説明

車両用空調装置

【課題】バッテリから供給される電力にて車室内を空調可能な車両用空調装置において、車室内の空調によるバッテリの消費電力を抑制する。
【解決手段】走行用電動モータと、バッテリ81と、エンジンEGとを有するハイブリッド車両に適用される車両用空調装置であって、バッテリ81からの電力供給によって冷媒を圧縮して吐出する圧縮機31および冷媒を蒸発させて車室内に送風される送風空気を冷却する蒸発器13を有する冷凍サイクル30と、蒸発器13における冷媒蒸発温度TEが目標冷媒蒸発温度TEOに近づくように、圧縮機31の作動を制御する圧縮機制御手段50aと、蒸発器13における目標冷媒蒸発温度TEOを決定する目標冷媒蒸発温度決定手段S9とを備え、目標冷媒蒸発温度決定手段S9は、エンジンEGが停止している際に、エンジンEGが停止してからの時間の経過に伴って目標冷媒蒸発温度TEOを上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や車両燃費の向上等を目的として、信号待ち等の停車時にエンジン(内燃機関)を自動的に停止する車両が実用化されている。ところが、エンジンにより冷凍サイクルの圧縮機を駆動している車両の場合、エンジンの停止に伴い圧縮機が停止するので、車室内への吹出空気温度が上昇して乗員の空調フィーリングが悪化してしまう虞がある。
【0003】
そこで、エンジンの駆動時に冷熱を蓄冷する蓄冷手段を備え、エンジンが停止したときには、蓄冷手段にて車室内への吹出空気を冷却することで乗員の空調フィーリングの悪化を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンおよび走行用電動モータのうち少なくとも一方の駆動力により走行するとともに、走行用電動モータに供給する電力を蓄積するバッテリを備える車両に適用される車両用空調装置では、バッテリ等の電源から供給される電力にて車室内を空調可能なものがある。この種の車両用空調装置を備える車両では、エンジンを停止させた状態においても、車室内の空調を継続することが可能である。
【0006】
しかし、車室内の空調を継続することでバッテリの蓄電残量が所定値まで低下すると、バッテリに蓄積された電力を利用した走行用電動モータの駆動ができなくなる。この場合、エンジンを駆動させて走行用の駆動力等を得る必要が生じ、車両全体としての燃費(車両燃費)の向上を充分に図ることができない虞がある。それ故、バッテリ等から供給される電力にて車室内を空調可能な車両用空調装置では、車室内の空調によるバッテリの電力消費量を低減することが重要な課題となっている。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、バッテリから供給される電力にて車室内を空調可能な車両用空調装置において、車室内の空調によるバッテリの消費電力を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する走行用電動モータと、走行用電動モータへ供給される電力を蓄えるバッテリ(81)と、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力および車両走行用の駆動力のうち、少なくとも一方を出力する内燃機関(EG)とを有する車両に適用される車両用空調装置であって、バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)および冷媒を蒸発させて車室内に送風される送風空気を冷却する蒸発器(13)を有する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(30)と、圧縮機(31)の作動を制御する圧縮機制御手段(50a)と、蒸発器(13)における目標冷媒蒸発温度(TEO)を決定する目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)と、を備え、圧縮機制御手段(50a)は、蒸発器(13)における冷媒蒸発温度(TE)が目標冷媒蒸発温度(TEO)に近づくように、圧縮機(31)の作動を制御し、目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させることを特徴とする。
【0009】
これによれば、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させるので、冷凍サイクル(30)の高低圧差を縮小して、圧縮機(31)の消費動力を低減させることができる。従って、車室内の空調によるバッテリ(81)の消費電力を抑制することができる。
【0010】
この際、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させるので、車室内への送風空気の温度の急変を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0011】
さらに、圧縮機(31)の消費動力を低減させて、バッテリ(81)に蓄えられた電力のうち空調用に消費される電力を低減することで、走行用電動モータへ供給される電力を増加させることができる。
【0012】
その結果、走行用電動モータによる車両の走行距離を延ばすことができる。ひいては、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力を出力する内燃機関(EG)を有する車両では、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するために内燃機関(EG)を駆動させる頻度を低減することができるので、単位燃料あたりの車両の走行距離を延ばすこと、すなわち燃費の向上を図ることができる。また、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(EG)を有する車両では、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)による車両の走行距離の合計距離を延ばすことができ、燃費の向上を図ることができる。
【0013】
ここで、内燃機関(EG)が停止している際の目標冷媒蒸発温度(TEO)の上昇によって、蒸発器(13)にて冷却される車室内へ送風する送風空気の温度が上昇して車室内温度が過度に高くなると、乗員の空調フィーリングが悪化する虞がある。
【0014】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、車室内温度(Tr)に応じて内燃機関(EG)が停止している際の目標冷媒蒸発温度(TEO)の上限温度を設定し、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、上限温度となるまで目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させることを特徴とする。
【0015】
これによれば、内燃機関(EG)を停止している際の目標冷媒蒸発温度(TEO)の上限温度を車室内温度(Tr)に応じて設定しているので、内燃機関(EG)が停止している際の車室内温度(Tr)の過度の上昇を抑制することができる。従って、内燃機関(EG)が停止している際の乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、乗員の操作により車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する指令を出力する省動力化要求手段(60d)を備え、目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、省動力化要求手段(60d)によって省動力化を要求する指令が出力された場合は、省動力化を要求する指令が出力されていない場合に比べて、内燃機関(EG)が停止している際の目標冷媒蒸発温度(TEO)の上昇度合いを大きくすることを特徴とする。
【0017】
これによれば、省動力化を要求する指令が出力された場合には、冷凍サイクル(30)の高低圧差を縮小して、圧縮機(31)の省動力化を図ることができるので、バッテリ(81)の消費電力をより効果的に抑制することができる。加えて、乗員による省動力化要求手段(60d)の操作によって、圧縮機(31)の省動力化を選択できるので、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を望む乗員の意思を適切に反映させることができる。
【0018】
また、請求項4では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって車室内へ空気を送風する送風機(12)と、送風機(12)の作動を制御する送風機制御手段(50b)と、送風機(12)における目標送風量を決定する目標送風量決定手段(S6)と、を備え、目標送風量決定手段(S6)は、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量を低下させることを特徴とする。
【0019】
これによれば、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、送風機(12)の目標送風量を低下させるので、送風機(12)の消費動力を低減させることができる。従って、車室内の空調によるバッテリ(81)の消費電力を抑制することができる。
【0020】
この際、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量を低下させるので、車室内への送風空気の送風量の急変を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0021】
さらに、送風機(12)の消費動力を低減させて、バッテリ(81)に蓄えられた電力のうち空調用に消費される電力を低減することで、走行用電動モータへ供給される電力を増加させることができる。ひいては、請求項1に記載の車両用空調装置と同様に、車両の燃費の向上を図ることができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用空調装置において、乗員の操作により車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する指令を出力する省動力化要求手段(60d)を備え、目標送風量決定手段(S6)は、省動力化要求手段(60d)によって省動力化を要求する指令が出力された場合は、省動力化を要求する指令が出力されていない場合に比べて、内燃機関(EG)が停止している際の目標送風量の低下度合いを大きくすることを特徴とする。
【0023】
これによれば、省動力化を要求する指令が出力された場合には、送風機(12)の送風量を低下させて、送風機(12)の省動力化を図ることができるので、バッテリ(81)の消費電力をより効果的に抑制することができる。加えて、乗員による省動力化要求手段(60d)の操作によって、送風機(12)の省動力化を選択できるので、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を望む乗員の意思を適切に反映させることができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する走行用電動モータと、走行用電動モータへ供給される電力を蓄えるバッテリ(81)と、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力および車両走行用の駆動力のうち、少なくとも一方を出力する内燃機関(EG)とを有する車両に適用される車両用空調装置であって、バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって車室内へ空気を送風する送風機(12)と、送風機(12)の作動を制御する送風機制御手段(50b)と、送風機(12)における目標送風量を決定する目標送風量決定手段(S6)と、を備え、目標送風量決定手段(S6)は、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量を低下させることを特徴とする。
【0025】
これによれば、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、送風機(12)の目標送風量を低下させるので、送風機(12)の消費動力を低減させることができ、車室内の空調によるバッテリ(81)の消費電力を抑制することができる。
【0026】
この際、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量を低下させるので、車室内への送風空気の送風量の急変を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0027】
さらに、送風機(12)の消費動力を低減させて、バッテリ(81)に蓄えられた電力のうち空調用に消費される電力を低減することで、走行用電動モータへ供給される電力を増加させることができ、ひいては、請求項1に記載の車両用空調装置と同様に、車両の燃費の向上を図ることができる。
【0028】
ここで、内燃機関(EG)が停止している際の目標送風量の低下によって、蒸発器(13)にて冷却された空気の送風量が低下して車室内温度が過度に高くなると、乗員の空調フィーリングが悪化する虞がある。
【0029】
そこで、請求項7に記載の発明では、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、目標送風量決定手段(S6)は、車室内温度(Tr)に応じて内燃機関(EG)が停止している際の目標送風量の下限送風量を設定し、内燃機関(EG)が停止している際に、内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、下限送風量となるまで目標送風量を低下させることを特徴とする。
【0030】
これによれば、内燃機関(EG)を停止している際の目標送風量の下限送風量を車室内温度(Tr)に応じて設定しているので、内燃機関(EG)が停止している際の車室内温度(Tr)の過度の上昇を抑制することができる。従って、内燃機関(EG)が停止している際の乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0031】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力を出力する内燃機関(EG)を有する車両に適用されることを特徴とする。
【0032】
これによれば、上述のように、バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するために内燃機関(EG)を駆動させる頻度を低減することができるので、燃費の向上を図ることができる。
【0033】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図である。
【図2】図1中の電気ヒータの構成図である。
【図3】図1の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図4】図1の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のS10の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4のS13の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図4のS6の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4のS9の詳細を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態における図4のS6の詳細を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態における図4のS9の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両用空調装置1は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されている。
【0036】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンEGを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
【0037】
また、このようなエンジンEGの作動あるいは停止といったエンジンEGの作動は、後述するエンジン制御装置70によって制御される。さらに、本実施形態のエンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機(発電手段)80を作動させるためにも用いられる。すなわち、本実施形態では、バッテリ81に蓄えられる電力を発電するための駆動力および車両走行用の駆動力の両方を出力するエンジンEGを有する車両に車両用空調装置1を適用している。
【0038】
そして、発電機80にて発電された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する各構成機器(空調機器)をはじめとする各種車載機器に供給できる。なお、発電機80は、バッテリ81を充電するバッテリ充電手段を構成している。
【0039】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10、冷凍サイクル30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
【0040】
まず、室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、PTCヒータ15等を収容したものである。
【0041】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
【0042】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング11内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0043】
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0044】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング11内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング11内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0045】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段としての送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧(ブロワ電圧)によって回転数(送風量)が制御される。なお、送風機12は、バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって作動可能に構成されており、送風機12の作動によりバッテリ81の電力が消費される。
【0046】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器(エバポレータ)13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。換言すれば、蒸発器13は、冷媒を蒸発させて車室内へ送風する送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)31、凝縮器32、気液分離器33、膨張弁34等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル30を構成している。
【0047】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構31aを電動モータ31bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ31bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。なお、圧縮機31は、バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって作動可能に構成されており、圧縮機31の作動によりバッテリ81の電力が消費される。
【0048】
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機31の冷媒吐出能力(回転数)が変更される。従って、電動モータ31bは、圧縮機31の吐出能力変更手段を構成している。なお、本実施形態の圧縮機31を作動させるために必要な消費電力は、前述の送風機12に送風を作動させるために必要な消費電力よりも大きい。
【0049】
凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン35から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。送風ファン35は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0050】
気液分離器33は、凝縮液化された冷媒を気液分離して余剰液冷媒を蓄えるとともに、液冷媒のみを下流に流すものである。膨張弁34は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器13は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるものである。
【0051】
また、ケーシング11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0052】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するためのヒータコア14およびPTCヒータ15が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア14は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器13通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0053】
具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路41が設けられて、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための電動ウォータポンプ42が設置されている。電動ウォータポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0054】
PTCヒータ15は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア14通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ15を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル30の圧縮機31を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0055】
より具体的には、このPTCヒータ15は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ15a、15b、15cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ15の電気的接続態様を示す回路図である。
【0056】
図3に示すように、各PTCヒータ15a、15b、15cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0057】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ15a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ15全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0058】
一方、冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。従って、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0059】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0060】
従って、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0061】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラスW内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0062】
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0063】
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0064】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0065】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50、エンジン制御装置70、およびバッテリ制御装置90は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0066】
エンジン制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(図示せず)等が接続されている。
【0067】
空調制御装置50の出力側には、空調機器として、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、送風ファン35、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ15a、15b、15c、電動ウォータポンプ42等が接続されている。
【0068】
空調制御装置50の出力側には、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、送風ファン35、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ15a、15b、15c、電動ウォータポンプ42等が接続されている。
【0069】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機31吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機31吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器13からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(冷媒蒸発温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ58等の種々の空調制御用のセンサ群の検出信号が接続されている。
【0070】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器13の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器13のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器13を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0071】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機31のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度Trを設定する車室内温度設定スイッチ60c、冷凍サイクル30の省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ60d等が設けられている。
【0072】
なお、本実施形態の車室内温度設定スイッチ60cは、車室内の目標温度(車室内設定温度)Tsetを設定する目標温度設定手段を構成しており、エコノミースイッチ60dは、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する指令を出力する省動力化要求手段を構成している。
【0073】
さらに、空調制御装置50は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置70に電気的接続されており、空調制御装置50およびエンジン制御装置70は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置70へエンジンEGの作動要求指令を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
【0074】
また、空調制御装置50およびエンジン制御装置70それぞれは、バッテリ81の蓄電残量(以下、単にバッテリ残量という。)の監視等を行うバッテリ制御装置90に電気的に接続されており、バッテリ制御装置90から出力される検出信号(バッテリ残量を示すデータ等)が入力される。
【0075】
バッテリ制御装置90は、バッテリ残量を検出するバッテリ残量検出手段を構成している。バッテリ残量の検出方法としては、例えば、バッテリの電解液の比重、バッテリ全体の重量を測定して検出する方法や、充電・放電の電流値および時間に基づいて検出する方法や、バッテリ81の内部抵抗を測定して検出する方法を採用することができる。
【0076】
本実施形態のバッテリ制御装置90は、走行条件によりエンジンEGが停止している場合に、走行用電動モータによる走行や車室内の空調によりバッテリ残量が所定の下限値まで低下すると、エンジン制御装置70に対して、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)を出力するように構成されている。換言すれば、バッテリ残量が所定の下限値となるまでは、走行用電動モータから出力される駆動力にて走行可能となるように、走行用電動モータへのバッテリ81に蓄えられた電力の供給を許可するように構成されている。
【0077】
エンジン制御装置70に対してエンジンON要求信号を出力することで、エンジンEGが作動するので、走行用に必要な駆動力の確保や発電機80等によるバッテリ81の充電が可能となる。
【0078】
また、空調制御装置50は、上述した各種空調制御機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、圧縮機31の電動モータ31bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機31の冷媒吐出能力を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を圧縮機制御手段50aとし、送風手段である送風機12の作動を制御して、送風機12の送風能力を制御する構成を送風機制御手段50bとする。もちろん、圧縮機制御手段50a等を空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0079】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0080】
次のステップS2では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号、エコノミースイッチ60dの設定信号等がある。
【0081】
ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58やバッテリ制御装置90等の検出信号を読み込んで、ステップS4へ進む。ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0082】
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア19の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度(蒸発器13の冷媒蒸発温度)TE、エアミックス前の温風温度TWDに基づいて算出する。
【0083】
具体的には、目標開度SWは、次の数式F2−1により算出できる。
SW=[{TAO−(TE+2)}/{TWD−(TE+2)}]×100(%)…(F2−1)
エアミックス前の温風温度TWDとは、加熱用冷風通路16に配置されたヒータコア14、およびPTCヒータ15の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、次の数式F2−2により算出できる。
TWD=Tw×0.8+TE×0.2+ΔTptc…(F2−2)
ここで、Twは冷却水温度センサ58によって検出された冷却水温度、ΔTptcは、PTCヒータ15の作動による吹出温上昇量、すなわち吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ15の作動が寄与した温度上昇量である。
【0084】
つまり、式F3では、エアミックス前の温風温度TWDを、ヒータコア14による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ15の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値として求めている。
【0085】
ヒータコア14による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)は、ヒータコア14の熱交換効率が100%とすれば、送風空気はヒータコア14にて冷却水温度Twまで上昇すると考えられる。これに対して、実際のヒータコア14では、熱交換効率が80%前後となってしまうことから0.8という係数を決定している。
【0086】
また、本発明者らの検討により、ヒータコア14へ流入する送風空気の温度によっても、ヒータコア14による吹出温上昇量が変化することが判っている。ヒータコア14へ流入する送風空気の温度は、蒸発器13にて冷却された冷風の温度であるから、吹出空気温度TEを採用することができる。そして、このヒータコア14へ流入する送風空気の温度の吹出温上昇量に対する寄与度として実験的に求められた0.2という係数を採用している。
【0087】
一方、PTCヒータ15の作動による吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ15の消費電力W(Kw)、空気密度ρ(kg/m3)、空気比熱Cp、PTCヒータ15を通過する風量であるPTC通過風量Va(m3/h)を用いて、数式F2−3により演算できる。
ΔTptc=W/ρ/Cp/Va×3600…(F2−3)
ここで、PTC通過風量Vaとしては、送風機12の送風空気量に対して、前回のステップS5で算出したエアミックス開度SWを考慮したものを用いている。
【0088】
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア19の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路17を全開し、加熱用冷風通路16を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア19の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路17を全閉し、加熱用冷風通路16を全開する。
【0089】
ステップS6では、送風機12により送風される空気の目標送風量、具体的には、電動モータに印加するブロワ電圧を決定する。すなわち、本実施形態のS6の処理は、本発明の目標送風量決定手段を構成する。送風機12のブロワ電圧の決定方法の詳細については後述する。
【0090】
ステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0091】
ステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0092】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスWに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0093】
ステップS9では、蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOを決定する。すなわち、本実施形態のS9の処理は、本発明の目標冷媒蒸発温度決定手段を構成する。TEOは、蒸発器13における冷媒蒸発温度(吹出空気温度)TEの目標温度であり、吹出空気の温度調整や湿度調整を行うために決定される。なお、TEOは、所定秒(例えば1秒)毎に更新される。TEOの決定方法の詳細については後述する。
【0094】
ステップS10では、圧縮機31の冷媒吐出能力(具体的には、回転数[rpm])を決定する。このステップ10の詳細については、図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、図5のステップ21中に記載の圧縮機回転数の偏差Enと偏差変化率Edotとの関係図は、圧縮機31の回転数変化量Δfを算出するためのファジー推論のルールの一例を示す図である。
【0095】
まず、ステップS21にて、ファジー推論に基づいて前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを算出する。具体的には、ステップS9で決定したTEOと吹出空気温度TEの偏差En(=TEO−TE)、および今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(=En−(En−1))を用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールに基づいて、回転数変化量Δfを算出する。
【0096】
そして、ステップS22にて、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加算したものを今回の圧縮機回転数fn[rpm]とする。なお、圧縮機回転数は、1秒毎に更新されるので、前回の圧縮機回転数fn−1は今回の圧縮機回転数fnに対して1秒前の値となる。
【0097】
次のステップS11では、PTCヒータ15の作動本数を決定する。PTCヒータ15の作動本数は、エアミックス開度SWおよび冷却水温度Twに応じて決定される。ここで、エアミックス開度SWが小さくなることは、加熱用冷風通路16にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味している。従って、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ15を作動させる必要性も少なくなる。
【0098】
そこで、本実施形態では、まず、エアミックス開度SWが予め定めた基準開度(本実施形態では、40%)より小さい場合は、PTCヒータ15を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ15の作動状態を非通電(OFF)に決定する。一方、エアミックス開度SWが予め定めた基準開度以上であれば、PTCヒータ15を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ15の作動状態を通電(ON)に決定する。
【0099】
次に、PTCヒータ15の作動状態が通電(ON)に決定された場合は、冷却水温度Twに基づいて、予め定めた制御マップを参照して、PTCヒータ15の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twの低下に伴って、PTCヒータ15の作動本数を増加させる。
【0100】
ステップS12では、エンジンEGの作動要求(エンジンON要求)の要否を決定する。このステップS12では、バッテリ残量および走行条件によってエンジンEGが停止している場合に、空調のためのエンジンEGの作動および停止を決定する。
【0101】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、エンジンEGを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0102】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止していると冷却水温度TWが40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア14にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
【0103】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要にもかかわらず冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、冷却水温度Twを所定温度以上に維持するため、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対して、エンジンEGを作動するように作動要求信号を出力している。
【0104】
なお、このような作動要求信号の出力は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、燃費を悪化させる要因となる。このため、作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
【0105】
次のステップ13では、ヒータコア14とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる電動ウォータポンプ42を作動させるか否かを決定する。このステップS13の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS31では、冷却水温度TWが蒸発器13の吹出空気温度(冷媒蒸発温度)TEより高いか否かを判定する。
【0106】
ステップS31にて、冷却水温度TWが蒸発器13の吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS34へ進み、電動ウォータポンプ42を停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度TWが蒸発器13の吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア14へ流すと、ヒータコア14を流れる冷却水が蒸発器13通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
【0107】
一方、ステップS31にて、冷却水温度TWが蒸発器13の吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS32へ進む。ステップS32では、送風機12が作動しているか否かが判定される。ステップS32にて、送風機12が作動していないと判定された場合は、ステップS34に進み、省動力化のために電動ウォータポンプ42を停止(OFF)させることを決定する。
【0108】
一方、ステップS32にて送風機12が作動していると判定された場合は、ステップS33へ進み、電動ウォータポンプ42を作動(ON)させることを決定する。これにより、電動ウォータポンプ42が作動して、冷却水が冷却水回路40内を循環するので、ヒータコア14を流れる冷却水とヒータコア14を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
【0109】
図4に戻り、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器12、61、35、62、63、64、15a、15b、15c、42やエンジン制御装置70に対して制御信号および制御電圧が出力される。
【0110】
これにより、例えば、空調制御装置50の圧縮機制御手段50aからインバータ61に対して制御信号が出力され、送風機制御手段50bから送風機12の電動モータに対して制御電圧(ブロア電圧V)が出力される。さらに、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対して、エンジンの作動要求信号が出力されれば、走行条件によってエンジンEGが停止している場合であっても、エンジンEGが作動する。
【0111】
ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0112】
ところで、走行条件によってエンジンEGが停止している際に(エンジンが停止したタイミングを含むエンジン停止中に)、バッテリ81からの電力供給により各空調機器を作動させること等で、バッテリ残量が所定の下限値まで低下すると、走行用の駆動力の確保や発電機80等によるバッテリ充電のためにエンジンEGを駆動させる必要がある。この場合、エンジンEGを駆動させることでの車両燃費の悪化が懸念されるので、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制することが望ましい。
【0113】
そこで、本実施形態では、エンジンEGの作動状態を考慮して送風機12のブロワ電圧(送風量)や、圧縮機31の回転数を決定する際に用いる蒸発器13のTEOを調整することで、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力の抑制を図っている。
【0114】
まず、本実施形態の送風機12のブロワ電圧の決定方法(S6)の詳細について、図7のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、送風機12のブロワ電圧を決定するために、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて設定する複数の仮ブロワ電圧のうちから、送風機12の電動モータに印加するブロワ電圧(目標送風量)を決定する。
【0115】
ステップS41では、ステップS41中に記載の目標吹出温度TAOとf(TAO)との関係図の通り、ステップS4にて決定されたTAOに応じて第1仮ブロワ電圧f(TAO)を設定する。
【0116】
具体的には、TAOの極低温域および極高温域で、第1仮ブロワ電圧f(TAO)を高電圧とし、送風機12の送風量を最大風量にする。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて第1仮ブロワ電圧f(TAO)を減少して、送風機12の送風量を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて第1仮ブロワ電圧f(TAO)を減少して、送風機12の送風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域に入ると、第1仮ブロワ電圧f(TAO)を低電圧とし、送風機12の送風量を最小風量にする。ここで、本実施形態の第1仮ブロワ電圧f(TAO)は、極低温域から極高温域までの全温度域における最大電圧を12V、最低電圧値を4Vに設定している。
【0117】
ここで、本実施形態では、ステップS41で決定される第1仮ブロワ電圧f(TAO)を電動モータに印可した際の送風量を「通常時の送風量」とする。この第1仮ブロワ電圧f(TAO)は、TAOに基づいて決定される値であるから、車室内設定温度Tset、車室内温度Tr、外気温Tam、日射量Tsといった空調熱負荷に基づいて決定される値である。なお、ステップS41中に記載の目標吹出温度TAOとf(TAO)との関係図は、目標吹出温度TAOと第1仮ブロワ電圧との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0118】
次のステップS42では、エンジン制御装置70からのエンジンEGの作動状態を示す制御信号に基づいて、エンジンEGが停止している(エンジン停止中である)か否かを判定する。
【0119】
この結果、エンジン停止中と判定された場合(S42:YES)は、ステップS44に進み、エンジンEGが停止してからの経過時間に応じてブロワ電圧を調整するための第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を設定する。
【0120】
本実施形態では、ステップS44中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図の通り、エンジン停止中に、エンジンEGが停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量が低下するように第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を設定する。
【0121】
具体的には、エンジン停止してからの経過時間が短い初期段階(本実施形態では0分〜2分)で、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最大電圧(12V)よりも低い電圧(例えば10V)に設定し、送風機12の送風量を最大風量よりも低下させる。
【0122】
そして、エンジン停止からの経過時間が初期段階を経て中間期(本実施形態では2分〜5分)となると、時間経過に伴い徐々に第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を低下させる。
【0123】
さらに、エンジン停止からの経過時間が中間期の段階を経て後期段階(本実施形態では5分以上)となると、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最低電圧(4V)よりも低い電圧(例えば3V)に設定する。そのため、後期段階では、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を電動モータに印可した際の送風量が「通常時の送風量」よりも低くなるので、バッテリ81の消費電力を効果的に抑制することが可能となる。なお、ステップS44中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図は、エンジンEGを停止してからの経過時間と第2仮ブロワ電圧との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0124】
ところで、車室内温度Trが低い場合には、送風機12の送風量が少なくても、乗員が温感的に違和感を持つことが少ないが、車室内温度Trが高い場合には、送風機12の送風量が少ないと、乗員が温感的に違和感を持つ場合がある。この場合は、乗員の空調フィーリングの悪化が懸念される。
【0125】
そこで、本実施形態では、エンジン停止中における送風機12の下限送風量を車室内温度Trに応じて設定している。具体的には、ステップS44にて第2仮ブロワ電圧を設定した後、ステップS46に進み、ステップS46中に記載の車室内温度Trとf(車室内温度)との関係図の通り、車室内温度Trに応じて第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を設定する。
【0126】
ステップS46では、車室内温度Trが低温側の基準温度(本実施形態では25℃)以下である場合には、第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最低電圧(4V)よりも低い電圧(3V)に設定する。
【0127】
一方、車室内温度Trが低温側の基準温度(本実施形態では25℃)より高くなる場合には、車室内温度Trの上昇とともに第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を上昇させる。そして、車室内温度Trが高温側の基準温度(本実施形態では30℃)より高くなると、第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最大電圧(12V)付近の電圧(10V)に設定する。なお、ステップS46中に記載の車室内温度Trとf(車室内温度)との関係図は、車室内温度Trと第3仮ブロワ電圧との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0128】
次のステップS47では、次の数式F4に基づいて、上記第1〜第3仮ブロワ電圧のうちから今回のブロワ電圧を決定する。
今回のブロワ電圧=MIN{f(TAO)、MAX(f(エンジン停止)、f(車室内温度))}…(F3)
ステップS47では、ステップS44で設定した第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)とステップS46で設定した第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)とを比較して電圧値の大きい方を選択する。
【0129】
この選択によれば、エンジン停止からの経過時間が長くなるに連れて、送風機12の送風量を低下させすぎてきしまうことを、車室内温度Trに応じて規制することとなる。すなわち、ステップS46にて第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を設定することは、エンジン停止中における第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)の下限値(下限送風量)を設定することを意味する。なお、第3仮ブロワ風量f(車室内温度)が、本発明の下限送風量に相当する。
【0130】
そして、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)と第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)との比較により選択された電圧値と、第1仮ブロワ電圧f(TAO)とを比較して、電圧値の小さい方を今回のブロワ電圧に決定する。
【0131】
従って、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)が第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)よりも大きく、かつ、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)が第1仮ブロワ電圧f(TAO)よりも小さい場合、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を今回のブロワ電圧に決定する。
【0132】
また、第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)が第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)よりも大きく、かつ、第3仮ブロワ電圧f(エンジン停止)が第1仮ブロワ電圧f(TAO)よりも小さい場合、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を今回のブロワ電圧に決定する。
【0133】
また、第2、第3仮ブロワ電圧それぞれが第1仮ブロワ電圧f(TAO)よりも大きい場合、第1仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を電動モータに印加して送風機12を作動させた方がバッテリ81の消費電力が少ないので、第1仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を今回のブロワ電圧に決定する。
【0134】
なお、ステップS42での判定処理の結果、エンジン停止中と判定されなかった場合は、エンジンEGから車両走行用の駆動力を得ることができ、エンジンEGの駆動力にて発電機80を作動可能である。
【0135】
そのため、エンジン停止中と判定されなかった場合は、通常時の送風機12の送風量が得られるブロワ電圧に決定する。つまり、エンジン停止中と判定されなかった場合(S42:NO)は、ステップS48に進み、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)および第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)それぞれを第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最大電圧(12V)に設定する。この場合、第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)と第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)とが、第1仮ブロワ電圧f(TAO)の最大電圧に設定されているので、ステップS47では、第1仮ブロワ電圧f(TAO)を今回のブロワ電圧に決定する。
【0136】
次に、蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOの決定方法(S9)の詳細について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0137】
本実施形態では、圧縮機31の回転数を決定する際に用いるTEOを決定するために、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて設定する複数の仮目標温度のうちから、TEOを決定する。なお、基本的には、TEOの設定値が高温に設定されるほど冷凍サイクル30の高低圧差が拡大するので、圧縮機31の消費動力が増大し、TEOの設定値が低温に設定されるほど冷凍サイクル30の高低圧差が縮小するので圧縮機31の消費動力が減少する。
【0138】
まず、ステップS51では、車両前面窓ガラスWの防曇を図るために、ステップS51中に記載の外気温Tamとf(車室内温度)との関係図の通り、外気温度Tamに応じてTEOの第1仮目標温度f(Tam)を設定する。
【0139】
具体的には、ステップS51では、外気温度Tamが高温である場合、防曇の必要性が低いと考えられるので、予め設定した基準外気温度(本実施形態では20℃)以上のときは、第1仮目標温度f(Tam)を予め設定した最大温度(本実施形態では8℃)に設定する。
【0140】
また、外気温度Tamが低温の場合、車両前面窓ガラスWが曇る可能性があるので、基準外気温度よりも低いときは、外気温度Tamの低下に応じて第1仮目標温度f(Tam)を減少させ、蒸発器12にて車室内への吹出空気を除湿する。ここで、第1仮目標温度f(Tam)は、蒸発器13がフロスト(凍結)防止のため、予め最小温度(本実施形態では1℃)以下とならないようにしている。なお、ステップS51中に記載の外気温Tamとf(車室内温度)との関係図は、ステップS51中に記載の外気温Tamと第1仮目標温度との関係を示す一例であり、これに限定されものではない。
【0141】
次のステップS52では、ステップS52中に記載の目標吹出温度TAOとf(TAO)との関係図の通り、ステップS4にて決定されたTAOに応じて第2仮目標温度f(TAO)を設定する。
【0142】
具体的には、TAOが基準吹出温度(本実施形態では12℃)以上であれば、第2仮目標温度f(TAO)を高い温度(本実施形態では8℃)とする。また、TAOが基準吹出温度よりも低いときには、TAOの低下に応じて第2仮目標温度f(TAO)を低下させる。ここで、第2仮目標温度f(TAO)は、第1仮目標温度f(Tam)と同様に、蒸発器13のフロスト(凍結)防止のため、予め最小温度(1℃)以下とならないようにしている。なお、ステップS52中に記載の目標吹出温度TAOとf(TAO)との関係図は、目標吹出温度TAOと第2仮目標温度との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0143】
次のステップS53では、エンジン制御装置70からのエンジンEGの作動状態を示す制御信号に基づいて、エンジン停止中か否かを判定する。
【0144】
上述のようにエンジン停止中には、バッテリ81の消費電力を抑制することが望ましい。そのため、本実施形態では、エンジンEGの作動状態に応じてTEOの設定値を調整して、エンジン停止中のバッテリ81の消費電力の抑制を図っている。
【0145】
S53の判定処理の結果、エンジン停止中と判定された場合(S53:YES)は、ステップS55に進み、エンジンEGが停止してからの経過時間に応じてTEOを調整するための第3仮目標温度f(エンジン停止)を設定する。
【0146】
本実施形態では、ステップS55中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図の通り、エンジンEGを停止してからの時間の経過に伴って、TEOが上昇するように第3仮目標温度f(エンジン停止)を設定する。
【0147】
具体的には、エンジンEGを停止してからの経過時間が短い初期段階(0分〜2分)では、第3仮目標温度f(エンジン停止)を第1、第2仮目標温度f(TAO)の最小温度(1℃)よりも高い温度(本実施形態では3℃)に設定する。
【0148】
初期段階を経て中間期(2分〜5分)となると、第3仮目標温度f(エンジン停止)を時間経過とともに上昇させる。そして、後期段階(5分以上)では第3仮目標温度f(エンジン停止)を第1、第2仮目標温度f(TAO)の最大温度(8℃)に設定する。なお、ステップS55中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図は、目標吹出温度TAOと第3仮目標温度との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0149】
ところで、車室内温度Trが低い場合に、エンジン停止中のTEOの上昇によって、蒸発器13にて冷却される送風空気の温度が上昇しても、乗員の空調フィーリングが悪化することは少ない。しかし、車室内温度Trが高い場合に、エンジン停止中のTEOの上昇によって、蒸発器13にて冷却される送風空気の温度が上昇すると、乗員の空調フィーリングの悪化が懸念される。
【0150】
そこで、本実施形態では、エンジン停止中におけるTEOの上限温度を車室内温度Trに応じて設定している。具体的には、ステップS55にて第3仮目標温度f(エンジン停止)を設定した後、ステップS57に進み、ステップS57中に記載の車室内温度Trとf(車室内温度)との関係図に示す通り、車室内温度Trに応じて第4仮目標温度f(車室内温度)を設定する。
【0151】
ステップS57では、車室内温度Trが低温側の基準温度(本実施形態では25℃)以下である場合には、第4仮目標温度f(車室内温度)を第1、第2仮目標温度f(TAO)の最大温度(8℃)とする。
【0152】
一方、車室内温度Trが低温側の基準温度(25℃)より高くなる場合には、車室内温度Trの上昇とともに第4仮目標温度f(車室内温度)を上昇させて、圧縮機31の回転数を徐々に増加させる。そして、車室内温度Trが高温側の基準温度(本実施形態では30℃)より高くなると、第4仮目標温度f(車室内温度)を蒸発器13のフロスト(凍結)防止のための最小温度(1℃)に設定する。なお、ステップS57中に記載の車室内温度Trとf(車室内温度)との関係図は、ステップS57中に記載の車室内温度Trと第4仮目標温度との関係を示す一例であり、これに限定されるものではない。
【0153】
次のステップS58では、次の数式F4に基づいて、上記第1〜第4仮目標温度のうちから今回の目標冷媒蒸発温度TEOを決定する。
TEO=MAX{MIN(f(外気温)、f(TAO))、MIN(f(エンジン停止)、f(車室内温度))}…(F4)
ステップS58では、第1仮目標温度f(外気温)と第2仮目標温度f(TAO)とを比較して、温度の低い方を第1の候補として選択する。第1の候補の選択によれば、例えば、TAOが高い場合であっても、防曇の必要がある場合にはTEOを低下させ、車室内の除湿を行なうこととなる。
【0154】
また、第3仮目標温度f(エンジン停止)と第4仮目標温度f(車室内温度)とを比較して、温度の低い方を第2の候補として選択する。この第2の候補の選択によれば、エンジン停止からの経過時間が長くなるに連れて、TEOを上昇させすぎてしまうことを、車室内温度Trに応じて規制することとなる。すなわち、ステップS57にて第4仮目標温度f(車室内温度)を設定することは、エンジン停止中における第3仮目標温度f(エンジン停止)の上限値(上限温度)を設定することを意味する。なお、第4仮目標温度f(車室内温度)が、本発明の上限温度に相当する。
【0155】
そして、第1仮目標温度f(外気温)と第2仮目標温度f(TAO)から選択した第1の候補と、第3仮目標温度f(エンジン停止)と第4仮目標温度f(車室内温度)から選択した第2の候補とを比較して、温度の高い方を今回のTEOに決定する。
【0156】
従って、第3仮目標温度f(エンジン停止)が第4仮目標温度f(車室内温度)よりも低く、かつ、第3仮目標温度f(エンジン停止)が第1の候補(目標温度)よりも高い場合、第3仮目標温度f(エンジン停止)を今回のTEOに決定する。
【0157】
また、第4仮目標温度f(車室内温度)が第3仮目標温度f(エンジン停止)よりも低く、かつ、第4仮目標温度f(車室内温度)が第1の候補(目標温度)よりも高い場合、第4仮目標温度f(車室内温度)を今回のTEOに決定する。
【0158】
また、第3、第4仮目標温度それぞれが第1の候補(目標温度)よりも低い場合、第1の候補(目標温度)の目標温度をTEOとなるように圧縮機31を作動させた方が、バッテリ81の消費電力が少ないので、第1の候補を今回のブロワ電圧に決定する。
【0159】
なお、ステップS53の判定処理の結果、エンジン停止中と判定されなかった場合は、エンジンEGから車両走行用の駆動力を得ることができ、エンジンEGの駆動力にて発電機80を作動可能である。
【0160】
そのため、エンジン停止中と判定されなかった場合は、第1仮目標温度f(外気温)と第2仮目標温度f(TAO)とを比較して、温度の低い方をTEOに設定する。具体的には、エンジン停止中と判定されなかった場合(S53:NO)は、ステップS59に進み、第3仮目標温度f(エンジン停止)および第4仮目標温度f(車室内温度)を第1、第2仮目標温度の最小温度(1℃)に設定する。この場合、第3、第4仮目標温度が、第1、第2仮目標温度の最小温度に設定されているので、ステップS58では、第1仮目標温度f(外気温)と第2仮目標温度f(TAO)とを比較して、温度の低い方を今回のTEOに決定する。
【0161】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機12から送風された送風空気が、蒸発器13にて冷却される。そして蒸発器13にて冷却された冷風は、エアミックスドア19の開度に応じて、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入する。
【0162】
加熱用冷風通路16へ流入した冷風は、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過する際に加熱されて、混合空間18にて冷風バイパス通路17を通過した冷風と混合される。そして、混合空間18にて温度調整された空調風が、混合空間18から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0163】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内温度Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、車室内温度Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0164】
この際、ステップS9では、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて設定する第1〜第4仮目標温度のうちから、蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOを決定する。
【0165】
上述のステップS58にて第1〜第4仮目標温度のうちから第3仮目標温度f(エンジン停止)をTEOに決定する場合は、エンジン停止中に、エンジンEGを停止してからの時間の経過に伴ってTEOを上昇させるので、冷凍サイクル30の高低圧差を縮小して、圧縮機31の消費動力を低減させることができる。従って、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制することができる。
【0166】
加えて、エンジンEGが停止してからの時間の経過に伴って、TEOを上昇させるので、車室内への送風空気の温度の急変を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0167】
さらに、圧縮機31の消費動力を低減させて、バッテリ81に蓄えられた電力のうち空調用に消費される電力を低減することで、走行用電動モータへ供給される電力を増加させることができる。その結果、走行用電動モータによる車両の走行距離を延ばすことができる。ひいては、バッテリ81に蓄えられる電力を発電するためにエンジンEGを駆動させる頻度を低減することや、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)による車両の走行距離の合計距離を延ばすことができるので、燃費の向上を図ることができる。
【0168】
一方、ステップS58にて第1〜第4仮目標温度のうちから第4仮目標温度f(車室内温度)をTEOに決定する場合は、エンジンEGの作動停止からの経過時間が長くても、車室内温度Trの上昇に伴ってTEOの上昇を規制する。つまり、エンジンEGを停止している際のTEOの上限温度を車室内温度Trに応じて設定することとなるので、エンジンEGが停止している際の車室内温度Trの過度の上昇を抑制することができる。
【0169】
従って、エンジンEGが停止している際の乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。なお、車室内温度Trが低い場合には、第3仮目標温度が選択されて、TEOを上昇させるので、圧縮機31の省動力化を図ることができ、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制することができる。
【0170】
また、ステップS6では、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて設定する第1〜第3仮ブロワ電圧のうちから、送風機12の電動モータに印加するブロワ電圧(目標送風量)を決定する。
【0171】
上述のステップS47にて第1〜第3仮ブロワ電圧のうちから第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を今回のブロワ電圧に決定する場合は、エンジン停止中に、エンジンEGが停止してからの時間の経過に伴って、送風機12のブロワ電圧(目標送風量)を低下させるので、送風機12の消費動力を低減させることができる。従って、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制することができる。
【0172】
この際、エンジンEGが停止してからの時間の経過に伴って、目標送風量を低下させるので、車室内への送風空気の送風量の急変を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0173】
さらに、送風機12の消費動力を低減させて、バッテリ81に蓄えられた電力のうち空調用に消費される電力を低減することで、走行用電動モータへ供給される電力を増加させることができるので、上述のように車両の燃費の向上を図ることができる。
【0174】
一方、ステップS47にて第1〜第3仮ブロワ電圧のうちから第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)を今回のブロワ電圧に決定する場合は、エンジンEGの作動停止からの経過時間が長くても、車室内温度Trの上昇に伴って送風機12の送風量の低下を規制する。つまり、エンジンEGを停止している際の送風機12の送風量の下限送風量を車室内温度Trに応じて設定することとなるので、エンジンEGが停止している際の車室内温度Trの過度の上昇を抑制することができる。
【0175】
従って、エンジンEGが停止している際の乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。なお、車室内温度Trが低い場合には、第2仮ブロワ電圧が選択されて、送風機12の送風量を低下させるので、送風機12の省動力化を図ることができ、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制することができる。
【0176】
このように、本実施形態の車両用空調装置1によれば、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて、適切なTEOおよびブロワ電圧を決定することで、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制しつつ、バッテリ81の消費電力を充分に抑制することができる。
【0177】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図9、図10に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図9は、第2実施形態におけるステップS6の詳細を示すフローチャートであり、図10は、第2実施形態におけるステップS9の詳細を示すフローチャートである。
【0178】
本実施形態では、エコノミースイッチ60dの出力(ON/OFF)に応じて、エンジン停止中の送風機12のブロワ電圧(目標送風量)や、蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOを調整することで、エンジン停止中のバッテリ81の消費電力の抑制を図っている。
【0179】
まず、本実施形態におけるエンジン停止中の送風機12のブロワ電圧の調整について図9に基づいて説明する。図9に示すように、ステップS42にて、エンジン停止中と判定された場合(S42:YES)は、ステップS43にて、エコノミースイッチ60dがONであるか否かを判定する。
【0180】
判定の結果、エコノミースイッチ60dがONと判定されなかった場合(S43:NO)、ステップS44に進み、第1実施形態と同様の第2仮ブロワ電圧を設定する。
【0181】
一方、エコノミースイッチ60dがONと判定された場合(S43:YES)、ステップS45に進み、エコノミースイッチ60dがOFFと判定された場合(S43:NO)に比べて、送風機12の第2仮ブロワ電圧f(エンジン停止)を低下させる。
【0182】
本実施形態のステップS45では、ステップS45中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図の通り、ステップS44における中間期の期間(2分〜5分)に比べて、エンジンEGを停止してからの経過時間が中間期の期間(2分〜4分)を短縮する。つまり、ステップS45では、ステップS44における中間期のブロワ電圧の低下度合いに比べて、当該中間期のブロワ電圧の低下度合いを大きくする。
【0183】
これによれば、エコノミースイッチ60dがONされている場合は、ONされていない場合に比べ、送風機12の省動力化を図ることができるので、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力をより効果的に抑制することができる。
【0184】
次に、本実施形態におけるエンジン停止中の蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOの調整について図10に基づいて説明する。図10に示すように、ステップS53にて、エンジン停止中と判定された場合(S53:YES)は、ステップS54にて、エコノミースイッチ60dがONであるか否かを判定する。
【0185】
判定の結果、エコノミースイッチ60dがONと判定されなかった場合(S54:NO)、ステップS55に進み、第1実施形態と同様の第3仮目標温度を設定する。
【0186】
一方、エコノミースイッチ60dがONと判定された場合(S54:YES)、ステップS56に進み、エコノミースイッチ60dがOFFと判定された場合(S54:NO)に比べて、第3仮目標温度を低下させる。
【0187】
本実施形態のステップS56では、ステップ56中に記載のエンジンEGを停止してからの経過時間とf(エンジン停止)との関係図の通り、ステップS55における中間期の期間(2分〜5分)に比べて、エンジンEGを停止してからの経過時間が中間期の期間(2分〜4分)を短縮する。つまり、ステップS56では、ステップS55における中間期の目標温度の上昇度合に比べて、当該中間期の目標温度の上昇度合いを大きくする。
【0188】
これによれば、エコノミースイッチ60dがONされている場合は、ONされていない場合に比べ、圧縮機31の省動力化を図ることができるので、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力をより効果的に抑制することができる。
【0189】
以上説明したように、本実施形態では、エコノミースイッチ60dをONすることで、圧縮機31、送風機12といった空調機器の省動力化を図ることができるので、バッテリ81の消費電力をより効果的に抑制することができる。加えて、エコスイッチ60dをONすることで、省動力モードを選択できるので、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を望む乗員の意思を適切に反映させることができる。
【0190】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0191】
(1)上記各実施形態では、エンジン停止中であるか否かを判定する判定処理(S42、S53)を行っているが、エンジン停止中であるか否かの判定に加えて、バッテリ残量が充分であるか否かの判定を追加してもよい。なお、バッテリ残量が充分であるか否かの判定は、バッテリ制御装置90から出力されるバッテリ残量が予め設定された基準値以上であるか否かを判定すればよい。
【0192】
(2)上記各実施形態では、エンジン停止中の送風機12の送風量および蒸発器13の目標冷媒蒸発温度TEOのそれぞれを調整することで、バッテリ81の消費電力のより効果的な抑制を図っているが、これに限定されず、いずれか一方を行うようにしてもよい。
【0193】
(3)上記各実施形態では、空調熱負荷やエンジンEGの作動状態に応じて、第1〜第3仮ブロワ電圧および第1〜第4仮目標温度を設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、仮ブロワ電圧として、車室内温度Trに応じて設定する第3仮ブロワ電圧f(車室内温度)および第4仮目標温度f(車室内温度)を除く、第1、第2仮ブロワ電圧、および第1〜第3仮目標温度を設定するようにしてもよい。
【0194】
(4)上記各各実施形態では、本発明の車両用空調装置を、ハイブリッド車両のうちエンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用した例を説明しているが、本発明の車両用空調装置の適用はこれに限定されない。
【0195】
例えば、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0196】
(5)また、本発明の車両用空調装置を、エンジン制御装置70に対するバッテリ残量が低下してもエンジンEGの作動要求信号を出力せず、バッテリ残量が低下すると、エンジンEGにて車両走行用の駆動力を出力する車両に適用してもよい。この場合には、車室内の空調によるバッテリ81の消費電力を抑制して、走行用電動モータによる走行距離を延ばすことで、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)による車両の走行距離の合計距離を延ばすことができる。ひいては、燃費の向上を図ることができる。
【0197】
(6)また、本発明の車両用空調装置を、車両外部の外部電源(商用電源)からの電力供給にてバッテリ81を充電可能な車両、いわゆるプラグインハイブリッド車両に適用することもできる。なお、この種の車両では、送風機12や圧縮機31等の空調機器をバッテリ81の他にも外部電源からの電力供給にて直接作動可能に構成することができる。
【符号の説明】
【0198】
1 車両用空調装置
12 送風機
13 蒸発器
30 冷凍サイクル
31 圧縮機
50 空調制御装置
50a 圧縮機制御手段
50b 送風機制御手段
60d エコノミースイッチ(省動力化要求手段)
S6 目標送風量決定手段
S9 目標冷媒蒸発温度決定手段
EG エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用の駆動力を出力する走行用電動モータと、前記走行用電動モータへ供給される電力を蓄えるバッテリ(81)と、前記バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力および車両走行用の駆動力のうち、少なくとも一方を出力する内燃機関(EG)とを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)および前記冷媒を蒸発させて車室内に送風される送風空気を冷却する蒸発器(13)を有する蒸気圧縮式の冷凍サイクル(30)と、
前記圧縮機(31)の作動を制御する圧縮機制御手段(50a)と、
前記蒸発器(13)における目標冷媒蒸発温度(TEO)を決定する目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)と、を備え、
前記圧縮機制御手段(50a)は、前記蒸発器(13)における冷媒蒸発温度(TE)が前記目標冷媒蒸発温度(TEO)に近づくように、前記圧縮機(31)の作動を制御し、
前記目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、前記内燃機関(EG)が停止している際に、前記内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、前記目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、車室内温度(Tr)に応じて前記内燃機関(EG)が停止している際の前記目標冷媒蒸発温度(TEO)の上限温度を設定し、前記内燃機関(EG)が停止している際に、前記内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、前記上限温度となるまで前記目標冷媒蒸発温度(TEO)を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
乗員の操作により前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する指令を出力する省動力化要求手段(60d)を備え、
前記目標冷媒蒸発温度決定手段(S9)は、前記省動力化要求手段(60d)によって前記省動力化を要求する指令が出力された場合は、前記省動力化を要求する指令が出力されていない場合に比べて、前記内燃機関(EG)が停止している際の前記目標冷媒蒸発温度(TEO)の上昇度合いを大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって前記車室内へ空気を送風する送風機(12)と、
前記送風機(12)の作動を制御する送風機制御手段(50b)と、
前記送風機(12)における目標送風量を決定する目標送風量決定手段(S6)と、を備え、
前記目標送風量決定手段(S6)は、前記内燃機関(EG)が停止している際に、前記内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、前記目標送風量を低下させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
乗員の操作により前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する指令を出力する省動力化要求手段(60d)を備え、
前記目標送風量決定手段(S6)は、前記省動力化要求手段(60d)によって前記省動力化を要求する指令が出力された場合は、前記省動力化を要求する指令が出力されていない場合に比べて、前記内燃機関(EG)が停止している際の前記目標送風量の低下度合いを大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車両走行用の駆動力を出力する走行用電動モータと、前記走行用電動モータへ供給される電力を蓄えるバッテリ(81)と、前記バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力および車両走行用の駆動力のうち、少なくとも一方を出力する内燃機関(EG)とを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記バッテリ(81)に蓄えられた電力を供給されることによって前記車室内へ空気を送風する送風機(12)と、
前記送風機(12)の作動を制御する送風機制御手段(50b)と、
前記送風機(12)における目標送風量を決定する目標送風量決定手段(S6)と、を備え、
前記目標送風量決定手段(S6)は、前記内燃機関(EG)が停止している際に、前記内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、前記目標送風量を低下させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
前記目標送風量決定手段(S6)は、車室内温度(Tr)に応じて前記内燃機関(EG)が停止している際の前記目標送風量の下限送風量を設定し、前記内燃機関(EG)が停止している際に、前記内燃機関(EG)が停止してからの時間の経過に伴って、前記下限送風量となるまで前記目標送風量を低下させることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記バッテリ(81)に蓄えられる電力を発電するための駆動力を出力する前記内燃機関(EG)を有する車両に適用されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63058(P2011−63058A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213165(P2009−213165)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】