説明

車両用装置および外部機器画面表示システム

【課題】外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両側で、外部機器が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる車両用装置を提供する。
【解決手段】記憶装置112に、規制図形領域、動画存否情報と関連付けて制御内容を記憶しておく。これら規制図形領域、動画存否情報は、画素情報に基づいて決定できる情報である。そして、携帯端末10から取得した画素情報に基づいて、端末画面に、走行規制対象図形があるかを判断し(S7)、また、動画が含まれているかを判断する(S8)。次に、S7、S8の判断結果と記憶装置112に記憶されている記憶内容とに基づいて制御内容を決定して制御を行う。このように、画素情報に基づいて制御内容を決定できるようにしているので、携帯端末10から画素情報のみしか取得できないとしても、車両用装置で、携帯端末10が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器の表示画面を表示することができる車両用装置、および、それら車両用装置と外部機器とを有する外部機器画面表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用装置として、外部機器の表示画面を表示することができる装置が知られている。たとえば特許文献1の装置がそれである。特許文献1の装置は、外部機器である携帯電話機の画面を車両の表示器に表示できるようになっている。また、特許文献1では、携帯電話機の画面がどういう内容の情報か、具体的には、交通情報か動画か音楽情報かを車両用装置が識別し、画面の情報および車両の走行状態に応じて、車両の表示器に表示する携帯電話機の画面の大きさを変更したり、あるいは、非表示にしたりしている。この識別を車両用装置が行えるようにするために、携帯電話機側で識別用の情報が画像データに付加されている。
【0003】
また、携帯端末のアプリケーションプログラムを車両用機器にインストールしなくても、携帯端末の画面を車両用機器の表示器に表示でき、且つ、車両用機器側からの操作(たとえば画面のタッチ操作)により、携帯端末の操作を可能にする技術が提案されている。この技術として、たとえば、ターミナルモードという規格が知られている。なお、ターミナルモードは上記技術の一例であるが、本明細書ではターミナルモードを上記技術の総称の意味で用いる。
【0004】
ターミナルモードでは、車両用機器を、携帯端末の画面表示部および操作部として利用するものである。それ故、基本的には携帯端末のアプリケーションプログラムを車両用機器にインストールしなくてもよい。また、携帯端末から車両用機器に送信されてくる情報は、基本的には、画素毎の色情報(以下、画素情報)のみである。ターミナルモードでは、携帯端末のアプリケーションプログラム(以下、単にアプリケーション)を車両用機器にインストールしなくても、車両用機器は携帯端末の機能を利用できることから、車両用機器の処理負荷が軽減できる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−281991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、ターミナルモードでは、携帯端末から車両用機器に送信される情報は、基本的には画素情報のみであり、また、前述のように、携帯端末のアプリケーションプログラムは車両用機器にインストールされない。そのため、携帯端末のあるアプリケーションを実行し、そのアプリケーションの画面が車両用機器に表示されている状態で、そのアプリケーションに車両用機器が機能を付加することは困難である。
【0007】
たとえば、前述の特許文献1では、画像データに、その画像データの種別を識別するための識別用の情報が付加されて車両用装置に送信されるようになっている。しかし、ターミナルモードでは、このような識別用の情報は基本的には送信されないので、特許文献1のように、識別用の情報に基づいて、車両の表示器に表示する携帯電話機の画面の大きさを変更することはできない。
【0008】
また、近年、ナビゲーション機能(道路案内機能)を備えた携帯端末も多数知られていることから、携帯端末のナビゲーション画面をターミナルモードにより車両の表示器に表示することも考えられる。この場合、車両用ナビゲーション装置と同様に、走行中は、道路地図を表示しつつも、一部の機能(タッチスイッチ操作など)を制限することが好ましい。タッチスイッチ操作を制限する場合、車両用ナビゲーション装置であれば、道路地図の表示色はそのままで、タッチスイッチの色を、非作動状態であることを示す色に変更する(例えばトーンダウンさせる)などが行われている。しかし、ターミナルモードでは、前述のように、基本的には、画素情報のみが携帯端末から車両用機器に送信されるのであり、タッチスイッチであることを示すデータは送信されない。よって、ターミナルモードにおいては、従来の技術をそのまま適用して、車両用機器で、携帯端末の画面の一部を変更して表示することができない。
【0009】
その他にも、ターミナルモードにより携帯端末の画面を車両用機器に表示している状態で、携帯端末が実行しているアプリケーションに車両用機器側で種々の機能を付加したいことも考えられる。しかし、ターミナルモードでは、従来の技術をそのまま適用して、車両用機器側で、携帯端末が実行しているアプリケーションに例えば走行規制機能などの種々の機能を付加することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両側で、外部機器が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる車両用装置、および、それら車両用装置と外部機器とを有する外部機器画面表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的を達成するための請求項1記載の発明によれば、制御内容記憶手段に、画素情報に基づいて定まる画像情報である画素関連画像情報と関連付けて制御内容を記憶しており、また、画素関連画像情報決定手段は、外部機器から取得した画素情報に基づいて画素関連画像情報を決定する。そして、制御手段は、決定された画素関連画像情報と、制御内容記憶手段に記憶されている記憶内容とに基づいて制御内容を決定して制御を行う。このように、画素情報に基づいて制御内容を決定できるようにしているので、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両側で、外部機器が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる。
【0012】
なお、上記画素関連画像情報には、画素関連図形情報(請求項2)、動画存否情報(請求項6)が含まれる。また、請求項2の画素関連図形情報には、図形色特徴(請求項3、8)、規制図形領域(請求項4)、規制ボタン領域(請求項5)が含まれる。さらに、請求項8の図形色特徴には図形の外形色(請求項9)が含まれる。
【0013】
請求項2記載の発明では、画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、画素関連画像情報として、車両用表示部に表示される図形の情報である画素関連図形情報を決定する。また、制御内容記憶手段は、画素関連図形情報と関連付けて制御内容を記憶している。よって、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両用表示部に表示される図形に基づいて、車両側で、外部機器が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、画素関連図形情報として、図形色特徴を用いるものである。すなわち、請求項3記載の発明では、制御内容記憶手段は、車両用表示部に表示される図形の色の特徴である図形色特徴を画素関連図形情報とし、その図形色特徴と関連付けて制御内容を記憶している。そして、前記画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて前記図形色特徴を決定する。この発明は、後述する請求項8記載のシステム発明における車両用装置発明に相当するものである。
【0015】
画素関連画像情報として画素関連図形情報を決定する場合、請求項4のようにして、走行規制対象図形を抑制表示とすることが好ましい。その請求項4記載の発明は、車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備える。また、画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、画素関連図形情報として、前記車両用表示部に表示される走行規制対象図形の表示領域を示す規制図形領域を決定する。また、制御内容記憶手段が画素関連図形情報としての規制図形領域と関連づけて記憶している制御内容は、車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合には、規制図形領域を、外部機器の表示部に表示されている走行規制対象図形の表示領域よりも視認性を低下させた抑制表示とするという制御内容である。
【0016】
このようにすれば、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両が走行中である場合に、車両用表示部に表示される走行規制対象図形の表示領域を抑制表示とすることができる。
【0017】
また、画素関連画像情報として画素関連図形情報を決定する場合、請求項5のようにして、車両用表示部に表示されている走行規制対象ボタンが接触操作されたことを外部機器に送信しないようにすることも好ましい。その請求項5記載の発明は、車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備える。また、画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、画素関連図形情報として、車両用表示部に表示される走行規制対象ボタンの表示領域を示す規制ボタン領域を決定する。また、制御内容記憶手段が画素関連図形情報としての規制ボタン領域と関連づけて記憶している制御内容は、車両走行状態判断手段により車両が走行中でないと判断されている場合には、規制ボタン領域が接触操作されると、接触操作位置を示す情報を外部機器へ送信するが、車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合には、規制ボタン領域が接触操作されても、接触操作位置を示す情報を送信しないという制御内容である。
【0018】
このようにすれば、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両が走行中である場合に、車両用表示部を介して走行規制対象ボタンの操作を行うことを禁止することができる。
【0019】
請求項6記載の発明では、画素関連画像情報決定手段は、同一の画素に対する画素情報の時間的な変化に基づいて、画素関連画像情報として、車両用表示部に表示される画面に動画が存在しているか否かを示す動画存否情報を決定する。また、制御内容記憶手段は、動画存否情報と関連付けて制御内容を記憶している。よって、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両用表示部に動画が表示されるか否かに基づいて、車両側で、外部機器が実行するアプリケーションに対して機能を付加することができる。
【0020】
また、画素関連画像情報として動画存否情報を決定する場合、請求項7のように、車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備える。また、制御内容記憶手段が動画存否情報と関連づけて記憶している制御内容は、車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合であって、動画存否情報が、車両用表示部に表示される画面に動画が存在していることを示す情報である場合、車両用表示部に動画を表示しないという制御内容である。
【0021】
このようにすれば、外部機器から画素情報のみしか取得できないとしても、車両が走行中である場合に、車両用表示部に動画を表示しないようにすることができる。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項2記載の車両用装置と前記外部機器とを有し、車両用装置の車両用表示部に外部機器の表示部の画面を表示する外部機器画面表示システムに関する発明である。この発明においては、車両用装置の制御内容記憶手段は、車両用表示部に表示される図形の色の特徴である図形色特徴を画素関連図形情報とし、その図形色特徴と関連付けて制御内容を記憶する。また、外部機器は、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている制御を行う図形として予め設定された図形を、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている図形色特徴を有するように表示部に描画するとともに、表示部の各画素の画素情報を、逐次、前記車両用装置に送信する。そして、車両用装置の画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて図形色特徴を決定する。
【0023】
このようにすれば、外部機器において、予め設定された図形が、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている図形色特徴を有するように描画されることから、車両用装置は、図形色特徴の決定精度が向上するとともに、その図形色特徴と関連付けられている制御内容の実行精度が向上する。また、外部機器は、予め設定された図形を、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている図形色特徴を有するように描画する以外は、従来のアプリケーションを変更する必要がないことから、アプリケーションの変更も少なくできる。
【0024】
請求項9は、請求項8における図形色特徴を、その図形の外形色とするものである。すなわち、請求項9に係る発明は、車両用装置の制御内容記憶手段は、図形の外形色を図形色特徴とし、その外形色と関連付けて制御内容を記憶する。また、外部機器は、車両用装置で所定の制御を行う図形として予め設定された図形を、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている外形色を有するように表示部に描画するとともに、表示部の各画素の画素情報を、逐次、車両用装置に送信する。そして、車両用装置の画素関連画像情報決定手段は、画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて外形色を決定する。
【0025】
この発明においては、外部機器は、予め設定された図形を、車両用装置の制御内容記憶手段に記憶されている外形色を有するように描画することになるが、これは、従来のアプリケーションにおいて描画していた図形の外形色を変更し、あるいは、外形色の枠を追加するのみである。よって、従来のアプリケーションからの変更を特に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用された外部機器画面表示システム1のシステム構成図である。
【図2】制御装置120が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【図3】抑制表示の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された外部機器画面表示システム1のシステム構成図である。図1に示すように、この外部機器画面表示システム1は、携帯端末10と車両用装置100とを備えている。
【0028】
携帯端末10は外部機器に相当するものであり、周知のスマートフォンやその他の携帯電話機、PDA等が該当する。この携帯端末10は端末表示部11を備えており、また、図示しない内部にCPU、ROM、RAM等を備えている。そして、ROMには種々のアプリケーションプログラムが記憶されており、CPUによって、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムが実行されることにより、端末表示部11に種々の内容の画面が表示される。
【0029】
端末表示部11には、携帯端末10の種類が異なったり、また、実行されるアプリケーションが異なったりすることで、種々の画面が表示される。ただし、本実施形態では、車両用装置100の記憶装置112に、走行規制対象ボタンとして記憶されているボタンについては、走行規制制御と関連付けられている色特徴を有するように描画されるようになっている。
【0030】
また、携帯端末10は、有線通信および無線通信の少なくともいずれかにより、車両用装置100との通信が可能となっている。有線接続としては、例えば、USBケーブルによる通信があり、また、無線接続としては、例えば、Bluetooth(登録商標)規格による通信がある。携帯端末10は、車両用装置100と通信が確立した状態で、端末表示部11に表示されている画面の各画素の画素情報(各画素の色を示す情報)を車両用装置100に逐次送信する。
【0031】
車両用装置100は、無線通信部102、有線通信部104、車両用表示部106、操作スイッチ108、車両情報取得部110、記憶装置112、制御装置120を備えている。無線通信部102は携帯端末10との間で無線通信を行い、有線通信部104は携帯端末10との間で有線通信を行う。なお、無線通信部102と有線通信部104のいずれか一方のみが備えられていてもよい。
【0032】
この通信部102、104により、携帯端末10から送信される画素情報が受信され、その画素情報が制御装置120に出力される。制御装置120は、通信部102、104から供給される画素情報に基づいて、車両用表示部106に、端末表示部11に表示されている画面(以下、端末画面という)を表示する。なお、車両用表示部106に表示される端末画面を、以下では、擬似端末画面という。擬似端末画面は、基本的には端末画面と同一であるが、表示部の画素数、表示部の大きさの違い、表示領域の縦横比の違いなどにより、端末画面全体に対して、共通の規則に基づいた座標変換が適宜行われて擬似端末画面とされる。また、後述するように、画素関連画像情報に基づいて、端末画面のうちの一部分を適宜修正して擬似端末画面とすることも行う。
【0033】
車両用表示部106は、車両の車室内において乗員から視認可能な位置に配置され、上述の擬似端末画面が表示される。例えば、周知のナビゲーション装置に備えられているディスプレイをこの車両用表示部106として利用することができる。
【0034】
操作スイッチ108は、この車両用装置100を車両の乗員が操作するためのスイッチである。この操作スイッチ108には、車両用表示部106の表示面に重ねられたタッチスイッチ、或いは、表示面を遠隔操作する遠隔操作スイッチが含まれる。車両用表示部106に擬似端末画面が表示されている状態では、このタッチスイッチが接触操作されると、接触操作位置を示す情報が携帯端末10に送信される。ただし、後述するように、本実施形態では、接触操作位置を示す情報が送信されない場合もある。携帯端末10では、接触操作位置を示す情報が送信されてきた場合、その情報に基づいて端末表示部11における対応位置を判断し、その対応位置が接触操作された場合と同じ処理を実行する。
【0035】
車両情報取得部110は、車両用装置100が搭載されている車両の車両情報を、車内LAN等を介して車両内の他の機器、センサから取得する。取得する車両情報には、車両の走行状態(すなわち、車両が走行中かどうか)を示す走行状態情報が含まれる。この走行状態情報とは、具体的には、車速、シフトポジション、車両の位置などがある。
【0036】
記憶装置112は、特許請求の範囲の制御内容記憶手段として機能するものであり、画素関連画像情報と関連付けて制御内容が記憶されている。この画素関連画像情報は、携帯端末10から送信されてくる画素情報に基づいて定めることができる情報であって、端末画面の何らかの情報を示すものである。この画素関連画像情報には、画素関連図形情報と動画存否情報とが含まれる。画素関連図形情報は端末画面内の図形の表示上の特徴を示す情報であり、動画存否情報は、端末画面内に動画が存在しているか否かを示す情報である。また、画素関連図形情報には、図形色特徴、規制図形領域が含まれる。
【0037】
図形色特徴は、端末画面内の図形の色の特徴を示すものであり、具体的には、図形の外形色や図形の内部色である。規制図形領域は、車両用表示部106に表示される走行規制対象図形の表示領域を示すものである。また、この規制図形領域としては、図形がボタンであるもの、すなわち、規制ボタン領域が含まれる。それ以外に、図形として、文字や文字以外の記号も含まれる。さらに、画素関連図形情報には、図形色特徴、規制図形領域以外にも、端末画面内の図形の位置、大きさも含まれる。
【0038】
記憶装置112には、上述した種々の画素関連画像情報に関連付けて制御内容が記憶されている。次に、その制御内容について説明する。たとえば、規制図形領域と関連づけて記憶されている制御内容としては次の(1)、(2)に示す制御内容があり、また、動画存否情報と関連付けて記憶されている制御内容としては(3)に示す制御内容がある。
【0039】
(1)は、車両が走行中である場合には、擬似端末画面の規制図形領域を、端末画面に表示されている走行規制対象図形の表示領域よりも視認性を低下させた抑制表示とするという制御内容である。視認性を低下させる程度は適宜設定すればよいが、抑制表示には、全く表示しないという態様も含まれる。
【0040】
(2)は、規制ボタン領域と関連づけて記憶されている制御内容である。その制御内容は、車両が走行中でない場合には、擬似端末画面の規制ボタン領域が接触操作されると、接触操作位置を示す情報を携帯端末10へ送信するが、車両が走行中である場合には、擬似端末画面の規制ボタン領域が車両用表示部106の表示面に重ねられたタッチスイッチにより接触操作されても、接触操作位置を示す情報を携帯端末10に送信しないという制御内容である。
【0041】
(3)は、動画存否情報と関連づけて記憶されている制御内容である。その制御内容は、車両が走行中であって、動画存否情報が、端末画面に動画が存在していることを示す情報である場合には、擬似端末画面には動画を表示しないという制御内容である。動画を表示しない場合、動画表示領域には所定の静止画像を表示する。
【0042】
制御装置120は、図示しない内部に、CPU、ROM,RAM等を備えたコンピュータであり、CPUが、ROM、RAM等の機能を利用しつつ処理を行うことで、この制御装置120は、画素関連画像情報決定部121、車両走行状態決定部122、表示部制御部123として機能する。
【0043】
画素関連画像情報決定部121は、特許請求の範囲の画素関連情報決定手段に相当するものであり、通信部102、104から供給される画素情報に基づいて、端末画面から、記憶装置112に制御内容と関連づけて記憶されている種々の画素関連画像情報を決定する。
【0044】
前述のように、画素関連画像情報には画像関連図形情報があり、この画像関連図形情報には、端末画面内の図形の色の特徴を示す図形色特徴がある。図形色特徴の決定に際しては、まず、画面内において図形が表示されている領域を決定する必要がある。この決定には、周知の種々の画像認識技術を利用することができ、たとえば、画面内で同一の色が連続している部分を1つの図形として認識する。また、そのようにして認識した図形が、線状であって閉じた形状となっている場合には、図形の枠であると認識し、その枠およびその内部を一つの図形と認識する。図形色特徴は、これらのようにして認識した図形の枠やその内部が何色であるかを示すものである。なお、図形には複数の色が使用されていることも多いが、この場合、図形内での比率が所定値以上の色を図形色特徴とする。
【0045】
また、画像関連図形情報には、端末画面内の図形の形状の特徴を示す図形形状特徴がある。図形形状特徴の決定に際しては、上述のように周知の種々の画像認識技術を利用することができる。また、図形形状特徴の決定は、端末画面から文字認識処理により読み取った文字情報と、予め記憶しておいた文字情報とに基づいて決定してもよい。具体的には端末画面に表示された画像情報より読み取られた文字情報が予め記憶された文字情報と一致する場合には、当該端末画面における文字情報、或いは、文字情報が描画されている領域の周囲の一定領域、或いは、周囲に枠線がある場合には当該枠線の内側領域を図形形状特徴として決定する。
【0046】
また、前述のように、画像関連図形情報には規制図形領域も含まれる。この規制図形領域の決定は、たとえば、予め走行規制対象図形を記憶しておき、その予め記憶しておいた走行規制対象図形とのパターンマッチングにより、端末画面から規制図形領域を決定する。なお、走行規制対象図形の例としては、前述のように、文字や、文字以外の記号、走行規制対象ボタンがある。なお、規制図形領域の決定は、端末画面から文字認識処理により読み取った文字情報と、予め記憶しておいた規制文字情報とに基づいて決定してもよい。具体的には端末画面に表示された画像情報より読み取られた文字情報が予め記憶された規制文字情報と一致する場合には、当該端末画面における文字情報が描画されている領域の周囲の一定領域、或いは、周囲に枠線がある場合には当該枠線の内側領域を規制図形領域として決定する。また、規制図形領域の決定方法としては、他に、走行規制対象図形の図形色特徴を記憶しておき、端末画面からその色特徴を探索することで、規制図形領域を決定する方法もある。具体的には、走行規制対象図形の外形色あるいは内部色を記憶しておき、端末画面から、走行規制対象図形の外形色あるいは内部色が使用されている領域を探索することで規制図形領域を決定する。
【0047】
また、画素関連画像情報には、端末画面に動画が含まれているか否かを示す動画存否情報がある。この動画存否情報の決定は次のようにして行う。すなわち、同一の画素に対する画素情報が短時間で変化しているか否かにより、端末画面に動画が含まれているか否を決定する。
【0048】
車両走行状態決定部122は、車両情報取得部110が取得した走行状態情報を用いて、車両が走行中であるか走行中でないかを逐次判断する。表示部制御部123には、通信部102、104から画素情報が逐次供給され、画素関連画像情報決定部121から画素関連画像情報が逐次供給され、車両走行状態決定部122から、車両が走行中であるか走行中でないかを判断した判断結果が逐次供給される。この表示部制御部123は特許請求の範囲の制御手段に相当する。
【0049】
表示部制御部123は、通信部102、104から逐次供給される画素情報に基づいて、車両用表示部106に擬似端末画面を表示する。この擬似端末画面は、基本的には、端末画面全体を共通の規則に基づいて修正した画面である。ただし、記憶装置112に記憶されている制御内容と関連付けて記憶されている画素関連画像情報が端末画面に含まれている場合には、制御内容に従った修正を行った擬似端末画面を車両用表示部106に表示する。
【0050】
また、表示部制御部123は、車両用表示部106の表示内容制御だけでなく、車両用表示部106が操作スイッチ108により接触操作された場合の制御も行う。すなわち、擬似端末画面が接触操作されたことを示す信号が操作スイッチ108から供給されると、接触操作位置を示す情報を携帯端末10へ送信する。ただし、記憶装置112には、前述の(2)の制御内容が記憶されているので、車両が走行中である場合には、擬似端末画面の規制ボタン領域が車両用表示部106の表示面に重ねられたタッチスイッチにより接触操作されても、接触操作位置を示す情報を携帯端末10に送信しない。
【0051】
次に、制御装置120が実行する制御内容を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、車両用装置100と携帯端末10との通信が確立しており、携帯端末10から、逐次、画素情報が送信されている状態で実行される。
【0052】
まず、ステップS1では、画像データ(画素情報)を受信部102、104から取得する。この処理は、画素関連画像情報決定部121が行う。続くステップS2、S3は、車両走行状態決定部122の処理であり、ステップS2では、車両の走行状態を車両情報取得部110から取得する。そして、ステップS3では、ステップS2で取得した走行状態に基づいて、車両が走行中かどうかを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS4へ進み、肯定判断である場合にはステップS7へ進む。
【0053】
ステップS4〜S6は表示部制御部123の処理であり、ステップS4では、ステップS1で取得した画像データを用いて、携帯端末10の端末表示部11に表示されている画面を、車両用表示部106に再生表示する。ステップS5では、操作スイッチ108により画面操作があったか否かを判断する。この判断が否定判断であった場合にはステップS1へ戻る。一方、肯定判断であった場合にはステップS6へ進み、接触操作位置を示す情報を通信部102、104を介して携帯端末10へ送信する。その後、ステップS1へ戻る。
【0054】
次に、走行中である場合に実行するステップS7以下を説明する。ステップS7、S8は、画素関連画像情報決定部121の処理である。ステップS7では、ステップS1で取得した画像データ内に走行規制対象図形があるか否かを判断し、走行規制対象図形があった場合には、さらに、その図形の表示領域、すなわち、規制図形領域も決定する。なお、規制図形領域には規制ボタン領域も含まれる。ステップS8では、その画像データ内に動画があるかないかを判断する。
【0055】
ステップS9〜S11は表示部制御部123の処理であり、ステップS9では、ステップS7、S8の判断結果に基づいて、走行中用に修正した擬似端末画面を車両用表示部106に表示する。具体的には、ステップS7で走行規制対象図形があると判断している場合には、その走行規制対象図形が表示されている領域である規制図形領域を、視認性を低下させた抑制表示とする。
【0056】
ここで、抑制表示の一例を説明する。図3(A)には、端末表示部11の画面の一部を概念的に示している。図3(A)には、ボタンAとボタンBとが示されている。また、ボタンBは、携帯端末10において走行規制対象ボタンとして記憶されており、走行規制対象ボタンであることにより、走行規制制御と関連付けられている色特徴として所定の走行規制色の外枠Wを備えたボタンとなっている。
【0057】
携帯端末10からは画素情報のみが車両用装置100に送信されるが、この走行規制色の外枠WをボタンBが備えることで、車両用装置100は、簡単な処理で且つ確実に規制ボタン領域を決定することができる。車両用装置100は、車両が駐停車中である場合(走行中でない場合)には、図3(B)に示すように、車両用表示部106に、端末画面を再現した擬似端末画面を表示する。一方、車両が走行中である場合には、図3(C)に示すように、ボタンBが、端末表示部11のボタンBよりも視認性が低下した抑制表示となっている擬似端末画面を表示する。
【0058】
図2に説明を戻す。ステップS10では、操作スイッチ108により画面操作があったか否かを判断する。この判断が否定判断であった場合にはステップS1へ戻る。一方、肯定判断であった場合にはステップS11へ進む。ステップS11では、接触操作位置が規制ボタン領域であるか否かをさらに判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS6へ進み、接触操作位置を示す情報を通信部102、104を介して携帯端末10へ送信する。一方、ステップS11の判断が肯定判断である場合には、直ちにステップS1へ戻る。よって、接触操作位置が規制ボタン領域である場合には接触操作位置を示す情報は携帯端末10へ送信されないことになる。
【0059】
以上、説明した本実施形態によれば、車両用装置100は、記憶装置112に、図形色特徴や動画存否情報など、画素情報に基づいて定まる画像情報である画素関連画像情報と関連付けて制御内容を記憶している。また、画素関連画像情報決定部121は、携帯端末10から取得した画素情報に基づいて画素関連画像情報を決定する。そして、表示部制御部123は、画素関連画像情報決定部121が決定した画素関連画像情報と、記憶装置112に記憶されている記憶内容とに基づいて制御内容を決定して制御を行う。このように、画素情報に基づいて制御内容を決定できるようにしているので、携帯端末10から画素情報のみしか取得できないとしても、車両用装置100は、携帯端末10が実行するアプリケーションに対して、前述の(1)〜(3)に例示したような機能を付加することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
たとえば、前述の実施形態では、走行規制対象ボタンの色特徴として、走行規制対象色の外枠Wを示したが、走行規制対象ボタンの色特徴を図形の内部の色としてもよい。
【0062】
また、前述の実施形態では、携帯端末10は、車両用装置100の記憶装置112に走行規制対象ボタンとして記憶されているボタンについては、走行規制制御と関連付けられている色特徴を有するように描画していた。しかし、このようにしないで、携帯端末10は車両用装置100において走行規制が行われるか図形であるかどうかを考慮することなく図形を描画してもよい。この場合には、車両用装置100において、端末画面内の図形の種々の特徴からその図形の内容を判断して、走行規制を行うかどうかを決定する。上記図形の種々の特徴としては、図形が文字や文字以外の記号であるか否かや、さらには、どのような文字・記号であるかも含まれる。
【0063】
また、前述の実施形態では、規制図形領域と関連づけて記憶されている制御内容として(1)、(2)を示したが、いずれか一方のみを規制図形領域と関連づけて記憶してもよいし、また、その他の制御を規制図形領域と関連づけて記憶してもよい。その他の制御としては、特定の文字・記号を抑制表示するなどがある。
【符号の説明】
【0064】
1:外部機器画面表示システム、 10:携帯端末(外部機器)、 100:車両用装置、 102:無線通信部、 104:有線通信部、 106:車両用表示部、 108:操作スイッチ、 110:車両情報取得部、 112:記憶装置(制御内容記憶手段)、 120:制御装置、 121:画素関連画像情報決定部(画素関連情報決定手段)、 122:車両走行状態決定部、 123:表示部制御部(制御部)、 W:外枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を備えた外部機器と接続されるとともに、車両に搭載される車両用表示部を備え、前記外部機器から、外部機器の表示部の各画素の画素情報を取得し、その画素情報に基づいて、前記車両用表示部に、前記外部機器の表示部に表示されている画面を表示する車両用装置であって、
画素情報に基づいて定まる画像情報である画素関連画像情報と関連付けて制御内容を記憶している制御内容記憶手段と、
前記外部機器から取得した画素情報に基づいて前記画素関連画像情報を決定する画素関連画像情報決定手段と、
その画素関連画像情報決定手段が決定した画素関連画像情報と前記制御内容記憶手段の記憶内容とに基づいて制御内容を決定し、その決定した制御を行う制御手段と
を含むことを特徴とする車両用装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、前記画素関連画像情報として、前記車両用表示部に表示される図形の情報である画素関連図形情報を決定し、
前記制御内容記憶手段は、前記画素関連図形情報と関連づけて制御内容を記憶していることを特徴とする車両用装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御内容記憶手段は、前記車両用表示部に表示される図形の色の特徴である図形色特徴を前記画素関連図形情報とし、その図形色特徴と関連付けて制御内容を記憶し、
前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて前記図形色特徴を決定することを特徴とする車両用装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備え、
前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、前記画素関連図形情報として、前記車両用表示部に表示される走行規制対象図形の表示領域を示す規制図形領域を決定するものであり、
前記制御内容記憶手段が前記画素関連図形情報としての規制図形領域と関連づけて記憶している制御内容は、前記車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合には、前記規制図形領域を、前記外部機器の表示部に表示されている前記走行規制対象図形の表示領域よりも視認性を低下させた抑制表示とするという制御内容であることを特徴とする車両用装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備え、
前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて、前記画素関連図形情報として、前記車両用表示部に表示される走行規制対象ボタンの表示領域を示す規制ボタン領域を決定するものであり、
前記制御内容記憶手段が前記画素関連図形情報としての規制ボタン領域と関連づけて記憶している制御内容は、前記車両走行状態判断手段により車両が走行中でないと判断されている場合には、前記規制ボタン領域が接触操作されると、接触操作位置を示す情報を前記外部機器へ送信するが、前記車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合には、前記規制ボタン領域が接触操作されても、接触操作位置を示す情報を送信しないという制御内容であることを特徴とする車両用装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記画素関連画像情報決定手段は、同一の画素に対する画素情報の時間的な変化に基づいて、前記画素関連画像情報として、前記車両用表示部に表示される画面に動画が存在しているか否かを示す動画存否情報を決定し、
前記制御内容記憶手段は、前記動画存否情報と関連づけて制御内容を記憶していることを特徴とする車両用装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記車両が走行中か否かを判断する車両走行状態判断手段を備え、
前記制御内容記憶手段が前記動画存否情報と関連づけて記憶している制御内容は、前記車両走行状態判断手段により車両が走行中であると判断されている場合であって、前記動画存否情報が、前記車両用表示部に表示される画面に動画が存在していることを示す情報である場合、前記車両用表示部に動画を表示しないという制御内容であることを特徴とする車両用装置。
【請求項8】
請求項2記載の車両用装置と前記外部機器とを有し、前記車両用装置の車両用表示部に前記外部機器の表示部の画面を表示する外部機器画面表示システムであって、
前記車両用装置の前記制御内容記憶手段は、前記車両用表示部に表示される図形の色の特徴である図形色特徴を前記画素関連図形情報とし、その図形色特徴と関連付けて制御内容を記憶し、
前記外部機器は、前記車両用装置の前記制御内容記憶手段に記憶されている制御を行う図形として予め設定された図形を、前記車両用装置の前記制御内容記憶手段に記憶されている図形色特徴を有するように前記表示部に描画するとともに、前記表示部の各画素の画素情報を、逐次、前記車両用装置に送信し、
前記車両用装置の前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて前記図形色特徴を決定することを特徴とする外部機器画面表示システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記車両用装置の前記制御内容記憶手段は、図形の外形色を前記図形色特徴とし、その外形色と関連付けて制御内容を記憶し、
前記外部機器は、前記車両用装置で所定の制御を行う図形として予め設定された図形を、前記車両用装置の前記制御内容記憶手段に記憶されている外形色を有するように前記表示部に描画するとともに、前記表示部の各画素の画素情報を、逐次、前記車両用装置に送信し、
前記車両用装置の前記画素関連画像情報決定手段は、前記画素情報に基づいて定まる画面内での色の変化に基づいて前記外形色を決定することを特徴とする外部機器画面表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202706(P2012−202706A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64732(P2011−64732)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】