説明

車両用空調装置

【課題】乗員快適感の早期向上を実現させる。
【解決手段】運転席側吹出口および非運転席側吹出口から空調風が吹き出される通常吹出モードと、通常吹出モードに比べて非運転席側吹出口の開度が小さくされる運転席優先吹出モードとを切り替える吹出モード切替手段を備え、運転席側吹出口は第1吹出口と第2吹出口とを含み、運転席優先吹出モードは、空調風が少なくとも第1吹出口から吹き出される第1優先吹出モードと、第1優先吹出モードに比べて第2吹出口の開度が大きくされる第2優先吹出モードとを含み、さらに、第1優先吹出モードと第2優先吹出モードとを切り替える優先吹出モード切替手段を備え、優先吹出モード切替手段は、運転席優先吹出モードにおいて、空調負荷が所定負荷よりも低い場合には第1優先吹出モードを実行し、空調負荷が所定負荷よりも高い場合には第2優先吹出モードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2には、車室内の座席に設けられて在席状態を判定する在席検知手段を有し、在席検知手段からの信号に応じて空調ユニットの吹き出し状態を制御する空調装置が記載されている。
【0003】
この従来技術では、運転席側吹出口、助手席側吹出口、右後部座席側吹出口および左後部座席側吹出口を備え、在席と判定された座席側の吹出口のみから空調空気を吹き出し、乗員が不在と判定された座席側の吹出口から空調空気を吹き出さないようにすることで省能力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2960243号公報
【特許文献2】特許第3573682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用空調装置に要求される性能の1つとして、空調負荷が極めて高い状態のときに乗員快適感を早期に向上できることが挙げられる。空調負荷が極めて高い状態とは、車室内環境が乗員が快適と感じる環境と大幅に乖離している状態を言い、例えば、夏の炎天下に車を放置した後に乗り込む時や、冬の早朝に車室内に乗り込む時のような状態を言う。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、乗員快適感の早期向上を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、運転席に対応して設けられた運転席側吹出口(27、31、37)と、
運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口(29、33、35)と、
運転席側吹出口(27、31、37)および非運転席側吹出口(29、33、35)から吹き出される空調風を作り出す空調ユニット(10)と、
運転席側吹出口(27、31、37)および非運転席側吹出口(29、33、35)から空調風が吹き出される通常吹出モードと、通常吹出モードに比べて非運転席側吹出口(29、33、35)の開度が小さくされる運転席優先吹出モードとを切り替える吹出モード切替手段(20、22、23)と、
吹出モード切替手段(20、22、23)を制御する制御手段(40)とを備え、
運転席側吹出口(27、31、37)は第1吹出口と第2吹出口とを含み、
運転席優先吹出モードは、空調風が少なくとも第1吹出口から吹き出される第1優先吹出モードと、第1優先吹出モードに比べて第2吹出口の開度が大きくされる第2優先吹出モードとを含み、
さらに、第1優先吹出モードと第2優先吹出モードとを切り替える優先吹出モード切替手段(19、21)を備え、
制御手段(40)は、運転席優先吹出モードにおいて、空調負荷が所定負荷よりも低い場合には第1優先吹出モードが実行され、空調負荷が所定負荷よりも高い場合には第2優先吹出モードが実行されるように優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする。
【0008】
これにより、空調負荷が所定負荷よりも高い場合に第2優先吹出モードを実行して運転席の乗員に対して空調風を効果的に吹き出すことができるので、乗員快適感の早期向上を実現できる。
【0009】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、運転席の乗員の上半身に対応して設けられた運転席側フェイス吹出口(27)、運転席の乗員の膝部に対応して設けられた運転席側ニー吹出口(37)、および運転席の乗員の足元部に対応して設けられた運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも2つの吹出口を備えるようにすればよい。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、運転席の乗員の上半身に対応して設けられた運転席側フェイス吹出口(27)、運転席の乗員の膝部に対応して設けられた運転席側ニー吹出口(37)、および運転席の乗員の足元部に対応して設けられた運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも2つの吹出口を備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、冷房負荷が所定冷房負荷よりも高い場合に、運転席の乗員に対して空調風を効果的に吹き出して乗員快適感の早期向上を実現することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車両用空調装置において、非運転席側吹出口(29、33、35)として、助手席の乗員の上半身に対応して設けられた助手席側フェイス吹出口(29)を少なくとも備え、
吹出モード切替手段(20、22、23)として、助手席側フェイス吹出口(29)の開度を調整する助手席側フェイス開閉機構(20)を少なくとも備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、冷房負荷が所定冷房負荷よりも高い場合に運転席の乗員に対して空調風を一層効果的に吹き出すことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載の車両用空調装置において、空調ユニット(10)は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器と、冷却用熱交換器通過後の冷風温度(TE)を検出する冷風温度検出手段とを有し、
空調負荷が冷房負荷であるときの第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が冷房負荷であるときの第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
制御手段(40)は、運転席優先吹出モードにおいて、冷房負荷が所定冷房負荷よりも高い場合であっても、冷風温度検出手段によって検出された冷風温度(TE)が所定温度よりも低い場合には冷房時第2優先吹出モードに代えて冷房時第1優先吹出モードが実行されるように優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする。
【0015】
これによると、冷風温度(TE)が所定温度よりも低い場合には冷房時第2優先吹出モードが実行されないので、運転席の下半身の冷え過ぎを抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項3または4に記載の車両用空調装置において、車室内温度(TR)を検出する車室内温度検出手段を備え、
空調負荷が冷房負荷であるときの第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が冷房負荷であるときの第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
制御手段(40)は、運転席優先吹出モードにおいて、冷房負荷が所定冷房負荷よりも高い場合であっても、車室内温度検出手段によって検出された車室内温度(TR)が所定温度よりも低い場合には冷房時第2優先吹出モードに代えて冷房時第1優先吹出モードが実行されるように優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする。
【0017】
これによると、車室内温度(TR)が所定温度よりも低い場合には冷房時第2優先吹出モードが実行されないので、運転席の下半身の冷えが不快感に繋がることを抑制できる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項3ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、空調ユニット(10)内の空気通路に空気流れを発生させる送風機を備え、
制御手段(40)は、冷房負荷の極高負荷域で送風機の目標送風量を最大風量にし、冷房負荷の高負荷域では冷房負荷の低下に応じて目標送風量を減少させ、
所定冷房負荷は、極高負荷域と高負荷域との境界における負荷であることを特徴とする。
【0019】
これにより、冷房時の第2優先吹出モードでは送風機が最大風量になるので、運転席側ニー吹出口(37)および運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも一方の吹出口の開度が冷房時の第1優先吹出モードに比べて大きくされても、運転席側フェイス吹出口(27)の吹出風量の減少を抑制することができる。
【0020】
なお、本発明における「最大風量」とは、送風機の厳密な最大風量のみを意味するものではなく、送風機の最大風量付近の風量をも含む意味のものである。また、本発明における「極高負荷域と高負荷域との境界における負荷」とは、極高負荷域と高負荷域との厳密な境界における負荷のみを意味するものではなく、極高負荷域と高負荷域との境界の近傍における負荷をも含む意味のものである。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項3ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、
運転席側フェイス吹出口(27)、運転席側ニー吹出口(37)および運転席側フット吹出口(31)を備え、
空調負荷が冷房負荷であるときには、運転席側フェイス吹出口(27)が第1吹出口となり、運転席側ニー吹出口(37)および運転席側フット吹出口(31)が第2吹出口となり、
空調負荷が冷房負荷であるときの第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が冷房負荷であるときの第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
冷房時第2優先吹出モードでは、運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOT、および運転席側ニー吹出口(37)の風量割合rKNEEが、rFACE>rKNEE>rFOOTの関係を満たすことを特徴とする。
【0022】
これによると、冷房時第2優先吹出モードでは、運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、および運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOTが高くなるので、乗員の胸部、顔部を早期に冷やして全身温感の早期向上を図ることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、請求項2ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、
運転席側フット吹出口(31)と、
運転席側フェイス吹出口(27)および運転席側ニー吹出口(37)のうち少なくとも一方の吹出口とを備え、
空調負荷が暖房負荷であるときには、
運転席側フット吹出口(31)が第1吹出口となり、
運転席側フェイス吹出口(27)および運転席側ニー吹出口(37)のうち少なくとも一方の吹出口が第2吹出口となり、
制御手段(40)は、所定負荷として所定暖房負荷を用いて優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする。
【0024】
これにより、暖房負荷が所定暖房負荷よりも高い場合に、運転席の乗員に対して空調風を効果的に吹き出して乗員快適感の早期向上を実現することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の車両用空調装置において、非運転席側吹出口(29、33、35)として、運転席以外の座席の乗員の足元部に対応して設けられた非運転席側フット吹出口(33、35)を少なくとも備え、
吹出モード切替手段(20、22、23)として、非運転席側フット吹出口(33、35)の開度を調整する非運転席側フット開閉機構(22、23)を少なくとも備えることを特徴とする。
【0026】
これにより、暖房負荷が所定暖房負荷よりも高い場合に運転席の乗員に対して空調風を一層効果的に吹き出すことができる。
【0027】
請求項11に記載の発明では、請求項9または10に記載の車両用空調装置において、車両前面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(25)と、
デフロスタ吹出口(25)の開度を調整するデフロスタ開閉機構(18)とを備え、
空調負荷が暖房負荷であるときの第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が暖房負荷であるときの第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
制御手段(40)は、運転席優先吹出モードにおいて、暖房負荷が所定暖房負荷よりも高く且つ車両前面窓ガラスの曇り防止が要求される場合には、デフロスタ吹出口(25)の開度が暖房時第2優先吹出モードに比べて大きくなるようにデフロスタ開閉機構(18)を制御することを特徴とする。
【0028】
これによると、高暖房負荷時であっても、車両前面窓ガラスの曇り防止が要求される場合には速やかにデフロスタ吹出口(25)の開度を大きくして車両前面窓ガラスの曇りを防止することができる。このため、乗員の温熱感よりも車両走行時の安全性を優先することができる。
【0029】
請求項12に記載の発明では、請求項9または10に記載の車両用空調装置において、空調負荷が暖房負荷であるときの第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が暖房負荷であるときの第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
制御手段(40)は、暖房時第1優先吹出モードから暖房時第2優先吹出モードに切り替える際に、運転席側フェイス吹出口(27)、運転席側ニー吹出口(37)、運転席側フット吹出口(31)の順に空調風が吹き出されるように優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする。
【0030】
これによると、温熱感を感じやすい上半身から足元部へと暖めることができるので、全身温熱感を早期に向上させることができる。
【0031】
請求項13に記載の発明では、請求項9ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、空調ユニット(10)内の空気通路に空気流れを発生させる送風機を備え、
制御手段(40)は、暖房負荷の極高負荷域で送風機の目標送風量を最大風量にし、暖房負荷の高負荷域では暖房負荷の低下に応じて目標送風量を減少させ、
所定暖房負荷は、極高負荷域と高負荷域との境界における負荷であることを特徴とする。
【0032】
これにより、暖房時の第2優先吹出モードでは送風機が最大風量になるので、運転席側フェイス吹出口(27)および運転席側ニー吹出口(37)のうち少なくとも一方の吹出口の開度が暖房時の第1優先吹出モードに比べて大きくされても、運転席側フット吹出口(31)の吹出風量の減少を抑制することができる。
【0033】
なお、本発明における「最大風量」とは、送風機の厳密な最大風量のみを意味するものではなく、送風機の最大風量付近の風量をも含む意味のものである。また、本発明における「極高負荷域と高負荷域との境界における負荷」とは、極高負荷域と高負荷域との厳密な境界における負荷のみを意味するものではなく、極高負荷域と高負荷域との境界の近傍における負荷をも含む意味のものである。
【0034】
請求項14に記載の発明では、請求項9ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、
運転席側フェイス吹出口(27)、運転席側ニー吹出口(37)および運転席側フット吹出口(31)を備え、
空調負荷が暖房負荷であるときには、運転席側フット吹出口(31)が第1吹出口となり、運転席側フェイス吹出口(27)および運転席側ニー吹出口(37)が第2吹出口となり、
空調負荷が暖房負荷であるときの第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
空調負荷が暖房負荷であるときの第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
暖房時第2優先吹出モードでは、運転席側ニー吹出口(37)の風量割合rKNEEが、運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、および運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOTよりも小さくなることを特徴とする。
【0035】
これによると、暖房時第2優先吹出モードでは、運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、および運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOTが高くなるので、乗員の胸部、下腿部を早期に暖めて全身温感の早期向上を図ることができる。
【0036】
請求項15に記載の発明では、請求項2ないし14のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、運転席側吹出口(27、31、37)として、運転席側フェイス吹出口(27)、運転席側フット吹出口(31)および運転席側ニー吹出口(37)を備え、
空調ユニット(10)から運転席側フェイス吹出口(27)に至る運転席側フェイスダクト(26)と、
空調ユニット(10)から運転席側フット吹出口(31)に至る運転席側フットダクト(30)と、
空調ユニット(10)から非運転席側吹出口(29、33、35)に至る非運転席側ダクト(28、32、34)と、
運転席側フェイスダクト(26)、運転席側フットダクト(30)または非運転席側ダクト(28、32、34)から分岐して運転席側ニー吹出口(37)に至る運転席側ニーダクト(36)とを備えることを特徴とする。
【0037】
請求項16に記載の発明では、請求項15に記載の車両用空調装置において、運転席側フェイスダクト(26)、運転席側フットダクト(30)または非運転席側ダクト(28、32、34)における運転席側ニーダクト(36)の分岐部に設けられ、運転席側ニー吹出口(37)の開度を調整する調整機構(38)を備えることを特徴とする。
【0038】
これによると、調整機構(38)により、運転席側ニー吹出口(37)からの吹出風量を調整することができるので、快適性を向上させることができる。
【0039】
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、吹出モード切替手段(20、22、23)は、空調ユニット(10)の内部に設けられていることを特徴とする。
【0040】
請求項18に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、吹出モード切替手段(20、22、23)は、空調ユニット(10)の外部に設けられていることを特徴とする。
【0041】
請求項19に記載の発明では、請求項1ないし18のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、第1優先吹出モードと第2優先吹出モードの切替え時に、第2吹出口の開度を段階的もしくは線形的に、徐々に変化させることを特徴とする。
【0042】
これによると、乗員は第1優先吹出モードと第2優先吹出モードの切替わりの変化や違和感を感じない、もしくは感じにくくなり、快適性の向上につながる。
【0043】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置が適用される車両の車室内最前部を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の車両用空調装置における高冷房負荷時モードおよび高暖房負荷時モードを説明する図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置における電気制御部を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置で用いられる送風機の目標送風量の制御マップを示す図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置における全身温熱感の推移を示すグラフである。
【図8】第2実施形態の車両用空調装置における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図10】第4実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図11】第5実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図12】第6実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図13】第7実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図14】第8実施形態の車両用空調装置における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第9実施形態の車両用空調装置における高暖房負荷時デフロスタモードを説明する図である。
【図16】第9実施形態の車両用空調装置における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第10実施形態の車両用空調装置における空調制御装置の制御処理を説明するタイムチャートである。
【図18】夏季における即冷効果の評価結果を示すグラフである。
【図19】第12実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図20】第13実施形態における第1、第2吹出口の目標吹出風量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態における車両用空調装置は、図1に示す空調ユニット10を備えている。空調ユニット10は、図2に示す車室内最前部のダッシュボード1の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機、冷却用熱交換器をなす蒸発器、加熱用熱交換器をなすヒータコア、温度調整手段をなすエアミックスドア(いずれも図示せず)等を収容したものである。
【0046】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の空気通路において送風空気が蒸発器やヒータコアを通過することで、所望温度の空調風が作り出される。
【0047】
ケーシング11内で作り出された空調風を空調対象空間である車室内へ吹き出すために、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には吹出開口部12〜17が設けられている。吹出開口部12〜17は、開閉機構18〜23により開閉される。
【0048】
本例では、吹出開口部12〜17としてデフロスタ開口部12、運転席側フェイス開口部13、助手席側フェイス開口部14、運転席側フット開口部15、助手席側フット開口部16、および後席側フット開口部17が設けられており、開閉機構18〜23としてデフロスタ開閉機構18、運転席側フェイス開閉機構19、助手席側フェイス開閉機構20、運転席側フット開閉機構21、助手席側フット開閉機構22および後席側フット開閉機構23が設けられている。
【0049】
開閉機構18〜23は、吹出モードを切り替える吹出モード切替手段を構成するものであって、例えば電動アクチュエータによって回転操作されるドア機構が用いられている。
【0050】
開閉機構18〜23は、ケーシング11内に設けられていてもよいし、ケーシング11外に設けられていてもよい。また、開閉機構18〜23は、アタッチメント構造になっていてもよい。
【0051】
デフロスタ開口部12には、樹脂製のデフロスタダクト24が接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口25から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0052】
運転席側フェイス開口部13には、樹脂製の運転席側フェイスダクト26が接続され、運転席側フェイスダクト先端部の運転席側フェイス吹出口27から運転席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0053】
助手席側フェイス開口部14には、樹脂製の助手席側フェイスダクト28が接続され、助手席側フェイスダクト先端部の助手席側フェイス吹出口29から助手席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0054】
運転席側フット開口部15には、樹脂製の運転席側フットダクト30が接続され、運転席側フットダクト先端部の運転席側フット吹出口31から運転席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0055】
助手席側フット開口部16には、樹脂製の助手席側フットダクト32が接続され、助手席側フットダクト先端部の助手席側フット吹出口33から助手席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0056】
後席側フット開口部17には、樹脂製の後席側フットダクト34が接続され、後席側フットダクト先端部の後席側フット吹出口35から後席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0057】
運転席側フットダクト30からは運転席側ニーダクト36が分岐しており、運転席側ニーダクト先端部の運転席側ニー吹出口37から運転席側の乗員の膝部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0058】
運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37は、運転席(特定座席)に対応して設けられた運転席側吹出口(特定座席側吹出口)であり、助手席側フェイス吹出口29、助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35は、運転席以外の座席(特定座席以外の座席)に対応して設けられた非運転席側吹出口(非特定座席側吹出口)である。
【0059】
助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35を、非運転席側フット吹出口と表現することもできる。したがって、助手席側フット開閉機構22および後席側フット開閉機構23を、非運転席側フット開閉機構と表現することもできる。
【0060】
助手席側フェイスダクト28、助手席側フットダクト32および後席側フットダクト34は、空調ユニット10から非運転席側吹出口(非特定座席側吹出口)に至る非運転席側ダクトである。
【0061】
開閉機構18〜23によって実行される吹出モードは、通常吹出モードと、1席集中モード(運転席優先吹出モード)とに大別される。
【0062】
通常吹出モードとしては、フェイス吹出口27、29から空調風を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口27、29とフット吹出口31、33、35とから空調風を吹き出すバイレベルモード、およびフット吹出口31、33、35から空調風を吹き出すフットモード等がある。
【0063】
1席集中モードとしては、上述のフェイスモード、バイレベルモードおよびフットモードに対して運転席側以外の吹出口29、33、35からの吹き出しを遮断する1席集中フェイスモード、1席集中バイレベルモードおよび1席集中フットモードがある。
【0064】
さらに、1席集中モードとして、図3(a)に示す高冷房負荷時モード、および図3(b)に示す高暖房負荷時モードがある。
【0065】
図3(a)に示す高冷房負荷時モードは、冷房負荷が極めて高い場合に実行され、1席集中バイレベルモードに対して運転席側フェイス吹出口(Face)27の風量割合(開度)を増加させる。
【0066】
図3(b)に示す高暖房負荷時モードは、暖房負荷が極めて高い場合に実行され、1席集中バイレベルモードに対して運転席側フット吹出口(Foot)31の風量割合(開度)を増加させる。なお、高冷房負荷時モードおよび高暖房負荷時モードでの吹出態様を、上述の1席集中バイレベルモードと同じにしてもよい。
【0067】
ここで、1席集中フェイスモードを冷房時第1優先吹出モード、高冷房負荷時モードを冷房時第2優先吹出モード、1席集中フットモードを暖房時第1優先吹出モード、高暖房負荷時モードを暖房時第2優先吹出モードと表現することができる。
【0068】
冷房時第1優先吹出モード(1席集中フェイスモード)は、冷房負荷が所定冷房負荷よりも低い場合に実行され、少なくとも運転席側のフェイス吹出口27(第1吹出口)から空調風が吹き出される。
【0069】
冷房時第2優先吹出モード(高冷房負荷時モード)は、冷房負荷が所定冷房負荷よりも高い場合に実行され、運転席側のニー吹出口37(Knee)およびフット吹出口31(Foot)のうち少なくとも一方の吹出口(第2吹出口)の開度が冷房時第1優先吹出モードに比べて大きくされる。
【0070】
暖房時第1優先吹出モード(1席集中フットモード)は、暖房負荷が所定暖房負荷よりも低い場合に実行され、少なくとも運転席側のフット吹出口31(第1吹出口)から空調風が吹き出される。
【0071】
暖房時第2優先吹出モード(高暖房負荷時モード)は、暖房負荷が所定暖房負荷よりも高い場合に実行され、運転席側のフェイス吹出口27およびニー吹出口37のうち少なくとも一方の吹出口(第2吹出口)の開度が暖房時第1優先吹出モードに比べて大きくされる。
【0072】
また、1席集中フェイスモードおよび1席集中フットモードを第1優先吹出モード、高冷房負荷時モードおよび高暖房負荷時モードを第2優先吹出モードと表現することもできる。
【0073】
第1優先吹出モードと第2優先吹出モードとの切り替えは、運転席側フェイス開閉機構19および運転席側フット開閉機構21によって行われるので、運転席側フェイス開閉機構19および運転席側フット開閉機構21を優先吹出モード切替手段と表現することもできる。
【0074】
本実施形態では、運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30から分岐しているので、運転席側ニー吹出口37からの吹き出しは運転席側フット吹出口31からの吹き出しと連動する。すなわち、運転席側フット開閉機構21が運転席側フット開口部15を開けると運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から空調風が吹き出され、運転席側フット開閉機構21が運転席側フット開口部15を閉じると運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの空調風の吹き出しが遮断される。
【0075】
図示を省略しているが、ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱が配置されている。内外気切替箱には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。内外気切替箱の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0076】
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)が配置されている。送風機は、空調ユニット10内の空気通路に空気流れを発生させる。この送風機は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御信号によって目標回転数、すなわち目標送風量が制御される。
【0077】
ケーシング11内において送風機の空気流れ下流側には蒸発器が配置されている。蒸発器は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する。蒸発器は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
【0078】
蒸発器の空気流れ下流側には、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路といった空気通路、並びに加熱用冷風通路および冷風バイパス通路から流出した空気を混合させる混合空間が形成されている。
【0079】
加熱用冷風通路には、蒸発器通過後の冷風を加熱するヒータコアが配置されている。ヒータコアは、車両走行用駆動力を出力するエンジンの冷却水と蒸発器通過後の冷風とを熱交換させて、蒸発器通過後の空気を加熱する。
【0080】
冷風バイパス通路は、蒸発器通過後の冷風を、ヒータコアを通過させることなく混合空間に導くための空気通路である。したがって、混合空間にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路を通過する空気および冷風バイパス通路を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0081】
蒸発器の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の入口側にはエアミックスドアが配置されている。エアミックスドアは、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させることによって、混合空間内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する。
【0082】
エアミックスドアは、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0083】
そして、混合空間から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、ケーシング11の送風空気流れ最下流部に、上述した吹出開口部12〜17が設けられている。
【0084】
次に、本実施形態の電気制御部を図4に基づいて説明する。制御手段をなす空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算・処理を行い、出力側に接続された送風機用電動モータ、各種電動アクチュエータ等の作動を制御する。したがって、空調制御装置40をエアコンECUと表現することもできる。
【0085】
空調制御装置40によって制御される電動アクチュエータとしては、例えば開閉機構18〜23を回転操作する電動アクチュエータ群41がある。
【0086】
空調制御装置40の出力側のうち送風機に対する出力について説明すると、空調制御装置40は、送風機用電動モータ42への供給電力を制御することで、送風機の目標送風量を制御する。具体的には、空調制御装置40は、電動モータ42を駆動する駆動回路(図示せず)に制御信号を出力して、駆動回路から電動モータ42に供給される電力を設定することで、電動モータ42の回転数を制御する。
【0087】
送風機の目標送風量は、図5に示す制御マップを用いて決定される。図5の横軸はTAO(目標吹出空気温度)であり、次の数式(1)により算出される。
【0088】
TAO=A*TSET−B*TR−C*TS−D*TAM+E …(1)
但し、A〜Eは車両毎の定数、TSETは空調設定温度、TRは車室内温度、TSは日射量、TAMは外気温度である。TAOは、空調負荷の度合いを示す指標でもある。
【0089】
図5の縦軸はブロワレベルである。ブロワレベルとは、送風機の目標送風量、すなわち電動モータ42の目標回転数に相当するものであり、電動モータへの供給電力に対応している。例えば、電動モータを電圧制御する場合、駆動回路が電動モータに印加する電圧値がブロワレベルに対応し、電動モータを電流制御する場合、電動モータのON時間とOFF時間の割合であるデューティー比がブロワレベルに対応する。
【0090】
図5に示す制御マップは、TAOに対してブロワレベルがいわゆるバスタブカーブを描く関係を有するものである。すなわち、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワレベルを最大値付近にして、送風機の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワレベルを減少して、送風機の風量を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワレベルを減少して、送風機の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワレベルを最小値にして送風機の風量を最小値にするようになっている。
【0091】
なお、図5のように、TAOの中間温度域を定常域、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)を極高負荷域(超過渡域)、中間温度域と極低温域との間、および中間温度域と極高温域との間を高負荷域(過渡域)と表現することができる。
【0092】
図5の例では、TAOの極高温域(最大暖房域)でのブロワレベルは、TAOの極低温域(最大冷房域)でのブロワレベルよりも若干低く設定されている。これは、最大冷房域では、吹出面積が比較的大きいフェイス吹出口27、29から空調風が吹き出されるのに対し、最大暖房域では、吹出面積が比較的小さいフット吹出口31、33から空調風が吹き出されるので、最大暖房域でのブロワレベルが最大冷房域でのブロワレベルと同じであると最大暖房域での送風音が大きくなって乗員が不快に感じてしまうからである。
【0093】
図4に示すように、空調制御装置40の入力側には、車室内温度TRを検出する車室内温度検出手段をなす内気センサ51、外気温度TAMを検出する外気温度検出手段をなす外気センサ52、車室内の日射量TSを検出する日射量検出手段をなす日射センサ53、蒸発器から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(冷風温度)TEを検出する冷風温度検出手段をなす蒸発器温度センサ54、エンジン冷却水温度TWを検出する冷却水温度検出手段をなす冷却水温度センサ55等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0094】
さらに、空調制御装置40の入力側には、車室内最前部のダッシュボード1に配置された空調操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。空調操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の作動スイッチ、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ、車両用空調装置の自動制御を設定・解除するオートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、内気導入と外気導入とを切り替える内外気切替スイッチ、吹出モードを切り替える吹出モードスイッチ、送風機の風量設定スイッチ、空調温度TSETを設定する空調温度設定スイッチ、デフロスタモードを設定するデフロスタスイッチ61等が設けられている。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口25から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出して車両前面窓ガラスの曇りを防止する吹出モードである。
【0095】
さらに、空調操作パネル60には、1席集中モードを設定する1席集中スイッチ62が設けられている。図2に、ダッシュボード1における1席集中スイッチ62の配置例を示す。
【0096】
図6は、空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。空調制御装置は、まずステップS100にて1席集中スイッチ62が押されているか否かを判定する。1席集中スイッチ62が押されていない(OFF時)と判定した場合(NO判定の場合)はステップS110へ進んで通常の吹出モード切替制御を実行する。通常の吹出モード切替制御では、TAO(目標吹出空気温度)を上述の数式(1)により算出し、算出したTAOに応じて上述のフェイスモード、バイレベルモードおよびフットモード(通常吹出モード)を切り替える。
【0097】
ステップS110において1席集中スイッチ62が押されている(ON時)と判定した場合(YES判定の場合)はステップS120へ進んでTAO(目標吹出空気温度)を上述の数式(1)により算出する。
【0098】
次いで、ステップS130にて冷房条件であるか否かをTAOに基づいて判定する。本例では、TAOが25℃以下の場合に冷房条件であると判定する。
【0099】
冷房条件であると判定した場合(YES判定の場合)はステップS140へ進んで冷房負荷が極めて高いか否かを判定する。冷房負荷が極めて高い状態とは、車室内環境が乗員が快適と感じる環境と大幅に乖離した暑い状態を言い、例えば夏の炎天下に車を放置した後に乗り込む時のような状態を言う。本例では、TAOが図5に示す最大冷房域(−20℃以下)の場合に冷房負荷が極めて高いと判定する。
【0100】
冷房負荷が極めて高くないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS150へ進み上述の1席集中フェイスモードを実行する。1席集中フェイスモードでは運転席側フェイス吹出口27から冷風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの冷風が運転席の乗員の上半身に集中する。このため、運転席の乗員の温熱感が早期に向上される。
【0101】
一方、ステップS140で冷房負荷が極めて高いと判定した場合(YES判定の場合)はステップS160へ進み上述の高冷房負荷時モードを実行する。高冷房負荷時モードでは、図3(a)に示すように運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から冷風が吹き出される。すなわち、運転席の乗員の上半身だけでなく下半身(膝部および足元部)にも冷風が吹き出される。
【0102】
このときのTAOは図5に示す最大冷房域(−20℃以下)にあるので、ブロワレベルが最大値付近に設定され、送風機の風量が最大風量付近に制御される。これにより、運転席の乗員の上半身および下半身(膝部および足元部)に対する吹出風量が十分に確保される。以上のことから、1席集中フェイスモードに比べて運転席の乗員の温熱感が更に早期に向上される。
【0103】
ステップS130で冷房条件でないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS170へ進んで暖房条件であるか否かを判定する。本例では、TAOが35℃以上の場合に暖房条件であると判定する。
【0104】
暖房条件であると判定された場合(YES判定の場合)は、ステップS180へ進んで暖房負荷が極めて高いか否かを判定する。暖房負荷が極めて高い状態とは、車室内環境が乗員が快適と感じる環境と大幅に乖離した寒い状態を言い、例えば冬の早朝に車室内に乗り込む時のような状態を言う。本例では、TAOが図5に示す最大冷房域(50℃以上)の場合に暖房負荷が極めて高いと判定する。
【0105】
暖房負荷が極めて高くないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS190へ進み上述の1席集中フットモードを実行する。1席集中フットモードでは運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から温風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの温風が運転席の乗員の下半身(膝部および足元部)に集中する。このため、運転席の乗員の温熱感が早期に向上される。
【0106】
一方、ステップS180で暖房負荷が極めて高いと判定した場合(YES判定の場合)はステップS200へ進み上述の高暖房負荷時モードを実行する。高暖房負荷時モードでは、図3(b)に示すように運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から冷風が吹き出される。すなわち、運転席の乗員の下半身(膝部および足元部)だけでなく上半身にも温風が吹き出される。
【0107】
このときのTAOは図5に示す最大暖房域(50℃以上)にあるので、ブロワレベルが最大値付近に設定され、送風機の風量が最大風量付近に制御される。これにより、運転席の乗員の上半身および下半身(膝部および足元部)に対する吹出風量が十分に確保される。以上のことから、1席集中フットモードに比べて、運転席の乗員の温熱感が更に早期に向上される。
【0108】
ステップS170で暖房条件でないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS1210へ進んで上述の1席集中バイレベルモードを実行する。このときのTAOは図5に示す過渡域または定常域にあるので、ブロワレベルは最大値付近よりも小さくされ、送風機の風量は最大風量付近よりも小さく制御される。
【0109】
本実施形態によると、空調負荷(冷房負荷・暖房負荷)が極めて高い場合に第2優先吹出モード(高冷房負荷時モード・高暖房負荷時モード)を実行することで乗員のほぼ全身を効果的に冷やすことができるので、乗員の温熱感を早期に向上することができる。
【0110】
すなわち、夏季の炎天下に車が放置された後で乗員が乗り込んだ際、乗員の温熱感は最も悪い。この時、高冷房負荷時モードを実行して運転席の乗員に空調風を集中することで温熱感の早期向上効果が望める。本実施形態では、運転席側フェイス吹出口27からの吹き出しだけでなく、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの吹き出しを追加することにより、乗員の顔周辺だけでなく、胴部より下半身を効果的に冷やすことができ、温熱感の早期向上効果を生む。
【0111】
図7(a)は、外気35℃、日射1kw/m2 の条件下でのクールダウン試験における全身温熱感の推移を示すグラフである。フェイスモードでは全身温熱感無感到達時間が11分であったが、本実施形態の高冷房負荷時モードでは、全身温熱感無感到達時間が6分になり、5分(約45%)の低減効果が得られた。
【0112】
この高冷房負荷時モードでの運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量は、運転席以外の吹出口をシャットしていることより、通常のフェイスモードでの当該風量と同等であるため、顔温熱感も通常のフェイスモードと同等である。
【0113】
ただし、運転席側ニー吹出口37もしくは運転席側フット吹出口31から冷風を出しすぎると、乗員の下半身が冷やされすぎて不快感を与える可能性がある。このため、ステップS140、S150のように冷房負荷が極めて高くない場合には1席集中フェイスモードに切り替えることで、乗員の快適性の悪化を防ぐことができる。
【0114】
ここで、本例では、高冷房負荷時モードと1席集中フェイスモードとの切り替えは、図5の制御マップにおける極高負荷域と高負荷域との境界(−20℃)において行われる。このため、高冷房負荷時モードでは送風機が最大風量付近になるので、高冷房負荷時モードに切り替えられて運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37の開度が1席集中フェイスモードに比べて大きくされても、運転席側フェイス吹出口27の吹出風量を十分に確保することができる。
【0115】
冬季も同様に、非常に寒いときには、運転席側フット吹出口31からの吹き出しだけでなく、高暖房負荷時モードを実行して運転席側フェイス吹出口27および運転席側ニー吹出口37からの吹き出しを追加することにより、乗員の足元部周辺のみでなく胴部より上半身を効果的に暖めることができ、温熱感の早期向上効果を生む。特に運転席側ニー吹出口37からの吹き出しは大腿部の温熱感向上に大きく寄与する。
【0116】
図7(b)は、外気−5℃、日射なしの条件下でのウォームアップ試験における全身温熱感の推移を示すグラフである。フットモードでは全身温熱感無感到達時間が25分であったが、本実施形態の高暖房負荷時モードでは、全身温熱感無感到達時間が18分になり、7分(約30%)の低減効果が得られた。
【0117】
この高暖房負荷時モードでの運転席側フット吹出口31からの吹出風量は、運転席以外の吹出口をシャットしていることより、通常のフットモードでの当該風量と同等であるため、足温熱感も通常のフットモードと同等である。
【0118】
ただし、運転席側フェイス吹出口27もしくは運転席側ニー吹出口37から温風を出しすぎると、乗員が火照りを感じ不快感を与える可能性がある。このため、ステップS180、S190のように暖房負荷が極めて高くない場合には1席集中フットモードに切り替えることで、乗員の快適性の悪化を防ぐことができる。
【0119】
ここで、高暖房負荷時モードと1席集中フットモードとの切り替えは、図5の制御マップにおける極高負荷域と高負荷域との境界(50℃)において行われる。このため、高暖房負荷時モードでは送風機が最大風量付近になるので、高暖房負荷時モードに切り替えられて運転席側フェイス吹出口27および運転席側ニー吹出口37の開度が1席集中フットモードに比べて大きくされても、運転席側フット吹出口31の吹出風量を十分に確保することができる。
【0120】
また、本実施形態では、ステップS130、S170のように夏、冬どちらにおいてもTAOで切替タイミングを判定することで、空調の設定温度、車室内温度、外気温度、日射の要素により判断できるため乗員の周りに新たなセンサ等をつけることなく快適な環境を作ることができる。
【0121】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、高冷房負荷時モードへの切替判断をTAOに基づいて行うが、本第2実施形態では、高冷房負荷時モードへの切替判断をTAO、蒸発器吹出空気温度TEおよび車室内温度TRに基づいて行う。
【0122】
図8は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。図8において、ステップS155以外は上述の図6と同じであるので説明を省略する。
【0123】
夏にTAOが極低温域(最大冷房域)であっても蒸発器吹出空気温度TEが非常に低くなっている場合には、吹出口からの吹出温度は低くなる。この時、乗員の下半身がより冷やされることとなり不快感を与える可能性がある。このため、ステップS155のように蒸発器吹出空気温度TEが所定温度未満(例えば15℃未満)の場合(NO判定の場合)は下半身の冷え過ぎを防止するために1席集中フェイスモードに移行する。
【0124】
同様に、TAOが極低温域(最大冷房域)であっても車室内温度TRがある程度快適温度に近いと乗員の温熱感の感じ方としては定常に近いため、下半身の冷えが不快感に繋がる可能性がある。このため、ステップS155のように車室内温度TRが所定温度未満(40℃未満)の場合(NO判定の場合)は1席集中フェイスモードに移行する。
【0125】
なお、蒸発器吹出空気温度TEおよび車室内温度TRのみならず、吹出口からの実際の吹出温度に基づいて高冷房負荷時モードへの切替判断を行ってもよい。
【0126】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態では、高冷房負荷時モード時に助手席側フェイス吹出口29および助手席側フット吹出口33からの吹き出しを遮断するが、本第3実施形態では、図9に示すように、高冷房負荷時モード時に助手席側フェイス吹出口29および助手席側フット吹出口33のうち少なくとも特定の1つの吹出口から冷風を吹き出すようにする。
【0127】
図9(a)の例では、高冷房負荷時モード時に助手席側フェイス吹出口29から冷風を吹き出すようにする。図9(b)の例のように、高冷房負荷時モード時に助手席側フット吹出口33から冷風を吹き出すようにしてもよい。図9(c)の例のように、高冷房負荷時モード時に助手席側フェイス吹出口29および助手席側フット吹出口33の両方から冷風を吹き出すようにしてもよい。
【0128】
これにより、助手席側空間の空気温度をある程度低減することができるので、助手席側空間の熱の影響を緩和する効果が得られる。また、内気吸込み温度を低減する効果も得られる。
【0129】
(第4実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30から分岐しているが、本第3実施形態では、図10に示すように運転席側ニーダクト36が運転席側フェイスダクト26から分岐している。そして、高冷房負荷時モード時には、運転席側フェイス吹出口27および運転席側ニー吹出口37から冷風を吹き出し、運転席側フット吹出口31からの吹き出しを遮断するようにする。
【0130】
図10(a)の例では、2本の運転席側ニーダクト36が運転席側フェイスダクト26から分岐している。図10(b)の例のように、運転席側ニーダクト36が、運転席側フェイスダクト26のうちケーシング11側(車室幅方向中央側)の部位から分岐していてもよい。図10(c)の例のように、運転席側ニーダクト36が、運転席側フェイスダクト26のうちケーシング11と反対側(車室幅方向外側)の部位から分岐していてもよい。
【0131】
これによると、1席集中フェイスモードと高冷房負荷時モードとで運転席側フット開閉機構21を切り替える必要がないので、制御の簡素化を図ることができる。また、高冷房負荷時モード時に運転席側フット吹出口31からの吹き出しをなくすことができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0132】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、図11に示すように、上記第1〜第4実施形態に対して、運転席側ニーダクト36の分岐部に運転席側ニー開閉機構38が追加されている。運転席側ニー開閉機構38は、運転席側ニー吹出口37の開度を調整する調整機構である。
【0133】
図11(a)〜(c)は、上記第4実施形態のように運転席側ニーダクト36が運転席側フェイスダクト26から分岐している場合において運転席側ニー開閉機構38が追加された例を示している。図11(d)は、上記第1〜第3実施形態のように運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30から分岐している場合において運転席側ニー開閉機構38が追加された例を示している。
【0134】
これによると、運転席側ニー開閉機構38により、運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を調整することができるので、快適性を向上させることができる。例えば、運転席側ニー吹出口37から空調風を吹き出すモードと、運転席側ニー吹出口37から空調風を吹き出さないモードとを切り替える際に運転席側ニー吹出口37の開度(風量割合)を徐々に(例えば段階的もしくは線形的に)変更するようにすれば、運転席側ニー吹出口37の吹出風量が急激に変化して乗員が違和感を感じることを抑制できる。
【0135】
(第6実施形態)
上記第1〜第5実施形態では、運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30または運転席側フェイスダクト26から分岐しているが、本第6実施形態では、図12に示すように運転席側ニーダクト36が助手席側フェイスダクト28、助手席側フットダクト32および後席側フットダクト34のいずれかから分岐している。さらに、運転席側ニーダクト36の分岐部に運転席側ニー開閉機構38が設けられている。
【0136】
図12(a)の例では、運転席側ニーダクト36が助手席側フェイスダクト28から分岐している。図12(b)の例のように、運転席側ニーダクト36が助手席側フットダクト32から分岐していてもよい。図12(c)の例のように、運転席側ニーダクト36が後席側フットダクト34から分岐していてもよい。
【0137】
これによると、上記第1〜第5実施形態のように運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30または運転席側フェイスダクト26から分岐している場合と比較して運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を増加させることができるので、運転席の乗員の温熱感が更に早期に向上される。
【0138】
また、上記第5実施形態と同様に、運転席側ニー開閉機構38により、運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を調整することができるので、快適性を向上させることができる。
【0139】
(第7実施形態)
本第7実施形態は、高冷房負荷時モードにおける運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量を十分に確保する手法に関するものである。
【0140】
上記各実施形態において、1席集中フェイスモードでは運転席側フェイス吹出口27以外の吹出口からの吹き出しが遮断されるが、高冷房負荷時モードでは運転席側フェイス吹出口27以外の吹出口からも空調風が吹き出される。このため、各吹出口の風量割合によっては、高冷房負荷時モードに切り替えると運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量を十分に確保できないことが起こり得る。
【0141】
例えば、送風機の風量が200m3 /hの場合、図13(a)に示すフェイスモードでは運転席側フェイス吹出口27および助手席側フェイス吹出口29の吹出風量はそれぞれ100m3 /hとなる。
【0142】
ここで、バイレベルモードにおけるフェイス吹出口27、29と、運転席側フット吹出口31等の運転席側フェイス吹出口27以外の吹出口との風量割合が4:6である場合を考える。この場合において、図13(b)に示すようにバイレベルモード時に助手席側フェイス吹出口29からの吹き出しを遮断すると、運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量が増加して40+40=80m3 /hとなるが、フェイスモード時の運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量:100m3 /hよりも少なくなってしまう。
【0143】
そこで、図13(c)に示すようにバイレベルモードにおけるフェイス吹出口27、29と、運転席側フット吹出口31等の運転席側フェイス吹出口27以外の吹出口との風量割合を6:4とすることで、運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量は60+60=120m3 /hとなり、フェイスモード時の運転席側フェイス吹出口27からの吹出風量:100m3 /hを下回ることを回避できる。
【0144】
(第8実施形態)
本第8実施形態は、高暖房負荷時における防曇制御に関するものである。図14は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。図14において、ステップS195、S205以外は上述の図6と同じであるので説明を省略する。
【0145】
本実施形態では、ステップS180で暖房負荷が極めて高いと判定した場合(YES判定の場合)はステップS195へ進み、空調操作パネル60に設けられたデフロスタスイッチ61が押されているか否かを判定する。
【0146】
デフロスタスイッチ61が押されていないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS200へ進み上述の高暖房負荷時モードを実行する。デフロスタスイッチ61が押されていると判定した場合(YES判定の場合)はステップS205へ進み上述のデフロスタモードを実行する。
【0147】
本実施形態によると、高暖房負荷時であってもデフロスタスイッチ61が押されたら(車両前面窓ガラスの曇り防止が要求されたら)速やかに高暖房負荷時モードからデフロスタモードに切り替えてデフロスタ吹出口25から空調風を吹き出す(デフロスタ吹出口25の開度を高暖房負荷時モードに比べて大きくする)ので、乗員の温熱感よりも車両走行時の安全性を優先して車両前面窓ガラスの曇りを防止することができる。
【0148】
換言すれば、高暖房負荷時であっても車両前面窓ガラスの曇り防止が要求されたらデフロスタ吹出口25の開度を高暖房負荷時モードに比べて大きくするので、乗員の温熱感よりも車両走行時の安全性を優先して車両前面窓ガラスの曇りを防止することができる。
【0149】
(第9実施形態)
上記第8実施形態では、高暖房負荷時にデフロスタスイッチ61が押されたら速やかに高暖房負荷時モードからデフロスタモードに切り替えるが、本第9実施形態では、高暖房負荷時に窓曇りの危険ありと判断されたら高暖房負荷時モードから図15に示す高暖房負荷時デフロスタモードに切り替える。
【0150】
高暖房負荷時デフロスタモードでは、運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37に加えて、デフロスタ吹出口25および助手席側フェイス吹出口29からも空調風を吹き出す。デフロスタ吹出口25から空調風を吹き出すことにより車両前面窓ガラスの曇りを防止できる。助手席側フェイス吹出口29から空調風を吹き出すことにより助手席窓ガラスの曇りを防止できる。
【0151】
このとき、運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの吹出風量が減少しないよう、送風機の風量を増加させる。
【0152】
図16は、本実施形態における空調制御装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。図16において、ステップS197、S207、S208以外は上述の図6と同じであるので説明を省略する。
【0153】
本実施形態では、ステップS180で暖房負荷が極めて高いと判定した場合(YES判定の場合)はステップS197へ進み、窓曇り危険度が高いか否かを判定する。本例では、車両前面窓ガラスに湿度センサを設け、湿度センサの検出結果に基づいて窓曇り度合いを演算し、窓曇り度合いに基づいて窓曇り危険度を判定する。また、日射、外気温、内気音、車速、目標吹出空気温度、ブロワレベルおよび吹出モードのうちいずれかの値を用いて窓曇り危険度を判定してもよい。
【0154】
窓曇り危険度が高くないと判定した場合(NO判定の場合)はステップS200へ進み上述の高暖房負荷時モードを実行する。窓曇り危険度が高いと判定した場合(YES判定の場合)はステップS207へ進み上述の高暖房負荷時デフロスタモードを実行する。
【0155】
次いで、ステップS208にて、ブロワレベルを増加補正する。すなわち、上述した図5の制御マップでは最大暖房域(すなわち高暖房負荷時)でのブロワレベルが最大冷房域でのブロワレベルよりも若干低く設定されているので、ブロワレベルを最大冷房域と同等のレベルまで引き上げる。
【0156】
これによると、高暖房負荷時であっても、窓曇りの危険ありと判断された場合(車両前面窓ガラスの曇り防止が要求される場合)には高暖房負荷時モードから高暖房負荷時デフロスタモードに切り替えて窓曇りを防止することができる。すなわち、乗員の温熱感よりも車両走行時の安全性を優先することができる。
【0157】
これと同時にブロワレベルを増加補正して送風機の風量を増加させるので、高暖房負荷時モードから高暖房負荷時デフロスタモードに切り替えても運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの吹出風量の減少を抑制できる。
【0158】
(第10実施形態)
本第10実施形態は、高暖房負荷時モードに切り替える際における運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの吹き出しの始め方に関するものである。
【0159】
図17(a)〜(c)に示すように、本実施形態では、高暖房負荷時モードに切り替える際に運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から同時に吹き出し始めるのではなく、温熱感を感じやすい上半身から足元部へと暖めるために運転席側フェイス吹出口27→運転席側ニー吹出口37→運転席側フット吹出口31の順に本吹き出しを始める。
【0160】
さらに、本実施形態では、運転席側フェイス吹出口27からの吹き出し始めのときに運転席側ニー吹出口37および運転席側フット吹出口31から少しだけ温風を吹き出すことより、運転席側ニーダクト36および運転席側フットダクト30に溜まっている冷気を先に追い出し、運転席側ニー吹出口37および運転席側フット吹出口31の本吹き出しを実施した時、乗員に対しすぐ温風が到達するという効果も得られる。
【0161】
本実施形態によると、図17(d)に示すように、フェイス・ニー・フット同時吹き出しの場合と比較して全身温熱感を早期に向上させることができる。
【0162】
(第11実施形態)
本第11実施形態は、乗員快適感の早期向上効果を一層増大させるものである。まず、乗員快適感の早期向上効果について本発明者が得た知見を説明する。
【0163】
図18は、夏季における即冷効果(温熱感の早期向上効果)の評価結果を示すものである。図18(a)からわかるように、夏季は、KNEE風量(運転席側ニー吹出口37の吹き出し風量)を増やす程、上半身の温度が低下する。
【0164】
図18(b)からわかるように、夏季は、KNEE風量が0m3 /hの場合、FACE風量(運転席側フェイス吹出口27の吹き出し風量)が約200m3 /hを超えると、FACE風量を増やしても上半身無感到達時間はほとんど低減されない。これは、FACE風量を約200m3 /h以上に増やしても、顔部に当てた風が後方に抜けるだけで乗員の快適感にあまり寄与しないからである。
【0165】
これに対し、図18(c)からわかるように、夏季は、FACE風量が200m3 /hの場合、KNEE風量を約60m3 /hに増やすと上半身無感到達時間が低減される。これは、腹部に風が当たることによって乗員の快適感が向上するからである。
【0166】
すなわち、夏季においては、乗員の快適感に対して胸部、顔部の寄与度が高く、下腿部の寄与度が低いので、KNEE風量を増やす程、上半身の温度が低下して、上半身無感到達時間が低減されることがわかった。
【0167】
一方、冬季においては、乗員の快適感に対して胸部、下腿部の寄与度が高く、顔部の寄与度が低いので、FOOT風量(運転席側フット吹出口31の吹き出し風量)を増やす程、乗員の下腿部の温度が低下して、上半身無感到達時間が低減されることがわかった。
【0168】
以上の知見に基づき、本実施形態では、夏季にはFACE風量割合およびKNEE風量割合を高くすることで胸部、顔部を早期に冷やして全身温感の早期向上を図り、冬季にはFOOT風量割合およびKNEE風量割合を高くすることで胸部、下腿部を早期に暖めて全身温感の早期向上を図る。
【0169】
具体的には、図11に示す第5実施形態のように運転席側ニー開閉機構38を備えるものにおいて、冷房時第2優先吹出モードでは、運転席側フェイス吹出口27の風量割合rFACE、運転席側フット吹出口31の風量割合rFOOT、および運転席側ニー吹出口37の風量割合rKNEEが、rFACE>rKNEE>rFOOTの関係を満たすようにする。
【0170】
また、暖房時第2優先吹出モードでは、運転席側ニー吹出口37の風量割合rKNEEが、運転席側フェイス吹出口27の風量割合rFACE、および運転席側フット吹出口31の風量割合rFOOTよりも小さくなるようにする。
【0171】
このような各風量割合rFACE、rFOOT、rKNEEの調整は、運転席側ニー開閉機構38、運転席側フェイス開閉機構19および運転席側フット開閉機構21により行うことができる。
【0172】
本実施形態によると、冷房時第2優先吹出モードおよび暖房時第2優先吹出モードにおいて各風量割合rFACE、rFOOT、rKNEEを適切化して、乗員快適感の早期向上効果を一層増大させることができる。
【0173】
(第12実施形態)
本実施形態は、KNEE吹き出し温度(運転席側ニーダクト36の吹き出し温度)を適切化するものである。
【0174】
夏季において、KNEE吹き出し温度がFACE吹き出し温度(運転席側フェイス吹出口27の吹き出し温度)と同じであると、乗員の膝部が冷えすぎて快適感が損なわれることが起こり得る。
【0175】
また、冬季において、KNEE吹き出し温度がFOOT吹き出し温度(運転席側フット吹出口31の吹き出し温度)と同じであると、乗員の膝部が暖められすぎるとともに、膝部から顔部に上昇する温風によって顔部周りに「もやつき感」が発生して快適感が損なわれることが起こり得る。
【0176】
この点に鑑みて、本実施形態では、夏季はKNEE吹き出し温度をFACE吹き出し温度よりも高くし、冬季はKNEE吹き出し温度をFOOT吹き出し温度よりも低くする。
【0177】
具体的には、図19(a)、(b)に示すように、運転席側フェイスダクト26から分岐したフェイス分岐ダクト40と、運転席側フットダクト30から分岐したフット分岐ダクト41とを備え、運転席側ニーダクト36が、フェイス分岐ダクト40およびフット分岐ダクト41の下流側に接続されている。
【0178】
図19(a)、(b)の例では、フェイス分岐ダクト40およびフット分岐ダクト41と運転席側ニーダクト36との接続部では、各ダクト40、41、36が互いに平行になっているとともに、フェイス分岐ダクト40とフット分岐ダクト41とが互いに隣接している。
【0179】
図19(a)は、通常のフェイスモードおよび1席集中フェイスモードにおける作動を示している。通常のフェイスモードおよび1席集中フェイスモードでは、運転席側フェイス開閉機構19が運転席側フェイス開口部13を開け、運転席側フット開閉機構21が運転席側フット開口部15を閉じる。
【0180】
したがって、運転席側フェイス開口部13から運転席側フェイスダクト26へ空調風が流入し、運転席側フット開口部15から運転席側フットダクト30へは空調風が流入しない。
【0181】
フェイス分岐ダクト40は、運転席側フェイス開口部13からの空調風を、運転席側フェイスダクト26から運転席側ニーダクト36へ分岐させるために十分な通風抵抗とダクト形状をもっている。そのため、運転席側フェイス開口部13からの空調風が運転席側フェイスダクト26からフェイス分岐ダクト40に分岐し、運転席側ニーダクト36に流入する。
【0182】
一方、フット分岐ダクト41は、フェイス分岐ダクト40から運転席側ニーダクト36に流入した空調風が運転席側フットダクト30へ逆流することを防ぐために十分な通風抵抗とダクト形状をもっている。そのため、車室内の空気がフット分岐ダクト41および運転席側フットダクト30を通じて運転席側ニーダクト36の流れに巻き込まれる。
【0183】
その結果、KNEE吹き出し温度が、運転席側フェイス開口部13からの空調風温度(FACE吹き出し温度)と車室内の空気温度との中間温度になるので、KNEE吹き出し温度をFACE吹き出し温度よりも高くすることができる。よって、乗員の膝部の冷え過ぎを抑制して快適感を向上できる。
【0184】
図19(b)は、通常のフットモードおよび1席集中フットモードにおける作動を示している。通常のフットモードおよび1席集中フットモードでは、運転席側フェイス開閉機構19が運転席側フェイス開口部13を閉じ、運転席側フット開閉機構21が運転席側フット開口部15を開ける。
【0185】
したがって、運転席側フェイス開口部13から運転席側フェイスダクト26へは空調風が流入せず、運転席側フット開口部15から運転席側フットダクト30へ空調風が流入する。
【0186】
フット分岐ダクト41は、運転席側フット開口部15からの空調風を、運転席側フットダクト30から運転席側ニーダクト36へ分岐させるために十分な通風抵抗とダクト形状をもっている。そのため、運転席側フット開口部15からの空調風が運転席側フット開口部15からフット分岐ダクト41に分岐し、運転席側ニーダクト36に流入する。
【0187】
一方、フェイス分岐ダクト40は、フット分岐ダクト41から運転席側ニーダクト36に流入した空調風が運転席側フェイスダクト26へ逆流することを防ぐために十分な通風抵抗とダクト形状をもっている。そのため、車室内の空気がフェイス分岐ダクト40および運転席側フェイスダクト26を通じて運転席側ニーダクト36の流れに巻き込まれる。
【0188】
その結果、KNEE吹き出し温度が、運転席側フットダクト30からの空調風温度(FOOT吹き出し温度)と車室内の空気温度との中間温度になるので、KNEE吹き出し温度をFOOT吹き出し温度よりも低くすることができる。よって、乗員の膝部の暖め過ぎを抑制するとともに、膝部から顔部への温風上昇による「顔部周りもやつき感」を抑制して快適感を向上できる。
【0189】
(第13実施形態)
本第13実施形態は、第1優先モードと第2優先モードとの切り替わりの際における各吹出口の吹き出し風量を好適化するものである。
【0190】
図20は、本実施形態における第1、第2吹出口の目標吹出風量を示すグラフである。すなわち、第1優先モード(通常1席モード)と第2優先モード(即効1席モード)との切り替わりの際に、第2吹出口(夏季は運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37、冬季は運転席側フェイス吹出口27および運転席側ニー吹出口37)の吹き出し風量をTAO(空調負荷)や人体表面温度等に応じて徐々に変化させることを目標とする。
【0191】
第2吹出口の目標吹出風量を得るために、例えば運転席側フェイス開閉機構19、運転席側フット開閉機構21および運転席側ニー開閉機構38で、運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37の開度を、TAO(空調負荷)や人体表面温度等に応じて徐々に調整する。
【0192】
このとき、ブロワレベルが一定である場合には、第1吹出口(夏季は運転席側フェイス吹出口27、冬季は運転席側フット吹出口31)の吹き出し風量が第2吹出口の吹き出し風量と反対に変化する。具体的には、第2吹出口の吹き出し風量を減少させると第1吹出口の吹き出し風量が増加し、第2吹出口の吹き出し風量を増加させると第1吹出口の吹き出し風量が減少する。
【0193】
このような第1吹出口の吹き出し風量の変化を抑制するために、ブロワレベルを補正する。具体的には、第2吹出口の吹き出し風量を減少させる場合にはブロワレベルを減少補正することによって第1吹出口の吹き出し風量の増加を抑制し、第2吹出口の吹き出し風量を増加させる場合にはブロワレベルを増加補正することによって第1吹出口の吹き出し風量の減少を抑制する。
【0194】
以上のような吹出口開度調整およびブロワレベル補正を行うことによって、図20に示す目標吹出風量を得ることができるので、第1優先モードと第2優先モードとの切り替わりの際に第2吹出口の吹き出し風量が急変することを抑制でき、ひいては快適性を一層向上させることができる。
【0195】
(第14実施形態)
上記各実施形態では、第1優先モードと第2優先モードとをTAOに基づいて切り替えるが、本第14実施形態では、車両用空調装置の作動開始直後の場合、第2優先モードから第1優先モードへの切り替えを時間(タイマー)で行う。
【0196】
第2優先モードから第1優先モードへの切り替え時間は、車両用空調装置の作動開始直後に算出したTAO(初期のTAO)の値に基づいて決定される。具体的には、夏季は、初期のTAOの値が小さい(冷房負荷が高い)程、冷房時第2優先モードから冷房時第1優先モードへの切り替え時間を長くする。また、冬季は、初期のTAOの値が大きい(暖房負荷が高い)程、暖房時第2優先モードから暖房時第1優先モードへの切り替え時間を長くする。
【0197】
これにより、車両用空調装置の作動開始直後の空調負荷が高いほど第2優先モードの実行期間を長くすることができるので、快適性を一層向上させることができる。
【0198】
なお、次回以降の第1、第2優先モードの切り替えについては、上記各実施形態と同様にTAOに基づいて行えばよい。
【0199】
(第15実施形態)
上記各実施形態では、第1、第2優先モードの切り替えを自動的に行うが、本第15実施形態では、第1、第2優先モードの切り替えを乗員の要求に応じて行う。
【0200】
具体的には、乗員により、空調操作パネル60に設けられた快適優先スイッチ(図示せず)が押された時や、空調温度設定スイッチが空調温度TSETの最高値(MAX HOT)または最低値(MAX COOL)に操作された時等に第2優先モードを行い、それ以外の通常時は第1優先モードを行う。
【0201】
これにより、第1、第2優先モードの切り替えを自動的に行うのみならず、乗員の要求に応じて切り替えることもできるので、快適性を一層向上させることができる。
【0202】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、1席集中フェイスモード、1席集中バイレベルモードおよび1席集中フットモードにおいて運転席側以外の吹出口29、33、35からの吹き出しを遮断するが、1席集中フェイスモード、1席集中バイレベルモードおよび1席集中フットモードにおいて運転席側以外の吹出口29、33、35を必ずしも遮断する必要はなく、運転席側以外の吹出口29、33、35から空調風を少量吹き出すようにしてもよい。
【0203】
すなわち、1席集中モードでは、運転席以外の座席用の吹出口29、33、35の開度が通常吹出モードに比べて小さくされるようになっていればよい。
【0204】
また、1席集中フェイスモードにおいて運転席側フェイス吹出口27以外の吹出口から空調風を少量吹き出すようにしてもよく、1席集中フットモードにおいても運転席側フット吹出口31以外の吹出口から空調風を少量吹き出すようにしてもよい。
【0205】
すなわち、高冷房負荷時モードでは、運転席側フェイス吹出口27以外の運転席側吹出口31、37のうち少なくとも1つの吹出口の開度が1席集中フェイスモードに比べて大きくされるようになっていればよく、高暖房負荷時モードでは、運転席側フット吹出口31以外の運転席側吹出口27、37のうち少なくとも1つの吹出口の開度が1席集中フットモードに比べて大きくされるようになっていればよい。
【符号の説明】
【0206】
10 空調ユニット
19 運転席側フェイス開閉機構(優先吹出モード切替手段)
20 助手席側フェイス開閉機構(吹出モード切替手段)
21 運転席側フット開閉機構(優先吹出モード切替手段)
22 助手席側フット開閉機構(吹出モード切替手段、非運転席側フット開閉機構)
23 後席側フット開閉機構(吹出モード切替手段、非運転席側フット開閉機構)
25 デフロスタ吹出口
26 運転席側フェイスダクト
27 運転席側フェイス吹出口(運転席側吹出口)
28 助手席側フェイスダクト(非運転席側ダクト)
29 助手席側フェイス吹出口(非運転席側吹出口)
30 運転席側フットダクト
31 運転席側フット吹出口(運転席側吹出口)
32 助手席側フットダクト(非運転席側ダクト)
33 助手席側フット吹出口(非運転席側吹出口、非運転席側フット吹出口)
34 後席側フットダクト(非運転席側ダクト)
35 後席側フット吹出口(非運転席側吹出口、非運転席側フット吹出口)
36 運転席側ニーダクト
37 運転席側ニー吹出口(運転席側吹出口)
38 運転席側ニー開閉機構(調整機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に対応して設けられた運転席側吹出口(27、31、37)と、
運転席以外の座席に対応して設けられた非運転席側吹出口(29、33、35)と、
前記運転席側吹出口(27、31、37)および前記非運転席側吹出口(29、33、35)から吹き出される空調風を作り出す空調ユニット(10)と、
前記運転席側吹出口(27、31、37)および前記非運転席側吹出口(29、33、35)から前記空調風が吹き出される通常吹出モードと、前記通常吹出モードに比べて前記非運転席側吹出口(29、33、35)の開度が小さくされる運転席優先吹出モードとを切り替える吹出モード切替手段(20、22、23)と、
前記吹出モード切替手段(20、22、23)を制御する制御手段(40)とを備え、
前記運転席側吹出口(27、31、37)は第1吹出口と第2吹出口とを含み、
前記運転席優先吹出モードは、前記空調風が少なくとも前記第1吹出口から吹き出される第1優先吹出モードと、前記第1優先吹出モードに比べて前記第2吹出口の開度が大きくされる第2優先吹出モードとを含み、
さらに、前記第1優先吹出モードと前記第2優先吹出モードとを切り替える優先吹出モード切替手段(19、21)を備え、
前記制御手段(40)は、前記運転席優先吹出モードにおいて、空調負荷が所定負荷よりも低い場合には前記第1優先吹出モードが実行され、前記空調負荷が前記所定負荷よりも高い場合には前記第2優先吹出モードが実行されるように前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、前記運転席の乗員の上半身に対応して設けられた運転席側フェイス吹出口(27)、前記運転席の乗員の膝部に対応して設けられた運転席側ニー吹出口(37)、および前記運転席の乗員の足元部に対応して設けられた運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも2つの吹出口を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、
前記運転席側フェイス吹出口(27)と、
前記運転席側ニー吹出口(37)および前記運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも一方の吹出口とを備え、
前記空調負荷が冷房負荷であるときには、
前記運転席側フェイス吹出口(27)が前記第1吹出口となり、
前記運転席側ニー吹出口(37)および前記運転席側フット吹出口(31)のうち少なくとも一方の吹出口が前記第2吹出口となり、
前記制御手段(40)は、前記所定負荷として所定冷房負荷を用いて前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記非運転席側吹出口(29、33、35)として、助手席の乗員の上半身に対応して設けられた助手席側フェイス吹出口(29)を少なくとも備え、
前記吹出モード切替手段(20、22、23)として、前記助手席側フェイス吹出口(29)の開度を調整する助手席側フェイス開閉機構(20)を少なくとも備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調ユニット(10)は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記冷却用熱交換器通過後の冷風温度(TE)を検出する冷風温度検出手段とを有し、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記制御手段(40)は、前記運転席優先吹出モードにおいて、前記冷房負荷が前記所定冷房負荷よりも高い場合であっても、前記冷風温度検出手段によって検出された前記冷風温度(TE)が所定温度よりも低い場合には前記冷房時第2優先吹出モードに代えて前記冷房時第1優先吹出モードが実行されるように前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車室内温度(TR)を検出する車室内温度検出手段を備え、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記制御手段(40)は、前記運転席優先吹出モードにおいて、前記冷房負荷が前記所定冷房負荷よりも高い場合であっても、前記車室内温度検出手段によって検出された前記車室内温度(TR)が所定温度よりも低い場合には前記冷房時第2優先吹出モードに代えて前記冷房時第1優先吹出モードが実行されるように前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記空調ユニット(10)内の空気通路に空気流れを発生させる送風機を備え、
前記制御手段(40)は、前記冷房負荷の極高負荷域で前記送風機の目標送風量を最大風量にし、前記冷房負荷の高負荷域では前記冷房負荷の低下に応じて前記目標送風量を減少させ、
前記所定冷房負荷は、前記極高負荷域と前記高負荷域との境界における負荷であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、
前記運転席側フェイス吹出口(27)、前記運転席側ニー吹出口(37)および前記運転席側フット吹出口(31)を備え、
前記空調負荷が冷房負荷であるときには、前記運転席側フェイス吹出口(27)が前記第1吹出口となり、前記運転席側ニー吹出口(37)および前記運転席側フット吹出口(31)が前記第2吹出口となり、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを冷房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記冷房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを冷房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記冷房時第2優先吹出モードでは、前記運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、前記運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOT、および前記運転席側ニー吹出口(37)の風量割合rKNEEが、rFACE>rKNEE>rFOOTの関係を満たすことを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、
前記運転席側フット吹出口(31)と、
前記運転席側フェイス吹出口(27)および前記運転席側ニー吹出口(37)のうち少なくとも一方の吹出口とを備え、
前記空調負荷が暖房負荷であるときには、
前記運転席側フット吹出口(31)が前記第1吹出口となり、
前記運転席側フェイス吹出口(27)および前記運転席側ニー吹出口(37)のうち少なくとも一方の吹出口が前記第2吹出口となり、
前記制御手段(40)は、前記所定負荷として所定暖房負荷を用いて前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記非運転席側吹出口(29、33、35)として、前記運転席以外の座席の乗員の足元部に対応して設けられた非運転席側フット吹出口(33、35)を少なくとも備え、
前記吹出モード切替手段(20、22、23)として、前記非運転席側フット吹出口(33、35)の開度を調整する非運転席側フット開閉機構(22、23)を少なくとも備えることを特徴とする請求項9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
車両前面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(25)と、
前記デフロスタ吹出口(25)の開度を調整するデフロスタ開閉機構(18)とを備え、
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記制御手段(40)は、前記運転席優先吹出モードにおいて、前記暖房負荷が前記所定暖房負荷よりも高く且つ前記車両前面窓ガラスの曇り防止が要求される場合には、前記デフロスタ吹出口(25)の開度が前記暖房時第2優先吹出モードに比べて大きくなるように前記デフロスタ開閉機構(18)を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記制御手段(40)は、前記暖房時第1優先吹出モードから前記暖房時第2優先吹出モードに切り替える際に、前記運転席側フェイス吹出口(27)、前記運転席側ニー吹出口(37)、前記運転席側フット吹出口(31)の順に前記空調風が吹き出されるように前記優先吹出モード切替手段(19、21)を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記空調ユニット(10)内の空気通路に空気流れを発生させる送風機を備え、
前記制御手段(40)は、前記暖房負荷の極高負荷域で前記送風機の目標送風量を最大風量にし、前記暖房負荷の高負荷域では前記暖房負荷の低下に応じて前記目標送風量を減少させ、
前記所定暖房負荷は、前記極高負荷域と前記高負荷域との境界における負荷であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、
前記運転席側フェイス吹出口(27)、前記運転席側ニー吹出口(37)および前記運転席側フット吹出口(31)を備え、
前記空調負荷が暖房負荷であるときには、前記運転席側フット吹出口(31)が前記第1吹出口となり、前記運転席側フェイス吹出口(27)および前記運転席側ニー吹出口(37)が前記第2吹出口となり、
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第1優先吹出モードを暖房時第1優先吹出モードとし、
前記空調負荷が前記暖房負荷であるときの前記第2優先吹出モードを暖房時第2優先吹出モードとしたとき、
前記暖房時第2優先吹出モードでは、前記運転席側ニー吹出口(37)の風量割合rKNEEが、前記運転席側フェイス吹出口(27)の風量割合rFACE、および前記運転席側フット吹出口(31)の風量割合rFOOTよりも小さくなることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記運転席側吹出口(27、31、37)として、前記運転席側フェイス吹出口(27)、前記運転席側フット吹出口(31)および前記運転席側ニー吹出口(37)を備え、
前記空調ユニット(10)から前記運転席側フェイス吹出口(27)に至る運転席側フェイスダクト(26)と、
前記空調ユニット(10)から前記運転席側フット吹出口(31)に至る運転席側フットダクト(30)と、
前記空調ユニット(10)から前記非運転席側吹出口(29、33、35)に至る非運転席側ダクト(28、32、34)と、
前記運転席側フェイスダクト(26)、前記運転席側フットダクト(30)または前記非運転席側ダクト(28、32、34)から分岐して前記運転席側ニー吹出口(37)に至る運転席側ニーダクト(36)とを備えることを特徴とする請求項2ないし14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記運転席側フェイスダクト(26)、前記運転席側フットダクト(30)または前記非運転席側ダクト(28、32、34)における前記運転席側ニーダクト(36)の分岐部に設けられ、前記運転席側ニー吹出口(37)の開度を調整する調整機構(38)を備えることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記吹出モード切替手段(20、22、23)は、前記空調ユニット(10)の内部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記吹出モード切替手段(20、22、23)は、前記空調ユニット(10)の外部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記第1優先吹出モードと前記第2優先吹出モードの切替えの時に、前記第2吹出口の開度を段階的もしくは線形的に、徐々に変化させることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−71814(P2012−71814A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268589(P2010−268589)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】