説明

車両用設計支援装置

【課題】評価対象車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行えると共に、ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分を特定するための作業を別途行う必要がない車両用設計支援装置を提供する。
【解決手段】車両用設計支援装置を、評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を上方向に平行移動した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を作成し、車両情報と作成した要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、評価対象車両の形状を示す図形とホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する機能を有する装置としておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の設計作業を支援するための車両用設計支援装置に係り、特に、車両のホイールアーチ意匠面に関する設計作業を支援するための車両用設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車)の開発は、各種のCAD/CAM/CAEシステムを用いて行われているが、そのようなシステムを利用した設計作業に時間がかかると、車両の開発期間が延びてしまうことになる。このため、各種の設計作業をより短時間で(より効率的に、より無駄のない形で)行えるようにすることを目的とした様々なシステム/装置が提案されている。
【0003】
例えば、設計データがデザインルール(設計基準)に適合しているか否かをチェックするためのデザインルールチェックシステムとして、疑似エラーと本質的なエラーとを分けて出力できるもの(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。なお、疑似エラーとは、一般的なデザインルールに反した特殊な仕様の設計を行っているが故に発生するエラーのことである。
【0004】
また、入力された車両外形データに基づき、構成要素の組み合わせが異なる複数の車両設計案を作成し、作成した車両設計案ごとに構造解析を行い、その解析結果が最も優れた車両設計案を出力できる車両形状決定装置(例えば、特許文献2参照。)も、提案されている。
【0005】
さらに、意匠CADデータの修正時に、製品設計用CADデータが新たに生成されるのではなく、修正前の意匠CADデータから生成された製品設計用CADデータが修正されるようにした製品設計装置(例えば、特許文献3参照。)や、車両を構成している各部材が、法規制を満たすが否かを判定できる車両設計支援装置(例えば、特許文献4参照)も、提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−99558号公報
【特許文献2】特開2002−366606号公報
【特許文献3】特開2003−122801号公報
【特許文献4】特開2005−173761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、車両の設計作業をより短時間で行えるようにするための様々なシステム/装置が提案されている。しかしながら、車両のホイールアーチ意匠面及びタイヤの形状及び位置関係が、法規制による要件(以下、ホイールガード要件と表記する)を満たすものであるか否かのチェックは、図17及び図18に模式的に示してあるように、タイヤ近傍の規定エリア内の複数の断面図を作成し、各断面図にてタイヤ(或いはホイール等)がホイールアーチ意匠面(図では、意匠面)からはみ出していないことをオペレータが確認するといった煩雑な作業によって行われているのが現状である。このため、車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行える技術が望まれている。
【0008】
また、車両のホイールアーチ意匠面及びタイヤの形状及び位置関係がホイールガード要件を満たすものではなかった場合には、ホイールアーチ意匠面の形状(意匠)の変更が必要となるが、現状のホイールガード要件のチェック法は、タイヤがはみ出していることが
分かった箇所の近傍の断面図を複数個作成する作業を、別途、行わなければ、ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分が分からないものとなっている。
【0009】
そこで、本発明の第1の課題は、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行える車両用設計支援装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の課題は、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行えると共に、ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分を特定するための作業を別途行う必要がない車両用設計支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第1の課題を解決するために、本発明の第1の態様の、評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置は、情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を前記評価対象車両のグランドライン面上に投影した線分に相当する最外側線分を表す最外側線分情報を前記記憶手段上に作成する線分情報作成手段、及び、前記車両情報と前記記憶手段上の前記最外側線分情報とに基づき、前記評価対象車両の前記ホイールアーチ意匠面が前記ホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定し、判定結果を出力する判定手段を、備える。
【0012】
すなわち、本発明の第1の態様の車両用設計支援装置は、評価対象車両のタイヤ近傍の断面図を全く作成することなく、ホイールガード要件チェック(ホイールアーチ意匠面がホイールガード要件を満たすものであるか否かを自動的に判定する処理)を行うものとなっている。従って、この車両用設計支援装置を用いておけば、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックを、上記した現状のチェック法(タイヤ近傍の複数の断面図を作成してオペレータが各断面図をチェックするチェック法)や、当該チェック法を自動化したチェック法を用いた場合よりも短時間で行えることになる。
【0013】
また、本発明の第2の態様の、評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置は、情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を上方向に平行移動した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を前記記憶手段上に作成する要件面情報作成手段、及び、前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する表示制御手段を、備える。
【0014】
すなわち、本発明の第2の態様の車両用設計支援装置は、評価対象車両のタイヤ近傍の断面図を全く作成することなく、表示装置の画面上に、評価対象車両の形状を示す図形と、“前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を上方向に平行移動した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面”を表す図形とを重ねて表示する構成を有している。そして、この車両用設計支援装置(の表示制御手段)が表示装置の画面上に表示する画像(評価対象車両の形状を示す図形と、ホイールガード要件面を表す図形とからなる画像)は、ホイールガード要件を満たしているか否かを即座に判定できるものとなっている。また、当該画像は、ホイールアーチ意匠面のどの部分に修正が必要なのかが正確に分かる画像ともなっている。従って、この第2の態様の車両用設計支援装置は、評価対象車両についてのホイールガード要件チェック(オペレータによる判
定を含むもの)が短時間で行えると共に、ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分を特定するための作業を別途行う必要がない装置(上記した第2の課題を解決できる装置)であることになる。
【0015】
また、本発明の第3の態様の、評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置は、情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を当該タイヤの回転軸を中心に拡大した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を前記記憶手段上に作成する要件面情報作成手段、及び、前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する表示制御手段を、備える。
【0016】
すなわち、本発明の第3の態様の車両用設計支援装置も、本発明の第2の態様の車両用設計支援装置と同様に、評価対象車両のタイヤ近傍の断面図を全く作成することなく、「ホイールガード要件を満たしているか否かを即座に判定でき、かつ、ホイールアーチ意匠面のどの部分に修正が必要なのかが正確に分かる画像」を表示装置の画面上に表示する装置となっている。従って、この車両用設計支援装置も、本発明の第2の態様の車両用設計支援装置と同様に、上記した第2の課題を解決できる装置であることになる。
【0017】
なお、本発明の各態様の車両用設計支援装置は、評価対象車両の製造に用いられる各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度を考慮した形で、最外側線分情報や要件面情報が作成される装置(請求項4,5,8記載の構成を有する装置)として実現しておくことが望ましい。何故ならば、そのような装置として本発明の各態様の車両用設計支援装置を実現しておけば、設計上はホイールガード要件を満たしているが、実際にはホイールガード要件を満たしていない車両が製造されてしまうことを防止できることになるからである。
【0018】
また、本発明の第2、第3の態様の車両用設計支援装置を、“前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報(要件面情報作成手段によって作成された要件面情報)とに基づき、前記評価対象車両の前記ホイールアーチ意匠面が前記ホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定し、判定結果を出力する判定手段”も備えた装置として実現しておくことも出来る。
【0019】
また、本発明の第2、第3の態様の車両用設計支援装置を、前記要件面情報作成手段によって作成された要件面情報を不揮発性記憶手段(可搬型の記録媒体やHDD)に保存する保存手段をさらに備え、前記表示制御手段として、ホイールアーチ意匠面の形状が修正された前記車両情報と、前記不揮発性記憶手段に保存されている前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する機能を有する手段を採用した装置として実現しておくことも出来る。なお、そのような装置として実現された各態様の車両用設計支援装置によれば、要件面情報の作成を省略した形(より時間がかからない形)で、ホイールアーチ意匠面の形状修正後のホイールガード要件チェックを行えることになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行える車両用設計支援装置と、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックが短時間で行えると共に、ホイールアーチ意匠面の修正が必要な正確な部分を特定するための作業を別途行う必要がない車両用設計支援装置とを、提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
《第1実施形態》
図1に模式的に示してあるように、本発明の第1実施形態に係る車両用設計支援装置10は、コンピュータ本体11,ディスプレイ12,キーボード等からなる装置(いわゆるコンピュータ,コンピュータシステム)に車両用設計支援プログラムをインストールした装置である。
【0023】
車両用設計支援プログラムは、車両用設計支援装置10(コンピュータ本体11内のCPU)に、図3に示した手順の車両用設計支援処理を実行させるためのプログラムである。
【0024】
この車両用設計支援処理の内容(車両用設計支援処理時における車両用設計支援装置10/コンピュータ本体11内のCPUの動作内容)を説明する前に、ここで、以下の説明で用いる幾つかの用語の意味を、説明(定義)しておくことにする。
【0025】
以下の説明において、タイヤ部とは、車両が備えるタイヤを含む回転部分(タイヤ、ホイール、ホイールキャップ等からなる部分)のことである。車両情報とは、車両が備えるホイールアーチ意匠面(ホイールアーチ部の外板意匠面)の形状、タイヤ部の形状、ホイールアーチ意匠面とタイヤ部の位置関係等を示す情報(それに基づき、車両の各タイヤ部周辺の3次元図形を表示可能な情報)のことである。なお、本実施形態に係る車両用設計支援装置10の処理対象とされる車両情報は、それに含まれるホイールアーチ意匠面の形状や車両の他の各部に対する位置を示す情報(以下、意匠面情報と表記する)を他の意匠面情報に置換することが容易に行えるデータ構造を有するものとなっている。
【0026】
評価対象車両とは、車両用設計支援装置10を用いてホイールガード要件を満たしているか否かのチェックを行う/行っている車両のことである。車両情報ファイル、意匠面情報ファイルとは、それぞれ、車両情報、意匠面情報(ホイールアーチ意匠面の形状等を示す情報)を保持したファイルのことである。グランドライン面とは、評価対象車両がその上に位置している平面のことである。前、後、左、右、上、下とは、それぞれ、図2に矢印で示してある方向(評価対象車両及びグランドライン面を基準として定められている方向)のことである。鉛直面とは、グランドライン面と直交している平面のことであり、左右方向鉛直面とは、前後方向と直交している鉛直面のことである。
【0027】
以上のことを前提に、以下、車両用設計支援処理時における車両用設計支援装置10の動作内容を具体的に説明する。
【0028】
図3に示してあるように、車両用設計支援処理を開始した車両用設計支援装置10は、まず、情報設定受付処理(ステップS100)を行う。
【0029】
この情報設定受付処理は、所定構成の設定用ウィンドウをディスプレイ12の画面上に表示することにより、要実行チェック処理指定情報、車両情報ファイル指定情報、意匠面情報ファイル指定情報等を操作者に設定させ、操作者により設定された各情報をコンピュータ本体11内のメモリ上に記憶する処理である。
【0030】
ここで、要実行チェック処理指定情報とは、車両用設計支援装置10が実行すべきチェック処理が、新規チェック処理、修正チェック処理(図3参照;詳細は後述)のいずれであるかを指定するための情報のことである。車両情報ファイル指定情報とは、車両用設計
支援装置10に処理させる車両情報ファイル(評価対象車両に関する車両情報を保持した車両情報ファイル)を指定するための情報(本実施形態では、車両情報ファイルの,パス名を含むファイル名)のことである。意匠面情報ファイル指定情報とは、車両用設計支援装置10に処理させる意匠面情報ファイル(評価対象車両に関する意匠面情報を保持した意匠面情報ファイル)を指定するための情報(本実施形態では、意匠面情報ファイルの,パス名を含むファイル名)のことである。これらのファイル指定情報のうち、車両情報ファイル指定情報は、新規チェック処理、修正チェック処理のいずれを車両用設計支援装置10に行わせる場合にも設定が必要な情報となっている。一方、意匠面情報ファイル指定情報は、修正チェック処理を車両用設計支援装置10に行わせる場合にのみ設定が必要な情報となっている。
【0031】
詳細説明は省略するが、この情報設定受付処理時に表示される設定用ウィンドウは、上記のような情報を設定可能なものであると共に、ばらつき量指定情報をデフォルト値から変更するためのアイテム(本実施形態では、ばらつき量指定情報のデフォルト値が初期値として示される数値情報入力用のテキストボックス)を備えたものとなっている。ここで、ばらつき量指定情報(用途については後述)とは、評価対象車両の各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度を考慮して定められる、タイヤ部とホイールアーチ部との間の位置関係の,設計値からの最大ばらつき量(最大ずれ量)を指定する数値情報のことである。
【0032】
また、設定用ウィンドウは、各種情報の設定完了時に操作者が操作すべきアイテムを備えたものとなっており、情報設定受付処理は、当該アイテムが操作された場合、実行が指示されている処理に必要なファイルが実際に存在するか否かを確認してから終了する処理(確認できなかった場合には、終了せずに、操作者に情報の再設定を促す処理)となっている。
【0033】
情報設定受付処理を終えた車両用設計支援装置10は、設定されている要実行チェック処理指定情報が示しているチェック処理(以下、要実行チェック処理と表記する)が新規チェック処理であった場合(ステップS101;YES)には、新規チェック処理(ステップS104〜S111の処理)を開始する。
【0034】
新規チェック処理を開始した車両用設計支援装置10は、まず、評価対象車両情報に基づき、評価対象車両のタイヤ部毎に、そのタイヤ部に関するチェック対象部分の形状及び位置を示すチェック対象部分情報をメモリ上に作成する処理(ステップS104)を行う。ここで、評価対象車両情報とは、操作者が設定した車両情報ファイル指定情報が示している車両情報ファイル内の車両情報(評価対象車両の車両情報)のことである。また、チェック対象部分とは、図4に示してあるように、タイヤ部の“車軸中心(タイヤ部の回転中心)を通る鉛直面から,それぞれ,前方に30゜,後方に50゜傾いた,車軸中心を通る2平面によって挟まれている部分”のことである。
【0035】
以下、説明の便宜上、各ステップの処理により情報が作成される場所の説明は省略することにするが、以下で説明する各ステップの処理も、情報をメモリ上に作成する処理(作成した/求めた情報をメモリ上に記憶する処理)である。
【0036】
ステップS104の処理を終えた車両用設計支援装置10は、当該処理にて作成した4つのチェック対象部分情報に基づき、チェック対象部分毎に、そのチェック対象部分を前後方向の位置が異なる複数の左右方向鉛直面で分割した場合における各分割面の最外側点の座標を求める処理(ステップS105)を行う。なお、分割面の最外側点とは、分割面の輪郭線上の,評価対象車両の左右方向の中心面(評価対象車両の左右方向と直交し、評価対象車両と交わる鉛直面)から最も離れている点のことである。
【0037】
このステップS105の処理は、図5に模式的に示してあるように、チェック対象部分の各端部(図における左端部分と右端部分)における分割面の間隔が、他の部分の間隔よりも短くなるように、各左右方向鉛直面の位置(座標を求める最外側点の前後方向位置)を決定する処理となっている。また、ステップS105の処理は、実際に分割面を生成することなく(分割面を表示可能な情報を生成することなく)行われる処理ともなっている。
【0038】
ステップS105の処理を終えた車両用設計支援装置10は、当該処理で求めた各最外側点の座標に基づき、チェック対象部分毎に、最外側線分の形状及び位置を示す最外側線分情報を作成する処理(ステップS106)を行う。この処理により各チェック対象部分について作成される最外側線分情報は、図6に示してあるような最外側線分を表す情報である。
【0039】
すなわち、ステップS106の処理は、チェック対象部分毎に、そのチェック対象部分についてステップS105の処理にて求められている最外側点群の座標から、それらの最外側点群をグランドライン面上に投影した点群の座標を求めた上で、それらの点群を繋いだ線分(=最外側線分)を表す最外側線分情報を作成する処理となっている。なお、ステップS106の処理は、最外側線分情報として、上記点群をなめらかに繋いだ線分を表すもの(本実施形態では、各2点間を二次曲線近似したもの)を作成する処理となっている。
【0040】
ステップS106の処理を終えた車両用設計支援装置10は、作成した各最外側線分情報に基づき、チェック対象部分毎に、最外側線分を上方向に平行移動することにより得られる最外側線分の軌跡面から、所定部分を取り除いた暫定ホイールガード要件面を表す情報を作成する処理(ステップS107)を行う。
【0041】
より具体的には、ステップS107の処理を開始した車両用設計支援装置10は、まず、ステップS106の処理で作成した最外側線分情報毎に、その最外側線分情報が表している最外側線分を上方向に平行移動することによって得られる軌跡面を表す軌跡面情報を作成する。そして、車両用設計支援装置10は、作成した軌跡面情報毎に、その軌跡面情報が表している軌跡面から,チェック対象部分の特定に用いた2平面(図4参照)よりも下方の部分を取り除いた面である暫定ホイールガード要件面を表す情報を作成してから、ステップS107の処理を終了する。
【0042】
要するに、車両用設計支援装置10は、図7に示したような軌跡面の形状及び位置を示す軌跡面情報を4つ作成してから、図8に示したような形状の暫定ホイールガード要件面を表す情報を4つ作成する処理をステップS107にて行う。
【0043】
ステップS107の処理を終えた車両用設計支援装置10は、作成した各情報とばらつき量指定情報とに基づき、チェック対象部分毎に、各部(面上の各点)の,暫定ホイールガード要件面からの距離がばらつき量指定情報と一致しているホイールガード要件面を表す要件面情報を作成する処理(ステップS108)を行う。なお、このステップの処理で作成される各要件面情報は、暫定ホイールガード要件面と図9に示してある関係を有する面であるホイールガード要件面を表す情報である。すなわち、ステップS108の処理は、各部(面上の各点)の,暫定ホイールガード要件面からの距離がばらつき量指定情報と一致しており、かつ、暫定ホイールガード要件面よりも外側に位置しているホイールガード要件面を表す要件面情報を、チェック対象部分毎に作成する処理となっている。
【0044】
図3に戻って、ステップS108の処理後の車両用設計支援装置10の動作内容を説明
する。
【0045】
ステップS108の処理を終えた車両用設計支援装置10は、作成した4つの要件面情報からなるホイールガード要件面情報を保持したホイールガード要件面情報ファイルを、評価対象車両情報との対応関係が分かるファイルとして自装置内に生成(保存)する処理(ステップS109)を行う。なお、このステップS109にて実際に行われる処理は、操作者により設定された車両情報ファイル指定情報(車両情報ファイルのファイル名)を加工することにより評価対象車両情報との対応関係が分かるファイル名を用意し、当該ファイル名を有するホイールガード要件面情報ファイルを所定のフォルダ内に生成する処理である。
【0046】
その後、車両用設計支援装置10は、ホイールアーチ意匠面毎に意匠面形状チェック処理を実行する処理(ステップS110)を行う。
【0047】
このステップS110にて、車両用設計支援装置10が各ホイールアーチ意匠面について実行する意匠面形状チェック処理は、図10に示した手順の処理である。なお、図10及び以下の説明において、注目ホイールアーチ意匠面とは、この意匠面形状チェック処理の処理対象となっているホイールアーチ意匠面のことである。注目ホイールガード要件面とは、注目ホイールアーチ意匠面下に位置しているタイヤ部に関するホイールガード要件面のことである。また、X,Y,Z座標値とは、X軸、Y軸、Z軸が、それぞれ、前後方向、左右方向、上下方向(図2参照)と平行となるように設定されているXYZ座標系(座標値が大きくなる方向が、前/右/上方向であり、XZ平面が、評価対象車両の左右方向の中心を通るもの)におけるX,Y,Z座標値のことである。
【0048】
すなわち、或る注目ホイールアーチ意匠面についての意匠面形状チェック処理を開始した車両用設計支援装置10は、まず、ホイールガード要件面情報(ステップS108の処理で作成された4つの要件面情報からなる情報)に基づき、注目ホイールガード要件面のX方向(前後方向)の各端部のX座標値を求め、小さい方の座標値を変数Xsに、大きい方の座標値を変数Xeに設定する処理(ステップS201)を行う。次いで、車両用設計支援装置10は、変数CC、変数Xcに、それぞれ、“0”、Xs値を設定する処理(ステップS202)を行う。
【0049】
その後、車両用設計支援装置10は、ホイールガード要件面情報に基づき、注目ホイールガード要件面上のX座標値がXc値と一致している点のY座標値を求め、求めた値を変数Ywに設定する処理(ステップS203)を行う。また、車両用設計支援装置10は、評価対象車両情報に基づき、注目ホイールアーチ意匠面上の,X座標値がXcと一致している最下方(Z座標値が最も小さい)の点のY座標値及びZ座標値を求め、求めたY座標値、Z座標値をそれぞれ変数Yc、変数Zcに設定する処理(ステップS204)も行う。
【0050】
その後、車両用設計支援装置10は、abs(Yc)>abs(Yw)が成立しているか否かを判断する(ステップS205)。ここで、abs(u)とは、uの絶対値のことである。なお、上記したように、この意匠面形状チェック処理の説明に用いているXYZ座標系は、Y座標値が大きくなる方向が、右方向であり、XZ平面が、評価対象車両の左右方向の中心を通るもの〔評価対象車両の右側にある各面(ホイールガード要件面等)上の点のY座標値が正になり、評価対象車両の左側にある各面上の点のY座標値が負になるもの〕である。そして、abs(Yc)>abs(Yw)は、Yc、Ywが共に正である場合には、Yc>Ywと同値な不等式であり、Yc、Ywが共に正である場合には、Yc<Ywと同値な不等式である。従って、このステップS205の処理は、注目ホイールアーチ意匠面が評価対象車両のいずれの側のホイールアーチ意匠面である場合にも、Y座標
値Ycが求められている注目ホイールアーチ意匠面上の点が、Y座標値Ywが求められている注目ホイールガード要件面上の点よりも、評価対象車両の上(或いは下)側から見て、外側に位置している点であるか否かを判断する処理であることになる。
【0051】
車両用設計支援装置10は、abs(Yc)>abs(Yw)が成立していた場合(ステップS205;YES)には、CCに“1”を加算(ステップS207)してから、CC≧規定数(予め定められている正の整数)が成立するか否かを判断する(ステップS208)。
【0052】
車両用設計支援装置10は、CC≧規定数が成立していなかった場合(ステップS208;NO)には、Zc+ΔZ>Zwが成立しているか否かを判断する(ステップS209)。ここで、Zwとは、注目ホイールガード要件面の上端の高さのことであり、ΔZとは、予め定められている正の実数のことである。
【0053】
また、車両用設計支援装置10は、abs(Yc)>abs(Yw)が成立していなかった場合(ステップS205;NO)には、CCに“0”を設定(ステップS206)してから、Zc+ΔZ>Zwが成立しているか否かを判断する(ステップS209)。
【0054】
そして、車両用設計支援装置10は、Zc+ΔZ>Zwが成立していなかった場合(ステップS209;NO)、ZcにΔZを加算(ステップS210)してから、評価対象車両情報に基づき、注目ホイールアーチ意匠面の,X座標値、Z座標値が、それぞれ、Xc、Zcと一致している点のY座標値を求め、求めた値を変数Ycに設定する処理(ステップS211)を行う。そして、設計支援装置10は、ステップS203以降の処理を再び開始する。
【0055】
車両用設計支援装置10は、上記のような処理を繰り返している間に、CC≧規定数が成立した場合(ステップS208;YES)には、Xcに、予め定められている正の実数であるΔXを加算(ステップS212)した後、Xc>Xeが成立しているか否かを判断する(ステップS213)。そして、車両用設計支援装置10は、Xc>Xeが成立していなかった場合(ステップS213;NO)には、ステップS203以降の処理を再び開始する。
【0056】
また、車両用設計支援装置10は、CC≧規定数が成立することなく、Zc+ΔZ>Zwが成立した場合(ステップS209;YES)には、注目ホイールアーチ意匠面に関するチェック結果として、NG(ホイールガード要件を満たしていないことを示す情報)を記憶する処理(ステップS215)を行う。そして、車両用設計支援装置10は、この意匠面形状チェック処理を終了し、未評価のホイールアーチ意匠面が残っていた場合には、そのホイールアーチ意匠面に対する意匠面形状チェック処理を開始する。また、車両用設計支援装置10は、未評価のホイールアーチ意匠面が残っていなかった場合には、ステップS110(図3)の処理を終了する。
【0057】
車両用設計支援装置10は、Xc>Xeが成立していた場合(ステップS213;YES)には、注目ホイールアーチ意匠面に関するチェック結果としてOK(ホイールガード要件を満たしていることを示す情報)を記憶する(ステップS215)。そして、車両用設計支援装置10は、意匠面形状チェック処理を終了し、未評価のホイールアーチ意匠面が残っていた場合には、そのホイールアーチ意匠面に対する意匠面形状チェック処理を開始し、残っていなかった場合には、ステップS110(図3)の処理を終了する。
【0058】
要するに、この意匠面形状チェック処理は、図11に模式的に示したように、X座標値がXcとなっている注目ホイールアーチ意匠面の各点が、注目ホイールガード要件面より
も外側にあるか否かを、下側からΔZずつ高さを変えながらチェックしていく処理となっている。また、意匠面形状チェック処理は、肯定的なチェック結果が規定数と同じ回数連続して得られた場合(ステップS208;YES)に、次の箇所(X座標値がXc+ΔXとなっている箇所)に関するチェックを開始する処理であると共に、全ての箇所について肯定的なチェック結果が規定数と同じ回数連続して得られたとき(ステップS213;YES)に、注目ホイールアーチ意匠面に関するチェック結果としてOKを記憶して終了する処理となっている。さらに、意匠面形状チェック処理は、肯定的なチェック結果が規定数と同じ回数連続して得られることなく、Zc+ΔZ>Zwが成立した場合(ステップS209;YES)には、次の箇所に関するチェックを開始することなく、注目ホイールアーチ意匠面に関するチェック結果としてNGを記憶して終了する処理ともなっている。
【0059】
図3に戻って、車両用設計支援処理時における車両用設計支援装置10の動作内容の説明を続けることにする。
【0060】
ステップS110の処理を終えた車両用設計支援装置10は、ディスプレイ12の画面上に、評価対象車両の形状を表す車両形状図形と、各ホイールガード要件面の形状を表すホイールガード要件面図形とを重ねて表示すると共に、各ホイールアーチ意匠面に関するチェック結果(ホイールガード要件を満たしているか否かを示す情報)を表示する処理である処理結果表示処理(ステップS111)を行う。
【0061】
詳細説明は省略するが、この処理結果表示処理は、ディスプレイ12の画面上に、車両形状図形(及びホイールガード要件面図形)の任意の部分(操作者によって指定された部分)を表示させることが出来るものとなっている。すなわち、処理結果表示処理は、ディスプレイ12の画面上に、車両形状図形(及びホイールガード要件面図形)の全体を表示することも、図12や図13に示したような図形(車両形状図形の一部とホイールガード要件面図形)を表示することも可能なものとなっている。
【0062】
また、処理結果表示処理は、ディスプレイ12の画面上に表示している画像を、印刷することや、コンピュータ本体11がアクセス可能な任意の記憶媒体上にファイルとして保存することが可能な処理となっている。
【0063】
さらに、処理結果表示処理は、操作者によって所定の指示が入力されたときに終了する処理となっており、処理結果表示処理を終了した車両用設計支援装置10は、新規チェック処理及び車両用設計支援処理(図3の処理)を終了する。
【0064】
車両用設計支援装置10は、要実行チェック処理が新規チェック処理であった場合(ステップS101;NO)には、修正チェック処理(ステップS102、S103、S110及びS111の処理)を開始する。
【0065】
修正チェック処理を開始した車両用設計支援装置10は、意匠面情報を指定されているものに置換した車両情報を評価対象車両情報として用意(作成)する処理(ステップS102)を行う。より具体的には、車両用設計支援装置10は、車両情報ファイル指定情報にて指定されている車両情報ファイル内の車両情報に、意匠面情報ファイル指定情報にて指定されている意匠面情報ファイル内の意匠面情報を組み込んだ車両情報を評価対象車両情報として用意する処理を行う。
【0066】
次いで、車両用設計支援装置10は、対応ホイールガード要件面情報を、自装置内の所定のフォルダ(図では、HDD)から読み出す処理(ステップS103)を行う。ここで、対応ホイールガード要件面情報とは、既に説明したステップS109の処理で、評価対象車両情報との対応関係が分かるファイル(車両情報ファイル指定情報と特定の関係を有
するファイル名を有するファイル)して車両用設計支援装置10内に生成されるホイールガード要件面情報ファイル内のホイールガード要件面情報のことである。
【0067】
そして、ステップS103の処理を終えた車両用設計支援装置10は、ステップS110以降の処理を開始する。
【0068】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る車両用設計支援装置10は、評価対象車両のタイヤ近傍の断面図を全く作成することなく、ホイールガード要件チェック(ステップS110の処理)を行う構成(図3参照)を有している。従って、この車両用設計支援装置10を用いておけば、評価対象車両についてのホイールガード要件チェックを、現状のチェック法や、当該チェック法を自動化したチェック法を用いた場合よりも短時間で行えることになる。
【0069】
また、車両用設計支援装置10は、ディスプレイ12の画面上に、車両形状図形とホイールガード要件面図形とを重ねて表示する機能も有している。換言すれば、車両用設計支援装置10は、ホイールガード要件を満たしている(図13)か否か(図12)を即座に判定でき、かつ、ホイールアーチ意匠面のどの部分に修正が必要なのかが正確に分かる画像を、ディスプレイ12の画面上に表示する装置となっている。従って、この車両用設計支援装置10は、ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分を特定するための作業を別途行う必要がない装置であることにもなる。
【0070】
また、車両用設計支援装置10は、新規チェック処理時に作成されたホイールガード要件面情報ファイルを利用して(ホイールガード要件面情報を作成することなく)、ホイールガード要件チェックを行う機能(修正チェック処理を実行する機能)も有している。従って、車両用設計支援装置10を用いておけば、ホイールアーチ意匠面の形状修正後のホイールガード要件チェックが極めて短時間で行えることにもなる。
【0071】
さらに、車両用設計支援装置10は、評価対象車両の製造に用いられる各部のサイズや取り付け位置のばらつきの程度を考慮した形で、ホイールガード要件チェックが行える装置となっている。従って、車両用設計支援装置10を用いておけば、設計上はホイールガード要件を満たしているが、実際にはホイールガード要件を満たしていない車両が製造されてしまうことを防止できることにもなる。
【0072】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態に係る車両用設計支援装置は、上記した車両用設計支援処理(図3)とは異なる内容の車両用設計支援処理を実行するように、第1実施形態に係る車両用設計支援装置10を変形したものである。このため、以下では、第1実施形態の車両用設計支援装置10の説明時に用いたものと同じ符号を用いて、上記した車両用設計支援処理と異なっている部分を中心に、第2実施形態に係る車両用設計支援装置10が実行する車両用設計支援処理の内容を説明することにする。
【0073】
本実施形態に係る車両用設計支援装置10が実行する車両用設計支援処理は、図14に示した手順の処理である。
【0074】
この車両用設計支援処理(以下、第2車両用設計支援処理とも表記する)中のステップS300〜S304、S309、S311の処理は、それぞれ、図3の車両用設計支援処理(以下、第1車両用設計支援処理とも表記する)中のステップS100〜S104、S109、S111の処理と同じ処理である。
【0075】
また、第2車両用設計支援処理中のステップS305〜S308の処理も、第1車両用
設計支援処理中のステップS105〜S108の処理と同様に、4つのホイールガード要件面を表すホイールガード要件面情報を作成するための処理となっている。
【0076】
ただし、ステップS305〜S308の処理により作成されるホイールガード要件面情報は、ステップS311の処理時に、ディスプレイ12の画面上に、図15や図16に示した画像が表示されることになる情報となっている。
【0077】
具体的には、第2車両用設計支援処理中のステップS305では、チェック対象部分(図4参照)毎に、それを、車軸中心を通る,傾斜角が互いに異なる複数の面で分割した場合における各分割面の最外側点の座標を求める処理が行われる。続くステップS306では、各チェック対象部分の最外側点毎に、その最外側点の,それを車軸中心を通る前後方向鉛直面上で、車軸を通る,車軸から離れる方向に所定距離移動させた場合における軌跡(以下、放射状線分と表記する)を表す放射状線分情報を作成する処理が行われる。
【0078】
また、ステップS307では、ステップS306の処理で作成された放射状線分情報群に基づき、チェック対象部分毎に、そのチェック対象部分に関する放射状線分を全て含む暫定ホイールガード要件面を表す情報を作成する処理が行われる。
【0079】
そして、ステップS308では、ステップS307の処理で作成された各情報と、ばらつき量指定情報とに基づき、チェック対象部分(暫定ホイールガード要件面)毎に、各部(面上の各点)の,暫定ホイールガード要件面からの距離がばらつき量指定情報と一致している、暫定ホイールガード要件面よりも外側に位置している面であるホイールガード要件面を表す要件面情報を作成する処理が行われる。
【0080】
ステップS310の処理も、ステップS110の処理と同様に、ホイールアーチ意匠面毎に意匠面形状チェック処理を実行する処理である。
【0081】
ただし、ステップS310の処理時に実行される意匠面形状チェック処理は、注目ホイールアーチ意匠面の各点が、注目ホイールガード要件面よりも外側にあるか否かが、車軸中心を通る各種方向にチェックされていくように、図10の意匠面形状チェック処理を改変したものとなっている。
【0082】
以上の説明から明らかなように、この第2実施形態に係る車両用設計支援装置10は、ホイールガード要件面が、評価対象車両のタイヤのチェック対象部分を当該タイヤの回転軸を中心に拡大した際に得られる軌跡面に相当するものとなるように、第1実施形態に係る車両用設計支援装置10を変形したものとなっている。
【0083】
従って、本実施形態に係る車両用設計支援装置10も、上記した第1実施形態に係る車両用設計支援装置10と同様の効果を奏するものであることになる。
【0084】
《変形形態》
上記した各実施形態に係る車両用設計支援装置10は、各種の変形を行うことが出来る。例えば、図12、図13、図15或いは図16に示したような画像がディスプレイ12の画面上に表示されれば、操作者は、各ホイールアーチ意匠面がホイールガード要件を満たしているか否かを即座に判断できる。従って、各実施形態に係る車両用設計支援装置10を、各ホイールアーチ意匠面がホイールガード要件を満たしているか否かを自動的に判定してその判定結果を出力する機能(ステップS110、S310の処理等を実行する機能)を有さない装置に変形しておくことが出来る。
【0085】
また、各実施形態に係る車両用設計支援装置10を、図12,図13、図15、図16
に示したような画像をディスプレイ12の画面上に表示する表示機能を有さないもの(各ホイールアーチ意匠面がホイールガード要件を満たしているか否かを自動的に判定してその判定結果を出力する機能のみを有するもの)に変形することも出来る。ただし、車両用設計支援装置10を、そのような装置に変形した場合、或るホイールアーチ意匠面がホイールガード要件を満たさないものであった場合に、当該ホイールアーチ意匠面の,修正が必要な部分を特定するための作業を別途行う必要が生ずることになる。このため、車両用設計支援装置10の変形時には、上記表示機能を残しておくことが望ましい。
【0086】
各実施形態に係る車両用設計支援装置10を、ばらつき量指定情報が使用されない処理によりホイールガード要件面情報を作成する装置(ステップS108,S308の処理を行わない装置、暫定ホイールガード要件面がホイールガード要件面として取り扱われる装置)に変形しておくことも出来る。ただし、車両用設計支援装置10を、そのような装置に変形した場合、設計上はホイールガード要件を満たしているにも拘わらず、ホイールガード要件を満たしていない車両が製造されてしまうことがあり得ることになる。従って、車両用設計支援装置10を変形する際には、評価対象車両の各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度を考慮して、ホイールガード要件面の形状、位置が決定されるようにしておくことが望ましい。
【0087】
また、各実施形態に係る車両用設計支援装置10を、評価対象車両の一方の側のホイ
ールアーチ意匠面に関するチェックしか行わない装置や、ホイールガード要件面情報ファイルを、可搬型の記録媒体や、他コンピュータ内のHDDに保存できる装置に変形しても良いことなどは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用設計支援装置の外観図である。
【図2】方向に関する用語の意味を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る車両用設計支援装置が実行可能な車両用設計支援処理の流れ図である。
【図4】チェック対象部分の説明図である。
【図5】最外側点の説明図である。
【図6】最外側線分(最外側線分情報)の説明図である。
【図7】軌跡面の説明図である。
【図8】暫定ホイールガード要件面の説明図である。
【図9】暫定ホイールガード要件面とホイールガード要件面との間の関係の説明図である。
【図10】第1実施形態に係る車両用設計支援装置が実行する意匠面形状チェック処理の流れ図である。
【図11】意匠面形状チェック処理の内容を説明するための図である。
【図12】第1実施形態に係る車両用設計支援装置が処理結果として表示する画像の一例を示した図である。
【図13】第1実施形態に係る車両用設計支援装置が処理結果として表示する画像の他の例を示した図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る車両用設計支援装置が実行可能な車両用設計支援処理の流れ図である。
【図15】第2実施形態に係る車両用設計支援装置が処理結果として表示する画像の一例を示した図である。
【図16】第2実施形態に係る車両用設計支援装置が処理結果として表示する画像の他の例を示した図である。
【図17】従来のホイールガード要件のチェック法の説明図である。
【図18】従来のホイールガード要件のチェック法の説明図である。
【符号の説明】
【0089】
10・・・車両用設計支援装置
11・・・コンピュータ本体
12・・・ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置であって、
情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、
評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を前記評価対象車両のグランドライン面上に投影した線分に相当する最外側線分を表す最外側線分情報を前記記憶手段上に作成する線分情報作成手段、及び、
前記車両情報と前記記憶手段上の前記最外側線分情報とに基づき、前記評価対象車両の前記ホイールアーチ意匠面が前記ホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定し、判定結果を出力する判定手段
を備えることを特徴とする車両用設計支援装置。
【請求項2】
評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置であって、
情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、
評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を上方向に平行移動した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を前記記憶手段上に作成する要件面情報作成手段、及び、
前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する表示制御手段
を備えることを特徴とする車両用設計支援装置。
【請求項3】
評価対象車両のホイールアーチ意匠面が所定のホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定するための車両用設計支援装置であって、
情報を一時的に記憶しておくための記憶手段、
評価対象車両が備えるホイールアーチ意匠面の形状とタイヤの形状とそれらの位置関係とを示す車両情報に基づき、前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分を当該タイヤの回転軸を中心に拡大した際に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を前記記憶手段上に作成する要件面情報作成手段、及び、
前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する表示制御手段
を備えることを特徴とする車両用設計支援装置。
【請求項4】
前記要件面情報作成手段が、
前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分から、前記評価対象車両の各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度に応じて決定された所定距離だけ外側に位置している仮想的な部分を、上方向に平行移動することによって得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を作成する手段である
ことを特徴とする請求項2記載の車両用設計支援装置。
【請求項5】
前記要件面情報作成手段が、
前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分から、前記評価対象車両の各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度に基づき決定されている所定距離だけ外側に位置している仮想的な部分を、当該タイヤの回転軸を中心に拡大した際
に得られる軌跡面に相当するホイールガード要件面を表す要件面情報を作成する手段である
ことを特徴とする請求項3記載の車両用設計支援装置。
【請求項6】
前記車両情報と前記記憶手段上の前記要件面情報とに基づき、前記評価対象車両の前記ホイールアーチ意匠面が前記ホイールガード要件を満たすものであるか否かを判定し、判定結果を出力する判定手段を、さらに、備える
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の車両用設計支援装置。
【請求項7】
前記要件面情報作成手段によって作成された要件面情報を不揮発性記憶手段に保存する保存手段をさらに備え、
前記表示制御手段が、
ホイールアーチ意匠面の形状が修正された前記車両情報と、前記不揮発性記憶手段に保存されている前記要件面情報とに基づき、表示装置の画面上に、前記評価対象車両の形状を示す図形と前記ホイールガード要件面を表す図形とを重ねて表示する機能を有する手段である
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の車両用設計支援装置。
【請求項8】
前記線分情報作成手段が、
前記評価対象車両のタイヤの外側の前記ホイールガード要件に応じた部分から、前記評価対象車両の製造に用いられる各部のサイズ及び取り付け位置のばらつきの程度に応じて決定された所定距離だけ外側に位置している仮想的な部分を、前記評価対象車両のグランドライン面上に投影した線分に相当する最外側線分を表す最外側線分情報を作成する手段である
ことを特徴とする請求項1記載の車両用設計支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−282741(P2009−282741A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133961(P2008−133961)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】