説明

車両用電子制御装置

【課題】車両用電子制御装置において、車両がIG(イグニッション)オフ状態になってからの不揮発性メモリへのデータ書き込み回数を低減する。
【解決手段】車両がIGオフ状態になったこと(S110:YES)を条件に、バックアップ対象のデータを書き換え可能な不揮発性メモリに書き込む書込処理(S150)を行い、その書込処理が終了した後、自身への電源電圧の供給が停止されるようにするための電源遮断処理(S160)を行う電子制御装置では、車両がIGオフ状態になったことを検出すると(S110:YES)、運転者がシートベルトを装着しているか否かを示すシートベルト信号に基づいて、運転者が降車の意志を有しているか否かを判定する(S140)。そして、シートベルト信号が「非装着」を示す状態となり、運転者が降車の意志を有していると判定したなら(S140:YES)、書込処理(S150)を実施するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両がイグニッションオフ状態になると、バックアップ対象のデータを不揮発性メモリに書き込み、その後、自身への電源供給が停止されるようにする処理を行う車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のエンジンを制御する電子制御装置として、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性メモリを備えると共に、車両のイグニッションスイッチがオンされるとバッテリから電源電圧が供給されて動作し、イグニッションスイッチがオフされたことを検出すると、学習データや故障診断情報などのバックアップ対象データ(即ち、保存が必要なデータ)を上記不揮発性メモリに書き込み、その書き込みの処理を終了した後、当該装置への電源電圧の供給が停止されるようにするための電源遮断処理を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−140373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の運転者の中には、燃費向上や環境保護のために、信号待ちなどの短時間の停車中においてもイグニッションオフ用操作を行ってエンジンを停止させる人(即ち、手動によるアイドリングストップ操作を行う人)が増えている。
【0005】
しかし、そのような操作が行われると、従来の電子制御装置では、不揮発性メモリにデータを書き込む回数(実際には、データの消去及び再書き込みによる書き換えの回数)が増加してしまい、その不揮発性メモリについての書き込み保証回数を超えてしまう可能性が生じる。
【0006】
尚、イグニッションオフ用操作とは、運転者が車両をイグニッションオフ状態にするために行う操作であり、例えば、イグニッションキーシリンダに挿入されている車両のキーを捻ってイグニッションスイッチをオフする操作や、エンジン始動/停止用プッシュスイッチのボタンを一定時間押し続ける操作などである。また、イグニッションオフ状態とは、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給されない状態であり、逆に、イグニッションオン状態とは、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態であって、車両の全ての電装品が動作可能になる状態のことである。
【0007】
そこで、本発明は、車両用電子制御装置において、車両がイグニッションオフ状態になってからの不揮発性メモリへのデータ書き込み回数を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の車両用電子制御装置は、車両の運転者のイグニッションオン用操作によって車両がイグニッションオン状態になると、車両のバッテリから動作用の電源電圧が供給されて動作する。尚、イグニッションオン用操作とは、運転者が車両をイグニッションオン状態にするために行う操作であり、例えば、イグニッションキーシリンダに挿入されている車両のキーを捻ってイグニッションスイッチをオンする操作や、エンジン始動/停止用プッシュスイッチのボタンを押す操作などである。
【0009】
また、この車両用電子制御装置は、データの書き換えが可能な不揮発性メモリと、運転者のイグニッションオフ用操作によって車両がイグニッションオフ状態になったことを検出する状態検出手段と、車両がイグニッションオフ状態になったことが状態検出手段により検出されたことを条件に、不揮発性メモリにバックアップ対象のデータを書き込む書込処理を行う書込手段と、を備えている。そして、この車両用電子制御装置は、書込手段による書込処理が終了した後、当該装置への電源電圧の供給が停止されるようにするための電源遮断処理を行う。
【0010】
ここで特に、請求項1の車両用電子制御装置は、運転者が降車(車両から降りること)の意志を有しているか否かを判定する降車意志判定手段を備えている。そして更に、書込手段は、車両がイグニッションオフ状態になったことが状態検出手段により検出され、且つ、降車意志判定手段により運転者が降車の意志を有していると判定されたことを条件に、書込処理を行うようになっている。
【0011】
このため、運転者のイグニッションオフ用操作によって車両がイグニッションオフ状態になっても、降車意志判定手段により運転者が降車の意志を有していると判定されなければ、書込処理は行われない。
【0012】
つまり、この車両用電子制御装置は、運転者がイグニッションオフ用操作を行っても、降車意志判定手段により運転者が降車の意志を有していると判定されなければ、運転者が短時間内に再びエンジンを始動させるためにイグニッションオン用操作を行う可能性があると推定して、不揮発性メモリへのデータ書き込みを行わず、よって電源遮断処理も行わないようになっている。よって、車両がイグニッションオフ状態になってからの不揮発性メモリへのデータ書き込み回数を、従来の装置よりも低減(削減)することができる。
【0013】
次に、請求項2の車両用電子制御装置は、請求項1の車両用電子制御装置において、車両がイグニッションオフ状態になったことが状態検出手段により検出されてから、降車意志判定手段により運転者が降車の意志を有していると判定されない継続時間が所定の閾値に達した場合には、降車意志判定手段の判定結果に拘わらず、書込手段が書込処理を行うことを許可するようになっている。そして、書込手段が書込処理を終了すれば、電源遮断処理が実施されて、バッテリから当該装置への電源電圧の供給が停止される。
【0014】
この構成によれば、車両がイグニッションオフ状態になってから、当該装置が無期限に動作し続けてしまうことが防止される。よって、バッテリ上がりを回避することができる。
【0015】
ところで、降車意志判定手段は、運転者が降車の意志を有しているか否かを、例えば、運転者がシートベルトを装着しているか否かを示すシートベルト信号に基づいて、判定するように構成することができる。
【0016】
その場合、例えば、シートベルト信号が「シートベルト非装着(運転者がシートベルトを装着していないこと)」を示す状態であるという判定条件や、シートベルト信号が「シートベルト装着(運転者がシートベルトを装着していること)」を示す状態から「シートベルト非装着」を示す状態に変化したという判定条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定することができる。尚、以下では、このようなシートベルト信号に基づく判定条件のことを、シートベルト判定条件という。
【0017】
また、降車意志判定手段は、運転者が降車の意志を有しているか否かを、例えば、車両の運転席ドアが閉じているか否かを示すドア開閉信号に基づいて、判定するように構成することができる。
【0018】
その場合、例えば、ドア開閉信号が「ドア開(運転席ドアが開いていること)」を示す状態であるという判定条件や、ドア開閉信号が「ドア閉(運転席ドアが閉じていること)」を示す状態から「ドア開」を示す状態に変化したという判定条件や、ドア開閉信号が「ドア閉」を示す状態から「ドア開」を示す状態に変化し更に「ドア閉」を示す状態に変化したという判定条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定することができる。尚、以下では、このようなドア開閉信号に基づく判定条件のことを、ドア判定条件という。
【0019】
また、降車意志判定手段は、運転者が降車の意志を有しているか否かを、例えば、車両の運転席に運転者が着座しているか否かを示す着座センサ信号に基づいて、判定するように構成することができる。
【0020】
その場合、例えば、着座センサ信号が「非着座(運転者が運転席に着座していないこと)」を示す状態であるという判定条件や、着座センサ信号が「着座(運転者が運転席に着座していること)」を示す状態から「非着座」を示す状態に変化したという判定条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定することができる。尚、以下では、このような着座センサ信号に基づく判定条件のことを、着座判定条件という。
【0021】
また、降車意志判定手段は、運転者が降車の意志を有しているか否かを、例えば、運転者が携帯している携帯機から送信されている無線信号が、車両に搭載されている無線通信装置で受信されているか否かに基づいて、判定するように構成することができる。
【0022】
その場合、例えば、携帯機からの無線信号が無線通信装置で受信されている状態から該無線信号が無線通信装置で受信できない状態に変化したという判定条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定することができる。尚、以下では、このような無線信号に基づく判定条件のことを、無線信号判定条件という。
【0023】
また、降車意志判定手段は、運転者が降車の意志を有しているか否かを、例えば、車両のイグニッションキーシリンダにキーが挿入されているか否かを示すキー挿入信号に基づいて、判定するように構成することができる。
【0024】
その場合、例えば、キー挿入信号が「キー非挿入(キーが挿入されていないこと)」を示す状態であるという判定条件や、キー挿入信号が「キー挿入(キーが挿入されていること)」を示す状態から「キー非挿入」を示す状態に変化したという判定条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定することができる。尚、以下では、このようなキー挿入信号に基づく判定条件のことを、キー判定条件という。
【0025】
また、降車意志判定手段の構成としては、前述した各例を適宜組み合わせても良く、そのようにすれば、降車意志の判定精度を向上させることができる。
例えば、降車意志判定手段は、上記シートベルト判定条件と、上記ドア判定条件と、上記着座判定条件と、上記無線信号判定条件とのうちの、何れか2つ以上の条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成することができる。また例えば、降車意志判定手段は、上記シートベルト判定条件と、上記ドア判定条件と、上記着座判定条件と、上記キー判定条件とのうちの、何れか2つ以上の条件が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態のECU(車両用電子制御装置)の構成を表す構成図である。
【図2】シャットダウン制御処理を表すフローチャートである。
【図3】ECUの作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明が適用された実施形態の車両用電子制御装置について説明する。尚、本実施形態の車両用電子制御装置は、例えば、車両のエンジンを制御するエンジン制御装置(以下、ECUという)である。また、以下の説明において、「IG」とは「イグニッション」の略である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のECU1には、車両のバッテリ3のプラス端子に給電用のリレー(以下、メインリレーという)5を介して接続される電源ライン7が接続されており、その電源ライン7から、バッテリ3の電圧であるバッテリ電圧VBが供給される。尚、以下では、メインリレー5及び電源ライン7を介してECU1に入力されるバッテリ電圧VBのことを、バッテリ電圧VBmと言う。
【0029】
また、車両では、運転者によって電源スイッチとしてのIGスイッチ9がオンされると、そのIGスイッチ9を介して、IG系の電源ライン11にバッテリ電圧VBが供給される(つまり、車両がIGオン状態となる)。そして、その電源ライン11の電圧は、IGスイッチ9のオン/オフ状態(車両がIGオン状態か否かでもある)を示すIG信号として、ECU1に入力される。
【0030】
そして、ECU1は、メインリレー5及び電源ライン7を介して当該ECU1に入力される動作用電源電圧としてのバッテリ電圧VBmから一定の電源電圧Vm(例えば5V)を生成して出力する電源回路13と、制御対象(この例ではエンジン)を制御するための各種処理を実行するマイコン(マイクロコンピュータ)15と、当該ECU1の外部から入力される信号を、マイコン15が入力可能な信号に変換して該マイコン15に入力させる入力回路17と、メインリレー5をオンさせるメインリレー駆動回路19と、備えている。
【0031】
マイコン15は、プログラムを実行するCPU21、CPU21が実行するプログラムを記憶するROM22、CPU21による演算結果等を記憶するRAM23及び入出力インターフェース(I/O)24等を備えており、更に、データの書き換えが可能な不揮発性メモリとして、例えばフラッシュメモリ25を備えている。そして、マイコン15は、電源回路13が出力する電源電圧Vmによって動作する。
【0032】
また、ECU1において、電源ライン11の電圧である上記IG信号は、入力回路17により、ハイレベルが5Vでローレベルが0VのIGオン信号Siに変換されてマイコン15に入力される。
【0033】
メインリレー駆動回路19には、入力回路17からのIGオン信号Siと、マイコン15からの電源保持信号Shとが入力される。そして、メインリレー駆動回路19は、IGオン信号Siと電源保持信号Shとのうちの少なくとも1つがアクティブレベル(この例ではハイレベル)であれば、メインリレー5のコイルに通電して該メインリレー5をオンさせる。尚、図示は省略しているが、ECU1には、電源ライン7,11とは別の電源ラインを介して、バッテリ電圧VBが常時供給されており、メインリレー駆動回路19は、その常時供給されているバッテリ電圧VBを電源として動作する。
【0034】
そして、ECU1では、以下のような電源制御が行われる。
まず、IGスイッチ9がオンされると、IGオン信号Siがハイレベルになってメインリレー駆動回路19がメインリレー5をオンさせる。すると、マイコン15が電源回路13からの電源電圧Vmを受けて起動する。
【0035】
そして、マイコン15は、起動すると、メインリレー駆動回路19への電源保持信号Shをハイレベルにする電源保持用処理を行うことで、IGスイッチ9がオフされても当該ECU1へのバッテリ電圧VBmの供給(延いては、当該マイコン15への電源電圧Vmの供給)が停止されないようにする。
【0036】
そして更に、マイコン15は、起動した後は、IGオン信号Siのレベルに基づいて、IGスイッチ9がオンか否か(車両がIGオン状態であるか否か)を判定し、IGスイッチ9がオンであると判定している間は、エンジンを制御するための処理を行う。また、IGスイッチ9がオフされたこと(即ち、車両がIGオフ状態になったこと)を検知すると、動作を停止する前に行うべき処理を実行し、その後、メインリレー駆動回路19への電源保持信号Shをローレベルにする。尚、本実施形態において、動作を停止する前に行うべき処理としては、少なくとも、後述するエンジン停止後処理と、フラッシュメモリ25にバックアップ対象のデータを書き込む書込処理とがある。
【0037】
そして、マイコン15からの電源保持信号Shがローレベルになると、IGオン信号Siは既にローレベルであるため、メインリレー5がオフして、当該ECU1へのバッテリ電圧VBmの供給が停止する。すると、マイコン15が動作を停止し、その状態は、当該ECU1が動作を停止している状態でもある。
【0038】
また、ECU1には、車両における運転席のシートベルトが装着状態か否かを検出するシートベルトスイッチ31からのシートベルト信号も入力されるようになっており、そのシートベルト信号は、入力回路17を介してマイコン15に入力される。そのシートベルト信号は、運転者がシートベルト(詳しくは、運転席のシートベルト)を装着しているか否かを示す信号である。そして、本実施形態では、運転者がシートベルトを装着している場合には、シートベルト信号がハイレベルになり、運転者がシートベルトを装着していない場合(非装着の場合)には、シートベルト信号がローレベルになるが、その信号レベルは逆であっても良い。
【0039】
次に、マイコン15が実行する処理(詳しくは、CPU21が実行する処理)のうちの、シャットダウン制御処理について、図2のフローチャートを用い説明する。尚、図2のシャットダウン制御処理は、例えば4msや8msといった一定時間毎に実行される。
【0040】
図2に示すように、マイコン15は、シャットダウン制御処理の実行を開始すると、まずS110にて、IGオン信号Siのレベルに基づいて、IGスイッチ9がオフされているか否かを判定し、IGスイッチ9がオフされていないと判定した場合(即ち、IGオン信号Siがハイレベルの場合であり、車両がIGオン状態であると判定した場合)には、そのまま当該シャットダウン制御処理を終了する。そして、この場合には、エンジンを制御するための制御処理など、IGスイッチ9がオンされている期間中に実行すべき各種処理を実行する。
【0041】
一方、上記S110にて、IGスイッチ9がオフされていると判定した場合(即ち、IGオン信号Siがローレベルの場合であり、車両がIGオフ状態になったことを検出した場合)には、S120に進む。
【0042】
S120では、後述するS130のエンジン停止後処理が完了しているか否かを判定する。詳しくは、上記S110でIGスイッチ9がオフされていると判定するようになってから、後述のエンジン停止後処理を既に実行済みであるか否かを判定する。そして、このS120にて、エンジン停止後処理が完了していないと判定した場合には、S130に進み、エンジン停止後処理を実行する。
【0043】
ここで、IGスイッチ9がオフされて車両がIGオフ状態になると、IG系の電源ライン11から、エンジンを作動させるための機器(例えばインジェクタや点火装置等)への電源供給が停止するため、エンジンが停止する。そして、S130のエンジン停止後処理は、例えば、エンジンを停止してからでないと実施することができない故障検出処理や学習値演算処理である。更に具体的に説明すると、エンジン停止後処理のうちの故障検出処理としては、例えば、エンジンの燃料タンクからのエバポガス(燃料タンクで発生する蒸発ガス燃料)を回収するための経路をアクチュエータにより閉塞して加圧又は減圧し、その経路内の圧力変動をセンサにより検出して当該経路の気密性(即ち、リークの有無)を検査するエバポガスリーク検出処理が考えられる。また、エンジン停止後処理のうちの学習値演算処理としては、例えば、電子スロットルを全閉となるように制御して、その電子スロットルの実際の位置と本当の全閉位置とのずれを、該電子スロットルの制御目標位置を補正するために用いる学習値として算出する処理が考えられる。そして、このようなエンジン停止後処理を実行した後、S140に進む。
【0044】
また、上記S120にて、エンジン停止後処理が完了していると判定した場合には、S130をスキップしてS140に移行する。
S140では、運転者が降車の意志を有しているか否かを、前述のシートベルト信号に基づいて判定する。例えば、S140では、シートベルト判定条件として、シートベルト信号が「シートベルト非装着」を示す状態(本実施形態では“ローレベル”)であるという判定条件が成立したか否かを判定し、シートベルト信号が「シートベルト非装着」を示す状態であれば(つまり、運転者がシートベルトを装着していないと判定したならば)、運転者が降車の意志を有していると判定する。逆に、シートベルト信号が「シートベルト装着」を示す状態(本実施形態では“ハイレベル”)であれば(つまり、運転者がシートベルトを装着していると判定したならば)、運転者が降車の意志を有していないと判定する。
【0045】
そして、このS140にて、運転者が降車の意志を有していると判定した場合には、S150に進む。
S150では、当該ECU1へのバッテリ電圧VBmの供給が停止されても保存すべきデータであるバックアップ対象データを、フラッシュメモに25に書き込む書込処理を行う。尚、フラッシュメモリ25に書き込まれるバックアップ対象データは、少なくとも、上記S130のエンジン停止後処理で求めた学習値(学習データ)や故障診断情報(検出した故障に関する情報)であるが、更に、IGスイッチ9がオンされている期間中に実行した他の処理によって求めた学習値や故障診断情報であっても良い。
【0046】
そして、このS150での書込処理を終了したなら、次のS160に進み、当該ECU1へのバッテリ電圧VBmの供給が停止されるようにするための電源遮断処理を行う。本実施形態では、電源遮断処理として、メインリレー駆動回路19への電源保持信号Shをローレベルにする処理を行う。すると、その時点において、IGオン信号Siは既にローレベルであるため、前述したように、メインリレー5がオフして、当該ECU1へのバッテリ電圧VBmの供給が停止し、マイコン15が動作を停止することとなる。
【0047】
また、上記S140にて、運転者が降車の意志を有していないと判定した場合には、S170に移行する。
そして、S170では、上記S110でIGスイッチ9がオフされていると判定するようになってからの経過時間(即ち、車両がIGオフ状態になったことがS110で検出されてから、S140にて運転者が降車の意志を有していると判定されない継続時間であり、以下、IGオフ後経過時間という)が、所定の閾値(以下、閾値時間ともいう)Th以上になったか否かを判定し、そのIGオフ後経過時間が閾値Th以上でなければ、そのまま当該シャットダウン制御処理を終了する。
【0048】
一方、上記S170にて、IGオフ後経過時間が閾値Th以上になったと判定した場合には、S150に移行する。このため、IGオフ後経過時間が閾値Thに達した場合には、S140の判定結果に拘わらず(即ち、運転者が降車の意志を有していると判定されなくても)、S150にて、フラッシュメモリ25にバックアップ対象データを書き込む書込処理が行われ、その後、S160にて、電源遮断処理が行われる。
【0049】
次に、図2のシャットダウン制御処理が実行されることによるECU1の作用について、図3のタイムチャートを用い説明する。
まず、図3(A)に示すように、運転者がIGスイッチ9をオフさせて車両がIGオフ状態になると、ECU1のマイコン15は、そのことを検出して(S110:YES)、前述したエンジン停止後処理を行うこととなる(S130)。尚、このことは、後述する図3(B),(C)の各場合についても同様である。
【0050】
そして、運転者が、IGスイッチ9をオフしてから前述の閾値時間Thが経過する前にシートベルトを外して、シートベルト信号が「シートベルト装着」を示す状態から「シートベルト非装着」を示す状態になると、ECU1のマイコン15は、運転者が降車の意志を有していると判定して(S140:YES)、バックアップ対象データを、フラッシュメモに25に書き込む書込処理を行い(S150)、その書込処理が終了したなら、電源遮断処理を行ってメインリレー5をオフさせる(S160)。
【0051】
このように、ECU1のマイコン15は、IGスイッチ9がオフされ、且つ、シートベルト信号に基づき運転者が降車の意志を有していると判定した場合には、運転者が短時間内に再びエンジンを始動させるためにIGスイッチ9をオンする可能性はないと推定して、書込処理を実施し、その後、電源遮断処理を行っている。
【0052】
このため逆に、図3(B)に示すように、運転者が、IGスイッチ9をオフしても、シートベルトを外さずに、シートベルト信号が「シートベルト装着」を示す状態のままであれば、ECU1のマイコン15は、運転者が降車の意志を有していると判定せず(S140:NO)、書込処理及び電源遮断処理を行わない。そして、運転者が、IGスイッチ9をオフしてから前述の閾値時間Thが経過する前に、IGスイッチ9を再びオンしたとすると、マイコン15は、図2のS110で“NO”と判定することとなり、その後は、IGスイッチ9がオンされている期間中に実行すべき処理(エンジンを制御するための制御処理など)を行うこととなる。
【0053】
また、図3(C)に示すように、運転者が、IGスイッチ9をオフしてから、シートベルトを外さずにシートベルト信号が「シートベルト装着」を示す状態のままで閾値時間Thが経過したなら、ECU1のマイコン15は、図2のS170で“YES”判定することとなる。そして、この場合には、マイコン15は、運転者が降車の意志を有していると判定(S140で“YES”と判定)しなくても、図2のS150で書込処理を実施することを許可することとなり(S170:YES→S150)、その書込処理の完了後に、電源遮断処理を行ってメインリレー5をオフさせる(S160)。
【0054】
このため、車両がIGオフ状態になってから、当該ECU1が無期限に動作し続けてしまうことが防止され、バッテリ上がりを回避することができる。
以上のように、本実施形態のECU1では、車両がIGオフ状態になったことを検出し、且つ、運転者が降車の意志を有していると判定したことを条件に、書込処理(フラッシュメモリ25にデータを書き込む処理)を行うようになっている。
【0055】
つまり、運転者がIGスイッチ9をオフしても、その運転者が降車の意志を有していると判定しなければ、運転者が短時間内に再びエンジンを始動させるためにIGスイッチ9をオンする可能性があると推定して、書込処理を行わず、電源遮断処理も行わないようになっている。
【0056】
よって、このECU1によれば、車両がIGオフ状態になってからのフラッシュメモリ25へのデータ書き込み回数を、低減(削減)することができる。
また、本実施形態のECU1では、車両がIGオフ状態になったことを検出してから、運転者が降車の意志を有していると判定しない継続時間(IGオフ後経過時間)が閾値Thに達した場合には、書込処理を実施し、その後、電源遮断処理を実施するため、前述したようにバッテリ上がりを回避することができる。
【0057】
尚、上記実施形態では、IGスイッチ9をオンする操作が、イグニッションオン用操作の一例に相当し、IGスイッチ9をオフする操作が、イグニッションオフ用操作の一例に相当している。また、マイコン15が、状態検出手段と、書込手段と、降車意志判定手段との、各々の一例に相当している。特に、図2のS110の処理を実行するマイコン15が、状態検出手段の一例であり、図2のS150の処理を実行するマイコン15が、書込手段の一例であり、図2のS140の処理を実行するマイコン15が、降車意志判定手段の一例である。また、図2のS160の処理が、電源遮断処理の一例に相当し、図2のS170からS150に移行する処理が、「書込処理を行うことを許可する」処理の一例に相当している。
【0058】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
[変形例1]
図2のS140では、シートベルト判定条件として、シートベルト信号が「シートベルト装着」を示す状態から「シートベルト非装着」を示す状態に変化したという判定条件が成立したか否かを判定し、その判定条件が成立したならば、運転者が降車の意志を有していると判定しても良い。
【0059】
[変形例2]
車両の運転席ドアの開/閉に応じてオン/オフするドアスイッチからの信号であって、運転席ドアが閉じているか否かを示すドア開閉信号が、ECU1のマイコン15に入力されるようにする。そして、図2のS140では、ドア開閉信号に基づいて、前述したドア判定条件が成立したと判定したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成しても良い。
【0060】
[変形例3]
車両の運転席に設けられる着座センサからの信号であって、運転席に運転者が着座しているか否かを示す着座センサ信号が、ECU1のマイコン15に入力されるようにする。そして、図2のS140では、着座センサ信号に基づいて、前述した着座判定条件が成立したと判定したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成しても良い。
【0061】
[変形例4]
運転者が携帯している携帯機としての電子キー(一般にスマートキーやインテリジェントキーと呼ばれるもの)と、車両に搭載されている無線通信装置とが、所定の通信を行うことで、ドアの解錠、施錠やエンジンの始動許可が行われる車両の場合には、車両に適合する電子キーから送信されている無線信号が車両側の無線通信装置で受信されているか否かを示す受信状態信号が、例えば上記無線通信装置からECU1のマイコン15に入力されるようにする。そして、図2のS140では、その受信状態信号に基づいて、前述した無線信号判定条件が成立したと判定したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成しても良い。
【0062】
[変形例5]
車両のイグニッションキーシリンダにキーが挿入されているか否かを検出するキー挿入スイッチからの信号であって、イグニッションキーシリンダにキーが挿入されているか否かを示すキー挿入信号が、ECU1のマイコン15に入力されるようにする。そして、図2のS140では、キー挿入信号に基づいて、前述したキー判定条件が成立したと判定したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成しても良い。
【0063】
[変形例6]
図2のS140では、前述した各判定条件のうちの何れか2つ以上が成立したなら、運転者が降車の意志を有していると判定するように構成しても良い。その場合、成立したか否かを判定する判定条件の数及び組み合わせは、適宜決定することができる。
【0064】
[変形例7]
前述した実施形態において、IGスイッチ9は、車両運転席のイグニッションキーシリンダに挿入された車両用のキーが捻り操作されることでオン又はオフするスイッチであったが、上記実施形態のECU1が搭載される車両としては、イグニッションキーシリンダ及びIGスイッチ9を備えない車両であっても良く、例えば、運転者がエンジン始動/停止用プッシュスイッチのボタンを操作することで、イグニッション電源のオン/オフ(即ち、IG系の電源ライン11へのバッテリ電圧VBの供給/非供給)や、スタータの駆動が行われるプッシュスイッチ式車両であっても良い。
【0065】
そのプッシュスイッチ式車両の場合、運転者によるプッシュスイッチやブレーキペダル等に対する操作の組み合わせに応じて、IG系の電源ライン11へのバッテリ電圧VBの供給/非供給を切り替えたり、スタータを制御したりする電子制御装置(以下、プッシュスタートECUという)が存在する。このため、プッシュスイッチ式車両の場合には、図1において、IG系の電源ライン11へは、IGスイッチ9の代わりに、上記プッシュスタートECU内のスイッチ手段、あるいは、そのプッシュスタートECUによってオン/オフされるリレーを介して、バッテリ電圧VBが供給されることとなり、その他の構成及び処理は、上記実施形態と同じである。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0067】
例えば、車両の運転席をカメラで撮影し、図2のS140では、そのカメラで撮影した画像データから、運転者の動作を解析して、運転者が降車の意志を有しているか否かを判定しても良い。
【0068】
また、データの書き換えが可能な不揮発性メモリとしては、フラッシュメモリ25に限らず、例えばEEPROMでも良い。
また、ECU1の制御対象は、エンジンに限らず、例えば変速機やエアコンなど、車両がIGオン状態の場合に制御されるものであれば良い。
【符号の説明】
【0069】
1・・・ECU(車両用電子制御装置)、3・・・バッテリ、5・・・メインリレー
7,11・・・電源ライン、9・・・IG(イグニッション)スイッチ
13・・・電源回路、15・・・マイコン、17・・・入力回路
19・・・メインリレー駆動回路、21…CPU21、22…RAM22
23…RAM23、24…入出力インターフェース(I/O)
25・・・フラッシュメモリ、31・・・シートベルトスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者のイグニッションオン用操作によって前記車両がイグニッションオン状態になると、前記車両のバッテリから動作用の電源電圧が供給されて動作すると共に、
データの書き換えが可能な不揮発性メモリと、
前記運転者のイグニッションオフ用操作によって前記車両がイグニッションオフ状態になったことを検出する状態検出手段と、
前記車両がイグニッションオフ状態になったことが前記状態検出手段により検出されたことを条件に、前記不揮発性メモリにバックアップ対象のデータを書き込む書込処理を行う書込手段と、を備え、
前記書込手段による前記書込処理が終了した後、前記電源電圧の供給が停止されるようにするための電源遮断処理を行う車両用電子制御装置において、
前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定する降車意志判定手段を備えており、
前記書込手段は、前記車両がイグニッションオフ状態になったことが前記状態検出手段により検出され、且つ、前記降車意志判定手段により前記運転者が降車の意志を有していると判定されたことを条件に、前記書込処理を行うこと、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電子制御装置において、
前記車両がイグニッションオフ状態になったことが前記状態検出手段により検出されてから、前記降車意志判定手段により前記運転者が降車の意志を有していると判定されない継続時間が所定の閾値に達した場合には、前記降車意志判定手段の判定結果に拘わらず、前記書込手段が前記書込処理を行うことを許可すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用電子制御装置において、
前記降車意志判定手段は、
前記運転者がシートベルトを装着しているか否かを示すシートベルト信号に基づいて、前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、
前記降車意志判定手段は、
前記車両の運転席ドアが閉じているか否かを示すドア開閉信号に基づいて、前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、
前記降車意志判定手段は、
前記車両の運転席に前記運転者が着座しているか否かを示す着座センサ信号に基づいて、前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、
前記降車意志判定手段は、
前記運転者が携帯している携帯機から送信されている無線信号が、前記車両に搭載されている無線通信装置で受信されているか否かに基づいて、前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、
前記降車意志判定手段は、
前記車両のイグニッションキーシリンダにキーが挿入されているか否かを示すキー挿入信号に基づいて、前記運転者が降車の意志を有しているか否かを判定すること、
を特徴とする車両用電子制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−82388(P2013−82388A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224945(P2011−224945)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】