説明

車両用障害物検出装置

【課題】縁石などの道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止できる車両用障害物検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】車両の少なくとも左右何れか一方においてバンパ6裏面と車輪2との間に設けられて車両外方へ電波を送信することにより障害物を検出するレーダ装置4を備えた車両用障害物検出装置であって、
上記レーダ装置4からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波αにより生じる誤検知を防止する誤検知防止手段7を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパ裏面と車輪との間に設けられたレーダ装置からの電波を、バンパを透過して外方向に送信することで障害物を検出するような車両用障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダを用いた車両用障害物検出装置では、検出対象となるターゲット車両(他車両)とターゲット車両以外の識別が極めて重要となる。
上述の識別を誤った場合には、ターゲット車両以外の物体をターゲット車両であると見なすことになり、結果的に誤警報や誤制御の要因となる。
【0003】
自車両の後方から接近してくる他車両を障害物として検出する車両用障害物検出装置を例示すると、リヤバンパ前方のリヤエンドパネルにブラケットを介してレーダ装置を取付け、レーダ装置からの電波を、樹脂バンパを透過させて外方向に送信し、上記他車両を検出するように構成されている。
しかしながら、上記レーダ装置からの送信波の一部がリヤバンパ裏面で反射する等して、該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して縁石などの道路構造物へ到達した後、該道路構造物から帰来する反射波がレーダ装置の受信部に入力されると、本来ターゲット車両ではない道路構造物を、ターゲット車両であると誤検出する問題点があった。
【0004】
このような誤検出を防止するためには、レーダ装置の送受信部をバンパ裏面に密着することが考えられるが、この場合、軽度の後突等によりバンパに外部衝撃力が付加されると、直ちにレーダ装置が故障、破損するので実用上、望ましくない。
【0005】
ところで、特許文献1には、バンパ裏面による反射損を低減するために、受信ビームに基づいてバンパからの反射損が最小となるように、送信ビームの基準周波数foを制御するレーダ装置が開示されているが、この特許文献1には上述の如き誤検知については全く開示されておらず、その示唆もない。
【0006】
また、特許文献2には、電波レーダと該電波レーダ後方に位置するラジエータファンとの間に、電波レーダから放射されるサイドローブが車両のボディに反射してラジエータファンに到達することを防止する遮蔽板または電波吸収材を設け、レーダの後方にラジエータファンがあっても、サイドローブでこれを検知することによるノイズフロアの上昇を防止して、安定したターゲット検知性能を得るように構成した電波レーダの取付け構造が開示されている。
しかしながら、該特許文献2には、レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して道路構造物へ到達し、該道路構造物から帰来する反射波による誤検知を、如何に防止するかという本願発明の技術的課題の開示が全くないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−317162号公報
【特許文献2】特開2004−101450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、レーダ装置からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えることにより、道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止できる車両用障害物検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両用障害物検出装置は、車両の少なくとも左右何れか一方においてバンパ裏面と車輪との間に設けられて車両外方へ電波を送信することにより障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置であって、上記レーダ装置からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えたものである。
上述のレーダ装置の電波としては、マイクロ波やミリ波を使い、例えば、24GHzや76GHzの電波を用いてもよい。また、バンパとしては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いる。
【0010】
上記構成によれば、道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えたので、レーダ装置からの送信波の一部がバンパ裏面に反射する等して、車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を、上記誤検知防止手段にて防止することができ、よって、道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止できる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止手段は、上記道路構造物到達波の経路を塞ぐ誤検知防止構造であることを特徴とする。
上記構成によれば、誤検知防止手段を誤検知防止構造にて構成することができ、この誤検知防止構造で道路構造物到達波による影響を回避することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止構造は、上記経路を塞ぐように設けられた遮蔽板であることを特徴とする。
上記構成によれば、誤検知防止構造を簡単な遮蔽板で構成することができ、この遮蔽板により道路構造物到達波を遮蔽するので、道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止できる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止構造は、レーダ装置からの送信波がバンパ裏面に入射して反射する反射点およびその近傍に設けられたものである。
上記構成によれば、レーダ装置からの送信波がバンパ裏面に入射して反射する反射点およびその近傍に誤検知防止構造を設けたので、道路構造物到達波による影響を効率的に回避することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記遮蔽板は、レーダ装置からの送信波がバンパ裏面に入射して反射する反射点よりも他方側に設けられたものである。
上記構成によれば、反射点よりも他方側に設けられた遮蔽板にて、道路構造物到達波の影響を回避することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記レーダ装置をバンパに取付ける取付け部材を備えたものである。
上記構成によれば、レーダ装置は取付け部材を介してバンパに取付けられるので、レーダ装置のがたつきが抑制され、車両走行時に異音が発生するのを防止することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記取付け部材は、バンパ上面に該取付け部材を係止する係止部を備えたものである。
上記構成によれば、係止部により取付け部材を係止するので、取付け部材およびレーダ装置の安定した支持を確保することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止手段は、レーダ装置からの検出結果に基づいて検出対象を判定する判定手段と、該判定手段が道路構造物であることを判定した時、該道路構造物を検出対象から取除く除去手段とを備えたものである。
上記構成によれば、誤検知防止手段は上述の判定手段と上述の除去手段とを備えており、判定手段は、レーダ装置からの検出結果に基づいて検出対象を判定し、除去手段は、判定手段が道路構造物であることを判定した時、該道路構造物を検出対象から取除く。
このように、検出対象が道路構造物であると判定した時、不要な対象物を検出対象から除去するので、道路構造物がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記除去手段は、判定手段の判定結果に基づいて検出対象が道路構造物であると判定した時、非検出範囲を設定し、フィルタ処理により道路構造物を検出対象から除去するものである。
上記構成によれば、検出対象が道路構造物であると判定した時、除去手段は検出しない範囲としての非検出範囲を設定し、フィルタ処理により道路構造物を検出対象から除去する。
【0019】
このように、不要な対象物を、フィルタ処理により除去するので、道路構造物がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、車両の左右にレーダ装置を備え、左右の各レーダ装置が同一タイミングで検出対象を検出した時、上記判定手段は検出対象が道路構造物であると判定するものである。
上記構成によれば、検出対象が道路構造物であることを正確に検出することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、自車位置を検出する自車位置検出手段と、自車の走行レーンを検出する自車線情報検出手段とを備え、上記判定手段にて検出対象が道路構造物であると判定したエリアを、上記両検出手段に基づいて警戒エリアとして記憶手段に記憶し、上記両検出手段により次回走行時に自車が警戒エリアに入る前に予め除去手段を作動させるものである。
上述の自車位置検出手段としてはGPSセンサを用いてもよく、また、上述の自車線情報検出手段としては前方監視レーダや画像処理装置を用いてもよい。
【0022】
上記構成によれば、自車位置検出手段は自車位置を検出し、自車線情報検出手段は自車の走行レーンを検出し、記憶手段は判定手段にて検出対象が道路構造物であると判定したエリアを、上述の両検出手段(自車位置検出手段と自車線情報検出手段)に基づいて警戒エリアとして記憶し、上述の両検出手段により次回走行時に自車が警戒エリアに入る前に予め除去手段を作動する。
このように、自車が警戒エリアに入る前に予め除去手段を作動させるので、道路構造物が存在することによる誤検知の影響を事前段階から回避することができて、誤検知防止と本来のターゲット検知との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、レーダ装置からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えたので、道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の車両用障害物検出装置の障害物検出エリアを示す概略平面図
【図2】車両の右側後部を示す部分斜視図
【図3】車両の背面図
【図4】図3のX−X線矢視断面図
【図5】図4の要部拡大平面図
【図6】図5のY−Y線に沿う要部の断面図
【図7】収納ボックスの斜視図
【図8】車両用障害物検出装置の実施例2を示す平面図
【図9】車両用障害物検出装置の実施例3を示す平面図
【図10】車両用障害物検出装置の実施例4を示す平面図
【図11】(a)は乱反射構造部を示す断面図、(b)は乱反射構造部を示す断面図、(c)はフレネルレンズ構造部を示す断面図、(d)は凸レンズ構造部を示す断面図
【図12】車両用障害物検出装置の実施例6を示す平面図
【図13】車両用障害物検出装置の実施例7を示す制御回路ブロック図
【図14】車両の背面図
【図15】車両と道路構造物、走行レーンの一例を示す平面図
【図16】フローチャート
【図17】第1警戒エリアと第2警戒エリアの関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
道路構造物がターゲットであると誤検知するのを防止するという目的を、車両の少なくとも左右何れか一方においてバンパ裏面と車輪との間に設けられて車両外方へ電波を送信することにより障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置において、上記レーダ装置からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0026】
この発明の実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用障害物検出装置を示すが、以下の実施例においては、車両後方から自車両に接近してくる他車両(ターゲット)などの障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示する。
【0027】
図1は障害物検出エリアを示す概略平面図であって、前車輪1,1および後車輪2,2を備えた車両3のバンパ裏面と後車輪2との間には、レーダ装置4が設けられており、レーダ装置4から発射された電波は樹脂製のバンパを透過して車両外方向、詳しくは、後方かつ外側方に送信され、障害物に反射して帰来する電波を受信することで、障害物の有無を検出すべく構成している。
図1において上述のレーダ装置4の障害物検出エリアをEで示す。ここで、レーダ装置4の電波としては、波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波(SHF)を用いている。
【0028】
図2は車両の右側後部を示す部分斜視図、図3は車両の背面図、図4は図3のX−X線矢視断面図、図5は図4の要部拡大平面図、図6は図5のY−Y線に沿う要部の断面図、図7はレーダ装置4をリヤバンパに取付ける取付け部材としての収納ボックスを示す斜視図である。
【0029】
図4、図5に示すように車両後端部には、車幅方向に延び、かつ車幅方向端部が車両前方向へ屈曲形成されたリヤエンドパネル5が設けられている。
このリヤエンドパネル5の車両後方には、該リヤエンドパネル5を後方から離間して覆う合成樹脂製のリヤバンパ6が設けられている。
【0030】
この実施例1においては、レーダ装置4は図4、図5、図6、図7に示すように箱形状の収納ボックスAに収納された状態で、リヤバンパ6に取付け支持されている。
上述の収納ボックスAの構成を、図5、図6、図7を参照して説明する。
【0031】
図5に示すように、この収納ボックスAは、レーダ装置4の側部とリヤバンパ6裏面との間を塞ぎ道路構造物到達波α(以下単に到達波と略記する)をしゃ断する遮蔽板7,8を備えている。
ここに、到達波αとは、レーダ装置4からの送信波の一部が、リヤバンパ6裏面で反射する等して、レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6裏面との間を通過して縁石などの道路構造物B(図3参照)へ到達し、道路構造物Bから帰来する電波のことで、レーダ装置4がこの到達波αを受信すると、ターゲットでない道路構造物Bをターゲットであると誤検知するので、上述の遮蔽板7,8で、この到達波α(送信波および帰来波の少なくとも一方)をしゃ断して、誤検知を防止するものである。
【0032】
上述の遮蔽板7,8、特に遮蔽板7を設けると、図5に示すように、レーダ装置4から発射された送信波の一部は、図5に矢印aで示すように遮蔽板7に入射し、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように、送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向に指向(図5に示す実施例1では、車両の後方に指向)すると共に、実質的に到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0033】
上述の遮蔽板7,8は金属で形成してもよく、合成樹脂で形成してもよく、また、合成樹脂板の表面に金属テープを貼着したものを用いてもよく、さらに、合成樹脂の表面に金属の蒸着層または化学メッキにより金属層を形成したものを用いてもよく、あるいは電波吸収体(例えば、ゴム材料中にカーボンを混入したもの)を用いてもよいが、上述の実施例1では軽量化と製作性向上とを両立させるために、合成樹脂で形成されている。
【0034】
また、上述の収納ボックスAは、レーダ装置4の左右両側面を覆うカバー部材を兼ねる上述の遮蔽板7,8と、レーダ装置4の上下両上面を覆うカバー部材9,10と、レーダ装置4の裏面つまり車両前面側を覆うカバー部材11と、リヤバンパ6上面に収納ボックスAを係止する側面視逆L字状の係止部12と、上側のカバー部材9に形成されたメンテナンス用の開口部13と、を備えている。
【0035】
そして、これらの各要素7〜12が一体または一体的に形成され、図6に示すように、係止部12がボルト14等の取付け部材を用いて、リヤバンパ6の上面に取付け固定されている。
【0036】
図5に示すように、左右両側の遮蔽板7,8におけるバンパ側の端部は、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられ、図6に示すように、上下両側のカバー部材9,10のバンパ側の端部も、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられている。
詳しくは、上述の遮蔽板7,8およびカバー部材9,10の後端部が接着剤による接着にて、リヤバンパ6の裏面に密着固定されたものである。
【0037】
図5に示すように、左右両側の遮蔽板7,8は、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されており、同様に、図6に示すように、上下両側のカバー部材9,10も、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されていて、レーダ装置4の送受信部4aとリヤバンパ6裏面との間には、送受信波の送受信エリアを阻害しないように、末広がり状の空間部が形成されると共に、斯かる末広がり形状による各要素7,8,9の傾斜構造にて、これら各要素7,8,9に対する一部の送信波(いわゆる漏れ電波)の入射角を可及的小さくし、該送信波を誤検知されにくい方向に向けて送信するように構成している。ここで、送信波の入射角を僅少と成すと、該送信波は入射角と反射角とが等しくなるように略全反射されることになる。
【0038】
なお、図2、図3において、15はリヤコンビランプ、図1、図6においてmは送信電波のうちのメインローブ、Sは送信電波のうちのサイドローブを模式的に示すものであり、また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0039】
このように構成した車両用障害物検出装置の作用を、以下に説明する。
図1に示すレーダ装置4の障害物検出エリアE(図面では模式的に示しているが、実際は約50m未満で、かつ比較的広い範囲のエリア)にターゲットとしての他車両が侵入してくると、他車両に当って反射する反射波を、レーダ装置4の送受信部4a(特に、その受信部)が受信するので、当該他車両を検出することができる(通常の障害物検出)。
【0040】
図4〜図6に示す遮蔽板7,8が存在しない場合には、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、リヤバンパ6裏面で反射する等して、レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6裏面との間を通過して図5に点線で示すように道路構造物B(図3参照)へ到達し、該道路構造物Bから同じ経路を通って帰来する面到達波αにより、レーダ装置4は本来ターゲットでない道路構造物Bをターゲット(他車両)であると誤検知する。
【0041】
この実施例は、このような誤検知を防止するものである。
すなわち、レーダ装置4とリヤバンパ6裏面との間を塞ぎ、路面到達波αをしゃ断する誤検知防止構造としての遮蔽板7,8を設けたものであって、このように遮蔽板7,8を設けると、図5に示すように、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図5に矢印aで示すように遮蔽板7に入射するが、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向(図示実施例では、道路構造物Bから遠ざかる車両後方)に指向し、また、実質的に到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0042】
このように、図1〜図7で示した実施例1の車両用障害物検出装置は、車両の少なくとも左右何れか一方においてリヤバンパ6裏面と後車輪2との間に設けられて車両外方へ電波を送信することにより障害物を検出するレーダ装置4を備えた車両用障害物検出装置であって、上記レーダ装置4からの送信波の一部が車両外側の縁石などの道路構造物B(図3参照)に到達し、該道路構造物Bから帰来する到達波αにより生じる誤検知を防止する誤検知防止手段(遮蔽板7,8参照)を備えたものである(図3、図5参照)。
上述のレーダ装置4の電波としては、マイクロ波やミリ波を使い、例えば、24GHzや76GHzの電波を用いている。また、リヤバンパ6としては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いている。
この構成によれば、到達波αにより生じる誤検知を防止する誤検知防止手段(遮蔽板7,8)を備えたので、レーダ装置4からの送信波の一部がリヤバンパ6裏面に反射する等して、車両外側の道路構造物Bに到達し、該道路構造物Bから帰来する到達波αにより生じる誤検知を、上記誤検知防止手段(遮蔽板7,8、特に、遮蔽板7参照)にて防止することができ、よって、道路構造物Bがターゲットであると誤検知するのを防止できる。
【0043】
また、上記誤検知防止手段は、上記到達波αの経路を塞ぐ誤検知防止構造(遮蔽板7,8参照)であることを特徴とする(図5参照)。
この構成によれば、誤検知防止手段を誤検知防止構造(遮蔽板7,8参照)にて構成することができ、この誤検知防止構造で到達波αによる影響を回避することができる。
【0044】
さらに、上記誤検知防止構造は、上記経路を塞ぐように設けられた遮蔽板7,8であることを特徴とする(図5参照)。
この構成によれば、誤検知防止構造を簡単な遮蔽板7,8で構成することができ、この遮蔽板7,8により到達波αを遮蔽するので、道路構造物Bがターゲットであると誤検知するのを防止できる。
【0045】
さらにまた、上記レーダ装置4をリヤバンパ6に取付ける取付け部材(収納ボックスA参照)を備えたものである(図6参照)。
この構成によれば、レーダ装置4は取付け部材(収納ボックスA)を介してリヤバンパ6に取付けられるので、レーダ装置4のがたつきが抑制され、車両走行時に異音が発生するのを防止することができる。
【0046】
加えて、上記取付け部材は、リヤバンパ6上面に該取付け部材(収納ボックスA)を係止する係止部12を備えたものである(図6参照)。
この構成によれば、係止部12により取付け部材(収納ボックスA参照)を係止するので、取付け部材(収納ボックスA)およびレーダ装置4の安定した支持を確保することができる。
【実施例2】
【0047】
図8は車両用障害物検出装置の実施例2を示す平面図である。
この実施例2では、レーダ装置4の左右両側面を覆う遮蔽板7,8を、レーダ装置4ガ和に位置する樹脂平板7A,8Aと、リヤバンパ6側に位置する電波吸収部材7B,8Bとで構成している。
【0048】
上述の電波吸収部材7B,8Bは、ゴム材料中にカーボンを混入したものを平面視波形状に形成しており、電波吸収部材7B,8Bの後端は、リヤバンパ6の裏面に接着剤を用いて固定されている。
なお、電波吸収部材7B,8Bとしては、ゴム材料中にカーボンを混入したものに代えて、導電性ゴムやウレタン構造物を用いてもよい。
【0049】
レーダ装置4の左右両側部とリヤバンパ6の裏面との間の車両前後方向の長さのうちの前半部を樹脂平板7A,8Aで塞ぎ、後半部を電波吸収部材7B,8Bで塞いでいる。つまり、レーダ装置4の左右両側部とリヤバンパ6の裏面との間を遮蔽板7,8で、隙間が生じないように完全に塞いだものである。
【0050】
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図8に矢印で示すように、電波吸収部材7Bに入射すると、入射した送信波は吸収または減衰されるので、同図に点線で示す到達波αの影響を実質的になくすことができる。つまり、到達波αに起因するレーダ装置4の誤検知を防止することができる。
【0051】
また、電波吸収部材7B,8Bが可撓性を有するので、リヤバンパ6に対する組付け性の向上を図ることができると共に、組付け後の車両走行時において異音が発生するのを防止することができる。
要するに、電波の遮断性、組付け性、異音発生防止の全てを満足することができるものである。
【0052】
図8で示す実施例2においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0053】
図9は車両用障害物検出装置の実施例3を示す平面図である。
この実施例3では、リヤエンドパネル5の所定部後面に平面視ハット断面形状のブラケット16を取付け、このブラケット16の後面に上述のレーダ装置4を配置している。
【0054】
また、この実施例3では、遮蔽板7,8を前部遮蔽板7C,8Cと、後部遮蔽板7D,8Dとにそれぞれ2分割し、前部遮蔽板7C,8Cを合成樹脂平板で形成して、レーダ装置4の左右両側部からリヤバンパ6裏面方向に向けて後方に延ばし、後部遮蔽板7D,8Dを合成樹脂平板で形成し、後部遮蔽板7Dは、前部遮蔽板7Cよりも車幅方向内側において、リヤバンパ6の裏面からレーダ装置4の左側側方に向けて車両前方へ延ばし、後部遮蔽板8Dは前部遮蔽板8Cよりも車幅方向外側において、リヤバンパ6の裏面からレーダ装置4の右側側方に向けて車両前方へ延ばしたものである。つまり、遮蔽板7C,7D、8C,8Dをレーダ装置4の側部とリヤバンパ6裏面との双方から後方、前方に向けて延出したものである。
【0055】
そして、車両側面の左右から見て、レーダ装置4とリヤバンパ6裏面との間を、前後一対の遮蔽板7C,7D、8C,8Dにて完全に塞ぐように形成している。
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図9に矢印aで示すように、遮蔽板7Cまたは7Dに入射すると、この入射波は遮蔽板7Cまたは7Dで再反射(但し、図面では7Dで再反射した状態を示す)し、誤検知に影響がない方向に指向するので、同図に点線で示す到達波αの影響を実質的になくすことができる。
【0056】
また、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、前部遮蔽板7C,8Cの後端部から車幅方向の左右に向けて回折しても、この回折波を後部遮蔽板7D,8Dで、誤検知に影響がない方向に変向させることができる。
よって、到達波αに起因するレーダ装置4の誤検知を防止することができる。
【0057】
さらに、上述の遮蔽板7,8を前部遮蔽板7C,8Cと後部遮蔽板7D,8Dとに分割したので、レーダ装置4および各遮蔽板7C,7D、8C,8Dの組付け性向上を図ることができると共に、異音発生防止効果をも確保することができる。
しかも、前部遮蔽板7C,8Cの後部と、後部遮蔽板7D,8Dの前部とは、側面から見てオーバラップさせるように構成しており、このオーバラップ構造の採用により各遮蔽板7C,7D間または各遮蔽板8C,8D間の間隔を通って車幅方向の左右へ回り込むような回折波が仮に発生しても、その電波を弱めることができるので、誤検知に影響を与えるものではない。
【0058】
図9で示した実施例3においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図9において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図9の実施例3においては、後部遮蔽板7D,8Dはリヤバンパ6と別体で構成してもよく、または、リヤバンパ6と一体形成してもよい。
【実施例4】
【0059】
図10は車両用障害物検出装置の実施例4を示す平面図である。
この実施例4では、樹脂平板から成る遮蔽板7,8を設け、この遮蔽板7,8をリヤバンパ6の裏面からレーダ装置4の左右両側方に向けて延出し、該遮蔽板7,8で誤検知防止構造を構成したものである。
【0060】
しかも、図10に示すように、上述の遮蔽板7,8の車両前方側の延出端部は、レーダ装置4の送受信部4aを含んで該レーダ装置4の側部とオーバラップする位置まで前方へ延出されている。
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図10に矢印aで示すように遮蔽板7に入射しても、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向に指向し、また、実質的に到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0061】
図10で示した実施例4においては、上記誤検知防止構造は、リヤバンパ6裏面からレーダ装置4の左右両側下方に向かって延出する遮蔽板7,8である。
このように構成すると、リヤバンパ6裏面からレーダ装置4の側方に向けて延出する遮蔽板7,8により、到達波αをしゃ断して、誤検知防止を図ることができる。
【0062】
また、上記遮蔽板7,8の延出端部がレーダ装置4の少なくとも送受信部4aとオーバラップする位置まで車両前方側に延出されたものであって、このようにリヤバンパ6裏面からレーダ装置4の側方に向けて延びる遮蔽板7,8の延出端部を、レーダ装置4の送受信部4aとオーバラップさせたので、到達波αを確実にしゃ断して、誤検知防止性能のさらなる向上を図ることができる。
【0063】
図10で示した実施例4においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図10において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例5】
【0064】
図11は車両用障害物検出装置の実施例5を示す説明図である。
図11の(a)(b)(c)(d)の何れも、レーダ装置4の到達波αの経路上に設けられた誤検知防止構造を示すものであり、この実施例5では、レーダ装置4の到達波αがリヤバンパ6裏面で反射する反射点RP(図4、図5、図8、図9、図10参照)およびその近傍に、上記誤検知防止構造を設けたものである。
【0065】
図11の(a)に示す構造は、反射点RPおよびその近傍を、断面三角形状の凹凸部にて形成した乱反射構造部6Aに構成し、入射波を乱反射させて、そのエネルギを分散させ、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0066】
図11の(b)に示す構造は、反射点RPおよびその近傍を、断面半円形状の凹凸部にて形成した乱反射構造部6Bに構成し、入射波を乱反射させて、そのエネルギを分散させ、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0067】
図11の(c)に示す構造は、反射点RPおよびその近傍を、フレネルレンズ構造部6Cに構成し、入射波に対する反射波の角度を変更し、誤検知に影響を与えないように反射波の変向方向をコントロールすべく構成したものである。
【0068】
図11の(d)に示す構造は、反射点RPを特定し、この特定された反射点RPを凸レンズ構造部(いわゆるカマボコ形状部)6Dに構成し、反射波を拡散させて、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0069】
このように、図11で示した実施例5においては、上記誤検知防止構造は、上記レーダ装置4の到達波αの経路上に設けられたものである(乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6D参照)。
この構成によれば、誤検知防止構造として上記各構造部6A,6B,6C,6Dを採用し、これら各構造部の何れか1つをレーダ装置4の到達波αの経路上に設けたので、道路構造物Bをターゲットであると誤検知することを防止することができる。
【0070】
また、上記誤検知防止構造(乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6D参照)は、上記レーダ装置4からの送信波の一部がリヤバンパ6裏面で反射する反射点RPおよびその近傍に設けられたものである。
この構成によれば、反射点RPおよびその近傍において到達波αによる影響を効率的に回避することができる。
【0071】
なお、上記誤検知防止構造は、図11の(a)〜(d)で示した各構造部6A,6B,6C,6Dに代えて、ゴム部材にカーボン等を混入した電波吸収体で構成してもよく、また、リヤバンパ6裏面の反射点RPのみならず、遮蔽板7,8の必要箇所に図11の(a)〜(d)で示した構造部6A,6B,6C,6Dや電波吸収体の構成を採用してもよい。
【実施例6】
【0072】
図12は車両用障害物検出装置の実施例6を示す平面図である。
この実施例6では、リヤエンドパネル5の所定部後面に平面視ハット断面形状のブラケット16を取付け、このブラケット16の後面に上述のレーダ装置4を配置している。
【0073】
この実施例6において遮蔽板7は、レーダ装置4からの送信波の一部がリヤバンパ6の裏面に入射して反射する接着剤を用いて接着固定し、この接着部位から車両前方かつ車幅方向内方に向けて延出させている。
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図12に矢印aで示すように反射点RPに入射し、該反射点RPで反射した反射波cが遮蔽板7に入射するが、この遮蔽板7に入射した反射波cは、入射角と反射角とが等しくなるように再反射(矢印d参照)し、この再反射波dは道路構造物B(図3参照)の誤検知に影響を与えない方向に指向し、また、実質的に到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0074】
このように、図12で示した実施例6においては、上記遮蔽板7は、レーダ装置4からの送信波がリヤバンパ6裏面に入射して反射する反射点RPよりも他方側に設けられたものである(図12参照)。
この構成によれば、反射点RPよりも他方側に設けられた遮蔽板7にて、到達波αの影響を回避することができ、道路構造物B(図3参照)をターゲットであると誤検知することを防止できる。
【0075】
図12で示したこの実施例6においても、その他の構成、作用、効果について先の実施例とほぼ同様であるから、図12において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図12の反射点RPおよびその近傍、または遮蔽板7に図11の(a)、(b)、(c)、(d)で示した構造部6A,6B,6C,6Dや電波吸収体の構成を採用してもよい。
【実施例7】
【0076】
図13〜図17は車両用障害物検出装置の実施例7を示し、図13は制御回路ブロック図、図14は車両の背面図、図15は車両と道路構造物、走行レーンの一例を示す平面図、図16はフローチャート、図17は第1警戒エリアと第2警戒エリアの関係を示す説明図である。
先の実施例1〜6においては到達波αによる誤検知の影響をハード構造にて回避すべく構成したが、この実施例7では、道路構造物の判定時に該道路構造物を検出対象から除去することで、到達波αによる誤検知の影響を回避するものである。
【0077】
図13は車両用障害物検出装置の制御回路ブロック図を示し、制御手段としてのcpu20は、車速センサ21,GPSセンサ22、前方監視レーダ23、左右の各レーダ装置4,4からの入力に基づいて、ROM24に格納されたプログラムに従って、レーダ装置4,4を駆動し、またRAM25は後述するフィルタON時の非検出範囲いわゆるカットエリアC(図15参照)に相当するデータ、図17に示す第1警戒エリアに相当するデータ、図17に示す第2警戒エリアに相当するデータなどの必要なデータやマップを記憶する。
上述の車速センサ21は自車両の車速つまり自車速を検出するセンサである。また、上述のGPSセンサ22は自車両の現在位置つまり自車位置情報を確保するためのセンサである。さらに、上述の前方監視レーダ23は、レーダを車両3前方に発射して自車前方を監視するレーダであって、この実施例では自車の走行レーン情報を確保するために用いている。
【0078】
また、上述のレーダ装置4,4は、図14に示すように車両の左右にそれぞれ設けられている。これらの各レーダ装置4,4はリヤバンパ6の裏面と後車輪2,2との間にそれぞれ設けられており、車両外方へ電波(波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波)を送信することにより障害物を検出する。
さらに、上述のcpu20は、左右の各レーダ装置4,4からの検出結果に基づいて検出対象(他車両や道路構造物)を判定する判定手段(図16に示すフローチャートのルーチンR1参照)と、この判定手段(ルーチンR1参照)が道路構造物Bであることを判定した時、該道路構造物Bを検出対象から取除く除去手段(図16に示すフローチャートのステップS9,S14参照)と、を兼ねる。
【0079】
この除去手段(ステップS9,S14)は、判定手段(ルーチンR1参照)の判定結果に基づいて検出対象が道路構造物Bであると判定した時、非検出範囲としてのカットエリアC(図15参照)を設定し、フィルタ処理により道路構造物Bを検出対象から除去するものである。
また、上述の判定手段(ルーチンR1)は、左右の各レーダ装置4,4(図14参照)が同一タイミングで検出対象を検出した時、この検出対象が道路構造物Bであると判定する。
【0080】
さらに詳しくは、この実施例7においては、自車位置を検出する自車位置検出手段としてのGPSセンサ22と、自車の走行レーンを検出する自車線情報検出手段としての前方監視レーダ23とを備え、上述の判定手段(ルーチンR1)にて検出対象が道路構造物であると判定したエリアを、GPSセンサ22、前方監視レーダ23に基づいて警戒エリア(ステップS10参照)として記憶手段であるRAM25に記憶し、GPSセンサ22、前方監視レーダ23により次回走行時に自車が警戒エリアに入る前(ステップS11参照)に予め除去手段(ステップS14参照)を作動させるように構成している。
このように構成した車両用障害物検出装置の作用を、図16に示すフローチャートを参照して、以下に詳述する。
【0081】
ステップS1で、cpu20はレーダ装置4,4を駆動して、送信波を車両外方へ送信すると共に、該レーダ装置4,4の受信部から検出対象との距離、検出対象の角度、検出対象の相対速度、検出対象から帰来する受信波の強度(反射波強度)の各種データの読込みを実行する。
上述の距離と角度との両者により、検出対象が存在するエリアを特定することができる。
【0082】
次のステップS2で、cpu20は車速センサ21から自車速vを読込む。
次にステップS3で、cpu20はGPSセンサ22から自車位置の情報(GPS情報)を取込む。
次にステップS4で、cpu20は前方監視レーダ23から自車が走行している走行車線や追い越し車線などの走行レーンの情報を取込む。
【0083】
次にステップS5で、cpu20はステップS1で読込んだ距離データと角度データとに基づいて所定エリア内からの反射波を受信しているか否かを判定する。自車と道路構造物B(例えば、縁石)との関係はその離間距離が2〜3mであり予め特定することができるので、RAM25に所定エリアのデータを記憶させておき、このデータと比較することで、道路構造物Bが存在するエリアであるか否かを判定することができる。
そして、ステップS5でのNO判定時にはステップS12に移行する一方、YES判定時には次のステップS6に移行する。
このステップS6で、cpu20はステップS1で読込んだ反射強度が所定以上か否かを判定する。
【0084】
一般に道路構造物Bからの反射波の反射強度は他車両からの反射波の反射強度よりも強いので、所定以上の反射強度か否かを判定することで、道路構造物Bか否かを判定するものである。
また、このステップS6では、左右の各レーダ装置4,4が同一タイミングで検出対象を検出したか否かを同時に判定している。
【0085】
そして、ステップS6でのNO判定時にはステップS12に移行する一方、YES判定時には次のステップS7に移行する。
このステップS7で、cpu20は検出対象からの反射波が所定の頻度以上で連続しているか否かを判定し、NO判定時にはステップS12に移行する一方、YES判定時には次のステップS8に移行する。
【0086】
このステップS8で、cpu20はステップS1で読込んだ相対速度データに基づいて、この相対速度が略零か否かを判定する。反射波が縁石などの道路構造物Bから帰来する時は、フローチャートの処理上において、自車両との相対速度を略零であると見なすことができる。
そして、このステップS8でNO判定されるとステップS12に移行する一方、YES判定されると次のステップS9に移行する。つまり上記各ステップS5,S6,S7,S8で全てYES判定(AND論理によるYES判定)された場合にのみ、検出対象が縁石などの道路構造物Bであると見なして、ステップS9に移行する。
【0087】
上述のステップS9で、cpu20は非検出範囲としてのカットエリアC(図15参照)を設定し、フィルタ処理により道路構造物Bを検出対象から除去する。なお、このカットエリアCの大きさは、反射強度の大小に対応して可変するように構成してもよい。
【0088】
次にステップS10で、cpu20は第1警戒エリア(図17参照)を設定し、設定された第1警戒エリアのデータはRAM25に記憶される。つまり、このステップS10では、GPS情報、走行レーン情報、および反射波の強度に対応して警戒すべきエリア(道路構造物Bが存在するエリア)を設定および記憶するものである。なお、この第1警戒エリアは複数箇所設定してもよい。
【0089】
次にステップS11で、cpu20は第2警戒エリア(図17参照)を設定し、設定された第2警戒エリアのデータをRAM25に記憶して次回の走行に備える。
【0090】
この第2警戒エリアは、第1警戒エリアより100〜500m手前の場所から第1警戒エリア終点までに設定することができ、第1警戒エリア同様、複数箇所設定してもよい。
【0091】
次回走行時には、自車両は第1警戒エリアに進入する以前に第2警戒エリアに進入するので、ステップS12で、cpu20は自車両が第2警戒エリア内に進入したか否かを判定し、NO判定時にはステップS13に移行する一方、YES判定時には別のステップS14に移行する。
【0092】
ステップS13では、自車両が第2警戒エリア内に進入していないこと、またはフローチャートの繰返しにより自車両が第2警戒エリアを抜け出たことに対応して、cpu20はフィルタをOFFにする。つまり、カットエリアCを解除する。
【0093】
一方、自車両が第2警戒エリア内に進入したと判定されたステップS14では、cpu20はフィルタをONにする。つまり、自車両が第1警戒エリアに進入する以前から非検出範囲としてのカットエリアC(図15参照)を設定し、フィルタ処理により道路構造物Bを検出対象から除去する。なお。このカットエリアCの大きさは前回記憶値を用いる。
【0094】
次にステップS15で、cpu20は自車両が第1警戒エリア内に進入し、かつ所定時間が経過したか否かを判定し、NO判定時にはリターンする一方、YES判定時には次のステップS16に移行する。ステップS15のNO判定により、フィルタONが継続され、計測タイミングのズレ、計測遅れへの対応を図ることができる。
このステップS16で、cpu20はフィルタOFFにし、次のステップS17で、cpu20は第1、および第2の各警戒エリアを解除する。
【0095】
このように、図13〜17で示した実施例7においては、上記誤検知防止手段は、レーダ装置4からの検出結果に基づいて検出対象を判定する判定手段(ルーチンR1参照)と、該判定手段(ルーチンR1)が道路構造物Bであることを判定した時、該道路構造物Bを検出対象から取除く除去手段(ステップS9,S14参照)とを備えたものである(図16参照)。
この構成によれば、誤検知防止手段は上述の判定手段(ルーチンR1参照)と上述の除去手段(ステップS9,S14参照)とを備えており、判定手段(ルーチンR1)は、レーダ装置4からの検出結果に基づいて検出対象を判定し、除去手段(ステップS9,S14)は、判定手段(ルーチンR1)が道路構造物Bであることを判定した時、該道路構造物を検出対象から取除く。
【0096】
このように、検出対象が道路構造物Bであると判定した時、不要な対象物を検出対象から除去するので、道路構造物Bがターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0097】
また、上記除去手段(ステップS9,S14)は、判定手段(ルーチンR1)の判定結果に基づいて検出対象が道路構造物Bであると判定した時、非検出範囲(カットエリアC参照)を設定し、フィルタ処理により道路構造物Bを検出対象から除去するものである(図16参照)。
この構成によれば、検出対象が道路構造物Bであると判定した時、除去手段(ステップS9,S14)は検出しない範囲としての非検出範囲(カットエリアC)を設定し、フィルタ処理により道路構造物Bを検出対象から除去する。
このように、不要な対象物を、フィルタ処理により除去するので、道路構造物Bがターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0098】
さらに、車両3の左右にレーダ装置4,4を備え、左右の各レーダ装置4,4が同一タイミングで検出対象を検出した時、上記判定手段(ルーチンR1)は検出対象が道路構造物Bであると判定するものである(図16参照)。
この構成によれば、検出対象が道路構造物Bであることを正確に検出することができる。
【0099】
加えて、自車位置を検出する自車位置検出手段(GPSセンサ22参照)と、自車の走行レーンを検出する自車線情報検出手段(前方監視レーダ23参照)とを備え、上記判定手段(ルーチンR1)にて検出対象が道路構造物Bであると判定したエリアを、上記両検出手段(GPSセンサ22、前方監視レーダ23参照)に基づいて警戒エリアとして記憶手段(RAM25参照)に記憶し、上記両検出手段(各要素22,23参照)により次回走行時に自車が警戒エリア(第1警戒エリア参照)に入る前に予め除去手段(ステップS14参照)を作動させるものである(図13、図16参照)。
この実施例では、上述の自車位置検出手段としてはGPSセンサ22を用い、また、上述の自車線情報検出手段としては前方監視レーダ23を用いたが、前方監視レーダ23に代えて画像処理装置を用いてもよい。
【0100】
この構成によれば、自車位置検出手段(GPSセンサ22参照)は自車位置を検出し、自車線情報検出手段(前方監視レーダ23参照)は自車の走行レーンを検出し、記憶手段(RAM25参照)は判定手段(ルーチンR1)にて検出対象が道路構造物Bであると判定したエリアを、上述の両検出手段(自車位置検出手段と自車線情報検出手段)に基づいて警戒エリアとして記憶し、上述の両検出手段(GPSセンサ22、前方監視レーダ23参照)により次回走行時に自車が警戒エリア(第1警戒エリア)に入る前に予め除去手段(ステップS14参照)を作動する。
【0101】
このように、自車が警戒エリアに入る前に予め除去手段(ステップS14)を作動させるので、道路構造物Bが存在することによる誤検知の影響を事前段階から回避することができて、誤検知防止と本来のターゲット検知との両立を図ることができる。
【0102】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車輪は、実施例の後車輪2に対応し、
以下同様に、
バンパは、リヤバンパ6に対応し、
誤検知防止構造は、遮蔽板7,8、乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6Dに対応し、
取付け部材は、収納ボックスAに対応し
自車位置検出手段は、GPSセンサ22に対応し、
記憶手段は、RAM25に対応し、
判定手段は、ルーチンR1に対応し、
除去手段は、ステップS9,S14に対応し、
道路構造物到達波は、到達波αに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては車両後方の障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示したが、車両前方の障害物を検出する車両用障害物検出装置に適用してもよい。
【0103】
また、レーダ装置4の電波としては24GHzのマイクロ波(SHF)を用いたが、波長が1cm〜1mmで、周波数が30GHzから300GHzのミリ波(EHF)を用いてもよい。
さらに、遮蔽板7,8に図11の構造を採用してもよく、これら各遮蔽板7,8として電波吸収体、樹脂に金属板を貼着したもの、樹脂に金属を蒸着したもの、樹脂表面に化学メッキで金属メッキ層を形成したものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0104】
2…後車輪(車輪)
3…車両
4…レーダ装置
6…リヤバンパ(バンパ)
6A,6B…乱反射構造部(誤検知防止構造)
6C…フレネルレンズ構造部(誤検知防止構造)
6D…凸レンズ構造部(誤検知防止構造)
7,8…遮蔽板(誤検知防止構造)
12…係止部
22…GPSセンサ(自車位置検出手段)
23…前方監視センサ(自車線情報検出手段)
25…RAM(記憶手段)
A…収納ボックス(取付け部材)
R1…ルーチン(判定手段)
S9,S14…ステップ(除去手段)
RP…反射点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも左右何れか一方においてバンパ裏面と車輪との間に設けられて車両外方へ電波を送信することにより障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置であって、
上記レーダ装置からの送信波の一部が車両外側の道路構造物に到達し、該道路構造物から帰来する道路構造物到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止手段を備えた
車両用障害物検出装置。
【請求項2】
上記誤検知防止手段は、上記道路構造物到達波の経路を塞ぐ誤検知防止構造である
請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項3】
上記誤検知防止構造は、上記経路を塞ぐように設けられた遮蔽板である
請求項2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項4】
上記誤検知防止構造は、レーダ装置からの送信波がバンパ裏面に入射して反射する反射点およびその近傍に設けられた
請求項2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項5】
上記遮蔽板は、レーダ装置からの送信波がバンパ裏面に入射して反射する反射点よりも他方側に設けられた
請求項3または4記載の車両用障害物検出装置。
【請求項6】
上記レーダ装置をバンパに取付ける取付け部材を備えた
請求項2〜5の何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項7】
上記取付け部材は、バンパ上面に該取付け部材を係止する係止部を備えた
請求項6記載の車両用障害物検出装置。
【請求項8】
上記誤検知防止手段は、レーダ装置からの検出結果に基づいて検出対象を判定する判定手段と、
該判定手段が道路構造物であることを判定した時、該道路構造物を検出対象から取除く除去手段とを備えた
請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項9】
上記除去手段は、判定手段の判定結果に基づいて検出対象が道路構造物であると判定した時、非検出範囲を設定し、フィルタ処理により道路構造物を検出対象から除去する
請求項8記載の車両用障害物検出装置。
【請求項10】
車両の左右にレーダ装置を備え、左右の各レーダ装置が同一タイミングで検出対象を検出した時、
上記判定手段は検出対象が道路構造物であると判定する
請求項9記載の車両用障害物検出装置。
【請求項11】
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
自車の走行レーンを検出する自車線情報検出手段とを備え、
上記判定手段にて検出対象が道路構造物であると判定したエリアを、上記両検出手段に基づいて警戒エリアとして記憶手段に記憶し、
上記両検出手段により次回走行時に自車が警戒エリアに入る前に予め除去手段を作動させる
請求項9または10記載の車両用障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−225733(P2012−225733A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92792(P2011−92792)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】