説明

車両用空調装置

【課題】給排パイプないし膨脹弁装置が、ユーザーによる離脱防止を図るようにして取り付けられた冷却用熱交換器を備えた車両用空調装置において、冷却用熱交換器で発生した凝縮水の処理を高い信頼性をもって適切に行えるようにするとともに、ダンパの組み付け作業性を良好にし、しかも、冷却用熱交換器を給排パイプないし膨脹弁装置と共にケースに容易に組み付けることができるようにする。
【解決手段】ケース40を、エバポレータ30を収容する前側ケース構成部41と、ダンパ32〜35を収容する後側ケース構成部42とに分割する。後側ケース構成部42は、車両幅方向に分割された左側部材45と、右側部材とを備え、前側ケース構成部41は、上下に分割された上側部材43と、下側部材44とを備えている。下側部材44は、エバポレータ30を下から覆うように形成され、凝縮水を排水するドレン部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器等を収容するケースを備えた車両用空調装置に関し、特にケースが複数の部材に分割された構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両用空調装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器及び各種ダンパ等をケースに収容して構成されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の空調装置のケースは、3分割されている。すなわち、ケースは、車両左側部分を構成する左側部材と、右側部分を構成する右側部材と、冷却用熱交換器を収容する部分の底壁を構成する底壁部材とが結合されてなるものである。左側部材と右側部材との内部には、各種ダンパ及び加熱用熱交換器が配設されている。また、冷却用熱交換器は、左側部材及び右側部材の下部からケース内部へ挿入されて組み付けられるようになっている。底壁部材は、左側部材及び右側部材の下部に、冷却用熱交換器を下方から覆うように取り付けられている。
【0004】
また、冷却用熱交換器には、熱交換媒体を給排するための給排パイプや、膨脹弁を内蔵した膨脹弁装置等が取り付けられている。
【0005】
さらに、ダンパは、車幅方向に延びる回動軸を有しており、この回動軸がケースに支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−1351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷却用熱交換器に供給される熱交換媒体が車室内において洩れると、車室外で洩れた場合と比較して、乗員にとって好ましくない状況になる虞れがある。このような事態を回避するために、給排パイプないし膨脹弁装置を、ユーザーが簡単に離脱させることができないように冷却用熱交換器に直接取り付けて、熱交換媒体の車室内での洩れを未然に防止することが考えられる。
【0008】
給排パイプや膨脹弁装置が冷却用熱交換器に上記のようして取り付けられている場合には、冷却用熱交換器と、給排パイプないし膨脹弁装置とをケースに対して別々に組み付けることはできないので、それらを同時に組み付けざるを得ない。
【0009】
ところが、給排パイプや膨脹弁装置が取り付けられた冷却用熱交換器はそれらを含んだ全体として見ると大型なものであり、しかも、給排パイプや膨脹弁装置が取り付けられている分、形状が複雑であり、ケースへの組み付けをどのようにして行うのかが問題となる。つまり、特許文献1のケースのように、左側部材と右側部材との下部から組み付けようとした場合に、給排パイプや膨脹弁装置が邪魔になり、また、給排パイプや膨脹弁装置を避けるようにケースを成形するのは困難である。
【0010】
また、冷却用熱交換器においては、空気の冷却時に凝縮水が発生する。発生した凝縮水はケースから車室内に洩れないように適切に処理する必要がある。
【0011】
さらに、ダンパの組み付けに関しては、車両幅方向に延びる回動軸をケースに支持させなければならないので、このことを考慮した組み付け作業が行えるようにしなければならない。
【0012】
従って、ケースの構造は、凝縮水の適切な処理、及びダンパの組み付け作業性についても考慮しなければならず、空調装置の設計上、大きな課題となっている。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、給排パイプないし膨脹弁装置がユーザーによる離脱防止を図るようにして取り付けられた冷却用熱交換器を備えた車両用空調装置において、ケースの分割構造に工夫を凝らすことで、冷却用熱交換器で発生した凝縮水の処理を高い信頼性をもって適切に行えるようにするとともに、ダンパの組み付け作業性を良好にし、しかも、冷却用熱交換器を給排パイプないし膨脹弁装置と共にケースに容易に組み付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、ケースを、ダンパの収容部分と、冷却用熱交換器の収容部分とに分割し、さらに、ダンパの収容部分は車両幅方向に分割し、冷却用熱交換器の収容部分は上下に分割するようにした。
【0015】
第1の発明は、空気通路が形成されたケースと、上記ケースに収容され、上記空気通路を流れる空気の冷却を行う冷却用熱交換器と、上記ケースに収容され、上記空気通路の開度を変更するダンパとを備えた車両用空調装置において、
上記冷却用熱交換器には、該冷却用熱交換器に熱交換媒体の給排を行うための給排パイプと、膨脹弁を内蔵した膨脹弁装置との少なくとも一方が、ユーザーによる該熱交換器からの離脱防止を図るようにして取り付けられ、上記ダンパは、車両幅方向に延びる回動軸を有し、該回動軸は上記ケースに回動可能に支持され、上記ケースは、上記ダンパを収容する第1ケース構成部と、上記冷却用熱交換器を収容する第2ケース構成部とに分割され、上記第1ケース構成部は、車両幅方向に分割された左側部材と、右側部材とを備え、上記第2ケース構成部は、上下方向に分割された上側部材と、下側部材とを備え、上記下側部材は、上記冷却用熱交換器を下方から覆うように形成されるとともに、該冷却用熱交換器に発生した凝縮水を車室外へ排水するためのドレン部を有し、上記左側部材、上記右側部材、上記上側部材及び上記下側部材が結合されて上記ケースが構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、ダンパを第1ケース構成部に組み付ける際には、ダンパの回動軸を左側部材又は右側部材の一方に支持させ、その後、左側部材と右側部材とを結合することで、回動軸が第1ケース構成部に回動可能に支持された状態となる。よって、ダンパの組み付け作業性は良好である。
【0017】
また、冷却用熱交換器を収容する第2ケース構成部は、上側部材と下側部材とに分割されているので、冷却用熱交換器を上下両方向から第2ケース構成部に収容することが可能になる。また、この第2ケース構成部は、ダンパを収容する部分とは別部材なので、設計自由度が比較的高く、従って、給排パイプないし膨脹弁装置が取り付けられた冷却用熱交換器を容易に組み付けることができるように、上側部材及び下側部材の形状を設定することが可能になる。
【0018】
さらに、冷却用熱交換器は下側部材によって下方から覆われるので、冷却用熱交換器で発生して下方へ流れた凝縮水を下側部材で受けることが可能になる。この下側部材で受けた凝縮水はドレン部から車室外へ排水される。よって、特別なシール構造を設けることなく、凝縮水の車室内への洩れが防止され、凝縮水が適切に処理される。
【0019】
尚、給排パイプないし膨脹弁装置が冷却用熱交換器に、ユーザーによる該熱交換器からの離脱防止を図るようにしてに取り付けられるとは、ろう付けや溶接等によって気密性及び液密性を確保した状態で取り付けられていることの他、一般に広く出回っていない特殊工具でなければ給排パイプないし膨脹弁装置を外せない構造、給排パイプないし膨脹弁装置の冷却用熱交換器への取付部分がケースの内部に位置していてケースを分解しなければ給排パイプないし膨脹弁装置を外せない構造等であり、ワンタッチタイプの管継手や、ケースの外部において一般の六角ボルトやネジの締結力を利用した接続構造を含まない。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、第2ケース構成部は、ケースの車両前側部分を構成していることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、空調装置の修理等の際、第2ケース構成部を車両に残したまま、第1ケース構成部を車両から降ろして作業することが可能になる。従って、冷却用熱交換器の熱交換媒体を抜く作業が不要になる。
【0022】
第3の発明は、第2の発明において、第2ケース構成部には、給排パイプないし膨脹弁装置を保持する保持部が設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、一般に、車両においては、車両右側に運転席が設けられるものと、左側に運転席が設けられるものとがある。運転席の位置により、車両の構造上、空調装置側において熱交換媒体の給排パイプの位置を変更しなければならない場合がある。本発明では、給排パイプないし膨脹弁装置を保持する保持部が車両前側の第2ケース構成部に設けられているので、運転席の位置に応じて、第2ケース構成部の構造を変更することで対応可能であり、第1ケース構成部の構造を大きく変更せずに済む。
【0024】
また、車両のエンジン等の違い(バリエーション違い)によって車両の構造が異なる場合にも、第2ケース構成部の構造を変更することで対応可能であり、第1ケース構成部の構造を大きく変更せずに済む。
【0025】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、冷却用熱交換器には、周囲を囲むようにシール材が設けられ、上記冷却用熱交換器は、上側部材と下側部材とにより上下方向に挟まれるようにして第2ケース構成部に収容されていることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、シール材が設けられた熱交換器を上側部材と下側部材と挟むことによって第2ケース構成部に収容することができるので、例えば熱交換器を回動させながら収容しなければならない場合等と比較して、シール材に無理な力がかかりにくくなり、シール材の剥がれ、めくれ、捻れ、破れ等が未然に防止される。
【0027】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、第2ケース構成部の内部には、冷却用熱交換器に空気を送る送風通路が形成され、上記第2ケース構成部の内壁には、上記送風通路内の空気の流れを制御する制御部が一体成形されていることを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、制御部によって送風通路内の空気の流れを制御して風向及び風配量の調整が可能になる。この制御部を第2ケース構成部に一体成形することによって部品点数の削減が図られる。第2ケース構成部はダンパを収容する部分(第1ケース構成部)とは別であるため、成形自由度が高く、よって、制御部の形状設定の自由度が高まる。
【0029】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、第2ケース構成部の上側部材と下側部材との少なくとも一方には、車両へ固定される固定部が車両幅方向に離れた部位にそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
この構成によれば、下側部材に固定部が設けられている場合には、第2ケース構成部のうち、車両方向に離れた少なくとも2箇所が車両に固定されることになるので、第2ケース構成部が安定する。
【0031】
そして、固定部が車両に固定された状態では、冷却用熱交換器の重量や上下方向の加振力等が下側部材にかかることになる。このとき、下側部材には分割面が無いため、割れるように変形することはなく、凝縮水や空気の洩れが未然に防止される。
【0032】
また、上側部材に固定部が設けれられている場合も同様に上側部材が割れるように変形することはないので、空気の洩れが未然に防止される。
【発明の効果】
【0033】
第1の発明によれば、ケースを、ダンパを収容する第1ケース構成部と、冷却用熱交換器を収容する第2ケース構成部とに分割するとともに、第1ケース構成部を車幅方向に分割したので、ダンパの組み付け作業性を良好にできる。そして、第2ケース構成部を上下方向に分割し、下側部材によって冷却用熱交換器を覆い、この下側部材にドレン部を設けたので、冷却用熱交換器で発生した凝縮水の処理を高い信頼性をもって適切に行うことができるとともに、冷却用熱交換器を、給排パイプないし膨脹弁装置と共にケースに容易に組み付けることができる。
【0034】
第2の発明によれば、第2ケース構成部がケースの車両前側部分を構成しているので、空調装置の修理等の際に第2ケース構成部を車両に残したままにすることができ、作業工数を低減できる。
【0035】
第3の発明によれば、第2ケース構成部がケースの車両前側部分を構成しており、第2ケース構成部に、給排パイプないし膨脹弁装置を保持する保持部を設けたので、車両のバリエーションに応じて第2ケース構成部の構造を変更し、第1ケース構成部の構造は大きく変更せずに済む。これにより、車両のバリエーションの変更に低コストで対応できる。
【0036】
第4の発明によれば、冷却用熱交換器の周囲にシール材を設け、冷却用熱交換器を上側部材と下側部材とで挟むようにして第2ケース構成部に収容したので、シール材の剥がれ等を未然に防止して、冷却用熱交換器の組み付け後において所期のシール性を確保できる。
【0037】
第5の発明によれば、第2ケース構成部の内壁に、送風通路内の空気の流れを制御する制御部を一体成形したので、部品点数を増加させることなく、風向及び風配量を調整することができる。そして、第2ケース構成部がダンパを収容する部分とは別であるので、制御部の成形自由度を高めることができ、風向及び風配量をより最適化することができる。
【0038】
第6の発明によれば、第2ケース構成部の上側部材と下側部材との少なくとも一方に、車両への固定部を車両幅方向に離して設けたので、第2ケース構成部を車両に安定して固定可能にしながら、凝縮水や空気の漏れを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】空調装置の左側面図である。
【図2】送風ユニットの分解斜視図である。
【図3】空調ユニットの縦断面図である。
【図4】空調ユニットの前側ケース構成部の分解斜視図である。
【図5】空調ユニットの後側ケース構成部の分解斜視図である。
【図6】空調ユニットの右側面図である。
【図7】空調ユニットの正面図である。
【図8】空調ユニットの背面図である。
【図9】ケースを分解した状態の左側面図である。
【図10】後側ケース構成部を分解した状態の背面図である。
【図11】下側部材の正面図である。
【図12】下側部材の平面図である。
【図13】上側部材の正面図である。
【図14】上側部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用空調装置1を示すものである。この空調装置1は、自動車の車室内において車両前端部に設けられたインストルメントパネル(図示せず)内に収容された状態で、該車両に固定されている。また、この空調装置1が搭載される車両は、運転席が車両左側に設けられた、いわゆる左ハンドル車である。
【0042】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0043】
空調装置1は、送風ユニット2(図1に仮想線で示す)と空調ユニット3とを備えている。送風ユニット2は、インストルメントパネル内の右側(助手席の前方)に配設され、空調ユニット3は、インストルメントパネル内の左右方向中央部に配設されている。
【0044】
図2に示すように、送風ユニット2は、送風ファン11と、送風ファン11を収容する送風ケース12と、送風ケース12に収容される内外気切替ダンパ13と、送風ケース12に収容されるフィルタ14とを備えている。
【0045】
送風ケース12は、左右に2分割された左側部材12aと、右側部材12bとを備えている。左側部材12aは、送風ケース12の略左半分を構成するものであり、右側部材12bは、送風ケース12の略右半分を構成するものである。左側部材12aと、右側部材12bとは、ファスナやネジ等で結合されている。
【0046】
送風ケース12の上部には、その前側部分に外気導入ダクト16が形成され、後側部分に内気導入口17が形成されている。外気導入ダクト16は、車室外と連通している。内気導入口17は車室内に開口している。
【0047】
内外気切替ダンパ13は、左右方向に延びる回動軸を有するロータリーダンパである。この内外気切替ダンパ13の回動により、外気導入ダクト16の上流端と、内気導入口17との一方が閉じられ、他方が開かれるようになっている。
【0048】
送風ケース12の内外気切替ダンパ13の下方には、上記フィルタ14が収容されている。また、上記送風ファン11は、シロッコファンであり、送風ケース12の下部に収容されている。この送風ファン12は、回転軸が上下方向に延びるように配置されており、回転軸には、送風ファン11の下方に配設されたモーター18の出力軸が連結されている。
【0049】
送風ケース12の左側部材12aの左側壁には、送風ファン11から送風された空気が吐出する送風ダクト20が形成されている。右側部材12bには、車両に固定される上側取付脚21及び下側取付脚22が設けられている。図2中の符号23は、送風ケース12に形成されたフィルタ挿入孔12cを閉塞するための蓋である。
【0050】
一方、空調ユニット2は、運転席側に供給する調和空気の温度と、助手席側に供給する調和空気の温度を別々に調整可能に構成された、いわゆる左右独立温度コントロールタイプのユニットである。
【0051】
図3〜図5に示すように、空調ユニット2は、エバポレータ30と、ヒータコア31と、運転席側及び助手席側温度調節ダンパ32Dr,32Psと、デフロスタダンパ33と、運転席側及び助手席側ベントダンパ34Dr,34Psと、運転席側及び助手席側ヒートダンパ35Dr,35Psと、これらを収容するケース40とを備えている。
【0052】
図5に示すように、ケース40の内部には、その内部空間を左右(運転席側と助手席側)に仕切るための仕切板Pが配設されている。また、この実施形態では、ケース40には、電気式ヒータHも収容されるようになっているが、この電気式ヒータHは省略することも可能である。
【0053】
図6に示すように、ケース40の送風ユニット2側(右側)の側壁部には、空気導入口50が形成されている。この空気導入口50の周縁部には、送風ユニット2の送風ダクト20の下流端に接続される接続ダクト49が形成されている。
【0054】
また、図3に示すように、ケース40の上壁部にはデフロスタ吹出口51が形成され、後壁部の上側にはベント吹出口52が形成され、左右両側壁部にはフロントヒート吹出口53がそれぞれ形成され、後壁部の下側にはリヤヒート吹出口54が形成されている。また、ケース40の後壁部には、リヤベント吹出口55が形成されている。
【0055】
ケース40の内部には、空気導入口50から、デフロスタ吹出口51、ベント吹出口52、フロントヒート吹出口53、リヤヒート吹出口54及びリヤベント吹出口55まで延びる空気通路Rが形成されている。
【0056】
空気通路Rの上流側は、空気導入口50に連通して空気をエバポレータ30に送風するための送風通路R1で構成されている。空気通路Rの送風通路R1よりも下流側は、冷風生成通路R2と、温風生成通路R3と、エアミックス通路R4と、デフロスタ通路R5と、フロントベント通路R6と、ヒート通路R7と、リヤベント通路R8とで構成されている。
【0057】
冷風生成通路R2は後方へ延びている。冷風生成通路R2の下流端である後端部は、上下に2つに分岐しており、それらのうち上側は、エアミックス通路R4に直接連通し、下側は、温風生成通路R3に連通している。冷風生成通路R2には、上記エバポレータ30が配設されている。
【0058】
図4にも示すように、ケース40の送風通路R1の内壁には、送風通路R1内の空気の流れを制御する段部(制御部)40aが形成されている。段部40aは、エバポレータ30を通過する前において空気の風向及び風配量を調節するためのものであり、送風通路R1内へ向けて突出し、ケース40の内壁に一体成形されている。段部40aは、左右方向に複数形成されており、それぞれの内壁からの突出高さが異なっている。段部40aの内壁からの突出高さを変えることにより、風向及び風配量が調整されるようになっている。
【0059】
温風生成通路R3は、ケース40内において、上下方向中間部から下方へ向かって後方へ延びた後、上方へ湾曲して延びるように形成されている。温風生成通路R3には、上記ヒータコア31と、電気式ヒータHとが配設されている。温風生成通路R3の下流端は、エアミックス通路R4に連通している。
【0060】
エアミックス通路R4は、温風生成通路R3の上部に形成されている。デフロスタ通路R5は、エアミックス通路R4の上部に連通して上方へ延び、デフロスタ吹出口51に接続されている。デフロスタ吹出口51には、図示しないが、デフロスタダクトが接続されており、調和空気がインストルメントパネルのデフロスタ吹出部まで導かれるようになっている。
【0061】
フロントベント通路R6は、エアミックス通路R4の後部に連通して後方へ延び、ベント吹出口52に接続されている。ベント吹出口52には、図示しないが、ベントダクトが接続されており、調和空気がインストルメントパネルのベント吹出部まで導かれるようになっている。
【0062】
ヒート通路R7は、エアミック通路R4の下部に連通して下方へ延び、フロントヒート吹出口53及びリヤヒートダクト(図示せず)に接続されている。フロントヒート吹出口53には、フロントヒートダクト(図示せず)が接続されており、調和空気が運転席乗員の足下、及び助手席乗員の足下まで導かれるようになっている。リヤヒートダクトは、調和空気を後席乗員の足下まで導くためのものである。
【0063】
リヤベント通路R8は、エアミック通路R4の下部に連通して下方へ延び、リヤベント吹出口55に接続されている。リヤベント吹出口55には、リヤベントダクト(図示せず)が接続されている。リヤベントダクトは、調和空気を後席まで導くためのものである。
【0064】
図3に示すように、ケース40内部には隔壁60が形成されている。隔壁60には、冷風生成通路R2の上側の下流端をエアミックス通路R4に連通させる上側開口部61と、下側の下流端を温風生成通路R3に連通させる下側開口部62と、温風生成通路R3の下流端をエアミックス通路R4に連通させる温風吹出口63とが形成されている。
【0065】
運転席側温度調整ダンパ32Drは、ケース40の上下方向中央部近傍に配設されている。運転席側温度調整ダンパ32Drは、左右方向に延びる回動軸32aと、上側開口部61及び下側開口部62の一方を閉じて他方を開く閉止板部32bとを備えている。閉止板部32bは、温風吹出口63も開閉するように形成されている。
【0066】
図1に示すように、回動軸32aの左端部はケース40の左側壁に形成された軸受孔40bに挿入されて回動可能に支持され、また、右端部は、図5に示す仕切板Pに形成された軸受孔(図示せず)に挿入されて回動可能に支持されている。
【0067】
図5に示すように、助手席側温度調整ダンパ32Psは、運転席側温度調整ダンパ32Drと同様に構成されており、回動軸32dと閉止板部32eとを備えている。助手席側温度調整ダンパ32Psの回動軸32dの左端部は仕切板Pに支持され、右端部は、ケース40の右側壁に形成された軸受孔(図示せず)に挿入されて回動可能に支持されている。
【0068】
運転席側及び助手席側温度調節ダンパ32Dr,32Psは、図示しないが、空調制御ユニットで制御されるアクチュエータにより個別に回動するようになっている。運転席側及び助手席側温度調節ダンパ32Dr,32Psが、閉止板部32b,32eが図3に示す下側開口部62を閉じる姿勢になると、上側開口部61が開かれるとともに、温風吹出口63が閉じられる。これにより、ケース40に導入された空気の全量が冷風生成通路R2を流れてエアミックス通路R4に流入することになる(フルコールド状態)。
【0069】
一方、運転席側及び助手席側温度調節ダンパ32Dr,32Psが、閉止板部32b,32eが上側開口部61を閉じる姿勢(図示せず)になると、下側開口部62が開かれるとともに、温風吹出口63が開かれる。これにより、ケース40に導入された空気の全量が温風生成通路R3を流れてエアミックス通路R4に流入することになる(フルホット状態)。
【0070】
運転席側及び助手席側温度調節ダンパ32Dr,32Psはフルコールド状態とフルホット状態の間の位置で停止することも可能となっており、空気通路Rの開度を変更することができる。この場合、エアミックス通路R4には、冷風と温風とが流入して両者が混合して調和空気が生成される。温度調整ダンパ32の停止位置により、エアミックス通路R4に流入する冷風量と温風量とが変更され、調和空気の温度調節が行われる。
【0071】
図3に示すように、デフロスタダンパ33は、デフロスタ通路R5に配設されている。デフロスタダンパ33は、左右方向に延びる回動軸33aと、デフロスタ通路R5を閉止するための閉止板部33bとを備えている。閉止板部33bは、回動軸33aの外周面から延出しており、デフロスタダンパ33は、いわゆるバタフライダンパである。回動軸33aは、温度調節ダンパ32と同様にケース40の左右両側壁部にそれぞれ形成された軸受孔40c(図1に示す)に支持されている。
【0072】
また、運転席側及び助手席側ベントダンパ34Dr,34Psは、フロントベント通路R6に配設されている。
【0073】
図3に示すように、運転席側ベントダンパ34Drは、左右方向に延びる回動軸34aと、ベント通路R6を閉止するため閉止板部34bとを備えている。回動軸34aは、温度調節ダンパ32と同様に軸受孔40d(図1に示す)に支持されている。
【0074】
図5に示すように、助手席側ベントダンパ34Psも運転席側と同様に構成されており、回動軸34dと閉止板部34eとを備えている。助手席側ベントダンパ34Psの回動軸34dは、運転席側ベントダンパ34Drの回動軸34aと連結されており、運転席側ベントダンパ34Drと一体になって回動するようになっている。助手席側ベントダンパ34Psの右端部は、ケース40に形成された軸受孔(図示せず)に挿入されて支持されている。
【0075】
また、運転席側及び助手席側ヒートダンパ35Dr,35Psは、ヒート通路R7に配設されている。図3に示すように、運転席側ヒートダンパ35Drは、左右方向に延びる回動軸35aと、ヒート通路R7を閉止するための閉止板部35bとを備えている。閉止板部35bは、回動軸35aの外周面から延出している。図5に示すように、助手席側ヒートダンパ35Psは、運転席側ヒートダンパ35Drと同様に構成され、回動軸35dと閉止板部35eとを備えている。
【0076】
運転席側及び助手席側ヒートダンパ35Dr,35Psは、ベントダンパ34Dr,34Psと同様に一体に回動するようになっている。また、運転席側ヒートダンパ35Drの左端部は、図1に示すケース40の左側壁部の軸受孔40eに挿入されて支持され、また、助手席側ヒートダンパ35Psの右端部は、ケース40の右側壁部の軸受孔(図示せず)に挿入されて支持されている。
【0077】
上記デフロスタダンパ33、ベントダンパ34及びヒートダンパ35は、図示しないアクチュエータにより回動するようになっている。デフロスタダンパ33、ベントダンパ34及びヒートダンパ35の回動により、デフロスタ通路R5、フロントベント通路R6及びヒート通路R7の開度が変更される。これにより、調和空気の吹出モードが、例えば、デフロスタモード、ベントモード、ヒートモード、バイレベルモード等に切り替えられる。尚、このアクチュエータの制御は、空調制御ユニットで行われる。
【0078】
上記エバポレータ30は、冷凍回路の蒸発器を構成するものである。図4に示すように、エバポレータ30は、チューブ及びフィンを交互に並べて構成されたコア30aと、コア30aのチューブ長手方向両端部にそれぞれ設けられた第1及び第2ヘッダタンク30b,30cとを備えている。図3に示すように、エバポレータ30は、冷風生成通路R2において該通路R2を横切るように配設されている。すなわち、エバポレータ30は、チューブの延びる方向が上下方向となり、かつ、チューブ及びフィンの並ぶ方向が左右方向となるように向いている。また、第1ヘッダタンク30bは上部に位置し、第2ヘッダタンク30cは下部に位置している。
【0079】
エバポレータ30の外周部には、発泡ウレタン等からなるシール材30dが設けられている。
【0080】
第1ヘッダタンク30bには、冷媒(熱交換媒体)をエバポレータ30に供給するための供給パイプCP1と、エバポレータ30を循環した冷媒を排出するための排出パイプCP2との基端部が接続されている。供給パイプCP1及び排出パイプCP2の基端部は、ヘッダタンク30bに形成された接続孔(図示せず)に挿入された状態で、該接続孔の周縁部にろう付けされている。
【0081】
つまり、供給パイプCP1及び排出パイプCP2は、エバポレータ30に対し、ユーザーによるエバポレータ30からの離脱防止を図るようにして取り付けられている。ユーザーによるエバポレータ30からの離脱防止を図ることのできる取付構造とは、一般に広く出回っている締結工具やユーザーの手による操作等では供給パイプCP1及び排出パイプCP2が簡単に外れないように、ろう付けや溶接等によって気密性及び液密性を確保した状態で取り付けられていることの他、特殊工具でなければパイプCP1,CP2を外せない構造、パイプCP1,CP2のエバポレータ30への取付部分がケース40の内部に位置していてケース40を分解しなければパイプCP1,CP2を外せない構造等であり、ワンタッチタイプの管継手や、ケース40の外部において一般の六角ボルトやネジの締結力を利用した接続構造を含まない。また、ユーザーとは、車両を実際に使用する者であり、整備工場の作業者は含まない。
【0082】
供給パイプCP1及び排出パイプCP2は、前方へ延びている。供給パイプCP1及び排出パイプCP2の前端部には、膨脹弁を内蔵した膨脹弁装置Bが取り付けられている。図1に示すように、エバポレータ30がケース40に収容された状態で、膨脹弁装置Bはケース40外へ突出している。膨脹弁装置Bは、ケース40に設けられたブラケット(保持部)48により保持される。ブラケット48は略上下方向に延びる厚肉板状に形成されている。尚、図1、図4等における符号S1は、シール材であり、また、符号S2もシール材である。
【0083】
膨脹弁装置Bは、車両のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネル(図示せず)に形成された貫通孔内に位置するようになっている。膨脹弁装置Bには、エンジンルーム内の冷凍回路構成する機器から延びる配管が接続されるようになっている。
【0084】
ヒータコア31は、車両のエンジンを冷却するエンジン冷却水が循環するように構成されている。図5に示すように、ヒータコア31は、チューブ及びフィンを交互に並べて構成されたコア31aと、コア31aのチューブ長手方向両端部にそれぞれ設けられた第1及び第2ヘッダタンク31b,31cとを備えている。図3に示すように、ヒータコア31は、温風生成通路R3において該通路R3を横切るように配設されている。すなわち、ヒータコア31は、チューブの延びる方向が斜め上下方向となり、かつ、チューブ及びフィンの並ぶ方向が左右方向となるように向いている。また、第1ヘッダタンク31bは上側に位置し、第2ヘッダタンク31cは下側に位置している。
【0085】
第2ヘッダタンク31cには、エンジン冷却水をヒータコア31に供給するための供給パイプHP1の基端部が接続されている。第1ヘッダタンク31bには、ヒータコア31を循環したエンジン冷却水を排出するための排出パイプHP2の基端部が接続されている。供給パイプHP1及び排出パイプHP2の基端部は、ヘッダタンク31bに形成された接続孔(図示せず)に挿入された状態で、該接続孔の周縁部にろう付けされている。つまり、供給パイプHP1及び排出パイプHP2は、ヒータコア31に対し分離不能な取付構造で取り付けられている。
【0086】
供給パイプHP1及び排出パイプHP2も前方へ延びている。供給パイプHP1及び排出パイプHP2はダッシュパネルの貫通孔内に位置するようになっている。供給パイプHP1及び排出パイプHP2には、エンジンルーム内に配設されている冷却水配管が接続されるようになっている。供給パイプHP1及び排出パイプHP2もブラケット48に保持されるようになっている。
【0087】
図4及び図5に示すように、ケース40は、4つの部材で構成されている。すなわち、図1に示すように、ケース40は、ケース40の前側部分を構成する前側ケース構成部(第2ケース構成部)41と、後側部分を構成する後側ケース構成部(第1ケース構成部)42とを備えている。図7〜図9に示すように、前側ケース構成部41は上下方向に分割された上側部材43と、下側部材44とで構成されている。図10に示すように、後側ケース構成部42は、左右方向に分割された左側部材45と、右側部材46とで構成されている。
【0088】
前側ケース構成部41と後側ケース構成部42との分割面は、略上下方向に延びている。図3に示すように、前側ケース構成部41には、エバポレータ30が収容されている。後側ケース構成部42には、ヒータコア31、電気式ヒータH、ダンパ32〜35及び仕切板Pが収容されている。
【0089】
図9に示すように、前側ケース構成部41の上側部材43と下側部材44との分割面は、前側ケース構成部41の上下方向中央よりも上側寄りに位置し、略左右方向に延びている。また、前側ケース構成部41の後側は開放され、この開放部分に後側ケース構成部42が結合されるようになっている。
【0090】
図4に示すように、下側部材44は、上方に開放する凹形状とされており、樹脂材を用いた一体成形品である。下側部材44の底壁部には、エバポレータ30の第2ヘッダタンク30cが嵌るように下方へ窪むように形成されたエバポレータ嵌合部65が形成されており、エバポレータ30の下部は、全体が下側部材44で覆われている。
【0091】
さらに、図11に示すように、下側部材44の底壁部におけるエバポレータ30の直下方は、下方へ膨出するように形成され、右側へ行くほど下に位置するように傾斜している。底壁部の右側には、下方へ突出するように形成されたドレン部66が形成されている。ドレン部65は、エバポレータ30に発生した凝縮水を排水するためのものであり、内部にはドレン通路が形成されている。
【0092】
エバポレータ30で発生した凝縮水は、下側部材44の底壁部に滴下した後、右側へ流れてドレン部66に集合するようになっている。このとき、下側部材44は一体成形品であるため、凝縮水が下側部材44から洩れる虞れはない。
【0093】
図7及び図8に示すように、ドレン部66のドレン通路は、ドレンパイプ67の上流端部に接続されている。ドレンパイプ67の下流端部は、車両のフロアパネルに形成された外部との連通孔(図示せず)に接続されている。従って、凝縮水は、ドレン部66のドレン通路からドレンパイプ67を経て車室外に排出される。
【0094】
図12に示すように、下側部材44の前壁部の左側には、風向及び風配量を調整するための段部40aの下側部分が形成されている。この段部40aを設けたことにより、右側から左側へ流れてきた空気の流れが左側に偏ったままでエバポレータ30を通過するのが抑制される。
【0095】
下側部材44の右側壁部には、送風ユニット2に接続される接続ダクト49の下側部分を構成する下側ダクト構成部49aが一体成形されている。図4にも示すように、下側ダクト構成部49aは上方に開放する略コ字状断面を有している。下側ダクト構成部49aの前壁部には、膨脹弁装置Bを保持するためのブラケット48の上下方向中間部を構成する中間ブラケット構成部68が形成されている。
【0096】
中間ブラケット構成部68の下部には、ブラケット48の下側部分を構成する下側ブラケット部材69が取り付けられるようになっている。この下側ブラケット部材69と中間ブラケット構成部68とにより、ヒータコア31の供給パイプHP1及び排出パイプHP2が径方向に挟まれた状態でブラケット48に保持されるようになっている。
【0097】
下側ダクト構成部49aの後壁部には、送風ユニット2のモーター18の回転数を制御するための制御装置Cが取り付けられる取付孔70が形成されている。
【0098】
図11に示すように、下側部材44の底壁の右側には、車体に固定される取付脚71が形成されている。この取付脚71は、下方へ突出している。 また、下側部材44の左側壁には、車体に固定される取付脚72が形成されている。この取付脚72は、左側へ突出している。
【0099】
また、図4に示すように、上側部材43は、下方に開放し、エバポレータ30の上側部分を覆う形状とされており、樹脂材を用いた一体成形品である。上側部材43の下端部と下側部材44の上端部とは嵌合するようになっており、内部の空気の漏れが抑制される構造となっている。上側部材43の前壁部には、上記段部40aの上側部分が形成されている。
【0100】
図13及び図14にも示すように、上側部材43の右側壁部には、パイプCP1,CP2を収容するパイプ収容部75が右側へ膨出するように形成されている。図4に示すように、パイプ収容部75は、パイプCP1,CP2を上方から覆う形状とされている。パイプ収容部75の前部には、ブラケット48の上側部分を構成する上側ブラケット構成部76が形成されている。上側ブラケット構成部76と、中間ブラケット構成部68とにより、膨脹弁装置Bが上下方向に挟まれた状態でブラケット48に保持されるようになっている。
【0101】
上側ブラケット構成部76の上部には、車体に固定される取付脚77が形成されている。この取付脚77は、上方へ突出している。
【0102】
上側部材43の左側には、接続ダクト49の上側部分を構成する上側ダクト構成部49bが一体成形されている。
【0103】
また、図10に示すように、後側ケース構成部42の左側部材45と右側部材46との分割面は、後側ケース構成部42の左右方向略中央部に位置し、略上下方向に延びている。左側部材45は右側に開放する形状とされており、また、右側部材46は左側に開放する形状とされている。これら左側部材45及び右側部材46は、樹脂材を用いた一体成形品である。
【0104】
左側部材45の右端部と右側部材46の左端部とは、嵌合するようになっており、内部の空気の漏れが抑制される構造となっている。
【0105】
また、左側部材45及び右側部材46の前側は開放されており、この開放部分には、前側ケース構成部41の後側の開放部分が結合されるようになっている。
【0106】
図5に示すように、右側部材46の右側壁部には、ヒータコア31をケース40内へ挿入するためのヒータコア挿入孔80が形成されている。このヒータコア挿入孔80は、挿入されたヒータコア31により閉塞される。図6に示すように、ヒータコア31がヒータコア挿入孔80に挿入された状態で、パイプHP1,HP2は、右側部材46の右側壁部に沿って接続ダクト49の下方を通り前方へ延びた後、上方へ折れ曲がって該接続ダクト49の前壁部に沿ってブラケット48まで延びている。パイプHP1,HP2のブラケット48に保持される部分は、略前方へ延びている。
【0107】
図5に示すように、右側部材46の右側壁部には、ヒータコア挿入孔80の後側に、電気式ヒータHを収容するための電気式ヒータ挿入孔81が形成されている。電気式ヒータ挿入孔81は、挿入された電気式ヒータHにより閉塞される。
【0108】
次に、上記のように構成された空調装置1の製造要領について説明する。
【0109】
図5に示すように、後側ケース構成部42の左側部材45又は右側部材46に、開放部分からダンパ32〜35を組み付けるとともに、仕切板Pを組み付ける。その後、左側部材45と右側部材46との開放側を合わせて結合する。このとき、左側部材45と右側部材46との一方にダンパ32〜35を組み付けたまま、他方をダンパ32〜35の回動軸方向に移動させればよいので、ダンパ32〜35の組み付け作業性は良好である。
【0110】
一方、図4に示すように、前側ケース構成部41の下側部材44に、エバポレータ30を収容する。このとき、エバポレータ30を下側部材44の上方から下方へ移動させ、エバポレータ30の第2ヘッダタンク30cを下側部材44のエバポレータ嵌合部65に嵌める。
【0111】
前側ケース構成部41は、ダンパ32〜35を収容する部分とは別部材なので、設計自由度が比較的高い。よって、給排パイプCP1,CP2が取り付けられたエバポレータ30を容易に組み付けることができるように、上側部材43及び下側部材44の形状を設定することが可能となっており、エバポレータ30の組み付け作業性は良好である。
【0112】
その後、下側部材44に上側部材43を組み付ける。このとき、上側部材43をエバポレータ31の上方から下方へ移動させていく。シール材30dが設けられたエバポレータ30を上側部材43と下側部材44と挟むことによって収容することができるので、例えばエバポレータ30を回動させながら収容しなければならない場合等と比較して、シール材30dに無理な力がかかりにくくなり、シール材30dの剥がれ、めくれ、捻れ、破れ等が未然に防止される。
【0113】
エバポレータ31の上部は上側部材43により覆われ、パイプCP1,CP2は、パイプ収容部75により覆われて前側ケース構成部41に収容される。
【0114】
また、膨脹弁装置Bは、上側ブラケット構成部76と、中間ブラケット構成部68とにより挟まれる。そして、上側部材43と下側部材44とを結合する。
【0115】
しかる後、前側ケース構成部41を後側ケース構成部42に結合する。
【0116】
上記空調装置1を車体に取り付ける際には、各取付脚71,72,77を車体に締結固定する。
【0117】
上記空調装置1の運転時には、エバポレータ30に凝縮水が発生し、下方へ滴下する。このエバポレータ30は、一体成形品である下側部材44によって下方から覆われているので、エバポレータ30で発生して下方へ流れた凝縮水を下側部材44で受けることができる。この下側部材44で受けた凝縮水はドレン部66から車室外へ排水される。よって、特別なシール構造を設けることなく、凝縮水の車室内への洩れが防止され、凝縮水が適切に処理される。
【0118】
また、空調装置1の空調ユニット3の故障時やメンテナンス時には、後側ケース構成部42が前側ケース構成部41に対し着脱可能となっているので、前側ケース構成部41を車両に残し、後側ケース構成部42を車両から降ろすことができる。従って、エバポレータ30の冷媒を抜く作業が不要になる。
【0119】
以上説明したように、この実施形態にかかる空調装置1によれば、ケース40を、ダンパ32〜35を収容する後側ケース構成部42と、エバポレータ30を収容する前側ケース構成部41とに分割するとともに、後側ケース構成部42を左右方向に分割したので、ダンパ32〜35の組み付け作業性を良好にできる。そして、前側ケース構成部41を上下方向に分割し、下側部材44によってエバポレータ30を覆い、この下側部材44にドレン部66を設けたので、エバポレータ30で発生した凝縮水の処理を高い信頼性をもって適切に行うことができるとともに、エバポレータ30を、給排パイプCP1,CP2と共にケース40に容易に組み付けることができる。
【0120】
また、ケース40の前側部分を構成する前側ケース構成部41に、給排パイプCP1,CP2を保持するブラケット48を設けたので、運転席の位置に応じて前側ケース構成部41の構造を変更し、後側ケース構成部42の構造は大きく変更せずに済む。また、車両のエンジン等の違いによって車両の構造が異なる場合にも、後側ケース構成部42の構造は大きく変更せずに済む。これにより、車両のバリエーションの変更に対して低コストで対応できる。
【0121】
また、エバポレータ30の周囲にシール材30dを設け、エバポレータ30を上側部材43と下側部材44とで挟むようにして収容したので、シール材30dの剥がれ等を未然に防止して、エバポレータ30の組み付け後において所期のシール性を確保できる。
【0122】
また、前側ケース構成部41の内壁に、空気の流れを制御する段部40aを一体成形したので、部品点数を増加させることなく、風向及び風配量を調整することができる。そして、前側ケース構成部41がダンパ32〜35を収容する部分とは別であるので、段部40aの成形自由度を高めることができ、風向及び風配量をより最適化することができる。
【0123】
また、下側部材44に2つの取付脚71,72を左右方向に間隔をあけて設けたので、前側ケース構成部41のうち、左右方向に離れた2箇所を車両に固定でき、前側ケース構成部41が安定する。
【0124】
そして、取付脚71,72が車両に固定された状態では、エバポレータ30の重量や上下方向の加振力等が下側部材44にかかることになる。このとき、下側部材44には分割面が無いため、割れるように変形することはなく、凝縮水や空気の洩れが未然に防止される。
【0125】
尚、図示しないが、上側部材43に同様に左右方向に間隔をあけて取付脚を設けてもよく、この場合も同様に上側部材43が割れるように変形することはないので、空気の洩れが未然に防止される。
【0126】
また、エバポレータ30に膨脹弁装置Bを、ユーザーによるエバポレータ30からの離脱防止を図るようにして取り付けるようにしてもよい。
【0127】
また、本発明は、運転席が右側に設けられた右ハンドル車にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、例えば自動車の車室内に搭載するのに適している。
【符号の説明】
【0129】
1 車両用空調装置
30 エバポレータ(冷却用熱交換器)
30d シール材
32Dr,32Ps 温度調節ダンパ
33 デフロスタダンパ
34Dr,34Ps ベントダンパ
35Dr,35Ps ヒートダンパ
40 ケース
40a 段部(制御部)
41 前側ケース構成部(第2ケース構成部)
42 後側ケース構成部(第1ケース構成部)
43 上側部材
44 下側部材
45 左側部材
46 右側部材
48 ブラケット(保持部)
66 ドレン部
71,72 取付脚(固定部)
B 膨脹弁装置
CP1,CP2 供給パイプ、排出パイプ
R 空気通路
R1 送風通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路が形成されたケースと、
上記ケースに収容され、上記空気通路を流れる空気の冷却を行う冷却用熱交換器と、
上記ケースに収容され、上記空気通路の開度を変更するダンパとを備えた車両用空調装置において、
上記冷却用熱交換器には、該冷却用熱交換器に熱交換媒体の給排を行うための給排パイプと、膨脹弁を内蔵した膨脹弁装置との少なくとも一方が、ユーザーによる該熱交換器からの離脱防止を図るようにして取り付けられ、
上記ダンパは、車両幅方向に延びる回動軸を有し、該回動軸は上記ケースに回動可能に支持され、
上記ケースは、上記ダンパを収容する第1ケース構成部と、
上記冷却用熱交換器を収容する第2ケース構成部とに分割され、
上記第1ケース構成部は、車両幅方向に分割された左側部材と、右側部材とを備え、
上記第2ケース構成部は、上下方向に分割された上側部材と、下側部材とを備え、
上記下側部材は、上記冷却用熱交換器を下方から覆うように形成されるとともに、該冷却用熱交換器に発生した凝縮水を車室外へ排水するためのドレン部を有し、
上記左側部材、上記右側部材、上記上側部材及び上記下側部材が結合されて上記ケースが構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
第2ケース構成部は、ケースの車両前側部分を構成していることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
第2ケース構成部には、給排パイプないし膨脹弁装置を保持する保持部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
冷却用熱交換器には、周囲を囲むようにシール材が設けられ、
上記冷却用熱交換器は、上側部材と下側部材とにより上下方向に挟まれるようにして第2ケース構成部に収容されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
第2ケース構成部の内部には、冷却用熱交換器に空気を送る送風通路が形成され、
上記第2ケース構成部の内壁には、上記送風通路内の空気の流れを制御する制御部が一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
第2ケース構成部の上側部材と下側部材との少なくとも一方には、車両へ固定される固定部が車両幅方向に離れた部位にそれぞれ設けられていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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