説明

車両用荷役装置

【課題】トラック等の荷台に設備されて積載された貨物の荷台上での移動に使用される車両用荷役装置について、貨物が積載されるコンベアの積載面を低くして貨物の積載量を多くする。
【解決手段】貨物が積載される荷台Bの床面Baに貨物を荷台Bの前後方向へ移動させるコンベア1が設置されている。コンベア1は、シート状に形成されて荷台Bの後方側に設置されたローラ2に巻取り,繰出し可能に連結されるとともに繰出し先端が荷台Bの前後方向へ移動可能に配設された移動用チェーン4に連結されている。ローラ2,移動用チェーン4を駆動する駆動部5は、共通化されてコンベア1の巻取りの際にローラ2を駆動しコンベア1の繰出しの際に移動用チェーン4を駆動する自動的な切換えがなされる駆動伝達機構が付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の荷台に設備されて積載された貨物の荷台上での移動に使用される車両用荷役装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、トラック等の貨物運送用の車両では、貨物が積載される荷台の床面にコンベアが設置された車両用荷役装置が設備されるようになってきている。この車両用荷役装置は、コンベアを駆動することによって、荷台の後方側で荷揚げされて積載された貨物を荷台の前方側まで移動できるようにし、荷降ろしの際に荷台の前方側に積載されている貨物を荷台の後方側まで移動できるようにして、荷台上での作業員の荷役作業を軽減するものである。特に、この車両用荷役装置は、荷台上の空間が側パネル,天パネルで囲まれて制約されるバンタイプの貨物運送用の車両で有用性を発揮する。
【0003】
この車両用荷役装置では、コンベアを荷台の前後方向である2方向へ駆動させなければならないため、コンベアの駆動機構が大型化するという不具合がある。そこで、搭載重量,搭載スペースの制約のある車両への設備を容易にするために、コンベアの駆動機構の大型化を避けることのできる車両用荷役装置の開発が要望されている。
【0004】
従来、コンベアの駆動機構の大型化を避けることを指向した車両用荷役装置としては、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。
この特許文献1には、貨物が積載される荷台の床面に設置され貨物を荷台の前後方向へ移動させるコンベアが荷台の前後方向にエンドレス状に掛渡されて配設された車両用荷役装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る車両用荷役装置は、コンベアの駆動機構の電気的な切換え等(例えば、駆動モータの正逆の回転方向の切換え)によってコンベアの駆動方向を切換えて、貨物を荷台の前後方向のいずれの方向へも移動させることができるようにすることで、コンベアの駆動機構の大型化を避けるものである。即ち、コンベアの駆動機構として、前方移動用,後方移動用を共有化することで大型化を避けるものである。

【特許文献1】特開2000−16142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る車両用荷役装置では、コンベアがエンドレス状に掛渡され、荷台の床面の上のほぼ全面にコンベアの二段の配設構造が収容されるスペースを確保しなければならないため、貨物が積載されるコンベアの積載面が高くなって貨物の積載量が少なくなってしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、貨物が積載されるコンベアの積載面を低くして貨物の積載量を多くすることのできる車両用荷役装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明に係る車両用荷役装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1では、貨物が積載される荷台の床面に貨物を荷台の前後方向へ移動させるコンベアが設置された車両用荷役装置において、コンベアはシート状に形成されて荷台の後方側に設置されたローラに巻取り,繰出し可能に連結されるとともに繰出し先端が荷台の前後方向へ移動可能に配設された移動用チェーンに連結され、ローラ,移動用チェーンを駆動する駆動部は共通化されてコンベアの巻取りの際にローラを駆動しコンベアの繰出しの際に移動用チェーンを駆動する自動的な切換えがなされる駆動伝達機構が付設されていることを特徴とする。
【0010】
この手段では、シート状のコンベアをローラに巻取り移動用チェーンで繰出すことでコンベアの二段の配設構造を避け、ローラ,移動用チェーンの駆動部を自動的な切換えがなされる駆動伝達機構を介して共通化することで駆動部,駆動伝達機構を荷台の床面の凹部等を利用して設置することができるようにする。
【0011】
また、請求項2では、請求項1の車両用荷役装置において、駆動伝達機構は駆動力を受けて回転する駆動円盤と駆動円盤の両端面に接合され駆動円盤と同軸線上で回転される従動円盤と駆動円盤,従動円盤の間に設けられ駆動円盤の一方向の回転に従動円盤を追従して回転させ他方向の回転に従動円盤を追従して回転させないワンウエイクラッチとを備え、一方の従動円盤はローラに連結され、他方の従動円盤は移動用チェーンに連結され、ワンウエイクラッチは両従動盤側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする。
【0012】
この手段では、駆動伝達機構がワンウエイクラッチを駆動円盤,従動円盤の間に設けた円盤形に形成されることでコンパクト性が備えられる。
【0013】
また、請求項3では、請求項2の車両用荷役装置において、駆動伝達機構のワンウエイクラッチは従動円盤の駆動円盤への当接面に軸方向に傾斜した深さを有して周方向に円弧形に延びた係合溝と駆動円盤に収容され両従動円盤に設けられた係合溝に対して選択的に出没して係合,離脱する係合体とからなることを特徴とする。
【0014】
この手段では、駆動伝達機構のワンウエイクラッチが従動円盤の駆動円盤への当接面に設けられた係合溝と駆動円盤に収容された係合体とで構成される。
【0015】
また、請求項4では、請求項1〜3いずれかの車両用荷役装置において、コンベアは繰出し先端の上に積載された貨物の側面に当接される貨物支持体が立設されて貨物支持体を介して移動用チェーンに連結されていることを特徴とする。
【0016】
この手段では、貨物支持体を介してコンベア,移動用チェーンが連結される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用荷役装置は、シート状のコンベアをローラに巻取り移動用チェーンで繰出すことでコンベアの二段の配設構造を避け、ローラ,移動用チェーンの駆動部を自動的な切換えがなされる駆動伝達機構を介して共通化することで駆動部,駆動伝達機構を荷台の床面の凹部等を利用して設置することができるようにしたため、貨物が積載されるコンベアの積載面を低くして貨物の積載量を多くすることができる効果がある。
【0018】
さらに、請求項2として、駆動伝達機構がワンウエイクラッチを駆動円盤,従動円盤の間に設けた円盤形に形成されることでコンパクト性が備えられるため、荷台の床面への設置スペースの確保が容易になる効果がある。
【0019】
さらに、請求項3として、駆動伝達機構のワンウエイクラッチが従動円盤の駆動円盤への当接面に設けられた係合溝と駆動円盤に収容された係合体とで構成されるため、構造の複雑化が避けられ安価,容易な製造が可能になる効果がある。
【0020】
さらに、請求項4として、貨物支持体を介してコンベア,移動用チェーンが連結されるため、コンベアに掛かる移動用チェーンの繰出し力を貨物支持体で分散均等化することができ、コンベアの繰出しを円滑にすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用荷役装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
この形態では、トラックTのバンタイプの荷台Bに設備されるものを示してある。
【0023】
この形態は、図1に示すように、コンベア1,ローラ2,貨物支持体3,移動用チェーン4,駆動部5,駆動伝達機構6を主要部として構成されている。
【0024】
コンベア1は、図1,図2に示すように、軽量で強靱なべルト(例えば、ポリアミドを心体層として積層したもの)でシート状に形成され、荷台Bの前後方向,幅方向(前後方向と直交する方向)に連続する全面張りの面積を有して、荷台Bの床面Baの上に貨物の積載面となる配設面を展開することができるものとなっている。コンベア1の配設面には、図2に示すように、コンベア1の配設方向(荷台Bの床面Baの前後方向)へ延びて積載された貨物の荷重をコンベア1を介して支える床フレーム7が配設されている。床フレーム7には、必要に応じて、コンベア1の移動を円滑にするために、コンベア1に当接される蝋等の固形の潤滑剤が設けられる。
【0025】
ローラ2は、図1,図2に示すように、軸線が荷台Bの幅方向へ設定されて荷台Bの床面Baの後方側の端部に回転可能に設置されてなるもので、コンベア1の繰出し基端(巻取り始端)が固定されてコンベア1を巻取り,繰出しするローラ本体21と、ローラ本体2に固定されたローラ軸22とからなる。ローラ軸22には、駆動伝達用スプロケット8が固定されている。なお、ローラ2の近くの荷台Bの前方側には、コンベア1を配設面に向けて案内するための案内ローラ9が設置されている。
【0026】
貨物支持体3は、図1に示すように、背もたれ的な機能で積載された貨物の荷崩れを防止するもので、鳥居形の枠体に形成されてコンベア1の繰出し先端(巻取り終端)の上に荷台Bの天パネルBb付近までの高さに立設されている。貨物支持体3とコンベア1の繰出し先端とは、例えば、コンベア1に皺寄り,捻れ等が生じないように、荷台Bの幅方向に延びた板形の補強金具を介して固定されている。貨物支持体3の側面には、例えば、貨物支持体3の移動の円滑性が確保されるように、荷台Bの側パネルBcに沿って配設されたコ字形の走行レールの内部を走行する走行ローラが回転可能に支持された走行ローラ取付板が固定される。
【0027】
移動用チェーン4は、図1,図2に示すように、荷台Bの床面Baの前方側と後方側とに配置されたスプロケット10,20にエンドレス状に掛渡されて荷台Bの前後方向に配設されて荷台2の幅方向に2本が並列されている。スプロケット10,20は、荷台Bの床面Baの前方側と後方側とに軸線が荷台Bの幅方向へ設定されて配設された回転軸30,40に2本の移動用チェーン4に対応して間隔を介した1対がそれぞれ支持されている。スプロケット10,20の近くの荷台Bの後方側には、移動用チェーン4のエンドレス状の往復ラインの間隔を狭める補助スプロケット50が設置されている。また、荷台Bの後方側の回転軸30には、駆動伝達用スプロケット60が固定されている。移動用チェーン4の一箇所と貨物支持体3(コンベア1の繰出し先端)とは、固定用ブラケット70で固定されている。
【0028】
駆動部5は、図1,図2に示すように、荷台Bの床面Baの後方側の端部に設置された駆動モータ51と、軸線が荷台Bの幅方向へ設定されて駆動モータ51に連結された駆動軸52とからなる。駆動モータ51は、制御回路によって正逆の回転方向の切換えができるようになっている。
【0029】
駆動伝達機構6は、図3以下に詳細に示されるように、駆動円盤61,従動円盤62,63,ワンウエイクラッチ64,ロック機構65からなる。
【0030】
駆動伝達機構6の駆動円盤61は、駆動部5の駆動軸52が挿通される挿通孔611と、駆動部5の駆動軸52を固定する固定リング80が嵌合される嵌合孔612とが中心部に連通して同軸に開孔された円盤形に形成されている。両端面には、ワンウエイクラッチ64の一部が収容される6個のワンウエイクラッチ収容孔613が放射状の配置で貫通されている。周面には、ロック機構65が収容される6個のロック機構収容孔614が放射状の配置でワンウエイクラッチ収容孔613に到達するように開孔されている。
【0031】
駆動伝達機構6の従動円盤62,63は、駆動円盤61と同軸線上で回転されるように駆動部5の駆動軸52が挿通される挿通孔621,631と、駆動部5の駆動軸52を支承するベアリング90が嵌合される嵌合孔622,632とが中心部に連通して同軸に開孔された円盤形に形成されている。一方の端面は、駆動円盤61の端面に当接されるようになっている。他方の端面(周面の一部)には、駆動伝達用チェーン100,200が掛けられる駆動伝達用スプロケット300,400が取付けられている。一方の駆動伝達用スプロケット300に掛けられた駆動伝達用チェーン100は、図2に示すように、移動用チェーン4が掛渡された荷台Bの後方側のスプロケット10が支持された回転軸30に固定された駆動伝達用スプロケット60に掛渡されている。他方の駆動伝達用スプロケット400に掛けられた駆動伝達用チェーン200は、図2に示すように、ローラ2のローラ軸22に固定された駆動伝達用スプロケット8に掛渡されている。なお、前述の一方の駆動伝達用チェーン100は、テンションスプロケット500によってローラ2に巻付けられたコンベア1を避けるように前述の駆動伝達用スプロケット60への掛渡し形状が変形されている。
【0032】
駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64は、係合溝641,係合体642からなる。係合溝641は、従動円盤62,63の駆動円盤61への当接面である一方の端面に軸方向に傾斜した深さを有して周方向に円弧形に延びて6個が放射状の配置で刻設されている。この係合溝641は、傾斜面641aの最も深い部分に深さを一定にした平坦部分641bが設けられ、傾斜面641aの最も浅い部分が、従動円盤62,63の端面に到達している。なお、図5,図12から明らかなように、従動円盤62,63の係合溝641の傾斜面641aの傾斜方向が両従動円盤62,63で互いに逆方向に設定されている。係合体642は、外径が駆動円盤61のワンウエイクラッチ収容孔613の径とほぼ一致し軸長が駆動円盤61の軸長と係合溝641の平坦部分641bの深さとの和とほぼ一致するピン形に形成されている。係合体642の端面は、半球形の丸頭642aに形成されている。係合体642の周面には、断面が半円形に凹んだ環状溝642bが間隔を介して2条刻設されている。この係合体642は、駆動円盤61のワンウエイクラッチ収容孔613に収容されて係合溝641に対して出没されるもので、出没の限界位置で環状溝642bが駆動円盤61のロック機構収容孔614に対面するようになっている。
【0033】
駆動伝達機構6のロック機構65は、ボール651,コイルスプリング652,止ネジ653からなる。ボール651は、駆動円盤61のロック機構収容孔614から出没してワンウエイクラッチ64の係合体642の環状溝642bに係合する球体からなる。コイルスプリング652は、駆動円盤61のロック機構収容孔614に収容されてボール651をワンウエイクラッチ64の係合体642方向に弾圧する。止ネジ653は、駆動円盤61のロック機構収容孔614の駆動円盤61の周面近くに螺合されてコイルスプリング652の弾圧の反力を受ける。
【0034】
この形態によると、コンベア1が二段の配設構造とならないため、ローラ2,駆動機構5,駆動伝達機構6を荷台Bの床面Baの凹部等を利用して設置することにより、貨物が積載されるコンベア1の積載面となる配設面を低くすることができる。従って、荷台Bの容積を貨物の積載のために有効利用して積載量を多く確保することができる。また、コンベア1の二段の配設構造を避けて取付スペースの小規模化が図られているため、既に使用されているトラックTの固定的な荷台Bに簡単に改修装備することができる。なお、駆動部5が1基からなることも、取付スペースの小規模化に寄与する。また、駆動部5に付設される駆動伝達機構6がワンウエイクラッチ64を駆動円盤61,従動円盤62,63の間に設けた円盤形に形成されることでコンパクト性が備えられることも、荷台Bの床面Baの凹部等を利用しての設置に役立つ。この駆動伝達機構6については、ワンウエイクラッチ64が従動円盤62,63の駆動円盤61への当接面である一方の端面に設けられた係合溝641と駆動円盤61に収容された係合体642とで構成されるため、構造の複雑化が避けられ安価,容易な製造が可能である。また、移動用チェーン4が補助スプロケット50でエンドレス状の往復ラインの間隔を狭められていることも、貨物が積載されるコンベア1の積載面となる配設面を低くすることに寄与する。
【0035】
この形態を使用するには、コンベア1を駆動部5の駆動でローラ2から繰出すことによって、荷台Bの後方側で荷揚げされて積載された貨物を荷台Bの前方側まで移動させ、コンベア1を駆動部5の逆方向への駆動でローラ2に巻取ることによって、荷降ろしの際に荷台Bの前方側に積載されている貨物を荷台Bの後方側まで移動させることになる。
【0036】
駆動部5の駆動モータ51が正方向に回転されると、駆動軸52も正方向に回転駆動されることになる。そして、駆動伝達機構6は、固定リング80を介して駆動円盤61が駆動部5の駆動軸52と一体的に正方向に回転されることになる。このとき、図3,図6,図7,図12に示すように、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の係合体642が係合溝641の傾斜面641bを滑り一方の従動円盤62に設けられている係合溝641の平坦部分641bに至って係合溝641に係止される。即ち、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と一方の従動円盤62との間で係合接続された状態となって、一方の従動円盤62が駆動円盤61に追従して正方向に回転されることになる。なお、このとき、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と他方の従動円盤63との間で離脱解除された状態となっているため、他方の従動円盤63が回転駆動されることはない。なお、ワンウエイクラッチ64の係合体642がスムースなスライドが期待されるピンとされているため、ワンウエイクラッチ64の係合,離脱が円滑に動作される。
【0037】
駆動伝達機構6の一方の従動円盤62の正方向への回転駆動は、従動円盤62に取付けられている駆動伝達用スプロケット300の回転駆動となる。そして、駆動伝達用チェーン100,駆動伝達用スプロケット60,回転軸30,スプロケット10を介して、移動用チェーン4のエンドレス状の往復ラインの上側が荷台Bの後方側から前方側へ移動されることになる。
【0038】
駆動伝達機構6の一方の従動円盤62の駆動円盤61に追従した正方向に回転の際には、ロック機構65のボール651がワンウエイクラッチ64の係合体642の環状溝642bに弾圧係合している。従って、回転の応力や周囲の振動が伝導しても、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の係合接続が不測に解除されることはない。
【0039】
この結果、貨物支持体3とコンベア1の繰出し先端とが荷台Bの後方側から前方側へ確実に移動され、コンベア1が荷揚げされて積載された貨物を移動させて配設面に展開されることになる。
【0040】
このとき、コンベア1の繰出しにともなってローラ2が回転し、駆動伝達用スプロケット8,駆動伝達用チェーン200を回転させて、駆動伝達用スプロケット400と駆動伝達機構6の他方の従動円盤63とを逆方向へ回転させることになる。ただし、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と他方の従動円盤63との間で離脱解除された状態となっているため、一方の従動円盤62の正方向への回転駆動が影響を受けることがない。
【0041】
駆動部5の駆動モータ51が逆方向に回転駆動されると、駆動軸52も逆方向に回転駆動されることになる。そして、駆動伝達機構6は、固定リング80を介して駆動円盤61が駆動部5の駆動軸52と一体的に逆方向に回転されることになる。このとき、図8,図9,図12に示すように、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の駆動円盤61と一方の従動円盤62との間での係合接続が解除される。なお、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の係合溝641に平坦部分641bが設けられて係合体642との間にあそびが確保されるため、ワンウエイクラッチ64の係合溝641,係合体642の係合の機械的なデッドロックが避けられ円滑な離脱が保障される。
【0042】
そして、図4,図10,図11,図12に示すように、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の係合体642が係合溝641の傾斜面641bを滑り他方の従動円盤63に設けられている係合溝641の平坦部分641bに至って係合溝641に係止される。即ち、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と他方の従動円盤63との間で係合接続された状態となって、他方の従動円盤63が駆動円盤61に追従して逆方向に回転されることになる。なお、このとき、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と一方の従動円盤62との間で離脱解除された状態となっているため、一方の従動円盤62が回転駆動されることはない。なお、ワンウエイクラッチ64の係合体642がスムースなスライドが期待されるピンとされているため、ワンウエイクラッチ64の係合,離脱が円滑に動作される。
【0043】
駆動伝達機構6の他方の従動円盤63の逆方向への回転駆動は、従動円盤63に取付けられている駆動伝達用スプロケット400の回転駆動となる。そして、駆動伝達用チェーン200,駆動伝達用スプロケット8を介して、ローラ2がコンベア1の巻取り方向へ回転されることになる。
【0044】
駆動伝達機構6の他方の従動円盤63の駆動円盤61に追従した逆方向に回転の際には、ロック機構65のボール651がワンウエイクラッチ64の係合体642の環状溝642bに弾圧係合している。従って、回転の応力や周囲の振動が伝導しても、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64の係合接続が不測に解除されることはない。
【0045】
この結果、コンベア1がローラ2のローラ本体21に巻取られ、貨物支持体3とコンベア1の繰出し先端とが荷台Bの前方側から後方側へ移動され、コンベア1が積載されている貨物が荷台Bの後方側へ移動される。
【0046】
このとき、コンベア1の巻取りにともなって、貨物支持体3に引張られた移動用チェーン4が前述と逆の方向へ移動し、スプロケット10,回転軸30,駆動伝達用スプロケット60,駆動伝達用チェーン100を回転させて、駆動伝達用スプロケット300と駆動伝達機構6の一方の従動円盤62とを正方向へ回転させることになる。ただし、駆動伝達機構6のワンウエイクラッチ64が駆動円盤61と一方の従動円盤62との間で離脱解除された状態となっているため、他方の従動円盤63の逆方向への回転駆動が影響を受けることがない。
【0047】
以上のように、ローラ2,移動用チェーン4を駆動する駆動部5が共通化され、駆動伝達機構6によって駆動の自動的な切換えがなされる。
【0048】
以上、図示した形態の外に、移動用チェーン4を移動する各部と連係して貨物支持体3を積極的に移動駆動する機構を追加することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る車両用荷役装置は、トラックT以外の貨物運送用の車両に広範に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る車両用荷役装置を実施するための最良の形態の簡略化した斜視図である。
【図2】図1の要部の拡大された側面図である。
【図3】図2の要部の拡大された斜視図である。
【図4】図2の他の動作状態図である。
【図5】図1の要部の拡大された分解状態の斜視図である。
【図6】図3の拡大された縦断面図である。
【図7】図6の要部の拡大された断面図である。
【図8】図3〜図4への切換途中の拡大された縦断面図である。
【図9】図8の要部の拡大された断面図である。
【図10】図4の拡大された縦断面図である。
【図11】図10の要部の拡大された断面図である。
【図12】図7,図9,図11の間の動作経過を示す平面に展開した簡略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 コンベア
2 ローラ
3 貨物支持体
4 移動用チェーン
5 駆動部
6 駆動伝達機構
61 駆動円盤
62,63 従動円盤
64 ワンウエイクラッチ
641 係合溝
642 係合体
T トラック(車両)
B 荷台
Ba 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物が積載される荷台の床面に貨物を荷台の前後方向へ移動させるコンベアが設置された車両用荷役装置において、コンベアはシート状に形成されて荷台の後方側に設置されたローラに巻取り,繰出し可能に連結されるとともに繰出し先端が荷台の前後方向へ移動可能に配設された移動用チェーンに連結され、ローラ,移動用チェーンを駆動する駆動部は共通化されてコンベアの巻取りの際にローラを駆動しコンベアの繰出しの際に移動用チェーンを駆動する自動的な切換えがなされる駆動伝達機構が付設されていることを特徴とする車両用荷役装置。
【請求項2】
請求項1の車両用荷役装置において、駆動伝達機構は駆動力を受けて回転する駆動円盤と駆動円盤の両端面に接合され駆動円盤と同軸線上で回転される従動円盤と駆動円盤,従動円盤の間に設けられ駆動円盤の一方向の回転に従動円盤を追従して回転させ他方向の回転に従動円盤を追従して回転させないワンウエイクラッチとを備え、一方の従動円盤はローラに連結され、他方の従動円盤は移動用チェーンに連結され、ワンウエイクラッチは両従動盤側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする車両用荷役装置。
【請求項3】
請求項2の車両用荷役装置において、駆動伝達機構のワンウエイクラッチは従動円盤の駆動円盤への当接面に軸方向に傾斜した深さを有して周方向に円弧形に延びた係合溝と駆動円盤に収容され両従動円盤に設けられた係合溝に対して選択的に出没して係合,離脱する係合体とからなることを特徴とする車両用荷役装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの車両用荷役装置において、コンベアは繰出し先端の上に積載された貨物の側面に当接される貨物支持体が立設されて貨物支持体を介して移動用チェーンに連結されていることを特徴とする車両用荷役装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−280166(P2009−280166A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136953(P2008−136953)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(591218293)株式会社立和運輸倉庫 (7)
【Fターム(参考)】