説明

車両用表示装置

【課題】視認者に視認され易く且つ検出区域における検出対象物の位置を表すことができる警告像を投影する車両用表示装置の提供。
【解決手段】車両前方の検出区域6に存在する検出対象物を警告するため、車両のウィンドスクリーン9に規定される投影範囲10に警告像2を投影するナイトビューシステム100である。ナイトビュー制御回路20は、検出区域6を、車両に対する相対方向及び相対距離に応じて複数に分割して分割区域を形成し、検出対象物を分割区域毎に検出する。そして、ナイトビュー制御回路20は、検出対象物の車両に対する相対位置に、投影範囲10における警告像2の投影位置を関連付ける。このナイトビュー制御回路20によって制御される表示器40は、当該ナイトビュー制御回路20によって関連付けられた投影範囲10における左右方向及び上下方向の投影位置に、検出対象物を警告する警告像2を投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウィンドスクリーンに像を投影する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の予め設定された検出区域に存在する歩行者等を運転者に警告するため、車両のウィンドスクリーンに当該歩行者等を警告する像を投影する装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の車両用表示装置は、車両に対する歩行者等の左右の相対方向及び相対距離を検出するレーザーレーダと、ウィンドスクリーンに歩行者等を警告する格子状のドット情報を投影する表示手段とを備えている。加えて車両用表示装置は、レーザーレーダが検出した歩行者等の左右の相対方向及び車両からの相対距離に対応させたドット情報を表示手段に表示させる表示制御手段を備えている。以上の構成によってウィンドスクリーンに表示されるドット情報は、運転者の視認上において、実際の歩行者等に重畳することにより、車両前方の検出区域における当該歩行者等の位置を強調して表すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−217682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1に記載の車両用表示装置では、表示手段によって投影されるドット情報を実際の歩行者と重畳することによって、レーザーレーダによって検出された検出区域の歩行者等の位置が強調して表される。しかしこの車両用表示装置では、実際の歩行者等にドット情報を重畳しなければならないので、当該ドット情報の投影される範囲は、ウィンドスクリーンにおいて運転者に視認され難い範囲にまで及んでしまうこととなる。故に、ドット情報が投影される投影位置によっては、当該ドット情報を運転者が見逃してしまう事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、視認者に視認され易く且つ検出区域における検出対象物の位置を表すことができる警告像を投影する車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両に搭載され、車両の前方に予め設定された検出区域に存在する検出対象物を警告するため、当該車両のウィンドスクリーンに規定される投影範囲に警告像を投影する車両用表示装置であって、車両に対する検出区域の左右の相対方向及び相対距離に応じて当該検出区域を複数に分割して分割区域を形成し、検出対象物を分割区域毎に検出する検出手段と、各分割区域について、検出区域における当該分割区域の左右の相対方向に、投影範囲における警告像の左右方向の投影位置を関連付けると共に、検出区域における当該分割区域の車両からの相対距離が遠くなるほど、投影範囲において警告像の上下方向の投影位置が上方となるように関連付ける関連付け手段と、検出対象物が現在検出されている分割区域に対して関連付け手段によって関連付けられる投影範囲の左右方向及び上下方向の投影位置に、当該検出対象物を警告する警告像を投影する投影手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置とする。
【0007】
この発明によれば、ウィンドスクリーンに形成される投影範囲において、検出対象物の存在を警告するため警告像が投影される投影位置は、車両前方の検出区域を複数に分割した各分割区域の当該検出区域における位置に応じて、関連付け手段により関連付けられる。具体的には、投影範囲において警告像が投影される左右方向の投影位置は、検出区域における分割区域の左右の相対方向に関連付けられる。加えて、投影範囲において警告像が投影される上下方向の投影位置は、検出区域における分割区域の車両に対する相対距離が遠くなるほど上方となるように関連付けられる。故に、投影手段によって投影される警告像は、投影範囲における投影位置によって、検出対象物が現在検出されている分割区域の位置、ひいては当該検出対象物の車両に対する相対位置を表すことができる。
【0008】
加えて以上の構成では、投影範囲における警告像の投影位置は、検出対象物の車両に対する相対位置を表している。故に、ウィンドスクリーンにおいて視認者に視認され易い範囲内に、警告像の投影される投影範囲を規定することにより、当該投影範囲に投影される警告像は、視認者に見逃され難くなる。
【0009】
以上により、視認者に視認され易く且つ検出区域における検出対象物の位置を表すことができる警告像を投影する車両用表示装置が実現される。
【0010】
請求項2に記載の発明では、検出手段は、検出区域を撮像する撮像部と、撮像部によって映される検出区域の前方画像を分割することによって、複数の画像領域を規定する規定部と、各画像領域から検出対象物の画像を抽出することによって、各画像領域に撮影される各分割区域に存在する検出対象物を分割区域毎に検出する抽出部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、検出手段は、撮像部によって映される車両前方の検出区域の前方画像から、検出対象物の画像を抽出部によって抽出することにより、検出対象物を検出する。このように検出対象物の画像を抽出する構成により、検出手段は、検出区域に存在する物体から、検出対象物を正確に選別して検出することができるようになる。
【0012】
加えて、前方画像を分割することによって規定される各画像領域から、検出対象物の画像を抽出することによって、検出手段は、各分割区域に存在する検出対象物を当該分割区域毎に検出することができる。
【0013】
以上の構成により、検出手段は、検出対象物を分割区域毎に正確に検出することができる。このような検出対象物の正確な検出に基づいて投影される警告像は、投影される投影範囲が限られていても、当該投影範囲における投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対位置を的確に表すことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、規定部は、車両の周辺の区域を撮像する周辺画像領域と、周辺画像領域に映される区域よりも車両からの相対距離が遠い区域を撮像する遠方画像領域と、を画像領域として規定し、遠方画像領域は、前方画像において上下方向の上方部且つ左右方向の中央部に位置する領域を分割することにより規定され、周辺画像領域は、前方画像において遠方画像領域を左右及び下側から囲むように規定されることを特徴とする。
【0015】
この発明において、検出区域を映す前方画像では、検出対象物は、車両からの相対距離が遠ざかるほど、上下方向において上方に映り、且つ左右方向において中央に映るようになる。故に、車両からの相対距離を画像領域の分割に正確に反映させるためには、車両からの相対距離が遠い区域を撮像する遠方画像領域は、前方画像において上下方向の上方部且つ左右方向の中央部を分割することにより規定されるのがよい。一方、車両の周辺の区域を撮像する周辺画像領域は、前方画像において遠方画像領域を左右及び下側から囲むように規定されるのがよい。
【0016】
このように、検出対象物までの相対距離を正確に反映させて遠方画像領域及び周辺画像領域を規定することにより、投影範囲に投影される警告像は、当該投影範囲への投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対距離をさらに的確に表すことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、周辺画像領域において遠方画像領域の下側に位置する中央周辺画像領域と、当該遠方画像領域との間の境界線が、中央周辺画像領域側から遠方画像領域側に凸となるよう形成されていることを特徴とする。
【0018】
例えば、車両前方の検出区域を検出対象物が横切る場合、前方画像における当該検出対象物の画像は、前方画像内を左右方向に移動する。すると、遠方画像領域を左右及び下側から囲むように規定される周辺画像領域の形状に起因して、当該周辺画像領域に位置していた検出対象物の画像が、遠方画像領域に移動してしまう場合が生じ得る。この場合、検出対象物が車両から離れていないにもかかわらず、警告像の投影位置は、当該検出対象物が車両から離れたように変更されてしまうおそれがある。
【0019】
そこでこの発明では、周辺画像領域において遠方画像領域の下側に位置する中央周辺画像領域と、当該遠方画像領域との間の境界線が、中央周辺領域側から遠方画像領域側に凸となるよう形成されている。すると、検出対象物の画像は、左右方向に移動しても、遠方画像領域側に凸となるよう形成された境界線によって拡大された周辺画像領域内に留まり得る。故に、車両前方の検出区域を横切る検出対象物の移動に対して、当該検出対象物が車両から離れたかのように警告像の投影位置が変更されてしまう事態は、防がれ得る。したがって、警告像は、検出区域を横切る検出対象物に対しても、投影範囲における投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対位置を的確に表し続けることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、抽出部は、周辺画像領域から一旦抽出した検出対象物の画像が、当該周辺画像領域から遠方画像領域に移動した場合であっても、当該周辺画像領域から検出対象物の画像が検出されていると判定し、投影手段は、周辺画像領域に映される分割区域に対して関連付けられる投影範囲の左右方向及び上下方向の投影位置に、検出対象物を警告する警告像を投影することを特徴とする。
【0021】
上述したように、車両前方の検出区域を検出対象物が横切る場合、検出対象物が車両から離れていないにもかかわらず、警告像の投影位置は、当該検出対象物が車両から離れたように変更されてしまうおそれがある。そこでこの発明では、周辺画像領域から一旦抽出した検出対象物の画像が、この周辺画像領域から遠方画像領域に移動した場合であっても、抽出部は、検出対象物の画像は周辺画像領域から抽出されていると判定し続ける。この抽出部の判定によって、投影手段は、周辺画像領域に映される分割区域に対して関連付けられる投影範囲の左右方向及び上下方向の投影位置に、警告像を投影し続けることができる。故に、上述した構成でも、車両前方の検出区域を横切る検出対象物の移動に対して、当該検出対象物が車両から離れたかのように警告像の投影位置が変更されてしまう事態は、防がれ得る。したがって、警告像は、検出区域を横切る検出対象物に対しても、投影範囲における投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対位置を的確に表し続けることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明では、規定部は、遠方画像領域よりも周辺画像領域を予め多く規定することを特徴とする。
【0023】
この発明では、検出対象物が車両に近接しているときほど、検出区域における検出対象物の移動量が僅かでも、当該検出区域を映す前方画像における検出対象物の画像の移動量は大きくなる。故に、周辺画像領域は、遠方画像領域よりも予め多く規定されることが望ましい。周辺画像領域である画像領域を多く規定することにより、警告像の投影位置は、車両周辺における検出対象物の僅かな移動に対しても追従できるようになる。したがって、警告像は、投影範囲における投影位置によって、車両に対する検出対象物の相対方向の変化を詳細に表し続けることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、周辺画像領域に映る分割区域に検出対象物が存在している際に警告像として投影される周辺警告像は、遠方画像領域に映る分割区域に検出対象物が存在している際に警告像として投影される遠方警告像よりも大きいことを特徴とする。
【0025】
一般に、検出区域の検出対象物は、車両との相対距離が近いほど、視認者に大きく視認されるようなる。故にこの発明では、周辺画像領域に映る車両周辺の分割区域に検出対象物が存在している際に投影される周辺警告像は、遠方画像領域に映る遠方の分割区域に検出対象物が存在している際に投影される遠方警告像よりも大きくされている。このように、検出対象物までの相対距離に応じて大きさが変更される警告像は、当該警告像の大きさによって視認者に検出対象物までの相対距離を知覚させることができる。このように投影範囲における投影位置に加えて、投影される大きさも検出対象物までの相対距離に応じて変更される警告像は、検出対象物までの相対距離を確実に表すことができる。したがって、限られた投影範囲内において、さらに確実且つ的確に検出対象物の相対位置を表すことができる警告像を投影する車両用表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムが搭載される車両において、ウィンドスクリーンに投影される警告像を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムが、ウィンドスクリーンに警告像を投影する仕組みを説明するための図である。
【図3】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムの構成を概略的に示す構成図である。
【図4】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムにおいて、警告像を投影するための投影器の構成を詳しく説明するための図である。
【図5】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムにおいて、(a)前方画像から歩行者等を検出する際に、前方画像を複数の画像領域に分割する分割方法を説明するための図であり、(b)ウィンドスクリーンの投影範囲に投影される複数の警告像の構成を説明するための図である。
【図6】車両前方の検出区域を歩行者が横切った際の警告像の表示態様の変化を説明するための図である。
【図7】本発明の第一実施形態によるナイトビューシステムにおいて、ナイトビュー制御回路が実行する制御フローを示すフローチャートである。
【図8】図5の変形例を示す図である。
【図9】図5の別の変形例を示す図である。
【図10】図5のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0028】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態によるナイトビューシステム100を説明する。ナイトビューシステム100は、図1及び図2に示すように、車両のウィンドスクリーン9において、運転者に最も視認され易い、例えば車両の前後方向において運転席と相対する範囲に規定される投影範囲10に、警告像2を投影することができる。この警告像2の投影によって、ナイトビューシステム100は、車両の前方に予め設定された検出区域6(図5(a)参照)に存在する例えば歩行者等の検出対象物の存在を、当該警告像2を視認する運転者等の視認者に警告することができる。尚、図1等では、説明のため便宜的に投影範囲10を二点鎖線で表しているが、実際のウィンドスクリーン9には、投影範囲10を規定する二点鎖線は形成されていない。
【0029】
まず、図3に基づいて、ナイトビューシステム100の構成を説明する。
【0030】
ナイトビューシステム100は、車両に搭載され、近赤外線カメラ30、ナイトビュースイッチ21、表示器40、及びナイトビュー制御回路20を備えている。加えて、ナイトビューシステム100は、近赤外線投光器31、車内Local Area Network(LAN)60、及びコンビネーションメータ50と接続されている。
【0031】
近赤外線カメラ30は、撮像素子により近赤外線光の強度を電気信号に変換して出力するイメージセンサである。近赤外線カメラ30は、例えば車両の車内天井とウィンドスクリーン9との間に設置され(図1参照)、撮像面を車両前方の検出区域6(図5(a)参照)に向けている。近赤外線カメラ30は、夜間や暗所では、近赤外線投光器31より照射された近赤外線光のうち、検出区域6の例えば車両や歩行者等の物体で反射された近赤外線光を検知することにより、車両の前方、例えば40〜250メートル程度の検出区域6を映す前方画像4(図5(a)参照)を生成する。近赤外線カメラ30は、日中では、太陽光が含む近赤外線光のうち、例えば車両や歩行者等の物体で反射された近赤外線光を検知することにより、上述した車両前方の検出区域6を映す前方画像4を生成する。以上のように撮像した前方画像4の映像信号を、近赤外線カメラ30は、ナイトビュー制御回路20へ出力する。
【0032】
ナイトビュースイッチ21は、ナイトビューシステム100の作動を開始させるためのスイッチであって、車両のステアリング付近に設置されている(図1参照)。ナイトビュースイッチ21は、ナイトビュー制御回路20と接続されている。運転者がナイトビュースイッチ21を操作したとき、所定の条件が満たされている場合に、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30及び近赤外線投光器31の作動を開始させる。尚、所定の条件とは、例えば車両のイグニッションがON状態であって且つ車両のヘッドライト(図示しない)が点灯している等の条件である。また、近赤外線投光器31の点灯及び消灯は、ヘッドライトの点灯及び消灯に連動していてもよい。
【0033】
表示器40は、五つの投影器40a〜40eを有している。図4に示すように、各投影器40a〜40eは、板状のバックライト42に、警告像2(図1参照)の意匠を模った印刷を施すことによって形成されている(図4には、投影器40a〜40cを示す)。この印刷によってバックライト42の出射面に、光の出射を遮る遮光部45aと、例えば黄色等の光が出射されるよう着色された透光部45bを形成することにより、警告像2の出射が実現されている。図2に示すように、各投影器40a〜40eは、インスツルメントパネル8の上面に配列されている。各投影器40a〜40eから出射された光がウィンドスクリーン9の投影範囲10に投影されることにより、各投影器40a〜40eは、当該投影範囲10に警告像2を表示する。図3に示すように各投影器40a〜40eは、ナイトビュー制御回路20と接続されており、当該ナイトビュー制御回路20によってバックライト42の点灯及び消灯を制御されている。
【0034】
ナイトビュー制御回路20は、各投影器40a〜40eによる警告像2(図1参照)の投影を制御する。ナイトビュー制御回路20は、各種の演算処理を行うプロセッサ、当該演算処理に用いられるプログラム及び車両に関する情報等が格納されたフラッシュメモリ、及び演算の作業領域として機能するRAM等によって構成されている。加えて、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30から出力された前方画像4の映像信号を取得するための映像入力インターフェース、前方画像4の映像信号をコンビネーションメータ50に逐次出力するための映像出力インターフェース、及び車内LAN60から情報を取得するための情報入力インターフェース等を有している。
【0035】
近赤外線投光器31は、不可視光である波長900〜1500ナノメートル程度の近赤外線光を発する。近赤外線投光器31は、車両のフロントヘッドライトモジュール(図示しない)に設置されており、フロントヘッドライトモジュール内のリフレクタを利用して、近赤外線光を車両前方の検出区域6を含む所定角度範囲に照射している。尚、近赤外線投光器31は、フロントヘッドライトモジュール内に限らず、フロントフロントバンパー等に設置されていてもよい。
【0036】
車内LAN60は、所定のプロトコルを用いて、車載された装置間での情報のやり取りを実現するための車載ネットワークシステムである。この車内LAN60を通じて、ナイトビュー制御回路20は、車両のイグニッションのON/OFF状態、及びフロントヘッドライトの点灯及び消灯の状態等を取得する。
【0037】
コンビネーションメータ50は、インスツルメントパネル8内に、運転席と向かい合うように設置されており(図1参照)、車両に関する種々の情報を運転者等の視認者に報知する。コンビネーションメータ50は、液晶ディスプレイ51を有している。コンビネーションメータ50は、ナイトビューシステム100と接続されており、ナイトビュー制御回路20から出力された前方画像4の映像信号を取得する。コンビネーションメータ50は、取得した前方画像4を液晶ディスプレイ51に表示する。
【0038】
次に、図3及び図5に基づいて、ナイトビュー制御回路20の作動をさらに詳細に説明する。
【0039】
ナイトビュー制御回路20は、車両に対する検出区域6の左右の相対方向及び相対距離に応じて当該検出区域6を複数に分割して分割区域6a〜6eを形成している。ナイトビュー制御回路20は、検出対象物を分割区域6a〜6e毎に検出する。そのために、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30によって映される画像のうち、空が映される領域6zを除く前方画像4を分割することによって、複数の画像領域4a〜4eを規定する。具体的にナイトビュー制御回路20は、車両の周辺の区域を撮像する周辺画像領域4a〜4cと、周辺画像領域4a〜4cに映される区域よりも車両からの相対距離が遠い区域を撮像する遠方画像領域4d,4eとを画像領域として規定する。遠方画像領域4d,4eは、前方画像4において上下方向の上方部且つ左右方向の中央部に位置する領域を分割することにより規定されている。また、周辺画像領域4a〜4cは、前方画像4において遠方画像領域4d,4eを左右及び下側から囲むように規定されている。
【0040】
遠方画像領域4d,4eは、前方画像4の左右方向において二つに分割されている。これにより、左側の遠方画像領域4d及び右側の遠方画像領域4eが規定されている。一方、周辺画像領域4a〜4cは、前方画像4の左右方向において三つに分割されている。これにより、左側の周辺画像領域4a、中央の周辺画像領域4b、右側の周辺画像領域4cが規定されている。このようにナイトビュー制御回路20は、遠方画像領域4d,4eよりも周辺画像領域4a〜4cを予め多く規定している。加えて、遠方画像領域4d,4eの下側に位置する中央の周辺画像領域4bと、当該遠方画像領域4d,4eとの間の境界線5は、中央の周辺画像領域4b側から遠方画像領域4d,4e側に凸となるよう形成されている。これにより、中央の周辺画像領域4bは、台形状に遠方画像領域4d,4eに突き出している。
【0041】
以上のように、ナイトビュー制御回路20によって規定される各画像領域4a〜4eに映る区域が、各分割区域6a〜6eである。ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30から前方画像4を取得し、画像認識に適したデジタル情報に変換する。そして、ナイトビュー制御回路20は、予め検出対象物として設定されている例えば歩行者及び動物等の画像7を、各画像領域4a〜4eから抽出する。以上のような検出対象物の画像7の抽出によって、ナイトビュー制御回路20は、各画像領域4a〜4eに撮影される各分割区域6a〜6eに存在する検出対象物を、分割区域毎に検出する。
【0042】
ここで、各投影器40a〜40eによって投影される警告像2について説明する。警告像2は、投影範囲10の左右方向に並べられた三つの周辺警告像2a〜2cと、当該左右方向に並べられた二つの遠方警告像2d,2e等によって構成されている。周辺警告像2a〜2cは、投影範囲10において、遠方警告像2d,2eよりも下方に投影さる。加えて、周辺警告像2a〜2cは遠方警告像2d,2eよりも大きい。
【0043】
ナイトビュー制御回路20は、各分割区域6a〜6eについて、検出区域6における当該分割区域の車両からの相対距離が遠くなるほど、投影範囲10において警告像2の上下方向の投影位置が上方となるように関連付ける。故に、周辺画像領域4a〜4cから検出対象物の画像7が抽出された場合、ナイトビュー制御回路20は、周辺分割区域6a〜6cに検出対象物が存在するものとして、投影範囲10の下方に周辺警告像2a〜2cを投影させる。また、遠方画像領域4d,4eから検出対象物の画像7が抽出された場合、ナイトビュー制御回路20は、遠方分割区域6d,6eに検出対象物が存在するものとして、投影範囲10の上方に遠方警告像2d,2eを投影させる。
【0044】
加えて、ナイトビュー制御回路20は、各分割区域6a〜6eについて、検出区域6における当該分割区域の左右の相対方向に、投影範囲10における警告像2の左右方向の投影位置を関連付ける。故に、ナイトビュー制御回路20は、左側の周辺画像領域4aから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の周辺警告像2aを投影させ、中央の周辺画像領域4bから検出対象物の画像7が抽出された場合には中央の周辺警告像2bを投影させる。また、ナイトビュー制御回路20は、右側の周辺画像領域4cから検出対象物の画像7が抽出された場合には右側の周辺警告像2cを投影させる。同様に、ナイトビュー制御回路20は、左側の遠方画像領域4dから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の遠方警告像2dを投影させ、右側の遠方画像領域4eから検出対象物の画像7が抽出された場合には右側の遠方警告像2eを投影させる。
【0045】
さらに、周辺画像領域4a〜4cから一旦抽出した検出対象物の画像7が、当該周辺画像領域4a〜4cから遠方画像領域4d,4eに移動した場合のナイトビュー制御回路20の作動を説明する。この場合、ナイトビュー制御回路20は、周辺画像領域4a〜4cのいずれかから検出対象物の画像7が抽出されていると判定し続ける。これにより投影範囲10には、周辺警告像2a〜2cのいずれかが投影され続ける。このような機能を、図6及び図3に基づいて説明する。
【0046】
車両前方の検出区域6に描かれている横断歩道を、検出対象物である歩行者が、車両に対して左側から右側に横断する場合を例に説明する。横断歩道を渡る前の歩行者は、左側の周辺分割区域6aに存在しており、前方画像4においては左側の周辺画像領域4aに映る。このとき、投影範囲10には、左側の周辺分割区域6aに検出対象物が存在していることを表す、左側の周辺警告像2aが投影される(図6(a)参照)。ここで、前方画像4における検出対象物の画像7の位置は、第一実施形態では、当該検出対象物の画像7の図心の位置を基準とする。
【0047】
歩行者の横断及び車両の走行の継続によると、当該歩行者は、前方画像4において左側の遠方画像領域4dに映るようになる。このとき歩行者は、車両から離れたわけではない。しかし、歩行者が車両から離れていないにもかかわらず、周辺画像領域4a〜4cの形状に起因して、左側の周辺画像領域4aに位置していた検出対象物の画像7は、左側の遠方画像領域4dに移動してしまう。そこで第一実施形態のナイトビュー制御回路20は、前方画像4において左側の遠方画像領域4dの下方に位置する、中央の周辺画像領域4bから検出対象物の画像7が検出されていると判定する。これにより、投影範囲10には、中央の周辺分割区域6bに検出対象物が存在していることを表す、中央の周辺警告像2bが投影される(図6(b)参照)。
【0048】
歩行者の横断及び車両の走行のさらなる継続によると、当該歩行者の検出対象物の画像7は、前方画像4において左下方向に移動する。すると、検出対象物の画像7は、遠方画像領域4d,4eに突き出した中央の周辺画像領域4bに位置するようになる。これにより、投影範囲10には、中央の周辺分割区域6bに検出対象物が存在していることを表す、中央の周辺警告像2bが投影され続ける(図6(c)参照)。
【0049】
さらに歩行者の横断及び車両の走行が継続されると、当該歩行者は、前方画像4において右側の周辺画像領域4cに映るようになる。このとき、投影範囲10には、右側の周辺分割区域6cに検出対象物が存在していることを表す、右側の周辺警告像2cが投影される(図6(d)参照)。
【0050】
以上のように、ナイトビューシステム100は、左側の周辺警告像2a、中央の周辺警告像2b、及び右側の周辺警告像2cを順に点灯させることで、車両前方を横切る検出対象物の移動を、警告像2によって的確に表すことができる。
【0051】
ここまで説明した構成において、投影範囲10に警告像2を表示する処理を、図7に基づいて詳細に説明する。図7に示すフローチャートの処理は、上述した所定の条件下で、運転者等がナイトビュースイッチ21を操作することにより、ナイトビュー制御回路20によって実行される。このナイトビュー制御回路20による処理は、再びナイトビュースイッチ21が操作されるまで、又は車両のイグニッション等がOFFにされるまで繰り返し実行される。
【0052】
S101では、近赤外線カメラ30から検出区域6の前方画像4を取得して、S102に進む。S102では、S101にて取得した前方画像4から、歩行者等の検出対象物の画像7を抽出し、S103に進む。このS102では、抽出した検出対象物の画像7の形状及び前方画像4における位置を示す情報もあわせて取得する。
【0053】
S103では、S102において歩行者等の検出対象物の画像7を抽出できた否かを判定する。S103において、検出対象物の画像7を抽出できなかったと判定した場合、S111に進む。このS111では、全ての投影器40a〜40eを消灯することを決定する。一方、S102において検出対象物の画像7を抽出できたと判定した場合、S104に進む。
【0054】
S104では、フラッシュメモリを参照し、前回の処理におけるS113(後述する)にて記憶された情報であって、前回の前方画像4から抽出された検出対象物の形状及び位置を示す情報を取得する。そして、S105に進む。S105では、S102において取得した現在の検出対象物の情報と、S104において取得した過去の検出対象物の情報とを比較し、S106に進む。
【0055】
S106では、S105において比較した情報により、現在抽出されている検出対象物の中に、過去に抽出された検出対象物と同じものが含まれているか否かを判定する。S106において、現在抽出されている検出対象物の中に、過去に抽出された検出対象物と同じものが含まれていない場合、S110に進む。一方、S106において、現在抽出されている検出対象物の中に、過去に抽出された検出対象物と同じものが含まれている場合、S107に進む。
【0056】
S107では、S106において同一であると判定された検出対象物の画像7について、前回の前方画像4における位置と、今回の前方画像4における位置とを比較し、S108に進む。S108では、S106において同一であると判定された検出対象物の画像7が、前方画像4において、周辺画像領域4a〜4cから遠方画像領域4d,4eに移動したか否かを判定する。S107において、検出対象物の画像7が、前回の前方画像4において周辺画像領域4a〜4cに位置し、且つ今回の前方画像4において遠方画像領域4d,4eに位置していた場合に、S109に進む。これ以外の場合に、S110に進む。
【0057】
S109では、S106において同一であると判定された検出対象物について、今回の前方画像4における、当該検出対象物の画像7の位置を示す情報を変更する。具体的には、検出対象物の画像7が中央の周辺画像領域4bから抽出されているように、当該検出対象物の画像7の位置を示す情報を変更する。そして、S110に進む。以上のような位置を示す情報の変更によって、検出対象物の画像7は中央の周辺画像領域4bから抽出されていると判定され続ける。
【0058】
S110では、車両に対する検出対象物の相対位置を示す情報であって、S102で取得した検出対象物の位置を示す情報及びS110で変更した検出対象物の位置を示す情報に基づいて、投影器40a〜40eのうちで点灯させるものを決定する。これにより、警告像2の投影位置は、車両に対する検出対象物の相対位置に関連付けられる。そして、S112に進む。
【0059】
S112では、S110又はS111の決定に基づいて、表示器40の投影器40a〜40eの点灯及び消灯を制御し、S113に進む。これにより表示器40は、検出対象物の車両に対する相対位置に、投影位置が関連付けられた警告像2を投影する。
【0060】
S113では、S102で取得した検出対象物の情報及びS110で変更された検出対象物の情報をフラッシュメモリに記憶し、再びS101に戻る。S113で記憶された情報は、次回の処理におけるS104にて参照され、次回のS106及びS108の判定に用いられる。
【0061】
ここまで説明した第一実施形態によれば、ウィンドスクリーン9に形成される投影範囲10において、警告像2が投影される投影位置は、車両前方の検出区域6を複数に分割した各分割区域6a〜6eの当該検出区域6における位置に対応している。故に、警告像2は、投影範囲における投影位置によって、検出対象物が現在検出されている分割区域の位置、ひいては当該検出対象物の車両に対する相対位置を表すことができる。
【0062】
加えて、投影範囲10における警告像2の投影位置によって、検出対象物の相対位置を表すことができるので、ウィンドスクリーン9において運転者等の視認者に視認され易い範囲内に投影範囲10を規定することにより、警告像2は、視認者に見逃され難くなる。
【0063】
したがって、視認者に視認され易く且つ検出区域6における検出対象物の位置を表すことができる警告像2を投影するナイトビューシステム100が実現されるのである。
【0064】
加えて第一実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30によって映される検出区域6の前方画像4から、検出対象物の画像7を抽出することにより、検出対象物を検出する。このように検出対象物の画像7を抽出する構成により、ナイトビュー制御回路20は、検出区域6に存在する物体から、検出対象物を正確に選別して検出することができるようになる。加えて、前方画像4を分割することによって規定される各画像領域4a〜4eから、検出対象物の画像7を抽出することによって、ナイトビュー制御回路20は、各分割区域6a〜6eに存在する検出対象物を当該分割区域毎に検出することができる。
【0065】
以上の構成により、ナイトビュー制御回路20は、検出対象物を分割区域毎に正確に検出することができる。このような検出対象物の正確な検出に基づいて投影される警告像2は、投影される投影範囲10が限られていても、当該投影範囲10における投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対位置を的確に表すことができる。
【0066】
また検出区域6を映す前方画像4では、検出対象物は、車両からの相対距離が遠ざかるほど、上下方向において上方に映り、且つ左右方向において中央に映るようになる。故に第一実施形態では、遠方画像領域4d,4eは、前方画像4において上下方向の上方部且つ左右方向の中央部を分割することにより規定される。一方、周辺画像領域4a〜4cは、前方画像において遠方画像領域を左右及び下側から囲むように規定される。このように検出対象物までの相対距離を正確に反映させて遠方画像領域4d,4e及び周辺画像領域4a〜4cを規定することにより、警告像2は、当該投影範囲10への投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対距離をさらに的確に表すことができる。
【0067】
さらに第一実施形態によれば、周辺画像領域4a〜4cから一旦抽出した検出対象物の画像7が、遠方画像領域4d,4eに移動した場合であっても、ナイトビュー制御回路20は、検出対象物の画像7は中央の周辺画像領域4bから抽出されていると判定し続ける。このナイトビュー制御回路20の判定によって、表示器40は、この検出対象物を警告する警告像2として、中央の周辺画像領域4bに対応する中央の周辺警告像2bを投影範囲10に投影し続けることができる。
【0068】
加えて、凸状に形成される中央の周辺画像領域4bと、遠方画像領域4d,4eとの間の境界線5に形状によって、検出対象物の画像7は、左右方向に移動しても、凸状に形成された境界線5により拡大される中央の周辺画像領域4b内に留まり得る。故に、表示器40は、この検出対象物を警告する警告像2として、中央の周辺画像領域4bに対応する中央の周辺警告像2bを投影範囲10に投影し続けることができる。
【0069】
これらのような制御又は構成によって、車両前方の検出区域6を横切る検出対象物の移動に対して、当該検出対象物が車両から離れたかのように警告像2の投影位置が変更されてしまう事態は、未然に防がれ得る。したがって、警告像2は、検出区域6を横切る検出対象物に対しても、投影範囲10における投影位置によって、当該検出対象物の車両に対する相対位置を的確に表し続けることができる。
【0070】
さらに加えて、検出対象物が車両に近接しているときほど、検出区域6における検出対象物の移動量が僅かでも、前方画像4における検出対象物の画像7の移動量は大きくなる。故に第一実施形態のように、周辺画像領域4a〜4cを遠方画像領域4d,4eよりも予め多く規定することにより、警告像2の投影位置は、車両周辺における検出対象物の僅かな移動に対しても追従できるようになる。したがって、警告像2は、投影範囲10における投影位置によって、車両に対する検出対象物の相対方向の変化を詳細に表し続けることができる。
【0071】
またさらに、検出区域6の検出対象物は、車両との相対距離が近いほど、運転者等の視認者に大きく視認されるようなる。故に第一実施形態では、車両周辺の分割区域6a〜6cに検出対象物が存在している際に投影される周辺警告像2a〜2cは、遠方分割区域6d,6eに検出対象物が存在している際に投影される遠方警告像2d,2eよりも大きくされている。このように、検出対象物までの相対距離に応じて大きさが変更される警告像2は、当該警告像2の大きさによって視認者に検出対象物までの相対距離を知覚させることができる。このように投影範囲10における投影位置に加えて、投影される大きさも検出対象物までの相対距離に応じて変更される警告像2は、検出対象物までの相対距離を確実に表すことができる。したがって、限られた投影範囲10内において、さらに確実且つ的確に検出対象物の相対位置を表すことができる警告像2を投影するナイトビューシステム100が実現される。
【0072】
尚、第一実施形態において、ナイトビュー制御回路20が特許請求の範囲に記載の「検出手段、関連付け手段、規定部、抽出部」に相当し、近赤外線カメラ30が特許請求の範囲に記載の「検出手段、撮像部」に相当し、表示器40が特許請求の範囲に記載の「投影手段」に相当し、中央の周辺画像領域4bが特許請求の範囲に記載の「中央周辺画像領域」に相当し、ナイトビューシステム100が特許請求の範囲に記載の「車両用表示装置」に相当する。
【0073】
(第二〜第四実施形態)
図8〜図10に示す本発明の第二〜第四実施形態は、上述した第一実施形態の変形例である。これら第二〜第四実施形態では、複数の画像領域を規定するための、ナイトビュー制御回路20による前方画像4の分割の方法が、第一実施形態とは異なっている。加えて、投影範囲10に表示される警告像2の表示態様も、前方画像4の分割方法が異なることに伴って、第一実施形態から変更されている。以下、図8〜図10及び図3を適宜参照しつつ、第二〜第四実施形態について詳細に説明する。
【0074】
図8に示す本発明の第二実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30によって映される画像のうち、空が映される領域6zを除く前方画像4を、四つに分割することによって、画像領域204a,204c,4d,4eを規定する。前方画像4において、左側の周辺画像領域204a及び右側の周辺画像領域204cを合わせた領域は、第一実施形態における周辺画像領域4a〜4c(図5(a)参照)を合わせた領域と実質的に同一である。このように、ナイトビュー制御回路20によって規定される、遠方画像領域4d,4eの数と周辺画像領域204a,204cの数とは、同じであってもよい。
【0075】
加えて、ナイトビュー制御回路20によって規定される周辺画像領域204a,204cに映る区域が、周辺分割区域206a,206cである。車両前方の検出区域6において、第二実施形態の周辺分割区域206a,206cを合わせた区域は、第一実施形態における周辺分割区域6a〜6c(図5(a)参照)を合わせた区域と実質的に同一である。
【0076】
以上のような画像領域204a,204c,4d,4eの分割方法に伴って、警告像2から、中央の周辺警告像2b(図5(b)参照)が省略されている。具体的には、第二実施形態における警告像2は、投影範囲10の左右方向に並べられた二つの周辺警告像2a,2cと、当該左右方向に並べられた二つの遠方警告像2d,2e等によって構成されている。
【0077】
以上の構成により、ナイトビュー制御回路20は、左側の周辺画像領域204aから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の周辺警告像2aを投影させ、右側の周辺画像領域204cから当該画像7が抽出された場合には右側の周辺警告像2cを投影させる。同様に、ナイトビュー制御回路20は、左側の遠方画像領域4dから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の遠方警告像2dを投影させ、右側の遠方画像領域4eから検出対象物の画像7が抽出された場合には右側の遠方警告像2eを投影させる。
【0078】
図9に示す本発明の第三実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30によって映される画像のうち、空が映される領域6zを除く前方画像4を、四つに分割することによって、画像領域304a,304b,304c,304dを規定する。加えて第三実施形態では、遠方画像領域304dの下側に位置する中央の周辺画像領域304bと、当該遠方画像領域304dとの間の境界線305は、前方画像4の左右方向に沿っている。このように、境界線305は、第一実施形態の境界線5(図5(a)参照)のように折曲されていなくてもよい。故に、中央の周辺画像領域304bは、遠方画像領域304d側に突き出していなくてもよい。また、周辺画像領域304a〜304cが複数規定されていれば、遠方画像領域4dは、一つであってもよい。
【0079】
加えて、ナイトビュー制御回路20によって規定される遠方画像領域304dに映る区域が、遠方分割区域306dである。車両前方の検出区域6において、第三実施形態の遠方分割区域306dが占める区域は、第一実施形態における遠方分割区域6d,6eを合わせた区域に相当する(図5(a)参照)。
【0080】
以上のような画像領域304a,304b,304c,304dの分割方法に伴い、投影範囲10に投影可能な遠方警告像302dは一つである。具体的に、第三実施形態における警告像2は、投影範囲10の左右方向に並べられた三つの周辺警告像2a,2b,2cと、当該左右方向の中央に配置された一つの遠方警告像302d等によって構成されている。
【0081】
以上の構成により、ナイトビュー制御回路20は、左側の周辺画像領域304aから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の周辺警告像2aを投影させ、中央の周辺画像領域304bから検出対象物の画像7が抽出された場合には中央の周辺警告像2bを投影させる。同様に、ナイトビュー制御回路20は、右側の周辺画像領域304cから検出対象物の画像7が抽出された場合には右側の周辺警告像2cを投影させる。そして第三実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、遠方画像領域304dから検出対象物の画像7が抽出された場合には、遠方警告像302dを投影させる。
【0082】
図10に示す本発明の第四実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、近赤外線カメラ30によって映される画像のうち、空が映される領域6zを除く前方画像4を、三つに分割することによって、画像領域404a,404c,404dを規定する。加えて第四実施形態では、遠方画像領域404dの下側に位置する周辺画像領域404a,404cと、当該遠方画像領域404dとの間の境界線405は、前方画像4の左右方向に沿っている。このように、境界線405は、第一実施形態の境界線5(図5(a)参照)のように折曲されていなくてもよい。故に、周辺画像領域404a,404cの左右方向における中央部は、遠方画像領域404d側に突き出していなくてもよい。また、ナイトビュー制御回路20は、少なくとも、車両周辺の区域を映す二つの周辺画像領域404a,404cと、遠方の区域を映す一つの遠方画像領域404dを規定していればよい。
【0083】
加えて、ナイトビュー制御回路20によって規定される周辺画像領域404a,404cに映る区域が、周辺分割区域406a,406cである。車両前方の検出区域6において、第四実施形態の周辺分割区域406a,406cを合わせた区域は、第一実施形態における周辺分割区域6a〜6c(図5(a)参照)を合わせた区域に相当する。また、ナイトビュー制御回路20によって規定される遠方画像領域404dに映る区域が、遠方分割区域406dである。車両前方の検出区域6において、第四実施形態の遠方分割区域406dが占める区域は、第一実施形態における遠方分割区域6d,6e(図5(a)参照)を合わせた区域に相当する。
【0084】
以上のような画像領域404a,404c,404dの分割方法に伴い、警告像2から、中央の周辺警告像2b(図5(b)参照)が省略されている。加えて、投影範囲10に投影可能な遠方警告像402dは一つとされている。具体的には、第四実施形態における警告像2は、投影範囲10の左右方向に並べられた二つの周辺警告像2a,2cと、当該左右方向の中央に配置された一つの遠方警告像402d等によって構成されている。
【0085】
以上の構成により、ナイトビュー制御回路20は、左側の周辺画像領域404aから検出対象物の画像7が抽出された場合には左側の周辺警告像2aを投影させ、右側の周辺画像領域404cから検出対象物の画像7が抽出された場合には右側の周辺警告像2cを投影させる。同様に、ナイトビュー制御回路20は、遠方画像領域404dから検出対象物の画像7が抽出された場合には、遠方警告像402dを投影させる。
【0086】
以上説明した第二〜第四実施形態でも、ウィンドスクリーン9に形成される投影範囲10において、警告像2が投影される投影位置は、車両前方の検出区域6を複数に分割した各分割区域の当該検出区域6における位置に対応している。故に、警告像2は、投影範囲における投影位置によって、検出対象物が現在検出されている分割区域の位置、ひいては当該検出対象物の車両に対する相対位置を表すことができる。
【0087】
加えて、投影範囲10における警告像2の投影位置によって、検出対象物の相対位置を表すことができるので、ウィンドスクリーン9において運転者等の視認者に視認され易い範囲内に投影範囲10を規定することにより、警告像2は、運転者等の視認者に見逃され難くなる。
【0088】
したがって、運転者等の視認者に視認され易く且つ検出区域6における検出対象物の位置を表すことができる警告像2を投影するナイトビューシステムが、上述した第二〜第四実施形態の構成でも実現される。
【0089】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0090】
上記実施形態では、近赤外線カメラ30によって撮影した前方画像4から検出対象物の画像7を抽出することによって、ナイトビュー制御回路20は、車両前方の検出区域6に存在する検出対象物を検出していた。しかし、検出対象物を検出するための構成は、近赤外線カメラ30を用いたものに限定されない。例えば、ミリ波レーダー等を用いて車両前方の検出区域6を走査することによって検出対象物の車両に対する相対位置を検出するレーダー装置を、検出手段として備えるナイトビューシステムであってもよい。
【0091】
上記実施形態では、前方画像を複数の分割領域に分割する分割方法について、種々の変形例を示した。しかし、前方画像を複数の分割領域に分割する分割方法は、上記実施形態にて説明したものに限定されることなく、適宜変更されてよい。例えば、前方画像は、上下方向に三つ以上に分割されていてもよい。また、周辺画像領域は、遠方画像領域の左右及び下側を囲むように規定されていなくてもよい。
【0092】
上記実施形態では、周辺画像領域から一旦抽出された検出対象物の画像が遠方画像領域に移動しても、ナイトビュー制御回路20は、当該検出対象物の画像7は周辺画像領域から検出されていると判定し続けるようプログラムされていた。しかし、ナイトビュー制御回路20は、上記実施形態のような検出対象物の画像を追跡する機能を備えていなくてもよい。
【0093】
上記実施形態では、周辺分割区域の検出対象物を警告する周辺警告像は、遠方分割区域の検出対象物を警告する遠方警告像よりも大きくされていた。しかし、周辺警告像と遠方警告像との大きさは、互いに同一であってもよい。また、上記実施形態では、周辺警告像及び遠方警告像は、互いに同じ色相であった。しかし、周辺警告像及び遠方警告像の色相及び輝度等は、互いに異なるものであってもよい。
【0094】
上記第一実施形態では、バックライト42に所定の印刷を施した投影器40a〜40eを用いて、警告像2を投影していた。しかし警告像2を投影するための構成は、投影器40a〜40eに限定されない。例えば、インスツルメントパネル8の内部に埋め込まれた所謂ヘッドアップディスプレイ装置によって、警告像2はウィンドスクリーンに投影されてもよい。尚、ヘッドアップディスプレイ装置とは、具体的には、警告像2の意匠画像を形成する液晶パネル部と、当該液晶パネル部を透過照明するバックライトと、液晶パネル部を透過した光をウィンドスクリーンに向けて反射する複数の反射鏡とを備える装置である。
【0095】
上記実施形態では、ナイトビュー制御回路20は、ナイトビューシステムに係わる種々の処理を行うための専用の構成であった。しかし、ナイトビュー制御回路によって実行される処理は、車両に搭載されている例えばカーナビゲーションシステムの演算回路によって実行されてもよい。即ち、ナイトビュー制御回路は、カーナビゲーションシステムの機能ブロックとして構成されていてもよい。又は、プログラムの実行によらないアナログ回路によって、ナイトビュー制御回路は構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
2 警告像、2a〜2c 周辺警告像、2d,2e,302d,402d 遠方警告像、4 前方画像、4a〜4c,204a,204c,304a〜304c,404a,404c 周辺画像領域、4d,4e,304d,404d 遠方画像領域、5,305,405 境界線、6 検出区域、6a〜6c,206a,206c,306a〜306c,406a,406c 周辺分割区域、6d,6e,306d,406d 遠方分割区域、7 検出対象物(歩行者)の画像、8 インスツルメントパネル、9 ウィンドスクリーン、10 投影範囲、20 ナイトビュー制御回路(検出手段、関連付け手段、規定部、抽出部)、21 ナイトビュースイッチ、30 近赤外線カメラ(検出手段、撮像部)、31 近赤外線投光器、40 表示器(投影手段)、40a〜40e 投影器、42 バックライト、45a 遮光部、45b 透光部、50 コンビネーションメータ、51 液晶ディスプレイ、60 車内LAN、100 ナイトビューシステム(車両用表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の前方に予め設定された検出区域に存在する検出対象物を警告するため、当該車両のウィンドスクリーンに規定される投影範囲に警告像を投影する車両用表示装置であって、
前記車両に対する前記検出区域の左右の相対方向及び相対距離に応じて当該検出区域を複数に分割して分割区域を形成し、前記検出対象物を前記分割区域毎に検出する検出手段と、
各前記分割区域について、前記検出区域における当該分割区域の左右の相対方向に、前記投影範囲における前記警告像の左右方向の投影位置を関連付けると共に、前記検出区域における当該分割区域の車両からの相対距離が遠くなるほど、前記投影範囲において前記警告像の上下方向の投影位置が上方となるように関連付ける関連付け手段と、
前記検出対象物が現在検出されている前記分割区域に対して前記関連付け手段によって関連付けられる前記投影範囲の左右方向及び上下方向の投影位置に、当該検出対象物を警告する前記警告像を投影する投影手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記検出区域を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって映される前記検出区域の前方画像を分割することによって、複数の画像領域を規定する規定部と、
各前記画像領域から前記検出対象物の画像を抽出することによって、各前記画像領域に撮影される各前記分割区域に存在する前記検出対象物を、前記分割区域毎に検出する抽出部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記規定部は、
前記車両の周辺の区域を撮像する周辺画像領域と、
前記周辺画像領域に映される区域よりも前記車両からの相対距離が遠い区域を撮像する遠方画像領域と、を前記画像領域として規定し、
前記遠方画像領域は、前記前方画像において上下方向の上方部且つ左右方向の中央部に位置する領域を分割することにより規定され、
前記周辺画像領域は、前記前方画像において前記遠方画像領域を左右及び下側から囲むように規定されることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記周辺画像領域において前記遠方画像領域の下側に位置する中央周辺画像領域と、当該遠方画像領域との間の境界線が、前記中央周辺画像領域側から前記遠方画像領域側に凸となるよう形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記周辺画像領域から一旦抽出した前記検出対象物の画像が、当該周辺画像領域から前記遠方画像領域に移動した場合であっても、当該周辺画像領域から前記検出対象物の画像が検出されていると判定し、
前記投影手段は、前記周辺画像領域に映される前記分割区域に対して関連付けられる前記投影範囲の左右方向及び上下方向の投影位置に、前記検出対象物を警告する前記警告像を投影することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記規定部は、前記遠方画像領域よりも前記周辺画像領域を予め多く規定することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記周辺画像領域に映る前記分割区域に前記検出対象物が存在している際に前記警告像として投影される周辺警告像は、前記遠方画像領域に映る前記分割区域に前記検出対象物が存在している際に前記警告像として投影される遠方警告像よりも大きいことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−30752(P2012−30752A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173908(P2010−173908)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】