説明

車両用空調装置

【課題】熱交換器の表面において水滴が氷結して付着することによる該熱交換器の凍結を防止する。
【解決手段】車両用空調装置50は、空気の各通路を構成するケーシング52の側部に第1ブロアユニット56が連結ダクト54によって接続されると共に、前記ケーシング52の下部には、前記第1ブロアユニット56とは別の第2ブロアユニット62が接続される。そして、第2ブロアユニット62の第2ブロアファン138への負荷電圧から、制御部160が通風切換ダンパ136を駆動制御することで、第1フロント通路74と第1リア通路130を連通させて、第1ブロアユニット56からの空気の一部を、第1フロント通路74、連通口134、及び第1リア通路130を経てエバポレータ58の第2冷却部78へ供給し、第2ブロアファン138が低速回転、又は全く駆動されていないときに、第2冷却部78の水滴の凍結を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、送風機であるブロアによって内外気をケース内へと取り込み、冷却手段である蒸発器により冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられたデフロスタ吹出口、フェイス吹出口又はフット吹出口から送風することによって前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
このような車両用空調装置では、例えば、車室内の空気をケーシング内に取り込むための第1ブロアと、車両外部の空気を前記ケーシング内へと取り込むための第2ブロアとを備えたものが知られている。この車両用空調装置は、第1ブロアが回転することによって内気導入口から導入された空気が、第1熱交換器によって加熱され第1風路を通じてフェイス吹出口又はフット吹出口から車室内へと送風されると共に、前記第2ブロアが回転することによって外気導入口から導入された空気が、第2熱交換器によって加熱され第2風路を通じてデフロスタ吹出口から車室内へと送風される。すなわち、フェイス吹出口又はフット吹出口から送風する際に、第1ブロアを駆動させて車室内の空気を導入すると共に、デフロスタ吹出口から送風する際には、第2ブロアを回転させて外気を導入するように切り換えている。
【0004】
また、空気を導入するための第1及び第2ブロアを有した別の車両用空調装置では、ダクトの外気導入口に臨むように第1ブロアが配置され、内気導入口に臨むように第2ブロアが配置されると共に、前記第1ブロアには、該第1ブロアによってダクトへ導入される空気を外気と内気に切替可能な切替機構を有している。そして、第1ブロアでダクトへと導入される空気を、切替機構によって外気又は内気へと切り替え、第2ブロアによって前記ダクトへと導入される空気と合わせて所望の温度となるように加熱手段及び冷却手段で調温した後、フェイス吹出口、フット吹出口、デフロスタ吹出口を通じて車室内における所望の部位へ送風する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−178068号公報
【特許文献2】特開平6−40236号公報
【特許文献3】特開平6−191257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した車両用空調装置においては、各種送風モードによっては、第1ブロアの運転をごく低回転で行うか、又は完全に停止させて、第2ブロアによって送風量のほとんどをまかなう場合がある。この場合、第1ブロアに接続されたダクト(以下、通路と称することもある)では、送風量が少なくなるか又は全く無くなることで、その通路の途中に設けられた冷却手段において熱交換が行われ難くなり、冷却手段が凍結、すなわち、冷却手段を構成するエバポレータ表面の水滴が氷結して付着し、その結果、冷却手段内の通風路が狭められて冷却効果が低下する不都合が生ずることが考えられる。
【0007】
また、第1ブロアの運転を停止させて第2ブロアのみで送風を行った場合、第2ブロアから送風された空気の一部がヒータコアやエバポレータの内部を通じて第1ブロア側へ流れてしまうことで騒音が発生する不都合が生じたり、さらに第1ブロアから車室内へ逆流した空気によって乗員に不快感を与えたりすることも考えられる。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、熱交換器の表面において水滴が氷結して付着することによる該熱交換器の凍結を防止することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、第1及び第2通路を内部に有したケーシングと、
前記第1通路に接続され、該第1通路に対して空気を送風する第1送風機と、
前記第2通路に接続され、該第2通路に対して空気を送風する第2送風機と、
前記ケーシングの内部において、前記第1通路と第2通路との間に跨るように配設され、前記空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
前記熱交換器より上流側、且つ、前記第1通路と第2通路との間に設けられ、前記第1通路と前記第2通路との連通状態を切り換える切換ダンパと、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第1及び第2送風機が共に駆動している際、切換ダンパの切換作用下に第1通路と第2通路とを連通させ、前記第1送風機から前記第1通路へと供給される空気の一部を、前記第2通路側へと流通させるとよい。
【0011】
さらに、第1送風機が駆動し、且つ、第2送風機の駆動が停止した際、第1通路と第2通路とを連通させ、前記第1送風機から前記第1通路へと供給される空気の一部を、前記第2通路側へと流通させるとよい。
【0012】
さらにまた、切換ダンパは、該切換ダンパによる切換作用下に第1通路と第2通路とが連通した際、第2送風機と第2通路との連通を遮断するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、ケーシングの内部において、熱交換器より上流側、且つ、第1送風機に接続された第1通路と第2送風機に接続された第2通路との間に切換ダンパを設け、前記第1通路と第2通路との連通状態を切換可能としている。従って、第1送風機及び第2送風機の駆動状況に応じて切換ダンパを駆動させ、第1通路と第2通路との連通状態を自在に切り換えることにより、第1通路に供給されている第1送風機からの空気を、切換ダンパによって第2通路側へと供給することで、前記第2通路に臨む熱交換器の部位に対しても前記空気を流通させることができるため、例えば、第2送風機から空気が供給されないときに、切換ダンパを駆動させて、第1送風機から供給される空気を、熱交換器へと供給することで、熱交換器の表面に付着した水滴が氷結し、該熱交換器が凍結してしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の全体断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った一部断面図である。
【図5】図1の車両用空調装置を構成するケーシングと第1及び第2ブロアユニットとエバポレータとを示す概略構成図である。
【図6】図6Aは、第1ブロアファンにおける回転速度と負荷電圧との相関図であり、図6Bは、第2ブロアファンにおける回転速度と負荷電圧との相関図である。
【図7】制御部の概略ブロック図である。
【図8】第1及び第2ブロアファンによってケーシング内に供給される空気の流量と、該第1及び第2ブロアファンの消費電力との関係を示す特性曲線図である。
【図9】第1及び第2ブロアファンの駆動制御におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号50は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、この車両用空調装置50は、例えば、その進行方向に沿って3列の座席を有した車両に搭載され、以下、前記車両の車室内において1列目の座席を前席、2列目の座席を中間席、3列目の座席を後席として説明する。
【0017】
また、車両用空調装置50は、図2に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を前方とし、矢印B方向を後方として説明する。
【0018】
なお、この実施の形態では、ケーシングの内部に複数のダンパ等の回動部材が設けられ、これらの回動部材はモータ等の回動駆動源によって作動する。ここでは簡略化のために、これらの回動駆動源についての図示及び説明は省略する。
【0019】
この車両用空調装置50は、図1及び図2に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング52と、前記ケーシング52の側部に連結ダクト54を介して連結され、車両の前席側に送風するための第1ブロアユニット(第1送風機)56と、前記ケーシング52の内部に配設され、前記空気を冷却するエバポレータ(熱交換器)58と、該空気を加熱するヒータコア(熱交換器)60と、前記ケーシング52の下部に連結され、車室内の空気(内気)を取り込んで前記車両の後席側に送風するための第2ブロアユニット(第2送風機)62と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構64とを含む。
【0020】
ケーシング52は、略対称形状の第1及び第2分割ケーシング66、68と、該第1分割ケーシング66と第2分割ケーシング68との間に設けられたセンタープレート70とから構成され、該第1分割ケーシング66の下側部には、連結ダクト54が連結され第1ブロアユニット56から空気の供給される第1取入口72が形成される。この第1取入口72は、エバポレータ58の上流側に設けられた第1フロント通路(第1通路)74と連通している。エバポレータ58は、第1分割ケーシング66と第2分割ケーシング68との間に跨るように配置され、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が、後方側となる他端部に対して下方となるよう所定角度だけ傾斜して配設される。
【0021】
このエバポレータ58は、第1フロント通路74に臨み、該第1フロント通路74から供給される空気を冷却する第1冷却部76と、後述する第1リア通路130に臨み、該第1リア通路130から供給される空気を冷却する第2冷却部78とを有する。
【0022】
一方、エバポレータ58の下流側には、第1冷却部76を通過した空気の供給される第2フロント通路80a、80bが形成され、該第2フロント通路80a、80bの上方には第3フロント通路82と第4フロント通路84とが分岐するように形成される。また、第2フロント通路80a、80bには、第3フロント通路82及び第4フロント通路84の分岐部に臨むように第1エアミックスダンパ86が回動自在に設けられる。そして、第1エアミックスダンパ86を回動させることによってエバポレータ58を通過した冷風の第3フロント通路82及び第4フロント通路84への送風状態及び送風量を調整する。第3フロント通路82は、ケーシング52における前方側(矢印A方向)、第4フロント通路84が後方側(矢印B方向)となるように配置され、該第4フロント通路84の下流側にはヒータコア60が配設される。
【0023】
また、第3フロント通路82の前方側(矢印A方向)には、該第3フロント通路82に沿って延在し、エバポレータ58の下流側から後述する混合部98へと空気を供給するバイパス通路88が形成され、該バイパス通路88の下流側には、バイパスダンパ90が設けられている。このバイパス通路88は、エバポレータ58によって冷却された冷風をバイパスダンパ90の切換作用下に直接的に下流側へと供給するために設けられている。
【0024】
ヒータコア60は、エバポレータ58と同様に、第1分割ケーシング66と第2分割ケーシング68との間に跨るように配置され、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が、後方側(矢印B方向)となる他端部に対して下方となるよう所定角度だけ傾斜して配設される。このヒータコア60は、第4フロント通路84に臨み、該第4フロント通路84から供給される空気を加熱する第1加熱部92と、後述する第3リア通路148に臨み、該第3リア通路148から供給される空気を加熱する第2加熱部94とを有する。
【0025】
このヒータコア60の下流側には、第5フロント通路96が形成され、該第5フロント通路96が前方に向かって延在し、第3フロント通路82の下流と合流した部位に、前記第3フロント通路82を通じて供給される冷風と前記第5フロント通路96を通じて供給される温風との混合される混合部98が形成される。この混合部98の上方には、デフロスタ吹出口100が開口すると共に、該混合部98の側方には、後方に向かって延在する第6フロント通路102が形成される。
【0026】
また、混合部98には、デフロスタ吹出口100に臨むようにデフロスタダンパ104が回動自在に設けられ、前記デフロスタダンパ104を回動させることにより、デフロスタ吹出口100と第6フロント通路102への送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整する。
【0027】
第6フロント通路102には、上方に第1ベント吹出口106が開口し、該第1ベント吹出口106に臨むようにベントダンパ108が回動自在に設けられると共に、さらに後方に延在した第7フロント通路110と連通している。そして、ベントダンパ108を回動させることによって混合部98からの空気が第1ベント吹出口106、第7フロント通路110へ送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0028】
なお、デフロスタ吹出口100及び第1ベント吹出口106は、それぞれケーシング52の上方に開口し、該デフロスタ吹出口100が前方側(矢印A方向)に配置され、前記第1ベント吹出口106が該デフロスタ吹出口100に対して後方(矢印B方向)となるケーシング52の略中央に配置される。
【0029】
第7フロント通路110の下流側には、ケーシング52の幅方向に延在し、図示しない第1ヒート吹出口を通じて車室内における前席の足元近傍に送風する第1ヒート通路112が接続されると共に、前記ケーシング52の後方に向かって延在し、第2ヒート吹出口(図示せず)を通じて前記車室内における中間席の乗員の足元近傍に送風する第2ヒート通路114が接続される。
【0030】
第1ブロアユニット56は、外気を導入するためのダクト116が入口に配設され、内外気の切り換えを行うインテークダンパ118と、前記ダクト116等から取り込んだ空気(外気又は内気)をケーシング52内へと供給する第1ブロアファン120とを有し、前記第1ブロアファン120の収容されるブロアケース122が、第1取入口72に接続された連結ダクト54を介してケーシング52の内部と連通している。なお、第1ブロアファン120は、通電作用下に駆動する第1ブロアモータ121によって回転制御される。
【0031】
このように、第1ブロアユニット56から供給された空気が、連結ダクト54、第1取入口72を通じてケーシング52内へと導入され、ダンパ機構64を構成する第1エアミックスダンパ86、デフロスタダンパ104、ベントダンパ108及びバイパスダンパ90の回動作用下に第1〜第7フロント通路74、80a、80b、82、84、96、102、110、バイパス通路88を通じて車両における前席及び中間席に送風可能なデフロスタ吹出口100、第1ベント吹出口106、第1及び第2ヒート通路112、114へと選択的に供給される。
【0032】
一方、ケーシング52の下部には、第1取入口72と直交した後方側(矢印B方向)に第2ブロアユニット62から空気の供給される第2取入口128が形成される。この第2取入口128は、エバポレータ58の上流側となる位置に開口して第1リア通路130と連通している。
【0033】
この第1リア通路130は、第1分離壁132を介して第1フロント通路74と分離され、該第1分離壁132に形成された連通口134と第2取入口128との間で回動自在な通風切換ダンパ(切換ダンパ)136が設けられる。そして、第2ブロアユニット62の送風を停止し、第1ブロアユニット56のみで送風を行うモードが選択された場合、通風切換ダンパ136によって第2取入口128を塞ぐことにより(図2中、二点鎖線形状)、第1ブロアユニット56から供給された空気の一部が、エバポレータ58やヒータコア60の内部などを通じて第1〜第4リア通路130、142a、142b、148、150側へ漏れ出した際、第2ブロアユニット62側へと逆流することを防止できる。これによって、逆流した空気に起因して第2ブロアユニット62で発生する騒音を防止し、また第2ブロアユニット62に達した空気が車室内に吹き出す、すなわち、不要な空気が前記車室内へと吹き出すことを防いで乗員に不快感を与えることが防止できる。
【0034】
この場合、図5に示されるように、通風切換ダンパ136を第2取入口128側に回動させ、連通口134を開放することによって第1フロント通路74に供給される空気の一部を第1リア通路130側へと供給することができる。通風切換ダンパ136の駆動制御については後述する。
【0035】
第2ブロアユニット62は、車室内の空気(内気)を取り込み、取り込んだ空気をケーシング52内へと供給する第2ブロアファン138を有し、前記第2ブロアファン138の収容されるブロアケース140がケーシング52の第2取入口128に連結され、第1リア通路130と連通している。なお、第2ブロアファン138は、第1ブロアファン120と同様に、通電作用下に駆動される第2ブロアモータ141によって回転制御される。
【0036】
この第1リア通路130の下流側には、エバポレータ58の第2冷却部78を通過した空気の供給される第2リア通路142a、142bが形成され、第2分離壁144によって第2フロント通路80a、80bと分離されると共に、前記第2分離壁144が前記エバポレータ58まで延在している。そのため、エバポレータ58の下流側においては、第1リア通路130を通じてエバポレータ58の第2冷却部78へ流通した空気と、第1フロント通路74を通じて前記エバポレータ58の第1冷却部76へと流通した空気とが互いに混じることがない。
【0037】
ここで、図3に示すように、第2リア通路142a、142b及び第2フロント通路80a、80b、第1ベント吹出口106は、ケーシング52の中央に設けられたセンタープレート70を中心として第1及び第2分割ケーシング66、68側にそれぞれ分離され、第2リア通路142aと第2リア通路142b及び第2フロント通路80aと第2フロント通路80b、第1ベント吹出口106aと第1ベント吹出口106bとを形成する。さらに、図4に示すように、第2リア通路142a及び第2リア通路142bには、第2フロント通路80a及び第2フロント通路80bとの連通状態を切換可能な一組の連通切換ダンパ146a、146bが設けられており、一方の連通切換ダンパ146aと、他方の連通切換ダンパ146bとがそれぞれ別個に独立して回動制御される。
【0038】
そして、一組の連通切換ダンパ146a、146bを回動させることにより、車室内における中間席及び後席に送風するための第2リア通路142a、142bと、前記車両における前席に送風するための第2フロント通路80a、80bとを互いに連通させると共に、例えば、一方の連通切換ダンパ146aの回動量と他方の連通切換ダンパ146bの回動量とをそれぞれ変化させることにより、第2フロント通路80aを通じて第1ベント吹出口106aから前席の助手席側に送風される送風量と、第2フロント通路80bを通じて第1ベント吹出口106bから前記前席の運転席側に送風される送風量、送風温度をそれぞれ別個に制御することができる。
【0039】
第2リア通路142a、142bの下流側には、ヒータコア60に臨む第3リア通路148が形成され、該第3リア通路148は、ヒータコア60側が開口し、且つ、隣接する第4リア通路150側となる側方が開口している。そして、第3リア通路148に供給された冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とする第2エアミックスダンパ152が回動自在に設けられる。この第2エアミックスダンパ152は、第3リア通路148と、ヒータコア60の下流側に接続される第4リア通路150の上流側又は下流側との連通状態を切り換える。これにより、エバポレータ58により冷却されて第3リア通路148へ供給された冷風と、ヒータコア60によって加熱されて第4リア通路150へと流通した温風とを、第2エアミックスダンパ152の回動作用下に前記第4リア通路150内において所定の混合比率で混合して送風する。すなわち、第4リア通路150の中間部位が、車両における中間席及び後席に送風される冷風及び温風を混合する混合部として機能する。
【0040】
第4リア通路150は、ヒータコア60の他端部を迂回するように湾曲して延在し、下流側において分岐した第5及び第6リア通路154、156と連通する。この第5及び第6リア通路154、156の分岐部位には、回動自在なモード切換ダンパ158が設けられ、前記モード切換ダンパ158が回動することによって第4リア通路150と第5又は第6リア通路154、156との連通状態を切り換える。
【0041】
第5及び第6リア通路154、156は、それぞれ車両の後方(矢印B方向)に向かって延在し、該第5リア通路154は、車両における中間席の乗員の顔近傍に送風するための第2ベント吹出口(図示せず)に連通している。一方、第6リア通路156は、前記中間席及び後席の乗員の足元近傍に送風するための第3及び第4ヒート吹出口(図示せず)に連通している。
【0042】
すなわち、第2ブロアユニット62から供給された空気が、第2取入口128を通じてケーシング52内へと導入され、ダンパ機構64を構成する第2エアミックスダンパ152、モード切換ダンパ158の回動作用下に第1〜第6リア通路130、142a、142b、148、150、154、156を通じて車両における中間席及び後席に送風可能な第2ベント吹出口、第3及び第4ヒート吹出口(図示せず)へと選択的に供給される。
【0043】
なお、上述した第2〜第6フロント通路80a、80b、82、84、96、102、バイパス通路88及び第2リア通路142a、142bは、それぞれ第1分割ケーシング66と第2分割ケーシング68との間に跨るように設けられているが、ケーシング52の中央に設けられたセンタープレート70によって分離されていることは容易に諒解されよう。
【0044】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置50は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0045】
先ず、車両用空調装置50が始動されると、第1ブロアユニット56の第1ブロアファン120は通電作用下に回転され、ダクト116等を通じて取り込まれた空気(外気又は内気)が連結ダクト54を通じてケーシング52の第1フロント通路74へと供給されると同時に、第2ブロアユニット62の第2ブロアファン138が通電作用下に回転されることによって取り込まれた空気(内気)がブロアケース140から第2取入口128を通じて第1リア通路130へと供給される。ここでは、第1ブロアファン120によってケーシング52内に供給される空気を第1エアとし、第2ブロアファン138によって前記ケーシング52内に供給される空気を第2エアとして説明する。
【0046】
このケーシング52内に供給された第1エア及び第2エアは、それぞれエバポレータ58の第1及び第2冷却部76、78をそれぞれ通過することによって冷却され、冷風として第1及び第2エアミックスダンパ86、152の設けられた第2フロント通路80a、80b及び第2リア通路142a、142bへとそれぞれ流通する。
【0047】
ここで、例えば、乗員によって該乗員の顔近傍に送風を行うベントモードが選択された場合には、第1エアミックスダンパ86が、第3フロント通路82と第4フロント通路84との間となるような中間位置へと回動し、前記第3フロント通路82に供給された第1エア(冷風)が混合部98へと流通すると共に、第4フロント通路84に供給された第1エアが、ヒータコア60を通過することで加熱されて温風となり、第5フロント通路96を通じて混合部98へと流通して冷風の第1エアと温風の第1エアとが混合される。
【0048】
この混合部98において冷風及び温風が混合された第1エア(混合風)は、デフロスタダンパ104によってデフロスタ吹出口100が閉塞され、且つ、ベントダンパ108によって第7フロント通路110の開口部が閉塞されているため、第6フロント通路102を通じて第1ベント吹出口106から車室内における前席の乗員の顔近傍へと送風される。
【0049】
一方、第2エアミックスダンパ152が、第3リア通路148内において中間位置に回動し、該第3リア通路148に供給された第2エア(冷風)が、ヒータコア60を通過することによって加熱されて温風となり、第4リア通路150を通じて下流側へと流通すると共に、前記第3リア通路148の開口部から冷風の第2エアが直接第4リア通路150内へと供給され、前記温風の第2エアと混合されて下流側に流通する。そして、モード切換ダンパ158の切換作用下に第5リア通路154を通じて第2エア(混合風)が第2ベント吹出口(図示せず)から車室内における中間席の乗員の顔近傍へと送風される。
【0050】
次に、車室内における乗員の顔及び足元近傍に送風を行うバイレベルモードが選択された場合には、第1エアミックスダンパ86が第3フロント通路82側に若干だけ回動すると共に、ベントダンパ108がベントモードの場合と比較して若干だけ第1ベント吹出口106側へと回動した中間位置となる。そして、エバポレータ58を通過した冷風の第1エアがバイパス通路88を介して直接混合部98へと供給され、前記混合部98で第3及び第5フロント通路82、96を通じて供給された第1エア(混合風)と混合されて第1ベント吹出口106から乗員の顔近傍へと送風される。また、混合部98から第6フロント通路102へと流通する第1エア(混合風)の一部が、該第6及び第7フロント通路102、110を通じて第1及び第2ヒート通路112、114にそれぞれ供給されることにより、第1及び第2ヒート吹出口(図示せず)から車室内における前席及び中間席に乗車している乗員の足元近傍に送風される。
【0051】
同時に、第2エアミックスダンパ152が、若干だけヒータコア60から離間する方向に回動し、且つ、モード切換ダンパ158が第6リア通路156を閉塞した状態から回動して第5リア通路154と第6リア通路156との間となる中間位置となる。そして、第2エアは、ヒータコア60によって加熱された温風と、第3リア通路148から開口部を通じて前記第4リア通路150へと供給された冷風とが混合され、混合風として第5リア通路154から第2ベント吹出口を経て車室内において中間席に乗車している乗員の顔近傍に送風されると共に、第6リア通路156から第3及び第4ヒート吹出口を経て車室内における中間席及び後席に乗車している乗員の足元近傍に送風される。
【0052】
次に、車室内において乗員の足元近傍に送風を行うヒートモードが選択された場合には、バイレベルモードの場合と比較して第1エアミックスダンパ86がさらに第3フロント通路82側に回動すると共に、デフロスタダンパ104及びベントダンパ108が回動してそれぞれデフロスタ吹出口100及び第1ベント吹出口106を閉塞する。これにより、混合部98で混合された第1エア(混合風)が、第6及び第7フロント通路102、110を通じて後方へと流通して第1及び第2ヒート通路112、114にそれぞれ供給され、図示しない第1及び第2ヒート吹出口から車室内における前席及び中間席における乗員の足元近傍に送風される。
【0053】
一方、第2エアミックスダンパ152が、バイレベルモードの場合と比較してさらに開口部側に向かって回動し、且つ、モード切換ダンパ158が第5リア通路154を閉塞する。これにより、第4リア通路150で混合された第2エア(混合風)が、該第4リア通路150から第6リア通路156を経て第3及び第4ヒート吹出口へ供給され、車室内における中間席及び後席における乗員の足元近傍に送風される。
【0054】
次に、車室内において乗員の足元近傍及びフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍に送風を行うヒートデフモードについて説明する。このヒートデフモードが選択された場合には、デフロスタダンパ104がデフロスタ吹出口100から離間する方向に回動し、第6フロント通路102の開口部との間となる中間位置となると共に、ベントダンパ108によって第1ベント吹出口106が閉塞される(図2中、二点鎖線形状)。これにより、混合部98で混合された第1エア(混合風)の一部が、デフロスタ吹出口100を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風されると共に、前記第1エアの一部が、第6及び第7フロント通路102、110を経て第1及び第2ヒート通路112、114、第1及び第2ヒート吹出口(図示せず)から車室内における前席及び中間席における乗員の足元近傍に送風される。
【0055】
一方、このヒートデフモードにおいて、第2エアを車室内の中間席及び後席に送風する場合には、上述したヒートモードと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0056】
最後に、車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍のみに送風を行うデフロスタモードについて説明する。この場合には、デフロスタダンパ104が、デフロスタ吹出口100から離間するように回動して第6フロント通路102の開口部を閉塞し、第1エア(混合風)が混合部98から開口したデフロスタ吹出口100へと供給され、車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風される。この場合、第2ブロアユニット62を駆動させることなく、第1ブロアユニット56から供給される第1エアのみを送風することによって対応することができる。
【0057】
また、この際、通風切換ダンパ136を第1分離壁132から離間させる方向に回動させ、連通口134を開放すると共に、連通切換ダンパ146a(b)を第2リア通路142a(b)と第2フロント通路80a(b)とが連通するように回動させることにより、第1フロント通路74に供給される第1エアの一部を、第1リア通路130側に供給する。これにより、第2ブロアユニット62を駆動させず、第2リア通路142a、142bに第2エアが供給されない場合でも、エバポレータ58の第2冷却部78に第1エアの一部を通過させることができるため、前記エバポレータ58の凍結を防止することができる。
【0058】
さらに、通風切換ダンパ136を回動させることで第2取入口128を閉塞させて、第1エアが第2ブロアユニット62へ流入することにより発生する騒音を防ぐことができる。
【0059】
上述したデフロスタモードを除く各送風モードにおいて、第1ブロアファン120と第2ブロアファン138を同時に駆動させ、第1及び第2エアを所望の流量でケーシング52内に供給している。この場合、本実施の形態では、各送風モード時に必要とされる第1エアの供給量(送風量)と、第2エアの供給量(送風量)に応じて後述する制御部160を介して前記第1ブロアファン120、第2ブロアファン138、及び通風切換ダンパ136の駆動制御を行う。そこで、先ず通風切換ダンパ136の駆動制御について、以下に説明する。
【0060】
前記第1エアの送風量は、第1ブロアファン120の回転数、すなわち回転速度n1に比例するが、該回転速度n1は、後述する電源部176から、第1ファンドライバ170を介して第1ブロアファン120を回転させる第1ブロアモータ121へ供給される負荷電圧V1によってほぼ決定される。図6Aに、第1ブロアファン120の回転速度n1と第1ブロアファン120への負荷電圧V1との関係を示す。この場合、前記第1ブロアファン120の駆動開始電圧をVa、最大定格電圧をVbとすると、電圧V1がVa未満の場合、第1ブロアファン120は回転しない。また、電圧V1がVbより大きい場合、図示しないレギュレータ等の電圧保護回路によってVbまで降圧され、Vbを負荷したときと同じ回転速度nbで第1ブロアファン120は回転する。これによって、第1ブロアファン120に最大定格以上の電圧がかかることは阻止され、第1ブロアファン120及び第1ファンドライバ170が損壊することはない。
【0061】
第2ブロアファン138を付勢して送風する場合も、第1ブロアファン120の場合と同様となり、図6Bに示すように、後述する電源部176から第2ファンドライバ172へ供給される負荷電圧をV2、回転速度をn2、駆動開始電圧をVc、最大定格電圧をVd、Vdが負荷されたときの回転速度をndとするが、第1ブロアファン120の制御と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、制御部160は、主たる制御部としてのCPU(Central Processing Unit)162と、第1ブロアファン120を駆動させる第1ファンドライバ170、第2ブロアファン138を駆動させる第2ファンドライバ172、第1ファンドライバ170への負荷電圧V1を検出する第1電圧検出部164、第2ファンドライバ172への負荷電圧V2を検出する第2電圧検出部166、ダンパ機構64を駆動させるダンパドライバ168、記憶部174としてのRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、及びダンパドライバ168、第1及び第2ファンドライバ170、172の電源である電源部176等を有しており、上記の各機能部は、CPU162がプログラムを読み込み、記憶部174等と共働しながらソフトウェア処理を実行することにより実現される。なお、第1ファンドライバ170は、回転制御装置124aに含まれてもよく、第2ファンドライバ172は、回転制御装置124bに含まれてもよい。
【0063】
記憶部174には、例えば、前記第1ブロアファン120の1回転あたりの第1エアの流量である第1エア流量A1、第2ブロアファン138の1回転あたりの第2エアの流量である第2エア流量A2、第1ブロアファン120の電気抵抗値R1、及び第2ブロアファン138の電気抵抗値R2が予め記憶されている。ただし、記憶部174に記憶されたデータは上述のものに限定されない。
【0064】
CPU162が受信した負荷電圧V2のデータが、V2<Vcの場合、すなわち第2ブロアファン138が回転していない(n2=ゼロ)場合は、CPU162からの指示で、電源部176から、ダンパドライバ168へ電源が供給されることで、ダンパ機構64を構成する通風切換ダンパ136を回動させて、第2取入口128を塞ぐ(図5参照)。これによって、第1フロント通路74から、連通口134、第1リア通路130を経て、前記第1エアを第2冷却部78へ供給することで、該第2冷却部78表面に生じた水滴が氷結して付着することを防止することができる。また、第2取入口128が塞がれることによって、ケーシング52内の空気が逆流して、第2ブロアユニット62の第2ブロアファン138まで達することで発生する可能性のある、車室内の騒音を可及的に低下させることができる。
【0065】
また、負荷電圧V2について、記憶部174にて所定の電圧値Vf(ただし、Vc<Vf<Vd、図6B参照)を予め設定して、CPU162が受信した負荷電圧V2のデータが、Vc≦V2<Vfの場合、すなわち第2ブロアファン138の回転速度n2が遅く設定された場合は、CPU162はダンパドライバ168へ指示を送り、負荷電圧V2に応じて通風切換ダンパ136を回動させて、連通口134を開成し、第1ブロアファン120からの第1エアの一部を、第1フロント通路74から連通口134と第1リア通路130を経てエバポレータ58の第2冷却部78に送ると共に、さらに、第2取入口128を経て第1リア通路130から、第2ブロアファン138からの前記第2エアを、前記第2冷却部78へ供給することで、該第2冷却部78表面に生じた水滴が氷結して付着することを防止することができる(図5参照)。
【0066】
また、CPU162が受信した負荷電圧V2のデータが、Vf≦V2≦Vdの場合、すなわち第2ブロアファン138の回転速度n2が十分に確保されている場合は、CPU162がダンパドライバ168へ指示を送り、通風切換ダンパ136を回動させて、連通口134を塞ぐ(図5参照)。
【0067】
なお、CPU162が受信した負荷電圧V1のデータが、V1=Vbの場合は、常に、CPU162がダンパドライバ168へ指示を送り、通風切換ダンパ136を回動させて、連通口134を塞ぐ(図5参照)。V1=Vbの場合は、例えばデフロスタモードのように、第1ブロアファン120を最大出力で稼動させて急速に外気を導入して、車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去し、乗員の視界を確保する場合に好適である。
【0068】
次に、第1ブロアファン120及び第2ブロアファン138の駆動制御について、以下に説明する。
【0069】
第1ブロアファン120及び第2ブロアファン138の駆動制御は、ケーシング52内に供給される前記第1エア及び第2エアの供給量(空気の流量)が必要とされる所望流量としつつ、前記第1ブロアファン120を駆動させる際に要する第1消費電力W1と、前記第2ブロアファン138を駆動させる際に要する第2消費電力W2との合計が最小となるように行う(図8中、実線L参照)。ここで、第1ブロアファン120を単独で駆動させたときの空気の流量は、第1エア流量A1と、回転速度n1との積と見なせる。なお、図6Aにも示す通り、回転速度n1は負荷電圧V1にほぼ比例する。第2ブロアファン138においても同様に、第2ブロアファン138を単独で駆動させたときの空気の流量は、第2エア流量A2と、回転速度n2との積であり、図6Bにも示す通り、回転速度n2は負荷電圧V2に比例する。
【0070】
また、第1ブロアファン120の第1消費電力W1は、負荷電圧V1の2乗に比例し、電気抵抗値R1に反比例する。同様に、第2ブロアファン138の第2消費電力W2は、負荷電圧V2の2乗に比例し、電気抵抗値R2に反比例する。
【0071】
第1ブロアファン120の駆動開始電圧Va、最大定格電圧Vb、該Vbが負荷されたときの回転速度nb、第1エア流量A1、及び電気抵抗値R1は、前記第1ブロアファン120の特性で各モード毎に決まる固定値とほぼ見なすことができる。さらに、第2ブロアファン138の駆動開始電圧Vc、最大定格電圧Vd、該Vdが負荷されたときの回転速度nd、第2エア流量A2、及び電気抵抗値R2は、前記第2ブロアファン138の特性で各モード毎に決まる固定値とほぼ見なすことができる。従って、第1消費電力W1及び第1ブロアファン120を単独で駆動させたときの空気の流量は、負荷電圧V1によって決まり、また、第2消費電力W2及び第2ブロアファン138を単独で駆動させたときの流量は、負荷電圧V2によって決められる。すなわち、第1ブロアファン120及び第2ブロアファン138の駆動制御は、負荷電圧V1、V2を制御することによってなされる。
【0072】
負荷電圧V1、V2の制御について、図9を用いて、以下に説明する。前述したように、第1電圧検出部164は、第1ファンドライバ170への負荷電圧V1を検出し、第2電圧検出部166は、第2ファンドライバ172への負荷電圧V2を検出している。
【0073】
ステップS1において、乗員による車室内の動作によって、所望の空気の流量が変更される。車両用空調装置50が、オフ状態からオン状態になった場合もステップS1が実行されることは諒解されよう。所望の空気の流量が変更されない場合は、ステップS1へ戻る。
【0074】
ステップS2において、変更された所望の空気の流量から、制御部160のCPU162は、第1及び第2ブロアファン120、138の消費電力の合計の低減が図れるように、第1ブロアファン120へ負荷される適切な負荷電圧V1を算出し、算出電圧Vmとする。同様に、第2ブロアファン138へ負荷される適切な負荷電圧V2を算出し、算出電圧Vnとする。
【0075】
ステップS3において、CPU162からの指示で、電源部176から、第1ファンドライバ170へ算出電圧Vmが負荷されることで、第1ブロアファン120の回転速度n1が変更される。同様にCPU162からの指示で、電源部176から、第2ファンドライバ172へ算出電圧Vnが負荷されることで、第2ブロアファン138の回転速度n2が変更される。この結果、負荷電圧V1、V2を制御することで、変更された所望の空気の流量を得ることができる。
【0076】
前述したように、第1消費電力W1は負荷電圧V1によって決められ、第2消費電力W2は負荷電圧V2によって決められることと、負荷電圧V1、V2を制御することによって、第1ブロアファン120及び第2ブロアファン138が駆動制御されることにより、図8に示されるように、第1ファンドライバ170が、第1ブロアファン120を単独で駆動させ(図8中、破線L1参照)、次いで、第2ファンドライバ172が、第2ブロアファン138を駆動させて(図8中、破線L2参照)所望の空気の流量を得る場合と比較し、前記第1及び第2ブロアファン120、138の消費電力の合計である、第1消費電力W1と第2消費電力W2の合計が低減されるように、前記第1及び第2ファンドライバ170、172を用いて、前記第1及び第2ブロアファン120、138を駆動制御することができ、第1及び第2エアを所望の空気の流量で効率的に供給することが可能となる。
【0077】
なお、あらかじめ吹出しモードごとに回転数に応じた第1及び第2ブロアモータ121、141に印加する最適な駆動電圧データのマップを記憶部174に保持しておき、それに基づいて制御を行ってもよい。
【0078】
以上のように、本発明の実施の形態では、第2ファンドライバ172への負荷電圧から、第2ブロアファン138の回転速度n2がゼロと制御部160が判断した場合は、通風切換ダンパ136によって第2取入口128を塞ぐことにより、第1フロント通路74から、連通口134と第1リア通路130を経て、第1エアを第2冷却部78へ供給することで、該第2冷却部78表面に生じた水滴が氷結して付着することを防止することができる。さらに、通風切換ダンパ136が第2取入口128を塞ぐことで、車室内及びケーシング52内の空気が第1リア通路130と第2取入口128を経て第2ブロアファン138へと逆流することが防止されることによって、逆流した空気が第2ブロアファン138まで達することによる、車室内の騒音を低下させることで、乗員の快適性をより一層向上させることができる。また、第2ブロアファン138の回転速度n2が遅く設定された場合は、通風切換ダンパ136を回動させて、連通口134を開成し、第1フロント通路74から連通口134と第1リア通路130を経て前記第1エアの一部と共に、第2取入口128を経て第1リア通路130から第2エアを、第2冷却部78へ供給することで、該第2冷却部78表面に生じた水滴が氷結して付着することを防止することができる。なお、第1ブロアユニット56が最大定格電圧Vbで駆動している場合は、デフロスタモード等で、第1ブロアファン120を最大出力で稼動させて急速に外気を導入して、車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去したい場合が考えられるため、第2ブロアファン138の回転速度n2と拘りなく、通風切換ダンパ136によって連通口134を塞いで、第1ブロアユニット56からの第1エアのすべてを、第1フロント通路74を経て第1冷却部76へ供給するように設定することができる。
【0079】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0080】
50…車両用空調装置 52…ケーシング
54…連結ダクト 56…第1ブロアユニット
58…エバポレータ 60…ヒータコア
62…第2ブロアユニット 64…ダンパ機構
66…第1分割ケーシング 68…第2分割ケーシング
70…センタープレート 86…第1エアミックスダンパ
98…混合部 124a、124b…回転制御装置
146a、146b…連通切換ダンパ 152…第2エアミックスダンパ
160…制御部 162…CPU
168…ダンパドライバ 170…第1ファンドライバ
172…第2ファンドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2通路を内部に有したケーシングと、
前記第1通路に接続され、該第1通路に対して空気を送風する第1送風機と、
前記第2通路に接続され、該第2通路に対して空気を送風する第2送風機と、
前記ケーシングの内部において、前記第1通路と第2通路との間に跨るように配設され、前記空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
前記熱交換器より上流側、且つ、前記第1通路と第2通路との間に設けられ、前記第1通路と前記第2通路との連通状態を切り換える切換ダンパと、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記第1及び第2送風機が共に駆動している際、前記切換ダンパの切換作用下に前記第1通路と前記第2通路とを連通させ、前記第1送風機から前記第1通路へと供給される空気の一部を、前記第2通路側へと流通させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記第1送風機が駆動し、且つ、前記第2送風機の駆動が停止した際、前記第1通路と前記第2通路とを連通させ、前記第1送風機から前記第1通路へと供給される空気の一部を、前記第2通路側へと流通させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記切換ダンパは、該切換ダンパによる切換作用下に前記第1通路と前記第2通路とが連通した際、前記第2送風機と前記第2通路との連通を遮断することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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