説明

車両用補助前照ランプ

【課題】スイブル機構の小型化が可能で且つガタつきが生じにくい車両用補助前照ランプを提供する。
【解決手段】スイブル機構19によりリフレクタ13だけを回転させる構造のため、スイブル機構19の回転駆動モータ18は小型で良く、重量の軽減を図ることができる。また、リフレクタ13だけを回転させる構造のため、車両走行時の振動等が加わっても、回転駆動モータ18にはリフレクタ13の重量分の負荷しか加わらないため、ガタつきが生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配光パターンを車両旋回方向へ変える車両用補助前照ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路環境や車両走行環境に応じて配光パターンを車両旋回方向へ変える車両用補助前照ランプは知られている。補助前照ランプは、主前照ランプの車幅方向外側に配置され、例えば、ステアリング操作やナビゲーション情報に基づく車両旋回方向検知手段により、車両の旋回方向を検知して、その旋回方向に配光パターンを変えることにより、曲路における前方視認性を高めている。
【0003】
この種の車両用補助前照ランプは、前向きに設置されて光を前方へ照射する光源と、該光源の前方に一体的に配置されて光を前方に照射するインナレンズから構成されたランプユニットを有している。また、このランプユニット全体はスイブル機構により垂直軸を中心にして水平方向で回転自在に支持されている。そして、このスイブル機構により、前記車両旋回方向検知手段により検知された旋回方向へ向けて、ランプユニット全体を回転させ、配光パターンを旋回方向に変えて、旋回方向先の視認性を高めている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−141918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ランプユニット全体をスイブル機構により回転させる構造のため、スイブル機構が大型化して、重量の増加を招く。ランプユニット全体の重量がスイブル機構に集中するため、車両走行時の振動等によりランプユニットにガタつきが生じやすい。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、スイブル機構の小型化が可能で且つガタつきが生じにくい車両用補助前照ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、主前照ランプの車幅方向側方に配置され、配光パターンを車両旋回方向へ変更自在な車両用補助前照ランプであって、車両に固定されるベースと、ベースに固定された光源と、光源からの光を前方へ反射するリフレクタと、車両またはベースに固定されるとともにリフレクタを光源が通過する垂直軸を中心にして水平方向に回転自在に支持し且つ車両旋回方向に回転駆動させるスイブル機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用補助前照ランプであって、前記光源は、光を上向きに発光するように前記ベースに対して上向きに配置され、前記リフレクタは、光源の上方および後方および側方を覆うように半ドーム状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両用補助前照ランプであって、リフレクタが放物面を基調とする自由曲面から形成され、リフレクタからの反射光を車幅方向に拡散させるインナレンズが、リフレクタの前方に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の車両用補助前照ランプであって、リフレクタが楕円放物面を基調とする自由曲面から形成され、リフレクタからの反射光を垂直方向に集光させるインナレンズが、リフレクタの前方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、スイブル機構によりリフレクタだけを回転させる構造のため、スイブル機構は小型のもので良く、重量の軽減を図ることができる。また、車両走行時の振動等が加わっても、スイブル機構にはリフレクタの重量分の負荷しか加わらないため、ガタつきが生じにくい。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、光源が上向きに配置されるとともにリフレクタが半ドーム状に形成されているため、例えば光源の後方にドーム状(略半球状)のリフレクタを配置した構造に比べ、補助前照ランプ全体の上下寸法が小さくなる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、リフレクタが放物面を基調とする自由曲面で、インナレンズが車幅方向で光を拡散させる構造であるため、車幅方向に拡散した補助配光パターンを車幅方向に移動させることができ、車両旋回先の視認性が向上する。また、素通しのアウタレンズを用いても、インナレンズによりランプの内部が外から見えず、見映えがよい。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、リフレクタが楕円放物面を基調とする自由曲面で、インナレンズが垂直方向で光を集光させる構造であるため、明暗境界の強い補助配光パターンを車幅方向に移動させることができる。従って、シェードを追加したりすることで、主前照ランプの配光パターンを邪魔しない補助配光パターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、スイブル機構の小型化が可能で且つガタつきが生じにくい車両用補助前照ランプを提供するという目的を、スイブル機構によりリフレクタだけを回転させる構造にすることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図6は、本発明の第1実施例を示す図である。図1は、自動車の進行方向左側のフロントコンビネーションランプ1を示している。右側は左右対称構造のため、図示及び説明を省略する。
【0016】
フロントコンビネーションランプ1は、主前照ランプ2、補助前照ランプ3、フォグランプ4、コーナリングランプ5から構成されており、前面は素通しのアウタレンズ6により覆われている。
【0017】
主前照ランプ2は集光レンズ7を有するプロジェクタ型で、すれ違い用のロービーム配光パターンLPと、走行用のハイビーム配光パターンを切り替えることができる。補助前照ランプ3は、この主前照ランプ2の車幅方向外側位置に配置されている。
【0018】
補助前照ランプ3は、車両に固定されたハウジングHと、ハウジングHの前面開口に装着されて当該前面開口を覆うインナレンズ11と、ハウジングHおよびインナレンズ11にて区画された空間内に収容されたLED製の光源12およびリフレクタ13と、を備えて構成されている。
【0019】
ハウジングHは、略水平に配置されたベースとしてのロアプレート9と、ロアプレートの上方に対向配置されたアッパプレート8と、アッパプレート8およびロアプレート9の後側周縁を覆うバックプレート10と、を組み合わせて構成されている。
【0020】
光源12は、ベースとしてのロアプレート9にヒートシンク15を介して固定されている。光源12はロアプレート9に貫通形成された開口14内に上向き状態で設置され、ヒートシンク15はロアプレート9の下面に固定されてロアプレート9の下方に突出している。アッパプレート8には、後述するスイブル機構19用の開口16が形成されている。
【0021】
リフレクタ13は、光源12の後方から上方および側方を覆うように形成された半ドーム形状(球形の殻を略1/4に分割した形状)で、放物面を基調とする自由曲面から形成されている。このリフレクタ13の焦点に前記光源12が設置されている。このように、上向きに配置した光源12の上部に、光Lを前方へ反射する半ドーム状(略四半球状)のリフレクタ13を設けた構造のため、例えば光源12の後方にドーム状(略半球状)のリフレクタを配置した構造に比べ、補助前照ランプ3の全体の上下寸法d(図2)を小さくすることができる。
【0022】
リフレクタ13の上部には、光源12の中心を通過する垂直軸Xに合致する支持シャフト17が突設され、該支持シャフト17が回転駆動モータ18に連結されている。なお、回転駆動モータ18は、ハウジングHまたは車両に固定されている。
【0023】
リフレクタ13はロアプレート9上に載せられただけの状態であり、該支持シャフト17を回転駆動モータ18で回転させることにより、リフレクタ13だけを垂直軸Xを中心にして水平方向で回転させることができる。この支持シャフト17と回転駆動モータ18で、リフレクタ13を回転自在に支持し且つ回転駆動するスイブル機構19が形成される。スイブル機構19の回転駆動モータ18は、ユニット全体を回転させるのではなくリフレクタ13を回転させるだけの駆動力が得られれば良いため、小型である。
【0024】
回転駆動モータ18は、ステアリング操作やナビゲーション情報に基づく車両旋回方向検知手段20に接続されている。車両旋回方向検知手段20は、車両の旋回方向を検知して、その旋回方向及び旋回角度に関する信号を、回転駆動モータ18に出力する。回転駆動モータ18は、車両旋回方向検知手段20からの信号に応じた旋回方向及び旋回角度で、リフレクタ13を回転させる。
【0025】
インナレンズ11は、ハウジングHの前面開口の形状が前方から側方に向けて車幅方向に細長い帯状であることに対応して、車幅方向に長い帯状に形成されている。このインナレンズ11は、軸が上下方向のシリンドリカルのレンズを車幅方向に連続させた光拡散プリズムレンズで構成され、光を車幅方向に拡散させることができる。インナレンズ11が光拡散プリズムレンズのため、アウタレンズ6が素通しでも、内部のリフレクタ13や光源12が見えず、見映えがよい。
【0026】
次に、この実施例の作用を説明する。
【0027】
主前照ランプ2から所定の配光パターンの光が照射される。図6は、すれ違い用のロービーム配光パターンLPを示した図である。この主前照ランプ2による配光パターンは、道路環境や車両走行環境などが変化しても、常に同じ方向を照射している。
【0028】
補助前照ランプ3も直進走行時は、主前照ランプ2と同様に前方へ向けて光を照射し、補助配光パターンSPを形成している。すなわち、光源12から上向きに発せられた光Lは、リフレクタ13で前側に反射されて平行光となり、インナレンズ11で車幅方向に拡散された後、アウタレンズ6を透過して前方へ照射される。
【0029】
そして、車両が旋回すると、その旋回方向及び旋回角度を、車両旋回方向検知手段20が検知して回転駆動モータ18に信号を出力するため、回転駆動モータ18が、支持シャフト17を介して、リフレクタ13を検出した旋回方向及び旋回角度で回転させる。すると、補助配光パターンSPが旋回方向へ移動して、旋回先を照らすため、旋回時における前方視認性が高まる。
【0030】
次に、この実施例の効果を説明する。
【0031】
この実施例によれば、スイブル機構19によりリフレクタ13だけを回転させる構造のため、スイブル機構19の回転駆動モータ18は小型で良く、重量の軽減を図ることができる。また、リフレクタ13だけを回転させる構造のため、車両走行時の振動等が加わっても、回転駆動モータ18にはリフレクタ13の重量分の負荷しか加わらないため、ガタつきが生じない。
【0032】
また、この実施例によれば、光源12が上向きに配置されるとともに、リフレクタ13が半ドーム状に形成されているため、例えば光源の後方にドーム状(略半球状)のリフレクタを配置した構造に比べ、補助前照ランプ3の全体の上下寸法d(図2)が小さくなる。
【0033】
また、この実施例によれば、リフレクタ13が放物面を基調とする自由曲面で、インナレンズ11が車幅方向で光を拡散させる光拡散プリズムレンズのため、車幅方向に拡散した配光パターンSPを車幅方向に移動させることができ、車両旋回先の視認性が向上する。
【実施例2】
【0034】
図7及び図8は、本発明の第2実施例を示す図である。第1実施例と共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
この実施例に係る主前照ランプ21も、集光レンズ22を有するプロジェクター型で、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンの切り替えが可能である。
【0036】
この実施例の補助前照ランプ23の、第1実施例の補助前照ランプ3と異なる点は、リフレクタ26の形状、インナレンズ28の形状、である。また、アッパプレート8とバックプレート10は廃止されている一方で、ベースとしてのロアプレート9にシェード27が固定されている。
【0037】
リフレクタ26は、楕円放物面を基調とする自由曲面で、第1焦点に光源12が配置されている。第2焦点近傍にシェード27が設けられている。このシェード27により、主前照ランプ21のロービーム配光パターンに近いカットラインを形成することができる。
【0038】
インナレンズ28は、車幅方向に沿って円弧状に延びるシリンドリカル状の凸レンズで、主前照ランプ21の集光レンズ22と同様に、光を垂直方向で光を集光させる機能を有する。
【0039】
従って、この実施例2においては実施例1の効果に加え、光源12の光を、楕円放物面を基調とする自由曲面のリフレクタ26で前方に反射し、その光をインナレンズ28を介して、前方へ照射することにより、明暗境界の強い補助配光パターンを得ることができる。
【0040】
そのため、車両の旋回時に、スイブル機構19により、リフレクタ26を旋回方向へ回転させれば、旋回先を明暗境界の強い補助配光パターンで照らすことができ、旋回時における前方視認性が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上の実施例では、支持シャフト17と回転駆動モータ18から成るスイブル機構19を例にしたが、これに限定されない。リフレクタ13、26だけを垂直軸Xを中心に回転自在に支持でき且つ回転駆動できる機構であれば、どのような構造でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例に係る補助前照ランプを示す正面図。
【図2】補助前照ランプを示す斜視図。
【図3】補助前照ランプの内部構造を示す斜視図。
【図4】リフレクタ及びスイブル機構を示す斜視図。
【図5】補助前照ランプの内部構造を示す概略上面図。
【図6】補助前照ランプによる補助配光パターンを示す説明図。
【図7】第2実施例に係る補助前照ランプを示す斜視図。
【図8】第2実施例に係る補助前照ランプを示す側面図。
【符号の説明】
【0043】
2、21 主前照ランプ
3、23 補助前照ランプ
9 ベース
11、28 インナレンズ
12 光源
13、26 リフレクタ
17 支持シャフト
18 回転駆動モータ
19 スイブル機構
20 車両旋回方向検知手段
L 光
d 補助前照ランプの上下寸法
X 垂直軸
SP 補助配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主前照ランプの車幅方向側方に配置され、配光パターンを車両旋回方向へ変更自在な車両用補助前照ランプであって、
車両に固定されるベースと、ベースに固定された光源と、光源からの光を前方へ反射するリフレクタと、車両またはベースに固定されるとともにリフレクタを光源が通過する垂直軸を中心にして水平方向に回転自在に支持し且つ車両旋回方向に回転駆動させるスイブル機構と、を備えたことを特徴とする車両用補助前照ランプ。
【請求項2】
請求項1記載の車両用補助前照ランプであって、
前記光源は、光を上向きに発光するように前記ベースに対して上向きに配置され、前記リフレクタは、光源の上方および後方および側方を覆うように半ドーム状に形成されていることを特徴とする車両用補助前照ランプ。
【請求項3】
請求項2記載の車両用補助前照ランプであって、
リフレクタが放物面を基調とする自由曲面から形成され、リフレクタからの反射光を車幅方向に拡散させるインナレンズが、リフレクタの前方に設けられていることを特徴とする車両用補助前照ランプ。
【請求項4】
請求項2記載の車両用補助前照ランプであって、
リフレクタが楕円放物面を基調とする自由曲面から形成され、リフレクタからの反射光を垂直方向に集光させるインナレンズが、リフレクタの前方に設けられていることを特徴とする車両用補助前照ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−4512(P2008−4512A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175908(P2006−175908)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】