説明

車両用表示装置

【課題】車両用表示装置において表示制御系の異常に対するロバスト性を高めること。
【解決手段】画素を配列してなる画面24に車両情報28を画像表示する表示モニタ20と、車両情報28の表示を制御するための制御信号を表示モニタ20へ伝達する信号経路33,38を有し、画面24の各画素の駆動状態を規定する駆動データに基づいた制御信号を生成する表示制御系30であって、画面24において車両情報28を表示する領域外の画素に関する駆動データを監視用駆動データとして、当該監視用駆動データを予め設定された制御パターンにて変化させる表示制御系30と、信号経路33,38により伝達される制御信号を監視し、それら制御信号の少なくとも一方の表す監視用駆動データの変化パターンが制御パターンと異なる異常時に、表示制御系30の作動状態をリセットする監視回路50とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を画像表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画素を配列してなる画面に車両情報を画像表示する液晶モニタ等の表示モニタを備え、例えば計器類として利用される車両用表示装置が知られている。
【0003】
このような車両用表示装置では、表示モニタによる車両情報の表示が異常によりロック等すると、ユーザによる車両運転に影響を与えることとなる。そこで、特許文献1には、表示モニタを照明する光源の発光状態を変化させることにより、当該異常をユーザへ通知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−96660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術は、表示モニタによる車両情報の表示を制御する表示制御系に対して電力を供給する電源ラインの異常を対象とするものであり、かかる表示制御系の異常には対応できない。また、特許文献1に開示の技術は、異常をユーザへ通知するものに過ぎず、異常自体を解消することはできないため、異常に対するロバスト性の点で問題がある。
【0006】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両用表示装置において車両情報の表示を制御する表示制御系の異常に対するロバスト性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、画素を配列してなる画面を有し、当該画面に車両情報を画像表示する表示モニタと、車両情報の表示を制御するための制御信号を表示モニタへ伝達する信号経路を有し、表示モニタの画面の各画素の駆動状態を規定する駆動データに基づいた制御信号を生成する表示制御系であって、表示モニタの画面において車両情報を表示する領域外の画素に関する駆動データを監視用駆動データとして、当該監視用駆動データを予め設定された制御パターンにて変化させる表示制御系と、信号経路により伝達される制御信号を監視し、当該制御信号の表す監視用駆動データの変化パターンが制御パターンと異なる異常時に、表示制御系の作動状態をリセットする監視手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような請求項1に記載の発明によると、表示モニタの画面の各画素の駆動状態を規定する駆動データのうち、当該画面において車両情報を表示する領域外の画素に関する監視用駆動データにつき、予め設定された制御パターンにて変化させられる。故に、監視用駆動データを含んだ駆動データに基づいて生成される制御信号が表示制御系の信号経路により伝達される表示モニタの画面では、異常が生じない限りにおいて、車両情報が当該監視用駆動データの変化に拘らず正しく表示されることとなる。
【0009】
しかも請求項1に記載の発明によると、表示制御系の信号経路により伝達される制御信号が監視されて、当該制御信号の表す監視用駆動データの変化パターンが予め設定の制御パターンと異なる異常時には、表示制御系の作動状態がリセットされる。故に、車両情報の表示をロック等させる異常が表示制御系に生じて、制御信号の表す監視用駆動データが本来の制御パターンとは異なるパターンにて変化する事態となっても、作動状態のリセットにより当該異常を解消して表示制御系を正常状態に復帰させることが可能となる。こうしたリセット作用によれば、表示制御系の異常に対するロバスト性を高めることができるのである。
【0010】
請求項2に記載の発明において監視手段は、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データの変化パターンが制御パターンと繰り返し異なる場合を異常と判定して、表示制御系の作動状態をリセットする。この発明によると、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データについて、その変化パターンが予め設定の制御パターンと繰り返し異なる異常時に、表示制御系のリセット作用が発揮されることになる。これによれば、判定の繰り返しによりリセット作用の必要な異常時を正確に判断し得るので、異常に対するロバスト性を適正に高めることができるのである。
【0011】
請求項3に記載の発明において表示制御系は、表示モニタの画面において車両情報を表示する領域外の複数の画素に関する監視用駆動データを制御パターンにて変化させ、監視手段は、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データの変化パターンが少なくとも一つの画素に関して制御パターンと異なる異常時に、表示制御系の作動状態をリセットする。この発明によると、表示モニタの画面において車両情報を表示する領域外の複数の画素に関する監視用駆動データにつき、その変化パターンが少なくとも一つの画素に関して予め設定の制御パターンと異なる異常時に、表示制御系のリセット作用が発揮されることになる。これによれば、複数画素に関する監視用駆動データに基づくことでリセット作用の必要な異常時を正確に判断し得るので、異常に対するロバスト性を適正に高めることができるのである。
【0012】
請求項4に記載の発明において表示制御系は、監視用駆動データを制御パターンにて変化させてなる制御信号としての第一制御信号を生成する制御回路と、制御回路から第一制御信号を伝達する信号経路としての第一信号経路と、第一信号経路により伝達される第一制御信号に従って各画素の駆動状態を制御する制御信号としての第二制御信号を生成する駆動回路と、駆動回路から表示モニタへ第二制御信号を伝達する信号経路としての第二信号経路と、を有し、監視手段は、第一信号経路及び第二信号経路によりそれぞれ伝達される第一制御信号及び第二制御信号を監視し、それら制御信号の表す監視用駆動データのうち少なくとも一方の変化パターンが制御パターンと異なる異常時に、表示制御系の作動状態をリセットする。この発明によると、監視用駆動データを制御パターンにて変化させてなる制御信号として制御回路が生成し且つ第一信号経路により駆動回路へ伝達の第一制御信号と、当該第一制御信号に従って各画素の駆動状態を制御する制御信号として駆動回路が生成し且つ第二信号経路により表示モニタへ伝達の第二制御信号とが監視対象となる。ここで表示制御系のリセット作用は、監視対象である第一制御信号及び第二制御信号の表す監視用駆動データのうち少なくとも一方の変化パターンが予め設定の制御パターンと異なる異常時に、発揮されることになる。これによれば、第一信号経路を挟んで制御回路及び駆動回路を備えた一般的な構成の表示制御系につき、異常に対するロバスト性を確実に高めることができるのである。
【0013】
請求項5に記載の発明において制御パターンは、監視用駆動データを一定の制御周期にて変化させるパターンである。この発明によると、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データが一定周期変化の制御パターンと異なるパターンにて変化する異常時に、表示制御系の作動状態がリセットされることになる。これによれば、正常時には一定周期で変化する監視用駆動データに基づくことでリセット作用の必要な異常時を判断し易くなるので、異常に対するロバスト性を確実に高めることができるのである。
【0014】
請求項6に記載の発明において駆動データは、表示モニタの画面の各画素の駆動状態であるオン状態及びオフ状態を2値により規定し、制御パターンは、監視用駆動データを一定の制御周期にて2値の間で変化させるパターンであり、監視手段は、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データの値が制御周期の経過前後に同一となる場合を異常と判定して、表示制御系の作動状態をリセットする。この発明によると、表示モニタの画面の各画素の駆動状態であるオン状態及びオフ状態を2値により規定する駆動データのうち、信号経路により伝達される制御信号の表す監視用駆動データについて、当該2値間での一定周期変化が生じることになる。これによれば、正常時には制御周期の経過前後で異なる監視用駆動データの値が同一となる異常時を正確に判断し易くなるので、異常に対するロバスト性を適正且つ確実に高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の機械的構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す車両用表示装置の正面図である。
【図4】図3に示す液晶パネルの要部を拡大して示す模式図である。
【図5】図2に示す車両用表示装置の制御回路及び駆動回路がそれぞれ生成する第一制御信号(a)及び第二制御信号(b)について説明するための模式図である。
【図6】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の作動フローを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の機械的構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0017】
(第一実施形態)
図1及び図2はそれぞれ、本発明の第一実施形態による車両用表示装置1の機械的構成及び電気的構成を示している。車両において運転席前方のインストルメントパネルに設置される車両用表示装置1は、装置ハウジング10、表示モニタ20、表示制御系30及び監視回路50を備えている。
【0018】
図1及び図3に示すように、樹脂により中空箱状に形成の装置ハウジング10は、運転席と対向して配置される表示窓12を有している。装置ハウジング10は、車両用表示装置1の他の要素20,30,50を収容している。
【0019】
表示モニタ20は、モニタケース21及び液晶パネル23等から構成されている。金属により中空箱状に形成のモニタケース21は、表示窓12の背後にて開口する表示開口22を有している。ドットマトリクス型の液晶パネル23は、縦方向の信号配線と横方向の走査線配線との交点に接続されるモノクロ液晶画素を2次元方向に配列してなる画面24を有し、当該画面24が表示開口22の背後に臨む形態でモニタケース21に収容されている。液晶パネル23の画面24には、矩形の中央画素領域25及びその外周枠形の外周画素領域26が設定されている。
【0020】
中央画素領域25は、表示開口22により運転席側に露出して車両情報28を画像表示する画素の集合領域である。ここで、中央画素領域25により表示の車両情報28は、車両の状態値を指示するための画像情報、特に本実施形態では車速値を指示するための計器画像情報とされている。外周画素領域26は、モニタケース21により覆われて車両情報28の表示に関与しない画素の集合領域である。ここで図4に拡大して示すように、外周画素領域26のうち特定の複数画素26aについては、特に本実施形態では縦方向に並ぶ4つの画素26aについては、表示制御系30の異常を監視するための監視用画素26aとされている。
【0021】
図1及び図2に示すように表示制御系30は、制御回路31、第一信号経路33、駆動回路35、第二信号経路38及び走査信号経路39等から構成されている。
【0022】
制御回路31は、メモリ32を有するマイクロコンピュータを主体した電子回路であり、装置ハウジング10内においてモニタケース21外となる箇所に配置されている。制御回路31は、液晶パネル23の画面24の各構成画素を駆動することにより中央画素領域25に車両情報28を表示するための駆動データを、メモリ32に予め記憶している。ここで駆動データは、画面24の各構成画素の駆動状態を1ビットの数値により、特に本実施形態では当該駆動状態としてのオン状態及びオフ状態をそれぞれ「1」及び「0」の2値により規定したマトリクスデータである。
【0023】
制御回路31は、車両の状態値として車速を検出する状態値センサ2と接続されている。制御回路31は、状態値センサ2の検出値に対応した車両情報28の表示を制御するために、制御プログラムを実行する。かかる制御プログラムの実行により制御回路31は、メモリ32から読み出した駆動データに基づいて外周画素領域26の各監視用画素26aに関する監視用駆動データを所定の制御パターンにて変化させ、当該変化後の監視用駆動データを含む駆動データを図5(a)の如く信号電圧にて表すように第一制御信号を生成する。ここで制御パターンは、各監視用画素26aに関する監視用駆動データの2値の組み合わせを一定の制御周期τにて変化させるように、特に本実施形態では第一組み合わせ「1,0,1,0」と第二組み合わせ「0,0,0,0」との間で変化させるように予め設定されている。尚、制御周期τについては、表示制御系30の異常を監視するのに適切な時間、例えば0.1秒等の時間とされる。
【0024】
第一信号経路33を介して駆動回路35と接続される制御回路31は、生成した第一制御信号を当該信号経路33により伝達する。また、監視回路50と接続される制御回路31は、当該監視回路50からのリセット信号の入力に応じて作動状態がリセット(初期化)されるようになっている。したがって、かかるリセット作用により制御回路31は、第一制御信号を生成する制御プログラムを一旦中止して、再度実行することとなる。
【0025】
駆動回路35は、液晶用ドライバICを主体とした電子回路であり、装置ハウジング10内においてモニタケース21に収容されている。アクティブマトリクス駆動を実現する駆動回路35は、メイン回路部36及び走査回路部37を有している。第一信号経路33に接続されるメイン回路部36は、当該信号経路33により伝達される第一制御信号に応じて第二制御信号及び走査制御信号を生成する。ここで第二制御信号は、液晶パネル23において画面24の各構成画素に接続の各信号線配線へと印加する信号であり、それら構成画素の駆動状態を第一制御信号の表す駆動データに従って制御する電圧に図5(b)の如く設定される。したがって、かかる設定により第二制御信号は、画面24の各構成画素のオン状態及びオフ状態について「1」及び「0」の2値により規定する駆動データを、信号電圧にて表すものとなる。尚、図5(b)は、監視用駆動データを表すように生成されて、画面24のうち外周画素領域26の各監視用画素26aに接続される信号線配線に印加の制御信号を例示している。
また一方、走査制御信号は、画面24の各構成画素に接続の各走査線配線に選択パルスを印加して、それら構成画素に第二制御信号の電圧を書き込むタイミングを走査回路部37へ指令する信号である。したがって、かかる走査制御信号に応じて走査回路部37は、各走査線配線に印加する選択パルスを第二制御信号に同期したタイミングにて生成することとなる。
【0026】
駆動回路35においてメイン回路部36及び走査回路部37は、それぞれ第二信号経路38及び走査信号経路39を介して液晶パネル23に接続されている。駆動回路35は、メイン回路部36により生成の第二制御信号を第二信号経路38により液晶パネル23の各信号線配線へ伝達すると共に、走査回路部37により当該第二制御信号と同期して生成の選択パルスを液晶パネル23の各走査線配線へ伝達する。
【0027】
「監視手段」としての監視回路50は、信号電圧のピックアップ機能を有する電子回路であり、装置ハウジング10内においてモニタケース21外となる箇所に制御回路31から分離して配置されている。第一信号経路33及び第二信号経路38に接続される監視回路50は、それら信号経路33,38により伝達される第一及び第二制御信号の電圧をピックアップして監視する。かかる監視により監視回路50は、第一及び第二制御信号の表す駆動データのうち少なくとも一つの監視用画素26aに関する監視用駆動データにつき、その変化パターンが制御回路31による制御パターンと異なる場合にリセット信号を生成する。即ち、第一及び第二制御信号の少なくとも一方が表す監視用駆動データにつき、2値の組み合わせが制御パターンと異なるパターンにて変化する異常時には、監視回路50からのリセット信号の入力によって制御回路31の作動状態がリセットされることとなる。
【0028】
次に、以上説明した車両用表示装置1の作動フローを、図6のフローチャートに従って詳細に説明する。尚、かかる作動フローは、車両のイグニッションスイッチがオン状態となるのに応じて開始され、当該イグニッションスイッチがオフ状態となるのに応じて終了する。
【0029】
作動フローのステップS101では、車速の検出値を制御回路31が状態値センサ2から取得する。次にステップS102では、ステップS101により取得した検出値に対応の駆動データを、制御回路31においてメモリ32から読み出す。続いてステップS103では、ステップS101により読み出した駆動データのうち各監視用画素26aに関する監視用駆動データの2値の組み合わせを、制御回路31が第二組み合わせ「0,0,0,0」に初期設定する。
【0030】
ステップS103又は後に詳述のステップS110〜S112から移行するステップS104では、現在規定の駆動データのうち各監視用画素26aに関する監視用駆動データの2値の組み合わせが第一組み合わせ「1,0,1,0」であるか否かを、制御回路31が判定する。その結果、肯定判定がなされた場合に移行するステップS105により制御回路31は、現在規定の駆動データのうち各監視用画素26aに関する監視用駆動データの2値の組み合わせを、第一組み合わせ「1,0,1,0」から第二組み合わせ「0,0,0,0」へと変化させる。また一方、否定判定がなされた場合に移行するステップS106により制御回路31は、現在規定の駆動データのうち各監視用画素26aに関する監視用駆動データの2値の組み合わせを、第二組み合わせ「0,0,0,0」から第一組み合わせ「1,0,1,0」へと変化させる。
【0031】
ステップS105,S106のいずれが終了した後においても、ステップS107へ移行する。ステップS107では、直前のステップS105又はS106により監視用駆動データを変化させてなる駆動データを表した第一制御信号を、制御回路31により生成して第一信号経路33により駆動回路35へと伝達する。また、それに応じてステップS107では、第二制御信号及び選択パルスを駆動回路35により生成してそれぞれ第二信号経路38及び走査信号経路39により表示モニタ20の液晶パネル23へと伝達する。以上の結果、表示制御系30が正常な限りにおいて液晶パネル23の画面24では、モニタケース21により覆われた外周画素領域26の各監視用画素26aが監視用駆動データの変化に従って駆動されるものの、車両情報28は中央画素領域25に正しく表示されることとなる。
【0032】
ステップS107により第一及び第二信号経路33,38が伝達する第一及び第二制御信号を監視の監視回路50は、ステップS108において当該監視結果に基づき表示制御系30の異常を判定する。具体的には、直前のステップ105又はS106による変化前の組み合わせを基準組み合わせとし、第一及び第二制御信号の少なくとも一方が表す監視用駆動データの2値の組み合わせが当該基準組み合わせと同一であるか否かを判定する。ここで本実施形態の監視回路50では、車両のイグニッションスイッチがオン状態となるのに応じて、初回のステップS108の基準組み合わせを制御回路31によるステップS101の場合と同じ第二組み合わせ「0,0,0,0」に初期設定する。さらに監視回路50では、後に詳述の如きステップS110〜S112によって繰り返される2回目以降のステップS108の基準組み合わせを、それぞれ1つ前の回のステップS108における基準組み合わせとは逆に設定する。以上より、作動フローの開始から奇数回目のステップS108では第二組み合わせ「0,0,0,0」を、また偶数回目のステップS108では第一組み合わせ「1,0,1,0」を基準組み合わせとして、ステップ105又はS106による変化前の組み合わせと自動的に一致させることができるのである。
【0033】
ステップS108により異常判定がなされた場合、即ち第一及び第二制御信号の少なくとも一方が表す監視用駆動データの2値の組み合わせがステップ105又はS106による変化前の組み合わせと同一となる異常時には、ステップS109へ移行する。ステップS109では、監視回路50が内部タイマをカウントする。また続くステップS110では、タイマのカウント時間が設定時間Ts以上であるか否かを、監視回路50が判定する。その結果、否定判定がなされた場合にはステップS104へと戻ってその後続ステップを繰り返すが、肯定判定がなされた場合にはステップS104へ戻る前にステップS111を実行して、監視回路50から制御回路31へリセット信号を入力する。したがって、ステップS108による異常判定が設定時間Ts以上繰り返された場合には、制御回路31の作動状態がリセットされることになるので、当該異常判定の精度が高められ得る。これによれば、偶発的な信号異常や一時的な判定不良等に起因して制御回路31が誤ってリセットされる事態を、抑制できるのである。尚、設定時間Tsについては、制御周期τに応じて異常判定を適切回数繰り返すのに必要な時間、例えば1秒等の時間とされる。
【0034】
一方、ステップS108により正常判定がなされた場合、即ち第一及び第二制御信号の少なくとも一方が表す監視用駆動データの2値の組み合わせがステップ105又はS106による変化前の組み合わせと異なる正常時には、ステップS112へ移行する。ステップS112では、監視回路50がタイマのカウントを停止並びにリセットした後、ステップS104へと戻ってその後続ステップを繰り返すことになる。
【0035】
以上の作動フローにおいて、ステップS104の実行開始からステップS110〜S112のいずれかを経てステップS104へと戻るまでの時間は、上述した制御周期τに調整されている。したがって、ステップS105又はS106による組み合わせの変化並びにステップS108の基準組み合わせの設定は、第一組み合わせ「1,0,1,0」及び第二組み合わせ「0,0,0,0」を一定の制御周期τ毎に交互に実現する制御パターンに従うものとなる。これによれば、第一及び第二制御信号の少なくとも一方が表す複数画素26aの監視用駆動データについてステップS108では、2値の組み合わせが一定周期変化の制御パターンとは異なるパターンにて変化する異常を、容易に正しく判定し得るのである。
【0036】
ここまで説明した第一実施形態によると、表示制御系30の異常時を正確に判断して、当該異常時における表示制御系30の制御回路31をリセット作用によって正常状態へと復帰可能となる。このような第一実施形態によれば、表示制御系30の異常に対するロバスト性を高めて、車両運転を妨げる車両情報28の表示ロック等を回避することができるのである。
【0037】
(第二実施形態)
図7に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態の表示制御系230において駆動回路35は、装置ハウジング10内のうちモニタケース21外に配置される制御回路31と同一パッケージ化(当該制御回路31の一機能部として実現されるものも含む)されている。それに応じて第二実施形態の監視回路250は、第一信号経路33と第二信号経路38とのうち図8の如く後者のみに接続される「監視手段」として、当該接続対象38が伝達する第二制御信号を監視する。
【0038】
かかる監視により監視回路250は、第二制御信号の表す監視用駆動データにつき2値の組み合わせが制御パターンと異なるパターンにて変化する異常を、作動フローのステップS108により容易に正しく判定し得る。したがって、第二実施形態によっても、表示制御系230の異常に対するロバスト性を高めて、車両運転を妨げる車両情報28の表示ロック等を回避することができるのである。
【0039】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0040】
具体的に車両用表示装置1は、表示モニタ20の画面24に表示の車両情報28を車両のフロントウインドシールド又は専用のコンバイナへ投射して運転席側に虚像表示させるものであってもよい。また、表示モニタ20については、カラーフィルタを設けたカラー液晶画素からなる液晶パネル23の画面24に車両情報28を表示するものであってもよいし、液晶パネル23以外の例えばEL(Electro-Luminescence)パネル等の画面24に車両情報28を表示するものであってもよい。さらに車両情報28については、車速以外の例えばエンジン回転数、燃料残量、冷却水温度等の車両状態値を指示するための計器画像情報や、例えばシートベルト異常、バッテリ異常、タイヤ圧異常等の車両異常を警告するための警告画像情報であってもよい。
【0041】
表示モニタ20の画面24を構成する画素のうち監視用画素26aとしては、車両情報28を表示する領域25外の領域26を構成する画素のうち適数を選択可能である。尚、領域26の特定の1つの画素26aを監視用画素26aとする場合には、例えば監視用駆動データの値を制御パターンである一定の制御周期τにて変化させ、当該周期τの経過前後における当該値を比較して異常を判定するように作動フローを変更することとなる。
【0042】
監視回路50,250については、リセット信号の入力により制御回路31の作動状態をリセットするもの以外にも、制御回路31へ電力を供給する電源ラインを一旦オフ状態としてからオン状態へ戻すことにより制御回路31の作動状態をリセットするものであってもよい。また、監視回路50,250については、制御回路31と1パッケージ化してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用表示装置、2 状態値センサ、10 装置ハウジング、12 表示窓、20 表示モニタ、21 モニタケース、22 表示開口、23 液晶パネル、24 画面、25 中央画素領域、26 外周画素領域、26a 監視用画素、28 車両情報、30,230 表示制御系、31 制御回路、32 メモリ、33 第一信号経路、35 駆動回路、36 メイン回路部、37 走査回路部、38 第二信号経路、39 走査信号経路、50,250 監視回路(監視手段)、τ 制御周期、Ts 設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を配列してなる画面を有し、当該画面に車両情報を画像表示する表示モニタと、
前記車両情報の表示を制御するための制御信号を前記表示モニタへ伝達する信号経路を有し、各前記画素の駆動状態を規定する駆動データに基づいた前記制御信号を生成する表示制御系であって、前記画面において前記車両情報を表示する領域外の前記画素に関する前記駆動データを監視用駆動データとして、当該監視用駆動データを予め設定された制御パターンにて変化させる表示制御系と、
前記信号経路により伝達される前記制御信号を監視し、当該制御信号の表す前記監視用駆動データの変化パターンが前記制御パターンと異なる異常時に、前記表示制御系の作動状態をリセットする監視手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記監視手段は、前記信号経路により伝達される前記制御信号の表す前記監視用駆動データの変化パターンが前記制御パターンと繰り返し異なる場合に前記異常と判定して、前記表示制御系の作動状態をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示制御系は、前記画面において前記車両情報を表示する領域外の複数の前記画素に関する前記監視用駆動データを前記制御パターンにて変化させ、
前記監視手段は、前記信号経路により伝達される前記制御信号の表す前記監視用駆動データの変化パターンが少なくとも一つの前記画素に関して前記制御パターンと異なる前記異常時に、前記表示制御系の作動状態をリセットすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示制御系は、
前記監視用駆動データを前記制御パターンにて変化させてなる前記制御信号としての第一制御信号を生成する制御回路と、
前記制御回路から前記第一制御信号を伝達する前記信号経路としての第一信号経路と、
前記第一信号経路により伝達される前記第一制御信号に従って各前記画素の駆動状態を制御する前記制御信号としての第二制御信号を生成する駆動回路と、
前記駆動回路から前記表示モニタへ前記第二制御信号を伝達する前記信号経路としての第二信号経路と、
を有し、
前記監視手段は、前記第一信号経路及び前記第二信号経路によりそれぞれ伝達される前記第一制御信号及び前記第二制御信号を監視し、それら制御信号の表す前記監視用駆動データのうち少なくとも一方の前記変化パターンが前記制御パターンと異なる異常時に、前記表示制御系の作動状態をリセットすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記制御パターンは、前記監視用駆動データを一定の制御周期にて変化させるパターンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記駆動データは、各前記画素の駆動状態であるオン状態及びオフ状態を2値により規定し、
前記制御パターンは、前記監視用駆動データを前記制御周期にて前記2値の間で変化させるパターンであり、
前記監視手段は、前記信号経路により伝達される前記制御信号の表す前記監視用駆動データの値が前記制御周期の経過前後で同一となる場合を前記異常と判定して、前記表示制御系の作動状態をリセットすることを特徴とする請求項5に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237287(P2010−237287A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82681(P2009−82681)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】