻す場合、その旨を警報器20によって周囲に通知する。これにより、冷房運転の開始指示を行なった運転者又は搭乗者に、窓ガラス31aが開放されることを通知することができ、運転者又は搭乗者は、窓ガラス31aが開放される際に発生し得る危険を回避することができ、また、窓ガラス31aが開放された後に発生し得る危険に対して用心することができるので、安全性を向上させることができる。
【0053】
上述したように、冷房運転を開始した時点で、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、即ち、車内の温度が車外の温度と比較して高すぎる場合、外気導入部16aによって車内よりも低い温度の車外の空気を取り込み、空調部17によって冷却して車内に吹き出すことにより、冷房効率がよい。また、冷房する際のコンプレッサの負荷を軽減できるため、冷房するために必要な燃料の節約が可能となり、省エネ効果が得られる。
【0054】
また、窓ガラス31aを開放させて車内の空気を入れ替えることにより車内の温度を急速に下げることができ、窓ガラス31aを開放させつつ空調部17によって冷房することにより、単に車外の空気を冷却して車内に導入する場合と比較して、より急速な冷房効果を得ることができる。更に、冷却されて車内に吹き出される空気の吹出方向を風向板19aによって車内の中央方向にすることにより、車内の空気を効率よく入れ替えることができるような空気の流れを作ることができ、冷房効率をより向上させることができる。
【0055】
更に、冷房運転を開始した時点で車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高く、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させ、窓開閉駆動部31によって窓ガラス31aを開放させ、風向切替部19によって空気の吹出方向を車内の中央方向にしている状態で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合に、内気循環部16bを動作させると共に、窓ガラス31aの開閉状態及び風向板19aによる吹出方向を、冷房開始時点の状態に戻す。これにより、運転者又は搭乗者によって予め設定されていた窓ガラス31aの開閉状態及び風向板19aによる空気の吹出方向を維持することができる。
【0056】
以下に、上述した構成の車両用空調装置1における冷房運転時の処理について説明する。図3及び図4は実施形態1に係る車両用空調装置1における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、ROM11に予め格納されている制御プログラムを制御部10によって適宜RAM12に読み出されて実行される。
【0057】
車両用空調装置1において、制御部10は、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することによって冷房運転の開始が指示されたか否かを判断し(S1)、冷房運転の開始が指示されていないと判断した場合(S1:NO)、待機する。制御部10は、冷房運転の開始が指示されたと判断した場合(S1:YES)、自身に設けられた窓開放フラグをオフにする(S2)。なお、窓開放フラグは、以降の処理において、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放したか否かを示しており、窓開放フラグがオンである場合、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放したことを示す。また、制御部10は、冷房運転の開始が指示された場合、自身の時計手段による計時処理を開始する。
【0058】
次に制御部10は、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S3)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出する(S4)。制御部10は、検出した車外の温度に、予めROM11に格納されている所定値を加算した温度と、検出した車内の温度とを比較し、車内の温度が、車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S5)。
【0059】
制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S5:YES)、窓開閉駆動部31によって、各窓ガラス31aの開閉状態を取得し、RAM12に記憶させる(S6)。また、制御部10は、風向切替部19を介して、各風向板19aa、19aa,19aa,19ab,19abによる吹出方向を取得し、RAM12に記憶させる(S7)。次に制御部10は、ステップS6で取得した各窓ガラス31aの開閉状態に基づいて、各窓ガラス31aが既に全開されているか否かを判断する(S8)。制御部10は、既に全開されていると判断した場合(S8:YES)、ステップS12に処理を移行する。
【0060】
制御部10は、各窓ガラス31aが全開されていないと判断した場合(S8:NO)、警報器20のブザーを鳴動させた後(S9)、窓開閉駆動部31によって全ての窓ガラス31aを開放させ(S10)、自身の窓開放フラグをオンにする(S11)。また、制御部10は、風向切替部19によって、風向板19aa、19aa,19aa,19ab,19abを適切な向きに変更し(S12)、吹出口19bから吹き出される空気の吹出方向を車内の中央方向に変更する。更に、制御部10は、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させる(S13)。
【0061】
制御部10は、自身の時計手段による計時結果に基づいて所定時間が経過したか否かを判断し(S14)、所定時間が経過していないと判断した場合(S14:NO)、所定時間が経過するまで待機し、所定時間が経過したと判断した場合(S14:YES)、ステップS3へ処理を戻す。なお、制御部10は、所定時間が経過したと判断した場合、自身の時計手段による計時処理を再び開始する。
【0062】
制御部10は、再度、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S3)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出し(S4)、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S5)。制御部10は、再度、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S5:YES)、上述したステップS3からステップS14までの処理を繰り返す。制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上でないと判断した場合(S5:NO)、空調切替部16によって、内気循環部16bを動作させる(S15)。
【0063】
次に制御部10は、自身の窓開放フラグがオンであるか否かを判断し(S16)、窓開放フラグがオンであると判断した場合(S16:YES)、即ち、ステップS10で、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していた場合、警報器20のブザーを鳴動させた後(S17)、ステップS6でRAM12に記憶させた各窓ガラス31aの開閉状態を読み出し、窓開閉駆動部31によって各窓ガラス31aを冷房開始時の元の状態に戻す(S18)。また、制御部10は、ステップS7でRAM12に記憶させた各風向板19aによる吹出方向を読み出し、風向切替部19によって各風向板19aを冷房開始時の元の状態に戻す(S19)。
【0064】
一方、制御部10は、ステップS16で、窓開放フラグがオンでないと判断した場合(S16:NO)、即ち、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していない場合、具体的には、ステップS5において1回目の判断処理で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合、又は、ステップS8で窓ガラス31aが既に全開されていた場合、何も行なわずに上述した処理を終了する。
【0065】
上述した実施形態1では、車内の空気を入れ替えるために開放される窓ガラス31aとして、車両の各ドアに設けられた窓ガラス、車両の天井に設けられたスライドルーフを示したが、これらに限られず、例えば、車両に設けられたスライド式のドア自体を開放するようにしてもよい。但し、ドアを開放する場合は、車両の周囲の安全性を十分に確保する必要がある。また、上述した実施形態1では、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かの判断処理を、所定時間間隔で行なう構成の車両用空調装置1について説明した。しかし、例えば、所定距離を走行する都度、前記判断処理を行なうように車両用空調装置1を構成することもできる。
【0066】
また、上述した実施形態1では、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、外気導入部16aを動作させ、窓ガラス31aを開放させ、風向板19aの向きを変更する構成の車両用空調装置1について説明した。しかし、外気導入部16aを動作させる基準としての閾値、窓ガラス31aを開放させる基準としての閾値、風向板19aの向きを変更する基準としての閾値をそれぞれ異なる値とすることもできる。
更に、上述した実施形態1では、窓ガラス31aを開放させる前に警報器20のブザーを鳴動させる構成について説明したが、例えば、窓ガラス31aによる開放動作の間、ブザーを鳴動させ続けるようにしてもよい。この場合、運転者又は搭乗者は、窓ガラス31aが開放されることによる危険に対してより用心することができる。
【0067】
上述した実施形態1では、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、風向板19aを適切な向きに変更することにより、吹出口19bから吹き出される空気の吹出方向を車内の中央方向に変更する構成の車両用空調装置1について説明した。しかし、吹出口19bから吹き出される空気の吹出方向はこれに限られず、車両の形状及び車室の形状に応じて異ならせてもよく、車両の形状及び車室の形状に応じて、車内の空気をより効率よく入れ替えることができる方向にすればよい。また、上述した実施形態1では、運転者又は搭乗者によって冷房運転の開始が指示された場合に、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かの判断処理を行なう構成の車両用空調装置1について説明したが、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することにより、前記判断処理を行ない、必要に応じて窓ガラス31aを開放させるようにしてもよい。
【0068】
上述した実施形態1の車両用空調装置1は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、外気導入部16aを動作させ、窓ガラス31aを開放させると共に、風向板19aの向きを変更する構成を有する。しかし、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合に、外気導入部16aを動作させ、窓ガラス31aを開放させるが、風向板19aの向きは変更させないように車両用空調装置1を構成してもよい。
【0069】
(実施形態2)
以下に、実施形態2における車両用空調装置について説明する。なお、本実施形態2の車両用空調装置1は、上述した実施形態1の車両用空調装置1と同様の構成を有しており、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図5は実施形態2に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態2の車両用空調装置1では、図1で示した各構成のほかに、雨滴量センサ21がバス1aに接続されている。雨滴量センサ21は、例えば、車両のフロントガラスに設けられており、フロントガラスに付着する雨滴量を検出する雨滴量検出手段である。
【0070】
本実施形態2の車両用空調装置1では、ROM11に、複数の雨滴量のそれぞれに応じた各窓ガラス31aの開放量が記憶してある。具体的には、略ゼロの雨滴量に対しては略全開の開放量が記憶してあり、多量の雨滴量に対しては略ゼロの開放量が記憶してある。また、少量の雨滴量に対しては全開に対して半分程度の開放量がROM11に記憶してある。なお、各窓ガラス31aの開放量は、それぞれの窓ガラス31aが設けられた位置に応じて異ならせてもよい。
【0071】
本実施形態2の車両用空調装置1において、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することにより、空調部17による冷房運転の開始が指示された場合、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを判断し、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、雨滴量センサ21によって雨滴量を検出する。また、制御部10は、雨滴量センサ21によって検出した雨滴量に応じた各窓ガラス31aの開放量をROM11から読み出し、各窓ガラス31aそれぞれを開放すべき開放量がゼロであるか否かを判断する。
【0072】
ここで、各窓ガラス31aの開放量がゼロである場合、例えば、雨滴量センサ21によって検出された雨滴量が多く、多量の雨が降っている場合、制御部10は、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させ、窓開閉駆動部31及び風向切替部19には何も行なわせない。即ち、外気導入部16aによって車外から取り込まれた空気を空調部17によって冷却する処理のみ行なう。
【0073】
一方、本実施形態2の車両用空調装置1において、各窓ガラス31aの開放量がゼロでない場合、制御部10は、空調切替部16、窓開閉駆動部31及び風向切替部19のそれぞれに、その旨を通知する。これにより、空調切替部16は、外気導入部16aを動作させる切替を行なう。また、窓開閉駆動部31は、上述したように雨滴量に応じて特定された各窓ガラス31aのそれぞれに対応した開放量に従って、各窓ガラス31aを開放させ、風向切替部19は、風向板19aを適切な向きに変更する。
【0074】
このように、冷房運転を開始した時点で車内の温度が車外の温度と比較して高すぎる場合に、窓ガラス31aを開放させて車内の空気を入れ替える際、雨滴量に応じて窓ガラス31aの開放量を変更することにより、車内の空気を適切に入れ替えることができるので冷房効率を向上させることができると共に、降雨時においては、雨滴が車内に入り込むことを防止できる。
【0075】
以下に、本実施形態2の車両用空調装置1における冷房運転時の処理について説明する。図6及び図7は実施形態2に係る車両用空調装置1における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、ROM11に予め格納されている制御プログラムを制御部10によって適宜RAM12に読み出されて実行される。
【0076】
車両用空調装置1において、制御部10は、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することによって冷房運転の開始が指示されたか否かを判断し(S21)、冷房運転の開始が指示されていないと判断した場合(S21:NO)、待機する。制御部10は、冷房運転の開始が指示されたと判断した場合(S21:YES)、自身に設けられた窓開放フラグをオフにする(S22)。なお、制御部10は、冷房運転の開始が指示された場合、自身の時計手段による計時処理を開始する。
【0077】
次に制御部10は、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S23)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出する(S24)。制御部10は、検出した車外の温度に、予めROM11に格納されている所定値を加算した温度と、検出した車内の温度とを比較し、車内の温度が、車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S25)。制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S25:YES)、雨滴量センサ21によって雨滴量を検出し(S26)、検出した雨滴量に応じた各窓ガラス31aの開放量をROM11から読み出して特定する(S27)。制御部10は、特定した各窓ガラス31aの開放量がゼロであるか否かを判断し(S28)、開放量がゼロであると判断した場合(S28:YES)、ステップS35へ処理を移行する。
【0078】
制御部10は、特定した各窓ガラス31aの開放量がゼロでないと判断した場合(S28:NO)、窓開閉駆動部31によって各窓ガラス31aの開閉状態を取得してRAM12に記憶させ(S29)、風向切替部19を介して、各風向板19aによる吹出方向を取得してRAM12に記憶させる(S30)。次に制御部10は、警報器20のブザーを鳴動させた後(S31)、窓開閉駆動部31によって、ステップS27で特定した各窓ガラス31aの開放量に従って、各窓ガラス31aを開放させ(S32)、自身の窓開放フラグをオンにする(S33)。
【0079】
制御部10は、風向切替部19によって、風向板19aを適切な向きに変更し(S34)、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させる(S35)。制御部10は、自身の時計手段による計時結果に基づいて所定時間が経過したか否かを判断する(S36)。また、制御部10は、所定時間が経過していないと判断した場合(S36:NO)、所定時間が経過するまで待機し、所定時間が経過したと判断した場合(S36:YES)、ステップS23へ処理を戻す。なお、制御部10は、所定時間が経過したと判断した場合、自身の時計手段による計時処理を再び開始する。
【0080】
制御部10は、再度、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S23)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出し(S24)、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S25)。制御部10は、再度、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S25:YES)、上述したステップS23からステップS36までの処理を繰り返す。制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上でないと判断した場合(S25:NO)、空調切替部16によって、内気循環部16bを動作させる(S37)。
【0081】
次に制御部10は、自身の窓開放フラグがオンであるか否かを判断し(S38)、窓開放フラグがオンであると判断した場合(S38:YES)、即ち、ステップS32で、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していた場合、警報器20のブザーを鳴動させた後(S39)、ステップS29でRAM12に記憶させた各窓ガラス31aの開閉状態を読み出し、窓開閉駆動部31によって各窓ガラス31aを冷房開始時の元の状態に戻す(S40)。また、制御部10は、ステップS30でRAM12に記憶させた各風向板19aによる吹出方向を読み出し、風向切替部19によって各風向板19aを冷房開始時の元の状態に戻す(S41)。
【0082】
一方、制御部10は、ステップS38で、窓開放フラグがオンでないと判断した場合(S38:NO)、即ち、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していない場合、具体的には、ステップS25において1回目の判断処理で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合、又は、ステップS28で、特定した各窓ガラス31aの開放量がゼロであった場合、何も行なわずに上述した処理を終了する。
【0083】
上述した実施形態2では、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高く、窓ガラス31aを開放させて車内の空気を入れ替える場合、雨滴量センサ21によって検出した雨滴量に応じた開放量で各窓ガラス31aを開放させる構成の車両用空調装置1について説明した。しかし、例えば、車両の走行速度を検出する速度検出手段を備え、速度検出手段によって検出した速度に応じた開放量で各窓ガラス31aを開放させるように車両用空調装置1を構成することもできる。
【0084】
図8は実施形態2に係る車両用空調装置1の構成の変形例を示すブロック図である。図8に示す車両用空調装置1では、図5で示した雨滴量センサ21の代わりに、車両の走行速度を検出する速度センサ22がバス1aに接続されている。また、この変形例で示す車両用空調装置1では、ROM11に、複数の走行速度のそれぞれに応じた各窓ガラス31aの開放量が記憶してある。具体的には、例えば、時速60km未満の速度に対しては全開の開放量をROM11に記憶しておき、時速60km以上70km未満の速度に対しては全開に対して半分程度の開放量をROM11に記憶しておき、時速70km以上の速度に対しては略ゼロの開放量をROM11に記憶しておく。
【0085】
そして、車両用空調装置1において、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、速度センサ22によって車両の走行速度を検出する。また、制御部10は、速度センサ22によって検出した速度に応じた各窓ガラス31aの開放量をROM11から読み出して特定し、この開放量に応じた各窓ガラス31aを開放させる。なお、この場合も、各窓ガラス31aの開放量は、それぞれの窓ガラス31aが設けられた位置に応じて異ならせてもよい。この場合、例えば、車両が高速で走行している場合に窓ガラス31aの開放量を少なくすることにより、高速での走行中に発生し得る危険を防止しつつ、車内の空気を効率よく入れ替えることによって冷房効率を向上させることができる。
【0086】
上述した本実施形態2における車両用空調装置1においても、上述の実施形態1で説明した変形例と同様の変形例の適用が可能である。
【0087】
(実施形態3)
以下に、実施形態3における車両用空調装置について説明する。なお、本実施形態3の車両用空調装置1は、上述した実施形態1の車両用空調装置1と同様の構成を有しており、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図9は実施形態3に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態3の車両用空調装置1では、図1で示した各構成のほかに、スマートキー制御部23がバス1aに接続されている。なお、図9では、窓開閉制御装置3に備える制御部30、窓開閉駆動部31、窓ガラス31a及びLANインタフェース32の各部を省略して示している。
【0088】
スマートキー制御部23は、スマートキー2との間で信号の送受信を行なうためのアンテナを有しており、制御部10からの指示に従って、スマートキー2に対して適宜アクセスする。具体的には、スマートキー2は、スマートキー制御部23からのアクセスに対して、自身のID情報をスマートキー制御部23へ送信する。スマートキー制御部23は、スマートキー2から受信したID情報が、当該車両に対応したID情報であるか否かを判断し、適切なID情報である場合、スマートキー2とのアクセスが可能であると判断する。なお、スマートキー制御部23は、スマートキー2との間で無線通信を行なっており、スマートキー2が所定の範囲内にある場合にのみアクセスが可能となるので、スマートキー2にアクセスができるか否かによって、スマートキー2を所有する運転者又は搭乗者が車内又は車両の近傍にいるか否かを検知することができる。
【0089】
本実施形態3の車両用空調装置1において、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することにより、空調部17による冷房運転の開始が指示された場合、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを判断し、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いと判断した場合、スマートキー制御部23によってスマートキー2にアクセスする。なお、冷房運転の開始を指示する運転者又は搭乗者は、スマートキー2を所持している必要はない。ここで、スマートキー2からのID情報の応答があり、スマートキー2とのアクセスが可能である場合、制御部10は、空調切替部16、窓開閉駆動部31及び風向切替部19のそれぞれに、その旨を通知する。これにより、空調切替部16は、外気導入部16aを動作させる切替を行ない、窓開閉駆動部31は、全ての窓ガラス31aを開放させ、風向切替部19は、風向板19aを適切な向きに変更する。
【0090】
一方、スマートキー2からのID情報の応答がなく、スマートキー2とのアクセスができなかった場合、制御部10は、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させ、窓開閉駆動部31及び風向切替部19には何も行なわせない。即ち、外気導入部16aによって車外から取り込まれた空気を空調部17によって冷却する処理のみ行なう。従って、本実施形態3の車両用空調装置1では、スマートキー2を所有する運転者又は搭乗者が車両の近傍にいない場合、車内の空気を入れ替えるために窓ガラス31aを開放することを禁止する。これにより、本実施形態3の車両用空調装置1では、スマートキー制御部23は、窓ガラス31aの開放を許可する許可信号を取得する取得手段として動作し、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合であっても、スマートキー制御部23が前記許可信号を取得しない間は、窓ガラス31aの開放を禁止する禁止手段として動作する。
【0091】
このように、冷房運転を開始した時点で車内の温度が車外の温度と比較して高すぎる場合であっても、窓ガラス31aの開放が許可されない場合、具体的には、スマートキー2を所有する運転者又は搭乗者が車両の近傍にいない場合、窓ガラス31aを開放させないことにより、窓ガラス31aを開放させた場合に発生し得る危険を回避することができ、安全性をより向上させることができる。
【0092】
以下に、本実施形態3の車両用空調装置1における冷房運転時の処理について説明する。図10及び図11は実施形態3に係る車両用空調装置1における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、ROM11に予め格納されている制御プログラムを制御部10によって適宜RAM12に読み出されて実行される。
【0093】
車両用空調装置1において、制御部10は、運転者又は搭乗者が操作部13を操作することによって冷房運転の開始が指示されたか否かを判断し(S51)、冷房運転の開始が指示されていないと判断した場合(S51:NO)、待機する。制御部10は、冷房運転の開始が指示されたと判断した場合(S51:YES)、自身に設けられた窓開放フラグをオフにする(S52)。なお、制御部10は、冷房運転の開始が指示された場合、自身の時計手段による計時処理を開始する。
【0094】
次に制御部10は、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S53)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出する(S54)。制御部10は、検出した車外の温度に、予めROM11に格納されている所定値を加算した温度と、検出した車内の温度とを比較し、車内の温度が、車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S55)。制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S55:YES)、スマートキー制御部23によってスマートキー2にアクセスする(S56)。制御部10は、スマートキー2にアクセスできたか否かを判断し(S57)、アクセスできないと判断した場合(S57:NO)、ステップS65へ処理を移行する。
【0095】
制御部10は、スマートキー制御部23によってスマートキー2にアクセスできたと判断した場合(S57:YES)、窓開閉駆動部31によって各窓ガラス31aの開閉状態を取得してRAM12に記憶させ(S58)、風向切替部19を介して、各風向板19aによる吹出方向を取得してRAM12に記憶させる(S59)。次に制御部10は、ステップS58で取得した各窓ガラス31aの開閉状態に基づいて、各窓ガラス31aが既に全開されているか否かを判断する(S60)。制御部10は、既に全開されていると判断した場合(S60:YES)、ステップS64に処理を移行する。
【0096】
制御部10は、各窓ガラス31aが全開されていないと判断した場合(S60:NO)、警報器20のブザーを鳴動させた後(S61)、窓開閉駆動部31によって全ての窓ガラス31aを開放させ(S62)、自身の窓開放フラグをオンにする(S63)。また、制御部10は、風向切替部19によって、風向板19aa、19aa,19aa,19ab,19abを適切な向きに変更し(S64)、空調切替部16によって外気導入部16aを動作させる(S65)。
【0097】
制御部10は、自身の時計手段による計時結果に基づいて所定時間が経過したか否かを判断し(S66)、所定時間が経過していないと判断した場合(S66:NO)、所定時間が経過するまで待機し、所定時間が経過したと判断した場合(S66:YES)、ステップS53へ処理を戻す。なお、制御部10は、所定時間が経過したと判断した場合、自身の時計手段による計時処理を再び開始する。
【0098】
制御部10は、再度、車内温度センサ15によって車内の温度を検出し(S53)、車外温度センサ14によって車外の温度を検出し(S54)、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であるか否かを判断する(S55)。制御部10は、再度、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上であると判断した場合(S55:YES)、上述したステップS53からステップS66までの処理を繰り返す。制御部10は、車内の温度が車外の温度に所定値を加算した温度以上でないと判断した場合(S55:NO)、空調切替部16によって、内気循環部16bを動作させる(S67)。
【0099】
次に制御部10は、自身の窓開放フラグがオンであるか否かを判断し(S68)、窓開放フラグがオンであると判断した場合(S68:YES)、即ち、ステップS62で、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していた場合、警報器20のブザーを鳴動させた後(S69)、ステップS58でRAM12に記憶させた各窓ガラス31aの開閉状態を読み出し、窓開閉駆動部31によって各窓ガラス31aを冷房開始時の元の状態に戻す(S70)。また、制御部10は、ステップS59でRAM12に記憶させた各風向板19aによる吹出方向を読み出し、風向切替部19によって各風向板19aを冷房開始時の元の状態に戻す(S71)。
【0100】
一方、制御部10は、ステップS68で、窓開放フラグがオンでないと判断した場合(S68:NO)、即ち、窓開閉駆動部31が、制御部10からの指示に従って窓ガラス31aを開放していない場合、具体的には、ステップS55において1回目の判断処理で、車内の温度が車外の温度に所定値を加えた温度よりも高くないと判断した場合、又は、ステップS60で窓ガラス31aが既に全開されていた場合、何も行なわずに上述した処理を終了する。
【0101】
上述した実施形態3では、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高く、窓ガラス31aを開放させて車内の空気を入れ替える場合、スマートキー2へアクセスできた場合にのみ各窓ガラス31aを開放させる構成の車両用空調装置1について説明した。しかし、例えば、運転席にシートセンサを備え、シートセンサによって運転者の有無を検出し、運転者がいる場合にのみ各窓ガラス31aを開放させるように車両用空調装置1を構成することもできる。
【0102】
具体的には、シートセンサが、運転者が運転席にいることを検知した場合、窓ガラス31aの開放を許可する許可信号を制御部10へ送出し、制御部10は、許可信号を取得した場合に、窓ガラス31aを開放させて車内の空気を入れ替える。従って、制御部10は、車内の温度が車外の温度よりも所定値以上高い場合であっても、シートセンサから許可信号を取得しない間は、窓ガラス31aの開放を禁止する禁止手段として動作する。この場合は、運転者が確実に運転席に座っているため、車内の空気を入れ替えるために各窓ガラス31aを開放させた場合であっても、安全性を確保することができると共に、車内の空気を効率よく入れ替えることによって冷房効率を向上させることができる。
【0103】
また、スマートキー2を、車両の遠隔から冷房運転の開始が指示できるように構成した場合には、スマートキー2を所有する運転者又は搭乗者が、車両の遠隔から冷房運転の開始指示を行なうと同時に、必要に応じて開放される窓ガラス31aの開放を許可する許可信号をスマートキー2がスマートキー制御部23へ送信するようにスマートキー2を構成すればよい。この場合、冷房運転の開始を遠隔から操作した運転者又は搭乗者が車両に到着するまでの間に冷房動作を行なえるので、より急速な冷房効果が得られる。
【0104】
上述した実施形態3における車両用空調装置1においても、上述の実施形態1で説明した変形例と同様の変形例の適用が可能である。また、本発明の車両用空調装置1を、上述の実施形態2で示した構成と、本実施形態3で示した構成とを組み合わせた構成とすることもできる。具体的には、車内の空気を入れ替えるために窓ガラス31aを開放させる際に、雨滴量を検出すると共に、車両の近傍の運転者又は搭乗者の有無を検出し、運転者又は搭乗者が車両の近傍にいる場合にのみ、検出した雨滴量に応じた開放量で各窓ガラス31aを開放するように車両用空調装置1を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施形態1に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】風向板の構成例を示す模式図である。
【図3】実施形態1に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施形態2に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】実施形態2に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態2に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施形態2に係る車両用空調装置の構成の変形例を示すブロック図である。
【図9】実施形態3に係る車両用空調装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】実施形態3に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態3に係る車両用空調装置における冷房運転時の処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
1 車両用空調装置
10 制御部(判断手段、切替制御手段、開閉制御手段、吹出方向制御手段、検出手段)
12 RAM(記憶手段)
14 車外温度センサ(車外温度検出手段)
15 車内温度センサ(車内温度検出手段)
16 空調切替部(切替手段)
16a 外気導入部(外気導入手段)
16b 内気循環部(内気循環手段)
17 空調部(冷却手段)
18 LANインタフェース
19 風向切替部(変更手段)
20 警報器(通知手段)
21 雨滴量センサ(雨滴量検出手段)
22 速度センサ(速度検出手段)
23 スマートキー制御部
3 窓開閉制御装置
31 窓開閉駆動部(駆動手段)
31a 窓ガラス(開閉部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の温度を検出する車内温度検出手段と、車外の温度を検出する車外温度検出手段と、空気を冷却して車室内に吹き出す冷却手段と、車外の空気を取り込んで前記冷却手段に導入する外気導入手段と、前記冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段と、前記外気導入手段及び内気循環手段のいずれかを動作させる切替を行なう切替手段と、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開閉させる駆動手段とを備える車両用空調装置において、
前記車内温度検出手段によって検出された車室内の温度が、前記車外温度検出手段によって検出された車外の温度よりも、所定値以上高いか否かを判断する判断手段と、
該判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記切替手段に前記外気導入手段を動作させる切替を行なわせる切替制御手段と、
前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる開閉制御手段と
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記判断手段は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを複数回判断するように構成してあり、
前記判断手段が否と判断した状態から所定値以上高いと判断した場合、前記開閉部材の開/閉状態を検出する検出手段と、
該検出手段が検出した前記開閉部材の開/閉状態を記憶する記憶手段とを備え、
前記切替制御手段は、前記外気導入手段が動作している状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記切替手段に前記内気循環手段を動作させる切替を行なわせるように構成してあり、
前記開閉制御手段は、前記開閉部材を開放させている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記駆動手段に、前記記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて前記開閉部材を開/閉させるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
車室内の温度を検出する車内温度検出手段と、車外の温度を検出する車外温度検出手段と、空気を冷却して車室内に吹き出す冷却手段と、車外の空気を取り込んで前記冷却手段に導入する外気導入手段と、前記冷却手段によって冷却された空気を車室内で循環させる内気循環手段と、前記外気導入手段及び内気循環手段のいずれかを動作させる切替を行なう切替手段と、車両に開閉可能に設けられた開閉部材を開閉させる駆動手段と、前記冷却手段によって車室内に吹き出される空気の吹出方向を変更する変更手段とを備える車両用空調装置において、
前記車内温度検出手段によって検出された車室内の温度が、前記車外温度検出手段によって検出された車外の温度よりも、所定値以上高いか否かを判断する判断手段と、
該判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記切替手段に前記外気導入手段を動作させる切替を行なわせる切替制御手段と、
前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる開閉制御手段と、
前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記変更手段に、車室内に吹き出される空気の吹出方向を所定方向に変更させる吹出方向制御手段と
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記判断手段は、車室内の温度が車外の温度よりも所定値以上高いか否かを複数回判断するように構成してあり、
前記判断手段が否と判断した状態から所定値以上高いと判断した場合、前記開閉部材の開/閉状態及び車室内に吹き出される空気の吹出方向を検出する検出手段と、
該検出手段が検出した前記開閉部材の開/閉状態及び空気の吹出方向を記憶する記憶手段とを備え、
前記切替制御手段は、前記外気導入手段が動作している状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記切替手段に前記内気循環手段を動作させる切替を行なわせるように構成してあり、
前記開閉制御手段は、前記開閉部材を開放させている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記駆動手段に、前記記憶手段に記憶してある開/閉状態に基づいて前記開閉部材を開/閉させるように構成してあり、
前記吹出方向制御手段は、空気の吹出方向を所定方向にしている状態で前記判断手段が否と判断した場合、前記変更手段に、前記記憶手段に記憶してある吹出方向に基づいて車室内に吹き出される空気の吹出方向を変更させるように構成してあることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
車両に付着する雨滴量を検出する雨滴量検出手段を備え、
前記開閉制御手段は、前記駆動手段に、前記雨滴量検出手段が検出した雨滴量に応じた開放量に前記開閉部材を開放させるように構成してあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかひとつに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車両の速度を検出する速度検出手段を備え、
前記開閉制御手段は、前記駆動手段に、前記速度検出手段が検出した速度に応じた開放量に前記開閉部材を開放させるように構成してあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかひとつに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記開閉制御手段が前記駆動手段に前記開閉部材を開放させる場合、その旨を通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかひとつに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記駆動手段による前記開閉部材の開放を許可する許可信号を取得する取得手段と、
前記判断手段が所定値以上高いと判断した場合、前記取得手段が前記許可信号を取得するまでの間、前記駆動手段による前記開閉部材の開放を禁止する禁止手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかひとつに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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