説明

車両用空調装置

【課題】特に乗員の上半身に向けて空気を吹き出す際に、乗員の体感に即した温度制御を行うことができると共に、コンプレッサの稼動効率の向上を図ることができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】吹出モードスイッチ(吹出口設定手段)5によって、ベント吹出口10のみから空気が吹き出すように設定された場合、又は、ベント吹出口10及びフット吹出口11の両方から空気が吹き出すように設定された場合であって、室温設定スイッチ(車室温度設定手段)6が操作されないときに、目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定するための特性図は、外気温センサ(外気温度検出手段)7の検出値に基づいて変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定された目標室内温度と、実際の外気温度、室内温度、日射量の各々とに基づいて車室内の温度を調整する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員によって設定された目標室内温度と、実際の外気温度、現在の車室内温度、日射量の各々とに基づいて、適切な温度の空気を車室内に供給して温度調整を行う車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用空調装置では、上述の目標室内温度と、実際の外気温度、現在の車室内温度、日射量の各々とに基づき、車室内に形成された吹出口から吹き出される空気の目標吹出設定値を求めると共に、この目標吹出設定値に対する目標エバ後温度をあらかじめ定められた所定の特性図に基づいて設定するようになっている。
【0004】
なお、吹出設定値とは、吹出口から吹き出される空気の温度や風量、風速等の条件を設定するための演算値であり、エバ後温度とは、車両内に設けられたエバポレータを通過した直後の空気の温度である。
【0005】
そして、目標吹出設定値とは、車室内を設定された目標室内温度にするために必要な吹出設定値であり、目標エバ後温度とは、目標吹出設定値を実現するために必要なエバ後温度である。
【特許文献1】特開2002−144863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の車両用空調装置では、季節や天気、時間帯等に関係なくあらかじめ設定された所定の特性図に基づいて目標エバ後温度が設定されていた。
【0007】
そのため、季節や天気等の影響により体感的に暑かったり寒かったりしても、一律な制御しか行うことができず、乗員の体感に即した制御を行うことが難しかった。
【0008】
また、一律な制御であるため、不必要に車室内を冷却することが多くなり、エバポレータに冷媒を循環させるコンプレッサの稼動効率が悪いという問題も生じていた。
【0009】
特に、乗員の上半身に向けて空気を吹き出す際には、比較的冷力優先の制御を行うようになっているのが一般的であるため、必要以上に目標エバ後温度を下げるようになっていた。
【0010】
そこで、この発明は、特に乗員の上半身に向けて空気を吹き出す際に、乗員の体感に即した温度制御を行うことができると共に、コンプレッサの稼動効率の向上を図ることができる車両用空調装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明に係る車両用空調装置は、車両の車室内部と外気とを連通するダクト内に配置されたエバポレータと、このエバポレータに冷媒を循環させるコンプレッサと、前記車室内に設けられて前記エバポレータを通過した空気を乗員の上半身に向けて吹き出すベント吹出口及び乗員の足元に向けて吹き出すフット吹出口と、前記空気が吹き出す吹出口を設定する吹出口設定手段と、前記車室内の温度を設定する室内温度設定手段と、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記車室内の温度を検出する室内温度検出手段と、日射量を検出する日射量検出手段とを備え、前記室内温度設定手段により設定された前記車室内の温度と、前記外気温度検出手段、前記室内温度検出手段、前記日射量検出手段の各々の検出値とに基づいて、目標吹出設定値を求めると共に、この目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を所定の特性図に基づいて設定する車両用空調装置であって、前記吹出口設定手段によって、前記ベント吹出口のみから空気が吹き出すように設定された場合、又は、前記ベント吹出口及び前記フット吹出口の両方から空気が吹き出すように設定された場合に、前記車室温度設定手段が操作されないとき、前記特性図は、前記外気温度検出手段の検出値に基づいて変更されることを特徴としている。
【0012】
さらに、前記特性図は、前記外気温度検出手段の検出値が所定範囲のとき、前記日射量検出手段の検出値に基づいて変更されてもよい。
【0013】
また、前記日射量検出手段の検出値に基づいて前記特性図が変更される場合には、目標吹出設定値の閾値が変更されてもよい。
【0014】
また、前記日射量検出手段の検出値に基づいて前記特性図が変更される場合には、目標エバ後温度の閾値が変更されてもよい。
【0015】
また、前記日射量検出手段の検出値に基づいて前記特性図が変更される場合には、目標吹出設定値と目標エバ後温度との、それぞれの閾値が変更されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、乗員の上半身に向けて空気を吹き出す際において、車室温度設定手段を操作して設定温度を変更しない場合に、外気温度検出手段の検出値に基づいて所定の特性図を変更するので、車室内に吹き出される空気の温度に対して外気温度の影響を大きく反映させることができる。
【0017】
これにより、外気温度によって変化する乗員の体感に即した温度制御を行うことができると共に、不必要に車室内を冷却することがなくなってコンプレッサの稼動効率の向上を図ることが可能となる。
【0018】
また、この発明では、日射量検出手段の検出値に基づいて所定の特性図を変更してもよいので、車室内に吹き出される空気の温度に対して日射量の影響を大きく反映させることも可能となる。
【0019】
特に、外気温度が比較的適当なときには、日射量の大きさ、すなわち日射のあるなしによって乗員の体感は大きく異なると考えられる。
【0020】
そのため、日射量によっても変化する乗員の体感にさらに即した温度制御を行うことができると共に、コンプレッサの稼動効率の向上を図ることができる。
【0021】
さらに、この発明では、日射量によって特性図を変更する場合に、目標吹出設定値の閾値を変更してもよいので、乗員の体感に対する温度制御をより綿密に行うことができ、さらに体感に即した制御が可能となる。
【0022】
さらに、この発明では、日射量によって特性図を変更する場合に、目標エバ後温度の閾値を変更してもよいので、コンプレッサの動作制御をより綿密に行うことができ、さらに稼動効率を向上することが可能となる。
【0023】
さらに、この発明では、日射量によって特性図を変更する場合に、目標吹出設定値及び目標エバ後温度のそれぞれの閾値を変更してもよいので、乗員の体感に対する温度制御とコンプレッサの動作制御とを、共に綿密に行うことができる。そして、体感に即した制御と稼動効率の向上とをそれぞれさらに的確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る車両用空調装置の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0025】
車両用空調装置1は、図1に示すように、車室内部と外気とを連通するダクト2内に配置されたエバポレータ(吸熱用熱交換器)3と、このエバポレータ3に冷媒を循環させるコンプレッサ4と、空気が吹き出す吹出口を設定する吹出モードスイッチ(吹出口設定手段)5と、車内の温度を設定する室温設定スイッチ(室内温度設定手段)6と、外気温度を検出する外気温センサ(外気温度検出手段)7と、車内の温度を検出する室内温度センサ(室内温度検出手段)8と、車外の日射量を検出する日射センサ(日射量検出手段)9と、エバポレータ3を通過した空気の温度を検出するエバ後温度センサ10とを備えている。
【0026】
さらに、この車両用空調装置1は、ダクト2に連通すると共に車室に向けて開口し、エバポレータ3を通過した空気を乗員の上半身に向けて吹き出すベント吹出口10と、エバポレータ3を通過した空気を乗員の足元に向けて吹き出すフット吹出口11とを備えている。
【0027】
このベント吹出口10及びフット吹出口11は、図2に示すインストルメントパネルPにそれぞれ形成されており、車両用空調装置1は、このインストルメントパネルPの裏面側(車両前方側)に配置されている。
【0028】
また、このインストルメントパネルPには、吹出モードスイッチ5、室温設定スイッチ6、エアコンON/OFFスイッチ22が設けられている。
【0029】
エバポレータ3は、後述するファン14によって導入された空気の熱を冷媒に吸熱して冷風をつくる吸熱タイプの熱交換器である。このエバポレータ3の冷媒流出口3bは、逆止弁15を介してコンプレッサ4の吸入口4bに接続されている。
【0030】
コンプレッサ4は、エンジンルーム(図示せず)のような車外に設けられており、電動式コンプレッサや油圧駆動式コンプレッサのように、入力値が直接可変可能になっている。
【0031】
このコンプレッサ4の吐出口4a側には、冷媒タンク12と液化された冷媒を断熱膨張して霧状にする膨張弁13とを順に介して、エバポレータ3の冷媒流入口3aが接続されている。
【0032】
ファン14は、後述する制御装置100によって駆動されるファンモータ16で回転駆動してダクト2内の空気を流動させるものであり、エバポレータ3の上流側に配置されている。なお、このファンモータ16は、エアコンON/OFFスイッチ22からON信号が制御装置100に入力されることで駆動し、OFF信号が制御装置100に入力されることで停止する。
【0033】
ダクト2のファン14よりも上流側には、車室内空気を導入する内気導入口17と、走行風圧を受けて外気を導入する外気導入口18とが設けられている。
【0034】
なお、この内気導入口17と外気導入口18とが分岐する部分には、内気導入口17と外気導入口18とを任意の比率で開閉するインテークドア19が設けられている。
【0035】
このインテークドア19は、図示しない内外気切替スイッチにより入力される切替信号に応じて制御装置100で駆動されるインテークドアアクチュエータ(図示せず)によって開閉する。
【0036】
そして、ダクト2のエバポレータ3よりも下流側は、上記ベント吹出口10及びフット吹出口11に連通されている。
【0037】
なお、エバポレータ3とベント吹出口10との間には、ヒータコア(放熱用熱交換器)23が設けられると共に、このヒータコア23の上流側には、エアミックスドア24が設けられている。
【0038】
このエアミックスドア24は、制御装置100で駆動されるエアミックスアクチュエータ(図示せず)により、エバポレータ3を通過して冷やされた空気がヒータコア23を迂回して冷やされたままの冷風と、ヒータコア23を通過して暖められた温風との割合(冷風と温風との風量配分)を調節するように開閉する。
【0039】
ベント吹出口10の内部には、制御装置100で駆動されるベントドアアクチュエータ(図示せず)によってベント吹出口10を開閉するベントドア20が設けられている。
【0040】
また、フット吹出口11の内部には、制御装置100で駆動されるフットドアアクチュエータ(図示せず)によってフット吹出口11を開閉するフットドア21が設けられている。
【0041】
なお、ベントドア20及びフットドア21は、吹出モードスイッチ5により入力されるモード信号に応じてそれぞれ開閉するようになっている。すなわち、モード信号がベントモードのときには、ベントドア20は開放され、フットドア21は閉鎖される。また、モード信号がバイレベルモードのときには、ベントドア20及びフットドア21は共に開放される。
【0042】
制御装置100は、この車両用空調装置1を駆動制御するものであり、吹出モードスイッチ5、室温設定スイッチ6、エアコンON/OFFスイッチ22等の各種スイッチからの所定の信号が入力されると共に、外気温センサ7、室内温度センサ8、日射センサ9、水温センサ25等の各種センサからの検出値が入力される。
【0043】
そして、この制御装置100は、図示しないCPUを有しており、室温設定スイッチ6、外気温センサ7、室内温度センサ8、日射センサ9により入力された車内の目標設定温度、車外の外気温度、車内の室内温度、車外の日射量に基づいて目標吹出設定値を算出する。
【0044】
さらに、この制御装置100は、あらかじめ所定の特性図を記憶しており、この特性図に基づいて、算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定し、この目標エバ後温度を実現するように、コンプレッサ4、ブロアモータ16、ベントドアアクチュエータ(図示せず)、フットドアアクチュエータ(図示せず)等を駆動する。
【0045】
ここで、「吹出設定値」とは、ベント吹出口10又はフット吹出口11から吹き出される空気の温度や風量、風速等の条件を設定するための演算値であり、数値が小さいほど車内温度を低くする設定となり、数値が大きいほど車内温度を高くする設定となる。
【0046】
また、「エバ後温度」とは、エバポレータ3を通過した直後の空気の温度であり、エバ後温度センサ10により検出される。なお、このエバ後温度は、数値が小さいほどコンプレッサ4の仕事量が増加し、数値が大きいほどコンプレッサ4の仕事量が減少するので、コンプレッサ4の仕事量に対応することとなる。
【0047】
そして、「目標吹出設定値」とは、車内の室内温度を室温設定スイッチ6により設定された目標設定温度にするための吹出設定値であり、「目標エバ後温度」とは、目標吹出設定値を実現するためのエバ後温度である。
【0048】
さらに、「所定の特性図」とは、横軸が目標吹出設定値であり、縦軸が目標エバ後温度である特性図であり、所定の目標吹出設定値に対する目標エバ後温度が一義的に設定されるものである(図5(a)〜(f)参照)。
【0049】
次に、本発明に係る車両用空調装置1の作用について説明する。
【0050】
図3に示すフローチャートは、この車両用空調装置1の制御装置100における室内温度調整処理を示すものである。
【0051】
この室内温度調整処理において、制御装置100は、まず、エアコンON/OFFスイッチ22がON操作されて、ON信号が入力されたか否かを判定する(ステップ1)。
【0052】
そして、ON信号が入力されない場合、すなわちステップ1においてNOの場合には、車両用空調装置1が操作されていないとして、ステップ1に戻る。
【0053】
ON信号が入力された場合、すなわちステップ1においてYESの場合には、室温設定スイッチ6により設定された目標設定温度、外気温センサ7により検出された外気温、室内温度センサ8により検出された室内温度、日射センサ9により検出された日射量に基づいて、目標吹出設定値を算出する(ステップ2)。
【0054】
次に、吹出モードスイッチ5により入力されたモード信号が、ベントモード又はバイレベル(B/L)モードのいずれかであるか否かを判定する(ステップ3)。
【0055】
これは、乗員の体感に比較的大きな影響がある乗員の上半身に向けて空気を吹き出す状態を判別するためである。
【0056】
そして、入力されたモード信号がベントモード又はバイレベル(B/L)モードのいずれでもない場合、すなわちステップ3においてNOの場合には、後述するステップ7に進む。
【0057】
一方、入力されたモード信号がベントモード又はバイレベル(B/L)モードのいずれかの場合、すなわちステップ3においてYESの場合には、続いて室温設定スイッチ6が操作されたか否かを判定する(ステップ4)。
【0058】
これは、乗員が現在の室温を暑い又は寒いと感じているかどうかを判別するためである。
【0059】
そして、室温設定スイッチ6が操作された場合、すなわちステップ4においてYESの場合には、目標室内温度が変更されたので、新たに設定された目標室内温度にするための新たな目標吹出設定値を算出し(ステップ5)、ステップ1へ戻る。
【0060】
一方、室温設定スイッチ6が操作されない場合、すなわちステップ4においてNOの場合には、外気温度の状態を判定する(ステップ6)。
【0061】
この外気温度の判定は、ここでは、図4(a)に示すグラフに基づいて行われる。つまり、外気温度が15℃よりも低いときには範囲aと判定し、外気温度が10℃から25℃のときには範囲bと判定し、外気温度が20℃よりも高いときには範囲cと判定する。
【0062】
なお、この図4(a)に示すグラフでは、ヒステリシスを考慮しており、外気温度が10℃から15℃の間において温度が上昇した場合には範囲aとし、温度が下降した場合には範囲bとする。同様に、外気温度が20℃から25℃の間において温度が上昇した場合には範囲bとし、温度が下降した場合には範囲cとする。
【0063】
そして、外気温度が範囲aであると判定された場合にはステップ7に進み、範囲cであると判定された場合にはステップ8に進み、範囲bであると判定された場合にはステップ9に進む。
【0064】
ステップ7では、図5(a)に示す第一特性図に基づいて、ステップ2において算出した目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0065】
この第一特性図は、外気温度が比較的低い状態であるか、吹出モードがベントモード及びバイレベルモードではない場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が8、上限閾値が15である。
【0066】
つまり、この第一特性図では、目標吹出設定値が8までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が8〜15の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が15以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0067】
これにより、目標吹出設定値が比較的小さい段階で目標エバ後温度が高めに設定される。
【0068】
また、ステップ8では、図5(b)に示す第二特性図に基づいて、ステップ2において算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0069】
この第二特性図は、外気温度が比較的高い状態の場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が18、上限閾値が25である。
【0070】
つまり、この第二特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0071】
これにより、目標吹出設定値が比較的大きくなるまで目標エバ後温度が低い状態に設定される。
【0072】
このように、目標吹出設定値が同一であっても、外気温度に応じて特性図を変更することにより、設定される目標エバ後温度が異なるものとなる。これにより、車室内に吹き出される空気の温度に対して外気温度の影響を大きく反映させることができる。
【0073】
そのため、外気温度によって変化する乗員の体感に即した車室内温度の制御を行うことができると共に、不必要に車室内を冷却することがなくなり、コンプレッサ4の稼動効率の向上を図ることが可能となる。
【0074】
一方、外気温度が比較的適当な状態である際に進むステップ9では、車外の日射量の状態を判定する。
【0075】
この日射量の判定は、ここでは、図4(b)に示すグラフに基づいて行われる。つまり、日射量が0〜200W/mのときには範囲Aと判定し、日射量が200〜500W/mのときには範囲Bと判定し、日射量が500〜767.4W/mのときには範囲Cと判定し、日射量が767.7W/m以上のときには範囲Dと判定する。
【0076】
そして、日射量が範囲Aであると判定された場合にはステップ10に進み、日射量が範囲Bであると判定された場合にはステップ11に進み、日射量が範囲Cであると判定された場合にはステップ12に進み、日射量が範囲Dであると判定された場合にはステップ13に進む。
【0077】
ステップ10では、図5(c)に示す第三特性図に基づいて、ステップ2において算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0078】
この第三特性図は、外気温度が比較的適当な状態で且つ日射量が少ない場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が14、上限閾値が21である。
【0079】
つまり、この第三特性図では、目標吹出設定値が14までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が14〜21の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が21以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0080】
また、ステップ11では、図5(d)に示す第四特性図に基づいて、ステップ2において算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0081】
この第四特性図は、外気温度が比較的適当な状態で且つ日射量が中程度の場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が15、上限閾値が22である。
【0082】
つまり、この第四特性図では、目標吹出設定値が15までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が15〜22の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が22以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0083】
また、ステップ12では、図5(e)に示す第五特性図に基づいて、ステップ2において算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0084】
この第五特性図は、外気温度が比較的適当な状態で且つ日射量が多い場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が16、上限閾値が23である。
【0085】
つまり、この第五特性図では、目標吹出設定値が16までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が16〜23の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が23以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0086】
さらに、ステップ13では、図5(f)に示す第六特性図に基づいて、ステップ2において算出された目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を設定する。
【0087】
この第六特性図は、外気温度が比較的適当な状態で且つ日射量が非常に多い場合に使用されるものであり、目標吹出設定値の下限閾値が17、上限閾値が24である。
【0088】
つまり、この第六特性図では、目標吹出設定値が17までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が17〜24の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が24以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0089】
このように、外気温度及び目標吹出設定値が同一であっても、日射量に応じて特性図を変更することにより、設定される目標エバ後温度が異なるものとなる。これにより、車室内に吹き出される空気の温度に対して日射量の影響を大きく反映させることができる。
【0090】
そのため、日射量によって変化する乗員の体感に即した車室内温度の制御を行うことができると共に、不必要に車室内を冷却することがなくなり、コンプレッサ4の稼動効率の向上を図ることが可能となる。
【0091】
特に、上述の外気温度の範囲が範囲bのように比較的適当な状態ときには、日射量の大きさ、すなわち日射のあるなしによって乗員の体感は大きく異なると考えられる。
【0092】
そのため、このような外気温度が比較的適当な状態の際に特に有効な制御を行うことができる。
【0093】
また、上述の実施の形態では、第一〜第六特性図において、これらの特性図を変更する場合に、目標吹出設定値の下限閾値及び上限閾値を変更している。
【0094】
これにより、乗員の体感に対する温度制御をより綿密に行うことができ、さらに体感に即した制御が可能となる。
【0095】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0096】
例えば、上述の実施の形態では、第一〜第六特性図を変更する際に、目標吹出設定値の下限閾値及び上限閾値を変更しているが、図6に示すように、目標エバ後温度の下限閾値及び上限閾値を変更してもよい。
【0097】
すなわち、図6(a)に示す第一特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が7℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0098】
そして、図6(b)に示す第二特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0099】
そして、図6(c)に示す第三特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が5℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0100】
そして、図6(d)に示す第四特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が4℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0101】
そして、図6(e)に示す第五特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が3.5℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0102】
そして、図6(f)に示す第六特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0103】
なお、ここでは、第二特性図と第六特性図とが同一であるが、変更してもよい。
【0104】
この場合には、目標エバ後温度の閾値を適宜変更することで、コンプレッサ4の動作制御をより綿密に行うことができ、さらに稼動効率を向上することが可能となる。
【0105】
さらに、これら第一〜第六特性図は、図7に示すように目標吹出設定値の下限閾値及び上限閾値と、目標エバ後温度の下限閾値及び上限閾値のそれぞれを変更してもよい。
【0106】
すなわち、図7(a)に示す第一特性図では、目標吹出設定値が8までの間は目標エバ後温度が7℃であり、目標吹出設定値が8〜15の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が15以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0107】
そして、図7(b)に示す第二特性図では、目標吹出設定値が18までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が18〜25の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が25以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0108】
そして、図7(c)に示す第三特性図では、目標吹出設定値が14までの間は目標エバ後温度が5℃であり、目標吹出設定値が14〜21の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が21以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0109】
そして、図7(d)に示す第四特性図では、目標吹出設定値が15までの間は目標エバ後温度が4℃であり、目標吹出設定値が15〜22の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が22以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0110】
そして、図7(e)に示す第五特性図では、目標吹出設定値が16までの間は目標エバ後温度が3.5℃であり、目標吹出設定値が16〜23の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が23以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0111】
そして、図7(f)に示す第六特性図では、目標吹出設定値が17までの間は目標エバ後温度が3℃であり、目標吹出設定値が17〜24の間では目標エバ後温度は次第に高くなり、目標吹出設定値が24以上では目標エバ後温度が10℃となるように、コンプレッサ4やファンモータ16等は制御される。
【0112】
この場合では、乗員の体感に対する車室内の温度制御とコンプレッサ4の動作制御とを、共に綿密に行うことができる。そして、体感に即した制御と稼動効率の向上とをそれぞれさらに的確に行うことが可能となる。
【0113】
さらに、上述の実施の形態では、目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を所定の特性図によって設定しているが、目標吹出設定値に対するコンプレッサ4の仕事量や、ファンモータ16の駆動率等も特性図を用いて設定してもよい。
【0114】
この場合であっても、外気温センサ7や日射センサ9による検出値に基づいて特性図を適宜変更することにより、乗員の体感に即すると共に効率のよい制御を行うことが可能となる。
【0115】
さらに、上述の実施の形態では、外気温度の判定範囲を範囲a、範囲b、範囲cのように3段階に分類したが、これに限らず、段階数は任意に設定することができる。また、日射量の判定範囲についても段階数は任意に設定することができる。細かく分けるほど、よりきめ細かい空調制御が可能となる。
【0116】
なお、上述の実施の形態では、エアコンON/OFFスイッチ22がON操作された際に、室内温度調整処理を行うようになっているが、例えば、空調制御を自動で行うように設定するためのオート操作ON/OFFスイッチ(図示せず)がON操作された際に本発明に係る室内温度調整処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】

【図1】本発明に係る車両用空調装置を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置が設けられた車室内を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用空調装置における室内温度調整処理を示したフローチャートである。
【図4】(a)は室内温度調整処理において外気温度の判定に使用されるグラフであり、(b)は室内温度調整処理において日射量の判定に使用されるグラフである。
【図5】(a)は室内温度調整処理における第一特性図であり、(b)は第二特性図であり、(c)は第三特性図であり、(d)は第四特性図であり、(e)は第五特性図であり、(f)は第六特性図である。
【図6】(a)は室内温度調整処理における第一特性図の第二例であり、(b)は第二特性図の第二例であり、(c)は第三特性図の第二例であり、(d)は第四特性図の第二例であり、(e)は第五特性図の第二例であり、(f)は第六特性図の第二例である。
【図7】(a)は室内温度調整処理における第一特性図の第三例であり、(b)は第二特性図の第三例であり、(c)は第三特性図の第三例であり、(d)は第四特性図の第三例であり、(e)は第五特性図の第三例であり、(f)は第六特性図の第三例である。
【符号の説明】
【0118】
1 車両用空調装置
5 吹出モードスイッチ(吹出口設定手段)
6 室温設定スイッチ(車室温度設定手段)
7 外気温センサ(外気温度検出手段)
10 ベント吹出口
11 フット吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内部と外気とを連通するダクト内に配置されたエバポレータと、このエバポレータに冷媒を循環させるコンプレッサと、前記車室内に設けられて前記エバポレータを通過した空気を乗員の上半身に向けて吹き出すベント吹出口及び乗員の足元に向けて吹き出すフット吹出口と、前記空気が吹き出す吹出口を設定する吹出口設定手段と、前記車室内の温度を設定する室内温度設定手段と、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記車室内の温度を検出する室内温度検出手段と、日射量を検出する日射量検出手段とを備え、
前記室内温度設定手段により設定された前記車室内の温度と、前記外気温度検出手段、前記室内温度検出手段、前記日射量検出手段の各々の検出値とに基づいて、目標吹出設定値を求めると共に、この目標吹出設定値に対する目標エバ後温度を所定の特性図に基づいて設定する車両用空調装置であって、
前記吹出口設定手段によって、前記ベント吹出口のみから空気が吹き出すように設定された場合、又は、前記ベント吹出口及び前記フット吹出口の両方から空気が吹き出すように設定された場合に、前記車室温度設定手段が操作されないとき、
前記特性図は、前記外気温度検出手段の検出値に基づいて変更されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記特性図は、前記外気温度検出手段の検出値が所定範囲のとき、前記日射量検出手段の検出値に基づいて変更されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記特性図は、目標吹出設定値の閾値を変更することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記特性図は、目標エバ後温度の閾値を変更することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記特性図は、目標吹出設定値と目標エバ後温度との、それぞれの閾値を変更することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−51231(P2009−51231A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216880(P2007−216880)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】