説明

車両用自動開閉装置

【課題】車両用自動開閉装置を小型化することと、部品点数を低減して車両用自動開閉装置のコストを低減することである。
【解決手段】駆動ユニット22の本体ケース25に駆動用ドラムを回転自在に収容し、一端がスライドドアに接続されるケーブル24a,24bの他端側を駆動用ドラムに巻き付ける。本体ケース25に電動モータ27を取り付け、この電動モータ27により駆動用ドラムを回転駆動させる。また、ケーブル24a,24bに所定の張力を付与するテンショナー機構を本体ケース25に収容する。制御基板とこれを収容する基板ケース82とを備えた制御装置81を本体ケース25のテンショナー機構を収容する部分に対して駆動用ドラムの軸方向側に重ねて配置し、この制御装置81により電動モータ27の作動を制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワゴン車やワンボックス車の車両では、その車体側部に車両前後方向に開閉するスライドドアを設け、車両側方からの乗降や荷物の積み下ろしなどを容易に行い得るようにしている。このようなスライドドアは、通常、手動で開閉操作されるようになっているが、近年では、車両に自動開閉装置を搭載し、この自動開閉装置によりスライドドアを自動的に開閉するようにした車両も多く見受けられる。
【0003】
このような自動開閉装置としては、車両前後方向からスライドドアに接続されたケーブル(索条体)をガイドレールの両端に配置される反転プーリを介して車体に配置された駆動ユニットに案内し、この駆動ユニットに設けられる駆動用ドラムにケーブルを巻き掛け、このドラムを電動モータ等の駆動源により回転駆動して、スライドドアをケーブルで引きながら自動開閉動作させるようにしたケーブル式のものが知られている。この場合、電動モータとしてはモータ本体と減速機構とが1つのユニットとされた減速機構付きモータが用いられ、この電動モータにはケースが固定され、ドラムやケーブルに所定の張力を付与するためのテンショナー機構がケースに収容されるようになっている。
【0004】
一方、電動モータの作動を制御するために、自動開閉装置には制御装置が設けられる。例えば特許文献1には、駆動ユニットを車体に固定するためのブラケットに当該駆動ユニットに対して所定方向にずらして制御装置を固定し、この制御装置と駆動ユニットとを外部ハーネスにより接続するようにした自動開閉装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−269040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される自動開閉装置では、制御装置は駆動ユニットとは別体に設けられているので、駆動ユニットに対して所定方向にずれて配置されるので、装置全体の投影面積が増加して、この自動開閉装置を大型化することになる。また、制御装置は駆動ユニットとは別体に設けられているので、駆動ユニットの本体ケースとは別に制御装置に制御基板を収容する基板ケースを設け、また、制御装置と駆動ユニットとを接続する外部ハーネス等を設ける必要があるので、部品点数が増加して、自動開閉装置のコストが高められることになる。
【0007】
本発明の目的は、車両用自動開閉装置を小型化することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、部品点数を低減して車両用自動開閉装置のコストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用自動開閉装置は、車体に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、前記車体に配置される本体ケースと、前記本体ケースのドラム収容室に収容され、駆動源により回転駆動される駆動用回転体と、一端側において前記駆動用回転体に巻き掛けられ、他端が前記開閉体に接続される索条体と、前記駆動用回転体に対して径方向に隣接して前記本体ケースのテンショナー収容室に収容され、前記索条体に所定の張力を付与するテンショナー機構と、前記本体ケースの減速機構収容室に収容され、前記駆動源の回転を減速するための減速機構とを備え、前記本体ケースを、前記ドラム収容室に対して前記減速機構収容室と前記テンショナー収容室とがそれぞれ軸方向と径方向に並べて配置された断面略L字形状に形成し、前記テンショナー収容室には、前記本体ケースに回転自在に支持された固定プーリと、可動プーリを有する前記テンショナー機構とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記テンショナー収容室には、前記固定プーリおよび前記可動プーリとともに前記テンショナー機構を形成するガイド軸およびプーリホルダが設けられ、前記ガイド軸は前記駆動用回転体の軸心と前記固定プーリの軸心とを結ぶ線分に平行に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記駆動源の作動を制御する制御装置を、前記テンショナー収容室に対して前記駆動用回転体の軸方向側に重なる位置であって、前記減速機構収容室の側方に配置したことを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用自動開閉装置は、前記制御装置は、前記本体ケースに固定される基板ケースと、前記基板ケースに収容される制御基板とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本体ケースのテンショナー機構を収容する部分に対して駆動用ドラムの軸方向側に重ねて制御装置を配置することができ、これにより駆動用ドラムの軸方向から見た投影面積を低減させて、この車両用自動開閉装置を小型化することができる。
【0014】
本発明によれば、本体ケースの減速機構収容室の側方に制御装置を配置することができ、これにより駆動ユニットの駆動用回転体の軸方向から見た投影面積を低減させて、駆動用ユニットの占有スペースを低減することができる。
【0015】
本発明によれば、制御装置は本体ケースに固定される基板ケースの内部に制御基板を収容して構成されるので、本体ケースと制御装置とを一体的に構成して、この車両用自動開閉装置を小型化することができる。また、制御基板は本体ケースに固定される基板ケースに収容されるので、制御基板と駆動源とを直接接続することができ、これにより、外部ハーネス等を不要として、この車両用自動開閉装置のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ワンボックスタイプの車両の側面図である。
【図2】図1に示すスライドドアの車体への取り付け構造を示す平面図である。
【図3】図2に示す駆動ユニットの詳細を示す正面図である。
【図4】図3におけるA−A線に沿う断面図である。
【図5】駆動軸に設けられる仮保持部の詳細を示す断面図である。
【図6】駆動用ドラムが仮保持部により仮保持された状態を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)はそれぞれ図5に示す仮保持部の変形例を示す斜視図である。
【図8】図3に示すテンショナー機構の詳細を示す斜視図である。
【図9】図3におけるB−B線に沿う断面図である。
【図10】図3におけるC−C線に沿う断面図である。
【図11】図3に示すテンショナー機構の作動状態を示す正面図である。
【図12】テンショナー機構の振動の収束特性を比較例と比較して示す特性線図である。
【図13】(a)、(b)はそれぞれ可動プーリの回動動作を示す説明図である。
【図14】図3に示す駆動ユニットを背面側から見た斜視図である。
【図15】図14に示す基板ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図16】図3に示す駆動ユニットの変形例を示す正面図である。
【図17】図16におけるA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1はワンボックスタイプの車両の側面図であり、図2は図1に示すスライドドアの車体への取り付け構造を示す平面図である。
【0019】
図1に示す車両11には、その車体12の側部に、開閉体としてのスライドドア13が設けられている。スライドドア13は車体12の側部に固定されたガイドレール14に案内されて図1中に実線で示す全閉位置と2点鎖線で示す全開位置との間で開閉自在となっており、乗員の乗降や荷物の積み下ろしなどを行う際には所望の開度にまで開けて使用される。
【0020】
図2に示すように、スライドドア13にはローラアッシー15が設けられ、このローラアッシー15がガイドレール14に案内されることにより、スライドドア13は車両11の前後方向に移動自在となっている。また、ガイドレール14の車両前方側には車室内側に湾曲する曲部14aが設けられ、ローラアッシー15が曲部14aに案内されると、スライドドア13は車体12の側面と同一面に収まるように車体12の内側に引き込まれて閉じられるようになっている。図示はしないが、ローラアッシー15は図示する部位(センター部)以外にスライドドア13の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)にも設けられ、これらに対応して車体12の開口部の上下部位にもアッパー部・ロア部に対応する図示しないガイドレールが設けられており、スライドドア13は車体12に計3カ所において支持されている。
【0021】
この車両11には、スライドドア13を自動的に開閉するために、車両用自動開閉装置21(以下、開閉装置21とする。)が設けられている。この開閉装置21は、ガイドレール14の車両前後方向の略中央部に隣接して車体12の内部に配置される駆動ユニット22と、ガイドレール14の車両後方側の端部に設けられる反転プーリ23aを介して開側(車両後方側)からローラアッシー15(スライドドア13)に接続される索条体としての開側ケーブル24aと、ガイドレール14の車両前方側の端部に設けられる反転プーリ23bを介して閉側(車両前方側)からローラアッシー15(スライドドア13)に接続される索条体としての閉側ケーブル24bとを備えており、開側ケーブル24aを駆動ユニット22で引くことによりスライドドア13を自動開動作させ、閉側ケーブル24bを駆動ユニット22で引くことによりスライドドア13を自動閉動作させるようになっている。
【0022】
図3は図2に示す駆動ユニットの詳細を示す正面図であり、図4は図3におけるA−A線に沿う断面図である。
【0023】
図3、図4に示すように、駆動ユニット22は樹脂製の本体ケース25を備えている。図3に示すように、本体ケース25は3つの取り付け脚部26を備えており、これらの取り付け脚部26にはそれぞれボルト孔26aが設けられ、各ボルト孔26aに挿通されるボルト(不図示)により本体ケース25つまり駆動ユニット22は車体12のパネルに固定されるようになっている。
【0024】
本体ケース25には、この駆動ユニット22の駆動源となる電動モータ27が取り付けられている。電動モータ27としてはブラシ付き直流モータが用いられ、その回転軸27aは正逆両方向に回転可能となっている。なお、本実施の形態においては、駆動源としてブラシ付きの電動モータ27を用いるようにしているが、これに限らず、例えばブラシレスモータなど他の電動モータを用いるようにしてもよい。
【0025】
図4に示すように、本体ケース25には減速機構収容室28が設けられており、この減速機構収容室28は本体ケース25に取り付けられる樹脂製のカバー31により閉塞されている。電動モータ27は減速機構収容室28に隣接して本体ケース25に取り付けられており、その回転軸27aは減速機構収容室28の内部に突出している。本体ケース25には隔壁32を介して減速機構収容室28に隣接してドラム収容室33が設けられており、隔壁32に装着される軸受34により本体ケース25には駆動軸35が回転自在に支持されている。駆動軸35は減速機構収容室28とドラム収容室33とに跨って配置されており、その基端は減速機構収容室28の内部に突出するとともに軸受36によりカバー31に回転自在に支持されている。
【0026】
減速機構収容室28には減速機構37が収容されており、回転軸27aの回転はこの減速機構37により所定の回転数にまで減速して駆動軸35に伝達されるようになっている。つまり、駆動軸35は電動モータ27により駆動されて回転するようになっている。減速機構37はウォーム37aとウォームホイル37bとを備えたウォームギヤ機構となっており、ウォーム37aは回転軸27aの外周面に当該回転軸27aと一体に形成され、ウォームホイル37bは駆動軸35に相対回転自在に支持されて本体ケース25の内部で回転自在となっている。
【0027】
減速機構収容室28には電磁クラッチ41が収容されており、ウォームホイル37bと駆動軸35との間の動力伝達はこの電磁クラッチ41により断続されるようになっている。電磁クラッチ41はいわゆる摩擦式となっており、互いに摩擦面を対向させて配置されるロータ42とアーマチュア43とを備えている。ロータ42は駆動軸35に相対回転自在に支持されるとともにウォームホイル37bにリング部材44を介して連結されており、ウォームホイル37bとともに回転するようになっている。一方、アーマチュア43は駆動軸35に板ばねを介して連結されており、駆動軸35とともに回転し且つ軸方向に所定の範囲で移動自在となっている。ロータ42の背面にはクラッチヨーク45が配置され、このクラッチヨーク45にはクラッチコイル46が収容されており、クラッチコイル46に通電されるとアーマチュア43はクラッチヨーク45に引きつけられるようになっている。したがって、クラッチコイル46に通電されるとロータ42とアーマチュア43の摩擦面が互いに圧着して電磁クラッチ41は接続状態となり、ウォームホイル37bつまり電動モータ27と駆動軸35との間で動力が伝達される。反対に、クラッチコイル46への通電が停止されると、ロータ42とアーマチュア43との間の摩擦力が低減して電磁クラッチ41は遮断状態となり、ウォームホイル37bと駆動軸35との間の動力伝達経路が遮断される。
【0028】
ドラム収容室33には駆動用回転体としての駆動用ドラム51が回転自在に収容されている。駆動用ドラム51は樹脂材料により外周面に螺旋状の案内溝51aを備えた円筒状に形成され、その軸心に円筒状のボス部51bを備え、このボス部51bにおいて駆動用ドラム51は駆動軸35の先端に装着されている。つまり、駆動用ドラム51は駆動軸35がボス部51bに挿通されるように当該駆動軸35に装着されている。駆動用ドラム51にはボス部51bに対して軸方向にずれて金属製の補強部材52が埋設されており、この補強部材52は駆動軸35に設けられたセレーション35aに係合するようになっている。また、補強部材52は駆動軸35の段差部35bに当接して駆動用ドラム51を軸方向に位置決めするようになっており、この状態で駆動用ドラム51はナット53により駆動軸35の先端に固定されるようになっている。これにより、電動モータ27が作動すると駆動用ドラム51は駆動軸35とともに回転する。つまり、駆動用ドラム51は電動モータ27により駆動されて回転するようになっている。
【0029】
駆動ユニット22に案内された開側ケーブル24aは本体ケース25に設けられたケーブル引き込み部25aから本体ケース25の内部に引き込まれている。そして、開側ケーブル24aは、その末端に設けられるケーブルエンド54aにおいて駆動用ドラム51の隔壁32と対向する側の軸方向端面に形成された係止部55aに固定されるとともに、当該軸方向端面側から案内溝51aに沿って駆動用ドラム51に巻き付けられている。同様に、駆動ユニット22に案内された閉側ケーブル24bは本体ケース25に設けられたケーブル引き込み部25bから本体ケース25の内部に引き込まれている。そして、閉側ケーブル24bは、その末端に設けられるケーブルエンド54bにおいて駆動用ドラム51のケース開口側の軸方向端面に形成された係止部55bに固定されるとともに、当該軸方向端面側から案内溝51aに沿って開側ケーブル24aと同一方向に駆動用ドラム51に巻き付けられている。
【0030】
ドラム収容室33は、隔壁32と当該隔壁32から軸方向に突出形成される半円筒状の一対の外周壁56a,56bにより区画形成されており、各外周壁56a,56bの間の部分はケーブル引き出し部分となっている。駆動用ドラム51の外周面は、ケーブル引き出し部分を除いて、これらの外周壁56a,56bにより覆われており、これにより、ケーブル24a,24bは異物との接触等から保護されるようになっている。また、駆動用ドラム51の外周面と外周壁56a,56bの内面との間隔は各ケーブル24a,24bの直径以下となっており、これにより、駆動用ドラム51に巻き付けられたケーブル24a,24bは外周壁56a,56bにより案内溝51aの内部に保持されて駆動用ドラム51から離脱することが防止されるようになっている。
【0031】
なお、本実施の形態においては、外周壁56a,56bはケーブル引き出し部分を除いた範囲で駆動用ドラム51の外周面を覆うように形成されているが、これに限らず、駆動用ドラム51の外周面の少なくとも一部を覆っていれば、外周壁56a,56bの大きさや形状は任意に設定することができる。
【0032】
図5は駆動軸に設けられる仮保持部の詳細を示す断面図であり、図6は駆動用ドラムが仮保持部により仮保持された状態を示す断面図であり、図7(a)〜(c)はそれぞれ図5に示す仮保持部の変形例を示す斜視図である。
【0033】
この開閉装置21には、駆動用ドラム51への各ケーブル24a,24bの巻き付け作業を容易にするために、仮保持部61が設けられている。仮保持部61は駆動軸35に設けられ、セレーション35aに対して軸方向に並ぶ円柱状に形成されており、駆動用ドラム51が駆動軸35に装着されたときにボス部51bに係合するようになっている。ここで、図5に示すように、仮保持部61の直径D1は駆動用ドラム51のボス部51bの内径D2よりも僅かに大径に形成されており、仮保持部61はボス部51bに対する軽圧入部として機能するようになっている。つまり、駆動用ドラム51を自重以上となる所定の荷重で駆動軸35に向けて軸方向に押し込むことにより、ボス部51bを仮保持部61に圧入して駆動用ドラム51を正規の固定位置つまり補強部材52が段差部35bに当接する位置に装着することができるようになっている。したがって、駆動用ドラム51を駆動軸35に装着しても、駆動用ドラム51の自重ではボス部51bは仮保持部61に圧入されず、図6に示すように、駆動用ドラム51はボス部51bが仮保持部61に係合した状態で正規の固定位置よりも手前の仮保持位置で仮保持部61により仮保持されることになる。このとき、駆動用ドラム51の外周面は、案内溝51aのケーブルの一巻き分だけドラム収容室33つまり外周壁56a,56bから軸方向に突出するようになっている。
【0034】
次に、このような仮保持部61が設けられた開閉装置21における駆動用ドラム51への各ケーブル24a,24bの巻き付け手順について説明する。
【0035】
まず、開側ケーブル24aのケーブルエンド54aを駆動用ドラム51の係止部55aに固定し、駆動用ドラム51の隔壁32と対向する側の軸方向端面側から案内溝51aに沿って所定回数だけ開側ケーブル24aを駆動用ドラム51に巻き付ける。次いで、開側ケーブル24aが巻き付けられた状態の駆動用ドラム51をドラム収容室33に軸方向から挿入し、そのボス部51bにおいて駆動軸35に装着する。このとき、駆動用ドラム51に巻かれた開側ケーブル24aは外周壁56a,56bの間のケーブル引き出し部分からドラム収容室33の外側に引き出される。駆動用ドラム51が駆動軸35に装着されると、駆動軸35に設けられた仮保持部61にボス部51bが係合して、図6に示すように、駆動用ドラム51は仮保持部61により正規の固定位置よりも手前の仮保持位置に仮保持される。
【0036】
駆動用ドラム51が仮保持部61に仮保持されると、案内溝51aのケーブル1巻き分が外周壁56a,56bから軸方向に突出して外部に露出するので、この状態で閉側ケーブル24bのケーブルエンド54bを当該ドラム51の係止部55bに固定するとともに駆動用ドラム51の外周壁56a,56bから突出した案内溝51aに当該ケーブル24bを巻き付ける。このように、閉側ケーブル24bを駆動用ドラム51に巻き付ける作業を行う際には、駆動用ドラム51は仮保持部61により仮保持されてその案内溝51aの一部が外周壁56a,56bから軸方向に突出するので、作業者が手で駆動用ドラム51をドラム収容室33から引き出した状態に保持する必要がなく、駆動用ドラム51へのケーブル24a,24bの巻き付け作業が容易となる。
【0037】
閉側ケーブル24bが駆動用ドラム51に巻き付けられると、次いで、駆動軸35の先端にナット53がねじ結合され、このナット53を締め込むことにより、ボス部51bは所定の荷重以上の荷重で仮保持部61に圧入される。そして、駆動用ドラム51が正規の固定位置まで移動すると補強部材52が段差部35bに当接し、ナット53と段差部35bとの間に補強部材52が挟み込まれて、駆動用ドラム51は駆動軸35に固定されることになる。なお、本実施の形態においては、ナット53の締め込みによりボス部51bを仮保持部61に圧入するようにしているが、これに限らず、作業者が手で駆動用ドラム51を押してボス部51bを仮保持部61に圧入させた後にナット53を締め込むようにしてもよい。
【0038】
このように、この開閉装置21では、駆動軸35に仮保持部61を設け、この仮保持部61により駆動軸35に装着される駆動用ドラム51をその一部が外周壁56a,56bから軸方向に突出する状態に仮保持するようにしたので、駆動用ドラム51を手で保持する必要をなくして、駆動用ドラム51へのケーブル24a,24bの巻き付け作業を容易にすることができる。
【0039】
本実施の形態においては、仮保持部61の直径D1を駆動用ドラム51のボス部51bの内径D2よりも若干大径に形成するようにしているが、これに限らず、例えば図7(a)に示すように、仮保持部61を駆動軸35の外周面に突出形成される突起として形成し、駆動用ドラム51のボス部51bをこれらの突起の外側に圧入するようにしてもよい。また、図7(b)に示すように、仮保持部61を駆動軸35の外周面を粗くするローレット等の表面加工として形成し、駆動用ドラム51のボス部51bとの摩擦抵抗を高めて軽圧入部として機能させるようにしてもよい。さらに、図7(c)に示すように、仮保持部61をセレーション状に形成し、ボス部51bを当該仮保持部61に圧入する構成としてもよい。また、図示はしないが、ボス部51b側に仮保持機能を設けるようにしてもよい。例えば、上述の例と同じく仮保持部61の直径D1を駆動用ドラム51のボス部51bの内径D2よりも若干大径に形成するとともに、駆動ドラム51のボス部51bに、軸方向のスリット等を設けておき、ボス部51bが仮保持部61に圧入される際に、ボス部51bが拡径するように構成してもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、駆動用ドラム51が仮保持部61により仮保持されたときには、その外周面をケーブル一巻き分だけ外周壁56a,56bから軸方向に突出させるようにしているが、これに限らず、駆動用ドラム51のケーブル24a,24bが巻き付けられる少なくとも一部が外周壁56a,56bから軸方向に突出していれば、その突出量は任意に設定することができる。
【0041】
図8は図3に示すテンショナー機構の詳細を示す斜視図であり、図9は図3におけるB−B線に沿う断面図であり、図10は図3におけるC−C線に沿う断面図である。また、図11は図3に示すテンショナー機構の作動状態を示す正面図であり、図12はテンショナー機構の振動の収束特性を比較例と比較して示す特性線図である。
【0042】
図3に示すように、本体ケース25には駆動用ドラム51つまりドラム収容室33に対して当該駆動用ドラム51の径方向(図示する場合では上側)に隣接してテンショナー収容室62が設けられており、このテンショナー収容室62には、開側ケーブル24aに所定の張力を付与するための開側のテンショナー機構63aと閉側ケーブル24bに所定の張力を付与するための閉側のテンショナー機構63bとが収容されている。なお、図4に示すように、テンショナー収容室62はカバー64により閉塞され、テンショナー機構63a,63bはカバー64により覆われるようになっている。
【0043】
以下に、テンショナー機構63a,63bの詳細について説明するが、開側のテンショナー機構63aと閉側のテンショナー機構63bとは、基本的には同一の構造となっているので、以下では、主に開側のテンショナー機構63aに基づいて説明する。
【0044】
図8に示すように、開側のテンショナー機構63a(以下、テンショナー機構63aとする。)は鋼材により断面円形の棒状に形成されるガイド軸65と樹脂製のプーリホルダ66とを備えている。プーリホルダ66は円筒状に形成されるスライド部66aを備え、このスライド部66aはガイド軸65に当該ガイド軸65に沿って移動自在且つガイド軸65の軸心を中心として回動自在に装着されている。これにより、プーリホルダ66は、当該ガイド軸65に沿って軸方向に移動自在、且つ、ガイド軸65の軸心を中心として当該ガイド軸65周りに回動自在となっている。
【0045】
ガイド軸65の両端にはそれぞれストッパ67a,67bが設けられ、スライド部66aの移動範囲はこれらのストッパ67a,67bの内側に制限されている。また、一方のストッパ67aとスライド部66aとの間には、ばね部材としてのスプリング68が装着されており、スライド部66aはこのスプリング68により他方のストッパ67bに向けて付勢されている。
【0046】
プーリホルダ66はスライド部66aと一体に形成されるホルダ本体部66bを備えており、このホルダ本体部66bはスライド部66aに対して駆動用ドラム51の側にずれるとともに、その軸心がスライド部66aの軸方向中心位置に対してガイド軸65の軸方向に沿ってスプリング68の側にずれて配置されている。
【0047】
ホルダ本体部66bには支軸71により可動プーリ72が回転自在に支持されており、ケーブル引き込み部25aから本体ケース25に引き込まれたケーブル24aは可動プーリ72に掛け渡された後、駆動用ドラム51に案内されるようになっている。可動プーリ72は駆動用ドラム51よりも小径に形成されており、その外周にはケーブル24aが係合する断面V字形状の溝72aが設けられている。また、ホルダ本体部66bには可動プーリ72からのケーブル24aの離脱を防止するために、当該ホルダ本体部66bと一体にガイド壁73が設けられている。このガイド壁73は可動プーリ72の外周面に所定の間隔を空けて対向する円弧状に形成されており、スライド部66aと重複する部分を含めて可動プーリ72の外周面に沿った約90度の範囲で形成されている。これにより、図10に示すように、可動プーリ72に掛け渡されたケーブル24aは可動プーリ72とガイド壁73との間に配置されることになり、張力が過度に緩んでケーブル24aが可動プーリ72から外れても、当該ケーブル24aは可動プーリ72とガイド壁73との間に保持され、張力が適当な範囲に戻ったときには、ケーブル24aは自然に可動プーリ72に係合するようになっている。
【0048】
テンショナー機構63aはガイド軸65とプーリホルダ66、スプリング68等が予め組み立てられて、図8に示すように1つのユニットとして形成され、このようにユニット化された状態で本体ケース25に組み付けられる。本体ケース25には装着溝74が設けられ、テンショナー機構63aはこれらの装着溝74によりガイド軸65の両端が支持された状態でテンショナー収容室62に組み付けられる。
【0049】
図3、図4に示すように、本体ケース25には、テンショナー収容室62の内部に位置して一対の固定プーリ75a,75bが支軸76により回転自在に支持されている。これらの固定プーリ75a,75bは互いに軸方向に並ぶとともに各テンショナー機構63a,63bの間に配置されており、ケーブル引き込み部25aから本体ケース25に引き込まれた開側ケーブル24aは固定プーリ75aを介して所定の方向からテンショナー機構63aの可動プーリ72に掛け渡され、ケーブル引き込み部25bから本体ケース25に引き込まれた閉側ケーブル24bは固定プーリ75bを介して所定の方向からテンショナー機構63bの可動プーリ72に掛け渡されている。なお、各ケーブル24a,24bのケーブルエンド54a,54bはガイド壁73と可動プーリ72の外周面との間隔よりも小さく形成されており、各テンショナー機構63a,63bが本体ケース25に組み付けられる前にガイド壁73と可動プーリ72との間に挿通される。
【0050】
テンショナー機構63aが本体ケース25に装着されると、プーリホルダ66つまり可動プーリ72はスプリング68により駆動用ドラム51や固定プーリ75a,75bから離れる方向に向けてガイド軸65に沿って付勢される。これにより、開側ケーブル24aには開側のテンショナー機構63aにより所定の張力が付与される。例えば、ローラアッシー15がガイドレール14の曲部14aに案内されてケーブル24a,24bの引き回し経路が長くなると、図11に示すように、可動プーリ72はプーリホルダ66とともにスプリング68のばね力に抗してガイド軸65に沿って図中下方に移動して、ケーブル24a,24bの張力を所定の範囲に保持する。
【0051】
ここで、図11に示すように、テンショナー機構63aのガイド軸65はその軸方向を駆動用ドラム51の軸心と固定プーリ75a,75bの軸心とを結ぶ線分に平行となって本体ケース25に支持されており、その軸方向はケーブル24aから可動プーリ72に加えられる荷重の方向に対して傾斜している。つまり、ガイド軸65は、その軸方向が可動プーリ72と固定プーリ75aとの間に掛け渡される開側ケーブル24a1の張力T1と可動プーリ72と駆動用ドラム51との間に掛け渡される開側ケーブル24a2の張力T2の合力Fcの方向に対して傾斜するように本体ケース25に支持されている。これにより、合力Fcのガイド軸65の軸方向に直交する方向の分力Fcaによりガイド軸65とこれに沿って移動するスライド部66aとの間の摩擦抵抗が高められ、この状態で合力Fcのガイド軸65に沿う方向の分力Fcbとスプリング68のばね力Fkが釣り合う位置までプーリホルダ66がガイド軸65に沿って移動する。したがって、開側ケーブル24aから可動プーリ72に加えられる荷重つまり合力Fcが急激に変化してプーリホルダ66がガイド軸65に沿って軸方向に往復動つまり振動しても、その振動はガイド軸65とスライド部66aとの間の摺動摩擦により減衰されることになる。
【0052】
図11の状態において、可動プーリ72が軸方向に静止する条件は、スプリング68のばね力をFk、可動プーリ72へのケーブル24aの巻き付け角度をα、合力Fcとガイド軸65の軸方向とが成す角度をβ、静止摩擦係数をμ1、T1=T2=Tとすると、
Fk=2T・SIN(α/2)*(COSβ−μ1・SINβ)・・・(1)
で表される。
【0053】
次に、図11に示す状態からガイド軸65に沿って図中下方に可動プーリ72が動き出すための条件は、式(1)から、
Fk<2T・SIN(α/2)*(COSβ−μ1・SINβ)・・・(2)
となり、また、可動プーリ72がガイド軸65に沿って軸方向に動き続けるための条件は、動摩擦係数をμ2とすると、式(2)から
Fk<2T・SIN(α/2)*(COSβ−μ2・SINβ)・・・(3)
となる。
【0054】
式(2)、(3)より、角度αが180°に近づき角度βが0°に近づくにつれて可動プーリ72はガイド軸65に沿う方向に動き易くなり、角度αと角度βが90°に近づくにつれて可動プーリ72はガイド軸65に沿う方向に動きにくくなることが解る。これにより、可動プーリ72をガイド軸65に沿って図中下方に滑らかに作動させるためには、スプリング68のばね力Fkに対してケーブル24aの張力Tを十分に大きくする必要があることが解る。
【0055】
次に、図11に示す状態からガイド軸65に沿って図中上方に可動プーリ72が動き出すための条件は、式(1)から、
Fk>2T・SIN(α/2)*(COSβ+μ1・SINβ)・・・(4)
となり、また、可動プーリ72がガイド軸65に沿って軸方向に動き続けるための条件は、動摩擦係数をμ2とすると、式(4)から
Fk>2T・SIN(α/2)*(COSβ+μ2・SINβ)・・・(5)
となる。
【0056】
式(4)、(5)より、角度αが180°に近づき角度βが0°に近づくにつれて可動プーリ72はガイド軸65に沿う方向に動き易くなり、角度αと角度βが90°に近づくにつれて可動プーリ72はガイド軸65に沿う方向に動きにくくなることが解る。これにより、可動プーリ72をガイド軸65に沿って図中上方に滑らかに作動させるためには、スプリング68のばね力Fkに対してケーブル24aの張力Tを十分に小さくする必要があることが解る。
【0057】
以上より、可動プーリ72をガイド軸65に沿って滑らかに作動させ、且つ、ガイド軸65とスライド部66aとの間に適度な摩擦抵抗を生じさせるためには、合力Fcとガイド軸65の軸方向とが成す角度βを略45°に設定するのが望ましい。本実施の形態においては、スライドドア13が全閉位置の近傍にまで移動して、ローラアッシー15がガイドレール14の曲部14aに案内されたときに合力Fcとガイド軸65の軸方向との成す角度が略45°となるように構成されている。これにより、スライドドア13が全閉位置近傍にあるときに、可動プーリ72を滑らかに作動させるとともにガイド軸65とスライド部66aとの間に適度な摩擦抵抗を生じさせて可動プーリ72の振動を効果的に抑制することができる。
【0058】
なお、可動プーリ72をガイド軸65に沿って滑らかに作動させ、且つ、ガイド軸65とスライド部66aとの間に適度な摩擦抵抗を生じさせるためには、ケーブル24aから可動プーリ72に加えられる荷重の方向に対してガイド軸65が傾斜していなくても、ホルダ本体部66bをスライド部66aに対して駆動用ドラム51の側にずらすことによっても摩擦抵抗を生じさせることができる。
【0059】
この開閉装置21では、ケーブル24aから可動プーリ72に加えられる荷重の方向に対してガイド軸65を傾斜させることにより、ガイド軸65とスライド部66aとの間に摺動抵抗を発生させるようにしたので、比較例と比較して、可動プーリ72の振動を低減することができる。また、この開閉装置21では、ホルダ本体部66bをスライド部66aに対して駆動用ドラム51の側にずらして設けることにより、ガイド軸65とスライド部66aとの間に摺動抵抗を発生させるようにしたので、可動プーリ72の振動を低減することができる。これにより、図12に示すように、この開閉装置21では、ケーブル張力の急激な変化によりスライドドア13の移動速度が振動的に変化しても、図中破線で示す比較例に対してドア速度の振動を効率よく収束させて、スライドドア13を滑らかに作動させることができる。
【0060】
このように、この開閉装置21では、ケーブル24a,24bから可動プーリ72に加えられる荷重の方向に対してガイド軸65を傾斜させることにより、ガイド軸65とスライド部66aとの間に摺動抵抗を発生させるようにしたので、この摺動抵抗によりケーブル24a,24bの張力変化による可動プーリ72のガイド軸65に沿う方向の振動を抑制することができる。これにより、スライドドア13を滑らかに動作させることができる。
【0061】
また、この開閉装置21では、ケーブル24a,24bから可動プーリ72に加えられる荷重方向に対してガイド軸65の軸方向を略45度傾斜させるようにしたので、ガイド軸65とスライド部66aとの間に適度な摺動抵抗を生じさせつつスライド部66aをガイド軸65に沿って円滑に作動させることができる。
【0062】
さらに、この開閉装置21では、ホルダ本体部66bをスライド部66aに対して駆動用ドラム51の側にずらして設けるようにしたので、ガイド軸65とスライド部66aとの間に適度な摺動抵抗を生じさせつつスライド部66aをガイド軸65に沿って円滑に作動させることができる。
【0063】
さらに、この開閉装置21では、ホルダ本体部66bの軸心をスライド部66aの軸方向中心位置に対してガイド軸65の軸方向に沿ってスプリング68の側にずらして設けるようにしたので、ケーブル24a,24bから可動プーリ72に加えられる荷重によりスライド部66aをガイド軸65に対して傾斜させる方向に付勢して、ガイド軸65とスライド部66aとの間の摺動抵抗を高めることができる。これにより、ガイド軸65に対するスライド部66aに減衰力を高めて、可動プーリ72のガイド軸65に沿う方向の振動をさらに効率よく抑制することができる。
【0064】
また、この開閉装置21では、ホルダ本体部66bをスライド部66aに対して駆動用ドラム51の側にずらして設けることにより、ガイド軸65とスライド部66aとの間に摺動抵抗を発生させるようにしたので、この摺動抵抗によりケーブル24a,24bの張力変化による可動プーリ72のガイド軸65に沿う方向の振動を抑制することができる。これにより、スライドドア13を滑らかに動作させることができる。
【0065】
さらに、この開閉装置21では、テンショナー機構63a,63bを予めユニット化した状態でテンショナー収容室62に組み付けるようにしたので、テンショナー機構63a,63bの本体ケース25への組み付け作業を容易にすることができる。
【0066】
図13(a)、(b)はそれぞれ可動プーリの回動動作を示す説明図である。
【0067】
この開閉装置21では、駆動用ドラム51が回転すると、当該駆動用ドラム51からのケーブル24a,24bの引き出し位置は軸方向に変化することになる。そのため、この開閉装置21に設けられるテンショナー機構63a,63bでは、前述のように、プーリホルダ66のスライド部66aをガイド軸65に当該ガイド軸65周りに回動自在に装着して、駆動用ドラム51からのケーブル24a,24bの引き出し位置が変化しても、可動プーリ72をケーブル24a,24bに追従させるようにしている。つまり、図13(a)に示すように、ケーブル24aの駆動用ドラム51からの引き出し位置が当該ドラム51の軸方向の略中間位置にあるときには、可動プーリ72は駆動用ドラム51からのケーブル24aの引き出し位置と固定プーリ75aの軸方向位置との間に位置しており、この状態から駆動用ドラム51が回転してケーブル24aの引き出し位置が駆動用ドラム51の軸方向の端部にまで移動したときには、図13(b)に示すように、可動プーリ72はプーリホルダ66とともにガイド軸65周りに回動して、駆動用ドラム51からの引き出し位置と固定プーリ75aとの間に位置するようになっている。このように、可動プーリ72は、駆動用ドラム51からのケーブル24aの引き出し位置の変化に追従してプーリホルダ66とともにガイド軸65周りに回動するようになっている。また、プーリホルダ66の回動範囲は、可動プーリ72を支持する支軸71が本体ケース25またはカバー64に当接することにより、図13に示すように、ガイド軸65の軸心と駆動用ドラム51の軸方向両端部とを結ぶ線分a1,a2の角度範囲内に規制されており、これにより、可動プーリ72が過度に回動することが防止されるようになっている。
【0068】
したがって、駆動用ドラム51からのケーブル24aの引き出し位置が変化しても、ケーブル24aに対する可動プーリ72の傾斜つまり可動プーリ72の接線方向に対するケーブル24aの傾斜を低減して、可動プーリ72とケーブル24aとの間で擦れ音が発生することを防止することができる。また、可動プーリ72に対してケーブル24aが大きく傾斜することがないので、可動プーリ72の軸方向寸法を低減して、この開閉装置21を小型化することができる。
【0069】
このように、この開閉装置21では、可動プーリ72を回転自在に保持するプーリホルダ66をガイド軸65に当該ガイド軸65の軸心を中心として回動自在に装着するようにしたので、駆動用ドラム51の回転に伴って駆動用ドラム51からのケーブル24a,24bの引き出し位置が軸方向に変化しても、当該ケーブル24a,24bの移動に伴って可動プーリ72が傾動することができる。したがって、ケーブル24a,24bに対する可動プーリ72の傾斜を小さく維持することができ、これにより、可動プーリ72とケーブル24a,24bとの擦れ音を低減させることができる。また、ケーブル24a,24bに対する可動プーリ72の傾斜を小さく維持することができるので、可動プーリ72の軸方向寸法を小さくしてもケーブル24a,24bの可動プーリ72からの離脱を防止することができる。これにより、可動プーリ72の軸方向寸法を小さくして本体ケース25を駆動軸35の軸方向に薄型化し、この開閉装置21を小型化することができる。また、可動プーリ72の軸方向寸法が低減されると可動プーリ72の溝72aの内部におけるケーブル24a,24bの位置が安定するので、可動プーリ72とケーブル24a,24bとの間の擦れ音をさらに低減し、また、ケーブル24a,24bの作動抵抗を低減し、さらに、ケーブル24a,24bの作動を安定化させることができる。
【0070】
図14は図3に示す駆動ユニットを背面側から見た斜視図であり、図15は図14に示す基板ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【0071】
駆動ユニット22には、電動モータ27と電磁クラッチ41の作動を制御するために、制御装置81が設けられている。図4から解るように、この制御装置81は本体ケース25に固定される基板ケース82と基板ケース82に収容される制御基板83とを有している。
【0072】
図15に示すように、制御基板83は基板83aにCPUやメモリ等の電子部品83bを実装した構造となっており、基板83a上に設けられた外部コネクタ84を介して車載される図示しないバッテリや開閉スイッチ等に接続されるようになっている。また、基板83a上には給電コネクタ85が設けられており、この給電コネクタ85は電動モータ27に設けられるモータ側コネクタ86に接続されている。さらに、基板83a上にはクラッチ用コネクタ87が設けられており、このクラッチ用コネクタ87は電磁クラッチ41からのクラッチ側コネクタ(不図示)に接続されるようになっている。
【0073】
図示しない開閉スイッチが操作されると、その操作信号が制御基板83に入力され、制御基板83はその操作信号に応じてバッテリから供給される電力を給電コネクタ85とモータ側コネクタ86とを介して電動モータ27に供給して電動モータ27の作動制御を実行する。また、制御基板83は所望のタイミングで、バッテリから供給される電力をクラッチ用コネクタ87とクラッチ側コネクタとを介して電磁クラッチ41に供給して電磁クラッチ41の作動制御を実行する。
【0074】
ここで、図4に示すように、本体ケース25はドラム収容室33に対して電磁クラッチ41が収容された減速機構収容室28とテンショナー収容室62とがそれぞれ軸方向と径方向に並べて配置された断面略L字形状に形成されており、制御装置81は本体ケース25のテンショナー収容室62に対して駆動用ドラム51の軸方向側に重なる位置であって、減速機構の側方に配置されている。つまり、制御装置81は本体ケース25の減速機構収容室28が設けられる部分とテンショナー収容室62が設けられる部分とにより区画されるデッドスペースに配置されている。これにより、駆動ユニット22の駆動用ドラム51の軸方向から見た投影面積を低減させて、駆動ユニット22の占有スペースを低減するようになっている。
【0075】
このように、この開閉装置21では、本体ケース25のテンショナー機構63a,63bを収容する部分に対して駆動用ドラム51の軸方向側に重ねて制御装置81を配置するようにしたので、駆動用ドラム51の軸方向から見た投影面積を低減させて、この開閉装置21を小型化することができる。また、制御装置81を駆動ユニット22のデッドスペースに配置するようにしたので、駆動ユニット22の占有スペースを低減することができる。
【0076】
また、この開閉装置21では、制御装置81を本体ケース25に固定される基板ケース82の内部に制御基板83を収容した構成としたので、本体ケース25と制御装置81とを一体的に構成することができ、これにより、この開閉装置21を小型化することができる。
【0077】
さらに、この開閉装置21では、制御基板83は本体ケース25に固定される基板ケース82に収容されるので、制御基板83の給電コネクタ85と電動モータ27のモータ側コネクタ86とを直接接続することができる。これにより、給電コネクタ85とモータ側コネクタ86とを接続するための外部ハーネス等を不要として、この開閉装置21のコストを低減することができる。
【0078】
次に、このような構造の開閉装置21の作動について説明する。
【0079】
図示しない開閉スイッチの開側が操作されてスライドドア13を開方向へ作動させる指令信号が制御基板83に入力されると、電磁クラッチ41が接続状態に切り換えられ、次いで電動モータ27が正転方向に駆動され、駆動用ドラム51が図3において時計回り方向に回転し、開側ケーブル24aが駆動用ドラム51に巻き取られてスライドドア13は開側ケーブル24aに引かれて全開位置へ向かって移動する。反対に、開閉スイッチの閉側が操作されてスライドドア13を閉方向へ作動させる指令信号が制御基板83に入力されると、電磁クラッチ41が接続状態に切り換えられ、次いで電動モータ27が逆転方向に駆動され、駆動用ドラム51が図3において反時計回り方向に回転し、閉側ケーブル24bが駆動用ドラム51に巻き取られてスライドドア13は閉側ケーブル24bに引かれて全閉位置へ向かって移動する。また、スライドドア13が手動により開閉操作されるときには、電動モータ27が停止された状態のまま電磁クラッチ41が遮断状態に切り替えられる。
【0080】
一方、自動あるいは手動によりスライドドア13が開閉し、ローラアッシー15がガイドレール14の曲部14aを通過するなどしてケーブル24a,24bの引き回し経路長が変化したときには、可動プーリ72がガイド軸65に沿って軸方向に移動して、ケーブル24a,24bの張力が所定の範囲に調整される。
【0081】
図16は図3に示す駆動ユニットの変形例を示す正面図であり、図17は図16におけるA−A線に沿う断面図である。
【0082】
図3に示す駆動ユニット22では、テンショナー機構63a,63bのガイド軸65を互いに平行に配置し、各可動プーリ72を当該ガイド軸65に沿って互いに平行に作動させるとともに、ケーブル引き込み部25a,25bから本体ケース25の内部に引き込まれたケーブル24a,24bを、それぞれ固定プーリ75a,75bを介して可動プーリ72に掛け渡すようにしている。
【0083】
これに対して、図16に示す変形例の場合では、ガイド軸65をその軸方向を互いに略90度ずらして配置し、各可動プーリ72を当該ガイド軸65に沿ってそれぞれケーブル引き込み部25a,25bに沿う方向に作動させるとともに、ケーブル引き込み部25a,25bから本体ケース25の内部に引き込まれたケーブル24a,24bを、それぞれ可動プーリ72によりその移動方向を180度変換させて駆動用ドラム51に導くようにしている。これにより、可動プーリ72の作動時に生じるケーブル24a,24bの引き出し方向に対する角度変化を抑制してその移動スペースを低減させるとともに、各テンショナー機構63a,63bの配置スペースを低減させて、この開閉装置21を小型化することができる。
【0084】
また、この変形例においては、本体ケース25には減速機構収容室28とドラム収容室33と制御基板83を内装するための基板ケース82とが一体的に設けられており、基板ケース82の内部において、制御基板83の基板83a上に設けられた図示しない給電コネクタが電動モータ27から導出された図示しないモータ側ターミナルと接続されている。さらに、本体ケース25における基板ケース82の開口部は基板カバー88によって閉塞されており、この基板カバー88には制御基板83に接続される外部コネクタ84が設けられ、制御基板83はこの外部コネクタ84を介して車両11に搭載される図示しないバッテリ等の電源や車室内に配置される開閉スイッチ等に接続されている。
【0085】
なお符号91は、各ケーブル24a,24bをスライドドア12のローラアッシー15に連結する際に当該ケーブル24a,24bに弛み代を生じさせるために、スプリング68が圧縮状態となる位置にプーリホルダ66を保持するストッパである。
【0086】
この変形例においても、図17に示すように、本体ケース25は、駆動用ドラム51を収容するドラム収容室33に対して減速機構収容室28が軸方向に並べて配置されるとともに、テンショナー機構63a,63bを収容するテンショナー収容室62が径方向に並べて配置された断面略L字形状に形成されている。そして、電動モータ27と電磁クラッチ41の作動を制御するための制御装置81は、本体ケース25のテンショナー収容室62に対して駆動用ドラム51の軸方向側に重なる位置であって減速機構収容室28の側方に配置されており、これにより、図3に示す場合と同様に、駆動ユニット22の駆動用ドラム51の軸方向から見た投影面積を低減させて、駆動ユニット22の占有スペースが低減されるようになっている。
【0087】
なお、図16、図17においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
【0088】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、本実施の形態においては、開閉体はスライド式に開閉するスライドドア13とされているが、これに限らず、乗降用のヒンジ式の横開きドアや車両後端部に設けられるバックドアなど、他の開閉体としてもよい。
【0089】
また、本実施の形態においては、開側ケーブル24aと閉側ケーブル24bの2本のケーブルを用いるようにしているが、これに限らず、1本のケーブルの中間部分を駆動用ドラム51に巻き付け、その両端部をスライドドア13に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
11 車両
12 車体
13 スライドドア(開閉体)
14 ガイドレール
14a 曲部
15 ローラアッシー
21 車両用自動開閉装置
22 駆動ユニット
23a,23b 反転プーリ
24a 開側ケーブル(索条体)
24b 閉側ケーブル(索条体)
25 本体ケース
25a,25b ケーブル引き込み部
26 取り付け脚部
26a ボルト孔
27 電動モータ(駆動源)
27a 回転軸
28 減速機構収容室
31 カバー
32 隔壁
33 ドラム収容室
34 軸受
35 駆動軸
35a セレーション
35b 段差部
36 軸受
37 減速機構
37a ウォーム
37b ウォームホイル
41 電磁クラッチ
42 ロータ
43 アーマチュア
44 リング部材
45 クラッチヨーク
46 クラッチコイル
51 駆動用ドラム
51a 案内溝
51b ボス部
52 補強部材
53 ナット
54a,54b ケーブルエンド
55a,55b 係止部
56a,56b 外周壁
61 仮保持部
62 テンショナー収容室
63a 開側のテンショナー機構
63b 閉側のテンショナー機構
64 カバー
65 ガイド軸
66 プーリホルダ
66a スライド部
66b ホルダ本体部
67a,67b ストッパ
68 スプリング
71 支軸
72 可動プーリ
72a 溝
73 ガイド壁
74 装着溝
75a,75b 固定プーリ
76 支軸
81 制御装置
82 基板ケース
83 制御基板
83a 基板
83b 電子部品
84 外部コネクタ
85 給電コネクタ
86 モータ側コネクタ
87 クラッチ用コネクタ
88 基板カバー
91 ストッパ
D1 直径
D2 内径
T1,T2 張力
Fc 合力
Fca 分力
Fcb 分力
Fk ばね力
a1,a2 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用自動開閉装置であって、
前記車体に配置される本体ケースと、
前記本体ケースのドラム収容室に収容され、駆動源により回転駆動される駆動用回転体と、
一端側において前記駆動用回転体に巻き掛けられ、他端が前記開閉体に接続される索条体と、
前記駆動用回転体に対して径方向に隣接して前記本体ケースのテンショナー収容室に収容され、前記索条体に所定の張力を付与するテンショナー機構と、
前記本体ケースの減速機構収容室に収容され、前記駆動源の回転を減速するための減速機構とを備え、
前記本体ケースを、前記ドラム収容室に対して前記減速機構収容室と前記テンショナー収容室とがそれぞれ軸方向と径方向に並べて配置された断面略L字形状に形成し、
前記テンショナー収容室には、前記本体ケースに回転自在に支持された固定プーリと、可動プーリを有する前記テンショナー機構とが設けられていることを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用自動開閉装置において、前記テンショナー収容室には、前記固定プーリおよび前記可動プーリとともに前記テンショナー機構を形成するガイド軸およびプーリホルダが設けられ、前記ガイド軸は前記駆動用回転体の軸心と前記固定プーリの軸心とを結ぶ線分に平行に配置されることを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用自動開閉装置において、前記駆動源の作動を制御する制御装置を、前記テンショナー収容室に対して前記駆動用回転体の軸方向側に重なる位置であって、前記減速機構収容室の側方に配置したことを特徴とする車両用自動開閉装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用自動開閉装置において、前記制御装置は、前記本体ケースに固定される基板ケースと、前記基板ケースに収容される制御基板とを有することを特徴とする車両用自動開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−7252(P2013−7252A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185539(P2012−185539)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2008−9416(P2008−9416)の分割
【原出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】