説明

車両用蒸散器

【課題】熱の伝達効率を高めることができる車両用蒸散器を提供する。
【解決手段】アクセサリーソケットに着脱されるプラグ部11を備えた蒸散器本体12にカートリッジ収容部63が設け、プラグ部11を介して供給された電源でヒータ94を発熱して前記カートリッジ収容部63にセットされたカートリッジ61内の液体薬剤121を加熱して蒸散させる。カートリッジ61が接するカートリッジ収容部63の接触面75に、ヒータ94が収容される発熱体収容部91を凹設し、この発熱体収容部91の上面開口部101を蓋体105で閉鎖して、前記ヒータ94を収容状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に芳香成分などを蒸散させる車両用蒸散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に液状芳香剤を蒸散させる装置としては、図9に示すように、車両用蒸散器801が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この車両用蒸散器801は、シガーライターに電源を供給するアクセサリーソケットに挿入されるプラグ部811と、該プラグ部811より車室内側へ延出した蒸散器本体812とによって構成されている。
【0004】
該蒸散器本体812には、液体薬剤が収容されたカートリッジ821を収容するカートリッジ収容部822が設けられており、前記プラグ部811から供給された電源でヒータ823を発熱することによって、前記カートリッジ821の容器部824を加熱して、該容器部824内の液体薬剤を前記カートリッジ821の透過膜825を介して車室内へ蒸散できるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−225293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用蒸散器801にあっては、前記ヒータ823が収容されたヒータ収容部831と前記カートリッジ収容部822とが中間トレイ832で区画されており、前記ヒータ収容部831に収容された前記ヒータ823は、金属板833を介して樹脂製の前記中間トレイ832に付勢されている。
【0006】
このため、前記ヒータ823からの熱は、前記中間トレイ832を介して前記カートリッジ821の底面に伝達されるように構成されており、熱の伝達効率が悪かった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、熱の伝達効率を高めることができる車両用蒸散器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車両用蒸散器にあっては、車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器において、前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に開口部を設け、該開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を設けた。
【0009】
すなわち、前記カートリッジが接するカートリッジ収容部の接触面には、開口部が設けられており、該開口部には、発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体が設けられている。
【0010】
このため、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面は、その一部が前記蓋体によって構成され、前記発熱体からの熱は、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達される。
【0011】
また、請求項2の車両用蒸散器にあっては、車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器において、前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に、前記発熱体が収容される発熱体収容部を凹設するとともに、該発熱体収容部の開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を設けた。
【0012】
すなわち、前記カートリッジが接するカートリッジ収容部の接触面には、発熱体が収容される発熱体収容部を凹設されており、該発熱体収容部に収容された前記発熱体は、当該発熱体収容部の開口部に設けた金属製の蓋体によって、その収容状態が維持される。
【0013】
このため、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面は、その一部が前記蓋体によって構成され、前記発熱体からの熱は、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達される。
【0014】
さらに、請求項3の車両用蒸散器では、前記蓋体を、前記発熱体収容部の前記開口部を覆う蓋本体と、該蓋本体の周縁より延出した係止片とで構成し、前記発熱体収容部の外周部に、前記係止片を挿入した状態で係止する係止穴を設けた。
【0015】
すなわち、前記蓋体は、前記開口部を覆う蓋本体と、該蓋本体の周縁より延出した係止片とで構成されており、前記発熱体収容部の外周部には、前記係止片を挿入した状態で係止する係止穴が設けられている。
【0016】
このため、前記発熱体収容部の開口部から前記発熱体を収容した後、当該開口部を、前記蓋体の蓋本体で覆った状態で、当該蓋本体より延出した係止片を前記係止穴に係止することによって、前記発熱体は、前記発熱体収容部に収容された状態に維持される。
【0017】
そして、請求項4の車両用蒸散器の製造方法にあっては、車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器の製造方法において、前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に凹設された発熱体収容部に前記発熱体を収容する発熱体収容工程と、前記発熱体収容部の開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を取り付ける蓋体取付工程と、を備えている。
【0018】
すなわち、この車両用蒸散器を組み立てる際には、前記カートリッジ収容部の接触面に凹設された発熱体収容部に前記発熱体を収容した後、当該発熱体収容部の開口部に金属製の蓋体を取る付けることによって、前記発熱体を前記発熱体収容部に収容した状態に維持する。
【0019】
これにより、前記発熱体がセットされた発熱体モジュールが形成される。
【0020】
この状態において、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面は、その一部が前記蓋体によって構成され、前記発熱体からの熱は、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達される。
【0021】
また、請求項5の車両用蒸散器の製造方法にあっては、前記蓋体取付工程は、前記蓋体の周縁より延出した係止片を前記発熱体収容部の外周部に設けられた係止穴に挿入する係止片挿入工程と、前記係止穴を挿通した前記係止片の先端部を折曲する係止片折曲工程と、を備えている。
【0022】
すなわち、前記発熱体収容部の開口部に金属製の蓋体を取る付ける工程では、前記蓋体より延出した係止片を前記発熱体収容部の外周部に設けられた係止穴に挿入した後、該係止穴を挿通した前記係止片の先端部を折曲する。
【0023】
これにより、前記蓋体は固定され、前記発熱体は前記発熱体収容部に収容された状態に維持される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の請求項1の車両用蒸散器にあっては、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面の一部を前記蓋体で構成することによって、前記発熱体からの熱を、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達することができる。
【0025】
このため、発熱体収容部とカートリッジ収容部とが中間トレイで区画され、前記ヒータからの熱が樹脂製の中間トレイを介して前記カートリッジに伝達される従来と比較して、熱の伝達効率を高めることができる。これにより、液状薬剤の蒸散効率を高めることができる。
【0026】
また、請求項2の車両用蒸散器においても、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面の一部を前記蓋体で構成することによって、前記発熱体からの熱を、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達することができる。
【0027】
このため、前記発熱体収容部と前記カートリッジ収容部とが中間トレイで区画され、前記ヒータからの熱が樹脂製の中間トレイを介して前記カートリッジに伝達される従来と比較して、熱の伝達効率を高めることができる。これにより、液状薬剤の蒸散効率を高めることができる。
【0028】
さらに、請求項3の車両用蒸散器においては、前記蓋体は、前記開口部を覆う蓋本体と、該蓋本体の周縁より延出した係止片とで構成され、前記発熱体収容部の外周部には、前記係止片を挿入した状態で係止する係止穴が設けられている。
【0029】
このため、前記発熱体収容部の開口部から前記発熱体を収容した後、当該開口部を、前記蓋体の蓋本体で覆った状態で、該蓋本体より延出した係止片を前記係止穴に係止することによって、前記発熱体を前記発熱体収容部に収容した状態に維持することができる。
【0030】
そして、請求項4の車両用蒸散器の製造方法にあっては、前記カートリッジ収容部の接触面に凹設された発熱体収容部に前記発熱体を収容した後、当該発熱体収容部の開口部に金属製の蓋体を取る付けることによって、前記発熱体を前記発熱体収容部に収容した状態に維持することができる。
【0031】
これにより、当該車両用蒸散器を組み立てる前工程において、前記発熱体がセットされた発熱体モジュールを予め組み立てておくことができるとともに、この発熱モジュール単体でのストックが可能となる。
【0032】
この状態において、前記カートリッジ収容部に収容された前記カートリッジが接する前記接触面は、その一部が前記蓋体によって構成されており、前記発熱体からの熱を、金属製の前記蓋体を介して前記カートリッジに伝達することができる。
【0033】
このため、前記発熱体収容部と前記カートリッジ収容部とが中間トレイで区画され、前記ヒータからの熱が樹脂製の中間トレイを介して前記カートリッジに伝達される従来と比較して、熱の伝達効率を高めることができる。これにより、液状薬剤の蒸散効率を高めることができる。
【0034】
また、請求項5の車両用蒸散器の製造方法にあっては、前記発熱体収容部の開口部に金属製の蓋体を取る付ける工程では、前記蓋体より延出した係止片を前記発熱体収容部の外周部に設けられた係止穴に挿入した後、該係止穴を挿通した前記係止片の先端部を折曲することで、前記発熱体を、前記発熱体収容部に収容された状態に維持することができる。
【0035】
これにより、発熱体収容部に発熱体を収容した状態で、中間トレイを組み付けなければ、発熱体を収容状態に維持することができなかった従来と比較して、組み付け作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる車両用蒸散器1を示す図であり、該車両用蒸散器1は、乗用車などの車室内に芳香成分などを蒸散させる装置である。
【0037】
前記車両用蒸散器1は、図1から図3に示すように、プラグ部11と、該プラグ部11に折り曲げ自在に連結された矩形状の蒸散器本体12とによって構成されている。
【0038】
前記プラグ部11は、車両のインストルメントパネル等に設けられたアクセサリーソケットに着脱できる円筒状に形成されており、その先端には、アクセサリーソケット端部のプラス電極に圧接されるプラス端子21が突設されている。該プラス端子21の内側には、図4に示すように、ヒューズ22が交換自在に収容されており、該ヒューズ22他端の電極23は、ハーネス24を介して、前記蒸散器本体12に設けられた基板25に接続されている。
【0039】
また、前記プラグ部11には、長尺状の金属板が折曲加工されてなるアース端子31,31が側方へ突出するように設けられており、該アース端子31,31は、前記アクセサリーソケットの内周面が形成するマイナス電極に圧接されるように構成されている。このアース端子31,31は、ハーネス32を介して前記基板25に接続されており、当該基板25には、車載バッテリーからの電源が供給されるように構成されている。
【0040】
この電源が供給される前記基板25には、押しボタン式のスイッチ41と発光ダイオード42とが設けられており、前記スイッチ41のボタン43及び発光ダイオード42は、蒸散器本体12の上面より突出するように構成されている。これにより、前記スイッチ41の前記ボタン43を押す毎に、電源のオン・オフを交互に繰り返すとともに、電源オン時には、前記発光ダイオード42を点灯するように構成されている。
【0041】
前記蒸散器本体12は、前記アクセサリーソケットに挿入された前記プラグ部11より車室内側へ延出するように設けられており、当該蒸散器本体12は、プラスチックによって形成されている。この蒸散器本体12は、下面側を構成する容器状のロアカバー51と、該ロアカバー51の上面開口部に取り付けられたトレイ52と、上面側を構成し複数の発散口53,・・・が開設されたアッパカバー54とを備えており、図3及び図5に示すように、前記ロアカバー51を挿通するタッピンねじ55,55を前記アッパカバー54に設けられたボス部56,56に螺入した状態で、前記トレイ52が前記ロアカバー51と前記アッパカバー54との間に固定されている。
【0042】
この蒸散器本体12の後端部には、図3及び図4に示したように、当該蒸散器本体12内にカートリッジ61を出し入れする出し入れ口62が開設されており、その内部には、該出し入れ口62より挿入された前記カートリッジ61を出し入れ自在に収容するカートリッジ収容部63が前記トレイ52上に形成されている。
【0043】
前記アッパカバー54の内側面には、図5に示したように、前記カートリッジ収容部63に収容された前記カートリッジ61の上面に当接する複数のリブ71が延出しており(一カ所のみ図示)、前記カートリッジ収容部63に収容された前記カートリッジ61を、前記リブ71で前記トレイ52に押圧するように構成されている。
【0044】
これにより、前記カートリッジ61は、図5及び図6に示すように、その底面が前記トレイ52上部の接触面75に圧接され面接するように構成されており、この状態において、前記カートリッジ61と前記アッパカバー54との間に、蒸散空間72が形成されるように構成されている。
【0045】
また、前記トレイ52の前記接触面75には、図4及び図6に示したように、前記カートリッジ収容部63に収容された前記カートリッジ61の前記出し入れ口62からの離脱を防止する凸部81が突設されており、前記カートリッジ61を当該カートリッジ収容部63内に保持できるように構成されている。
【0046】
前記トレイ52の前記接触面75には、図6にも示すように、矩形状の発熱体収容部91が凹設されており、該発熱体収容部91の底面92には、一部が欠損した円筒状の起立壁93が立設されている。該起立壁93の内側内には、円板状の発熱体としてのヒータ94が収容されており、該ヒータ94は、支持板95で支持されている。該支持板95からは、前記ヒータ94の電極を兼ねた板バネ96が延出しており、前記ヒータ94は、前記支持板95より延出した前記板バネ96を介して前記底面92に支持され、その加熱面97が上方へ向けて付勢されている。
【0047】
前記ヒータ94の電極を兼ねた前記板バネ96は、図外のハーネスを介して、前記基板25に接続されており、前記スイッチ41のオン操作によって前記バッテリーからの電源が供給され、発熱するように構成されている。
【0048】
前記発熱体収容部91の上面開口部101の外周部には、肉厚に形成された厚肉部102が全周に渡って形成されており、該厚肉部102には、前記上面開口部101に沿って延在するスリット状の係止穴103,103が二カ所に開設されている。そして、前記発熱体収容部91の前記上面開口部101は、蓋体105によって閉鎖されている。
【0049】
該蓋体105は、図7に示すように、薄肉の金属板によって構成されている。この蓋体105は、前記発熱体収容部91の前記上面開口部101を覆う大きさに形成された長方形状の蓋本体111と、該蓋本体111の短辺より延出した係止片112,112とからなり、該係止片112,・・・は、前記蓋本体111が前記上面開口部101を覆った状態で、前記係止穴103,・・・に挿入できる箇所に設けられている。各係止片112,112は、対応する係止穴103,103に挿入可能な幅寸法に設定されており、当該係止穴103,103に挿入した状態で、その先端部を折り曲げられる長さ寸法に設定されている。
【0050】
これにより、前記各係止片112,・・・を対応する係止穴103,103に挿入して係止した状態で、当該蓋体105を前記トレイ52に固定できるように構成されており、この蓋体105を前記トレイ52に取り付けた状態において、前記ヒータ94を前記発熱体収容部91に収容した状態で維持できるように構成されている。
【0051】
ここで、本実施の形態では、前記トレイ52の前記接触面75に発熱体収容部91を凹設した場合について説明したが、これに限定されるものでは無い。
【0052】
例えば、前記トレイ52には、前記上面開口部101のみを設け、前述した発熱体収容部91を廃止したものや、前記ロアカバー51に前記ヒータ94類を設けても良く、この場合、前記ロアカバー51に前記起立壁93を設けることによって、前記ヒータ94を支持する板バネ96を当該起立壁93で保持しても良い。
【0053】
また、この蓋体105は、前記ヒータ94に電気的に接続される電極を兼ねており、前記蓋本体111の縁部からは、端子部115が延出している。この端子部115は、ハーネス116を介して、前記基板25に接続されるように構成されており、当該基板25からの電力を前記ヒータ94に供給できるように構成されている。
【0054】
これにより、前記プラグ部11を介して供給された電源で前記ヒータ94を発熱することによって、図6に示したように、該ヒータ94の加熱面97が密着した前記蓋体105を介して、前記カートリッジ収容部63にセットされた前記カートリッジ61内の液体薬剤121を当該カートリッジ61の底面から加熱して蒸散できるように構成されている。
【0055】
このカートリッジ61は、図4に示したように、矩形状の容器部131を備えてなり、該容器部131の開口縁部には、図3にも示したように、側方へ延出したフランジ132が全周に渡って一体形成され、その一部には円弧状の舌片134が形成されている。前記容器部131内には、図6に示したように、芳香成分、消臭成分、殺虫成分、除菌成分、防カビ成分等の薬剤を含有した液体である前記液体薬剤121が収容されており、前記フランジ132にはシール層135を介して透過膜136が接合され、当該容器部131が閉鎖されている。
【0056】
前記透過膜136は、通常時において前記液体薬剤121の流出を防止する一方、前記ヒータ94で加熱され蒸散された液体薬剤121は透過する膜体で構成されている。これにより、当該カートリッジ61が前記ヒータ94で加熱された際に、前記液体薬剤121を当該カートリッジ61の外部へ透過させるとともに、前記透過膜136を透過した前記液体薬剤121を、前記アッパカバー54に設けられた前記発散口53,・・・を介して車室内へ発散できるよう構成されている。
【0057】
なお、この透過膜136は、販売時において、その全面がアルミシールによって剥離自在に覆われている。
【0058】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記車両用蒸散器1の製造手順を、図8と用いて説明する。
【0059】
すなわち、前記車両用蒸散器1を組み立てる際には、予め発熱体モジュール組立工程(S1)において、前記トレイ52に前記ヒータ94を組み付けて発熱体モジュールを形成し、本体組立工程(S2)において、前記ロアカバー51に前記プラグ部11をセットするとともに、モジュール化された前記発熱体モジュールを前記ロアカバー51と前記アッパカバー54との間にセットして、前記ロアカバー51とモジュール化された前記トレイ52と前記アッパカバー54とをタッピンねじ55,55で固定して前記車両用蒸散器1を完成させる。
【0060】
前記発熱体モジュール組立工程(S1)では、発熱体収容工程(SB1)において、前記トレイ52の接触面75に凹設された発熱体収容部91における起立部93内に、ヒータ94が設けられた前記支持板95を、延出した板バネ96を底面92側へ向けてセットする。
【0061】
そして、蓋体取付工程(SB2)において、前記ヒータ94が収容された前記発熱体収容部91の上面開口部101を蓋体105で覆い、前記ヒータ94を前記発熱体収容部91内に収容した状態を形成して当該蓋体105を前記トレイ52に取り付ける。
【0062】
これにより、当該車両用蒸散器1を組み立てる前記本体組立工程(S2)の前工程において、前記ヒータ94が前記トレイ52にセットされてなる発熱体モジュールを予め組み立てておくことができる。そして、この発熱モジュールを、単体でストックしたり、運んだりすることができるため、利便性が向上する。
【0063】
前記蓋体取付工程(SB2)を具体的に説明すると、係止片挿入工程(SC1)において、前記蓋体105より延出した各係止片112,・・・を直角に折り曲げた状態で、当該蓋体105の蓋本体111で前記発熱体収容部91の上面開口部101を覆うとともに、前記各係止片112,・・・を前記発熱体収容部91の外周部に設けられた対応する係止穴103,・・・に挿入する。
【0064】
次に、係止片折曲工程(SB3)において、各係止穴103,・・・を挿通した前記各係止片112,・・・の先端部を、前記発熱体収容部91側へ折曲して、各係止片112,・・・を前記各係止穴103,・・・に係止する。これにより、当該蓋体105を前記トレイ52に取り付ける。
【0065】
このように、前記蓋体105より延出した前記係止片112,・・・を前記発熱体収容部91の外周部に設けられた前記各係止穴103,・・・に挿入した後、該係止穴103,・・・を挿通した前記係止片112,・・・の先端部を折曲することで、前記ヒータ94を前記発熱体収容部91に収容した状態に維持することができる。
【0066】
これにより、前記発熱体収容部91に前記ヒータ94を収容した状態で、中間トレイを組み付けなければ、前記ヒータ94を収容状態に維持することができなかった従来と比較して、組み付け作業性が向上する。
【0067】
そして、このようにして組み立てられた前記車両用蒸散器1にあっては、前記カートリッジ収容部63に収容された前記カートリッジ61の底面が接する前記接触面75の一部を、前記蓋体105で構成することができる。
【0068】
このため、前記発熱体収容部91に設けられた前記ヒータ94からの熱を、金属製の蓋体105を介して前記カートリッジ61に伝達することができる。
【0069】
したがって、前記発熱体収容部91と前記カートリッジ収容部63とが中間トレイで区画され、前記ヒータ94からの熱が樹脂製の中間トレイを介して前記カートリッジ61に伝達される従来と比較して、熱の伝達効率を高めることができる。これにより、前記カートリッジ61内の液状薬剤121の蒸散効率を高めることができる。
【0070】
また、前記蓋体105は、前記上面開口部101を覆う蓋本体111と、該蓋本体111の周縁より延出した前記係止片112,・・・とで構成されており、前記発熱体収容部91の外周部には、前記係止片112,・・・を挿入した状態で係止する係止穴103,・・・が設けられている。
【0071】
このため、前記発熱体収容部91の前記上面開口部101から前記ヒータ94を収容した後、当該上面開口部101を、前記蓋体105の前記蓋本体111で覆った状態で、該蓋本体111より延出した前記係止片112,・・・を前記係止穴103,・・・に係止することによって、前記ヒータ94を前記発熱体収容部91に収容した状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】同実施の形態を示す側面図である。
【図3】同実施の形態を示す底面図である。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図4の要部拡大図である。
【図7】同実施の形態の蓋体を示す平面図である。
【図8】同実施の形態の製造工程を示す説明図である。
【図9】従来の車両用蒸散器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 車両用蒸散器
11 プラグ部
12 蒸散器本体
61 カートリッジ
63 カートリッジ収容部
75 接触面
91 発熱体収容部
94 ヒータ(発熱体)
101 上面開口部
103 係止穴
105 蓋体
111 蓋本体
112 係止片
121 液体薬剤
S1 発熱体モジュール組立工程
S2 本体組立工程
SB1 発熱体収容工程
SB2 蓋体取付工程
SC1 係止片挿入工程
SC2 係止片折曲工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器において、
前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に開口部を設け、該開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を設けたことを特徴とする車両用蒸散器。
【請求項2】
車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器において、
前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に、前記発熱体が収容される発熱体収容部を凹設するとともに、該発熱体収容部の開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を設けたことを特徴とする車両用蒸散器。
【請求項3】
前記蓋体を、前記発熱体収容部の前記開口部を覆う蓋本体と、該蓋本体の周縁より延出した係止片とで構成し、
前記発熱体収容部の外周部に、前記係止片を挿入した状態で係止する係止穴を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用蒸散器。
【請求項4】
車両のアクセサリーソケットに着脱されるプラグ部を備えた蒸散器本体にカートリッジ収容部が設けられ、前記プラグ部を介して供給された電源で発熱体を発熱して前記カートリッジ収容部にセットされた前記カートリッジ内の液体薬剤を加熱して蒸散させる車両用蒸散器の製造方法において、
前記カートリッジが接する前記カートリッジ収容部の接触面に凹設された発熱体収容部に前記発熱体を収容する発熱体収容工程と、
前記発熱体収容部の開口部に、前記発熱体を収容状態に維持する金属製の蓋体を取り付ける蓋体取付工程と、
を備えたことを特徴とする車両用蒸散器の製造方法。
【請求項5】
前記蓋体取付工程は、
前記蓋体の周縁より延出した係止片を前記発熱体収容部の外周部に設けられた係止穴に挿入する係止片挿入工程と、
前記係止穴を挿通した前記係止片の先端部を折曲する係止片折曲工程と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の車両用蒸散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−149968(P2008−149968A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342002(P2006−342002)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】