説明

車両用電子時計

【課題】水晶振動子の周囲温度と固有の特性や水晶発振回路が発振する周波数の個体毎のバラツキにかかわらず、精度高く時刻補正することができる上、電力消費を可能なるかぎり少なくすることができる車両用電子時計を提供すること。
【解決手段】水晶振動子30を含む水晶発振回路24の原発振周波数f0を基準として発生した信号を計数して時刻を刻み、当該時刻を液晶表示装置により表示させるCPU22を有する車両用電子時計において、水晶振動子30の周囲温度を測定する温度測定部35を備えると共に、CPU22には、水晶振動子30の周波数温度特性データを記憶させたROM37と、温度測定部35で測定した温度測定検出データS0と前記ROM37の特性データとから時刻補正値を演算する演算回路39と、上記の時刻補正値にしたがって原発振周波数f0の計数時刻を補正する出力補正回路27とを備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻む車両用の電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
音叉型水晶振動子を有する電子時計が広く知られている。
図3はこの種の電子時計の一例を示したブロック図である。
この図において、10はマイクロプロセッサ、11は時間標準源となる水晶振動子、12はこの水晶振動子11と共に水晶発振回路13を構成するコンデンサである。
【0003】
また、14は水晶発振回路13の発振周波数を分周して1Hzの信号とする分周回路やカウンタ回路等を内蔵した時刻を刻む集積回路、15はこの集積回路14から時刻データを読み取って液晶等の表示装置16に表示させると共に、必要に応じて前記集積回路14の時刻データを任意の時刻にプリセットする制御部である。
【0004】
一般に、水晶発振回路13の発振周波数は、図4に示した周波数温度特性のように、周囲温度によって変化する。
すなわち、発振周波数が温度変化にしたがって放物線状の特性曲線となり、特性曲線の頂点が約25℃で周波数偏差が零となる。
つまり、基準温度約25℃で基準周波数(32.768kHz)の発振信号を出力する。
また、この発振周波数は、周囲温度が高くても、また、低くなっても低下するため、時刻の遅れが生じることになる。
【0005】
そこで、この従来例の電子時計では、水晶振動子11の周囲温度を測定する温度測定部17と、温度変化に対する発振周波数の変化を示す図4の周波数温度特性の特性データを予め記憶させた記憶部18と、集積回路14で刻まれた時刻を温度測定部17からの温度データと記憶部18の特性データとに基づいて補正する補正部19とからなる補正手段を備えている。
【0006】
この補正手段は、補正部19が一定時間毎、例えば、1時間経過する毎に、温度測定部17で測定した温度データを取り込み、この温度データと記憶部18の特性データに基づき1時間分の遅れ時間の補正データを演算算出し、この補正データを集積回路14から得られた現在の時刻データに加算して遅れ時間を補正し、この補正した時刻データを集積回路14に新たにプリセットする。
これによって、例えば、1時間単位で温度による時刻の遅れが補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−82577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の電子時計は、温度測定部17が起動信号などのトリガーによって動作するものではなく、水晶振動子11の周囲温度を測定するために常に動作させておく必要があるが、温度測定部17を常に動作させるとその分消費電力が増加するという問題がある。
【0009】
また、水晶振動子は、個々の製品に特性のバラツキがあり固有の特性を持って
おり、水晶振動子だけでなく、抵抗、コンデンサ等にも固有の特性があることから、水晶発振回路を構成した際に、それらの特性が積算されて生じるバラツキもあるため、水晶発振回路13の発振周波数が水晶振動子11及び水晶発振回路13の固有の特性によって製品毎に若干変わったものとなるために、正確な時刻補正が困難となる場合がある。
【0010】
車両に搭載された電子時計は、電力節約のために、イグニッションスイッチをOFFさせた後は制御部15を電力低消費モードに切り換えるものが多い。
この場合、時刻の計時は進むが補正手段が非動作状態となることから、時刻補正できなく、車両を使用しない時間が長くなるほど時刻の遅れが大きくなる。
【0011】
そこで、本発明は、上記の実情にかんがみ、水晶振動子の周囲温度と固有の特性や水晶発振回路が発振する周波数の固体毎のバラツキにかかわらず、精度高く時刻補正することができる上、電力消費を可能なるかぎり少なくすることができる車両用電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明では、第1の発明として、水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、 前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データを記憶させたデータ記憶手段と、前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データとに基づいて時刻補正値を演算する演算手段と、前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計を提案する。
【0013】
第2の発明としては、水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データと、前記水晶振動子が有する固有の周波数温度特性に関する個体差データとを記憶させるデータ記憶手段と、 前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データおよび個体差データとから時刻補正値を演算する演算手段と、前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計を提案する。
【0014】
第3の発明としては、水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、 通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データと、前記水晶振動子を備えて形成した水晶発振回路固有の周波数温度特性に関する個体差データとを記憶させるデータ記憶手段と、前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データおよび個体差データとから時刻補正値を演算する演算手段と、前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計を提案する。
【0015】
第4の発明としては、上記した第1乃至第3の発明のいずれかに記載した車両用電子時計において、前記制御部は、イグニションスイッチのONで通常モード、当該スイッチのOFFで電力低消費モードに移行可能であり、電力低消費モードにおいては、時刻計測処理の割り込み信号を確認して通常モードに移り、前記補正処理手段の動作により時刻補正した後、電力低消費モードに戻る構成としたことを特徴とする車両用電子時計を提案する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明の電子時計は、温度測定データと水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データとから時刻補正値が演算され、さらに、このように演算された時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する構成としてある。
【0017】
したがって、水晶振動子の周囲温度に応じて補正された時刻表示が可能になる。
特に、本発明の電子時計は、車両が使用されていない状態で制御部が電力低消費モードとなっている場合でも所定の時間間隔で通常モードに戻って時刻補正するので、高い精度の電子時計となる他、屋外で天候による気温の変化等の影響を受け易い車両搭載の電子時計として実施して有効となる。
【0018】
第2の発明の電子時計は、温度測定データと水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データの他に、水晶振動子が有する固有の周波数温度特性に関する固体差データを加味した特性データに基づいて時刻補正値を演算し、その時刻補正値によって時刻補正するので、高精度の時刻補正が可能になる。
【0019】
第3の発明の電子時計は、温度測定データと水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データの他に、水晶振動子で水晶発振回路を構成した際に生じる個体差データを加味した特性データに基づいて時刻補正値を演算し、その時刻補正値によって時刻補正するので、高精度の時刻補正が可能になる。
【0020】
第4の発明の電子時計は、制御部が電力低消費モードにある場合は、時刻補正処理の割り込み信号を確認して通常モードとなり、この通常モードで上記同様に時刻補正され、その後、電力低消費モードに戻る。
したがって、電力低消費モードでの時刻の遅れを可能なるかぎりカバーすることができる電子時計となるから、使用頻度の少ない車両に搭載する電子時計として特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である車両用電子時計を示したブロック図である。
【図2】上記した電子時計の電子制御動作を示したフローチャートである。
【図3】従来例の電子時計を示したブロック図である。
【図4】音叉型水晶振動子の周波数温度特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施形態について図面に沿って説明する。
図1は車両用電子時計の電気回路を示すブロック図で、この時計回路21は車載バッテリ(12V)を電源として給電される。
したがって、CPU(制御部)22やその他の回路がレギュレータ23を介してコントロ−ルユニット駆動電源として給電されるようになっている。
【0023】
24は水晶発振回路で、この水晶発振回路24の発振周波数(以下、「原発振周波数f0」という)の計数に基づいて時刻が刻まれる。
すなわち、CPU22には、原発振周波数f0を分周する分周カウンタ25、分周パルスをカウントして時刻(秒、分、時、日、年)を刻む時刻カウンタ26、時刻データを補正する出力補正回路(補正手段)27などを備えている。
【0024】
また、ドライバ28は液晶表示装置29に時刻表示させるものである。
なお、ドライバ28は、CPU22内部にその機能を有するもの、CPU22外部に専用ICを実装してその機能を有するもののどちらかを用いても構わない。
さらに、液晶表示装置29は、指針をモーター駆動する機械的な表示装置によっても構成することができる。
【0025】
また、上記の水晶発振回路24は、音叉型水晶振動子30と2つのコンデンサ31、抵抗42によって形成した公知構成のものであり、一般に図4に示したような周波数温度特性を持つものである。
【0026】
一方、サーミスタ32は、水晶振動子30の周囲温度を測定するもので、このサーミスタ32と抵抗33との分割電圧をセンサ検出回路34により温度測定検出データS0として検出し、その温度測定検出データS0をCPU22に入力する。
また、サーミスタ32、抵抗33、センサ検出回路34からなる温度測定部35は、レギュレータ23とセンサ用電源回路36を介してコントロ−ルユニット駆動電源によって給電する構成としてある。
【0027】
なお、イグニッションスイッチ信号ライン43から送られるイグニッションスイッチのOFF信号を確認して、CPU22が電力低消費モード(スタンバイモード)となり、上記温度測定部35が非給電となる。
【0028】
上記したセンサ検出回路34によって検出された温度測定検出データS0は、CPU22のRAM37に一時的に記憶させる。
また、このCPU22には、データ記憶手段として、図4に示した一般の水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データを記憶させた書き換え不能なROM38を備えている。
さらに、CPU22には、RAM37の温度測定検出データS0とROM38の特性データとを読み出し、これらデータから周波数偏差値を演算する演算回路(演算手段)39を備えている。
【0029】
この演算回路39は、測定された温度データに対応した周波数偏差データを検出し、周波数偏差データから原発振周波数f0を基準として計測した時間の遅れを改善する時刻補正値を演算し、その時刻補正値を出力補正回路27に送る。
そして、出力補正回路27は、時刻カウンタ26から送られる時刻データを演算回路39から送られる時刻補正値によって補正し、温度変化によって生じた時刻遅れを改善し、その補正データをドライバ28に送る。
【0030】
他方、CPU22は、CPUプログラムがCPUクロック40のクロックパルスにより実行され、また、時計用クロック41により時刻の計時が進行するようになっている。
そして、時計カウンタが時計クロックパルスを所定カウントする毎に割り込みプログラムが実行され、この割り込みプログラムの実行にしたがって時刻補正値が演算され、その時刻補正値にしたがって時刻補正処理がおこなわれる。
なお、CPUプログラムや割り込みプログラムはROM38に格納してある。
【0031】
次に、上記のように構成した電子時計の動作について説明する。
イグニッションスイッチ信号ライン43から入力するONスイッチ信号を確認して通常モードとなるが、CPU22が通常モードにあるときは、所定時間(例えば、5分)間隔で、例えば、0.25秒の処理を繰り返す割り込みポログラムの実行により時刻演算処理が行われ、演算された時刻補正値にしたがって、例えば、5分間隔で原発振周波数f0に基づく計時時刻が補正される。
すなわち、割り込みプログラムでは、CPU22がセンサ用電源回路36をONさせるように動作し、温度測定部35が給電状態となる。
【0032】
したがって、センサ検出回路34から温度測定データS0がCPU22のRAM37に書き込まれ、続いて、演算回路39によってRAM37の温度測定データS0とROM38の特性データとが読み出され、演算回路39によって、測定された温度データに対応する周波数偏差が検出され、この周波数偏差より原発振周波数f0の時刻補正値が演算される。
【0033】
より具体的にのべれば、予めROM38に記憶されている周波数温度特性に関する特性データのうち、温度測定部35で計測した温度測定検出データS0に応じた値を、周波数温度特性による補正量(時刻補正値)とし、このように演算された時刻補正値が出力補正回路27に送られて時刻補正値を蓄積し、この出力補正回路27によって、その時刻補正値が所定値(例えば、5分相当量)に達した時点で、原発振周波数f0の計数に基づく時刻の遅れが補正される。
【0034】
この所定値は、例えば±100というように絶対値が同じプラスとマイナスのしきい値であり、時刻補正値が+100を超えた場合はカウントを+1し、逆に時刻補正値が−100を下回った場合はカウントを−1するように補正する。
上記のように補正処理された時刻データがドライバ28に送られ、改善された時刻が液晶表示装置29によって表示される。
【0035】
他方、前述の通り、イグニッションスイッチをOFF位置に操作した場合は、CPU22が通常モードから電力低消費モードに移るが、割り込みプログラムの実行によって通常モードに遷移され、補正処理が行われる。
図2は、CPU22が電力低消費モードに移った場合の補正処理動作を示すフローチャートである。
【0036】
このフローチャートに示すように、割り込み信号が発生したか否かを判断し、割り込み信号が確認されると、電力低消費モードから通常モードに遷移する。(ST201、ST202)
このように、短時間の割り込みの時だけ、CPU22がセンサ用電源回路36をONさせるように動作し、温度測定部35が給電するので、温度測定部35の電力消費が少ないから、電力消費の少ない時刻補正構成の電子時計となる。
【0037】
CPU22が通常モードにおいてセンサ用電源回路36をONさせる。
したがって、サーミスタ32によって水晶振動子周囲の温度が測定され、温度測定検出データS0がCPU22に送られ、その後、センサ用電源回路36がOFF動作される。(ST203、ST204、ST205)
続いて、演算回路39が温度測定データS0と特性データに基づいて時刻補正値を演算し、この時刻補正値を出力補正回路27に送る。(ST206)
【0038】
そして、出力補正回路27では、時刻補正値が所定値(例えば、1分相当量)より大か小かが判断され、小さいときは電力低消費モードにリターンし、大きいときは、原発振周波数f0の計時を時刻補正値によって補正する。(ST207,ST208)
つまり、原発振周波数f0を計数した時刻から所定値を足し引き、または加減し、時刻の遅れを改善する。(ST209.ST210)
上記補正処理が終わるとスタンバイモードにもどり、次の割り込み信号を待つことになる。
【0039】
上記したように、本実施形態の車両用電子時計では、CPU22が図示しないイグニッションスイッチがONで通常モード、OFFで電力低消費モードとなるが、イグニッションスイッチがOFF状態にある場合でも所定の条件(例えば、ドアの開閉操作やキーレス用携帯スイッチのボタン操作があった場合等)を満たす場合にはCPU22が通常モードへ移り、イグニッションスイッチがOFF位置で前述の所定条件を満たしていないときは、車両を使用していない状態と判断してCPU22が電力低消費モードへ移るよう構成されている。
【0040】
CPU22は、基本発振周波数32.768kHzの水晶振動子30を使用した水晶発振回路24の原発振周波数f0を基準として0.25秒を計測する毎に、割り込みプログラムの実行により時計計測処理が行われる。
具体的には、原発振周波数f0を分周カウンタ25が分周し、時刻カウンタ26が0.25秒毎にカウントを+1し、カウントが240(すなわち1分)に達したとき、分データが+1され、カウントはリセットされて0から計測を再開する。さらに、一定時間(例えば、5分)時刻補正処理が行われる。
【0041】
一方、上記した実施形態では、水晶振動子の標準的な周波数温度特性を特性データとしてROM38に格納したが、水晶振動子は製品個々に固有の周波数温度特性を有するので、周波数温度特性の標準特性データを水晶振動子個々に用いた場合には高い補正精度を期待することができない。
また、水晶振動子以外でも、水晶発振回路24のコンデンサ31や抵抗43等の固有の特性値のバラツキ、また、これらを基板に実装した後に積算される値のバラツキも考慮する必要がある。
【0042】
そこで、本発明の第2の実施形態では、使用する水晶振動子の実際の周波数温度特性に関する特性データは、予めROM38に記憶しておき、使用する水晶振動子30を備えて形成した水晶発振回路24より生じる個体差データは、書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM)44に記憶するように構成した。
したがって、本実施形態においては、データ記憶手段としては、ROM
38と不揮発性メモリ44が相当する。
なお、不揮発性メモリ44は図1に点線で示す如く、CPU22内部に備えてあるが、CPU22の外部からCPU22へ接続させるものでもよい。
【0043】
つまり、ROM38には、周波数温度特性の標準特性データを格納し、不揮発性メモリ44には、上記の個体差データを格納しており、演算回路39がROM
38及び不揮発性メモリ44から標準特性データと個体差データとを合算した総合補正データを読み出し、この総合補正データにより時刻補正値を演算する構成としてある。
【0044】
より具体的に述べれば、予めROM38に記憶されている周波数温度特性に関する特性データのうち、温度測定部35で計測した温度測定検出データS0に応じた値を、周波数温度特性による補正量とし、車両の生産工程において計測した水晶発振回路24の個体毎の値のバラツキを加味した値を、回路特性による補正量とする。
【0045】
そして、周波数温度特性による補正量と回路特性による補正量とを演算回路39が合算して総合補正データ(時刻補正値)とする。
このように構成された時刻補正値が出力補正回路27に送られて時刻補正値を蓄積し、この出力補正回路27によって、その時刻補正値が所定値(例えば、5分相当量)に達した時点で、原発振周波数f0の計数に基づく時刻の遅れまたは進みが補正される。
【0046】
なお、この第2の実施形態では、水晶発振回路24の個体差データを加味して補正されるので、原発振周波数f0に基づく時刻を遅れ補正する場合と進み補正する場合とがある。
このように構成すれば、水晶振動子30個々の周波数温度特性のバラツキや、水晶振動子30で水晶発振回路24を構成した際に生じる個体差のバラツキがあっても、その周波数温度特性や個体差でのバラツキを加味した時刻補正が可能になるから、高い補正精度が期待できる電子時計となる。
【0047】
なお、本実施形態では水晶発振回路24の個体差データのバラツキを加味した値を回路特性による補正量としたが、水晶発振回路24を構成する水晶振動子30、コンデンサ31、抵抗42それぞれの個体毎のバラツキを回路特性による重みつき補正量としてもよく、あるいは水晶振動子30のみの個体毎のバラツキを回路特性による補正量としてもよい。
また、上記した実施形態では、時刻補正処理を行う間隔を5分としたが、間隔をより短くすることで精度をさらに向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
車両に搭載する電子時計として適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
21 時計回路
22 CPU
24 水晶発振回路
25 分周カウンタ
26 時刻カウンタ
27 出力補正回路
29 液晶表示装置
30 水晶振動子
32 サーミスタ
34 センサ検出回路
35 温度測定部
36 センサ用電源回路
39 演算回路
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、
通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、
前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、
さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データを記憶させたデータ記憶手段と、
前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データとに基づいて時刻補正値を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、
前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計。
【請求項2】
水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、
通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、
前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、
さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データと、前記水晶振動子が有する固有の周波数温度特性に関する個体差データとを記憶させるデータ記憶手段と、
前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データおよび個体差データとから時刻補正値を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、
前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計。
【請求項3】
水晶振動子を含む水晶発振回路の発振周波数を計数して時刻を刻み、当該時刻を時刻表示手段により表示させる車両用電子時計において、
通常モードまたは電力低消費モードにかかわらず前記発振周波数の計時時刻を刻み動作させる制御部を備えると共に、
前記制御部が通常モードにおいて給電制御し、前記水晶振動子の周囲温度を測定する温度測定手段を設け、
さらに、前記制御部には、前記水晶振動子が持つ周波数温度特性の特性データと、前記水晶振動子を備えて形成した水晶発振回路固有の周波数温度特性に関する個体差データとを記憶させるデータ記憶手段と、
前記温度測定手段で測定した温度データと前記データ記憶手段の特性データおよび個体差データとから時刻補正値を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算した時刻補正値にしたがって前記発振周波数の計時時刻を補正する補正手段とからなる補正処理手段を備え、
前記制御部が通常モードにおいて前記温度測定手段と前記補正処理手段とを動作させて時刻補正を行い、前記制御部が電力低消費モードに移行した後は、所定の時間間隔で通常モードに戻り時刻補正を可能としたことを特徴とする車両用電子時計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載した車両用電子時計において、
前記制御部は、イグニションスイッチのONで通常モード、当該スイッチのOFFで電力低消費モードに移行可能であり、電力低消費モードにおいては、時刻計測処理の割り込み信号を確認して通常モードに移り、前記補正処理手段の動作により時刻補正した後、電力低消費モードに戻る構成としたことを特徴とする車両用電子時計。



























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92422(P2013−92422A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233958(P2011−233958)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】