説明

車両用計器装置

【課題】主に、文字目盛領域の内側部分の意匠性を向上し得るようにする。
【解決手段】文字板2の文字目盛領域6の内側に、指針軸孔4と同心状の孔部15を有する透明部材16が取付けられ、孔部15に、指針軸5とは別個に回転可能な回転体17が配置され、回転体17に孔部15から透明部材16の半径方向へ向けて光を出射可能な出射部18が設けられ、出射部18から透明部材16の内部へ出射された光によって透明部材16に補助指針19が表示されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、文字目盛領域の内側部分の意匠性を向上し得るようにした車両用計器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。そして、このインストルメントパネルの運転席側の部分、または、運転席と助手席との間の部分などには、車両用計器装置が備えられている。
【0003】
このような車両用計器装置は、文字板の表面に、指針を回動自在に配設したものなどとされる。この指針は、文字板の中心部に設けられた指針軸孔に貫通された指針軸に取付けられる。そして、文字板には、その外周部に文字目盛領域が形成されている。
【0004】
そして、このような車両用計器装置では、文字板の文字目盛領域の内側部分の模様を変更し得るようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この車両用計器装置は、文字目盛領域の内側に透明または半透明な二枚の模様板を指針軸の軸線方向に隔てて設置し、少なくとも一方の模様板を回転させることにより、模様を変更し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−42001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用計器装置には、以下のような問題があった。
【0008】
即ち、重ねられた二枚の模様板のうち少なくとも一方を回転させることによって、模様を変更させるようにしているため、単調で模様の変化に乏しく、しかも、模様の変化に何らかの意味を持たせるようにすることもできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、文字板の文字目盛領域の内側に、指針軸孔と同心状の孔部を有する透明部材が取付けられ、孔部に、指針軸とは別個に回転可能な回転体が配置され、回転体に孔部から透明部材の半径方向へ向けて光を出射可能な出射部を設け、出射部から透明部材の内部に出射された光によって透明部材に補助指針を表示し得るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、指針軸とは別個に回転可能に配置された回転体の出射部から孔部を通して透明部材の内部へ半径方向へ向けて光を出射させることにより、透明部材に光による補助指針を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例にかかる車両用計器装置の平面図である。
【図2】図1の車両用計器装置の斜視図である。
【図3】図2の車両用計器装置を部分的に破断した斜視図である。
【図4】図3の断面部分の側面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図1の車両用計器装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1〜図6は、この実施例を示すものである。
【実施例】
【0014】
<構成>以下、構成について説明する。
【0015】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。そして、このインストルメントパネルの運転席側の部分、または、運転席と助手席との間の部分などには、車両用計器装置が備えられる。このような車両用計器装置には、例えば、速度計や回転計や燃料計や水温計やバッテリー計など、または、これらを適宜組み合わせたものなどがある。この実施例では、回転計の場合について説明するが、これに限るものではない。
【0016】
そして、図1または図2に示すような車両用計器装置1には、文字板2の表面に、指針3(実指針)を回動自在に配設したアナログ式のものが存在する。そして、図3〜図6に示すように(特に、図5の縦断面図と、図6の分解斜視図を参照)、この指針3は、文字板2の中心部に設けられた指針軸孔4に貫通された指針軸5に取付けられる。そして、文字板2には、その外周部に文字目盛領域6が形成される。
【0017】
ここで、指針軸5は、指針駆動装置7の出力軸とされる。或いは、指針軸5は、指針駆動装置7の出力軸に接続された軸部材とされる。指針駆動装置7は、文字板2の裏面側にほぼ平行に配設された回路基板8の裏面側に取付けられている。指針駆動装置7には、例えば、ステッピングモータや交叉コイルなどのムーブメントが用いられる。
【0018】
また、回路基板8の表面には、指針軸5の外周を同心状に覆う、筒状の遮蔽部材9(光漏れ防止部材)が設置されている。この遮蔽部材9は、指針軸孔4よりも径の小さいものとされて、指針軸孔4に貫通配置されている。また、遮蔽部材9の両端部(図中上下端部)は、回路基板8と指針3の基部とによって、それぞれ、光が漏れないように覆われている。指針3の基部は、遮蔽部材9の端部を覆い得る大きさの円形状などとしても良いし、遮蔽部材9の端部を覆う大きさの指針キャップを取付けるようにしても良い。そして、回路基板8の表面における遮蔽部材9の内側の部分には、指針3を照明するための指針照明用光源11が取付けられている。この指針照明用光源11には、例えば、LEDなどが用いられる。指針照明用光源11は、指針軸5の回りに数ヶ所設けられる。
【0019】
そして、上記した文字目盛領域6は、ほぼリング状をしている。この文字目盛領域6には、文字や目盛などの指標が周方向に所定の間隔を有して設けられている。上記した指針3は、上記した文字や目盛などの指標の一部と重なるように文字目盛領域6内へと延ばされている。
【0020】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0021】
(構成1)
文字板2の文字目盛領域6の内側に、指針軸孔4と同心状の孔部15を有する透明部材16が取付けられる。なお、透明部材16は、ポリカーボネートやアクリルなどによって構成される。透明部材16は、所望の色に着色しても良い。そして、孔部15に、指針軸5とは別個に回転可能な回転体17が配置される。この回転体17に、孔部15から透明部材16(内部)の半径方向外側へ向けて光を出射可能な出射部18が設けられる。これにより、出射部18から透明部材16の内部へ出射された光によって透明部材16に補助指針19(図1または図2参照)が表示されるようにする。
【0022】
ここで、孔部15は、指針軸孔4よりも径が小さく、遮蔽部材9の外周面と同じかそれよりも若干径の大きなものとされる。この孔部15に対して、上記した遮蔽部材9が貫通される。
【0023】
透明部材16は、文字板2の板面と平行(でほぼ面一)な滑らかな表面を有する比較的厚肉のものとされる。そして、透明部材16の孔部15と遮蔽部材9との間および透明部材16の裏面との間にかけて回転体17を設置可能な円筒状の回転体設置空間15aが設けられる。この場合には、孔部15の奥側の部分を段差状に拡径して回転体設置空間15aを設けるようにしている。
【0024】
そして、回転体17は、平坦なリング状をした頂面部17aと、円筒状の胴部17bと、フランジ部17cとを有するハット状のものとされる。回転体17の頂面部17aと、胴部17bとは、回転体設置空間15aに合わせた大きさおよび形状となるように形成されている。
【0025】
そして、リング状の頂面部17aの内周部分に上記した遮蔽部材9が同心状に摺接嵌合されることにより回転体17が軸支され、胴部17bが回転体設置空間15aの内周面と遮蔽部材9の外周面との間に挿入配置され、フランジ部17cが、透明部材16および文字板2の裏面と回路基板8の表面との間に配置される。フランジ部17cの外周は、複数の歯部を有する歯車部21とされている。そして、この歯車部21に、別の歯車部22を介して補助指針駆動装置23が接続されることにより、回転体17を回転駆動し得るようにしている。この補助指針駆動装置23は、回路基板8の裏面側に指針駆動装置7と隣接させて取付けられている。補助指針駆動装置23は、指針駆動装置7と同様のステッピングモータや交叉コイルなどのムーブメントとされている。
【0026】
また、上記した出射部18は、回転体17の胴部17bにおける、透明部材16の孔部15(回転体設置空間15a)と対向する位置に形成された開口部とされている。この開口部は、比較的小さなものとされる。そして、回転体17の胴部17bの内部には、筒状の導光体25が配設される。この導光体25は、胴部17bの内周面と遮蔽部材9の外周面との間に同心状に介在される。導光体25は、例えば、遮蔽部材9の外周面に外嵌固定するようにしても良い。また、導光体25は、例えば、回転体17の回転を案内するガイド部材などとしても良い。そして、回路基板8の表面における導光体25の対向する端面(入射面25a)に臨む位置には、補助指針19を形成するための補助指針用光源27が取付けられる。この補助指針用光源27には、例えば、LEDなどが用いられる。補助指針用光源27は、遮蔽部材9の回りに数ヶ所設けられる。更に、導光体25の反対側の端面には、補助指針用光源27からの光を出射部18へと導く反射面25bが形成されている。この反射面25bには、光を反射させる反射層を施すようにする。或いは、上記に替えて、出射部18に対して直接上記した補助指針用光源27を取付けるようにすることもできる。
【0027】
(構成2)
上記において、透明部材16を、裏面に指針軸孔4または孔部15と同心状の凹凸状反射部31を有するものとする。
【0028】
ここで、凹凸状反射部31は、例えば、鋸刃状或いはフレネルレンズ状に形成されたものが、透明部材16のほぼ全域に亘って多重に設けられる。凹凸状反射部31は、出射部18から透明部材16の内部へ出射された光を文字板2の表面へ向けて反射可能なものとする。凹凸状反射部31の裏面側には、必要に応じて、光を反射させる反射層や、奥部が透けて見えるのを防止するための表面処理が施される。表面処理としては、例えば、梨地模様や、反射層を設けることなどができる。
【0029】
(構成3)
上記において、透明部材16の裏面を、全体として中心(この場合には更に下方)へ向けてすぼむ円錐台状のものとする(円錐台状透明部材35)。
【0030】
ここで、円錐台状の透明部材16は、文字板2の中央部分に形成された円錐台状の凹部36に対して載置保持される。この円錐台状の凹部36は、文字板2と回路基板8との間に介在された中間ハウジング37によって背面の少なくとも一部を部分的に支持される。この中間ハウジング37には、その外周部に、凹部36の裏面側を当接支持可能なテーパリング状の凹部支持部37aが設けられている。また、中間ハウジング37には、その内周部分に、回転体17の底部を回転自在に保持可能な回転体保持部37bが設けられている。更に、中間ハウジング37の凹部支持部37aには、上記した別の歯車部22を配置するための切欠部37cが設けられている。なお、上記した遮蔽部材9を中間ハウジング37に対して一体に設けることもできる。
【0031】
また、構造的には、透明部材16の裏面を、平坦な面としたり、平坦な面と円錐台状の部分とを単段または多段に組合わせたものとしたりすることなども可能である。
【0032】
<作用効果>以下、この実施例の作用効果について説明する。
【0033】
車両用計器装置1は、文字板2の表面に配設された指針3(実指針)を回動させて、文字板2の外周部に設けられた文字目盛領域6に沿って移動させることにより、文字目盛領域6に形成された文字や目盛などの指標を指し示すことができる。これにより、乗員は、運転情報を知得することができる。
【0034】
(作用効果1)
そして、指針軸5とは別個に回転可能に配置された回転体17の出射部18から孔部15を通して透明部材16の内部へ半径方向外側に向けて光を出射させることにより、文字板2の文字目盛領域6の内側部分に設けられた透明部材16に、光による補助指針19を表示(間接照明表示)させることができる。この光による補助指針19によって、例えば、推奨域(或いは、推奨回転領域、コーチング領域)などの運転補助情報を表示させることができる。この推奨域は、車両の速度やシフトポジションや回転数などの走行状況によって変化するものであるが、回転体17を回転させることによって、光による補助指針19を現在の状況に応じた推奨域へと移動させることができる。
【0035】
そして、光による補助指針19は、透明部材16に明瞭に現わされるため、実際の指針3と区別することが容易である。また、光による補助指針19と、透明部材16(および透明部材16裏面の凹凸状反射部31など)とによって文字目盛領域6の内側部分の意匠性を高めることができる。また、光による補助指針19を、回転体17の回転によって機械的に回動させるようにしているため、動きが自然で指針3の動きに対して違和感のないものとすることができる。更に、回転体17の回転機構は、比較的簡単に構成できるため、光による補助指針19を安価に実現することができる。
【0036】
これに対し、構造的には、例えば、文字板2を液晶パネルにして、液晶パネル上に補助指針19と同様のものを表示させることや、文字板2の外周に沿って多数の補助指針用光源27を取付けて、このうちの幾つかを点灯させることにより、補助指針19と同様の機能を有するものを出現させることなども考えられるが、このようにする場合と比べても、安価に実現できると共に、より高い意匠性や、より自然な表示感を得ることが可能である。
【0037】
なお、上記したように、出射部18に直接補助指針用光源27を取付けるようにした場合には、補助指針用光源27の点灯個数によって、補助指針19の太さや光量などを変更することができる。
【0038】
(作用効果2)
上記において、透明部材16の裏面に指針軸孔4または孔部15と同心状の凹凸状反射部31を設けることにより、光による補助指針19を周方向へ所要幅に広げて、レーダーパネルをイメージさせるような帯状の光に見せることができる。また、同心状の凹凸状反射部31で光による補助指針19を周方向へ広げることにより、使用する光源の数を減らすことができる。更に、同心状の凹凸状反射部31は、周方向のどの位置であっても、光による補助指針19を同じ形状にすることができるため、凹凸状反射部31を他の形状に変えた場合と比べて、光による補助指針19をより安定したものとすることができる。そして、多重の同心状の凹凸状反射部31は、透明部材16の半径方向に対して多数の反射面25bを有するものとなるので、光による補助指針19の長さ方向の各部を明瞭に視認させることができる。
【0039】
(作用効果3)
そして、透明部材16の裏面側を、全体として中心(この場合には更に下方)へ向けてすぼむ円錐台状としたことにより、光による補助指針19や透明部材16を立体的に見せることが可能となる。これにより、更に意匠性を向上することができる。また、指針3と光による補助指針19を出現させる出射部18との間に高低差があっても、両者を無理なく見せることができると共に、構造的にまとまりの良いものとすることができる。
【0040】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0041】
1 車両用計器装置
2 文字板
3 指針
4 指針軸孔
5 指針軸
6 文字目盛領域
15 孔部
16 透明部材
17 回転体
18 出射部
19 補助指針
31 凹凸状反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字板の表面に、指針が回動自在に配設され、
該指針が前記文字板の中心部に設けられた指針軸孔に貫通された指針軸に取付けられ、
前記文字板がその外周部に文字目盛領域を有する車両用計器装置において、
前記文字板の文字目盛領域の内側に、前記指針軸孔と同心状の孔部を有する透明部材が取付けられ、
前記孔部に、前記指針軸とは別個に回転可能な回転体が配置され、
該回転体に前記孔部から透明部材の半径方向へ向けて光を出射可能な出射部が設けられ、
該出射部から前記透明部材の内部へ出射された光によって透明部材に補助指針が表示されるようにしたことを特徴とする車両用計器装置。
【請求項2】
前記透明部材が、裏面に前記指針軸孔または前記孔部と同心状の凹凸状反射部を有することを特徴とする請求項1記載の車両用計器装置。
【請求項3】
前記透明部材の裏面が、全体として中心へ向けてすぼむ円錐台状をしていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用計器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15322(P2013−15322A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146189(P2011−146189)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】