説明

車両用空調装置

【課題】本発明は、車両の下方から上方に空調空気を輸送する際に、空調空気の熱ロスを低減可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】座席12内部には、上下方向に配管部3が設けられており、配管部3はペルチェ素子2と接続されている。ヘッドレスト121の上面には、ヘッドレスト通風口322が上側を向いて形成されている。車両の天井14には空気を流通可能な天井配管部4が設けられている。天井配管部4において、ヘッドレスト通風口322の上方かつヘッドレスト通風口322と対応する位置には、複数の天井開口部411からなる第1天井通風部41が形成されている。また、天井配管部4において、車両の第1天井通風部41より車両の前方には空気を吹き出し可能な第2天井通風部42が形成されている。ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41とが離間して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床下にペルチェ素子が設置された車両が開示されている。ペルチェ素子の吸熱フィンは車体の床から車体の下に向けて設けられており、ペルチェ素子に固定された放熱板が乗員の足元に配置されている。
【0003】
特許文献2には、車室の前席側の空間と後席側の空間との間にエアカーテンを形成する空気を送風するエアカーテン装置と、車両前側から前席側の空間に向けて空気を送風する前席空調ユニットおよび車両側方から後席側の空間に向けて空気を送風する後席空調ユニットを備える車両用空調装置が開示されている。後席空調ユニットは、車両の側面部に配置されている。また、後席空調ユニットと接続されたフェイスダクト(216)が、後席空調ユニットから天井側に延設されている。空気は、後席空調ユニットからフェイスダクトを流通して後席側の空間に送風されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−11517号公報
【特許文献2】特開2002−362128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような車両用空調装置では、ペルチェ素子の熱は車両外部に向けて配置されたフィンにより放熱(吸熱)され乗員の足元を暖める(冷やす)ことができる。しかし、熱は車室において上方に輸送されないため、座席に着座した乗員に対して足元以外の箇所を暖める(冷やす)ことができない。
【0006】
特許文献2のように、車両の側面に配置されたダクトを流通させることで空気を天井側に輸送する場合では、空気がダクトを流通される過程で、熱(温熱または冷熱)が車室外に流出されやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、車両の下方から上方に空調空気を輸送する際に、空調空気の熱ロスを低減可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、少なくとも車両の座席において上下方向に延設され、空気を流通可能な第1空気流通手段と、前記第1空気流通手段と接続された熱供給部と、前記車両の天井に設けられ、空気を流通可能な第2空気流通手段と、前記第1空気流通手段より車室内へ空気を吹き出し可能な第1通風口と、前記第2空気流通手段に前記車室内から空気を取り入れ可能な第2通風口と、前記第2空気流通手段より前記車室内へ空気を吹き出し可能な第3通風口とを有する車両用空調装置であって、前記第1通風口は、前記第1空気流通手段から上側かつ前記第2通風口に対応する位置に開口向きを有するように設置され、前記第2通風口は、前記天井から下側かつ少なくとも前記第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように設置され、前記第1通風口と前記第2通風口とが離間して配置されることを特徴とする。
【0009】
また、第1通風口と前記第2通風口とが離間して配置されるとは、第1通風口から吹き出された空気が第2通風口から吸い込まれることが可能な程度に第1通風口と第2通風口との間が離れている場合を指し、第1通風口から吹き出された空気の一部が、第2通風口から吸い込まれずに車室内に広がる場合を含む。
【0010】
また、第2通風口は、天井から下側かつ少なくとも第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように設置されるとは、第1通風口に対応する領域に少なくとも第2通風口が位置するように第2通風口が設けられる場合を指し、第2通風口が第1通風口よりも十分広い面積に形成されており、第1通風口の位置や角度が変化した場合であっても、第1通風口から吹き出された空気が第2通風口から吸い込み可能である場合を含む。
【0011】
したがって、請求項1に記載の本発明によれば、熱供給部により加熱または冷却された空気は、座席の内部を通過して第2空気流通手段に流通される。そのため、車両の下方から上方に空気を輸送する際に、空気の熱が車室外に流出することによる熱ロスを低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、前記熱供給部は車両の床に設けられることを特徴とする。
【0013】
なお、床に設けられるとは、床の下方に設けられる場合および床の上面に設けられる場合を指し、座席の内部において床と当接して設けられる場合を含む。
【0014】
そのため、車両の下方から上方に空調空気を輸送する本発明に好適である。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、前記座席は位置または角度が調節可能な座席であり、前記第2通風口は前記第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように調節されることを特徴とする
【0016】
なお、第2通風口は第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように調節可能であるとは、座席の位置または角度が変動されることにより、第2通風口に対する第1通風口の位置が調節された場合であっても、第1通風口の上方の第1通風口と対応する領域に第2通風口が配置され、第1通風口から吹き出された空気が第2通風口から吸い込み可能に構成されることを指し、第1通風口と対応する位置に第2通風口が位置されるように、天井における第2通風口の位置が調節される場合を含む。
【0017】
そのため、座席の位置または角度が調節された場合であっても、第1空気流通手段と第空気流通手段とを接続する別部材を必要とすることなく、車両の下方から上方に空気を流通することができる。
【0018】
請求項4に記載の本発明は、前記第1通風口は前記座席のヘッドレストの上面に設けられることを特徴とする。
【0019】
したがって、座席の上面より上側に第1空気流通手段が設けられないため、乗員の視界が良好となる。
【0020】
請求項5に記載の本発明は、前記第3通風口からの空気の吸い込みまたは吹き出し状態を、冷房時と暖房時とで切り替え可能な切り替え手段を有することを特徴とする。
【0021】
そのため、乗員に対する空気の気流を切り替えることで、気流による体感温度の低下を空調に利用でき、空調効率が向上する。
【0022】
請求項6に記載の本発明は、前記座席の前記座席に着座した乗員と当接される表面に、空気を吹き出し可能な直噴部が形成されることを特徴とする。
【0023】
そのため、座席に着座した乗員に直接空気を吹き出すことができ、冷房または暖房の効率を向上することができる。
【0024】
請求項7に記載の本発明は、前記直噴部は、前記直噴部の空気の吹き出し方向に通風可能な逆止弁を備えることを特徴とする。
【0025】
そのため、制御装置を設けなくても圧力差または空気の流通方向により直噴部からの空気の吹き出し状態を切り替えることができ、部品点数を低減できる。
【0026】
請求項8に記載の本発明は、前記熱供給部はペルチェ素子であることを特徴とする。
【0027】
そのため、1つの熱供給部を冷熱供給部および温熱供給部として利用できるので、部品点数を低減できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、車両の下方から上方に空調空気を輸送する際に、空調空気の熱ロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態の車両用空調装置1における冷房時の空気の流れを説明する模式図である。
【図2】実施形態の車両用空調装置1における天井配管部4を車室内側から見た構成を説明する模式図である。
【図3】実施形態の車両用空調装置1における暖房時の空気の流れを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態)
実施形態を図1から図3に基づいて説明する。なお、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしてある。
【0031】
まず、本実施形態の車両用空調装置1の構成について説明する。
図1に示すように、車両用空調装置1は車両の床11に配置された熱供給部としてのペルチェ素子2と、ペルチェ素子2と熱的に結合して設けられた第1フィン21および第2フィン22と、座席12の内部に設けられた第1空気流通手段としての配管部3と、天井14に設けられた第2空気流通手段としての天井配管部4とを備えている。
本実施形態において、座席12は、座席12の位置の調節や、ヘッドレスト121または背もたれ部122の角度の調節が可能な構成となっている。
【0032】
ペルチェ素子2は床11の上面に配置されている。ペルチェ素子2の下面には、ペルチェ素子2と当接して第1フィン21が配置されている。
第1フィン21には、車両の外側の空気である外気を流通可能である床下外気導入部5が接続されている。床下外気導入部5は床11の下方において車両の前方側(図1において左側)には、外気が流れている位置が開口され、外気を取り入れ可能な外気取り入れ口51が設けられている。また、床下外気導入部5において車両の後側(図1において右側)には、車両の外側へ空気を排出可能に開口された外気排出口52が設けられている。
ペルチェ素子2の上面には、ペルチェ素子2と当接して第2フィン22が配置されており、第2フィン22は配管部3の内部に位置される構成となっている。
【0033】
配管部3において、車両の前側下方(図1において左下側)の座席12に着座した乗員の足元付近に相当する位置には、配管部3と接続して足元配管部6が設置されている。足元配管部6において、車両の前側に位置し、配管部3と接続されていない側には、空気を流通可能に開口された足元通風口61が形成されている。
配管部3は、第1経路部31、第2経路部32、第3経路部33および第4経路部34から構成されている。
【0034】
第1経路部31は、足元配管部6と接続された箇所から車両の前後方向(図1において左右方向)に延設されている。また、座席12の着座部123の下方において、第1経路部31において、足元配管部6と接続されていない側(図1において右側)の端部から車両の上下方向(図1において上下方向)に第2経路部32が延設されている。第3経路部33は、本実施形態においては第1経路部31の上方に第1経路部31と平行に設けられており、分岐点Pにおいて第2経路部32と接続されている。第3配管部の一方の(車両の前側、図1において左側)の端部は、第3経路部33の下方において車両の上下方向に延設された第4経路部34と接続されている。第4経路部34は第1経路部31および足元配管部6と接続されている。
【0035】
第2経路部32において分岐点Pの上側は背もたれ配管部321に構成されている。背もたれ配管部321は、分岐点Pから座席の上部であるヘッドレスト121の上面部に延設されており、ヘッドレスト121の上面において開口されている。背もたれ配管部321において該開口された箇所は空気が流通可能であり、ヘッドレスト通風口322を構成している。
【0036】
ヘッドレスト121と天井14の間には隙間が空いており、ヘッドレスト通風口322と後述する第1天井通風部41とが離間して配置されている。
また、第2経路部32において分岐点Pの下方には羽の回転により空気を送風可能である第1ファン7が設置されている。なお、第1ファン7は羽の回転方向を切り替え可能な構成となっている。
【0037】
背もたれ配管部321において、座席12に着座した乗員の背中側(座席12の表面側、図1において左側)には、空気を吹き出し可能に開口された背もたれ直噴部323が形成されている。背もたれ直噴部323には、逆止弁である背もたれ直噴部弁324(図3において図示する)が開閉可能に固定されている。背もたれ直噴部弁324は背もたれ配管部321の圧力差により、冷房時には開放され、暖房時には閉鎖されるように切り替え可能に構成されている。
また、第3経路部33において、座席12に着座した乗員の臀部側(座席12の表面側、図1において上側)には、空気を吹き出し可能に開口された着座部直噴部333が形成されている。
【0038】
第3経路部33において、着座部直噴部333と分岐点Pの間には第1着座部弁36が開閉可能に固定されている。また、第3経路部33において、第4経路部34と接続された箇所と着座部直噴部333との間には第2着座部弁37が開閉可能に固定されている。
第1着座部弁36および、第2着座部弁37はいずれも圧力差で駆動可能な逆止弁であり、第3経路部33の開閉を切り替え可能な構成となっている。
【0039】
天井配管部4は、車両の天井14において座席12の上方に配置される構成となっている。天井配管部4において座席12の上側(ヘッドレスト通風口322と対応する部分)には、空気を流通可能な構成である第1天井通風部41が形成されている。なお、第1天井通風部41は第2通風口に対応している。
つまり、ヘッドレスト通風口322は、背もたれ配管部321から上側かつ第1天井通風部41に対応する位置に開口向きを有するように設置されており、第1天井通風口は、天井14から下側かつ少なくともヘッドレスト通風口322と対応する位置に開口向きを有するように設置されている。
【0040】
図2は天井配管部4を下側(車室内)から見た模式図である。第1天井通風部41には、スリット状に開口された天井開口部411が、車両の前後方向(図2において上下方向)に並行して複数設けられている。なお、本実施形態において天井開口部411を開閉可能である図示しないシャッター部材が設置されている。シャッター部材は図示しない制御装置により天井開口部411の少なくとも一部を選択的に開閉可能となっており、第1天井通風部41がヘッドレスト通風口322と対応する位置に開口向きを有するように調節可能である。つまり、座席12の位置または角度が変動されることにより、天井配管部4に対するヘッドレスト通風口322の位置が変化した場合であっても、ヘッドレスト通風口322の上方に配置された天井開口部411が開放状態となるように制御されている。なお、本実施形態では、ヘッドレスト通風口322の真上に位置する天井開口部411が開放状態とされ、ヘッドレスト通風口322の真上に位置しない天井開口部411は閉鎖状態とされるように制御される構成となっている。
【0041】
また、天井配管部4において車両の前側(図2において下側)には、車室内に向けて空気を流通可能である第2天井通風部42が形成されている。本実施形態において、第2天井通風部42は第3通風口に対応しており、座席12に着座した乗員の上半身に空気を吹き出し可能な構成となっている。
【0042】
天井配管部4において、第2天井通風部42の上方(図1において上方)には第2ファン8が設置されている。第2ファン8は羽の回転により空気を送風可能であり、羽の回転方向が切り替え可能な構成となっている。この実施形態において、第2ファン8は切り替え手段に対応している。また、第2ファン8は冷房時において回転され、暖房時には回転が停止されるように図示しない制御手段により切り替えられる。つまり、第2天井通風部42からの空気の吹き出し状態は、冷房時には吹き出され、暖房時には吹き出されないように切り替え可能に構成されている。
【0043】
次に、本実施形態の車両用空調装置1における、冷房時の空気の流れについて説明する。
なお、図1において矢印は空気の流れる方向を示している。
【0044】
床下外気導入部5を流通された外気の熱は、第1フィン21によりペルチェ素子2に伝熱される。ペルチェ素子2の冷熱は第2フィン22により、配管部3(第1経路部31)を流通される空気を冷却する。冷却された空気(冷気)は第1ファン7の回転により、第1経路部31から第2経路部32に向けて流通(送風)される。送風された冷気の方向は分岐点Pにおいて、第3経路部33および背もたれ配管部321に分岐され、第3経路部33および背もたれ配管部321において矢印の方向に流通される。
【0045】
冷房時においては、第1着座部弁36は開放され、第2着座部弁37が閉鎖されるように、切り替えられている。つまり、第3経路部33の圧力差によって、第1着座部弁36は開放され、第2着座部弁37は閉鎖される。第3経路部33に流通された冷気は、着座部直噴部333から座席12の表面側に流通される。また、第2着座部弁37により第3経路部33が閉鎖されることにより、冷気は第3経路部33から第4経路部34に流通されることはない。また、第2着座部弁37の閉鎖により、足元通風口61から足元配管部6を流通して第1経路部31に流通された空気は、第4経路部34を経由して第3経路部33に流通されることはない。
【0046】
図1に示すように、冷房時には背もたれ直噴部弁324が開放されており、背もたれ配管部321に流通された冷気は、背もたれ直噴部323から座席12の表面に向けて吹き出される。
つまり、座席12に乗員が着座した場合には、背もたれ直噴部323または着座部直噴部333から、乗員の頭部、背中、脚、または臀部に向けて、冷気が直接吹き出される。
また、背もたれ配管部321に流通された冷気は、ヘッドレスト通風口322より上方に吹き出される。
【0047】
ヘッドレスト通風口322から吹き出された冷気は、第1天井通風部41より天井配管部4に流通される。なお、冷房時には、第2ファン8は、空気を第1天井通風部41から吸い込み、第2天井通風部42から吹き出すように回転されている。第2ファン8の回転により、冷気は第1天井通風部41より吸い込まれ、第2天井通風部42から吹き出される。なお、冷気は第2天井通風部42から座席12に向けて吹き出される。
つまり、座席12に乗員が着座した場合には、冷気は第2天井通風部42から乗員に向けて吹き出される。
【0048】
次に、本実施形態の車両用空調装置1における、暖房時の空気の流れについて説明する。
なお、図3において矢印は空気の流れる方向を示している。
【0049】
暖房時において、第1ファン7の回転方向は冷房時と逆向きに切り替えられる。第1ファン7の回転により、車両の天井付近に滞留する暖かい空気(暖気)はヘッドレスト通風口322より吸い込まれる。
背もたれ直噴部323に開閉可能に固定された背もたれ直噴部323弁は、図示しない制御装置により、暖房時には閉鎖されるように切り替えられている。背もたれ配管部321に流入された空気は、背もたれ直噴部弁324の閉鎖により、背もたれ直噴部323から吹き出されることなく、第2経路部32(背もたれ配管部321)を経由して下方に向けて流通される。暖房時において、第1着座部弁36は閉鎖され、第2着座部弁37が開放されるように図示しない制御装置により切り替えられている。
【0050】
第2経路部32に流通された空気は、第1経路部31に流通される。床下外気導入部5より導入された外気の熱は第1フィン21によりペルチェ素子2に伝熱され、ペルチェ素子2の熱は第2フィン22により第1経路部31の空気に伝熱される。つまり、外気が冷たい場合には、第1経路部31の空気はペルチェ素子2により加熱され、暖気となる。暖気は第1経路部31を経由して足元配管部6の足元通風口61より吹き出される。つまり、座席12に乗員が着座している場合には、足元通風口61より乗員の足元に暖気が吹き出される。
【0051】
また、第1経路部31から流通され、第4経路部34を上方に流通された暖気は、第2着座部弁37が開放されているために、第3経路部33に流通される。第3経路部33に流通された暖気は、着座部直噴部333より座席12の表面に吹き出される。つまり、座席12に乗員が着座している場合には、乗員の脚または臀部に直接暖気が吹き出される。
【0052】
次に、本実施形態における作用について説明する。
配管部3において、第2経路部32(背もたれ配管部321)は座席12内部において上下方向(床11から天井14を向いた方向、図1において上下方向)に延設されている。配管部3は第1経路部31においてペルチェ素子2と接続されている。また、ヘッドレスト121の上面には、配管部3が開口されたヘッドレスト通風口322が上側を向いて形成されている。
【0053】
車両の天井14には空気を流通可能な天井配管部4が設けられている。天井配管部4において、ヘッドレスト通風口322の上方かつヘッドレスト通風口322と対応する位置には、複数の天井開口部411からなる第1天井通風部41が形成されている。また、天井配管部4において、車両の第1天井通風部41より車両の前方(図1において左側)には空気を吹き出し可能な第2天井通風部42が形成されている。
ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41とは離間して配置されている。
【0054】
ペルチェ素子2により冷却された空気は、座席12の内部に設けられた背もたれ配管部321を通過して、ヘッドレスト通風口322から吹き出された後、第1天井通風部41から天井配管部4に流通される。そのため、車両の床11の上面(車両の下方)に設けられたペルチェ素子2で冷却された空気を、天井14の側(上方)に輸送する際に、空気を座席12の内部を流通させることができるため、空気の熱が車室外に流出されにくい。したがって、空調における熱ロスを低減することができる。
【0055】
座席12は座席12の位置または角度が調節可能である。天井配管部4には、座席12の位置または角度と連動して第1天井開口部411の開閉状態を調節可能であるシャッター部材が備えられている。シャッター部材は、天井配管部4に対するヘッドレスト通風口322の位置が変化した場合に、ヘッドレスト通風口322の上方に配置された天井開口部411が開放状態となるように制御される。シャッター部材により、第1天井部の開閉状態は、ヘッドレスト通風口322の真上に位置する天井開口部411が開放状態となり、ヘッドレスト通風口322の真上に位置しない天井開口部411が閉鎖状態に制御される。
【0056】
ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41との間には、隙間が存在する。つまり、背もたれ配管部321(ヘッドレスト通風口322)と天井配管部4(第1天井通風部41)との間には、空間が形成されている。該空間において空気が下方から上方に流通される場合に、背もたれ配管部321と天井配管部4とをダクト等の別部材で接続する場合が考えられる。しかし、該別部材の中に空気を流通させる場合では、座席12が天井14と別部材により接続されているため、座席12の位置または角度を変動することができない。つまり、座席12の位置または角度の自由度が制限されるという問題があった。
それに対して、ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41とを設け、ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41との間の空間を通して空気を背もたれ配管部321から天井配管部4に流通する場合には、座席12の位置または角度の自由度が制限されない。つまり、座席12の位置または角度を調整される場合であっても、車両の下方(車両の床11)から上方(天井)に空気を流通することができる。
【0057】
ヘッドレスト通風口322は座席12のヘッドレスト121の上面に設けられている。つまり、背もたれ配管部321はヘッドレスト121の上面から上側に設けられない。したがって、ヘッドレスト121と天井14との間に乗員の視界を遮る部材が設置されないため、乗員の視界が良好となる。
【0058】
第2天井通風部42には、座席12に着座した乗員の上半身に空気を吹き出し可能な構成となっている。また、第2ファン8は冷房時において回転され、暖房時には回転が停止されるように制御手段により切り替えられる。つまり、第2天井通風部42からの空気の吹き出し状態は、冷房時には第2天井通風部42から空気が吹き出され、暖房時には第2天井通風部42から空気が吹き出されないように切り替えられている。
【0059】
そのため、冷房時には乗員に直接空気を吹き出すことで、乗員の体感温度を低下させることができる。それに対し、暖房時には、乗員に直接空気が吹き出されないように調節することで、乗員の体感温度の低下を防止できる。つまり、冷房時と暖房時とで乗員に対する空気の気流を切り替えることで、気流による体感温度の変化を空調に利用でき、空調効率が向上する。
【0060】
車両の天井に滞留する暖かい空気を、背もたれ配管部321を通して、足元通風口61から乗員の足元に吹き出している。そのため、天井付近の暖かい空気を暖房に利用することができる。また、暖房時において乗員の頭部が暖められることに起因する乗員の不快感を抑制でき、空調負荷を低減することができる。
【0061】
座席12には、座席12に着座した乗員と当接される表面(背もたれ部122、着座部123の表面)に、空気を吹き出し可能な背もたれ直噴部323および着座部直噴部333が形成されている。
座席12に着座した乗員の頭部、背中、脚または臀部に直接空気を吹き出すことができるため、乗員の体感温度を低下することができる。したがって、冷房時において冷房効率を向上することができる。
【0062】
熱供給部としてのペルチェ素子2が床11の上面に設けられている。ペルチェ素子2は冷熱供給部および温熱供給部を兼ねることができるため、例えば、冷熱供給部としてのエバポレーターと、温熱供給部としてのヒーターの両方を設置する場合に比べて、部品点数が少なくてよい。また、例えばエバポレーターを設置した場合と比較し、複雑な配管を設ける必要がない。
【0063】
配管部3において、車両の前側下方の座席12に着座した乗員の足元付近に相当する位置には、配管部3と接続して足元配管部6が設置されており、足元配管部6において車両の前側には空気を流通可能に開口された足元通風口61を形成されている。暖気は第1経路部から足元配管部6に流通された後、足元通風口61から吹き出される。そのため、乗員の足元を暖めることができる。
【0064】
冷房時には背もたれ直噴部323および着座部直噴部333から冷気を吹き出し、暖房時には足元配管部6の足元通風口61から暖気を吹き出すように、冷房時と暖房時とで空気の吹き出し口を切り替えている。そのため、冷房時、暖房時にそれぞれ適した部位を空調することで、少ない空調負荷で体感温度を快適に保つことができ、冷房または暖房効率が向上する。
【0065】
背もたれ直噴部323または着座部直噴部333からの空気の吹き出しを切り替え可能な逆止弁である背もたれ直噴部弁324、第1着座部弁36および第2着座部弁37を備えている。そのため、背もたれ直噴部弁324、第1着座部弁36および第2着座部弁37の開閉状態を制御するための制御装置を設けなくても、配管部3の圧力差により直噴部からの空気の吹き出し状態を切り替えることができ、部品点数を低減できる。
【0066】
前記した実施形態は以下の作用効果を有する。
(1)座席12内部には、上下方向には配管部3(背もたれ配管部321)が設けられており、配管部3は第1経路部31においてペルチェ素子2と接続されている。また、ヘッドレスト121の上面には、配管部3が開口されたヘッドレスト通風口322が上側を向いて形成されている。車両の天井14には空気を流通可能な天井配管部4が設けられている。天井配管部4において、ヘッドレスト通風口322の上方かつヘッドレスト通風口322と対応する位置には、複数の天井開口部411からなる第1天井通風部41が形成されている。また、天井配管部4において、車両の第1天井通風部41より車両の前方には空気を吹き出し可能な第2天井通風部42が形成されている。ヘッドレスト通風口322と第1天井通風部41とは離間して配置されている。したがって、ペルチェ素子2により冷却された空気は、座席12の内部を通過して天井配管部4に流通される。そのため、車両の下方から上方に空気を輸送する際に、空気の熱が車室外に流出することによる熱ロスを低減することができる。
【0067】
(2)座席12は位置または角度が調節可能であり、第1天井通風部41はヘッドレスト通風口322と対応する位置に開口向きを有するように調節可能であるシャッター部材を備えている。
そのため、座席12の位置または角度が調節された場合であっても、背もたれ配管部321と天井配管部4とを接続する別部材を必要とすることなく、車両の下方から上方に空気を流通することができる。
【0068】
(3)ヘッドレスト通風口322は座席12のヘッドレスト121の上面に設けられている。そのため、座席12の上面より上側に背もたれ配管部321が設けられないため、乗員の視界が良好となる。
【0069】
(4)天井配管部4には、第2天井通風部42からの空気の吸い込みまたは吹き出し状態を、冷房時と暖房時とで切り替え可能な切り替え手段を備えられている。そのため、乗員に対する空気の気流を、冷房時と暖房時とで切り替えることで、気流による体感温度の低下を空調に有効に利用できるため空調効率が向上する。
【0070】
(5)座席12において、座席12に着座した乗員と当接される表面(背もたれ部122および着座部123の表面)に、空気を吹き出し可能な背もたれ直噴部323および着座部直噴部333が形成されている。そのため、座席12に着座した乗員に直接空気を吹き出すことができ、冷房または暖房の効率が向上する。
【0071】
(6)熱供給部はペルチェ素子2であるため、1つの熱供給部で冷熱供給部および温熱供給部を兼ねることができる。したがって、部品点数を低減できる。
【0072】
(7)配管部3において、車両の前側下方の座席12に着座した乗員の足元付近に相当する位置には、配管部3と接続して足元配管部6が設置されており、足元配管部6において車両の前側には空気を流通可能に開口された足元通風口61が形成されている。そのため、乗員の足元を暖めることができる。
【0073】
(8)冷房時には背もたれ直噴部323および着座部直噴部333から冷気を吹き出し、暖房時には足元配管部6の足元通風口61から暖気を吹き出すように、冷房時と暖房時とで空気の吹き出し口を切り替えている。そのため、冷房時、暖房時にそれぞれ適した部位を空調することで、少ない空調負荷で体感温度を快適に保つことができ、冷房または暖房効率が向上する。
【0074】
(9)背もたれ直噴部または着座部直噴部からの空気の吹き出しを切り替え可能な逆止弁である背もたれ直噴部弁324、第1着座部弁36および第2着座部弁37を備えている。そのため、背もたれ直噴部弁324、第1着座部弁36および第2着座部弁37の開閉状態を制御するための制御装置を設けなくても、配管部3の圧力差または空気の流通方向により直噴部からの空気の吹き出し状態を切り替えることができ、部品点数を低減できる。
【0075】
本発明は、前記した実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0076】
○実施形態において、ヘッドレスト通風口322には暖房時に閉鎖可能な弁が備えられていてもよい。例えば暖房時において、該弁によりヘッドレスト通風口322が閉鎖され、第1ファン7が冷房時と同一の方向に回転されることで、足元配管部6から流入された空気がペルチェ素子2で加熱された後、背もたれ直噴部323または着座部直噴部333から吹き出されてもよい。
【0077】
○実施形態において、暖房時において、第2天井通風口から空気が乗員に向けて吹き出されてもよい。
【0078】
○実施形態において、第1通風口としてのヘッドレスト通風口322は、ヘッドレスト121に形成されていなくてもよい。例えば、背もたれ部122の上面に形成されていてもよい。また、第1通風口が座席12の上面に形成されていなくてもよい。例えば、背もたれ配管部321の一部が座席12の表面よりも上側に設けられており、座席12の表面より上側に設けられた背もたれ配管部321が開口された第1通風口が備えられていてもよい。
【0079】
○実施形態において、第2天井通風部42から吹き出された空気の一部が、第1天井通風部41から吸い込まれてもよい。その場合、天井配管部4において、空気を循環させることができるため、車室内において座席12の周囲以外への熱の流出を低減することができ、熱ロスが少なくなる。
【0080】
○実施形態において、第2天井通風口は座席12に着座した乗員の上半身に空気を吹き出し可能な構成に限らない。少なくとも乗員に吹き出されればよく、例えば、乗員の脚等に吹き出される構成であってもよい。なお、空気が乗員の上半身や頭部に吹き出される場合には、乗員の体感温度をより低下させることができる。
【0081】
○実施形態において、後部座席に着座した乗員に空気を吹き出し可能な通風口を有する別の天井配管部4が設置されてもよい。また、後部座席用に別の天井配管部4が備えられる構成に限らず、1つの天井配管部4に後部座席に着座した乗員に空気を吹き出し可能な通風口が設けられていてもよい。
【0082】
○実施形態において、シャッター部材が設けられていなくてもよい。例えば第1天井通風部41は、ヘッドレスト通風口322よりも十分広い面積に形成されており、ヘッドレスト通風口322から吹き出された空気が座席12の位置や角度に関わらず、常に天井配管部4に流通可能な構成であればよい。なお、ここで十分広い面積とは、座席12の位置または角度が変化することで、ヘッドレスト通風口322が配置される位置に対応する領域に少なくとも第1天井通風部41が形成されている場合を指す。
【0083】
○実施形態において、背もたれ直噴部323または着座部直噴部333が備えられていなくてもよい。またその場合、背もたれ直噴部弁342、第1着座部弁36または第2着座部弁37が備えられていなくてもよい。
【0084】
○実施形態において、冷房時と暖房時とで第1ファン7または第2ファン8の回転方向が切り替えられなくてもよい。少なくとも、ペルチェ素子2で加熱または冷却された空気が、背もたれ配管部321から天井配管部4に流通可能であればよい。
【0085】
○実施形態において、熱供給部はペルチェ素子2でなくてもよい。例えば、ヒーターやエバポレーターであってもよい。
【0086】
○実施形態において、足元配管部6が設けられていなくてもよく、空気が第2天井通風部42から乗員に向けて吹き出し可能であればよい。また、冷房時において、冷気が足元通風口61から吹き出し可能に構成されていてもよい。その場合、乗員の足元を冷却することができる。
【0087】
○実施形態において、車両の床11には熱供給部として蓄熱材を有し、蓄熱材がエンジンルームに設けられた空調装置等から供給された冷熱または温熱を蓄えても良い。
【0088】
○実施形態において、第2天井通風部41は、天井12に沿って少なくともヘッドレスト通風口322と対応する領域に、車両の前後方向を向いて設けられた空気流通方向が変更可能な形状(例えば断面弓状の形状)であるガイド部材であってもよい。その場合、ガイド部材に沿って空気が流通されるため、第2ファン8がない場合であってもヘッドレスト通風口322より吹き出された空気を車室内に流通させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 車両用空調装置
2 ペルチェ素子
3 配管部
4 天井配管部
7 第1ファン
8 第2ファン
11 床
12 座席
14 天井
41 第1天井通風部
42 第2天井通風部
121 ヘッドレスト
322 ヘッドレスト通風口
323 背もたれ直噴部
333 着座部直噴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両の座席において上下方向に延設され、空気を流通可能な第1空気流通手段と、
前記第1空気流通手段と接続された熱供給部と、
前記車両の天井に設けられ、空気を流通可能な第2空気流通手段と、
前記第1空気流通手段より車室内へ空気を吹き出し可能な第1通風口と、
前記第2空気流通手段に前記車室内から空気を取り入れ可能な第2通風口と、
前記第2空気流通手段より前記車室内へ空気を吹き出し可能な第3通風口とを有する車両用空調装置であって、
前記第1通風口は、前記第1空気流通手段から上側かつ前記第2通風口に対応する位置に開口向きを有するように設置され、
前記第2通風口は、前記天井から下側かつ少なくとも前記第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように設置され、
前記第1通風口と前記第2通風口が離間して配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱供給部は車両の床に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記座席は位置または角度が調節可能な座席であり、
前記第2通風口は前記第1通風口と対応する位置に開口向きを有するように調節されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1通風口は前記座席のヘッドレストの上面に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第3通風口からの空気の吸い込みまたは吹き出し状態を、冷房時と暖房時とで切り替え可能な切り替え手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記座席の前記座席に着座した乗員と当接される表面に、空気を吹き出し可能な直噴部が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記直噴部は、前記直噴部の空気の吹き出し方向に通風可能な逆止弁を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記熱供給部はペルチェ素子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate